シェル型の超新星残骸 g330.2+1.0 からの非熱的 x 線放射の発見

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ASCA による観測. Background region. G330.2+1.0. Model: power-law. これ以降発見された非熱的 SNR. Compact Source. 数例が見つかっている:. RX J1713-3946 (Koyama, et al. 1997) RX J0852-4662 (Slane, et al. 2001) etc. - PowerPoint PPT Presentation

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シェル南側の点源シェル南側の点源 : ASCA のスペクトル(図5)は、べき関数でよくフィットしており、この天体が G330.2+1.0 から飛び出した回転駆動型のパルサーである可能性も否定できない。しかし、 XMM-Newton の PN によるスペクトル(図6)から、高階電離した鉄輝線が検出されたことでこの可能性は否定される。白色わい星連星系か背後の活動銀河核が視野内に存在しているものと考えるのが妥当である。 今回この天体の正体を特定することはできなかったが、いずれにしても、この点源は G330.2+1.0 とは無関係であると結論できる。

シェル型の超新星残骸 G330.2+1.0からの非熱的 X線放射の発見内田裕之、蓮池和人、鳥居研一、常深博(大阪大学)、山口康広、柴田晋平(山形大学)

市吉謙彦、中野真樹、森浩二(宮崎大学)

1) K.Koyama, R.Petre, E.V.Gotthelf, U.Hwang, M.Matsuura, M.Ozaki &  S.S.Holt Nature 378, 255 (1995)

2) J.B.Z.Whiteoak, & A.J.Green A&AS 118, 329 (1996) 3) K.Koyama, K.Kinugasa, K.Matsuzaki, M.Nishiuchi, M.Sugizaki, K.Torii,

S.Yamauchi & B.Aschenbach PASJ 49, L7 (1997)4) P.Slane, J.P.Hughes, J.Edgar, P.P.Plucinsky E.Miyata, H.Tsunemi & B.

Aschenbach ApJ 548, 814 (2001)5) 山口康広 修士論文「 X 線天文衛星 ASCA による超新星残骸 G330.2+

1.0 の観測的研究」 , 山形大学  (2003)6) K.Torii, H.Uchida, K.Hasuike, & H.Tsunemi PASJ 58, L11 (2006)

シェル南側の点源シェル南側の点源

XMM-Newton XMM-Newton による観測による観測

Model: mekalModel: power-law

ASCAASCA XMM-Newton PNXMM-Newton PN

Energy   (keV)

図5: ASCA によるシェル南側の点源 ( 赤い円で囲んである領域 ) のスペクトル。 power-law モデルでフィットした。

G330.2+1.0G330.2+1.0: ASCA の解析はシェル全域について行った(図2)。まず、スペクトルから明らかな輝線は見出せない(図1)。このスペクトルを power-law と mekal の2つのモデルでフィットした結果(表1)、カイ二乗検定からはどちらのモデルがより適しているかを決定することができない。しかし、シェルからの放射が熱的だと仮定した場合、温度が非常に高いことから、自由膨張段階にある若い超新星残骸であると考えられるが、通常現れる Fe, Ca, Ar, S, Si, Mg等の K 線がいずれも見られないことから、このモデルを妥当であるとする根拠は薄い。したがって、この天体のスペクトルが超新星残骸衝撃波で加速された電子のシンクロトロン放射であると考えるのが自然である。  XMM-Newton の解析結果もこのことを支持している。 XMM-Newton の解析は特に表面輝度の高いシェル南西の領域について行った(図4)。 ASCA と同様、スペクトルは平坦で明らかな輝線は見られない(図3)。また、2種類のモデルのスペクトルパラメータ(表2)からは、熱的なモデルでは重元素の輝線が有意に検出されず、 ASCA と同様の結論が得られた。 

図6: XMM-Newton PN によるシェル南側の点源 ( 赤い円で囲んである領域 ) のスペクトル。 mekal モデルでフィットした。

参考文献参考文献

ASCA ASCA による観測による観測

BackgroundregionG330.2+1.0

Compact Source

Model: power-law

図1(右): ASCA の GIS による G330.2+0.1 のX 線画像(カラー)。 MOST による電波強度図 (Whiteoak & Green 1996) を等高線で重ねて表示してある。図2(上): G330.2+1.0 のシェル全域(図1の緑円で囲んだ領域)のスペクトルをべき関数でフィットしたもの。

327.6 / 390

327.5 / 391

χ2 / dof

9.1x10-121.85 (1.62-2.12)< 0.172.99 (2.53-3.50)---mekal

1.6 x 10-112.58 (2.24-2.94)------2.82 (2.61-3.04)power-law

Flux*nH (1022 cm-2)AbundancekT (keV)Photon IndexModel

表1: G330 シェル全域のスペクトルを2種類のモデル( power-law, mekal )でフィットした場合のパラメタの比較* 0.7 – 10.0 keV における unabsorbed flux (erg s-1 cm-2)

図3: XMM-Newton によるシェル南西部分 ( 緑の楕円で囲んである領域 ) のスペクトル。べき関数でフィットした。

高エネルギー宇宙線の起源高エネルギー宇宙線の起源超新星残骸衝撃波面における粒子加速

ASCA の観測による SN1006 シェルからの非熱的放射の検出( Koyama, et al. 1995 )

表2: G330 シェル南西部分のスペクトルを2種類のモデル( power-law, mekal )でフィットした場合のパラメタの比較* 0.7 – 10.0 keV における unabsorbed flux ( erg s-1 cm-2)

最初の観測的証拠最初の観測的証拠

左図: SN1006 の Chandra による X 線画像。非熱的な X 線放射が検出されたのは図で明るく輝いている東西のシェルである。 http://chandra.harvard.edu/photo/2005/sn1006/より

図4: XMM-Newton の MOS によるG330.2+0.1 の X 線画像。緑色で囲んだシェル南西の縁が特に明るい。

317.0 / 346

χ2 / dof

1.30×10-111.92 (1.81-2.03)0.30 (0.23-0.38)5.27 (4.71-5.89)mekal

Flux*nH (1022 cm-2)AbundancekT (keV)Model

表 3 : XMM-Newton PN のデータから G330 シェル南側の点源について mekal モデルでフィットした場合のパラメタ* 0.7 – 10.0 keV における unabsorbed flux ( erg s-1 cm-2)

解析結果解析結果

G330.2+1.0G330.2+1.0 のの XX 線観測線観測

Model Photon Index kT (keV) Abundance nH (1022 cm-2) χ2 / dof

power-law 2.25 (1.91-2.74) --- --- 2.60 (2.10-3.49) 84.2 / 60

mekal --- 4.84(3.00-7.10) < 0.11 2.08 (1.78-2.81) 80.4 / 58

Model: power-law

数例が見つかっている:

非熱的 SNR の発見は粒子加速機構を解明する上で重要

これ以降発見された非熱的これ以降発見された非熱的 SNRSNR

TeV 領域での放射も確認されている

RX J1713-3946 (Koyama, et al. 1997)

RX J0852-4662 (Slane, et al. 2001)

etc.

観測衛星 観測日 観測時間

ASCA 1999 年 9 月 11-12 日 68 ksec (GIS)

XMM-Newton 2004 年 8 月 10 日 9.7 ksec (MOS)

下表に本研究で使用したデータの観測の概要を示す。

  ASCA によって SN1006 のシェルから非熱的 X 線スペクトルが発見されて以来 (Koyama, et al. 1995)、同様のスペクトルを示すシェル型の超新星残骸( SNR)がいくつか見つかってきた。これらの天体からの非熱的 X 線放射は衝撃波におけるフェルミ粒子加速の観測的証拠であり、宇宙線の起源を解明する上で重要な手がかりである。

 今回我々は、シェル型の超新星残骸 G330.2+1.0 を X 線で観測し、非熱的なスペクトルを示すことを発見したので報告する (Torii, Uchida, Hasuike, & H.Tsunemi, 2006, PASJ 58, L11)。我々は ASCA のデータから、シェルのスペクトルが輝線を含まないべき関数型( γ ~ 2.8)であることを明らかにし、 XMM-Newtonの観測からもこれを裏付ける結果を得た。さらに、 X 線と電波の表面輝度が反相関していることを見出した。南西のシェルで X 線の表面輝度が高く、べき型スペクトルを示す放射のほとんどはこの部分からの寄与であると見なせる。一方、分子雲と相互作用していると考えられる北東の領域では電波が強く X 線の表面輝度が低い。これは、同一の初期条件から出発しても周辺物質の条件で加速効率が異なることを示しており、加速機構を解明する重要な手がかりになる。

  ASCA によって SN1006 のシェルから非熱的 X 線スペクトルが発見されて以来 (Koyama, et al. 1995)、同様のスペクトルを示すシェル型の超新星残骸( SNR)がいくつか見つかってきた。これらの天体からの非熱的 X 線放射は衝撃波におけるフェルミ粒子加速の観測的証拠であり、宇宙線の起源を解明する上で重要な手がかりである。

 今回我々は、シェル型の超新星残骸 G330.2+1.0 を X 線で観測し、非熱的なスペクトルを示すことを発見したので報告する (Torii, Uchida, Hasuike, & H.Tsunemi, 2006, PASJ 58, L11)。我々は ASCA のデータから、シェルのスペクトルが輝線を含まないべき関数型( γ ~ 2.8)であることを明らかにし、 XMM-Newtonの観測からもこれを裏付ける結果を得た。さらに、 X 線と電波の表面輝度が反相関していることを見出した。南西のシェルで X 線の表面輝度が高く、べき型スペクトルを示す放射のほとんどはこの部分からの寄与であると見なせる。一方、分子雲と相互作用していると考えられる北東の領域では電波が強く X 線の表面輝度が低い。これは、同一の初期条件から出発しても周辺物質の条件で加速効率が異なることを示しており、加速機構を解明する重要な手がかりになる。

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