bdf kcl j#Õ 7...、kcl...

2
本研究に関する特許・文献 1. 特願2018-144079、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制方法、および、石膏含有廃棄物処理 設備、ならびに、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生を抑制するために用いられる水溶液 2. 第29回廃棄物資源循環学会研究発表会:武下俊宏、村田真理;精製塩や廃棄物由来の副生塩を用いた 廃石膏ボードの硫化水素抑制方法の検討、講演論文集(2018、名古屋) 1.技術開発の背景 廃石膏ボードの排出量は、今後も増加し続けると予測されている。しかし、期待されるリサイクルは停滞 しており、埋立処分せざるを得ない状況が続いている。廃石膏ボードの埋立処分は、硫化水素を発生させる 恐れがあるため、実用的な対策が求められている。一方、焼却残渣を主に引き受ける埋立処分場には、大量 の水溶性塩類が持ち込まれて蓄積し、廃棄物安定化の妨げになると考えられている。安定化促進のため塩類 の洗い出しを行うと、塩濃度の高い浸出水が発生し、浸出水処理施設において高塩障害が発生する。また、 塩濃度の高い処理水の放流は、農作物への塩害や周辺環境の生態系へ影響を及ぼす。浸出水や処理水の高塩 濃度対策として、脱塩設備を導入する浸出水処理施設もあるが、副生する濃縮塩水や乾燥塩の用途はほとん どなく、産業廃棄物として処理されている。 2.技術の特徴 本技術は、塩濃度を調製した水溶液を用いて硫酸還元菌の増殖を抑制することにより、廃石膏ボードから の硫化水素の発生を制御するものである。CaCl 2 やNaClなどの塩類は、微生物にほとんど利用されないため 、硫化水素が発生しやすい嫌気性の環境においても濃度変化しにくく、硫化水素の抑制効果が持続すると考 えられる。また、塩濃度が確保されれば純度は問題とならないため、廃棄物由来の副生塩を利用でき、副生 塩の新規用途となりうる。さらに、廃石膏ボードに塩濃度を適切に調製した塩水を供給することで、硫化水 素の発生抑制と微生物による生物学的安定化の両立が可能である。廃棄物由来の硫化水素活用の際にも、硫 化水素の発生制御が可能と考えられる。 廃棄物から発生する硫化水素を発生制御 キーワード:埋立処分、水溶性塩類、廃石膏ボード、副生塩、硫化水素 3.水溶性塩類による硫化水素発生抑制実験 容量500mlのガラス瓶に、廃石膏ボードから回収した石膏粉50g、純水または塩濃 度(w/w%)を調製した水溶液200mL、硫酸還元菌の培養液1.0mLを加え、窒素ガ ス置換した後密栓し、35℃で静置培養した。試薬(特級)のCaCl 2 、NaCl、KClおよ び廃棄物由来の副生塩を実験に用いた。実験中は内部ガスを採取し、硫化水素濃度を 測定した。実験終了時に内部ガスのCO 2 、培養液ろ液のpHとTOCを測定した。 硫化水素発生抑制実験 4.実験結果(1) 副生塩の元素組成を蛍光X線分析により求 めた結果を下表に示す。副生塩は、KClや NaClが多く、CaCl 2 は少ないことが確認され た。さらに、この副生塩および試薬のCaCl 2 、KCl、NaClを用いた実験結果を右図に示す 。塩濃度の増加により、発生する硫化水素濃 度の最大値は減少する傾向がみられた。また 、CaCl 2 では4%以上、KClでは6%以上、 NaClでは7%以上、副生塩では5%以上の濃 度において、硫化水素の発生は確認されなか った。 5.実験結果(2) CaCl 2 とNaClの培養サンプルについて、培 養終了時にCO 2 を測定したところ、全ての塩濃 度の培養サンプルでCO 2 の発生が確認された。 内部ガスは実験開始時に窒素ガスで置換してい るので、発生したCO 2 は、石膏粉中の有機物が 微生物分解されて発生したと考えられた。一方 、塩濃度が高くなるにつれて培養液のTOCも 高くなる傾向を示した。培養開始時のTOCは 122mg・L -1 であり、培養後は多くのサンプル でTOCが減少したため、微生物による有機物 分解が進行していることが確認された。さらに 、硫化水素の発生が抑制されたCaCl 2 の培養サ ンプルでは、培養液液面にカビの発生が確認さ れた。カビは、わずかに残存する酸素を利用し て増殖したと考えられた。また、カビの増殖が 顕著なCaCl 2 の培養サンプルでは、pHが酸性 化していたことから、石膏粉中の有機物がカビ により分解され、有機酸が生成したと考えられ た。以上の結果は、塩濃度が高くても石膏粉中 の有機物の微生物分解が進行することを示して おり、硫化水素の発生抑制と生物学的安定化の 進行が両立することを示している。 硫化水素濃度の経時変化および塩濃度と硫化水素濃度の最大値 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 硫化水素濃度最大値 ppm 塩濃度 CaCl 2 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 硫化水素濃度最大値 ppm 塩濃度 NaCl 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000 0 1 2 3 4 5 6 7 8 硫化水素濃度最大値 ppm 塩濃度 KCl 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000 0 1 2 3 4 5 6 7 8 硫化水素濃度最大値 ppm 塩濃度 副生塩 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 0 20 40 60 80 100 120 硫化水素 ppm 実験期間 副生塩 0% 1% 2% 3% 4% 5~8% 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 0 20 40 60 80 100 120 硫化水素 ppm 実験期間 KCl 0% 1% 2% 3% 4% 5% 68% 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000 0 20 40 60 80 100 120 140 硫化水素 ppm 実験期間 CaCl 2 0% 1% 2% 3% 410% 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000 0 20 40 60 80 100 120 140 硫化水素 ppm 実験期間 NaCl 0% 1% 2% 3% 4% 5% 6% 710% mass% 積算% Cl 53.3 53.3 Na 28.4 81.7 K 16.8 98.5 Si 1.03 99.53 Br 0.292 99.822 Ca 0.139 99.961 蛍光X線分析による副生塩の分析結果 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 0 2 4 6 8 10 TOC mg/L 塩濃度 NaCl CaCl2 6.0 6.2 6.4 6.6 6.8 7.0 7.2 7.4 7.6 7.8 8.0 0 2 4 6 8 10 pH 塩濃度 NaCl CaCl2 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 0 2 4 6 8 10 CO 2 濃度 % 塩濃度 % NaCl CaCl2 培養終了時の内部ガスのCO 2 濃度および培養液ろ液のTOCとpH 培養液液面に増殖したカビ CaCl 2 -6%の培養サンプル BDFグリセリン廃液の全量資源化および資源化物の用途 産学官連携センター [担当事務局:研究推進部産学知財課] 〒814-0180 福岡市城南区七隈八丁目19番1号(文系センター高層棟4階) TEL.092(871)6631 FAX.092(866)2308 E-mail: [email protected] http://www.sanchi.fukuoka-u.ac.jp/sangakukan/ 福岡大学 資源循環・環境制御システム研究所 工学部 資源循環・環境グループ 准教授 武下俊宏 不要の硫化水素が役に立つ水銀汚染物質の処理技術(1)

Upload: others

Post on 28-Dec-2019

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: BDF KCl j#Õ 7...、KCl 、NaClを用いた実験結果を右図に示す。塩濃度の増加により、発生する硫化水素濃 度の最大値は減少する傾向がみられた。また

本研究に関する特許・文献1. 特願2018-144079、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制方法、および、石膏含有廃棄物処理

設備、ならびに、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生を抑制するために用いられる水溶液2. 第29回廃棄物資源循環学会研究発表会:武下俊宏、村田真理;精製塩や廃棄物由来の副生塩を用いた

廃石膏ボードの硫化水素抑制方法の検討、講演論文集(2018、名古屋)

1.技術開発の背景廃石膏ボードの排出量は、今後も増加し続けると予測されている。しかし、期待されるリサイクルは停滞

しており、埋立処分せざるを得ない状況が続いている。廃石膏ボードの埋立処分は、硫化水素を発生させる恐れがあるため、実用的な対策が求められている。一方、焼却残渣を主に引き受ける埋立処分場には、大量の水溶性塩類が持ち込まれて蓄積し、廃棄物安定化の妨げになると考えられている。安定化促進のため塩類の洗い出しを行うと、塩濃度の高い浸出水が発生し、浸出水処理施設において高塩障害が発生する。また、塩濃度の高い処理水の放流は、農作物への塩害や周辺環境の生態系へ影響を及ぼす。浸出水や処理水の高塩濃度対策として、脱塩設備を導入する浸出水処理施設もあるが、副生する濃縮塩水や乾燥塩の用途はほとんどなく、産業廃棄物として処理されている。

2.技術の特徴本技術は、塩濃度を調製した水溶液を用いて硫酸還元菌の増殖を抑制することにより、廃石膏ボードから

の硫化水素の発生を制御するものである。CaCl2やNaClなどの塩類は、微生物にほとんど利用されないため、硫化水素が発生しやすい嫌気性の環境においても濃度変化しにくく、硫化水素の抑制効果が持続すると考えられる。また、塩濃度が確保されれば純度は問題とならないため、廃棄物由来の副生塩を利用でき、副生塩の新規用途となりうる。さらに、廃石膏ボードに塩濃度を適切に調製した塩水を供給することで、硫化水素の発生抑制と微生物による生物学的安定化の両立が可能である。廃棄物由来の硫化水素活用の際にも、硫化水素の発生制御が可能と考えられる。

廃棄物から発生する硫化水素を発生制御キーワード:埋立処分、水溶性塩類、廃石膏ボード、副生塩、硫化水素

3.水溶性塩類による硫化水素発生抑制実験容量500mlのガラス瓶に、廃石膏ボードから回収した石膏粉50g、純水または塩濃

度(w/w%)を調製した水溶液200mL、硫酸還元菌の培養液1.0mLを加え、窒素ガス置換した後密栓し、35℃で静置培養した。試薬(特級)のCaCl2、NaCl、KClおよび廃棄物由来の副生塩を実験に用いた。実験中は内部ガスを採取し、硫化水素濃度を測定した。実験終了時に内部ガスのCO2、培養液ろ液のpHとTOCを測定した。

硫化水素発生抑制実験

4.実験結果(1)副生塩の元素組成を蛍光X線分析により求

めた結果を下表に示す。副生塩は、KClやNaClが多く、CaCl2は少ないことが確認された。さらに、この副生塩および試薬のCaCl2、KCl、NaClを用いた実験結果を右図に示す。塩濃度の増加により、発生する硫化水素濃度の最大値は減少する傾向がみられた。また、CaCl2では4%以上、KClでは6%以上、NaClでは7%以上、副生塩では5%以上の濃度において、硫化水素の発生は確認されなかった。

5.実験結果(2)CaCl2とNaClの培養サンプルについて、培

養終了時にCO2を測定したところ、全ての塩濃度の培養サンプルでCO2の発生が確認された。内部ガスは実験開始時に窒素ガスで置換しているので、発生したCO2は、石膏粉中の有機物が微生物分解されて発生したと考えられた。一方、塩濃度が高くなるにつれて培養液のTOCも高くなる傾向を示した。培養開始時のTOCは122mg・L-1 であり、培養後は多くのサンプルでTOCが減少したため、微生物による有機物分解が進行していることが確認された。さらに、硫化水素の発生が抑制されたCaCl2の培養サンプルでは、培養液液面にカビの発生が確認された。カビは、わずかに残存する酸素を利用して増殖したと考えられた。また、カビの増殖が顕著なCaCl2の培養サンプルでは、pHが酸性化していたことから、石膏粉中の有機物がカビにより分解され、有機酸が生成したと考えられた。以上の結果は、塩濃度が高くても石膏粉中の有機物の微生物分解が進行することを示しており、硫化水素の発生抑制と生物学的安定化の進行が両立することを示している。

硫化水素濃度の経時変化および塩濃度と硫化水素濃度の最大値

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

硫化水素濃度最大値ppm

塩濃度 %

CaCl2

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

硫化水素濃度最大値ppm

塩濃度 %

NaCl

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

0 1 2 3 4 5 6 7 8

硫化水素濃度最大値ppm

塩濃度 %

KCl

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

0 1 2 3 4 5 6 7 8

硫化水素濃度最大値ppm

塩濃度 %

副生塩

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

0 20 40 60 80 100 120

硫化水素ppm

実験期間 日

副生塩 0%

1%

2%

3%

4%

5~8%

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

0 20 40 60 80 100 120

硫化水素ppm

実験期間 日

KCl 0%

1%

2%

3%

4%

5%

6~8%

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

0 20 40 60 80 100 120 140

硫化水素

ppm

実験期間 日

CaCl2 0%

1%

2%

3%

4~10%

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

0 20 40 60 80 100 120 140

硫化水素

ppm

実験期間 日

NaCl 0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

7~10%

mass% 積算%

Cl 53.3 53.3

Na 28.4 81.7

K 16.8 98.5

Si 1.03 99.53

Br 0.292 99.822

Ca 0.139 99.961

蛍光X線分析による副生塩の分析結果

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

0 2 4 6 8 10

TO

C m

g/L

塩濃度 %

NaCl

CaCl2

6.0

6.2

6.4

6.6

6.8

7.0

7.2

7.4

7.6

7.8

8.0

0 2 4 6 8 10

pH

塩濃度 %

NaCl

CaCl2

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

0 2 4 6 8 10

CO

2濃度

塩濃度 %

NaCl

CaCl2

培養終了時の内部ガスのCO2濃度および培養液ろ液のTOCとpH

培養液液面に増殖したカビCaCl2-6%の培養サンプル

BDFグリセリン廃液の全量資源化および資源化物の用途

産 学 官 連 携 セ ン タ ー [担当事務局:研究推進部産学知財課]

〒814-0180 福岡市城南区七隈八丁目19番1号(文系センター高層棟4階)TEL.092(871)6631 FAX.092(866)2308 E-mail: [email protected]://www.sanchi.fukuoka-u.ac.jp/sangakukan/

福岡大学 資源循環・環境制御システム研究所工学部 資源循環・環境グループ 准教授 武下俊宏

不要の硫化水素が役に立つ水銀汚染物質の処理技術(1)

Page 2: BDF KCl j#Õ 7...、KCl 、NaClを用いた実験結果を右図に示す。塩濃度の増加により、発生する硫化水素濃 度の最大値は減少する傾向がみられた。また

BDFグリセリン廃液の全量資源化および資源化物の用途

産 学 官 連 携 セ ン タ ー [担当事務局:研究推進部産学知財課]

〒814-0180 福岡市城南区七隈八丁目19番1号(文系センター高層棟4階)TEL.092(871)6631 FAX.092(866)2308 E-mail: [email protected]://www.sanchi.fukuoka-u.ac.jp/sangakukan/

福岡大学 資源循環・環境制御システム研究所工学部 資源循環・環境グループ 准教授 武下俊宏

不要の硫化水素が役に立つ水銀汚染物質の処理技術(2)

本研究に関する特許・文献1. 特願2017-138079、水銀含有汚染物質の処理方法および処理システム2. 第39回全国都市清掃研究・事例発表会:武下俊宏、村田真理、内田正信

;廃棄物由来の硫化水素によるメチル水銀低毒化の可能性、講演論文集pp136-138 (2018、山形)

3. 第28回廃棄物資源循環学会研究発表会:武下俊宏、村田真理、内田正信;水銀廃棄物の低害化処理への硫化水素活用の可能性と課題、講演原稿pp481-482 (2017、東京)

硫化水素雰囲気におけるメチル水銀低害化のイメージ

廃棄物由来の硫化水素を有害化学物質の硫化処理に活用

廃棄物から発生する硫化水素を有効活用キーワード:アルキル水銀、水銀汚染、硫化処理、硫化水素、硫化物

1.技術開発の背景廃棄物から発生する硫化水素は、有毒な悪臭物質であり、これまで利

用価値のない不要物として処理されてきた。特に、廃石膏ボードの埋立処分は、硫化水素を発生させやすいことが知られている。廃石膏ボードの排出量は、今後も増加し続けると予測されている。これまで、硫化水素の発生抑制には様々な方法が試みられてきた。しかし、効果が十分でなかったり、大規模な土木工事を要したり、またコストが嵩むことや、埋立容量を逼迫させるなどの課題が残されていた。

2.技術の特徴本技術は、廃棄物由来の不要な硫化水素を、有害重金属の硫化処理に

用いて消費させ、硫化水素の発生も同時に抑制しようとするものである。また、硫化水素がアルキル水銀濃度を減少させることや、硫化水素を酸化して得られる硫黄が金属水銀を硫化水銀とすることなどを利用し、多様な化学形態を示す水銀廃棄物の低害化処理に硫化水素を応用するものである。

3.廃棄物から発生する硫化水素と酸化水銀の接触実験容量500mlのガラス瓶に、廃石膏ボードから回収した石膏紙10g、酸化水銀(試薬)0.1g、純水200mL、硫酸還

元菌の培養液1.0mLを加え、窒素ガスで置換した後密栓し、35℃の暗所で静置培養した。実験の結果、総水銀は硫化水素の発生により急激に減少した。メチル水銀の生成も確認されたが、培養を継続するとその後消失した。

0

10000

20000

30000

40000

50000

60000

70000

0 20 40 60 80 100

硫化水素濃度

(ppm)

実験期間 (日)

Control

HgO 0.1g

0

10

20

30

40

50

60

70

0 20 40 60 80 100

総水銀mg/L

実験期間 (日)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

0 20 40 60 80 100

メチル水銀

μg/L

実験期間 (日)

培養実験 硫化水素濃度 総水銀 メチル水銀

4.硫化水素とアルキル水銀の接触実験(1)1003ppmの硫化水素ガスで処理

(2)99.99%の硫化水素ガスおよび硫化ナトリウム水溶液で処理

500mlのガラス瓶に、純水100mL、2種アルキル水銀混合液(試薬)1.0mLを加え、99.99%の硫化水素ガスで置換した試料、あるいは硫化水素と等量の硫化物を含む硫化ナトリウム水溶液100mL、2種アルキル水銀混合液(試薬)1.0mLを加え、窒素ガスで置換した試料の2種類を準備した。ガス置換後に密栓し、35℃の暗所に静置した。24h後にアルキル水銀濃度を測定した。窒素に対し硫化水素ではメチル水銀もエチル水銀も有意に減少した。硫化ナトリウム水溶液ではさらに減少した。

(MeHg)2S

(Me)2Hg

2MeHgCl

緩慢

迅速

HgS

1)

H2S

Cl

Cl

MeHgCl

Me低害化物

低害化物

5.硫化水素とアルキル水銀の反応

1)P.J.CRAIG & P.D.BARTLETT, Nature, 275, pp.635-637 (1978)2)吉田英子,筑波大学学位論文(2014)3) I.R.ROWLAND, M.J.DAVIES & P.GRASSO, Nature, 265, pp.718-719 (1977)

2MeHgCl + H2S → (MeHg)2S + 2H+ + 2Cl- 1)

ビスメチル水銀スルフィド

MeHgCl;塩化メチル水銀(MeHg)2S ;L-システインと結合しない低害化物2).揮発性が高い3) .

2EtHgCl + H2S → (EtHg)2S + 2H+ + 2Cl-

ビスエチル水銀スルフィド

EtHgCl + MeHgCl + H2S → EtHg・MeHg S + 2H+ + 2Cl-

エチル水銀メチル水銀スルフィド

EtHgCl;塩化エチル水銀

硫化水素とメチル水銀の反応および予測されるエチル水銀の反応

500mlのガラス瓶に、純水100mL、2種アルキル水銀混合液(試薬)1.0mLを加え、1003ppmの硫化水素ガス、あるいは窒素ガスで置換した後密栓し、35℃の暗所に静置した。3週後および5週後にアルキル水銀濃度を測定した。窒素に対し硫化水素ではメチル水銀もエチル水銀も有意に減少した。