トレーニング指導における...

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トレーニング指導における科学的手法の活用の目的と意義

第3回 JATI 科学的手法に基づくトレーニング指導講習会2018年6月2日(帝京平成大学中野キャンパス)

JATI理事長龍谷大学スポーツサイエンスコース

教授 長谷川裕

4 セット,週3回,4週間 @85% 1RM

Control SSC高速

2 sec2 sec

6 reps

2 secMAX

4 reps 4 reps

MAXMAX

つぶれるまで挙げ続けることは筋肥大と筋力向上にとって必須条件なのか?

Control 高速 SSC1RM 30.6% ↑ 32.8%↑ 28.6%↑最大筋力 14.3% ↑ 12.8%↑ 12.7%↑断面積 11.6% ↑ 7.1% ↑ 10.9%↑筋電図 16.7% ↑ 47.0%↑ 7.7%↑

結論:全てのグループで有意な向上がみられたが,群間の有意差はなかった。

80% 60%

100% 100%

VL20% VL40%

velocity velocity

スクワット,週2回,3sets x 70-85%1RM,8週間,

レジスタンストレーニングにおける挙上速度低下のパフォーマンス,筋力,筋組織の適応に及ぼす影響

20%スピード低下でセット終了 40%スピード低下でセット終了

実施したスピード別挙上回数と総挙上回数

総挙上重量挙上速度とレップ数

VL20 < VL40VL20がより高速でより多い

筋肥大に対する両群の効果

大腿四頭筋 大腿直筋 中間広筋 外側+内側広筋

有意差あり有意差なし 有意差なし 有意差なし

VL20% VL40%

1RM 18.0%↑ 13.4%↑=

軽量でのスピード 6.2%↑ 変化なし>

平均スピード 12.5%↑ 6.0%↑=

CMJ 9.5%↑ 変化なし>

タイプIIミオシン重鎖 変化なし 50%<

実践的トレーニング研究テーマ

フィットネスクラブレベルで導入されている従来の一般的な筋肥大プログラムと

VBTの比較

VBTを用いれば,より効率よく,無駄を省いて,同じ筋肥大や筋力向上効果を,あげることができるのではないか?

実践的トレーニング研究の目的とデザイン

※ 株式会社ティップネスの協力を得て実施

1. 筋肥大とパフォーマンスに及ぼす効果の比較2. トレーニングそれ自体の比較

CONTROL:従来の一般的な筋肥大トレーニング1RM10レップ×4セット@60~75%

VBTトレーニング挙上速度をモニタリングしてコントロールし,

レップ回数と使用重量を調整する

VS

被験者とトレーニング

• 被験者はトレーニング経験が中~大のフィットネスインストラクターおよびフィットネスクラブ職員

• Control(CON)群• 男子6名女子4名

• 年齢31.1±5.0歳,身長168.7±8.5,体重64.1±10.1kg

• 女子・男子各1名が業務上の理由でリタイア

• Velocity Based Training(VBT)群• 男子6名女子4名

• 年齢27.9±6.9歳,身長164.4±8.4cm,体重59.4±10.3kg

• フリーウエイトを用いたバーベルバックスクワットを週に2回8週間にわたって継続

トレーニング方法の比較⚫ウォーミングアップ

• 両群共通: ・10reps @20㎏シャフト・ 5reps @50%1RM

• VBT群: ・ 3reps @0.5m/s(目安は65-70%1RM)PUSHを装着して実施(アップ後のメインセットがウォーミングアップ効果で0.6m/sよりも速く

なるのを防止するため,目標スピードの下限になる重量をセットする目的で行うアップ)

• CON群: ・ 3reps @70%1RM

⚫メインセット• VBT群:・0.5-0.6m/s(65-70%1RM相当)x 3sets PUSHを装着して実施• そのセットのベスト速度に対して2回連続して15%以上低下(85%以下)したらセットを終了。10reps以上は行わない。スピードが0.5m/s以下に低下しても最低7repsは行う。

• CON群:・10reps @70%1RM x 3sets• 4sets目は12repsに挑戦。

• レスト:両群共通90秒

トレーニング方法の比較

⚫負荷の調整

• VBT群: PUSHを装着して実施• セットの半数以上のrepsが0.6m/sより速い→次のセットから2.5-5.0㎏増。

• セットの半数以上のrepsが0.5m/sより遅い→次のセットから2.5-5.0㎏減。

• CON群:• 2セッション連続で第4セットで12reps成功→次のセットから2.5-5.0㎏増。

• 第1セットで10reps以下@70%1RM→2.5-5.0kg減。• 2セッション連続で第1セットで10reps以下@70%1RM→次のセッションは第1セットから,2.5-5.0kg減。

パフォーマンス測定1.推定1RM

• GymAwareを用いて挙上速度を測定。• 20kgから開始し, 10~20kg毎に負荷を段階的に漸増させ, おおよそ0.5m/s付近まで測定。

• 1RMが高い人は20kgずつ増加し,速度が遅くなってきたら増加量を減らす。

• 挙上レップ数は下記の通り•1.0m/s以上,速度が出る場合は3レップ•1.0m/s未満で0.6m/s以上出せるウエイトなら2レップ•それ以下の速度(0.6m/s未満)は1レップ•0.5m/s以下になったら,挙がらなくなるまで反復し,最終レップの速度を最小速度閾値(MVT)として,1RMの推定回帰式に用いた。

2.スクワットジャンプ高3.カウンタームーブメントジャンプ高さ

• GymAwareを用いて3回実施したベスト記録を採用。• 3回目にベストがでたら低下するまで継続。

推定1RMとジャンプ高計測に使用

リニアポジショントランスジューサー GymAware

推定1RMの求め方

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

1.20

0 20 40 60 80 100 120

直線回帰とMVTによる1RMの推定法

=TREND(A2:A6,B2:B6,0.15)

周径囲と超音波測定1 体組成(In Body)

体重,体脂肪率,体脂肪量,筋肉量2.大腿部皮脂厚と筋厚(BodyMetrix超音波測定)3.大腿部周径囲(メジャー計測)※2と3は,膝蓋骨上部~上前腸骨棘間の遠位1/3点の計測値の左右平均値

実際のトレーニングの全期間を通じてエクササイズを被験者自身でモニターしデータをクラウドにアップ

PUSH band

Portal機能により、エクササイズデータは1レップごとにすべてクラウドで保存・分析

統計処理

•群間のトレーニング効果の平均の差の検定• トレーニング方法(CON群とVBT群)×PRE/POSTテストの反復測定2元配置分散分析

•群間の実際のトレーニングにおけるレップ数,使用重量等の差の検定• 対応のない2群の平均のt検定

実際の1セットにおける速度変化(例)

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

速度(m/s)

レップ

CON

VBT

1セッションにおける速度変化(例)

0.20

0.25

0.30

0.35

0.40

0.45

0.50

0.55

0.60

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

速度

(m/s)

reps

CONの挙上速度変化

アップ 1st 2nd

3rd 4th

0.20

0.25

0.30

0.35

0.40

0.45

0.50

0.55

0.60

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

速度

(m/s)

reps

VBTの挙上速度変化

アップ 1st 2nd

3rd 4th

Subject R.I. Subject K.T.

パフォーマンス向上効果

50

100

150

pre post

(kg) スクワット1RM

CON VBT

500

700

900

1100

pre post

(watt) 平均パワー

CON VBT

1000

1500

2000

2500

3000

pre post

(watt)ピークパワー

CON VBT

30

35

40

45

50

pre post

(cm)スクワットジャンプ高

CON VBT

30

40

50

pre post

(cm)

カウンタームーブメント

ジャンプ高

CON VBT

• pre-postに1%水準で有意な主効果あり• テスト×グループの交互作用無し

体組成の変化(InBody)

40

60

80

100

pre post

(kg) 体重

CON VBT

0

10

20

30

pre post

(%)体脂肪率

CON VBT

0

10

20

pre post

(kg) 体脂肪量

CON VBT

35

45

55

65

pre post

(kg) 筋肉量

CON VBT

pre-postの主効果も,テスト×グループの交互作用もなし

周径囲と超音波測定値の変化

1.5

3.5

5.5

7.5

9.5

pre post

(mm)

大腿皮脂厚

CON VBT

20

25

30

35

40

45

pre post

(mm)

大腿筋厚

CON VBT

• pre-postに1%水準で有意な主効果あり• テスト×グループの交互作用無し

45

50

55

60

pre post

(cm) 大腿周径囲

CON VBT

31.1㎜ 35.8㎜

PRE POST

超音波画像の典型例

(VBT群被検者M.N.)

結果のまとめ

• パフォーマンス• 1RM,平均パワー,ピークパワー,スクワットジャンプ高,カウンタームブメントジャンプ高のすべてにおいて,PRE-POSTテスト間に1%水準で有意な向上が認められた。

• PRE-PPSTテスト×トレーニング群の交互作用は認められなかった。

• 体組成• 体重,体脂肪率,体脂肪量,筋肉量のいずれにも,PRE-POSTテストに有意な差は認められなかった。

• PRE-POSTテスト×トレーニング群の交互作用は認められなかった。

• 周径囲• 大腿周径囲,大腿皮脂厚,大腿筋厚のすべてにおいて,PRE-

POSTテスト間に1%水準で有意な向上が認められた。• PRE-PPSTテスト×トレーニング群の交互作用は認められなかった。

PRE-POSTの差に関する結果から言えること週2回8週間のトレーニング法により,CON群とVBT群どちらの群によって用いられたトレーニング法によっても,

• 1RM

• 平均パワー

• ピークパワー

• スクワットジャンプ高

• カウンタームブメントジャンプ高

• 大腿周径囲

• 大腿皮脂厚

• 大腿筋厚

の統計学的に有意な向上が認められたが,

向上の大きさにはトレーニング方法による差はない。

トレーニングの実際

•使用重量

•発揮筋力

•挙上速度

•発揮パワー

•反復回数

•仕事量

・・・これらにどのような相違があったのか?

使用重量

50

52

54

56

58

60

62

64

1 3 5 7 9 11 13

重量(kg)

セッション(回)

使用重量の推移

CON VBT

各セッションで使用した負荷の重量は,CON群もVBT群もほぼ同じで増加傾向も同じ。

使用重量(%1RM)

⚫負荷の調整VBT群: PUSHを装着して実施

セットの半数以上のrepsが0.6m/sより速い→次のセットから2.5-5.0㎏増。セットの半数以上のrepsが0.5m/sより遅い→次のセットから2.5-5.0㎏減。

CON群:2セッション連続で第4セットで12reps成功→次のセットから2.5-5.0㎏増。第1セットで10reps以下@70%1RM→2.5-5.0kg減。2セッション連続で第1セットで10reps以下@70%1RM→次のセッションは第1セットから,2.5-5.0kg減。

50

55

60

65

70

75

80

1 3 5 7 9 11 13

%1RM

セッション(回)

使用した負荷(%1RM)の推移CON VBT

発揮平均筋力

1200

1250

1300

1350

1400

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13

平均筋力(N)

セッション(回)

平均筋力の推移 CON VBT

各セッションで発揮された平均筋力は両群ともほぼ同じ

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

CON VBT

(N) 平均筋力

トレーニング期間全体の発揮平均筋力

発揮ピーク筋力

1400

1450

1500

1550

1600

1650

1700

1 3 5 7 9 11 13

ピーク筋力

(N)

セッション(回)

ピーク筋力の推移 CON VBT

各セッションで発揮されたピーク筋力はVBT群のほうが大きい

1520

1540

1560

1580

1600

1620

1640

CON VBT

(N)ピーク筋力

トレーニング期間全体の発揮ピーク筋力

p=0.018

挙上速度

0.30

0.35

0.40

0.45

0.50

0.55

0.60

0 5 10 15

平均速度

(m/s)

セッション(回)

平均速度の推移 CONVBT

0.50

0.60

0.70

0.80

0.90

1.00

1.10

1.20

0 5 10 15

ピーク速

度(m/s)

セッション(回)

ピーク速度の推移CON

VBT

VBT群のほうが明らかに速かった。 P<0.000

個人ごとの平均挙上速度

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

平均速度

(m/s)

レップ数(回)

CON群

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

平均速度

(m/s)

レップ数(回)

VBT群

VBT群では0.5~0.6m/sで一定だが,CON群では大きな幅があった。

平均パワー

0.90

0.95

1.00

1.05

1.10

1.15

0 5 10 15

比率(%)

セッション(回)

平均パワーの「比率」の推移 CON

VBT

400

420

440

460

480

500

520

540

560

580

600

0 5 10 15

平均パ

ワー(w)

セッション(回)

平均パワーの推移CON

VBT

各セッションで発揮された平均パワーはVBT群のほうが大きい

トレーニング期間全体の平均パワー

420

440

460

480

500

520

540

560

580

CON VBT

(watt)平均パワー

P<0.000

ピークパワー

700

800

900

1000

1100

1200

1300

1400

0 5 10 15

ピークパ

ワー(w)

セッション(回)

ピークパワーの推移 CON

VBT

0.90

0.92

0.94

0.96

0.98

1.00

1.02

1.04

1.06

1.08

0 5 10 15

比率(%)

セッション(回)

ピークパワーの比率の推移 CON

VBT

各セッションで発揮されたピークパワーはVBT群のほうが大きい

P<0.000

トレーニング期間全体のピークパワー

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

CON VBT

(watt)ピークパワー

P<0.000

反復回数

3233343536373839404142

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13

レップ数(回)

セッション(回)

個人の平均レップ数の推移CON

VBT群がどのセッションでもより少ないレップ数を示した。

34

35

36

37

38

39

40

41

42

43

CON VBT

(reps)平均レップ数

トレーニング期間全体の1セッションあたり平均レップ数

P<0.000

トレーニング期間全体の総レップ数

450460470480490500510520530540550560

CON VBT

(reps) 総レップ数

P<0.000

仕事量

33050

34050

35050

36050

37050

38050

39050

40050

41050

42050

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13

仕事量(J)

セッション(回)

総仕事量の変化CON

VBT

VBT群がどのセッションでもより少ない仕事量を示した

実践的トレーニング実験の結論1. 今回のトレーニング実験で比較した従来よく用いられてきた筋

肥大を目的としたトレーニング法と,新たなVBTによるトレーニング法には,いずれにも筋肥大効果が見られたが,効果の大きさには有意な差は認められなかった。

2. 1RM,パワー,ジャンプ高は両群とも有意な向上が見られたが,効果の大きさには群間の有意差は認められなかった。

3. VBTによるトレーニングは,従来の筋肥大を目的としたトレーニング法に比べて,より少ないレップ数,より軽い相対的負荷,そしてより少ない仕事量で,従来の筋肥大を目的としたトレーニング法と同等の筋肥大効果を生んだ。

4. VBTによるトレーニングは,従来の筋肥大を目的としたトレーニング法に比べて,トレーニング中に発揮されるスピード,筋力,パワーは有意に大きく,トレーニング期間を通じてその向上傾向がみられた。

実践への応用

• 筋肥大を目的として行うウェイトトレーニングにおいて,適切に計画され,実際に発揮した速度のモニタリングによって負荷と挙上回数を管理されたVBTは,従来のトレーニング法に比べて,セッションごとおよびトレーニング期間全体を通して,より少ないレップ数・負荷・仕事量によって,従来のトレーニング方法と同等の筋肥大とパフォーマンス向上効果を生み,トレーニング期間を通じて発揮されるスピード,筋力,パワーはVBTが従来の方法を上回る。

• したがって,VBTは無駄な疲労を招くことなく,より効率よく,筋肥大やパフォーマンスの向上をもたらすことが期待できる。

今後の実践的研究への課題

•最大筋力、筋肥大、筋力スピード、スピード筋力、加速筋力、スタート筋力、筋持久力、スピードといったレジスタンストレーニングの個別課題ごとの最も効果的な挙上速度の明確化。

•それらの個人差への対応。

•セットやセッション中の挙上速度の低下に対するより適切な対応方法の解明。• レップ数の管理• 負荷重量の調整

•トレーニング日ごとのレップ数および負荷重量の最適な調整法の解明。

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