手指に生じたatypical mixed tumorの一例

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高知大学 第二外科 形成外科 石垣 達也 吉田 行貴 手塚 崇文

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Page 1: 手指に生じたAtypical mixed tumorの一例

高知大学 第二外科 形成外科 石垣 達也 吉田 行貴 手塚 崇文 

Page 2: 手指に生じたAtypical mixed tumorの一例

Mixed tumor of  the skin  成人男性の頭頸部に多くみられ、孤発性に緩叙に発育する良性の皮膚付属器腫瘍である。 

 好発部位は顔面で特に鼻、口唇周囲に多い。  完全摘出されていれば再発はなく予後は良好である。  病理学的には真皮内に周囲との境界が明瞭な腫瘤で、上皮性腫瘍組織の増生と粘液腫、軟骨様の間葉系組織の増生がみられ、また筋上皮細胞が散在ないしシート状に混在している。 

Page 3: 手指に生じたAtypical mixed tumorの一例

症例  患者:63歳 男性  主訴:右示指、左中指の皮下腫瘍  既往歴:58歳時 腰部ヘルニア手術(全身麻酔)  職業:農家  現病歴:以前から(詳細不明)右示指に皮下腫瘍みとめ近医でフォローされていた。何度か穿刺施行されたが改善せず当院紹介受診となった。

Page 4: 手指に生じたAtypical mixed tumorの一例

現症(右示指)

Page 5: 手指に生じたAtypical mixed tumorの一例

現症(左中指)

Page 6: 手指に生じたAtypical mixed tumorの一例

手術所見(右示指)

Page 7: 手指に生じたAtypical mixed tumorの一例

手術所見(左中指)

Page 8: 手指に生じたAtypical mixed tumorの一例

病理所見

弱拡大:腫瘍は真皮内にあり周囲は硝子化した線維結合織で囲まれており、                  境界明瞭

Page 9: 手指に生じたAtypical mixed tumorの一例

病理所見

中拡大:嚢胞状、乳頭状の腺管構造みとめる。周囲には筋上皮様の多稜形細胞         をみとめる。

Page 10: 手指に生じたAtypical mixed tumorの一例

 病理所見(免疫組織化学染色)

←S-100 →Carponin

←α-SMA →P63

Page 11: 手指に生じたAtypical mixed tumorの一例

病理所見

強拡大:明瞭な核小体、核腫大、クロマチンの濃縮をみとめる細胞や核分       裂像が多くみられる

Page 12: 手指に生じたAtypical mixed tumorの一例

病理所見

P53染色:良性ではみられない程P53の発現が高頻度にみられる

Page 13: 手指に生じたAtypical mixed tumorの一例

病理診断 •  管腔構造を形成する上皮細胞とその周囲に散在、シート状に増殖する筋上皮細胞が種々の程度に混在して増生しておりMixed tumorと診断した。 

•  細胞異型、核分裂像が多くみられ、P53の過剰発現もあることから悪性が疑われる。 

•  ただし、周囲との境界は明瞭で周囲への浸潤がみられないことから、Atypical mixed tumorとの診断に至った。 

Page 14: 手指に生じたAtypical mixed tumorの一例

 考察  病理所見上Mixed tumorが考えられる症例のうち、悪性を疑わせる所見(細胞異型、核分裂像の多発)がみられるが、周囲との境界が明瞭で浸潤性増殖もみられないものはAtypical mixed tumorと呼ばれている。 

 Malignant mixed tumorは遠隔転移、再発とも高確率でみられるが、Atypical mixed tumorでは遠隔転移はまれだが再発の頻度は高いとの報告もある。 

 再発は3年後にみられたという報告もあり、長期的なフォローアップが必要と考えられる。

Page 15: 手指に生じたAtypical mixed tumorの一例

Malignant mixed tumor(MMT) •  浸潤性、破壊性の増殖形式をとり、局所再発、転移を高い確率で起こす悪性度の強い腫瘍である。 

•  発生はごくまれで報告例も少ない。 •  好発部位は体幹、四肢で特に手足に多い。 •  腫瘍はCysticな形状をしており自覚症状なく、悪性を疑わせるような潰瘍化等もなく特徴的な所見はない。 

•  病理学的には境界が不明瞭で周囲への浸潤所見がみられる。良性のMixed tumorと同様上皮成分、間質成分、および筋上皮細胞の増生がみられるが、核分裂像、細胞異型が多くみられる。

Page 16: 手指に生じたAtypical mixed tumorの一例

結語  手指に発生したAtypical mixed tumorを経験した。  Mixed tumorのうち13%にAtypicalな変化が認められるとされる。 

 病理学的には境界型であるが臨床的には良性腫瘍として扱ってよいとされるものの、再発の頻度が高いとの報告もあり長期的な経過観察が必要である。