ara-aに よる単純ヘルペスウイルス脳炎治療の...

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昭 和57年9月20日 799 Ara-Aに よ る単 純 ヘ ル ペ ス ウ イ ル ス脳 炎 治 療 の 臨床試験成績 単純ヘルペス脳炎研究会 東京大学医科学研究所感染症研究部 (代表)大 東京大学医科学研究所病理学研究部 埼玉医科大学細菌学教室 順天堂 大学 医学部脳神経 内科 久留米大学 医学部 第一・内科 日本大学 医学 部神経 内科 東京医科歯科大学医学部神経内科 東京大学医学部神経内科 関東逓信病院附属医用情報研究所ウイルス研究部 (昭和57年2月7日 受付) (昭和57年3月9日 受理) Key words: Herpes simplex encephalitis, Ara-A, ELISA system 全 国 の病 院 に入 院 したHSV脳 炎 症 例 を対 象 と し て,Ara-A投 与の有用性を評価するための臨床試験を行な った の ウイルス血清学的検査成績を中心とした診断基準に従って,研 究 会 でHSV脳 炎と判定した症例群を対象と す る薬 効評 価 試 験 では,対 照 群(43例)の 致 死 率 が33%で あ った のに 対 して,Ara-A投 与群の致死率は8%で あ った.従 っ て治 療 群 の致 死 率 は,有 意 の 差(p<0.05)で,対 照 群 のそ れ よ り低 か った.投 与後90日 で判定 した後 遺症 の程 度 につ い て も,Ara-A投 与 群 が軽 か っ た. Ara-A投 与 群 内 層 別 を行 ない,各 層間の致死率,後 遺症 の 程 度 に関 す る 検 定 を 行 な った.層 別因子のなか 別 刷 請 求 先:(〒152) 大谷 杉士

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昭和57年9月20日799

Ara-Aに よ る単 純 ヘル ペ ス ウイル ス脳 炎 治療 の

臨 床試 験成 績

単純ヘルペス脳炎研究会

東京大学医科学研究所感染症研究部

(代表)大 谷 杉 士

東京大学医科学研究所病理学研究部

青 山 友 三 倉 田 毅

埼玉医科大学細菌学教室

甲 野 禮 作

順天堂大学医学部脳神経内科

佐 藤 猛

久留米大学医学部第一・内科

庄 司 紘 史

日本大学医学部神経内科

高 須 俊 明

東京医科歯科大学医学部神経内科

塚 越 廣

東京大学医学部神経内科

萬 年 徹

関東逓信病院附属医用情報研究所ウイルス研究部

水 谷 裕 迫

(昭和57年2月7日 受付)

(昭和57年3月9日 受理)

Key words: Herpes simplex encephalitis, Ara-A, ELISA system

要 旨

全 国の病院 に入院 したHSV脳 炎症例 を対象 として,Ara-A投 与の有用 性を評価す るための臨床試験 を行 な

ったの

ウイルス血清学的検査成績を中心 とした診断基準 に従 って,研 究会 でHSV脳 炎 と判定 した症例群を対象 と

する薬 効評価試験 では,対 照群(43例)の 致死率が33%で あった のに対 して,Ara-A投 与群の致死率は8%で

あ った.従 って治療群 の致死率は,有 意の差(p<0.05)で,対 照群 のそれ よ り低か った.投 与後90日 で判定

した後 遺症 の程度 について も,Ara-A投 与群が軽 かった.

Ara-A投 与群内層別を行 ない,各 層間の致死率,後 遺症 の 程度 に関す る 検定を行な った.層 別因子のなか

別刷請求先:(〒152)

大谷 杉士

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800 感染症学雑誌 第56巻 第9号

で,Ara-Aの 薬効に影響す るものは,投 与開始病 日であった.従 って,早 期投与の励行に よ り,Ara-A投 与 の

効果は更 に強 め られ るものと考 えられ る.

今 回の臨床試験 では,Ara-A投 与全症例を調査 したが,重 篤な副作用は認め られなか った 。

緒 言

National Institute of Allergy and Infectious

Diseases Collaborative Antiviral Study (略 して

NIAID)グ ル ー プは,Ara-A投 与 が,水 痘 お よび 帯

状 庖 疹1)な らび に単 純 ヘ ルペ ス ウ イル ス(HSV)

脳 炎2)3)の 治 療 に有 効 で あ る との 臨床 試 験 成 績 を

公 表 し,FDAは そ の 主張 を認 め て,Ara-A製 剤

を 市 販 す る ことを 許 可 した.

HSV脳 炎 は我 が 国 に 於 て現 在,発 生例 数 の最

も多 く,そ の予後 の 最 も重 篤 な ウ イ ルス脳 炎 で あ

る.そ こ で我 々は,日 本 の 医療 状 況 の な か で も,

Ara-A投 与 がHSV脳 炎 治 療 に 期 待 どお りの効 果

を 挙 げ うるか 否 か を 検 討 す るた め の 臨 床試 験 を行

な っ た.以 下 に そ の結 論 の 要 旨を報 告 す る.

被 検 薬 剤 な ら び にplacebo

Ara-Aは9-β-D上Arabinofuranosyl―adenineの 構

造 を も ち,in vitro 4)な らび に動 物 実 験5)で,HSV

増 殖 抑 制 効 果 を もつ ことが 立 証 され て い る.こ の

効 果 は,細 胞 内 で 活 性 化 され て三 燐 酸Ara-Aと な

った 薬 剤 が,ヘ ルペ ス ウイ ル ス。DNA-polymerase

の 活 動 を 阻害 す るた め で あ る と 説 明 され て い

る6)。

NIAIDグ ル ー プは,最 初,対 照群 にplacebo

と して 生 理 食塩 水 を 投与 した.そ の 結 果,10例

の対 照 群HSV脳 炎 の7例 は死 亡 し,2例 に は重

い後 遺 症 が認 め られ た2).第2回 目の臨 床試 験 で

は対 照 群 を置 か な い で,彼 等 が 脳 生 検 に よ って

HSV脳 炎 と 診 断 した 症例 の 致 死 率 は70%で あ る

との前 提 を置 い て効 果 判 定 を 行 な って い る3).

我 々 は,二 重 盲 検 試 験 の た め に対 照 群 に投 与 さ

れ る薬 剤 は,Ara-A投 与 と同 程 度 の効 果 が期 待 で

き る ものが 望 ま し い との 立場 か ら,こ れ まで報 告

され たAra-C7),γ-グ ロブ リ ン8),副 腎皮 質 ス テ ロ

イ ド剤9),そ の 他10)に つ い て検 討 した.1例 の 自

験例 で の 印象 を述 べ て い る論 文 は別 と して,Ara-

C投 与 例 を 検 討 した 複 数 の 論 文11)12)で は,効 果

の 否定 され たIdUR 13)に 比 べ る と利 点 が あ るが,

結 論 を 出す に は 対 照 群 を 置 い て の 臨 床 試 験 が 必 要

で あ る と主 張 して い る.Stevensら に よって 行 な

わ れ た 帯 状 庖 疹 に 対 す るAra-C投 与 試 験14)の 結

論 は,Ara-C投 与 群 の 予 後 が 生 理 食 塩 水 を投 与

され た 対 照 群 の それ よ り 悪 い と言 うもの で あ っ

た.宿 主 の 免 疫 能 を 阻 害 す るAra-Cの 望 ま しか

ら ざ る働 きが,Ara-Cの 病 原 ウ イ ル ス増 殖 阻 止 作

用 の 効 果 を 上 回 った結 果,予 後 がAra-C投 与 に

よ って 悪 化 した と 言 うのが 著 者 らの 推 定 で あ っ

た.こ の 見解 はGrifHth 15),Baringer 16)の 実 験 に

よ って も支 持 さ れ て い る.彼 らの実 験 結 果 は,実

験 的HSV脳 炎 の 動 物 にAra-Cを 投 与 す る と,

当初 は 脳 組織 の ウ イル ス量 は 減 るが,後 に な る

と,Ara-Cの 免 疫 能 阻 害 作 用 の た め に,そ の動 物

の脳 組織 ウイ ル ス量 が,無 治 療 対 照 群 動 物 の それ

よ り大 き くな る とい うもの で あ っ た.人 の場 合 で

もAra-C投 与 に よ り,第1次,第2次 免 疫 反 応 と

もに抑 制 さ れ る とい う報 告17)も あ るか ら,Ara-C

はHSV脳 炎 治療 剤 と して は適 当 で な い と判 断 せ

ざ るを え な い.γ-グ ロ ブ リン 投 与 効 果 につ い て

は,意 識 的 に そ の 可否 を 検 討 した 試 み が な い.

これ は おそ ら く,ウ イ ル ス脳 炎 の 場 合,脳 実 質 で

早 期 に ウ イ ルス に 対 す る免 疫反 応 が起 きて お り,

そ の なか で治 癒 機 転 に 主 と して 関与 して い る の は

細 胞 性 免 疫 反 応 で あ る との考 え方 が一 般 的 で,γ-

グ ロブ リ ン投与 の 効 果 は 専 ら 免 疫 不 全 症 々例 で

のHSV感 染 発 症 阻 止(postexposure seroprophyla-

xis)18)につ い ての み 検 討 され て 来 た こ とに よ るで

あ ろ う.我 々 もこれ ま での 日本 で の 投 与 例19)~22)

につ い て 検 討 した が,Ara-A投 与 の代 りに γ-グ

ロブ リン髄 腔 内 投 与 を 行 な うこ とを,主 治 医 に納

得 させ るに 足 りるほ どの報 告 を集 め る こ とは 出来

なか った.副 腎 皮 質 ス テ ロ イ ド剤 の投 与 は,開 頭

術 な ど と同 じ く,脳 炎 症例 の 脳圧 降 下 の た め の 対

症 療 法 と見 な す べ きで あ ろ うと我 々は考 え た.要

す る に我 々 として は,現 在 の と こ ろ,Ara-A投 与

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昭和57年9月20日 801

臨床試験の際に,placeboと して対照群HSV脳

炎症例に投与することが許 される薬剤を見出し得

なかったのである.

以上の理由により,我 々は,Ara-A投 与群の致

死率と,過 去5年 間に,そ れ らの病院 で診療 さ

れ,Ara-A投 与以外の治療を受けたHSV脳 炎症

例群の致死率とを比較する方法を採用 した.

Ara-A投 与に際 しては,体 重kgあ たり10~15

mgを 用時,適 当な溶剤に溶解 し,点 滴静脈内注

入を行った.注 入速度は輸液500m1あ た り2~4

時間 とし,投 与は10日間連続 して行なつた.な

お,症 状,副 作用の程度により,投 与量を適宣増

減 した症例である.

臨床試験の対象-Ara-A投 与群と

対照群,群 内層別と背景因子-

NIAIDグ ループは 「採取 した脳生検材料 でウ

イルス粒子が検出された症例」23)のみを対象 とし

てAra-A投 与の 有効性を立証 した.彼 らはCT

撮影 により病巣部位の 決定 しうる症例.言 いか

えると,急 性壊死性脳炎の病理像をもつ症例を選

んで24)25)脳生検 を行なっている.而 も此 の診断

法はBarza 26)に よると偽陽性率が10%程 度 だか

ら,「biopsy proved」 の症例は,HSV脳 炎 のな

かの極 く一部の重症例 ということになる.こ のよ

うに厳選された症例を対象として,致 死率 とい う

客観性に富む数値で判定 す る場合 でも偶然 の入

りこむ 余地はある.た とえば,昏 睡状態に在る

HSV脳 炎症例が,誤 嚥に由来する嚥下性肺炎で

死亡した場合などである.こ のような死亡例が,

Ara-A投 与群に属するか,対 照群に属するかは単

なる偶然だが,例 数の少ない場合には致死率に及

ぼす影響は甚大である.そ のような根拠か らTa-

9er 27)はNIAIDグ ループの第1回 の臨床試験に

対 して,有 効との 結論を引き 出すには対象例数

が少な過 ぎると 批判している.従 って,NIAID

グループの第2回 臨床試験の成績が発表された後

で,同 じ方法による臨床試験を,脳 生検を行な う

態勢のない我が国で,繰 り返す ことは意義が少な

いと我 々は判断した.

我 々がウイルス血清学的にHSV脳 炎 と確定 し

た 症 例 を 対 象 と してAra-A投 与 の 効 果 判 定 の た

め の 臨 床試 験 を 行 な うこ とに した理 由 は次 の よ う

な もの で あ る.

我 が 国 で は,HSV脳 炎 の最 初 の報 告例28)~30)以

来,ウ イル ス ・血 清 学 的検 索 を診 断基 準 と して来

た.小 川 論 文28)は,死 亡例,生 存 例 そ れ ぞ れ1例

か らな る報 告 で あ るが,先 ず 死 亡例 の剖 検 脳 組織

像 か らウ イ ルス 脳 炎 を 想 定 し29)そ こか ら分 離 した

ウ イ ルス を 検 索 して ヘ ルペ ス ウイ ル ス と 同定 し

た30).そ の後 で 入 院 した 第2例 の場 合 は,患 者 の

血 清 ・髄 液 の此 の ウ イ ルス に 対 す る抗 体価 の 動 き

を 根 拠 と して,HSV脳 炎 と 診 断 して い る.こ の

報 告 以 来,幾 つ か の技 術 的 改 良 は加 え られ た が,

基 本 的 に は 此 の ウイ ル ス血 清 学 的 診 断 基 準 が我 が

国 では 広 く行 なわ れ て 来 た.

この立 場 を 批 判 す るNIAIDグ ル ー プを 中 心 と

す る研 究 者 た ち は,ウ イ ル ス血 清 学 的診 断手 技 で

は,早 期 に 正 確 な 診 断 が 出来 な い か ら脳 生 検 材

料 の 電 子 顕 微 鏡 的 検 索 法 を 用 い よ と 主 張 す るの

で あ る31)~33).然 し,そ れ に対 して,両 者 併 用 で

早 期 診 断 を 行 な った報 告34)も あ り,Wayne State

University Cooperative Studyグ ル ー プ の よ うに,

ウ イル ス血 清 学 的検 査法 の 改 良 に よっ てHSV脳

炎 の 早 期 診 断 に努 め て い る 研 究 者 た ち も多 い35)~

37).こ の 二 派 の 間 の論 争 は 引続 い て行 な わ れ て い

る38).

この よ うな 状 況 下 で は,我 々は ウイ ル ス血 清 学

的 手 法 に よ ってHSV脳 炎 と判 定 さ れ た症 例 を臨

床 試 験 の 対 象 とす べ きで あ る と判 断 した.

Ara-A投 与 開 始 は 出 来 るだ け 早期,少 な く と も

第1病 週 であ る こ とが 望 ま しい.角 膜 に ヘ ル ペ ス

ウ イ ルス を 接 種 し,日 を 追 って 中枢 神経 組 織 の 各

部 分,延 髄,大 脳,小 脳 な どの ウイ ル ス量 を測 定

した マ ウス で の実 験 結 果 に よ る と,接 種後6日 で

最 大 量 に達 し,そ の 後 は 無 処置 群 で も速 や か に低

下 す る39).患 者 の場 合 に も,こ れ と同 じ よ うに初

期 段 階 で,脳 組 織 に お け る一 過 性 の ヘ ル ペ ス ウイ

ル ス の激 しい 増 殖 が あ る とす る と,そ の時 期 に

Ara-Aが 脳 組 織 に 存 在 す るか 否 か に よ って,症 例

の予 後 は 大 き く左 右 され る で あ ろ う.

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802 感染 症学雑誌 第56巻 第9号

HSV脳 炎の 早期診断についての 我が国の医療

事情は外国のそれと多少ちがっている.諸 外国で

は,今 となれば有害 と判定されているIdUR40)41)

あるいはAra-Cを 採 りあげて,早 期に投与すれ

ぽ有効な筈だから,脳 生検をやってでも早期診断

をつけようと試みて来た42).だ が,我 が国ではそ

のような試みはなされなかったのである.

技術的には,ウ イルス病の第4~8病 日に病原

ウイルスに対する抗体産生が検出できる43)と言わ

れているが,我 が国の場合,臨 床医が検体を提出

してから成績を知 るまでに1週 間を要するのが一

般であり,HSV脳 炎 と思われるEEG所 見を呈

した症例の診断を確定するために,「 ビールスの

同定,抗 体価測定 のため 髄液 と血清を 提出した

が,結 果は得 られず じまいであった」44)とい う事

態さえ起きうる.

従 って我 々は,最 も感度が よいと思われるEn-

zyme-Linked Immunoadsorbent Assay, ELISAシ

ステムによる血清 ・髄液の抗体価測定の態勢を整

え,検 体を送付 されれば直ちに測定 し,主 治医に

連絡することにより,出 来るだけ早期診断が可能

になるよう努めた.(そ の成果は別に分担研究者

から報告される予定である.)以 上のごとき方針

のもとに,全 国の100床 以上の国公立病院,300床

以上の共済組合と赤十字病院,500床 以上の 私立

病院,計1,074ヵ 所 と関係診療科長2,770名 に連絡

し,我 々の 臨床試験への 参加を 求めた.そ の結

果,Ara-A投 与が行なわれた症例が92例 あった.

同じ経路で,そ れぞれの病院で過去5年 間に診療

したHSV脳 炎についての情報を求め,58例 の症

例報告をえた.そ のうち22例は,Ara-C,γ-グ ロ

ブリンあるいはその両方の投与を受けており,残

りの36例 は対症療法に終始していた.

臨床試験を 行な うに当 り,我 々は対象 とした

Ara。A投 与群 と非投与群の全ての症例について,

臨床像,EEG所 見,CT所 見,神 経放射線学的

検査所見,ウ イルス血清学的検査 成績を再検討

し,各 症例を 次の 診断分類の 何れかに 位置づけ

た.

診断分類A:精 神神経症状,CT所 見,EEG所

見が急性局在性脳炎のそれと一致 し,血 清,髄 液

の抗ウイルス抗体価がHSV脳 炎に特有な動 きを

呈し,髄 液その他の一般的症状所見にもHSV脳

炎として矛盾するものがない.

診断分類B:抗 ウイルス抗体価の動 きはHSV

脳炎のそれと一致するが,急 性局在性 ウイルス脳

炎としての精神神経症状,CT所 見,EEG所 見

などの一部に非定型的なものがある.あ るいは,

検索に不充分な点がある.

診断分類C:ウ イルス脳炎 では あるが,HSV

に対する 抗体価の有意の上昇 がない.そ のなか

で,病原ウイルスの同定ができなかった症例をC1

群,同 定できた症例をC2群 とした.我 々が臨床

試験の対象 としたC2群 は,そ の全てが水痘(帯

状ヘルペス)ウ イルス脳炎であった。

診断分類D:ウ イルス脳炎 とは判定 しえなかっ

た症例のうち,中 枢神経系血管障害のごとく,病

名の確定できた症例をD2群,で きなかった例を

D1群 とした.

剖検例のばあい,脳 組織か ら,HSV粒 子が電

子顕微鏡で検出された症例,HSVが 分離 された

症例,免 疫蛍光法でHSV特 異抗原が検出された

症例は,診 断分類Aに 位置づけた.長 い経過の後

に 死亡したために,HSV脳 炎の特異的所見の明

かでない剖検例は,特 に矛盾する組織学的所見の

ない限 り,生 前の診断に従って分類した.

臨床試験の対象 とした全症例の診断分類の比率

をTable 1に 示 した.数 字は症例実数,括 弧内の

数字は比率(%)を 示す.

個々の症例についての記載はTable 2に纒めて

ある.

Ara-A投 与群 のばあいに比べると,対 照群 で

A+B診 断分類に属する症例の占める率が高いの

は,対 照群の症例は全経過を 観察 した後にHSV

脳炎 と確定 したものであ り,前 者はAra-A投 与

のため 病気の初期段階 で,HSV脳 炎 うたがい

との暫定診断を 附 して送 られた 症例 だからであ

る.

薬効評価の対象 としては,診 断分類Aな らびに

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昭 和57年9o月20日803

Table 1 Diagnosis classification of all patients in clinical study

1) encephalitis by Varicella-Zoster virus2) excluded, as inappropriate for of efficacy evaluation because of the treatment in too late stage of illness.* Figures in parentheses show percentage.

Bに 属する症例のみを用い,副 作用判定の対象 と

しては,診 断分類に 関係な くAra-A投 与全症例

を用いた.

1.薬 効評価の対象の整理

我々が診断分類Aな らびにBに 属すると認定 し

た症例(以 後,HSV脳 炎認定症例 と記載する)

は,Ara-A投 与群55例,対 照群51例 であり,対 照

群は 「Ara-C/γ-グロブリン投与群」と 「対症療法

群」とに分けられている.

ウイルス増殖阻止を 目的 とする 薬剤,Ara-A,

Ara-C,γ-グ ロブリンが30病 日以後に投与 された

ばあいは,理 論的にも薬効は期待できないので,

その症例は薬効評価の対象から除外 した.

経過を追って治療効果を観察するばあいの算定

の起点は,治 療群では薬剤投与開始の日,対 照群

ではplacebo投 与開始の日とした.対 症療法に

終始 した症例のばあいには,Ara-A投 与群での平

均投与開始 日である第11病 日をplacebo投 与開

始 日の代 りとして,経 過観察の起点 とした.従 っ

てHSV脳 炎認定症例のうち,11病 日以前に死亡

した症例は薬効評価の対象か ら除外 した.

2。 背景因子

HSV認 定症例のAra-A投 与群 と対照群 との背

景因子分析結果 がTable 3に 掲げてある.30歳

を境 として分けた場合の年齢分布に有意の差はな

いが,男 女比は 両群で 逆になっている.HSV脳

炎の最も重要な症候群で,予 後に最 も深い関係を

有する意識障害45)の第10病 日に於ける重 さを指標

として検定 してみると,両 群の病気の重 さには有

意な差はなかった.

臨床試験項目

1.Ara-A投 与群 と対照群の比較

1)薬 効評価の方法と成績の表現法

異なる治療群に属す るHSV脳 炎認定症例 の

i)致 死率,ii)後 遺症の程度,iii)担 当医師によ

る改善度評価,iv)安 全性評価,v)有 用性評価

について有意差検定を行なった.

図表のなかでは,有 意差判定の危険率が,1%

のばあいは**,5%の ばあいは*,10%の ばあい

は+で 示 し,有 意差のないばあいはNSと 表現し

た.

これ迄の報告47)~102)を総合 して判断すると,我

が国のHVS脳 炎症例の多 くは3~5ヵ 月の入院

加療の後,退 院して自宅あるいは別の施設に移さ

れ,死 亡した 場合 にも正確な 剖検所見が得 られ

ず,HSV脳 炎による死亡か,偶 発的合併症によ

る死亡か明確でない症例が少な くない.そ の状況

は現在 も変ってはいないので,比 較検定のための

観察は,症 例の多 くが入院加療中のAra-A投 与

後90日 で打ち切 り,そ の後の経過は参考 として記

録するに止めた:

2)薬 効評価成績

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804 感 染症学雑 誌 第56巻 第9号

Table 2a Summary of clinical courses of all patients treated with Ara-A

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昭 和57年9月20日 805

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806 感 染症学雑 誌 第56巻 第9号

1) diagnosis classification,vid. Table 1

2) Evaluation of improvementafter treatment

卅:Markedly improved

廾:Improved

+:Slightly improved

0:Nochange

×:Aggravation

3) Global evaluation of activities1: work or study ordinarily2: take care of himself but

not to work3: in bed not all day, but need

some help to take care ofhimself

4: in bed all day4) Outcome

S: SurvivedD: Died

5) Evaluation of safety1: no side effects2: continuous treatment with slight side

effects3: necessity of some therapy against

side effects4: discontinuance of treatment because

of side effects6) Evaluation of clinical utility

1: Extremely useful2: Very useful3: Slightly useful4: Useless5: Harmful

7) Excluded from mortality analysis becauseof death by complications

*: Ara-A started later than 31 st day of

illness

Table 2b Summary of clinical courses of control group

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昭和57年9月20日807

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808 感 染症学雑 誌 第56巻 第9号

1) diagnosis classification, vid, Table 1.2), 3), 4), 5), 6) vid, Table 2a

#) Treatment*: Treatment started later than 31 st

S: symptomaticday of illness

y-gl: y-globulin **: Died within 11 th day of illnessAra-C: cytosine arabinoside

Table 3 Back ground data in each treatment group of patients with HSV encephalitis

(1) Age

Figures in parentheses show percentage

(2) Sex

Figures in parentheses show percentage

(3) Level of consciousness on around 10 th day of illness

Figures in parentheses show per centage

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昭 和57年9.月20日 809

i)致 死 率 に及 ぼす 影 響

治 療 開 始後,30日,60日,90日 の,何 れ の期 間

の致 死率 も,Fig.1に 示 す ご と く,Ara-A投 与 群

の それ は,対 症 療 法 群 のそ れ よ り有 意 の 差 を もっ

て低 く,Ara-C/γ-グ ロ ブ リソ 投 与 群 の そ れ よ りは

低 い 傾 向 を もつ こ とが 明 らか にな っ て い る.

Fig. 1 Comparison of mortality of each eval-

uation period

(1) (2) (3)

(1) 30 days after treatment

(2) 60 days after treatment 13) 90 days after treatment

(a) Ara—A treatment(b) Ara-C and/or r-globulin treatment

(c) Symptomatic treatment

ii)後 遺症の程度に及ぼす影響

1970年 以降,我 が国の 学術雑誌に 報告 された

11SV脳 炎症例47)~102)を集計 したところでは,回

復後,病 前の状態に社会復帰できた症例は全体の

15%に す ぎない.そ こで,Ara-A投 与の評価の項

目に,「 後遺症の程度に及ぼす影響」を加えた.

中枢神経系感染症の後遺症は,極 めて複雑で数

量化 した表現が困難なので,「 植物人間的状態を

も含む寝たきりの状態」 「病室内での生活に介助

を必要 とする状態」 「身の廻 りの処理は出来 るが

社会復帰は無理な状態」 「元の生活に 戻 りうる

状態」などの大まかな分類しか出来ないことが多

い.我 々 は其 の 測 定評 価 を 出 来 るだ け 客観 的 に行

な うた め に,a)12項 目の能 力 評 価,b)尿 失 禁 の

有 無,c)担 当 医 師 に よ る 「日常生 活 状 態 の 総 合

評 価 」 の三 項 目を 検 討 した.

Ara-A投 与 の 後 遺 症 に 及 ぼす 影 響 を 知 るた め

に,投 与 後90日 で 各群 の後 遺 症 の程 度 を比 較 検 討

した.後 遺 症 の 程 度 は 其 の後 も変 動 して い る が,

90日 以 後 の 経 過 は,看 護,リ ハ ビ リテ ー シ ョンを

含 む環 境 因 子 に 左 右 され る傾 向 が強 い.従 って 薬

剤 自体 の 後 遺 症 に 及 ぼす 影 響 を 判定 す るた め に

は,投 与 後90日 を適 当 と判 断 した.

a)12項 目の能 力 評 価

12項 目 とは(1)ベ ッ ト上 で の動 作,(2)立 った

り座 った りす る 動 作,(3)歩 行,(4)階 段 の 昇

降,(5)用 便,(6)話 しの 内容,(7)他 人 の話 し

を 理 解 す る 能 力,(8)日 付 の記 憶,(9)計 算 能

力,(10)記 銘 力,(11)機 嫌,(12)身 体 の調 子 で あ

り,各 項 目に つ き,正 常 な ら1点,全 くで きな い

場 合 は4点 として,障 害 の 程 度 を担 当 医 に判 定 し

て 貰 った.

そ の12項 目の平 均 点 を 各群 に つ い て 比 較 した の

がTable4で,Ara-A投 与 群 の29.0%が 普 通 の生

活 が 出来 る よ うに な った の に対 して,Ara-C/γ-グ

ロ ブ リ ン投 与」群 の10.0%,対 症 療 法 群 の5.6%が

日常 生 活 に復 帰 で きた.逆 に,寝 た き りに な った

の は,Ara-A投 与群 の9.7%に 対 して,Ara-C/γ-

グ ロブ リ ン投 与 群 の60.0%,対 症 療法 群 の38.9%

で あ っ て有 意 の差 が 認 め られ る.

b)尿 失 禁 の 有無

Ara-A投 与群 は他 の群 に 比 べ る と,尿 失禁 の状

態 に陥 る傾 向が 少 な い と言 え る(Table5).

c)担 当 医 師 に よ る 「日常生 活 状 態 の総 合 評 価 」

以 下 の4段 階 に 分 け られ た.(1)普 通 に,仕

事,家 事,勉 学 に従 事 して い る.(2)身 の廻 りの

始 末 は 出 来 るが,仕 事,家 事,勉 学 は 出来 な い.

(3)身 の廻 りの始 末 に 介助 を要 す るが寝 た き りで

は な い.(4)寝 た き りの生 活.

そ の評 価 の結 論 は,当 然 の こ となが ら,12項 目

評 価 に近 い成 績 にな って い る(Table6).

Ara-A投 与 群 で は30.0%が 普 通 の,元 の 生 活 に

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810 感染 症学雑誌 第56巻 第9号

Table 4 Comparison of residuals of survived patients—Mean evaluation score of 12 items

Figures in parentheses show percentage

Table 5 Comparison of residual damages on survived patients—Urinary incontinence—

Figures in parentheses show percentage

Table 6 Comparison of residual damages on survived patients—Global evaluation of activities

Figures in parentheses show percentage

復 帰 して い るが,Ara-C/γ-グ ロブ リ ン群 と 対 症 療

法群 で,そ れ が 可 能 な の は そ れ ぞれ20.0%と11.1

%で あ った.逆 に 寝 た き りの 生 活 を して い る の

は,後 の2群 で は そ れ ぞ れ60.0%と38.9%で あ る

の に 対 して,Ara-A投 与 群 で は10.0%で あ った.

iii)担 当 医 師 に よ る改善 度 評 価

担 当 医 師 に依 頼 して,投 与 開始 時 に比 べ て の改

善 度 を,「 著 明改 善 」 「改 善 」 「や や 改 善 」 「不

変 」 「悪化 」 と評 価 して貰 った.

a)60日 前 後 の評 価

「改善 」 以 上 の 評 価 を受 け た 症例 はAra-A投

与 群78.4%,Ara-C/γ-グ ロブ リ ン群16.7%,無 治

療 群15.0%で,Ara-A投 与 群 は 後2者 に 比 して

有意 に 良 い評 価 を えて い る.ま た,Ara-A投 与群

で は 「悪 化 」 は 認 め られ な い の に 対 してAra-C/

γ-グロ ブ リン投 与 群,対 症 療 法 群 で はそ れ ぞれ,

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昭和57年9月20日 811

Table 7 Comparison of improvement evaluation by physicians-60 days after treatment

Figures in parentheses show percentage

Table 8 Comparison of improvement evaluation by physicians-90 days after treatment

Figures in parentheses show percentage

25.0%,15.0%が 「悪 化 」 して い る(Table7).

b)90日 前 後 の 評 価

60日 前 後 の 評 価 とほ とん ど 同 じ こ とが 言 え る

(Table8).

iv)安 全 性 評 価

安 全 性 の表 現 は,「 副 作 用 な し」,「 軽 い 副 作 用

は あ るが 治療 は続 け えた(軽 度 副 作 用)」,「 副 作

用 に 対 す る 医 学 的 処 置 が 必 要 で あ った(中 等 度

副作 用)」,「 副 作 用 の ため 投 与 中 止(高 度 副 作

用)」 の4段 階 とし,担 当 医 師 に評 価 して貰 っ た.

Ara-A投 与 群 の対 照 と して 選 んだ のは,Ara-C投

与(Ara-Cと γ-グロ ブ リン併 用 を含 む),γ-グ ロ

ブ リン投 与 の2群 で あ る.各 群 のA+B(HSV脳

炎)症 例 層 を 対 象 と した.

Ara-A投 与 の安 全 性 は,軽 度 の 副 作 用 を も含 め

て全 体 的 に評 価 す る と,Ara-Cの そ れ との 間 に 有

意 の差 は な く,γ 一グ ロブ リ ン投 与 よ りは 有 意 に 低

い(Table9).

しか し,Ara-C投 与 群 で は,重 篤 な副 作 用 のた

め に投 与 を 中止 せ ざる を え な い例 が36.4%で あ っ

た の に対 して,Ara-A投 与 群 で は,そ の よ うな症

例 は5.7%で,そ の 間 に有 意 の 差 が 認 め られ た.

v)有 用 性 評 価

有 用 性 は,「 極 め て 有 用 」,「 か な り有 用 」,「や

や 有 用 」,「 無 用 」,「 有害 」 の5段 階 の表 現 で担

当 医 に 評 価 して 貰 った.Ara-A投 与 群,Ara-C投

与(γ-グ ロブ リン併 用例 を含 む)群,γ-グ ロ ブ リ

ン投 与群 のA+B(HSV脳 炎)層 の 評 価 を と り

出 して 検 定 した の がTable 10で あ る.

明 らか にAra-A投 与 の 有 用 性 が高 く 評 価 され

て い る.「 か な り 有 用 」 以 上 はAra-A群 で は28

例(62.296)で あ った の に 対 して,Ara-C(γ-グ

ロブ リ ン併 用 も含 む)群,γ-グ ロ ブ リン投 与群 で

は夫 々3例(33.3%),0例 で あ った.尚,有 害

とい う 評 価 はAra-C投 与 のば あい に のみ 行 な わ

れ て い る.

2.Ara-A投 与群 症 例 の 層 別 化 に よる群 内比 較

検 定

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812 感染症学 雑誌 第56巻 第9号

Table 9 Evaluation of safety

Figures in parentheses show percentage

Table 10 Evaluation of clinical utility

Figures in parentheses show percentage

1)層 別 の 方法

Ara-Aの 投 与 を受 け たHSV認 定 の 症例 群 を,

i)30歳 を境 と した年 齢,ii)Ara-A投 与 開始 時

の 意 識 障 害 の 程 度,iii)20日 を 境 と したAra-A

投 与 開始 病 日 を指 標 と して 層別 し,a)死 亡 率 と

b)後 遺 症 につ いて 比 較 した.

2)層 別 比 較 検 定 成 績

i)若 年(30歳 以 下)層 と高 齢(31歳 以上)層

の 有意 差 検 定

a)死 亡 率 に つ い て は,例 数 の 少 な い こ と もあ

っ て層 間 に 有 意 な 差 は 現 れ て い な い.最 終 死 亡

率 は,若 年 層1/15(6.7%),高 齢 層 で3/32(9.4

%)で あ った(Fig.2).

b)後 遺 症 の程 度 の うち,「12項 目の 能 力評 価 」

と 「日常 生 活 状 態 の総 合 評 価 」 で,若 年 層 の成 績

が 高 齢 層 の そ れ に比 べ て,有 意 の差 で優 れ て いた

(Talbe 11).若 年 層 の45.5%が 社 会生 活 に 復 帰

で きた の に対 して,高 齢 層 でそ れ が 出 来 た の は20

%以 下 で あ っ た.「 尿 失禁 の有 無 」 に つ い て は,

年 齢 に よる差 は 認 め られ な か っ た.

Fig. 2 Comparison of mortality of each period of

patients treated with Ara-A

(1) (2) (3)

(a) 30> years old (b)>30 years old

(1) cummulative mortality 30 days after treatment

(2) cummulative mortality 60 days after treatment

(3) cummulative mortality 90 days after treatment

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昭和57年9月20日 813

Table 11 Comarison of residual damages on each group of survived patients treated with Ara-A

-Classified by age-

(1) Mean evaluation score of 12 items

Figures in parentheses show percentage

(2) Urinary incontinence (UI)

Figures in parentheses show percentage

(3) Global evaluation of activities

Figures in parentheses show percentage

(Statistic significance in Fisher's two tailed)

Fig. 3 Comparison of mortality in each group of patients treated with

Ara-A -Classified by level of consciousness at the beginning of

treatment-

(1) (2) (3)

(1) mortality 30 days after treatment(2) mortality 60 days after treatment(3) mortality 90 days after treatment

(a) clear and lethargic(b) semicoma and coma

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814 感染症学雑誌 第56巻 第9号

Table 12 Comparison of residual damages in each group of survived patients treated with Ara-A

―Classified by level of consciousness at the beginning of treatment―

(1) Mean evaluation score of 12 items

Figures in parentheses show percentage

(2) Urinary incontinence (UI)

Figures in parentheses show percentage

(3) Global evaluation of activities

Figures in parentheses show percentage

ii)軽 度意識障害(清 明十嗜眠)層 と重度意識

障害(半 昏睡+昏 睡)層 との有意差検定

a)死 亡例数の 少ないこともあって 死亡率につ

いては両層の 間に 有意の差は 認められなかった

が,意 識障害の軽度な層からは死亡例が出なかっ

たのに対 して,重 度意識障害層の 死亡率 は4/34

(11.8%)で あった(Fig.3).

b)後 遺症は,軽 度意識障害層で軽 く,重 度意

識障害層で重い傾向が認められた(Table12).

例えぽ,「12項目の能力評価」で重篤(3.01~4.00)

な後遺症を残 した症例は前者では0%で,後 者で

は22.3%で あった.「 日常生活状態の総合評価」

についてもその傾向が認められたが,「 尿失禁の

有無」については差が認め られなかった.

iii)早期(20病 日以前)投 与層 と晩期(21病 日

以後)投 与層の有意差検定

a)致 死率については両方の層の間に有意差が

認め られなかった(Fig.4)

b)後 遺症評価のうち,「12項 目の能力評価」と

「日常生活状態の総合評価」 とについては,早 期

投与層が有意の差で晩期投与層 より優れている.

「尿失禁の無い」症例は,早 期投与層で70%,晩

期投与層で50%で 有意の差はない(Table13).

死亡例数の少ないために,致 死率についての層

間有意差は認められなかったが,後 遺症の程度に

ついては明かに有意の差があった.極 く初期に投

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昭 和57年9月20日 815

Fig. 4 Comparison of mortality in each group of patients treated with Ara-A

―Classified by the day of illness when the treatment started with Ara-A―

(1)

(a) (b)

(2)

(a) (b)

(3)

(a) (b)

(1) 30 days after treatment

(2) 60 days after treatm ent

(3) 90 days after treatment

(a) before 20th day of illness

(b) after 20 th day of illness

Table 13 Cmparioson of residual damages in each group of survived patients treated with Ara-A―Classified by the day of illness when treatment started with Ara-A―

(1) Mean evaluation score of 12 items

Figures in parentheses show percentage

(2) Urinary incontinence (UI)

* (Fisher's two tailed)

Figures in parentheses show percentage

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816 感染症学雑誌 第56巻 第9号

(3) Global evaluation of activities

Figures in parentheses show percentage(Fisher's two tailed)

与を開始 した症例が少なかったので,20病 日を境

に層別せざるを得なかったが,NIAIDグ ループ

の報告2)3)によれば,臨 界点は昏睡出現の時期 らし

いから,7-10病 日を境に層別して比較するに充

分なほど早期症例がふえれば,投 与開始時期によ

る層問の差は更に明確になるであろう.今 回の臨

床試験でも,第7病 日以前に投与を開始 した層で

は5096が 社会復帰できたが,8-20病 日に投与開

始 した層では26.3%,21病 日以後に投与を開始 し

た層では10.0%が 社会復帰しえたのみであった.

3.診 断分類C症 例群 に対するAra-A投 与成

績について

此の群の症例数は全体に少な く,Ara-A投 与の

薬効評価は統計学的に不可能であるが,投 与例の

予後は極めて良かった.此 の現象は,他 のウイル

ス脳炎の予後がHSV脳 炎のそれより一般的に良

いこと,診 断分類C症 例の 中にAra-A感 受性 ウ

イルス(例 えば水痘一帯状疸疹ウイルス)に よる

脳炎症例が含まれていることなどによるものであ

ろ う.

Ara-A投 与の副作用

副作用は診断分類に関係なしに,投 与を受けた

症例全部を 対象 として調査 した.症 例の 自覚症

状,理 学的診察で認め られた副作用,投 与時の各

種検査値の変動について調査 した.重 症例では,

投与時に意識障害のあることが多いので,自 覚的

症状 としての副作用は殆ど訴えが無 く,Table14

に集計されたものは殆 どが軽症例の訴えた症状で

ある.此 のなかで注 目に値するのは,Ara-A投 与

Table 14 Summary of side effects

12 of 92 cases (13%) presented side effects

と同 時 に現 れ た発 熱 発 疹 な どで あ ろ う.振 戦 と

い う報 告 が あ った が,担 当医 師 の意 見 で は,他 剤

を 多 数使 用 して いた の で,Ara-A投 与 との因 果 関

係 は 不 明 との こ とで あ っ た.

これ まで 報 告 され てい るAra-A投 与 の副 作 用

は,消 化 器症 状,骨 髄 機 能 障 害 と くに巨 大 赤 芽 球

症103)104),腎 機 能障 害 の あ る例 で の神 経 毒 作 用,

と くに,一 過 性 失 語 症 状105)な どで あ る.そ の 程 度

は,必 要 な 症例 へ のAra-A投 与 を 中 止す る 程 で

はな く106),細 胞 性 免 疫機 能 を 傷 害 す る こ とも な

い107).我 々の 経 験 で も,臨 床 症 状 とな って 現 れ

る副 作 用 は 殆 どな く,検 査 所 見 に僅 か な変 動 が 認

め られ るの み の症 例 が多 か っ た.

Ara-A投 与 に よ る各 種 検 査 値 の 変 動

我 々はAra-A投 与 前,投 与 中,投 与 終 了 直 後,

終 了1週 間後,1ヵ 月後 に,赤 血 球 数,ヘ モ グ ロ

ビ ン,ヘ マ トク リ ッ ト,白 血 球 数 、 血 小 板 な ど

の骨 髄 系 検 査,GOT,GPT,LDH,Al-p,γ-GTP,

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昭和57年9月20日817

Fig. 5 Changes of clinical laboratory findings (GOT)

Fig. 6 Changes of clinical laboratory findings (GPT)

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818 感染症学 雑誌 第56巻 第9号

Fig. 7 Changes of clinical laboratory findings (7-GTP)

LAP,総 ビ リル ビ ン,総 蛋 白な どの 肝機 能検 査,

BUN,Creatinine,尿 酸 な どの 腎機 能検 査 を 行 っ

た.

Ara-A投 与 時 に,検 査 値 が 正 常範 囲 に在 っ た症

例 に つ い て,投 与 中 と投 与終 了 直後 の数 値 を み る

と,赤 血 球 数 は66例 中20例(30.3%),ヘ モ グ 戸

ビ ンは61例 中19例(31.1%),ヘ マ トク リッ ト値

で は64例 中21例(32.8%)に 減 少 が認 め られ た.

HSV脳 炎 症 例 の大 部 分,と くに重 症 例 で は 白血

球 増 多 症 が み られ る もの で あ るが,正 常 範 囲 に 在

った27例 につ い て み る と,そ の4例(14.8%)が

正 常範 囲 以下 とな って い る.血 小 板 数 は,同 じ く

正 常範 囲 に 在 った48例 中4例(8.3%)が 減 少 し

た.肝 機 能 を 測 るた め の 酵 素 学 的検 査 法,た と

え ばGOT,GPT,γ-GTPに つ い て,投 与 開始 時

正常 範 囲 内 に在 っ た もの につ いて 検 討 す る と,夫

々,51例 中14例(27.5%),59例 中24例(40.7%),

32例 中10例(31.3%)が 正 常範 囲 を越 え て増 加 し

て い る.但 しそ の増 加 の 上 限 はGOT500,GPT

300,γ-GTP400以 下 で,投 与 終 了1ヵ 月後 に は 正

常 範 囲 内 に復 して い る.ま た これ らの酵 素 学 的 検

査 値 は,HSV脳 炎 そ の もの に よって も上 昇 し う

る もの で あ り,特 に髄 液 中 のGOT,GPTの 上 昇

はHSV脳 炎 の診 断,そ の重 篤 度 の 推 定 に 役 立 つ

との報 告49)さ え あ る.試 み に,Ara-A投 与 を 受 け

た全 対 象 例 か ら ウイ ル ス脳 炎 重 症例 だ け を 抜 きだ

し,そ の群 の検 査 成 績 を,残 りの 症例 群 の 検 査値

と 比 較 して み る と,GoT(Fig.5),GPT(Fig.

6)γ-GTP(Fig.7)で は,両 群 の 間 に 明 らか な

差 が あ る.こ れ らの 差 が,ウ イ ルス 脳炎 自体 の た

め で あ るか,あ る いは,重 症例 で は何 等 か の理 由

で,Ara-Aの 副 作用 が現 れ 易 い こ とに 由来 す るの

か は 明 らか で な い.

考 察

我 々の 臨 床試 験 で は,対 照 群HSV脳 炎 症 例 の

致 死 率 は33%で,Ara-A投 与 群 のそ れ は8%で あ

った.つ ま り,Ara-A投 与 は,急 性 壊 死 性 脳 炎 の

型 のHSV脳 炎 の み な らず,非 定 型 症 例 も 含 む

HSV脳 炎 全 体 に 対 して 救命 効果 を 有 す る.投 与

開始 後90日 で 判 定 した 後遺 症 の比 較 検 定 に お い て

も,Ara-C/γ-グ ロ ブ リ ン 投与 群 で(3.01~4.00)

とい う評 点 の 重 症例 が60%で あ っ た の に対 して,

Ara-A投 与群 の そ れ が10%た らず で あ っ た とこ ろ

か らみ て も,Ara-A投 与 が有 効 で あ る こ とは 明 ら

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昭和57年9月20日 819

かである.

群内層別比較の投与開始病日に関する項で,私

たちは第20病 日を境にして,其 の前後を比較 して

一応の差があることを見出した.我 々が行なった

動物実験の成績119)から推定すると,此 の層別の

境界を7~10日 に置 くことが出来たならば,そ の

前後の差は更に明確なものになったであろう.同

じくウイルス脳炎でもHSV脳 炎は,例 えば麻疹

ウイルスに よる亜急性硬化性汎脳炎(SSPE)に

比べると,病 原ウイルスが急速に脳組織全体に拡

がる時期が 明確である.従 がって,Ara-A投 与

が,其 の時点の前であるか後であるかは,お そら

くは 時間きざみで,治 療効果に影響 するであろ

う.

従 ってHSV脳 炎は,破 傷風とおなじく,救 急

医療の 対象として取 り扱かわれるべき疾患であ

る.つ まり,正 確な迅速診断手技が確立される必

要があると同時に,臨 床医が必要に応 じて速かに

検査成績を知 り,治 療を始め うる仕組が整ってい

ないと,Ara-A投 与の効果は充分には発揮されな

いであろ う.

検査手技について言えば,こ れまで行なわれて

来たウイルス血清学的検査手法を更に精密化し,

とくに髄液中の微量の抗体を検出する手法を確立

する努力をする一方で,髄 液,あ るいは,其 の中

の細胞108)109),あるいは,皮 膚生検材料110)から,

免疫蛍光法その他の手法でHSV特 異抗原を検出

する方法を普及さぜなくてはならない.こ れらの

検査法の陽性率は 極めて 低いが,陽 性の場合 に

は,早 期にHSV脳 炎の 診断が 確定してAra-A

投与を行ない うるからである.

症状,病 型 についての群内層別評価 のため,

Ara-A投 与時の意識障害の程度により対象症例を

二分 して夫々の予後を比較 した.死 亡例の少ない

こともあって致死率の差は明らかにしえなかった

が,後 遺症の程度は重度意識障害層のそれがより

重篤であった.重 症症例層の後遺症が,軽 症症例

層のそれより重いのは当然であり,Ara-A投 与は

意識障害の軽いうちに開始すべきである.

Ara-A投 与の効果を詳細に知るためには,HSV

脳炎の臨床像を構成する 諸症状,た とえば,発

熱,意 識障害,痙 牽,麻 痺などの諸症状の推移

にAra-A投 与が与える影響を検討 しなければな

らない.痙 牽症状は 消失しやす く麻痺 は 治り難

い111)~n3)と言われるように,HSV脳 炎の諸症状

は無処置例のばあいでも,夫 々の特有な経過を辿

る.し かし,こ れらの症例は夫々ちがった発生病

理をもち,或 るものは細胞内のウイルス増殖に,

他のものはそれに対する免疫反応に由来す るもの

であるか ら,抗 ウイルス剤であるAra-Aの 投与に

対 しては夫々ちがった反応を示すであろ う.従 っ

て発病阻止の場合は別として,発 病 してしまった

HSV脳 炎の 治療のためには,Ara-A投 与は他の

対症療法,例 えば,副 腎皮質ステロイ ド療法114)

な どと併用されることが望 ましいのは言を侯たな

い.

ヘルペスウイルスが潜在性感染を起こすことは

周知のことであ り,HSV脳 炎か ら回復し,生 存

している症例の体内にウイルスが残存するか否か

が当然問題となる.我 々も,こ の臨床試験の対象

となった症例群の長期観察結果を後 日報告する予

定であるが,当 面問題になるのは,「再燃性HSV

脳炎」115)116)である.我 々の 臨床試験の症例 に

も,後 遺症の症状が動揺 した症例はあったが,明

かな 「再燃性脳炎」 と呼ぶべき症例は無かった.

最近になってKoenigら117)は,脳 生検 により

HSV脳 炎 と診断された症例が,Ara-A投 与によ

り治癒 して後,暫 くして 再び脳炎の臨床像を呈

し,脳 生検で調べたところ,HSV脳 炎 ではな く

て脱髄性脳炎 であったという症例を 報告 してい

る.実 験的にはマウスHSV脳 炎の際に脱髄現象

が起 きることが知 られている118)が,Koenigの

脱髄脳炎 がHSV感 染 そのもの の 結果 で あ る

か,Ara-A投 与の影響 であるかは,今 後解明 さ

れるべき 問題 であろう.何 れにしてもこの 問題

はAra-A投 与HSV脳 炎の後遺症を検討する際

に避けて通ることは 出来 ない重要な 課題 であろ

う.

結 論

全国の病院に入院 したHSV脳 炎症例を対象 と

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820 感染症学雑誌 第56巻 第9号

して,Ara-A投 与の有用性を評価するための臨床

試験を行なった.

ウイルス血清学的検査成績を中心 とした診断基

準に従って,研 究会でHSV脳 炎と判定 した症例

群を対象 とする 薬効評価試験 では,対 照群(43

例)の 致死率が33%で あったのに対して,Ara-A

投与群の致死率は8%で あった.従 って治療群の

致死率は,有 意の差(P<0.05)で,対 照群のそ

れより低かった.投 与後90日 で判定 した後遺症の

程度についても,Ara-A投 与群が軽かった.

Ara-A投 与群内層別 を 行ない,各 層間の 致死

率,後 遺症の程度に関する検定を行なった.層 別

因子のなかで,Ara-Aの 薬効に影響するものは,

投与開始病 日であった.従 って,早 期投与の励行

に より,Ara-A投 与の効果は更に強められるもの

と考えられる.

今回の臨床試験では,Ara-A投 与全症例を調査

したが,重 篤な副作用は認められなかった.

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824 感染症学雑誌 第56巻 第9号

Therapeutic Effect of Ara-A on Herpes Simplex Virus Encephaliti

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Takeshi SATOHDepartment of Neurology, Juntendo University, School of Medicine

Hiroshi SHOJIThe First Department of Internal Medicine, Kurume University, School of Medicine

Toshiaki TAKASUDepartment of Neurology, Nihon University, School of Medicine

Hiroshi TSUKAGOSHIDepartment of Neurology, Tokyo Medical and Dental University, Faculty of Medicine

Tohru MANNENDepartment of Neurology, Institute of Brain Research, Faculty of Medicine, University of Tokyo

Hiromichi MIZUTANI

Department of Virology, Institute of Medical Information, The Kanto Teishin Hospital

To learn more about the efficacy of Ara-A treatment of HSV encephalitis in our country , we conducted ahistorical comparative study of 150 patients admitted to the reliable hospitals because of suspected disease .

In 106 cases of HSV encephalitis proved by clinico-serological findings, Ara-A treatment reduced cum-murative mortality at the 90th day of observation from 33 to 8 per cent (p<0.05) and 80 per cent of treated sur-vivors had no or only moderately debiliating residual damages . This improvement was achieved withoutevidence of acute drug toxicity.

The prognosis was markedly influenced by the day of illness when the patient was started on Ara-A treat-

ment among several factors other than drug. Therefore, the need for rapid and accurate diagnosis in suspected

encephalitis must be emphasized.