ブラッドアクセススライド

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Health & Medicine

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ブラッドアクセススライド 割石

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ブラッドアクセスに工夫をくわえた3症例

割石 精一郎

山下 幸一,阿部 秀宏,矢田部 智昭,

横山 正尚

高知大学医学部附属病院 集中治療部

はじめに

 集中治療領域において,補助循環療法・血液浄化 療法は,要となる治療手段のひとつであり,アクセス ルートとして大腿動・静脈が頻用される.その血管操作 のアイデアと工夫で,救命とともに下肢トラブルの 予防と救肢可能な症例があると考えられる.  今回,ブラッドアクセスに一工夫した3症例を紹介し, 考察をくわえる.

症 例 1 73歳,女性. 患者:

主訴:

既往歴:

現病歴:

発作性心房細動 (内服加療中), 高血圧,高脂血症

呼吸困難

 4年前,閉塞性肥大型心筋症,発作性 心房細動を指摘され,内服加療されていた.  歯科治療後帰宅中,突然の胸部違和感の あと,呼吸困難をきたした.胸部X線写真で 肺うっ血を認め,急性心不全の診断で 緊急入院となる.

診断 ; 急性僧帽弁逆流,急性心不全 閉塞性肥大型心筋症.

現症 身長 147.6 cm,体重 65.6 kg, 血圧 122/70 mmHg ,脈拍 92 /分(整),体温 36.4 ℃ ・

頸静脈怒張,両下腿浮腫

心音 ; 心尖部 Levine IV/VI 汎収縮期雑音 呼吸音 ; 両側湿性ラ音  腹部 ; 異常を認めず

血液検査所見

AST ALT

Crn BUN UA

BNP

96 71

1.01 44.0

8.8

964.0

U/l U/l

mg/dl mg/dl mg/dl

pg/ml

pH pO2 pCO2 HCO3

-

BE

O2 SAT

7.384 63.3 37.1 22.2

-2.4

90.0

mmHg mmHg mmol/L mmol/L

%

ABG(Room air)

心電図

胸部X線写真

経胸壁心エコー検査

LA

LV

LA

LV

手術 僧帽弁置換術(Carbomedics #27) 三尖弁輪形成術

人工心肺離脱時より, 淡血性水様泡沫痰が 15分間に約1000ml

換気不全

直視下にFA, FVに カニュレーションし,

PCPS 導入

症例1 PCPS 導入後末梢側下肢灌流

FV 脱血 FA 送血

浅大腿動脈から 末梢側にむけて 下肢灌流

術後経過

PCPS 離脱 術後第1病日 ;

術後第5病日 ;

術後第17病日 ;

術後第32病日 ;

術後第28病日 ;

術後第78病日 ; 独歩リハビリ目的転院

DDDR 永久ペースメーカー挿入

胆嚢摘出術 (壊死性胆嚢炎)

CHDF 離脱

気管切開

術後第38病日 ; 人工呼吸器離脱

症 例 2 56歳,男性. 患者:

主訴:

既往歴:

現病歴:

特記すべきことなし.

発熱

 4日前, 38℃の発熱,頭痛,筋肉痛が出現. 咳嗽,血痰のため近医を受診した.血圧低下, 肺うっ血を認め,当院へ救急搬送後, 急性心不全の診断で緊急入院となる.

診断 ; 劇症型心筋炎

現症 身長 167.8 cm,体重 53.0 kg, 血圧 78/40 mmHg ,脈拍 135 /分(整),体温 38.6 ℃ ・

発汗著明,淡血性泡沫痰

心音 ; Gallop rhythm 呼吸音 ; 両側湿性ラ音  腹部 ; 異常を認めず

血液検査所見

AST ALT γGTP T-bil LDH CPK

CRP

163 56

209 1.2

694 476

18.2

U/l U/l U/l mg/dl U/l U/l

mg/dl

pH pO2 pCO2 BE

7.480 57.3 27.7 -2.4

mmHg mmHg mmol/L

ABG (10L リザーバーマスク)

心電図

aVR

aVL

aVF

V1

V2

V3

V4

V5

V6

WBC Eosino

7700 0.0

/µl %

トロポニンT 7.44 ng/ml

気管内挿管

入院後経過

収縮期血圧 40台に低下 ・

経胸壁心エコーで びまん性壁運動低下 (EF約10%)

IABP挿入し,冠状動脈造影

→PCPS 挿入 ・

オーグメンテーション圧 60台

PCPS カニューラ挿入側下肢冷感が顕著となる.

→patent coronary

症例2 PCPS 導入後末梢側下肢灌流

FV 脱血 FA 送血

浅大腿動脈に 穿刺法で 末梢側にむけて 下肢灌流

経過 PCPS 離脱(EF 20%) 第2病日 ;

第5病日 ;

第4病日 ;

第19病日 ; 独歩自宅退院

CHDF 離脱

IABP 離脱(EF 40%) 第6病日 ; 人工呼吸器離脱(EF 50%)

PCPS , IABP, カテコラミン, 利尿剤 治療 ・ ・ CHDF ・

γグロブリン(75gx2 2日間) ・

抗生剤

症 例 3 診断 ; 右下肢急性動脈閉塞

79歳,男性. 右下腿疼痛・冷感

閉塞性動脈硬化症,糖尿病 右内頸動脈閉塞・左内頸動脈狭窄

3年前,右浅大腿動脈閉塞に対し, 右F-Pバイパス術を施行. 術後,他院にて経過観察されていた. 3日前,急に歩行不能になるとともに 右下腿の疼痛が出現. 激痛・冷感が耐えきれなくなり緊急来院.

患者:

現病歴:

主訴:

既往歴:

現症 身長 166.1 cm,体重 54.1 kg , 血圧 170/80 mmHg ,脈拍 101 /分,体温 37.0 ℃

胸部 / 腹部には理学的所見に異常を認めず.

右下肢 斑紋状チアノーゼ,冷感,腓腹筋痛, 下腿部軽度筋腫脹,

右大腿動脈以下末梢動脈拍動 ; 触知不能 ドプラー血流聴取不能

血液検査所見

mg/dl mg/dl mg/dl mg/dl

% mmHg mmHg mmol/L

TP ALB T-BIL ALT AST ALP γ-GTP LDH CPK

CRN BUN UA CRP

PT-INR トロンボテスト

RBC Ht HB PLT WBC

7.8 4.0 0.4 59

158 419 37

313 6660

0.63 13

4.1 7.4

1.04 >200

423万 39.4 12.9

36.6万 11700

ABG pH pO2 pCO2 BE

7.453 101.0 37.9 2.6

尿所見 ポートワイン色調

g/dl g/dl mg/dl U/l U/l U/l U/l U/l U/l

/µl % g/dl /µl /µl

手術

血栓除去 再F-P バイパス術

膝窩動脈

末梢側血栓除去

大腿動脈

閉塞人工血管

症例3 血流再開前導入 CHDF 回路 患肢大腿静脈露出・遮断

↓ 患肢大腿静脈末梢側に向けて

脱血カテーテル挿入, 健側大腿静脈に返血カテーテル挿入

↓ CHDF 開始

↓ 血流再開

患肢大腿静脈遮断

遮断末梢側に 脱血カテーテル 血流再開直前に

methylprednisolone 1g 投与 ・

・ 血流再開 90分後に血液検査. その後,大腿静脈遮断解除.

血液検査所見の推移

CPK [U/L]

S-K [mmol/L]

BE [mmol/L]

2000

8000

6000

4000

3

4

5

- 4

0

4

入院時

大腿静脈 遮断解除前

CHDF離脱 (術後3日目) 術後4日目

術後1日目

術後7日目

術直後

術後2日目

2.2 3.6 3.8 4.7

4.2 3.8 4.0

4.7

6660

3961

4804

8003

2998

1666

2351

393

下肢の循環不全

下肢の温度・色調

末梢皮膚灌流圧

症例ごとの綿密な観察

未然にトラブルを回避する �アイデアと実行

症例背景を考慮した�時を逸さない医療介入

コンパートメント内圧

CT・MRI 画像 など

ま と め

ブラッドアクセスに工夫をくわえ,救命とともに 下肢トラブルが回避できた症例について 検討をおこなった.

下肢循環不全の診断基準の設定や モニタリングの開発などが必要となってくる とともに,症例背景を考慮した綿密な観察と 時を逸さない医療介入が重要である.

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