医療現場におけるbscについて学ぶ_20160914
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医療現場におけるBSCについて学ぶ
2016年9月14日
管理職研修@南多摩病院
永生総合研究所 神戸 翼
目次
• はじめに
• BSCとは
• 他施設での導入事例紹介
• BSCの運用と実際
• さいごに
2
本研修の目的
• 永生会では、組織の目標管理手法としてBSCを導入
• 導入当初から年月が経っており、導入時に行われた
研修を受けていない役職者が多数いる
• BSCの基礎を学ぶことで、BSCをより理解し、その
活用方法を広げる(質の高い目標管理に向けて)
3
自己紹介
• 名前:神戸 翼(かんべ つばさ)
• 出身:愛知県春日井市
• 前職:コンサルティングファーム、製薬関連企業他
• 所属する機関:
・永生総合研究所 主席研究員
・慶應義塾大学SFC研究所 上席研究員
・医療の質に関する研究会 客員研究員
・NPO法人エムアクト 代表理事 ほか
• 研究テーマ:医療の質×経営の質、QOL向上、医療×IT
• 専門性:医療経営、医療政策、医療IT、ヘルスケア企業、データサイエンス(統計)
• 資格:臨床検査技師(ペーパーです…)
4
医療の質×経営の質
5
医療 経営
Pay for Performance
医療の質と経営の質の関係性
6
健全な医療経営
患者
職員
個人
経営
社会
医療
顧客満足度↑
従業員満足度↑
経営努力
質の追求
職場環境の改善職員待遇の向上
高品質医療の提供
組織愛の構築仕事への邁進
顧客ロイヤリティ向上患者数増加
戦略
戦略
マーケティング(3C分析)
Outcome
Structure
Pro
cess
自社
競合
市場
Opera
ting
Mana
ging
゙
BSC
財務会計
黒字経営
質向上に向けた直接投資
黒字経営に直結する医療
質の高い
医療
BSC
【出典】神戸翼(2015)病院オープンデータを用いた経営指標の選別と経営要素の抽出
健全な経営には何が関係するのか?
7
医業収支
Structure
Process
Outcome
外来患者数●
平均通院回数
入院患者数●
平均在院日数●
再入院率
死亡率
紹介率・逆紹介率5年生存率
対診率救急搬送件数
検査件数●
放射線件数● 全身麻酔件数
病床回転率
病床利用率●
病床数●
診療科数●
職員数●
経験年数
年齢
性別
認定資格
受付時間時間外対応DPC導入
救急体制看護配置●
医薬分業IT環境
治験件数
先端医療件数
剖検率
財務会計
マーケティング3C
Operating Management
人口・面積●
病床数/2次医療圏
病院数/2次医療圏●
シェア率/2次医療圏
医療計画、医療政策
経済指数
医師数/2次医療圏●
診療所数/2次医療圏●
理念 運営母体
事業継続年数
地方公営企業法●
駐車場● 室料差額●
選定療養費(初診料)
外国語対応
アクセス
職員給与費●
国庫補助金、都道府県補助金●
1人当たり診療収入●
室料差額収益
看護学院収益
材料費
医業収益に対する費用比率●
自己資本比率
負債比率
固定資産● 減価償却費
【出典】神戸(2014)中規模自治体病院における経営に関する要因分析
ある指標が医業収支に与えるインパクト
8
R2:0.66自由度調整済みR2:0.63
医業収支
病床利用率
1床当たり固定資産
職員給与費計(その他)
室料差額(個室・最低額)
都道府県補助金
職員給与費計(事務職)
Ns1人1日当たり診療収入
職員給与費計(看護師)
+ 10,930千円/1%
‐ 64,674円/1円
- 902円/1千円
+ 18,131円/1円
- 3,771円/1千円
- 1,644円/1千円
- 760円/1千円
- 15,750円/1千円
【出典】神戸翼(2015)病院オープンデータを用いた経営指標の選別と経営要素の抽出
自治体病院17施設を対象に行った研究では…
• BSCが導入されている自治体病院17施設におけるBSC導入前後の
財務指標の変化を定量的データに基づいて検証することを目的と
する
• BSC導入は、収益性指標、収益に関連する財務指標との相関が
あった
• N総合病院の事例検討では、収益力の増加により収益性指標と資
金繰り指標との相関が確認された
• A中央病院の事例検討では、業務プロセス改善により修正性に関
連する指標と資金繰りに関連する指標との相関が確認された
9【出典】岩佐嘉美 (2014) 自治体病院におけるバランスト・スコアカード導入と財務指標の相関関係 / 日本医療経営学会誌,8(1)
ある製造業を対象とした調査では?
• 無形資産の構築・増大を通じて財務業績に貢献するメカニズムの究明を目的とする
• BSC実践度は財務業績にマイナス、無形資産を通じてプラスに働く
10【出典】乙政佐吉 (2011) わが国製造企業におけるバランス・スコアカードの効果に関する実証的研究 / 原価計算研究,35(2)
BSC実践度
無形資産
財務業績品質管理活動費
品質と財務業績の関係把握
※p<0.10、※※p<0.05、※※※ p<0.01
0.119※
-0.123※※
0.268※※※
0.116※
0.138※※
0.377※※※
11
BSCの活用は組織の継続性と更なる発展に貢献する
目次
• はじめに
• BSCとは
• 他施設での導入事例紹介
• BSCの運用と実際
• さいごに
12
ミッション・ビジョンからアクションプランまで
13【出典】日本バランスト・スコアカード研究会(2010)「BSC導入ワークショップ資料」
ミッション
ビジョン
戦略テーマ
戦略マップ
スコアカード
アクションプラン
抽象的目指すもの
具体的実際にやること
組織が社会において果たすべき役割
社会の中で最終的に目指す姿
BSC
人々に質の高い、安心な、やすらぎにあふれた、リハビリ・マインドのあるヘルスケアサービスを提供します
医療と介護を通じた街づくり・人づくり・想い出づくり
戦略
戦術・戦闘
(全社・事業・職能別)
BSCとは?
• バランスト・スコアカード(Balanced Score card:BSC)は、
ロバートS.キャプラン(ハーバード大学)とデイビッドP.ノート
ン(コンサルタント)により1992年に開発された、戦略的組織
マネジメントシステム
• 北米および西ヨーロッパの企業の50%がBSCを利用
• 「財務」「顧客」「内部プロセス」「学習と成長」の4つの視点
で、組織のビジョン・戦略を全職員に誤解なく伝え、組織が一丸
となって目標に向かうための仕組み
• 現在のBSCは上記「4つの視点」と「戦略マップ」「スコアカー
ド」で構成される。
14【出典】Kaplan,R.S.(2001)On Balance,73-78
【出典】熊川寿郎(2004)「バランスト・スコアカードとは何か」看護管理,14(01)
4つの視点で、経営戦略を多面的にみる
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ビジョンと戦略
顧客ビジョン・戦略を達成するために、顧客に対してどのように行動するべきか
内部プロセス顧客満足と財務的成功のために、どのようなプロセスに秀でる必要があるか
学習と成長ビジョン・戦略を達成するために、どのように変化・改善できる能力を維持するか
財務財務的に成功するために顧客にどのように行動するべきか
【出典】熊川寿郎(2004)「バランスト・スコアカードとは何か」看護管理,14(01)
戦略マップとスコアカードの関係性
16【出典】高橋淑郎(2011)「BSCの基本構造と原則」病院,70(6)
診療部門 看護部門 事務部門
消化器内科 3A病棟 医事課
戦略マップ
戦略マップ
ミッションビジョン
①
②
③
④
スコアカードスコアカード
戦略マップ
スコアカード
戦略マップ
スコアカード
戦略マップ
スコアカード
戦略マップ
スコアカード
戦略マップ
スコアカード
病院全体
戦略マップは、成功へのストーリーを示す
17
戦略テーマ 医療連携の強化 患者からの評価向上 効率化による質の向上
財務の視点
顧客の視点
業務プロセスの視点
学習と成長の視点
患者数増加による収入増
地域医療への貢献 患者利便性の向上 医療の質の向上
開業医からの信頼を高める
院内外のアクセス向上
スタッフ体制
業務の効率化
研修の充実
戦略目標
【出典】高橋淑郎(2011)「社会医療法人敬愛会本部BSCセンター資料『戦略マップの一例』」病院,70(2)
戦略目標の例
18
戦略目標
迅速なサービス
質の高いケア
迅速な救急対応
職員の態度と親密さ
よい食事
看護ケアの質
医師の満足
能力の高い医師、看護師、職員
地域社会のイメージ
職員の満足
患者の満足
戦略目標
原価管理
優れたサービス
効率
部門再構築
ケアの質
資源の有効利用
有効な契約
契約の増加
医師の満足
親密で有用な職員
専門領域の選択
■顧客 ■内部プロセス
戦略目標
医師グループとの協力
イノベーションの継続
最先端科学技術
医師の研究と創造性
研究機関や他の機関との連携
医師との交流
■学習と成長
戦略目標
Medical人頭払い契約数の増加
緊急治療室の利用の削減
地域社会におけるフィランソロフィと資金調達
契約数の増加
普通保険の契約数の増加
他の医療グループとの提携
■財務の視点
【出典】Chow CW(1998)「The Balanced Scorecard」Journal of Healthcare Mangement,43(3)
スコアカードは、目的と手段の関係を示す
19【出典】社会医療法人敬愛会本部BSCセンター資料「スコアカードの一例:患者からの評価向上」
4つの視点 戦略目標重要成功要因
(KSF)成果尺度 目標値
実測値/達成率
アクションプラン
財務の視点患者数増加
による収入増
外来患者数向上
外来患者数対前年度10%増
○○○/
○○○
紹介患者数向上
紹介患者数対前年度10%増
○○○/
○○○
顧客の視点患者利便性
の向上患者満足度
向上
エスコートスタッフによる案内率
100%○○○
/○○○
・エスコートする患者機銃の作成・人員配置方法の見直し
案内関連クレーム件数
0件○○○
/○○○
・対応方法に関する勉強会実施
業務プロセスの視点
院内外のアクセス向
上
病院・クリニック間の案内表示の
見直し
見直し率 100%○○○
/○○○
過去のクレーム・要望より、見直し項目を抜粋、見直しを実施
学習と成長の
視点研修の充実
エスコートスタッフの
養成養成数 5人
○○○/
○○○
・研修プログラムの作成・エスコートスタッフ資格テストの実施
内部監査委員の養成
養成数 10人○○○
/○○○
・内部監査養成セミナー開催・内部監査資格テスト実施
戦略目標達成のための「成果尺度」の決定は極めて重要
<尺度決定時の検討事項>
• 戦略目標の達成を測定する指標として本当に代表性のある指標か?
• その指標を改善するためのアクションプランがとれるか?
• 指標は容易に理解できるか?
• 各指標間の整合性がとれているか?
• 結果は担当責任者が管理可能な内容(責任権限の範囲)か?
• 指標は入手可能か?
• 測定結果の恣意的操作を防げるか?
20【出典】熊川寿郎(2004)「バランスト・スコアカードとは何か」看護管理,14(01)
医療版バランスト・スコアカードの利点
• 組織としてビジョンや目標の共有が可能
• 組織のビジョンや目標から実務・アクションへの
落とし込みがイメージしやすい
• 医療の質と経営の質を同時に関連づけて評価が可能
• 各職員や各部署の評価、組織全体の評価が可能
など
21
目次
• はじめに
• BSCとは
• 他施設での導入事例紹介
• BSCの運用と実際
• さいごに
22
使命とビジョン(相模原協同病院)
23
当院の使命(Mission)
価値(Value)
目指す将来像(Our vision)
地域医療を守る
全員参加で地域に応える
日本一の地域中核病院
One for all, all for one
戦略テーマ1医療安全の推進
戦略テーマ3チーム医療の推進
戦略テーマ2地域連携の推進
戦略テーマ4診療情報提供の推進
【出典】荒井耕、正木義博(-)「バランスト・スコアカード」
戦略マップ(相模原協同病院)
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目指す将来像(Our vision) 日本一の地域中核病院
戦略テーマ
医療安全の推進 チーム医療の推進 地域連携の推進 診療情報提供の推進
財務の視点
顧客の視点
業務プロセスの視点
学習と成長の視点
【出典】荒井耕、正木義博(-)「バランスト・スコアカード」
健全経営による成長
安心・安全の医療
満足度の高い病院
断らない・つぎめのない医療
透明性の高い病院
地域広報活動の推進
ホームページ充実
地域研修会、カンファレンス、連携パスの充実
質の高い救急・専門医療
診療情報管理機能UP
職員のスキルUP
モチベーションUP
人材の確保・定着UP
情報システムの充実
職員、実習・研修者、業者のコミュニケーションUP
医療情報の共有化
業務仕分けの推進
BSCに特化した組織作り(済生会小樽病院)
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済生会小樽病院のミッション
済生会小樽病院のビジョン
BSC経営戦略リーダー
BSC戦略管理メンバー
各部署・委員会BSC
TQMセンター
スーパーバイザー
センター長
ディレクター
事務部長 次長職
院長
副院長
担当●●
担当●●
担当●●
担当●●
財務
顧客
プロセス
学習・成長
収益分野 戦略
費用分野 戦略
地域分野 戦略
患者分野 戦略
TSM分野ほか 戦略
業務分野 戦略
倫理分野 戦略
育成分野 戦略
人材確保分野 戦略
診療会議BSC
●●委員会BSC
第●病棟BSC
・・・
・
病院のミッション・ビジョンの達成に向け、病院TQMの推進に際し、相談役となり助言を与える
病院のミッション・ビジョンの達成に向け、TQMセンター・ビョインBSCを統括管理し、TQMの推進を行う
病院BSCの達成に向け、TQMセンターの事務的運営を行うとともに、BSC経営戦略リーダーや戦略管理メンバーと協力しPDCAサイクルを管理する
病院BSC戦略目標の達成に向け、各具体的戦略の設定・管理を行うとともに、戦略管理メンバーや各部署・委員会と協力しPDCAサイクルを管理する。
病院BSCの戦略目標に基づいた各具体t系戦略を管理し、関連部署・委員会と協力し、具体的戦略を達成させる。
BSCを用い、BSC戦略管理メンバーと協力し継続的な改善(PDCA)を実行する。
①
①
②
②
③
③
④
④
⑤
⑤
⑥
⑥
【出典】荒井耕、正木義博(-)「バランスト・スコアカード」
BCSパス(済生会小樽病院)
26【出典】荒井耕、正木義博(-)「バランスト・スコアカード」
9月 10月 11月
BSC活動サイクル(9月サイクル)
各部署BSC活動 各部署 TQMセンター BSC戦略リーダー TQMセンター会議
BSC連絡会議 BSC作成会議
各分野・部署でBSC具体戦略に基づいた取り組みを実行する(9月サイクルのみ4月~9月
の取り組み)
実績値と内容報告を各部門・部署でのBSC具体的戦略シートに記入する
翌月の10日までにTQMセンターに具体的戦略シートを
提出する
TQMセンターで各部署より提出された具体的戦略シートを20日までに取りまとめ、統計作
成を行う
各BSC戦略リーダーに担当分野の統計を20日に配布
する
各BSC戦略リーダーごとに最終k水曜日までに必要に応じて各部署より情報収集し担当分野の統計の分析と対策検討を行う
TQMセンター会議(最終水曜日4時~)を開催し、戦略の進捗報告・検
討を行う
各BSC戦略リーダーは翌月にBSC連絡会議を開催し担当分野の統計報告と戦略指導など
の各部署へのフィードバッグを
行う
TQMセンターでBSC戦略リーダーを中心として次年度BSCを作成するとともに、関係部署などとの調整を
行う
次年度BSC作成(2月~3月)
BSC活動サイクル(10月サイクル)
BSC活動サイクル(11月サイクル)
BSC活動サイクル(12月サイクル)
PDCA
PDCA
PDCA
第1火曜日 4:40-<財務の視点>第2火曜日 4:40-<顧客の視点>第3火曜日 4:40-<プロセスの視点>第4火曜日 4:40-<学習成長の視点>
2月第1水曜日 4:00-<第1回会議>2月第3水曜日 4:00-<第2回会議>3月第1水曜日 4:00-<第3回会議>3月第3水曜日 4:00-<第4回会議>
目次
• はじめに
• BSCとは
• 他施設での導入事例紹介
• BSCの運用と実際
• さいごに
27
BSCに関連した一般的な業務プロセス
① 経営環境分析(経営課題の抽出)
② 理念・ミッションの確認
③ ビジョンの設定
④ 戦略テーマの設定
⑤ 戦略マップの作成
⑥ スコアカードの作成
⑦ 医療版BSCの運用と評価
28
スコアカード作成の意義
• 戦略マップによって、取るべき戦略が可視化された
↓
• その戦略をどのように実行するのか?
• その戦略の達成をどのように評価するのか?
⇒この取り組みが、スコアカードの作成
• 戦略を描いたら、それを実行に移す必要があり、そのためのフォーマットがスコアカード
29【出典】高橋淑郎(2015)「医療バランスト・スコアカード研究 実務編」
スコアカード作成手順
30
戦略目標 重要成功要因 成果尺度 目標値 ○○○ アクションプラン
財務の視点
顧客の視点
業務プロセスの視点
学習と成長の
視点
戦略マップより戦略目標を
転記する
戦略目標を達成するための様々な要因の中から特に重要なものをいくつか
選び出す
重要成功要因を継続的に測定・評価できる指標を検討
し記入する
尺度がどこまでいけば達成されたといえるのか。目標
を設定する
成果尺度の目標値を達成するために、実際に何を行
うかを記入する
①
②
③
④
⑤
【出典】高橋淑郎(2015)「医療バランスト・スコアカード研究 実務編」
スコアカード作成方法の検討
• 戦略マップに記載された戦略目標をスコアカードに反映させる方法として、次の2つがある。
1)各視点(財務・顧客・プロセス・学習と成長)から検討する。⇒ヨコから始める
2)戦略テーマごとに検討する⇒タテから始める
31
ヨコからはじめる
タテからはじめる
タテがおすすめ!
【出典】高橋淑郎(2015)「医療バランスト・スコアカード研究 実務編」
戦略目標の設定
• 戦略マップで示された戦略目標は、そのままスコアカードの戦略目標の欄に転記する。
32
戦略テーマ
救急の強化 ○○○
財務の視点
顧客の視点
業務プロセスの視点
学習と成長の視点
入院患者増
断らない救急
救急業務の効率化
スタッフ増
戦略マップ
戦略テーマ
戦略目標
財務の視点
入院患者増
顧客の視点
断らない救急
業務プロセスの視点
救急業務の効率化
学習と成長の視点
スタッフ増
スコアカード
【出典】高橋淑郎(2015)「医療バランスト・スコアカード研究 実務編」
重要成功要因の設定
• 戦略目標を達成するためにとくに必要となる要因
• 重要成功要因の設定によって、成果尺度の設定も変わる
33
検査部のスコアカード
戦略目標 重要成功要因
顧客の視点外来の採血での患者満足の
向上
重要成功要因とは、戦略を実行するための要因のうち、本当に重要なもののいくつかである
戦略実行のための成功要因
• 痛くない採血
• 採血の意味の説明がある
• 待ち時間が短い
• 検査結果が早く伝達
• 待合室がきれい
• 順番が守れる
• 接遇がしっかりしている
• やり直しのない採血
• 単純なミスが起こらない
• 検体検査時間の短縮
【出典】高橋淑郎(2015)「医療バランスト・スコアカード研究 実務編」
成果尺度(成果指標)の設定
• 成果尺度は、戦略の達成度を適切に評価できるものを設定する(戦略達成につながるもの)
例)戦略目標:外来の採決での患者満足の向上
↓
重要成功要因:痛くない採血
↓
成果尺度:クレーム件数 ×検査待ち時間
• 成果尺度は定量データを設定する
• ただ、絶対的なものは少ないため、BSC構築メンバーでじっくり議論する必要がある
• 成果尺度の数は、多く設定しすぎない(アクションにつなげる、という運用が困難になる…)
34
20-24辺りが目安
【出典】高橋淑郎(2015)「医療バランスト・スコアカード研究 実務編」
目標値の設定
• 成果尺度に目標値を設定することで、達成すべきレベルが明確になる
• どのように設定するか?
・トップの想い
・過去からの傾向
・統計分析からの計測など
⇒最終的には、病院の方針で決まる
• 目標値は、高すぎず低すぎず。現場でがんばって達成できる水準(スト
レッチゴール)を設定するのが理想
• 設定には部署内のBSC構築メンバーによる議論
• コミットメントレベル(最低限目標値)という考え方もある
35
施設内だけでなく、地域の医療機関や同規模同種の医療機関とのベンチマークもできる
と更に良い
【出典】高橋淑郎(2015)「医療バランスト・スコアカード研究 実務編」
アクションプランの設定
• 成果尺度と目標値が設定されたら、これを達成する
ために必要な施策を講じる
• より具体的なアクション内容を記載する
• どの部署、あるいはどの担当者(責任者)がいつま
でにこれを推進するのかを明確にする
• 設定後は、目標値の達成に繋がるかを再確認する
36【出典】高橋淑郎(2015)「医療バランスト・スコアカード研究 実務編」
スコアカード作成の留意点
• スコアカード作成後は、設定した内容が妥当かを検証する
・アクションプランは、目標値の達成に繋がるか?
・成果尺度の目標値の達成は、重要成功要因に繋がるか?
・重要成功要因は、戦略目標の達成に結びついているか?
• 最初から完璧な戦略マップやスコアカードの構築を目的にするのではなく、いかに利用するかを目的として取り組むことが、BSCの作成を成功に導く要因
37【出典】高橋淑郎(2015)「医療バランスト・スコアカード研究 実務編」
BSC作成・運用に際して、まとめると…
• テンプレートに依存した、考え抜いていないBSCは作らない
• 各部門・各部署だけの閉鎖的なBSCを作らない
• 部門が主導でBSCを作成する場合も、病院全体のミッション・ビ
ジョンを尊重し、経営トップの経営方針から外れない
• BSCは経営トップの経営の道具であることの自覚が職員には必要。
同時にBSCは現場の職員の現場力が要求されるので、現場のコ
ミットメントの程度が大きなポイントになる
• 表面的にきれいなBSCではなく、考え抜いた跡がみえることで現
場が納得する。現場が納得しないBSCは動かない
• BSC=目標管理ではなく、戦略を成功に導くためのツールである
38【出典】高橋淑郎(2015)「医療バランスト・スコアカード研究 実務編」
目次
• はじめに
• BSCとは
• 他施設での導入事例紹介
• BSCの運用と実際
• さいごに
40
41
病院という組織はオーケストラ
• 病院は専門職が集まった組織であり、各専門職を束ね、いか
に協調させるかということに、昔から苦心してきた
• しかし、これからの病院は専門職の集団であることのメリッ
トを活かす必要があり、個々の力量を越えたハーモニーのよ
うな組織形態が期待されている
• そのためにも、BSCというツールをうまく使い、組織として
の理念とビジョンを共有し、「共通目的」をもって、協働で
きる組織作りが必要である
42
ご清聴ありがとうございました
お問い合わせ先
永生総合研究所 神戸 翼 (かんべ つばさ)
Email: [email protected]
推薦図書
○医療バランスト・スコアカード研究 実務編(高橋淑郎)
○医療バランスト・スコアカード研究 経営編(高橋淑郎)
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