autumn 2017 - サントリー...autumn 2017 世界にひとつの オルガン インタビュー...

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サントリーホール情報誌 Autumn 2017 Reオープニング特集 世界にひとつの オルガン インタビュー ヴァイオリニスト 五嶋 龍 9〜11月の コンサート案内

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Page 1: Autumn 2017 - サントリー...Autumn 2017 世界にひとつの オルガン インタビュー ヴァイオリニスト 五嶋 龍 9~11月の コンサート案内 サントリーホール会報誌(製版・修正あり)

サントリーホール情報誌Autumn 2017

Reオープニング特集世界にひとつの

オルガンインタビュー

ヴァイオリニスト五嶋 龍9〜11月の

コンサート案内

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世界にひとつの

オルガン

これまでにない、大規模なオーバーホールを施し、最後の整音作業中のオルガン。

この世でいちばん大きな美しい楽器。

天上から降り注ぐような壮大な音色に包み込まれる、

圧倒的な音楽体験。

中でも、サントリーホールのオルガンは世界最大級。

パイプの数は正面に見えるものだけでなく

その奥の空間に何列にも何段にも並び

6メートルを超すパイプから手の平サイズまで、総数5898本! 

大規模なオーバーホールを行い、

9月1日のReオープニング・コンサートで

ホール中の空気を震わせるであろうオルガンの魅力を、

誕生物語とともに探ります。

撮影・入江啓祐

2017年9月1日、夕暮れ時のアーク・カラヤン広場。サントリーホールのエントランス前で

高らかにオープニング・ファンファーレが鳴り響きます。7ヵ月間の大改修工事を終え、開館31年目のReオープン。

お待たせしました。どうぞ、ホールの中へ。*

クリスタルガラスのシャンデリアが、以前と変わらぬ輝きでお出迎えします。

深紅の絨毯をまっすぐ大ホールへお進みください。ワインレッドの客席が、ぶ

ヴィンヤード

どう畑のように段々状に広がります。ぶどう柄の特注布地を張り替えたばかりの座席は、ゆったりとして手触り滑らか。

2006席の客席の中心には、床板が張り替えられた真新しいステージ、そして、隅 ま々で調えられた世界最大級のオルガン。

車いすの方も安心してご利用いただけるよう、2階席につながるエレベーターも新設いたしました。室内楽に最適なブルーローズ(小ホール)も、寄木細工の床板を新調し、

親密であたたかみのある空間に、さらに磨きをかけました。*

「世界一美しい響き」をめざすサントリーホールの、新しい幕開けです。今ここでしか体験できない音楽。

演奏家と聴衆が一体となってつくりあげる特別な時間。さあ、開演です。

Reオープニング特集

サントリーホール情報誌Autumn 2017

Reオープニング特集世界にひとつの

オルガンインタビュー

ヴァイオリニスト五嶋 龍9~11月の

コンサート案内

サントリーホール会報誌(製版・修正あり)

表紙1

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<サントリーホール情報誌『Hibiki』創刊>サントリーホールは1986年に東京初のコンサート専用ホールとして、“世界一美しい響き”をコンセプトに誕生しました。巨匠カラヤンから「まるで音の宝石箱だ」と称えられ、30年間多くの音楽家、音楽ファンに育てていただいたサントリーホールの響きを、より多くの方々に届けたい――そんな想いを込めて、情報誌『Hibiki』を創刊しました。表紙絵は、海外にも活躍の場を広げる陶芸家/アーティスト・鹿児島睦(Makoto Kagoshima)氏による描きおろし。クラシック音楽の、心躍る豊かな世界を表現していただきます。

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とが決定されます。その要となるパイ

プは、音色に応じて素材(金属の配合

比率、木製パイプもあります)や発音

原理(縦笛と同じ原理で音が出るフル

ー管と、リードを振動させるリード管)、

形状(開管、閉管、半閉管)が異なり、

カラヤンの一言

「オルガンのないコンサートホールは、

家具のない家のようなもの。コンサー

トホール自体が、オルガンを備えた楽

器なのです」

 

二十世紀の大指揮者ヘルベルト・フォ

ン・カラヤンは言いました。

 

夢のサントリーホール建設構想が具

体化しつつあった1983年、のちの

初代館長・佐治敬三がヨーロッパ視察

に訪れたときのことです。ベルリン・

フィルの本拠地でヴィンヤード(ぶど

う畑)形式の『フィルハーモニー』設

ター・フォンバンクさんでした。

「5898本のパイプすべて、自分た

ち6人の職人の手でつくったんです」。

 

工房で組み上げた巨大なオルガンを

解体し、部材ごとにコンテナに積み込

さらに長さによって音の

高さ(音階)が決まりま

す。音色は、製作する地

域やメーカーによっても

異なるので、世界に1台、

そこでしか聴けない音色

がつくられるのです。

 

サントリーホールの当

時のオルガン研究グルー

プは、ヨーロッパ中の教

計に深く携わったカラヤン氏からの直

接のアドバイスで、サントリーホール

のオルガンづくりが始まりました。

音色をつくる

 

オルガンはすべてがオーダーメイド。

設置される空間の大きさや演奏したい

音楽の傾向に合わせて音色の種類と数

会やホールのオルガンを聴き歩きまし

た。そして、ウィーンのアウグスティー

ナ教会で出会った、柔らかく温かみの

ある響きに全員が魅かれたのです。「こ

の音だ!」。オーストリアのリーガー

社製オルガンでした。

誕生の瞬間

リーガー社は19世紀半ばから続く名

門で、パイプづくりから組み立てまで

一貫して生産し、世界各国へ輸出する、

数少ないオルガンビルダーです。山間

にある工房で、36人のチームが198

5年から1年がかりで、サントリーホ

ールのオルガンづくりに取り組みまし

た。そのとき、錫と鉛を配合して薄い金

属板をつくり、丸めてパイプに仕上げ

る作業をしていたひとりが、今回のオ

ーバーホールのために来日したヴァル

ベルリンにて、マエストロ、カラヤン(左)と佐治敬三。下は、サントリーホールのオルガンの音始め。A(ラ)音の鍵盤を押す佐治初代館長。

写真上は、オルガンの内部。演奏台の鍵盤と「ストップ」と呼ばれるノブの操作によって特定のパイプにだけ風が送り込まれ、音が出る仕組み。このオルガンは手鍵盤4段と足鍵盤、74 ストップ(写真左下)。ストップ数は音色を使い分ける機構の数で、ノブには「フルート」「トランペット」「ヴィオラ」などの

名が。つまり、その楽器の音色を備えているということ。だからこそオルガンは「たった1台のオーケストラ」と呼ばれるのです。今回のオーバーホールではリーガー社から、クリーニングと修理の作業チーム 5 名が来日。

「オルガンを観察し、理解し、敬意を払って作業します」。

たった1台のオーケストラ

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かかる。パイプもだんだんリラックス

してきたんじゃないでしょうか。デザ

イン的にも、このホールにこのオルガ

ンの形はとても合っていますね」。 

 

この先100年も200年もこの場

所で、オンリーワンの音色を響かせる

であろうオルガン。

から慎重にパイプをはずし、まずはパ

イプ内のほこりを掃除。時間とともに

変形してしまった箇所を修理、整形し

ます。ふいご(送風装置)やトラッカー

と呼ばれる装置、鍵盤、ストップノブ

などすべてパーツごとに分解して調整。

み、オーストリアから船で日本へ輸送。

完成したばかりのサントリーホールの

中で、半年間かけて組み立てと音の調

整(整音)が行われました。

 

そして1986年10月12日、サント

リーホール落成式典の始まる午前10時

半。タキシードに身を包んだ佐治敬三

館長(当時)が、オルガンの前に進み

ました。人差し指で、A(ラ)の鍵盤

を押します。オーボエのような音色の

A(ラ)音がホールに響きわたり、そ

れに合わせて、オーケストラの面々が

舞台上でチューニングを始めました。

これが、サントリーホールの音始めで

す。そ

して31年後……

 

大規模なオーバーホールの現場は、

まるで建築現場のよう。オルガン本体

1ヵ月以上かけてすべてのメンテナン

スが終わると、今度は整音師チームの

責任者、前述のヴァルターさんが来日

しました。周囲の音や動きに影響され

ない深夜の作業。オルガンの音が1音

ずつ、静まり返ったホールに響きます。

ヴァルターさんはオルガンの中に入り

こみ、パイプの1本1本を確認します。

5898本すべてを、正しいイントネ

ーションに調整するのに、やはり1ヵ

月かかりました。この道40年のヴァル

ターさんは言います。

「オルガンの木の部分は、環境によっ

て変化します。30年の間に環境に適し、

“サントリーホールのオルガンの音”

になってきたと思います。私が思うに、

金属製のパイプもそうです。音が鳴っ

て振動して金属が落ち着くには時間が

整音作業は、演奏台に1人(中央)、オルガン内部に1人の2人体制。パイプが立ち並ぶ狭い空間で黙々と続けられます。

「壮大な音、繊細な音、さまざまな色

彩のある音色があって、喜びや悲しみ

やさまざまな感情が喚起される。それ

が、この楽器の魅力です」。

 

時を経てますますホールと一体化し、

オーバーホールによってよりクリアに美

しく整ったオルガンの音を、ぜひ聴きに

いらしてください。

サントリーホールでオルガンを楽しむ

オルガンプロムナードコンサート毎月1回、木曜日のお昼時に開催する30分間の無料コンサートです。2017年は9月14日/10月12日/11月 2日/12月21日12:15〜12:45(12:00開場)

オルガン・カフェ #410月15日(日)13:30開演毎年好評のオルガン・コンサート。コンサートとホテルでのランチセット券やカフェセット券も販売しています。詳細はHPで。

【出演】オルガン:勝山雅世打楽器:前田啓太/綱川淳美ナビゲーター:川平慈英

【曲目】ヴィエルヌ:ウェストミンスターの鐘

(チャイムパート編曲:近藤 岳)ヴィドール :オルガン交響曲第6番 ト短調 作品42-2 第1楽章 他

クリスマスオルガンコンサート2017バッハ・コレギウム・ジャパンのクリスマスCHOICE

12月24日(日)16:00開演クリスマスの名曲を中心に、美しい合唱の調べとオルガンの荘厳な響きを、聖夜に贈ります。

【出演】オルガン:鈴木優人指揮:鈴木雅明合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン 他

それいけ ! オルガン探検隊オルガンの仕組みや音色、歴史をよりよく知っていただく、毎年恒例の夏休み体験型企画です。次回は2018年7月開催予定(詳細未定)。

1986年の開館時、整音師アシスタントとして来日したヴェンデリン・エーベルレさんが、現在のリーガー社の社長です。

オーストリアからメッセージが届きました。 サントリーホールのオルガンは、私に

とって非常に特別な楽器です。1986年、

私はこのオルガンを設置し、整音するチ

ームの一員として来日していました。あ

の頃、私は若いオルガン技師でした。

社長となった今でも、大型楽器を日本に

設置するという当時の胸の高鳴り、初

めて接する日本文化、そして日本の人た

ちと育んだ友情といった楽しい記憶を、

このオルガンは思い起こさせてくれます。

 オーバーホールを経て、再び、このオ

ルガンは長きにわたって使い続けられ、

これからもサントリーホールにお越しの皆

さんに歓びを与え続けることでしょう。

ヴェンデリン・エーベルレ

31年前にオーストリアの工房でパイプづくりを手がけたヴァルター・フォンバンクさん(右)は、今回は整音師として初来日。

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弱冠7歳でヴァイオリニストとしてデ

ビュー。1998年に10歳で初めてサン

トリーホールの舞台に立って以来、数々

の素晴らしい演奏を繰り広げてきた五嶋

龍さん。現在、ニューヨークを拠点とし、

多くの音楽家や交響楽団と世界中で演奏

を重ねています。そして、年明け1月に

はバーンスタイン生誕100周年の演奏

会でNHK交響楽団との共演、3月にニュ

ーヨーク・フィルハーモニックの日本・

アジアツアーのソリストとして舞台に立

つことになっています。

 

そんな五嶋さんにとってサントリーホ

ールはどんな存在なのでしょうか。

「ここに来るとホールが『おかえりなさ

い』と迎えてくれているように感じます。

『ホームベースに戻ってきたな』という

気持ちになるのですが、サントリーホー

ルに“慣れている”ということではあり

ません。一方で緊張感もあり、ホールが

挑戦してきているように感じるんです。

両面の雰囲気があるところが、サントリ

ーホール独特だと思います。僕も挑む気

持ちで毎回演奏しますし、サントリーホ

ールでの公演がツアーのピークだと思っ

ています」

 

サントリーホールにはオーラがあると

五嶋さんは言います。

「もちろん、音響やスペースという点で

も好きなホールです。響きとしては、残

響がありすぎず、しかもヴァイオリンの

音色がきれいに聴こえるエコーがありま

す。ヴァイオリンのすべての音域、音階

をイーヴンに出してくれるので、無理し

て楽器の音を引き出さないと聴こえない

のでは、という心配をする必要がなく、

凄く安心して演奏できます」

 

そして、サントリーホールには“意志”

を感じるというのです。

「サントリーホールは設計も、音響も、

ホスピタリティも、すべて、あるヴィジ

ョンに向かってつくられている、一点に

集中してつくりあげられているという印

象があります。英語で言えば、Collective

Vision

。サントリーホールに来られるお

客様も、ホールの空気から、そのチーム

ワークに吸い込まれていると感じます。

だから、ここではみなさんと一体になれ

る雰囲気があるんです」

 

楽屋にまでそのCollective V

ison

を感

じるそうです。

「僕はサントリーホールの楽屋が大好き

なのです。シンプルなんですが、ひとつひ

とつのディテールに気持ちがこもってい

て、床から壁からそれが滲みでている。そ

のなかにいるとすごく安心するんです」

 

五嶋さんはサントリーホールを訪れる

人にぜひ体験してほしいことがあると言

います。

「あるとき、たまたま地下の楽屋口から

ホールのエントランス前のカ*ラヤン広場

に向かって階段を駆け上ったら、急に左

手から雨がザーッ、ザーッと近づいてき

たのです。そのとき、映像でしか触れた

ことがないカラヤンが、まるで天空から

『カラヤン広場』にタクトを振り下ろし

た瞬間を目前で見たように感じました。

また、陽だまりのカラヤン広場で“合唱”

が聴こえてくる幻想体験をしたこともあ

ります。僕はロマンティストではないの

ですが……。初めてサントリーホールに

来られる方、何度も来場している方も、

ぜひ一瞬、カラヤン広場で立ち止まって

みてほしいですね。あなたはどんなメロ

ディーに出会われるでしょうか」

五嶋

龍(ヴァイオリニスト)

ここでしか出会えないオーラ

Hibiki Special Interview

五嶋 龍(ごとう・りゅう)1988年ニューヨーク生まれ。7歳でデビュー。10年間にわたりフジテレビのドキュメント番組「五嶋龍オデッセイ」で成長過程が紹介されたほか、数々のメディアで特集が組まれ注目を集める。ソリストとして日本国内のオーケストラはもとより、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン交響楽団、サンフランシスコ交響楽団などのオーケストラ、マゼール、アシュケナージ、チョン・ミョンフンをはじめ多くの名指揮者と共演。2017年後半には日本各地でproject R“拉致被害者を忘れない。” チャリティー・コンサートを企画・出演。またニューヨーク、中南米、アフリカ、アジアでも教育活動・国際文化交流・社会貢献活動にも積極的に取り組む。ハーバード大学(物理学専攻)卒。使用楽器は日本音楽財団より貸与されたストラディヴァリウス「ジュピター」。空手参段。

*カラヤン広場……ホールの設計にアドバイスした名指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンの生誕90周年を記念して「アーク・カラヤン広場」と命名された。

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サントリーホールと私音楽はその瞬間だけのものですが、

素晴らしい音楽と出会った感動やホールで過ごした時間の記憶は、ときに長く心に留まるもの。改修工事による休館期間にホームページでお客様のさまざまなエピソード「サントリーホール物語」を募集しました。

お寄せいただいた多くのエピソードのなかから訪れた方それぞれの胸に刻まれた“サントリーホールと私”をご紹介します。

Letters

今、この場に

私はいる

 

学生時代から今日まで演奏

会に足繁く通うクラシック・

ファンのひとりです。

 

1986年、サントリーホ

ールの落成を前に、当時は電

話か郵送で「メンバーズ・ク

ラブ」に登録、ベルリン・フ

ィルのチケットを2枚手に入

れることができました。私は

音楽ファンとして、街づくり

に熱心な夫はホールの建物や

修景の"視察"をめざして、

ふたりでコンサートの日を心

待ちにしていました。

 

10月28日。来日できなくな

ったカラヤンに代わり小澤征

爾さんが指揮を務めることに。

あらためて

思い返した大切なこと

 

昨年夏に、サントリーホー

ルでコンサートをさせていた

だいたジュニアオーケストラ

の者です。ウィーン・フィル

&サントリー音楽復興基金特

別公演で、宮城、岩手、郡山

の学生たちが集まり、各々の

オーケストラが演奏を披露す

る特別公演に参加させていた

だきました。

 

この3県は東日本大震災で

の主な被災地であり、小学生

の頃に大地震を経験しました。

5年以上は経ったものの、私

たちのなかではまだ震災は鮮

明に残っています。サントリ

ーホールでの演奏会は、数曲

だけの短いものでしたが、そ

のほんの数曲、数分間だけで、

私たち被災地に住んでいる者

が前を向いて歩きだしている

ことを届けられたのではと思

います。

 

被災者のなかには、楽器を

れての長旅でしたが、ベルリ

ン・フィルが待っていると思

うと、何ら苦になりませんで

した。

 

さて、その2歳の長女。泣

き虫ちゃんでそれまで親と引

き離したことがありませんで

したから、在京の妹にベビー

シッター役を頼みました。サ

ントリーホールのお隣の全日

空ホテル(現ANAインター

コンチネンタルホテル東京)

に1室を予約して、演奏の約

2時間をなんとか乗り切って

もらいました。

 

演奏は、「カラヤン先生の

一番弟子」と自他共に認める

小澤さんらしい、印象深い名

演でした。休憩時間に頂いた

ワインのおいしかったこと。

「今、この場に私はいる」

とその時の高ぶった気持ちは

忘れられません。

 

この日こそ、私のサントリ

ーホール通いのはじまりでし

た。

ハンドルネーム

閑座して

失ったりして音楽を続けられ

なかった人たちが大勢いるは

ずです。

 

今、音楽を続けられている

こと、こうして舞台に立てる

こと、それがどんなに幸せで

めぐまれているかをあらため

て感じることのできたコンサ

ートとなりました。そして、

周りの人の大切さを思い返し、

感謝の気持ちを表現できたと

感じています。

 

このコンサートをきっかけ

に、さまざまな人やものに対

する復興の原動力を得られた

気がします。「当たり前は当た

り前じゃないんだ」、そんな

ことを大切に、日々音楽に取

り組んでいきたいと思います。

�ハンドルネーム

萌恵

わくわくした気持

ちで長野市善光寺

門前から東京へ。

当時は新幹線も走

っておらず、特急

列車で3時間。2

歳になる長女を連

コンサート案内201 7年 9〜1 1月

Concert Information

 9月1日、新しいサントリーホールは、フルオーケストラ、大合唱団、パイプオルガンによ

る『Reオープニング・コンサート』で幕開け。 

 そして9月15日からは、室内楽の祭典、『チェンバーミュージック・ガーデン』がはじまります。

 サントリーホール アカデミー (室内楽アカデミー/オペラ・アカデミー)で学んだ若き音

楽家たちの、フレッシュでひたむきなステージも9月のブルーローズ(小ホール)を彩ります。

 続く秋シーズンは、世界に名だたるオーケストラ、指揮者、ソリストによる名演が、連日ホ

ールに響き渡ります。中でも注目は、18年ぶりに現役音楽監督との来日を果たすボストン交響

楽団(11月)。ファンも待ちこがれた、アンドリス・ネルソンス音楽監督との来日初公演です。

 音楽の喜びを存分に体感できる旬のコンサートを、9〜11月のサントリーホール主催公演の

中から、選りすぐってご案内します。

※0570で始まるこの電話番号は、国際電話および一部のIP電話・プリペイド方式の携 帯電話からはご利用できません。 ご利用いただけない場合は、03-3584-4402へお電話ください。

【チケット窓口】10:00~18:00※18時以降の公演がある場合は開演時刻まで営業/休館日・年末年始は休業

公演情報、チケットのご購入、先行販売がご利用いただける「サントリーホール・メンバーズ・クラブ」など詳細は、サントリーホールホームページをご覧いただくか、サントリーホールチケットセンターにお問い合わせください。

サントリーホールホームページ http://suntory.jp/HALL/サントリーホールチケットセンター Tel. 0570-55-0017

(10:00~18:00 )オペレーターが対応いたします(休館日・年末年始は休業)

 このマークのついた公演は、未来

を担うこどもたちや若きプロフェッショナルな音楽家たちに向けたサントリーホールの活動「ENJOY! MUSICプログラム」の一環として開催します。音楽に出会うよろこびの場、音楽を創るよろこびの場、そして、より開かれたホールをめざし、様々な取り組みを行っています。

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9/15(金) 19:00

オープニング 堤剛プロデュース 2017室内楽の名手たちが集い、濃密なブラームスをお届けします。

9/16(土) 12:30

室内楽アカデミー マルシェ ワンコイン・コンサート Ⅰ

9/16(土) 19:00

アジアンサンブル @TOKYO世界が注目する若き演奏家――上海出身のピアニスト ハオチェン・チャン、成田達輝(ヴァイオリン)、宮田大(チェロ)による初顔合わせの三重奏。

9/17(日) 14:00

マスターおすすめの室内楽 Ⅰ 弦楽器編

9/18(月・祝) 14:00

マスターおすすめの室内楽 Ⅱ ピアノ編

9/19(火) 13:00

プレシャス 1 pm Vol.1平日の昼間に、ほっと一息くつろげる60分コンサート。

9/20(水) 13:00

プレシャス 1 pm Vol.2

9/21(木) 11:00

CMGスペシャル車いす利用者のための室内楽演奏会 (関係者招待)

9/22(金) 13:00

プレシャス 1 pm Vol.3

9/22(金) 19:00

三重奏の愉しみ Ⅰヘーデンボルク・トリオ 日本デビュー・リサイタル

ウィーン・フィル団員のヘーデンボルク兄弟(ヴァイオリン、チェロ)と三男のピアノが奏でる親密なハーモニー。

9/23(土・祝) 12:30

室内楽アカデミー マルシェ ワンコイン・コンサート Ⅱ

9/23(土・祝) 19:00

三重奏の愉しみ Ⅱストルツマンと日本の仲間たち世界的なクラリネット奏者ストルツマンと、磯村和英

(ヴィオラ)、小菅優(ピアノ)によるトリオの醍醐味。

9/24(日) 14:00

フィナーレ2017モーツァルト、シューベルト、ベートーヴェンほか室内楽の名曲を、この日限りのアンサンブルが華やかに瑞々しく奏でます。

室内楽の楽しさ、美しさを堪能

サントリーホール

チェンバーミュージック・ガーデン

2017

室内楽の名手たちが、ブルーローズ(小ホール)を

舞台に名曲の数々を奏でる、毎年恒例のフェスティバル。

演奏家の息遣いまで感じられる親密な空間で、

アンサンブルの魅力にたっぷり浸れる10日間です。

室内楽アカデミー

マルシェ

ワンコイン・

コンサート

マスターおすすめの

室内楽

土曜日の昼下がり、アット

ホームな室内楽を。若き

音楽家を育てる「サント

リーホール室内楽アカデミ

ー」受講生によるフレッシュ

なアンサンブルを、ワンコ

イン(500円)でお楽

しみいただけます。

9・15(金)〜9・24(日)�

ブルーローズ(小ホール)

FeaturedConcerts

1

FeaturedConcerts

2

弦楽四重奏クァルテット・エクセルシオ ©Naoko OGURA

ヘーデンボルク・トリオ©Katsuhio Ichikawa

成田達輝©Hiroki Sugiura

ハープ吉野直子©Akira Muto

宮田大©Yukio Kojima

フルート上野由恵

ハオチェン・チャン

ヴィオラ川本嘉子

Ⅰ 9月16日   

メンデルスゾーン

ピアノ三重奏曲第1番

ニ短

調

から

ベートーヴェン

弦楽四重奏曲第9番

ハ長調

「ラズモフスキー第3番」 から

ほか

Ⅱ 9月23日   

モーツァルト

弦楽四重奏曲第23番

ヘ長調

「プロシャ王第3番」

から

ブラームス

ピアノ五重奏曲

ヘ短調から

ほか

*23日はヘーデンボルク・トリオ

が特別ゲストで参加します。

I

弦楽器編

9月17日

ヴァイオリン

 

原田幸一郎、池田菊衛

ヴィオラ

 

磯村和英、田原綾子

チェロ

 

毛利伯郎、上野通明

ヴェーベルン

弦楽四重奏のための緩徐楽章

ベルク

弦楽四重奏曲

作品3

シェーンベルク

『浄夜』

作品4  

原田幸一郎 ©堀田力丸

練木繁夫 ©大窪道治

ピアノ小山実稚恵©Wataru Nishida

リチャード・ストルツマン©Lisa Marie Mazzuco

ヴァイオリン竹澤恭子©Tetsuro Takai

磯村和英©Marco Borggreve

チェロ堤剛©鍋島徳恭

小菅優©Marco Borggreve

チェロ ©鍋島徳恭堤剛

1

室内楽の超マスター

達人!原田幸一

郎(ヴァイオリン)と練

木繁夫(ピアノ)がプロデュ

ースするプログラム。ロマ

ンティックで緊張感漂う新

ウィーン楽派初期の名曲

を揃えた「弦楽器編」、

若きリヒャルト・シュトラ

ウスを中心とする華麗な

「ピアノ編」。アンサンブル

の奥深さを感じられます。

ピアノ編

9月18日

ヴァイオリン

 フェデリコ・アゴスティーニ

ヴィオラ

店村眞積

チェロ

毛利伯郎

ピアノ

練木繁夫

ハイドン

ピアノ三重奏曲第25番

ト長調

「ジプシー風」

R・シュトラウス

ヴァイオリン・ソナタ

変ホ長調

作品18

R・シュトラウス

ピアノ四重奏曲

ハ短調

作品13

コンサート案内201 7年 9〜1 1月

Concert Information

※一部売り切れの公演もございます。当日券情報に

 ついては、公演当日ホームページに掲載します。

13 12Hibiki Vol .1Hibiki Vol .1

Page 8: Autumn 2017 - サントリー...Autumn 2017 世界にひとつの オルガン インタビュー ヴァイオリニスト 五嶋 龍 9~11月の コンサート案内 サントリーホール会報誌(製版・修正あり)

サントリーホール会報誌(製版・修正あり)

15185

263

4C 右

A75134D

サントリーホール会報誌(製版・修

正あり)

14185263

4C右

A75134D

躍進する京都市交響楽団(京

響)と常任指揮者・広上淳一によ

る熱演。サントリー音楽賞を受

賞した充実期の演奏を、サント

リーホールで体感してください。

武満

フロム・ミー・フローズ・ホワット・

ユー・コール・タイム

~5人の打楽器奏者とオーケストラ

のための~

ラフマニノフ

交響曲

第2番

ホ短調

作品27

*サントリー音楽賞は、毎年わが国の

洋楽の発展にもっとも顕著な業績

をあげた個人又は団体に、サント

リー芸術財団より贈られる賞です。

世界的テノール歌手として活躍

し、現在は指揮者・声楽指導者

のジュゼッペ・サッバティーニが率い

るサントリーホールオペラ・アカ

デミー。正しい発音に基づいた深

い音楽表現を学んだ若き修了生

たちが、その成果を披露します。

磨きをかけた瑞々しい歌をお聴

きください。

【第1部】プリマヴェーラ・コース

 

第3期生/イタリア歌曲

【第2部】アドバンスト・コース

 

第2期生/オペラ・アリアと二重唱

世界屈指の名門ボストン交響楽

団と現音楽監督アンドリス・ネル

ソンスによる日本初公演の舞台で

す。かつて小澤征爾が29年間音

楽監督を務め、日本にもファンの

多いボストン響。その136年の

歴史を継承し、新たな時代を切

り開く俊英ネルソンスが、「ボス

トン響の比類なき音楽的資質を

表現すべく」多彩な楽曲を指揮

します。

11月7日(火)

チャイコフスキー

ヴァイオリン協奏曲

ギル・シャハム(ヴァイオリン)

ショスタコーヴィチ

交響曲第11番

「1905年」

11月8日(水)

モーツァルト

フルートとハープのための協奏曲

エリザベス・ロウ(フルート)

ジェシカ・ジョウ(ハープ)

ラフマニノフ

交響曲第2番

ホ短調 作品27

11月9日(木)

ハイドン

交響曲第103番

「太鼓連打」

マーラー

交響曲第1番

「巨人」

ボストン交響楽団首席フルート奏

者のエリザベス・ロウを講師に迎え

ます。スタープレイヤーにして卓

越した指導者が、音楽をどのよ

うにつくり上げていくのか。音楽

を勉強している方はもちろん、ど

なたにとっても興味深いお話を間

近で聴講することができます。

(通訳付) エ

ネルギーあふれる若き才能

サントリーホール

オペラ・アカデミー

修了コンサート

ボストン交響楽団

首席奏者による

マスタークラス〈フルート〉

11・7(火)

8(水)

9(木)�

19時開演

11・6(月)

19時開始�

ブルーローズ(小ホール)

9・18(月・祝)�

18時開演

9・28(木)

19時開演�

ブルーローズ(小ホール)

©Marco Borggreve ©伊藤奈々子

©伊藤奈々子

第46回サントリー音楽賞

受賞記念コンサート

広上淳一と

京都市

交響楽団

グラミー賞2年連続受賞、魂をこめた響き

アンドリス・ネルソンス指揮

ボストン交響楽団

24

3

日本の親愛なる友人の皆さま、私たちは音楽への愛情と音楽づくりに対する情熱を皆さんと共 有したいと思っています。日本 の聴衆の方 は々いつでも最高の聴衆です。今回もきっと感動できることと楽しみにしています。

(アンドリス・ネルソンス談)

コンサート案内201 7年 9〜1 1月

Concert Information

「武満作品は、サントリーホールいっぱいに鳴らされる打楽器の美しい音色とオーケストラの融合を楽しんでいただけたらと思います。ラフマニノフの交響曲は誰にとってもわかりやすく良い曲。今の京響をアピールするには最適の曲。満を持して演奏させていただきます」

(音楽評論家・山田治生インタビューより抜粋)

15 14Hibiki Vol .1Hibiki Vol .1

Page 9: Autumn 2017 - サントリー...Autumn 2017 世界にひとつの オルガン インタビュー ヴァイオリニスト 五嶋 龍 9~11月の コンサート案内 サントリーホール会報誌(製版・修正あり)

サントリーホール情報誌『Hibiki』創刊号、いかがだったでしょうか。音楽を聴く楽しみをより広げていけるよう、充実した Hibiki をお届けしていきたいと思います。ぜひみなさまのご意見をお聞かせください。また、アンケートにお答えくださった方の中から抽選でプレミアムなプレゼントを差し上げます。サントリーホールホームページ http://suntory.jp/HALL/ の応募フォームに希望のプレゼント、アンケートのお答え、お名前・ご住所等をご記入のうえ、ぜひご応募ください。

B e f o r e & A f t e r C o n c e r t

Q u e s t i o n n a i r e & P r e s e n t

プレゼント *A・Bよりお選びください。応募フォームはこちらから。

A

B

サントリーホール特製カードスタンド(10名様)

11月7日(火)10:30開始(予定)

コンサート案内でもお知らせした今秋注目のボストン交響楽団のリハーサルを臨める貴重な機会となります。

KDDIスペシャルボストン交響楽団 無料公開リハーサルご招待(5組10名様)

名演が繰り広げられてきたサントリーホールのステージ。今回、改修にあたってその床材を使い、カードホールダーを限定数で制作しました。多くのマエストロが立ったステージの興奮を閉じ込めたカードホルダーをあなたのデスクに。

サントリーホール情報誌『Hibiki』Vol.1

2017年9月1日発行発行責任者 ● 市本徹雄編集発行  ● サントリーホール〒107-8403 東京都港区赤坂1-13-1TEL, 03-3505-1001(代表)

企画編集 ● サントリーホール/     株式会社スケープスデザイン ● 中澤睦夫

(SAKU CORPORATE DESIGN)

表紙絵  ● 鹿児島睦印刷製本 ● 共同印刷

サントリーホール ホームページhttp://suntory.jp/HALL/公演スケジュール、座席表、チケット発売、アクセス、バリアフリー情報、当日券、アンコール曲、施設概要などがご覧いただけます。

サントリーホールディングス株式会社は公益財団法人サントリー芸術財団のすべての活動を応援しています。

左から中国料理『花梨』、『アトリウムラウンジ』、『シャンパンバー』。

©Marco Borggreve

コンサートが始まる前の期待感を味わいながらの食事、そしてコンサートの後、興奮冷めやらぬうちにグラスを傾け語り合う……これもコンサートの愉しみです。そんな時間をゆったりとした空間で過ごせば、期待や余韻がより深まります。サントリーホールに隣接する『ANAインターコンチネンタルホテル東京』では、サントリーホールの当日のチケットの半券でレストラン・バー (『ピエール・ガニェール』、『乾山』、ルームサービスを除く)の利用料金が10%オフになる特典があります(2017年12月21日(木)まで)。利用できるレストランやバー、カフェは全部で8つ。その日の気分や演目に合わせて選ぶのも楽しいことでしょう。予約・問い合せ ANAインターコンチネンタルホテル東京 TEL: 03-3505-1185

(レストラン予約センター 9:00am ~7:30pm)