平成29年度 日本熱処理技術協会受賞者紹介 学術, …award for best poster...

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(126)熱処理 58巻 3号 平成 30年 6月

奈ナ

良ラ

崎サキ

 道ミチ

治ハル

 君(学術功績賞[林賞])

同君は昭和 26年に山形県に生まれ,昭和 50年 3月に山形大学大学院精密工学専攻修士課程を修了後,宇都宮大学工学部の教員として勤務し,金属の加工と熱処理に関連する教育と研究に従事してきた。その研究成果の一部を博士論文としてまとめ,平成 4年 3月に東北大学にて

博士(工学)の学位を取得した。その後,平成 5年 3月より宇都宮大学工学部助教授,平成 19年 4月より同大学准教授として平成 28年 3月に宇都宮大学を定年退職するまで金属の加工と熱処理に関する教育と研究に従事した。定年退職後は,平成 28年 10月より宇都宮大学工学部客員教授,平成 29年 4月より埼玉工業大学先端科学研究所客員教授として,学協会における研究活動などに積極的に参加してきた。本協会での活動としては,「焼入れとひずみ制御研究部会」,

「焼入冷却剤の冷却能データベース研究部会」,および「鋼の焼割れシミュレーション研究部会」の活動を部会長として推進した。さらに,熱処理油 JIS規格の改正や JIS法の国際規格化の活動を進めた。同君の代表的な業績を以下に整理する。

1. 熱処理油 JIS改正原案作成委員会(全国工作油剤工業組合)の委員長として熱処理用冷却剤の冷却特性測定法の改良

を推進し,さらに水溶性焼入れ液の測定法を JIS規格に追加した。また,熱処理用冷却剤の冷却能測定法国際標準化推進委員会(本協会)の委員長として,JIS法を国際規格とする活動を進め,銀棒試片による水溶性焼入れ液の測定法をASTM規格とすることを実現した。2.焼入れプロセスの最適化や焼入れシミュレーションに必要な各種冷却剤の冷却特性データを本協会の研究部会の活動によって収集し,データベースの構築を進めた。3.鋼部品の焼入れにおいて発生する変形,割れなどの欠陥発生原因について実験的検討と数値シミュレーションによるメカニズムについての検討を行った。以上のように,同君は,鋼部品の焼入冷却技術と焼入れプロセスの最適化技術について,多大なる成果をあげていることに加えて,本協会の焼入れ関連の研究部会における活動,熱処理セミナー等での講演,熱処理用冷却剤の冷却能測定法の国際標準化推進活動など,本協会の活動の活性化に大きく貢献してきた。これらの業績により,平成 21年度の本協会の技術賞(粉生記念賞)を受賞し,さらに,IFHTSE(国際熱処理表面処理連合)における焼入冷却に関する国際的な研究活動が評価されて IFHTSEフェローを平成 21年に受賞した。よって,候補者は本協会の学術・技術の進歩発展に多大な貢献があったと認められる。以上のことから学術・技術功労賞(林記念賞)の授賞者としてふさわしいと考える。

平成 29 年度 日本熱処理技術協会受賞者紹介

学術,技術功績賞(林賞)受賞者紹介

本賞は熱処理に関する学術および技術の発展に貢献するところが大であったと認められた正会員より選考し,賞状,賞牌を

授与します。

河カワ

田タ

 一カズ

喜キ

 君(技術功績賞[林賞])

同君は昭和 29年に岡山県に生まれ,昭和 54年 3月に関西大学大学院工学研究科博士前期課程金属工学専攻を修了し,昭和 54年 4月にオリエンタルエンヂニアリング(株)に入社し,取締役研究開発部長兼技術部長を経て平成 24年 9月から代表取締役社長となり,現在に至る。

その間,平成 6年 2月には,技術士(金属部門)の資格を取得しており,平成 14年 3月には名古屋大学大学院工学研究科博士後期課程材料プロセス工学専攻を修了し「パルスDCプラズマ CVD法による硬質皮膜の作製とその膜特性に関する研究」で名古屋大学より博士(工学)の学位を取得し

ている。同君は,同社において常に「量産化,実用化」を念頭に置いた技術開発を進め以下のような多くの実績を残している。その一例として,N2ベースガス浸炭・軟窒化の装置と方法,滴注式高速ガス浸炭法,CO2削減と粒界酸化低減可能なガス浸炭装置と方法,オーステナイト系ステンレス鋼のガス窒化装置と方法,バネ鋼の低温窒化装置と方法,雰囲気制御付きガス軟窒化装置と方法,雰囲気制御付きガス浸硫窒化装置と方法,雰囲気制御付き真空浸炭装置と方法,真空窒化装置と方法,窒化+酸化複合処理装置と方法,浸窒焼入れと時効処理装置と方法,量産型パルス DCプラズマ装置と各種硬質皮膜の開発・量産化,各種固体電解質型酸素センサと熱伝導式水素センサとそのシステム開発・実用化がある。当協会においては,評議員,編集委員会委員,不定期刊行物出版委員会委員を長年務めた。また,講演大会では数多く

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会員のページ

熱処理 58巻 3号平成 30年 6月

の研究発表を行うとともに,座長,研究発表奨励賞選考委員も務めた。さらに,川上・赤見記念講演等など多くの依頼講演を行った。熱処理大学,サーモ・スタディーの講師も長年務めるなど,協会の運営に積極的な努力をしてきた。また,東京工業大学製造中核人材育成講座「金属熱処理スーパーマイスタープログラム」の講師を長年務め,金属熱処理技能士と金属材料試験(組織試験)技能士の実技試験における首席技能検定委員(埼玉県)も長年務めた。国際的にも,(社)韓国熱処理工学会の講演大会で過去 3回の特別講演を行い,国際熱処理会議「IFHTSE」でも多くの研究発表を行った。

Award for best poster presentation of 23rd IFHTSE Con-

gress,日本熱処理技術協会「技術賞(粉生賞)」,日本学術振興会 第 6回「プラズマ材料科学賞(技術部門)」,素形材センター 第 23回「素形材産業技術賞(中小企業庁長官賞)」,表面技術協会「技術賞」など国内外の数多くの賞を受けている。また,平成 24年 3月には日刊工業新聞社より「本当によくわかる窒化・浸炭・プラズマ CVD」(高機能表面改質法の基礎と応用)という書籍を出版している。以上のことから技術功績賞の受賞者としてふさわしいものと考える。

木キ

村ムラ

 勇ユウ

次ジ

 君

同君は昭和 43年 5月 10日に広島県に生まれ,平成 3年 3月に九州大学工学部鉄鋼冶金学科を卒業,平成 5年 3月に同大学院工学研究科鉄鋼冶金学専攻修士課程を修了した。同年 4月より九州大学工学部助手に採用され,平成 10年 12月に「メカニカルミリングによる超強

加工法を利用した鉄の結晶粒超微細化に関する研究」で九州大学より博士(工学)の学位を授与された。平成 11年 4月に旧金属材料技術研究所,現在の国立研究開発法人物質・材料研究機構に研究員として転じ,平成 13年 4月に主任研究員,平成 21年 4月に主幹研究員,平成 28年 4月に主席研究員に昇任し,現在に至っている。この間,一貫して結晶粒超微細化による鉄鋼材料の強靭化に関する研究開発に取り組み,基礎と応用の両面で優れた成果を挙げている。メカニカルミリングによる鉄粉末の超強加工と焼鈍・固化成形を組み合わせることで,平均フェライト粒径が 0.2 μm

の超微細粒鋼の創製技術を開発し,超微細粒鋼の引張変形特性を初めて明らかにした。さらに酸化物を分散した鉄のメカ

ニカルミリング処理では熱力学的に安定な酸化物が分解・非晶質化してその後の熱処理ではナノメータスケールで再析出するという現象を明らかにし,ナノ酸化物粒子を超微細粒鋼の組織制御に応用する技術を開発した。

2000 MPa級超高強度ボルトの実現を目標に掲げ,耐衝撃性と耐遅れ破壊特性に優れた超高強度低合金鋼の創製と成形・熱処理技術を開発してきた。とくに焼戻マルテンサイト鋼の温間加工(温間テンプフォーミング)を応用して超微細繊維状結晶粒組織を有する低合金鋼の創製プロセスを開発し,超高強度鋼の耐衝撃特性を飛躍的に向上することに成功した。また,超微細繊維状結晶粒組織を有する鋼において,従来の超高強度鋼が延性脆性遷移を示すサブゼロ温度域でシャルピー衝撃吸収エネルギーが増大するという“靭性の逆温度依存性”を見出し,その発現機構を解明した。さらに超微細繊維状結晶粒組織を有する温間テンプフォーミング材の温間成形技術を確立して耐遅れ破壊特性に優れた超高強度ボルトの創製に成功した。協会での活動としては,平成 25年度から学術研究委員会委員,平成 27年度から同副委員長,平成 29年度からは理事として,熱処理技術協会の運営に積極的に貢献している。以上のことから技術賞の受賞者としてふさわしいものと考える。

技術賞(粉生賞)受賞者紹介

本賞は,熱処理設備あるいは熱処理技術の発展,開発,改良に大きな業績を挙げ,将来を嘱望される正会員より選考し,賞状,

賞牌を授与します。

(128)熱処理 58巻 3号 平成 30年 6月

稲イナ

葉バ

 智ヒロ

一カズ

 君

同君は昭和 51年 12月 21日に福岡県に生まれ,平成 13年 3月九州大学大学院工学研究科を卒業後,同年 4月に高周波熱錬(株)入社,同社の研究開発部門にて,軸受鋼や球状黒鉛鋳鉄等,種々の素材について高周波焼入れにおける基礎データを収集し,金属組織学的視点から高周波

加熱特有の現象と適正な焼入条件を見出した。また,社内の高周波熱処理に関わるトラブル原因調査・対策業務にも携わり,問題の早期解決および安定生産に向けた活動に貢献した。生産技術面においては,入社間もない頃より熟練の高周波熱処理技術者と積極的に協働し,技術技能を吸収しながら,一方で加熱コイルに代表される高周波加熱のノウハウ部分について,体系的な教育資料を作成する業務にも尽力した。平成 20年から 1年間,自動車メーカーのエンジン部品生

産部門での経験を得た後,平成 21年に高周波熱錬(株)の

中部地区における開発試作拠点に配属となり,以降,金属組織学的知見と生産技術面での実践的経験を融合させ,多くの新規性の高い高周波熱処理方案を考案・実現し,量産立上げに貢献している。代表例として,直動レール部品の高生産性と低変形焼入れの両立を実現した熱処理方案確立や,多周波加熱技術の有用性検証および実用化への貢献,等が挙げられる。近年では,全社的な人財育成システム改善活動にも従事しており,本活動の一環として,更なる合理的な量産化プロセスを目指し,これを支える熱処理技術者育成を推進している。社外においては,平成 27年から中部金属熱処理協同組合主催チャレンジャー講座の高周波熱処理に関する講師を務めており,平成 28年からは金属熱処理技能士の検定講習会講師も担当している。また,日本熱処理技術協会中部支部主催のセミナーでは,高周波熱処理の基礎について度々講演を実施している。以上の業績と,将来に向けてさらに進化が期待されることは日本熱処理技術協会技術精励賞にふさわしいものと考える。

技術精励賞 受賞者紹介

本賞は,熱処理業務に 15年以上経験があり,熱処理に関する技術の向上,改善,技術管理,品質管理,省資源・省力化の

推進,技術者・技術者への教育活動などに精励された正会員より選考し,賞状,賞牌を授与します。

森モリ

戸ト

 茂シゲ

一カズ

 君

同君は平成 9年 3月に筑波大学大学院博士課程工学研究科を修了後,同年 9月まで日本学術振興会特別研究員として筑波大学に在籍し,同年 10月からは京都大学大学院工学研究科材料工学専攻に赴任した。その後,平成 17年 2月から島根大学総合理工学部へ異動し,平成

24年 4月に同大学大学院総合理工学研究科へ所属が変更され現在に至っている。同君は重要な焼入れ組織であるラスマルテンサイトに含まれる階層組織について結晶学的知見から解析を行い,単結晶に近い領域と考えられてきたブロック内に,組織的にも結晶学的にも異なる領域であるサブブロックが存在していることを示した。これらの組織の生成過程を考察するための研究も行っており,母相から組織が形成される際の結晶学的な規則を明らかにしている。他にもラスマルテンサイトの炭素量依存性についても研究を行い,階層組織の特徴や転位密度に対する固溶炭素量依存性を解明している。また,研究の知見を用い,階層組織間の結晶方位関係を用いた組織評価法を提唱した。

近年では,局所結晶方位解析とシリアルセクションと組み合わせた三次元組織解析により,ラスマルテンサイトの三次元的形態の定量評価も行い,粗大パケット内部に微細なパケットが内包されることやパケット境界が比較的平滑な界面で構成されていることなどを明らかにしている。また,極低炭素鋼ラスマルテンサイトのブロックは互いに絡み合う 2種類のサブブロックで構成されていることを示し,固溶炭素量の増加と共にサブブロック構造は目立たなくなり代わりにブロック同士が互いに入り組む構造を取ることを示している。ラスマルテンサイトの冷間加工組織の発達過程についても研究を行い,極低炭素鋼に対して等軸フェライトとラスマルテンサイトの加工組織を比較を行っている。その結果,ラスマルテンサイトにおいては加工初期でラス境界の消滅およびラス組織の分断が起こり,その後の加工により新たな転位組織が再構築されることを示している。また,加工組織とラス間に存在する残留オーステナイトフィルムに注目し,残留オーステナイトフィルムの有無やフィルム内の炭素濃度の違いにより加工組織が変わることを示唆している。これらの研究成果は,近年ますます重要性を増している鉄鋼の高強度化に関する重要な基礎的知見を与えるとともに,実用鋼の組織制御における原理構築への貢献も大きい。以上の業績から同君を技術賞にふさわしいものと考える。

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会員のページ

熱処理 58巻 3号平成 30年 6月

江エガ

頭シラ

 誠マコト

 君

同君は 1975年 3月 28日佐賀県に生まれ,2002年に九州大学大学院工学研究院博士後期課程を修了,同年より同大学院助教,住友金属工業(株)を経て現新日鐵住金(株)にて主として棒線特殊鋼の分野にて鉄鋼材料開発,熱処理プロセス開発に従事している。

九州・山口地区は当協会設立後長く西部支部の一部とされ地域独自の活動がなかった。そこで同地区の協会活動発展を目的に 2002年 4月九州大学・高木教授を支部長として九州支部が設立された。同君は同支部設立時に「事務幹事」を務め,幹事会,支部イベントの立ち上げから支部立ち上げに深く貢献した。一例として同支部が最も重要であると位置づける活動である「基礎教育セミナー」がある。これは地元熱処理企業の若手技術者を対象とした材料の基本知識から部材の作り方や評

価方法まで幅広く網羅した講義を行う九州地区初のセミナーである。同君は本セミナープログラム,テキスト,PRパンフレットの作成など立ち上げに尽力した。本セミナーは毎年30社を超える地元熱処理メーカーから 35名以上の受講生を迎えており,九州・山口地区の熱処理企業に対する若手技術教育プログラムとしてその地位を確立している。その後現在に至るまで長く幹事として支部運営に尽力しており,そのうち 6年間は事務局として深く運営に貢献している。この間,上記基礎教育セミナーの構成の一新(連続鋳造の追加,講義内容の流れを明快に改定等)に尽力しより受講生に有意義なものとするなど,さらに地元会員に貢献する発展に精力的に努めている。九州支部は地元工業会と合併を果たすなどして幹事団 20名超の構成となり,15年の活動で本講演大会を 4回,雑誌「熱処理」の支部編集号を 3度発行するなど支部としての運営を安定かつ活気あるものとしており,今後のますますの発展が期待される。以上のことから,精励賞の受賞者としてふさわしいものと考える。

椛カバ

澤サワ

 均ヒトシ

 君

同君は昭和 22年 4月 27日群馬県で生まれ昭和 45年 3月に防衛大学航空工学科を卒業,同年 4月にオリエンタルエンヂニアリング社に入社,技術次長を経て,昭和 58年(株)サンテック入社。その後昭和60年 3月に(株)日本テクノを創立,現在に至っている。同君は新会社で

当時の雰囲気炉では定番の炉前フレームカーテンを廃止した安全で環境性の高い独自構造の雰囲気炉を提案したが,前室を窒素パージする極めて密閉性の良い構造を採用したことから,結果として当時の炉では困難であった精密な炉気制御が容易となり,ユーザーニーズ等に応える中で主に窒化処理を中心に各種複合熱処理を開発し実用に供している。主な研究開発実績としては以下の 3つが挙げられる。

1.安全で環境対応に優れた各種雰囲気炉の開発;前述の炉前フレームカーテン構造を廃止し現場から火炎を無くしたことで熱処理工場の安全性が高まり,熱処理の夜間無人運転を可能とし,火炎や煤を生じないことで熱処理の現場環境を

著しく向上することができた。2.窒化を中心とした各種表面改質技術の開発と実用化;従来炉に無い炉内の高い密閉性から高精度な炉気制御が容易になり,窒化処理の高精度化,化合物層レス窒化,ガス浸流窒化,ガス軟窒化およびステンレスの窒化等,独自の高精度表面改質技術を開発し実用化に成功した。3.「浸窒焼入れ」の開発と実用化;窒素を鋼中に加熱拡散後焼入れして得られる窒素マルテンサイトは,早くから存在が認められていたが炉気制御の難しさ等で実用化されていなかった。同君は自動車メーカーと共同で上記雰囲気炉を使用して研究開発を続けた結果,安価な材料を使用し高精度な浸窒焼入れ部品の開発に成功し,現在も引き続き量産中である。協会での活動としては,同君は教育委員を二十数年の長きにわたり地道に活動をしている。また窒化技術に関してはサーモスタディー講師を 7年以上努め,窒化セミナー講師も複数回努めており「窒化研究会」「浸窒研究会」の委員も務める等,協会講師の重要な役割を果たした。また同君が中心になり海外講師による海外技術セミナーも開催している。以上のことから,同君は貢献賞の受賞者としてふさわしいものと考える。

貢献賞受賞者紹介

本賞は,熱処理あるいは関連する業務に 30年以上就き,本会の発展に実務的な面で顕著な功労のあった正会員より選考し,

賞状,賞牌を授与します。

(130)熱処理 58巻 3号 平成 30年 6月

竹タケ

内ウチ

 博ヒロ

次ツグ

 君

同君は,昭和 28年 3月 2日三重県四日市市に生まれ,昭和 52年 3

月に関西大学工学部金属工学科を卒業後日本電子工業株式会社に入社する。平成 14年 6月に取締役に就任,平成 24年 1月に代表取締役社長に就任して現在に至っている。この間,平成 15年には茨城大学理工学研究

科を修了し「鋼の外熱および中空陰極放電式プラズマ窒化と浸炭法の研究」で博士号を授与された。平成 19年 5月には関連会社のエヌ・デイ・ケー加工センター株式会社代表取締役社長に就任している。公職歴としては,平成 24年 5月に東部金属熱処理工業組合理事に就任,平成 27年 5月に技術委員会を担当する副理事長に就任,現在は会計を担当している。加えて平成 24年 6月に日本金属熱処理工業会の理事に就任,平成 27年 6月には同工業会技術委員会の委員に就任した。同君の主な業績としては,昭和 52年の入社以来プラズマ

窒化,プラズマ浸炭等のプラズマを利用した技術開発に携わり,プラズマ窒化に関する特許の取得,プラズマ窒化,浸炭に関する論文発表を行い日本国内のみならず,韓国,台湾など海外へのプラズマ窒化の普及に努め,今日のプラズマ窒化の基礎を築き上げた。1999年には(独)科学技術振興機構の「独創的研究成果育成事業」の委託を受け「プラズマ高速連続浸炭技術開発」を行った。熱処理業界においては,東部金属熱処理工業組合では技術委員会の担当副理事長として金属熱処理人材養成コース,初級・中級熱処理塾など人材育成を推進し,若手社員の育成に貢献した。また組合員企業の QCサークル活動,品質改善活動等の品質活動発表会を開催し品質改善の取組に貢献した。日本金属熱処理工業会では理事,技術委員会の委員として工業会の運営,活動に積極的に参加し熱処理業界の発展に貢献した。平成 27年 1月には,日刊工業新聞社第 32回優秀経営者顕彰「研究開発者賞」を受賞した。これらの重責を伴った同君の諸般の活動は,その優れた経営感覚と相俟って技術経営賞(赤見賞)に相応しいものと考える。

渡ワタ

邉ナベ

 貢ミツグ

 君

同君は昭和 30年 4月 6日福岡県に生まれ,昭和 51年 3月国立久留米工業高等専門学校金属工学科を卒業後,同年 4月九州高周波熱錬株式会社に入社した。一般熱処理および高周波熱処理技術を熱心に学び,多くの熱処理設備の導入に携わると共に,熱処理技術のみならず熱処理

周辺技術の研鑽にも努めた。その間,平成 14年 4月工場長,平成 19年 4月取締役工場長を経て,平成 23年 1月代表取締役社長に就任,現在に至る。この間 40年の長期にわたり金属熱処理技術の向上や業界の人材育成に尽力し,九州地域における熱処理工業の進歩発展に大きく貢献している。同君の主な業績は以下の通りである。◎技能士および技術者育成に関する業績九州金属熱処理工業会と九州熱処理技術研究会(研究会は

H26.3月に発展的解消し,関連事業は日本熱処理技術協会九州支部が継承)が共催する金属熱処理技能検定「準備講習会」

において,平成 22年~平成 29年現在にわたり講師の柱として貢献し,この間に約 300名もの資格取得者を輩出した。また,両会が金属材料や熱処理,試験評価方法に関する基礎技術の習得を目的として開講する金属熱処理「入門講座(現:基礎教育セミナー実習編)」においても講師を務め,九州地域における多くの若手技術者の育成に尽力している。◎業界団体における業績九州地域の熱処理専業メーカーで構成する九州金属熱処理工業会においては,平成 19年~平成 29年現在にわたり運営委員を務め,副会長・会長の重責を果たし,同時に九州熱処理技術研究会では,平成 19年~平成 25年にわたり幹事を務めた。日本熱処理技術協会九州支部においては,平成26年度から幹事を務め,九州地域における熱処理業界の発展に貢献している。以上により,同君の熱処理会社の経営者としての優れた手腕のみならず,地域における長年の人材育成に対する著しい尽力,熱処理技術の発展および関連団体への多くの貢献は,技術経営賞(赤見記念賞)の受賞候補者に値するとして,ここに推薦させていただく次第である。

技術経営賞(赤見賞)受賞者紹介

本賞は,正会員または維持会員の企業に属し,熱処理あるいは関連する業務を通じて顕著な業績をあげた経営者あるいはこ

れに準ずる者より選考し,賞状,賞牌を授与します。

(131)

会員のページ

熱処理 58巻 3号平成 30年 6月

技術功労賞 受賞者紹介

本賞は,熱処理あるいは関連する作業に従事して熟達した技能を発揮し,技術および生産性の向上に貢献した者,あるいは

卓越した技術をもって試験または研究に協力者として従事した者に授与する。同一企業体における技能経験が,熱処理関係の

作業で 25年以上,かつ関連作業を含めて 28年以上ある者から選考し,賞状,賞牌を授与します。

大オオ

河カワ

 裕ユウ

治ジ

 君

同君は昭和 38年 11月 20日に北海道に生まれ,昭和 57年 3月愛知県立豊田工業高等学校機械科卒業後,同年 4月アイシン・エィ・ダブリュ(株)(以下,AW)に入社,第 1工場熱処理に配属されガス浸炭焼入工程に従事してきた。

AWにて約 35年にわたり,オートマチックトランスミッション(以下,A/T)用ギヤ,シャフト,ベアリング部品のガス浸炭焼入れ工程で製造を担当し,熱処理技術・技能の向上と,徹底した品質・生産性向上に取組んできた。最近の 10年は,マイルド浸炭の開発メンバーとなり量産化を実現し,品質向上や設備信頼性向上に取組んできた。以下に,当該者が中心となって取組んだ事例と成果の一部を紹介する。1.油を使った 2段焼入れにて,焼入れ油の粘度管理を導入

油を使った 2段焼入れにて,現場による焼入れ油の定期粘度管理を導入し,油の焼入能安定化を図り,熱処理のバラツキ約 50%低減を成立させた。2.マイルド浸炭プロセスの量産化これまでに無い新プロセスに対して,自ら熱処理プロセスの理解と,下位者への教育を進め,良品条件を作業要領書へ標準化し,マイルド浸炭の量産化を成立させた。3.小型マイルド浸炭装置の信頼性向上マイルド浸炭装置の真空ポンプへオイルトラップ(吸気をオイルにぶつけ異物を吸着除去する装置)を導入し,異物侵入を 98.6%低減,真空ポンプ寿命を 17倍,真空浸炭炉の生産性(稼働率)を 86.0%から 99.2%へ向上させた。4.金属熱処理技能道場の設立,立上げ今までの経験で得た知識を教育マニュアルにまとめ,田原工場熱処理勉強会を立上げ部下の育成を実施してきた。更に,各工場に呼び掛けキーマン(講師)の育成を推進し,人事部と協力して『金属熱処理技能道場』を設立した。当該者が育てた講師が若手の育成に力を発揮し,現在では熱処理技能士を 155名に数える。

松マツ

尾オ

 政マサ

博ヒロ

 君

同君はトヨタ自動車に入社以来39年間一貫して熱処理部品の立ち上げ,設備の導入,工程改善に幅広く従事し,この間,卓越した技能により熱処理の技術革新に大きく貢献した。以下にその主な業績を示す。

1.連続式ガス浸炭炉の工程管理技術向上と標準化連続式ガス浸炭炉の大幅な生産性向上を狙った焼入ゾーンの別室化や省エネ化を狙った脱脂炉との一体化等の技術革新に対応するため,計測技術を駆使し,炉内雰囲気,温度を計測して調整方法を明確にし,安定した操業条件を確立することで製造品質の向上に貢献した。また長年の作業経験を通じ,連続式ガス浸炭炉の据付調整作業や工程管理要件のつくり込み手順を標準化した。特に計

測データに基づく良否判定方法や計測機器別の調整方法を国内外の連続式ガス浸炭炉の工程整備作業に横展し,工期短縮に大きく貢献した。2.鍛造残熱を利用した省エネ熱処理技術の確立焼入焼もどしや焼ならし処理の省エネ化と生産性向上を狙いに鍛造時の残熱を利用した鍛造調質,鍛造焼ならし処理を実現するために,熱間鍛造後の製品冷却速度や保持時間等の良品条件を明確化し,品質確保と省エネを両立したプロセスを確立した。特に品質の安定化に向け,操業データの取込装置を考案し,入力条件,加工点をリアルタイム表示することで,良品条件の設定作業を迅速かつ的確に判断できるようにした。考案した手法は標準化し,職場全体の技能レベル向上に大きく貢献した。また近年は管理者として社内の教育道場の開講から教育カリキュラムの整備を通し,人材育成の環境整備に努めるとともに未来を担う若手の育成にも尽力している。以上の業績から,同君は技術功労賞の受賞者としてふさわしいものと考える。

(132)熱処理 58巻 3号 平成 30年 6月

泉イズ

原ハラ

 隆タカシ

 君

同君は昭和 38年 4月 20日に大阪府で生まれ,昭和 62年 3月大阪工業大学工学部応用科化学科を卒業後,同年 4月に(株)東研サーモテックに入社,寝屋川工場で製造課,工業炉事業部,品質管理課に配属,タイ現地法人に出向後,平成 25年

より寝屋川工場で勤務,現在に至る。1.工場支援工業炉事業部勤務時に,三重工場立上げ(1989年)及び播磨工場立上げ(1991年)に従事,焼入れ設備,洗浄装置を含む付帯設備の設計,組立て,据付,設置後の調整等一連の業務により各工場に対する支援を行い早期立上げに貢献した。2.ISO認証

ISO9002認証取得工場の推進事務局として活動を推進,1

年の準備期間を経て品質システムの構築の為,営業・製造・

品質保証課の業務分析,要求事項に即した業務見直し,帳票類の再整備・内部監査員の養成を行い 2000年 4月に取得。その後,事務局として 2010年まで従事しシステム改善に努めた。3.客先との品質向上活動熱処理において,熱処理設備,工法等の品質改善だけでは解決出来ない諸問題について,主要客先と長年潜在化していた問題・課題の共有化を図り,前後工程も含めた品質向上活動を 2015年より実施し,工法等の変更を提案,客先図面への反映・生産工程の最適化を進め客先との信頼関係を深めた。4.海外工場での現地従業員育成タイ工場品質保証部門現地スタッフに対して,日本監査システムについてチェックシートを教材に教育,日系企業日本人スタッフによる監査時に実務指導を行った。5.人材育成(国内)

2010年まで熱処理技能士検定実技試験の検定員を 3年間務め,熱処理技術向上と技能士人材育成に取組んだ。

秋アキ

山ヤマ

 正マサ

稔ノリ

 君

同君は昭和 38年 4月 14日に佐賀県で生まれ,昭和 59年に国立久留米工業高等専門学校金属工学科を卒業した。同年,高周波熱錬(株)入社,IH事業部加工部刈谷工場に配属された。昭和 60年,現(株)ネツレンヒートトリートに配属されてからは,関連事業所の設立業務に

従事した。(株)平成 22年寒川工場工場長を経て,平成 25

年茨城工場竣工により茨城工場長勤務となり,現在に至る。この間,工業標準化品質管理推進責任者講習を受講し,ネツレン事業所の新規設立に従事した。ネツレンは関係会社において,高周波焼入以外にも浸炭焼入,真空焼入を実施している。同君はこれら,高周波焼入・浸炭焼入ラインの立ち上げ,

生産体制,品質保証体制の構築,現地採用従業員の指導・育成を行ってきたほか,ISO9001,ISO14001の認証取得を指導してきた。またこの間,転造ボールねじの高精度高周波焼入れ技術の改善,プラズマ浸炭炉を使用した高濃度浸炭技術の開発など,熱処理品質の向上を行った他,大型建機部品の自動焼入れ化など生産性の改善を指導した。これら多くの事例と経験から,平成 22年 4月高周波熱錬

(株)IH事業部加工部寒川工場工場長就任に伴い,東部金属熱処理協同組合理事に就任し,東部金属熱処理工業組合および日本金属熱処理工業会の活動に携わっている。2010年営業委員,2012年技術委員,2017年より東部金属熱処理工業組合技術委員会委員長として,人材育成講習会・技能検定講習会・初級,中級熱処理塾セミナーの講師を務めるなど,業界発展に携わっている。以上のことから技術功労賞の受賞者としてふさわしいものと考える。

(133)

会員のページ

熱処理 58巻 3号平成 30年 6月

穴アナ

澤ザワ

 典フミ

也ヤ

 君

同君は 1989年 7月 2日に東京都に生まれ,2010年 3月東京都立工業高等専門学校(現東京都立産業技術高等専門学校)生産システム工学科を卒業した。2010年 4月に株式会社上島熱処理工業所に入社した。入社以来,ソルトバス(塩浴)焼入工程を一貫して担当してきた。非

常に向上心が強く,当初から将来のソルト焼入工程の中核人材として嘱望され,現在は機械構造用合金鋼など上島熱処理内では比較的低い温度で焼入れを行うソルトバス炉の親方として,上島熱処理としては異例の早さで,工程を任されている。

担当している機械構造用鋼や軸受鋼など 800~ 900℃近辺の温度で行う焼入れは,高速度工具鋼(ハイス)やダイス鋼などの焼入性の良い鋼と違って,CCT曲線(連続冷却変態曲線)のフェライト・パーライト変態ノーズの位置がごく短時間側に存在するので,焼入時の冷却には特に配慮しなければいけない。焼入れの際には低温ソルトが冷却剤として使用されている。一定量の水を添加することにより,その冷却能が向上することが知られているが,その添加量を0.01 wt%単位で上手くコントロール出来ないと,大きな歪みや焼割れの発生に繋がる。社内で開発したソルト中の微量水分分析方法を利用して,製品の材質・寸法・形状に合わせて水分添加量を調整し,硬さが安定し,なおかつ歪みの少ない熱処理を実践している。これらの内容は「作業標準」として成文化され,社内 LANにより閲覧可能な「技能伝承テンプレート」にて後進の教育用資料として利用されている。

伊イ

藤トウ

 卓タク

也ヤ

 君

同君は昭和 58年 5月 21日に兵庫県に生まれ,平成 14年 3月に兵庫県立小野工業高等学校機械科を卒業。同年 4月に株式会社東研サーモテックに入社し,小野工場製造課に配属される。平成 18年に播磨工場製造課に異

動し,新規設備立ち上げを経験。平成 22年に小野工場製造課に異動,平成 24年に製造課主任となり現在に至る。主な業績は以下の通りである。

1.自動車用特殊ベアリングの熱処理治具改善高い寸法精度を要求されるベアリングの特殊熱処理において,処理後に真円度・反りを全数検査しているが,規格外品については修正は行えず不良品となるため,顧客,当社共に負担が大きくなる。その対策として,熱処理治具を汎用のアミカゴから専用ロストワックス治具に変更した。結果,寸法精度を改善,安定させ,装入量も 30% UPした。2.自動車シート用プレス製品の熱処理治具改善自動車シートのリクライニング部に使用するプレス部品を

熱処理しているが,熱処理歪を少なく抑える目的で,製品を吊り下げ且つ横揺れ防止のため,製品の下部を拘束している。そのため治具セットに工数が掛り作業者への負担が高くなっていた。新たに専用治具を作成することにより装入量 30%UP,治具セット時間 50%短縮し,作業者の負荷が大幅に軽減した。3.大型ガス浸炭炉導入支援平成 18年 11月,播磨工場に建設機械部品を効率よく処

理を行う目的に,当社初めてとなる大型のバッチ式ガス浸炭炉を導入した。設備搬入に合わせ播磨工場へ異動し,バッチ式ガス浸炭炉を保有していなかった播磨工場の従業員に設備の構造等を理解してもらいながら,共同で作業標準,運用のための各種基準・標準類の作成・整備を進めた。4.人材育成長期連休時に行う設備メンテナンス時には,設備の構造,管理方法等,設備メーカーや専門業者等に自身が納得できるまで質問する事で,自身のスキル向上を図り,その知識を若手社員への OJT教育に活かしている。また,QC活動でも職場の身近な困り事をテーマに取り上げ,メンバー全員が意見を出し合える雰囲気を作り,職場の活性化に注力している。

技術育英賞(足立賞) 受賞者紹介

本賞は,これから現場作業の中心になって活躍する若手技術者,技能者を励ますための賞です。選考基準として,①厚生労

働省技能士検定 1級以上の資格を持つ者,②年齢満 35歳以下,③勤続 7年以上,④維持会員企業からの推薦を受けた者(推

薦 1社 1名以内/年),⑤候補者は「私の抱負」と題する作文(400字以内)を添付することなどです。賞状ならびに奨学金 3

万円を授与します。なお,受賞者は「私の職場紹介」を行っていただきます。

(134)熱処理 58巻 3号 平成 30年 6月

三ミ

木キ

 泰ヤスシ

 君

同君は昭和 6年 9月 16日兵庫県に生まれ,昭和 29年 3月大阪大学工学部冶金学科卒業,同年 4月(株)東洋金属熱錬工業所入社。技術部長・高砂第 2工場長・(取)大阪工場長・常務取締役・監査役・顧問に就任。技術開発,品質保証,新工場建設から事務合理化まで経営全般に

わたり種々の業務を担当し,産業界各社における高水準製品の生産に寄与した。例えば防衛庁ジェット戦闘機国産化部品の熱処理,建築高張力ボルト開発,大型機械部品の浸炭焼入れ,棒鋼の低歪調質,コイル状線材の焼入れ,国産宇宙ロケット部品の熱処理などを主管した。熱処理工業会では,西部初代技術委員長,工業会副技術委員長に就任し,振興発展に努めた。また,1964(昭 39)年

労働省技能検定制度に「鉄鋼熱処理」が入った後,中央技能検定委員を 41年間継続。

1966(昭 41)年熱処理加工 JIS指定後,原案作成委員,審議制定委員として JIS補完の団体規格作成などを担当。当協会では 1978(昭 53)年の西部支部設立時から企画委員,幹事をつとめ,2001(平 13)年 12代支部長に就任,同時に本部理事,続いて 2011(平 22)年まで常務委員に就任し,不定期刊行物出版,会員増強,財務委員,50周年企画,50年史編集委員,協会賞選考委員をつとめ,技術育英賞,技術精励賞の新設に参画した。西部支部では支部長退任後も顧問に就任,以後の歴代支部長の要請を受け事務局補佐役として支部業務を支援している。

以上のような長年の業界および協会活動へのご尽力に敬意を表し特別感謝状を授与いたします。

冨フ

士ジ

川カワ

 尚ヒサ

男オ

 君

同君は 1964年 3月に早稲田大学第一理工学部金属工学科を卒業後,同大学大学院理工学研究科修士課程を卒業。1966年 4月より住友金属工業株式会社に入社し,中央技術研究所防食研究室にて腐食機構の解明及び新耐食・耐熱材料の開発に従事。1982年 9月に東京工業大学に

て工学博士号を授与された。その後 1989年より自動車材料専門部長として自動車材料全般の開発等の推進役を勤め,2000年 6月に住友金属工業株式会社を退社。2000年 9月よりアイルランドの Limerick

大 学 Material Science and Surface Engineering Div. の

Visiting Professorとして 2002年 10月まで従事。帰国後,2003年 4月よりエア・ウォーター株式会社顧問として表面硬化技術及び材料に関する指導・支援を行い,2010年 4月より子会社として独立したエア・ウォーターNV株式会社の顧問として同様に勤務し,現在に至る。傍ら,2006年には韓国昌南国立大学校新素材学部の客員

教授も 1年間歴任。一方,学会活動は本会日本熱処理技術協会をはじめ,金属学会,鉄鋼協会,腐食防食学会,日本化学学会等で活躍し,本協会の粉生賞はじめ数多くの論文賞及び功績賞を授与。また ASM International会員及び International Conference

on Diffusion in Solids and Liquids での発表及び表彰を受けている。現在 77歳になるが,本協会,腐食防食学会及び国際学会での発表を行い,学会活動に貢献している。

感謝状

(135)

会員のページ

熱処理 58巻 3号平成 30年 6月

平ヒラ

岡オカ

 泰ヤスシ

 君 パーカー熱処理工業

同君は平成 13年 3月埼玉大学工学部機械工学科卒業,平成 15年 3

月東京大学大学院金属工学専攻修了。同年 4月より大同特殊鋼(株)入社,同社の技術開発研究所にて機械構造用鋼や工具鋼に関わる研究開発に従事。平成 23年 6月からパーカー熱処理工業(株)に入社,同社

技術研究所にて主にガス窒化処理に関する設備開発・プロセス開発に従事。平成 29年 7月から同社設備営業部技術開発グループに異動し現在に至る。平成 28年 3月,博士(工学)(横浜国立大学)の学位取得。受賞対象は,以下の通りである。題目:ガス窒化処理した SCM435鋼の回転曲げ疲労強度に及ぼす表面化合物相の影響掲載:57巻 2号 64ページ概要:著者らは,ガス窒化した SCM435鋼では化合物層がε相よりも γ′相で構成される方が回転曲げ疲労強度が高いことを報告した(中島ら:第 78回日本熱処理技術協会講演大

会)。しかし,γ′相が回転曲げ疲労強度を高める理由については十分に明らかにされていないこと,また化合物層レスとの比較検証を得ておらず,ガス窒化処理した SCM435鋼の回転曲げ疲労強度に対する表面層の設計指針は十分に得られていなかった。そこで,SCM435鋼を用いた雰囲気制御ガス窒化・ガス軟窒化処理により γ′相,ε相,α相(拡散層のみ)と異なる 3種類の表面層を有する供試材の回転曲げ疲労強度を評価すると共に,化合物層の特性(相構造,結晶粒,残留応力,ポーラス構造)および回転曲げ疲労試験後の初期亀裂の観察を実施し,以下の知見を得た。化合物層形成材は化合物層無し材よりも高い疲労強度を示し,γ′相の場合において顕著であった。化合物層は,拡散層より高い降伏強さと大きな圧縮残留応力を示すことから,初期き裂抑制効果がある。ε相,γ′相いずれにおいても複数の微小き裂形成により,主き裂先端の応力集中を緩和し,疲労強度を高める。さらに,γ′化合物は,ε化合物よりも大きな表面圧縮残留応力に加え,塑性変形を示し,かつ微細結晶粒であることから,微小き裂成長の抑制に有効である。したがって,γ′化合物は,脆性的き裂成長を示す ε化合物よりも表面き裂発生抵抗が大きく,高い疲労強度を示す。

論文賞 紹介

本賞は,学会誌「熱処理」に投稿された学術論文,技術論文を対象に,毎年度優秀な内容を持つ論文を著わした正会員,学

生会員,外国会員より選考し,賞状,賞牌を授与します。

張ジャン

 咏ヨン

杰ジエ

 君 東北大学金属材料研究所

同君は昭和 63年 9月 17日に中国上海市に生まれ,上海交通大学学部を卒業後,平成 23年 10月に来日し,東北大学大学院工学研究科博士課程に入学した。博士課程の 5年間に,主に三次元アトムプローブを用い,鉄鋼材料におけるナノ析出およびその強化に関する研究を取り組

んだ。平成 26年に日本学術振興会特別研究員(DC1)として採用された。平成 28年 9月に博士課程を修了後,同年 10

月からは東北大学金属材料研究所に助教として就任し,現在に至る。博士課程研究内容の一部は「熱処理」において口絵としても公開している。受賞対象は,以下の通りである。題目:相界面析出したフェライト粒の結晶学的特徴・ナノ析出組織・局所力学特性の関係解明掲載:57卷 1号 1ページ

概要:Ti,Nbあるいは Vを添加した鋼においてオーステナイトからのフェライト変態時に,移動するフェライト・オーステナイト相界面で合金炭化物が周期的に核生成することにより,炭化物がシート状に分散する相界面析出現象が,近年自動車用鋼板の高強度化に利用されている。本稿では Fe-

0.1%C-1.5%Mn-0.05%Si-0.4%V合金を供試材とし,電子後方散乱回折法や,三次元アトムプローブ,ナノインデンテーションを併用ことで,等温変態で生成したフェライト粒の結晶学的特徴,ナノ合金炭化物の分布および析出分散強化の関係を解明することを目的とした。アトムプローブの結果によると,特定な結晶方位関係を持つ整合性の良いフェライト・オーステナイト界面で合金炭化物の相界面析出が抑制され,それによってフェライトの粒のナノ硬さも低下することが明らかとなった。この結果により,合金炭化物の相界面析出を利用した低炭素鋼の高強度化では,特定な結晶方位関係を持たない整合性が悪いフェライト・オーステナイト界面が析出物の微細分散化に必要であることが明らかとなった。

口絵写真賞 紹介

本賞は,学会誌「熱処理」に掲載された口絵を対象に,毎年度優秀な内容を持つ口絵を著わした正会員,学生会員,外国会

員より選考し,賞状,賞牌を授与します。

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