計画とは何か? -...

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計画とは何か?

―計画の概念と構成要素―

環境計画概論第2講 Oct.13, 2011

1.計画とは何か?

2.環境計画とは何か?

3.環境計画の要素の考え方

4.総合的な計画としての環境基本計画

福島大学共生システム理工学類 後藤 忍

1. 計画とは何か?

2. 環境計画とは何か?

3. 環境計画の要素の考え方

4. 総合的な計画としての環境基本計画

「計画」とは何か? 計画の使用例:

環境基本計画、全国総合開発計画、国連環境計画(UNEP)、循環型社会推進基本計画、etc.

一般的な意味(広辞苑) :

「物事を行うに当たって、方法・手順などを考え企てること。また、その企ての内容。もくろみ。はかりごと。くわだて。プラン。」

計画性のある人とは?

「計画を立てることができる」

「ものごとを遅滞なく進めることができる」

「ご利用は計画的に・・・!?」消費者金融にお金を借りるほど計画的になれなかった人が、

果たして計画的に利用できるだろうか・・・?

Planの由来

Planの意味

計画する(to plan)は名詞のplanに由来し、その意味は「平坦な面に2次元で投影すること」である。

出典:Tom Turner(1998) ”Landscape Planning and environmental Impact Design 2nd edition” , UCL Press

計画の定義いろいろ(1) Max Weber

「一般に主体が目的と手段との関係を何らかの形で認識して、合理的な手段の選択を通じて環境に作用して、目的を達成しようとする合理的行為である」

Funk&Wagalls 「計画とは、ある目的を達成するために必要であるか、

または役に立つと信じられる多くの手段または、連続的な段階の組織的な配列のことである」

Drucker 「計画とは、未来のことに関する現在の意思決定であ

る」

計画の定義いろいろ(2) Doob

「計画とは、個人またはその集合体がある社会において、ある目的を達成するための発見である」

末石冨太郎 「計画とは、利潤や効率とは無関係の価値意識の転換

にすべての意思決定者が関与して新たな目標を模索する行為であり、身近な領域での異質の交流(communication)の中から相互の役割を発展していくプロセス、いわば社会的ルール形成過程である」

谷津龍太郎 「計画とは、ある組織が、将来のある時期に向けて一定

の目標を達成するために、目標達成に必要な行動の指針や内容、行動の推進方策などを論理的、体系的にとりまとめ、組織として意思決定したもの」

「計画」の構成要素 計画の構成要素

「主体」:判断のできる個人またはその集合体

「目的」:主体が、その実現を意図し、行為を目指す的として

あらかじめ設定するもの

「対象」:行為を働きかけるもの

「手段」:目的を実現するために採用する方法

→計画とは、「主体」「目的」「対象」「手段」を、問題発見から実行、評価に至るダイナミックな過程で組織的に構成することである。

公務員になるゾ!!

主体 目的 対象 手段

公務員試験合格計画の場合は・・・

受験生 試験に合格し公務員になること

試験科目 試験勉強面接対策

目的と目標について 目的と目標

「目的」は「目標」に比べ抽象的で長期にわたる目あてであり、内容に重点をおいて使う。「目標」は、目ざす地点・数値・数量などに重点があり、より具体的である。ただし、その使い分け方は厳密ではない。

目的:成し遂げようと目指す事柄・行為の目指すところ

目標:目的達成のための道標。通過点。

目的の階層的配列

目的達成のためになされる手段の相互の間には、目的に対する遠近の程度によって上位と下位の関係を見出すことができ、下位の目的は上位の手段としても解釈される。この目的の上下関係の総称を階層的配列という。(cf. 大目的、中目的、小目的)

計画の評価 計画の事後評価

実行に移された計画は、その結果を評価し、妥当性を検討して、計画内容に再びフィードバックされることが必要である。

PDSサイクル Plan-Do-Seeという、計画を含めた一連のサイクルのこ

と。計画(Plan)は目的を達成するための多くの手段の組織的配列であり、この手段を実際に講じることを実行(Do)という。そして実行された結果、目的としての欲求充足の実態を把握することがなされる。この行為が評価(See)である。これら三者は図1、2のようにサイクルになっており、分析された評価結果を次の計画に活かす、フィードバックとしての機能を有している。

PDSサイクルと同様の概念としてPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルがある。近年はこちらが一般的に使われる傾向にある。

PDSサイクル

Plan

Do See

図1 PDSサイクル 図2 フィードバックによる渦巻き型発展

方針

計画

実行

評価

見直し

次の計画

環境計画論の講義計画 主体:後藤 忍

目的:受講生のみなさんに、環境計画の考え方・方法論について

知識をもってもらう①環境問題が起きる構造を把握できる。

②環境問題を解決していくための考え方や手段について知識を

持っている。

③評価の視点や方法について理解し、主体間で合意形成する

ための課題について考えることができる。

対象:受講生のみなさん

手段:半年の講義内容①内容の構成

②資料の活用

1)レジュメ、2)スライド、3)小道具

③課題の取り組み

1)練習問題、2)試験

評価:講義の感想練習問題の解答試験の解答

1. 計画とは何か?

2. 環境計画とは何か?

3. 環境計画の要素の考え方

4. 総合的な計画としての環境基本計画

環境計画とは何か? J.M. Edington & M.A. Edington(1977)

「広い意味での環境計画とは、人間が自身のために自然環境上に繰り広げるさまざまな事業を調和させ、釣り合いをとろうとする試みである」

末石冨太郎 他(1993) 「環境計画とは人間の環境への働きかけにおける態度

と行動の調整であり、共同の意思と手段をもつものである」

谷津龍太郎(1998) 「環境計画は、環境科学、環境工学、環境政策学など

による科学的知見に基づき、人間行為が環境要素に及ぼす影響を因果的にとらえ、各環境要素の良好な状態を規定して、人間活動自体を制御する方法論を確立するもの」

環境計画の定義

「環境計画とは、主体である人間が環境を改善することを目的とし、目的を実現するために人間または環境に働きかける手段の組織的配列を考え、意思決定することである」

主体 目的 対象 手段

人間 環境を改善すること

人間または環境

様々な手段

技術的

経済的

社会的

計画策定の基本プロセス

環境問題の構造把握

評価手法の構築

計画代替案の比較評価

関連主体での意思決定

改善方針の検討と目的の設定

計画の立案

計画代替案の設計

第1、3講及び各論

第4~9講第10~11講

第12講

計画の事前評価 計画の事前評価

環境に影響を与える恐れのある計画や事業に対しては、それらが実行される前の段階で評価されることが望ましい。

環境影響評価(EIA:Environmental Impact Assessment) 個別の事業(project)の実施に対し、環境への影響を与え

る恐れのある事業に、事前に環境影響を調査、予測、評価し、住民等や関係行政機関の意見を聞きつつ、環境配慮を行うこと。

戦略的環境アセスメント(SEA:Strategic Environmental Assessment) 個別の事業(project)に先立つ戦略的な意思決定段階、つ

まり政策(policy)、計画(plan)、プログラム(program)を対象とする環境アセスメントのこと。

1. 計画とは何か?

2. 環境計画とは何か?

3. 環境計画の要素の考え方

4. 総合的な計画としての環境基本計画

環境計画の目的・目標(1)―持続可能性(Sustainability)と持続可能な発展(Sustainable Development)―

1972年、ローマクラブ「成長の限界」

レポートの中で初めて「持続可能性」を使用。動学的モデル(Dynamic Modeling)の手法で世界モデルを作成し、人間活動と地球環境の相互フィードバックの構造を示す。人間活動は、天然資源や汚染への配慮なしには成長を続けることができず、突然の崩壊(catastrophe)を起こすことを提示。

1987年、環境と発展に関する世界会議(WCED、通称ブルントラント委員会)が「Our Common Future」の中で「持続可能な発展」の概念を提示 “development that meets the needs of the present

without compromising the ability of future generations to meet their own needs”(将来世代が自らの欲求を充足する能力を失うことなく、今日の世代の欲求を満たす発展)

環境計画の目的・目標(2) 1991年に国際自然保護連盟(IUCN)、国連環境計画

(UNEP)、世界野生生物保護基金(WWF)の3つの世界的な組織が合意した定義 “development which improves the quality of life, within the

carrying capacity of the Earth’s life support system”(地球の生命維持システムがもつ環境容量の範囲内で、生活の質を改善する発展)

1990年にハーマン・デイリー(Herman E. Daly)が提示した持続可能な発展の3原則

① 再生可能資源(土壌・水・森林・魚など)の利用に関しては、その再生速度を超えてはならない。

② 再生不能資源(化石燃料・鉱石・深層地下水など)の利用に関しては、再生可能な資源を維持可能なペースで利用することで代替できる速度を超えてはならない。

③ 汚染物・廃棄物の排出に関しては、環境がそれを吸収・浄化することのできる速度を超えてはならない。

福島大学共生システム理工学類

環境システムマネジメント専攻・・・?!

環境計画の目的・目標(3) 1992年にナチュラル・ステップ(The Natural Step)が提唱

した、持続可能な社会の4原則① 地殻から取り出した物質の濃度が、自然の中で増え続けない。

② 人工的に作られた物質の濃度が、自然の中で増え続けない。

③ 乱獲や開発によって、自然が物理的に改変されない。

④ 世界の人々の基本的なニーズを満たすために、資源が公平かつ効率的に使われる。

マネジメントされるべきものは何か? “Sustainability requires that our emphasis shift from managing

resources to managing ourselves” (William Rees, 1995)(持続可能性には、資源をマネジメントすることから私たち自身をマネジメントすることに焦点を移すことが求められている)

目標の設定における価値観(1) 先住民思想

持続的な生活を営んでいく知恵は、先住民族などの間で既に蓄えられていたものもあり、現代における見直しも行われている。

Seattle(スカミッシュ族酋長)の演説(1970年地球の日) 「私たちは知っている。大地は人のものではなく、

人は大地あっての存在であることを...」

Oren Lyons(オノンダガ族酋長)の宣言文(1993年地球の日) “In our way of life…with every decision we make, we

always keep in mind the Seventh Generation of children to come…”(私たちが生活していく上で、物事を決めるときはいつも、七世代先の子ども達のことを心にとめている...)

目標の設定における価値観(2) ことわざ、格言などに見える真実

「吾唯足知」「ちりも積もれば山となる」etc.

京都市龍安寺にある「つくばい」http://myhome.cururu.jp/holyfi/blog/article/51000171840

長野県穂高町有明山神社にある石碑http://www10.plala.or.jp/ayac/tanbou/pbox/p19.html

環境倫理の3つの主張 1)地球の生態系という有限空間では、原則としてすべての行

為は他者への危害の可能性をもつので、倫理的統制のもとにおかれ(地球の有限性)、2)未来の世代の生存条件を保障するという責任が現在の世代にある以上(世代間倫理)、3)資源、

環境、生物種、生態系など未来世代の利害に関係するものについては、人間は自己の現在の生活を犠牲にしても、保存の完全義務を負う(生物保護)。(加藤,1998)

従来の倫理的な枠組みを正しく解釈すれば、環境保護が正当化されるという主張ではなく、近代の政治・経済・法律を 大限守ったとしても環境保護のためには不十分であるという主張をしている。

通常の法律・経済・倫理の成立する条件そのものに疑問を呈する。

→「外部経済」、「同世代合意の有効性」、「権利主体は人間」は、問い直される必要はないか?

目標設定の考え方~ForecastとBackcast~

「過去から現在への延長線上にない、不連続な未来を作り出す」ための方法論

まず「将来あるべき姿」を描き、未来のある地点における目標を実現するには、現時点で何をすべきかの計画を立てるもの。

現在を起点にして未来のある地点の状況を予測するもの。台風の進路予想図のようなもの。

「大きな変化がない系を」「短~中期で」予測するには適している。

しかし、長期の予測、あるいは過去から現在への線の先に未来が無い場合には適していない。

Forecast Backcast

Backcastingに基づくNatural StepのABCD戦略構築プロセス

A:Awareness B:Baseline Mapping

C:Clear Vision D:Down to Action

手段を考える際に留意すべきこと 予防原則

科学的根拠が十分ではないものの、潜在的な危害があるとされる場合に、そのリスクを回避、あるいは 小限にするための措置をとるという原則。

システム的な思考

事物をそのつながり・結びつき・関係から考える方法のこと。

部分的な見方だけでなく、全体との関係を考える

→全体の 適化と部分の 適化

様々な手段の組み合わせ

目的を達成するためのあらゆる手段を考えること。

技術だけでは環境問題は解決できない。

→ cf. 人間の健康と医療技術

1. 計画とは何か?

2. 環境計画とは何か?

3. 環境計画の要素の考え方

4. 総合的な計画としての環境基本計画

環境基本計画とは 環境基本法とは

環境基本法は1993年に日本で制定された環境を保全するための法体系の基本となるべき法律。

環境保全に関する施策は、総合的かつ計画的に行われなければならないと規定(1条、14条)

環境基本法第15条において、環境保全に関する基本的な計画(これを環境基本計画という)を定めなければならないものと規定。

環境基本計画とは環境基本計画は法定計画であり、内閣総理大臣が中央環境審議会の意見を聴いてその案を作成し、閣議により決定される。

現在の計画は2006年4月7日に閣議決定されたものであり、1994年、2000年に続く第三次の計画である。

環境基本計画の構成(1)

環境基本計画の構成(2)

第三次環境基本計画のポイント 第三次環境基本計画は、「環境から拓く 新たなゆたかさへの道」をサブテーマに、以下のような環境政策の新たな方向性、今後展開する取り組みなどを提示。今後の環境政策の展開の方向として、環境と経済の好循環に加えて、社会的な側面も一体的な向上を目指す「環境的側面、経済的側面、社会的側面の統合的な向上」などを提示。

今後展開する取り組みとして「市場において環境の価値が積極的に評価される仕組みづくり」「環境保全の人づくり・地域づくりの推進」などを決定。

計画の効果的な推進のための枠組みとして、計画の進捗状況を具体的な数値で明らかにするため、重点分野での具体的な指標・目標、総合的な環境指標を設定。

環境基本計画の目的と目標 目的

本計画で目指すべき社会を“持続可能な社会”とし、具体内容を次のように記述。

“健全で恵み豊かな環境が地球規模から身近な地域までにわたって保全されるとともに、それらを通じて国民一人一人が幸せを実感できる生活を享受でき、将来世代にも継承することができる社会”

2025 年頃までに実現すべき社会を見据えながら、当面の環境政策の方向と取り組みの枠組みについて記述

持続可能な社会を構築するためには、これまでの環境基本計画で長期的な目標として掲げられてきた「循環」「共生」「参加」「国際的取組」の4つについて、引き続き維持するべきものと位置づける。

4つの長期的目標 環境基本計画の長期的目標とは

「循環」:物質循環を確保することでできる限り環境への負荷を減らす

「共生」:自然を保全、保護、整備し、人間との豊かな交流を保つ

「参加」:あらゆる主体が自主的積極的に取り組む

「国際的取組」:国際的協調の下に国際的イニシアティブを発揮する

長期的目標における階層性

「わが国の環境、そして地球環境を健全な状態に保全して将来の世代に引き継ぐこと」の手段としての「循環」「共生」「参加」「国際的取組」。さらに、4つの中でも、「参加」「国際的取組」は「循環」「共生」の手段的性格となっている。

環境基本計画の手段(1) 重点分野

環境政策の方向性に沿って、21 世紀 初の四半世紀を

視野に入れて、今後具体的に展開すべき環境政策を提示。重点的に取り組むべき10 の分野について、現状と

課題、中長期的な目標、施策の基本的方向、重点的取り組み事項、取り組み推進に向けた指標、について記述。

施策の展開における基本的な考え方

環境政策の基本となる4つの考え方である「汚染者負担

の原則」、「環境効率性」、「予防的な取組方法」、「環境リスク」に加えて、「拡大生産者責任」などの新しい考え方についても活用していくことを明記。

環境基本計画の手段(2)

あらゆる政策手段の適切な活用

①社会経済の環境配慮のための仕組み

(直接規制的手法、枠組規制的手法、経済的手法、自主的取組手法、情報的手法、手続的手法)

②環境のための投資

③環境教育・環境学習

④情報提供および科学技術の振興

環境基本計画の評価

計画の見直し

計画の進捗状況の点検は、毎年、中央環境審議会が国民各界各層の意見も聴きつつ点検を行い、その後の政策の方向を政府に報告することとされている。また、策定から5年後程度に計画の見直しを行うこととされている。

第三次環境基本計画における評価の位置づけ

第三部第4節において、「環境基本計画の進捗状況につ

いての全体的な傾向を明らかにし、環境基本計画の実効性の確保に資するため、環境の状況、取組の状況等を総体的に表す指標(総合的環境指標)を活用する」と記載。

参考文献等 末石冨太郎+環境計画研究会(1993)、『環境計画論―環境資

源の開発・保全の基礎として―』、森北出版株式会社 Tom Turner(1998) ”Landscape Planning and

environmental Impact Design 2nd edition” , UCL Press J.M. Edington & M.A. Edington著、幸丸政明 訳(1983)、『生

態学と環境計画』、共立出版株式会社 土木学会環境システム委員会 編(1998)、『環境システム―そ

の理念と基礎手法―』、共立出版株式会社 環境アセスメント研究会 編(2000)、『わかりやすい戦略的環境

アセスメント』、中央法規 加藤尚武編(1998)『環境と倫理』、有斐閣アルマ

サラ・ジェームズ&トルビョーン・ラーディー著、高見幸子監訳(2006)、『スウェーデンの持続可能なまちづくり』、新評論

環境省編(2001)、『環境基本計画-環境の世紀への道しるべ』、共立出版株式会社

環境省ホームページhttp://www.env.go.jp/policy/kihon_keikaku/thirdplan01.html

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