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Post on 13-Jul-2020

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61 Best Practices Collection 2018

建設業

製造業

情報通信業

運輸業・郵便業

卸売業・小売業

金融業・保険業

教育・学校支援業

宿泊業・

飲食サービス業

宿泊業・

飲食サービス業

ダイバーシティ経営の背景とねらい

「1日 100食限定」の飲食店で仕事と家庭を両立できる働き方を目指す株式会社minitts(以下「同社」)は、2012年に創業、「1日 100食限定のお店」というコンセプトの飲食店を 3店舗展開している。創業のきっかけは、元々会社員であった社長が、会社員時代に残業や遠方出張などの多忙な毎日を過ごすことで、妊娠・出産・子育てと仕事の両立が出来そうにないと実感したことにある。子育ても仕事も両立できる飲食店があまりに少ない中で、飲食店でも両立できる環境を実現したいという強い想いから、1日 100食限定のコンセプトを考え出し、夫婦で会社員を辞めて 2012年に起業し、「佰食屋」をオープンした。100食限定のお店にすることで、飲食店の長時間労働を改善することができると考えた。ランチタイムで 100食売り切れれば、夕方には片付けや翌日の仕込みが終わって帰宅することができる。そのため、現在は正社員 9時~17時 45分勤務、短時間正社員は 9時 30分~17時勤務で、全ての社員が残業無しという勤務体系を作り上げている。

SNSを活用した戦略により来客数が大幅に増えるも人材不足が課題同社では、社長が前職で広報を経験していたことからプロモーションに力を入れており、当時 SNSが流行り始めた時期でもあったことから、旅行客の多い京都では SNSによる口コミが重要と考え、写真映えのために、食器、盛り付けに意識して取り組んでいた。こうした取組が功を奏し、オープンした 2012年 11月 29日(いい肉の日)から 1ヶ月後の 12月の末に、来店客のブログに佰食屋が紹介され、大手ポータルサイトのトップ画面に載った。掲載された次の日から、それまで 20~30人程度であった来店客が 70~80人程に一気に増えた。そのため、社員の採用が急務となり2013年の 1月から採用をスタートした。しかし、飲食店といえば「長時間労働、低賃金」「土日祝日は休めない」

「子どもの運動会や参観日に行けない」というマイナスなイメージが定着しており、求人への応募者数が年々減少している状況や、離職率が高い状況にあるため、そういったイメージを払しょくし、「この飲食店なら働きたい !」と思ってもらえるような抜本的改革が必要と考えた。また、京都は外国人観光客が年々増加しており、外国人を含む全ての方々

に京都ならではのおもてなしを味わってもらうために、外国語が話せる人材や外国人対応を得意とする人材も必要であった。

ダイバーシティ経営推進のための具体的取組

多様な人材を積極的に採用するための短時間正社員制度の導入と業務の標準化採用当初は、万が一ランチで売り切れない場合を考慮して、ハローワークの求人票の就労時間を所定労働時間 8時間(9時~20時、休憩 3時間)としていたが、飲食店の中では拘束時間が短い求人に非常に人気が集まるため、中々応募者が集まらない状況が続いた。そんな中、アルバイトとして既に雇っていた優秀なシングルマザーの Aさんが正社員になりたいという要望を持っていることを知ったことや、アルバイトの面接に来るシングルマザーから正社員の面接にどこも通らなかったという話を聞いたことを契機に、シングルマザーを積極的に正社員として採用していきたいと考えた。Aさんは 18時までのフルタイムの勤務が難しかったため、2015年 4

月頃にアルバイトから正社員になるタイミングで 17時までの勤務となる短時間正社員の制度を整備した。同じタイミングで、よりシングルマザーの目に留まるようにという意味も込めて、ハローワークの求人票の就業時間を所定労働時間 8時間で残業無し(9時から 18時まで)に変更し、マザーズハローワークに出向いて担当者に積極的に採用するため紹介してほしい旨を伝えると、その後は求人を止める必要があるほど応募が殺到した。また、同社の採用基準として、境遇やスキル等は関係ない。最も重要視

していることは、配属される店舗のメンバーとの相性であり、店舗の輪が乱れてしまうことが無いように配慮している。一方、どんな年齢、性別であっても誰でも仕事ができるように業務を標準化している。例えば、レシピについてはグラム単位で規定しており、白米であってもお茶碗一杯というような記載はせず、スケールを置いて毎回グラムを測るようにしている等、感覚に頼らないことで、社員が迷わないようにしている。接客についてもメニュー表は片面写真付きで 3種類から選ぶ形で、言語は日本語の他、英語、中国語、韓国語を併記しているため、社員は説明しやすく、来店客からも分かりやすい。そのため、アルバイトで出勤した当日から接客できる形となっている。こういった取組により、飲食店で働きたいという意志を持っているが、

時間に制約があるため働きたくても働けなかった人や、飲食店未経験者を採用できるようになった。短時間勤務を希望する高齢者や障がい者、外国語を話せる飲食店未経験者の採用にも繋がっている。

背 景

・「1日 100食限定」の飲食店で仕事と家庭を両立できる働き方を目指す・SNSを活用した戦略により来客数が大幅に増えるも人材不足が課題

取 組

 「飲食店で働きたい」という強い想いを持ったシングルマザーや障がい者を積極的に採用・活用するために以下の取組を推進・短時間正社員制度の導入・突発的な欠勤等に対応可能な余剰人員の確保、業務を代替可能とするための研修、業務の標準化の実施・周りの社員の理解と協力を促すための仕組み作り(定期面談、社長のメッセージカードの配布等)

成 果

・人材不足の解消 (正社員数 2013年度 2名→ 2018年 2月時点 14名)・売上の増加(2013年度 3,000万円→ 2017年度 1億円)・店舗拡大の実現(2017年 3月に 3店舗目をオープン)

企業概要会社設立年 2012年資本金 5百万円本社所在地 京都市下京区船頭町 187番地事業概要 飲食店(定食屋)売上高 100百万円(2017年 8月期)

従業員の状況総従業員数 28(14)人女性 20(7)人外国人 0(0)人チャレンジド 1(1)人高齢者 3(0)人平均勤続年数 2.5 年

男性 3.0年 女性 2.0 年

※( )内は正規従業員数

ダイバーシティ経営推進のストーリー

株式会社minitts 京都府長時間労働の常態化により人材不足が深刻な飲食業界の働き方を変えるべく、「1日 100食限定」の飲食店を展開し、多様な人材が活躍できる環境を整備することで、人材不足の解消・斬新な働き方・売上拡大を実現

対 象

女性 外国人 障がい者 高齢者

キャリア・スキル・経験 限定なし その他

取 組

役員層の多様化

経営会議等への社員参画

柔軟な働き方の整備

評価・報酬・登用基準の明確化

管理職の行動・意識改革

研修やスキル取得環境の整備

キャリア形成意識の醸成

資金調達や人材確保のための情報発信

中小企業

62Best Practices Collection 2018

▲ 調理方法が標準化されており、年齢や性別を問わず業務を行うことができる

突発的な欠勤等に対応できる体制の整備特にシングルマザーは、子どもの突然の熱等で休むことがあるため、飲食店では採用が難しいと言われている。そのため、同社では、急な欠勤の場合に代わりに勤務できるよう、全店

舗で必要な人数 +1~2名多く採用するようにしている。店舗は、意図的に近隣を中心に展開しており、食材の流通、人の工面が効率的に行えるようにしている。また、土日には授業参観や各種イベントが重なることが多いことから、

土日だけ働ける学生アルバイトを雇っている。これにより、シングルマザーだけでなく、どんな社員でも様々な理由で休む時に罪悪感を抱かなくなる上に、全社員が有給休暇を取得しやすくなっている。その結果、有給休暇取得率は 82%(2017年実績)となっており、休みが取りにくいと言われている飲食店においては高い水準となっている。さらに、1つのポジションの仕事を最低 2人は代わりが出来るよう、研修期間を設けて指導している。研修について社長はあまり関わらないようにしており、人に教える楽しさを学んでもらうために各店長や現場に任せるようにしている。研修はアルバイトを含め全社員が対象で、接客の方が厨房の練習をしたいといった場合、普段の業務時間内に互いに教え合う形である。特定の人しか出来ない仕事を無くすことで、社員の精神的な負担の軽減や、急な休みや有給休暇取得の際の仕事の引継ぎがしやすくなった。

▲ 役割の違う社員同士で研修を実施することで、属人的な業務が減り、休暇を取得しやすくなっている

周りの社員の理解と協力を促すための仕組み作り多様な事情を持った方が活躍するためには周りの社員の理解と協力が必須と考えている。そのため、半年に一回、社長と社員で面談を実施し、それぞれの事情や要望、ワークライフバランスを保てているかどうかをヒアリングしている。また、各店舗店長とは 2か月に 1回の面談を実施して

いる。店長との面談においては、通常の飲食店では売上等販売面の話題が多くを占めると思われるが、同社の場合は社員が『楽しく働いているか』の確認を主に行っている。加えて、同社では毎月の給与明細を渡す際に必ず社長のメッセージを渡している。メッセージは、例えば急な休みが多い社員がいる場合、その理由やその分他で貢献したこと等、社員間で互いの事情の理解を促進させるような内容としている。

ダイバーシティ経営による成果

人材不足の解消と多様な人材の活躍による売上の増加、店舗の拡大を実現取組を進める中で、ハローワークの担当者がシングルマザーや障がい者の中でも優秀な人材を積極的に紹介してくれるようになった。また、飲食店では珍しいと言われる多様な人材の採用と活躍が話題となり、多くのメディアで紹介されるようになったことで、同社が「働きやすい飲食店」という知名度を上げることができ、働きたいという人が増えた。求人を出すとすぐに応募が集まるため、さらに優秀な人材の獲得が進み、また意欲が高い方が来るため離職する人数も減少している。離職率については 2015年度 7.1%、2016年度 6.2%と定着が進んでいると考えている。多様な社員から多様なアイディアが生まれることで、来店客の幅も広

がっている。シングルマザーや未就学児を育てている社員の意見をヒアリングし、ベビーチェアや子ども用の食器、子ども用の無料のご飯サービス等を始めたことで、これまでよりも未就学児を連れた家族の来店が増えた。また、障がい者の社員がいることで、全社員が障がい者の来店客への対応をさらにきめ細かくできるようになり、障がい者の方(車いすや義足の方)のリピーターが増えた。また、働きやすい環境を整備したことで、韓国語を話せる社員を採用できたため、韓国人を中心に口コミが海外にも広がり、一時期は来店客の 9割が韓国人となる程外国人が増えた。結果として外国人観光客が前年対比 1.3倍まで増加した。多様な人材が活躍することで、2012年 11月 29日に 1店舗目(国産

牛ステーキ丼専門店)を開店して以来、2015年 3月に 2店舗目(すき焼き専科)、2017年 3月に 3店舗目(肉寿司専科)を OPEN、売り上げも年々増加しており、年商は 2013年度の 3,000万円から 2017年度 1億円と、右肩上がりで成長を続けている。それに伴い、社員の採用人数も増やすことができ、正社員数は 2013年度の 2人から 2016年度 10人、2018年 2月時点で 14人となっている。

ダイバーシティ経営の今後の展望

多様な人材が活躍できる工場の設立今後の拡大について、店舗ではなく、お弁当事業に取り組もうと考えている。駅弁を作るための人材育成を進めている。お弁当事業を考えた理由として、接客がどうしても苦手な人の中には優秀な人も多いため、活躍できる場所はないかと考えたからである。当該事業は、お弁当の調理だけでなく、既存店舗との連携を図るため、店舗の仕込み作業を行うことも考えている。これにより、店舗の調理作業の効率化が可能となるため、料理提供のスピードアップによる顧客満足度の向上や店舗社員の労働時間の削減により、さらに効果的な経営が可能となると考えている。

「働き方のフランチャイズ」による飲食業の意識改革同社では、社員の顔を見ながら働ける範囲がよいと考えているため、京都以外で行う予定はない。ただし、同じように飲食店で仕事と生活を両立した働き方をしたいという志をもった方には是非広げていきたいと考えている。100食というコンセプトであれば、カフェや郷土料理等、どういった種類のメニューでも対応でき、その土地の食であれば何にでも適用できる。例えば、北海道なら「佰食屋ジンギスカン専科」といった形である。同社では、各都道府県に同じ働き方の飲食店が一店舗でもあると、地域の他の飲食店にも影響があるのではないかと考えているため、「働き方のフランチャイズ」という考え方で世の中の飲食業界の働き方を変えていこうとしている。

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