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放送大学教養学部 宮本みち子

「新」青少年育成施策大綱作成有識者ヒヤリング

ニート・フリーター等若者の自立支援をめぐる現状と課題

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若者自立支援策の展開

2003年12月内閣府「青少年育成施策大綱」(青少年育

成推進本部決定)

2003年4月 「人間力戦略研究会」報告

職業生活,市民生活,文化生活の3 つに着目

「人間力」の考え方は,「新しい市民社会論」における

「自立した個人」の概念と親和的

2005年3月内閣府 『 若者の包括的な自立支援方策に

関 る検討会報告書』

就労だけにとどまらない包括的な自立支援 策の提起をめざしたもの

自治体における取り組みに波及

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青少年の社会的自立の困難1980年~90年代を振り返る

高学歴化の進行。しかし大卒・短大卒の就職者は減少。進学も就職もしないものが4倍に

不登校・高校中退の増加

ひきこもりの急増

「学校ぎらい」、「学習に意欲のない」傾向の拡大

無業卒業、フリーター、その他の非正規雇用の増大

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景気の悪化が若年雇用の減少を生んだ好転のきざしー>就職状況の改善

しかし景気が改善しても残る問題は?日本型雇用慣行の転換・短期・有期限の雇用者を増やす方向

産業構造の変化高度専門職 対 不安定単純労働

不安定で臨時的な仕事の増加、高卒市場に顕著増加する大卒者の中の格差雇用の流動化・離転職の一般化景気回復の程度によって若年労働力の吸収の程度に差

景気が改善しても残る問題は?

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2003年に始まった若年者雇用対策は、断片的で相互の連携がないため、困難度の高い若者に対して十分な効果があがっていない

世論の一般的理解に反して、フリーター、「ニート」の中核は、低学歴、低所得出身者

経済的困窮者に対する対策の不在

さまざまな問題を抱えて社会的に孤立し、

<社会からの排除>のリスクを抱えている若者問題として捉えなおすこと

現在の課題は何か?

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公的調査資料の未整備

どういう若者が困難を抱えて自立できないのかを全体的に把握できていない既存の官庁統計は、社会階層、貧困、障害などの実態を把握できるものがほとんどない「差別しないこと」を理由に困難層の存在を明示しないー>対策の立てようがない

誤った社会的認識を助長するイギリスの例

1990年代から困難をかかえる青少年、若者に関する大規模な調査が蓄積され、証拠に基づく政策立案が可能になった

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もっとも支援が必要な若者とは?

種々の理由から仕事に就くことが困難な若者 (非選択的無業者)不安定で低賃金の就労状態に置かれた若者 (非正規雇用・失業・無業の繰り返しを

している不安定就業者)将来その可能性の高い青少年

これがニートという用語を使って議論するさいのポイントとなるべき対象=近年、EU加盟国では、「社会的排除」と

結びつけて認識

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社会から排除される理由は多様

競争的で劣悪な労働市場

心身の疾患や障害

家庭の貧困や崩壊

種々の理由による不登校経験の影響

低学力

ゲームやネット依存による社会からの隔絶

社会的孤立

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厚生労働省ニート調査(2006年)の結果

調査対象:若者自立塾入塾者、地域若者サポートステーション来所者

高校、大学・短大、専門学校の各段階で中退している割合が3割を超える

在学中に1ヶ月以上の欠席経験者も各段階で2割前後いる

4割弱が不登校を経験している

8割近くが何らかの就業歴をもっているが、経験した職種は、サービス職、生産労務職、営業販売職などの熟練を要しない職種のアルバイトなどが多く、不安定な労働市場の波を被りやすい者が多い

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これまでの生活経験のなかで半数近くが経験している項目

「学校でいじめられた」

「会社をじぶんでやめた」

「ひきこもり」

「精神科・心療内科の受診」

「職場の人間関係のトラブル」

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不登校・ひきこもり経験者

<サポステ> <合計>不登校・ひきこもりの両方経験 21.8% 27.4%不登校のみ経験 8.2% 9.6%ひきこもりのみ経験 21.44% 23.9%両方経験なし 48.6% 39.1%

中退経験者の内訳<サポステ> <合計>

不登校・ひきこもりの両方経験 29.7% 44.4%不登校のみ経験 13.5% 13.7%ひきこもりのみ経験 24.3% 19.7%両方経験なし 32.4% 22.2%

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苦手なこと

「人に話すのが苦手」(6割強)

「手先が不器用」「計算が不得意」「字を書くのが不得意」など基礎的スキルの苦手意識

(これらは本人が感じているもの)「面接、電話、対人関係が苦手」(6割超)

「周囲のやり方をみて仕事を覚えること」、「仕事で失

敗を繰り返さない」、「仕事を覚える」のを苦手とする者

も5割から6割に達している。

これらのハンディが各段階で人間関係上のつまずきの

原因となり、仕事を続けるうえで障害となっていることが

想像される。

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家族と企業福祉の伝統をもつ日本の問題

学校にいない、リスクのある若者を把握することが困難。親の責任にゆだねられる

発見した時には回復が困難支援に時間がかかり効果が薄い

《早期介入が重要》欧州の例学卒後の若者に対する各種の公的給付制度給付をうけるために登録することによって存在が把握できるイギリス、コネクションズの場合

13歳の生徒のデータファイルを作成、その後継続離学後のリファー関係機関がデータ・シェアすることを義務化

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NEETへの取り組みを進めるイギリスの<社会的排除>に対する取り組み

1997年から<社会的排除>への取り組みが開始される2003年のevery child matters以後の子どもサービスの大改革

もっとも不利な人々がより見えるようになってきたもっとも困難な人々には手が届いていない不利な人々は人生の早期から=不利の世代的連鎖早期介入は、コスト効果がもっとも高い近年の方法

“親への支援”。 “子どもにとって最善のスタート sure start”マルチ・エイジェンシー活動を推進するデータ・シェアを進める

より個別化してよりホリスティックで、根拠のあるサポートを提供する=>子どもサービス機関の地方自治体レベルでの統合化

Children’s trust政府だけでなく、個人と広いコミュニティの連帯が必要

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ニート状態に陥る前の予防策とは?

格差拡大を防止すること

学校教育過程でのさまざまなつまづきの

早期発見と支援開始

情報提供・相談・ガイダンス

困難をかかえた家庭への支援

親に頼れない青少年・若者の支援

学校からその後までの継続支援システム

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高校卒業までの支援のあり方は?

非進学校(定時制高校を含む)における職業教育の強化

低学力生徒に対する個別的な教育支援

企業や職業訓練機関と連携して、在学中に社会との接合を強化する(座学と現場の実学)

離学時にリスクのある生徒を地域サポート機関につなぐ(職業訓練機関を含む)

障害や疾病の発見ー>社会へ出るための特別支援

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大学卒業段階までの支援のあり方

長期欠席学生、長期留年、単位取得困難学生への早期介入・サポート

メンタルヘルス、低学力、低意欲、その他の問題を抱えている学生が少なくない

大学になじめない学生に対する別の選択肢の提示(職場体験、ボランティア活動、NPO活動など)と、その後の復学の可能性を拡大する

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20代後半から30代の支援のあり方

就職氷河期の不遇な若者に対する社会的取り組み、とくに企業への働きかけ

社会的経済セクター(社会的企業など)を育成し、ハンディのある層を吸収する

経済支援と就労支援のセット

雇用と福祉のセット

低家賃住宅の提供

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生活全体の手当てが必要

「15歳から30歳を対象とする総合的な相談・情報・ガイダンスのワンストップショップ」を作る。

仕事、進路、家族問題、金銭トラブル、性と性病の相談、税金・社会保障、住宅など

《地域若者ステーションを拡大することも可能》

人生前半期の社会保障の強化

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教育・訓練バウチャー、低利貸付、低家賃住宅、若者基礎年金など

サービス・ケア保障(医療・福祉サービス、カウンセリング、情報提供 など)

“厚めの基礎年金”

ベーシックインカムまたは負の所得税

所得保障

児童手当

教育

人生前半期の社会保障制度の強化の例

広井良典「持続可能な福祉社会」(ちくま書房、2006年)の構想を参考に加筆

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EUの総合的な若者政策のイメージ

人間発達

(ユースワーク)

エンプロイアビィリティ

(経済・雇用政策)

シティズンシップ

(政治政策)

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