新規治療薬としての成長因子 プログラニュリン変異 …...出血抑制...

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新規治療薬としての成長因子

プログラニュリン変異体の開発

新潟大学脳研究所神経内科 准教授

下畑 享良

出血抑制

神経細胞保護

炎症抑制

成長因子プログラニュリンは夢の治療薬

Brain 2015

ミクログリア

ラット自家血血栓塞栓モデル(Okubo et al. 2007)

ヒト脳梗塞類似モデル

ラット血液+トロンビン混入

中大脳動脈閉塞をエコーで

確認後,tPA 静脈投与

(10 mg/kg)

tPAとプログラニュリンの併用療法の効果

tPA 4h tPA 4h + マウスrPGRN(100 mg)

脳出血

Brain 2015; 138:1932-48

血管保護+脳梗塞サイズ縮小に成功

tPA投与血栓塞栓モデルにおけるPGRNの効果

梗塞サイズ縮小脳浮腫サイズ縮小 脳出血著明減少

Brain 2015; 138:1932-48

脳保護効果と薬効メカニズム

神経細胞保護: TDP-43 機能維持

血管保護: VEGF 抑制

抗炎症: IL10 維持

1.強力な血管保護作用脳出血抑制効果は抗VEGF抗体より強力

2.多面的な脳保護作用抗浮腫効果,神経保護効果,抗炎症作用

3.同様の機序をもつ競合薬剤なし

4.内在性成長因子,副作用は出にくい

PGRN の利点

PGRNは脳梗塞に対し,多彩な機序で保護的に

作用する,従来にない治療薬になる可能性が

ある.

小括1

• 細胞増殖や創傷の治癒に関わる成長因子

• ミクログリアのリソソームの生合成を阻害して,

脳内の炎症を抑制する

• 神経栄養活性をもつ

遺伝子変異 → 前頭側頭型認知症

PGRN とは何か?

PGRN 量が半減すると認知症になる

アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症への関与

PGRN 遺伝子治療はアルツハイマー病に有効

Nature Med 20, 1099–1100 (2014)

ミクログリアが重要

急性腎障害モデルでの有効性が報告された(2016)

• エンドトキシン(LPS)誘発性急性腎障害モデル

• PGRN KOマウス ➔ 重症化(アポトーシス,炎症)

• PGRN前投与によるアポトーシス,炎症の軽減

自己免疫疾患でも注目される

疾患 PGRNの役割 メカニズム

関節リウマチ 進行を抑制 Treg誘導,IL-10誘導

骨関節炎 進行を抑制 TNF受容体阻害

炎症性腸疾患 抗炎症作用 Treg誘導,IL-10誘導

乾癬 抗炎症作用 Treg誘導

糖尿病 インスリン抵抗性 IL-6誘導,REストレス等

SLE 疾患重症度に相関し増加 不明

強皮症 皮膚に沈着 血管新生抑制

ぞくぞく明らかになる疾患への PGRN の関与

プログラニュリン(炎症抑制)

グラニュリン(炎症促進)

エラスターゼ

なぜ PGRN に2面性があるのか?

➔ PGRNの2面性を説明可能

ミクログリアにおけるリソソームの生合成阻害

JCB 2016; 201: 991-1002

• PGRN/GRNは,脳梗塞のみならず,複数の

疾患において治療薬,もしくは反対に治療

標的となる.

• この背景にはPGRNの2面性が関連するもの

と考えられる.

小括2

• 血栓溶解療法用の組み合わせ製剤(特願2013-205072)

• 虚血後の再灌流に起因する出血を予防するための薬剤(PCT/JP2014/076117)(特願2013-205072に基づくPCT出願)

野生型 PGRN の脳梗塞に対する知的財産権

• オープンイノベーションTaNeDSより支援をいた

だき,組み換えヒトPGRNを用いた共同研究を

行った.

• ラット一過性虚血モデルで,第一相臨床試験

に進むだけの結果は得られなかった.

• 各国への外国出願の費用が確保できず,

開発を断念した.

特許出願後の研究開発

ミクログリアから放出されるエラスターゼによる切断 ➔ 炎症性グラニュリンの産生

日本医療開発研究機構(AMED)による支援

• AMED 創薬ブースター支援事業に採択

• お茶の水女子大生命情報学教育研究センター

由良敬センター長(バイオインフォマティクス)

• エラスターゼ耐性変異体コンストラクト 8種類

➔ カイコにてタンパク合成し,消化実験

エラスターゼ分解を免れる変異体作成

エラスターゼ反応後

複数の変異体の開発に成功

• 改変プログラニュリンタンパク質,核酸,ベクター,

医薬及び医薬組成物

• 特願2016-188174

• 出願日:平成28年9月27日

新たな知的財産権

PGRN変異体の利点

好中球エラスターゼによる分解に耐性を示す

PGRN変異体の開発に成功し,物質特許を

出願した.

小括3

1. PRGNを治療研究に用いる場合,糖鎖修飾が

機能に影響する可能性がある.

2. 適切な翻訳後修飾を得るため,ほ乳類細胞で

あるCHO細胞の浮遊培養によりタンパク大量

発現を行い精製したい.

3. この作成費用の研究費を取得できていない.

プロジェクトに関わる費用

1. 共同で開発を行うパートナーを探している(CHO細胞,

糖鎖).早期にタンパクを作成し,変異体の効果を確認

ができれば,PCT出願にてデータの追加を行いたい.

2. 特許が標的とする脳梗塞に関して,良好な結果が得ら

れれば,協議の上,各国への外国出願を行いたい.

3. その他のすでに確立した疾患モデルでも,効果を確認

していただき,同様に特許の取得をめざしたい.

企業への期待

変異PGRN(CHO細胞・糖鎖)

脳梗塞認知症

多発性硬化症膠原病

急性腎障害など

確立した疾患モデルで評価薬効薬理試験薬効メカニズム

小括4

優先すべき疾患の同定

第一相臨床試験

知的財産取得

新潟大学地域創生推進機構

(担当:林、粟野)

TEL 025-262 - 7554

FAX 025-262 - 7513

E-mail onestop@adm.niigata-u.ac.jp

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