第 章 面積分第 章 面積分 本章においては,...

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面積分 本章においては, 次元空間の曲面のジョルダン式曲面積の概念 を定義し リーマン式の面積分の定義とその基本性質について考察 する.リーマン式面積分を 面積分ということがある 面積分は 積分の特別な場合であるから 積分に対して成 り立つ性質は 面積分に対しても正しい 本章の事項についての詳細については伊東 節を参照して もらいたい 曲面の曲面積の定義 本節においては 次元空間の曲面のジョルダン式曲面積の概念の 定義について考察する 本節においては 次元空間に一つの標準基底 をとって 固定しておく これによって の直交座標 が定め られているとする 平面の有界可測閉集合であるとする 関数 の近傍において定義された 級関数であるとする このとき 曲面 条件

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Page 1: 第 章 面積分第 章 面積分 本章においては, 次元空間の曲面のジョルダン式曲面積の概念 を定義しリーマン式の面積分の定義とその基本性質について考察

第 章  面積分

本章においては, 次元空間の曲面のジョルダン式曲面積の概念

を定義し リーマン式の面積分の定義とその基本性質について考察

する.リーマン式面積分を 面積分ということがある

面積分は 積分の特別な場合であるから 積分に対して成

り立つ性質は 面積分に対しても正しい

本章の事項についての詳細については伊東 節を参照して

もらいたい

 曲面の曲面積の定義

本節においては 次元空間の曲面のジョルダン式曲面積の概念の

定義について考察する

本節においては 次元空間に一つの標準基底 をとって

固定しておく これによって 点 の直交座標 が定め

られているとする

は 平面の有界可測閉集合であるとする 関数 は

の近傍において定義された 級関数であるとする

このとき 曲面 が 条件

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によって定義されているとする 曲面 は の部分集合として定

義されている この曲面 を略式に

と表す

平面の可測部分集合 による の直和分割を

と表す を底とする柱状集合 と の交わりを と

すると 曲面 は の部分集合 によって直和分割さ

れる これを

と表す

一つの点 に対応する曲面 上の点を

とし 点 における の接平面上への の正射影を と

すると は面積を持つ いま の有限直和分割 全体の集合を

と表すと は細分に関して有向集合になる

の一つの有限直和分割 に対し

とおくとき 集合 は 上の有向族になる このとき ムー

ア・スミス極限

が存在するならば この極限値を曲面 の面積であると定義する

曲面 の面積を曲面 の曲面積ということがある

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 曲面の曲面積の公式

本節においては 曲面の曲面積の公式について考察する

最初に 曲面が平面である場合の面積の公式を証明する

続いて 曲面が関数のグラフとして表されている場合 曲面の方

程式が関数方程式である場合 曲面の方程式がベクトル方程式であ

る場合に分けて これらの場合に対応して曲面の曲面積の公式を証

明する

 平面の場合

まず 曲面 が平面

の上の有界可測閉集合 である場合を考える このとき の 平

面への正射影 も面積をもつ有界可測閉集合である いま 平面

と 平面のなす角を であるとすると

である したがって 平面 上の集合 の面積 と 平面への正

射影 の面積 の間には関係式

が成り立つ

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ここで この関係式の証明を与える

図  正射影の面積

証明 平面上の面積は直交座標系のとり方に依存しないから い

ま 次の直交座標系を選んで考える 平面 と 平面の交線を 軸

とし 平面 上の 座標系を 軸と 軸が一致し 座標系と

座標系が同じ向きであるようにする

このとき 平面上の点 の 平面への正射影を

であるとすると と は 対 に対応していて 関係式

が成り立つ

このとき ヤコビアンを計算して

が成り立つ ゆえに 等式 が成り立つことが従う

このとき 線形写像 の逆写像も 級で ヤコビアンは

ではないから が面積をもつとき も面積をもつことが従う こ

のときにも等式 が成り立つ

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 関数のグラフの場合

曲面が 変数関数のグラフとして定義されている場合の曲面積の

公式を与える

すなわち 次の定理が成り立つ

定理   は 平面の有界可測閉集合であるとする 関数

は の近傍において定義された 級関数であるとす

る このとき 級曲面

の曲面積は関係式

によって与えられる

注意   が有界でないか が有界閉集合でないとき

には 定理の積分が広義積分として収束するならば その値を曲面

の曲面積であると定義する

証明  の可測部分集合 による直和分割を

とする の直和分割 に対応する曲面 の直和分割を

と表す 点 に対応する曲面 上の点

における接平面 上への の正射影を とする

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の方程式は関係式

によって与えられる 上の任意の点 の への正射影を

点 とすると 等式

が成り立つ の 平面への正射影を とすると 点 の

平面への正射影は で が を動くとき は

を動き は を動き は を動く

このとき 分割 の部分集合の直径が十分小さければ と

の対応は から の上への 対 写像になる このことは次のよ

うにして証明できる

と の対応は 関係式

によって定義される このとき この写像のヤコビアンを次のよう

に計算する すなわち

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であるから

ゆえに

を得る

は連続であるから の分割 の部分集合 の直径

がが十分に小であれば において である

ゆえに 面積の公式の座標変換によって は面積を持ち した

がって 平面の場合の考察により も面積を持つ その面積を部分

集合と同じ記号で表すと 等式

が成り立つ

ここで が領域であるような分割であると考えてよいから 積

分の平均値の定理によって ある に対し

が成り立つ さらに 分割 を十分に細かくして 任意に与えられ

た に対し に関係なく 不等式

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が成り立つようにできる したがって 不等式

を得る

は 級であるから これは において一様に成り立

つようにできる

接平面 と 平面のなす角を とすると

が成り立っているから

を得る

有界可測閉集合 において と は連続であるから

の における最大値 が存在して

を得る ゆえに

を得る は において連続であるから において積分可能

である ゆえに の有限直和分割全体のつくる有向集合 に関す

るムーア・スミス極限の意味で 極限

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が存在する 仮定によって ムーアスミス極限

も存在するから 曲面 の曲面積 は

と表されることが分かる

例  半径 の球面の面積 を求めよ ただし と

する

解 球面の方程式は

によって表される 半球面の面積は広義積分

の値によって与えられる ここで は 平面の円

の周および内部である

平面の極座標に変換して計算して

を得る ゆえに

を得る

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定理   級曲面 が 円柱座標 を用いて

と表されているとする ただし は 平面の有界可測閉集合で

あるとする このとき 曲面 の面積は関係式

によって与えられる

証明 直交座標と円柱座標の関係は 公式

によって与えられる この写像によって 平面の有界可測閉集合

が に写像されるとすると は 平面の有界可測閉集合で

ある

この座標変換によって 曲面

を において定義された曲面であると考えると これは原点を除い

て 級の曲面になる このとき 関係式

が成り立っているから 等式

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を得る ゆえに ゆえに 定理3と積分の座標変換の公式によって結

論を得る

定理  関数 は において 級で において

であるとする このとき 平面上の曲線

を 軸のまわりに回転して得られる回転面の面積の公式は

によって与えられる

証明 考えている回転面と平面 によって囲まれた

平面の部分集合を と表すと は有界可測閉集合である 回

転面の方程式は

によって与えられるが 対称性によって の部分の面積の 倍

を求めればよい

であるから 等式

が成り立つ したがって 等式

が成り立つ ゆえに 曲面の面積 は広義積分

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によって与えられる

 関数方程式の場合

関数 は 次元ユークリッド空間 において定義され

た 級関数であるとする このとき 級曲面 が関数方程式

を満たす点 全体の集合であるとして定義されているとす

る この曲面 を

と表す 級曲面 は正則であるとする すなわち 上の各点

において 条件式

が成り立っているとする

このとき 曲面 の各点のある近傍において 曲面上の点を表す独

立変数として 変数の対 のいずれかを用いる

ことができる そこで いまこれらの独立変数のいずれかを

と表すと 曲面 の各点のある近傍 において

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と表すことができる

したがって 一般に の 級曲面 が 平面の有界可測閉

集合 上定義された 個の 級関数

を用いて 関係式

によって表されている場合に対して曲面の曲面積の公式を求める

ここで 級曲面 が正則であるということは 条件

が成り立つことを意味する

このとき 曲面 がある点の近傍において 方程式

と表されている場合を考える

いま 曲面 上の面積要素を と表すと

が成り立つ したがって 座標に変換して 等式

が成り立つ このとき

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が成り立っているから

を得る ゆえに

が成り立つ この等式は曲面 が あるいは

と表される点の近傍においても成り立つ したがって 曲面 の各

点の近傍においてもこの等式が成り立っている

ゆえに 次の定理を得る

定理   の 級曲面 が 平面の有界可測閉集合

において 関係式

によって定義されているとする さらに 条件

が成り立っているとする このとき 曲面 の面積 は 等式

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によって与えられる

曲面 が 関係式

によって表されているとき 比例式

が成り立つ ゆえに 右辺の三つの関数行列式はパラメーター

に対応する曲面上の点 における曲面の法線の方向余弦

に比例する したがって

とおくと 等式

復号同順

が成り立つ 曲面 は 級正則曲面であるから 曲面 の法線の

方向は連続的に変化する

級正則曲面

において パラメーター が 級関数

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によって表されているとき 対応する曲面 上の点の軌跡は曲面

上の曲線を定める この曲線の始点からの弧長を とし 線素を

であるとすると 等式

が成り立つ ここで 関数 は 関係式

によって定義する 関数 は曲面 の第一基本量であると

いう

このとき 次の行列式を計算して

を得る したがって 等式

が成り立つ ゆえに 等式

が成り立つ

したがって 次の定理を得る

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定理  上に定義した 級正則曲面 の面積 は

に等しい

上の定理において は曲面 上の曲線の弧長だけによっ

て定まっている したがって これらの関数は曲面 の幾何学的な

形だけによって定まっている すなわち 関数 は空間の直

交座標 のとり方に依存しないで定まっていることを証明で

きる いいかえれば 関数 は空間の直交座標系の変換に関

して不変な量である これによって 上に与えられた 級正則曲面

の面積の定義と曲面の面積の公式が直交座標系のとり方によらず曲

面の幾何学的な形によって定まっていることがわかる したがって

我々の曲面の面積の定義が自然で 合理的であることがわかる

 ベクトル方程式の場合

いま 級 曲面を

であるとする 曲面 の第一基本量を とする このとき こ

の曲面の面積 は

で与えられる この項に関しては 伊東 定理 を参照

注意  関数の積分はある測度を用いて定義されるもので,

積分変数の個数が 個であるか複数であるかということには本質的

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な意味はない.したがって,フビニの定理のように直積測度による

積分を表現する場合を除いて,積分記号は一重の記号を用いること

にしたい.以下同様である.

したがって 曲面の面積要素 は

によって与えられる

このとき

であるから 曲面 の曲面積は

と表される したがって 面積要素 は

と表される このとき

を曲面 のベクトル面積要素という

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 曲面積のつくる測度空間

本節においては 空間の曲面上において 曲面積のつくるジョル

ダン式測度空間を構成することについて考察する

いま 空間においてある 級正則曲面

を考える.ここで,パラメーターの領域 は平面の中の可測な有界

閉領域であるとする.このとき,曲面 には表裏の区別が定められ

ているとする.

この曲面 は ベクトル関数

を用いて ベクトル方程式

によって定義されていると考えることもできる

これらは 節において考察した様々な曲面の定義の仕方に共通

する一般な表現になっている

さらに, の可測な有界閉領域 上においてジョルダン測度空

間 が定義されているとする.

このとき ジョルダン測度空間 の像測度空間として曲面

上のジョルダン式測度空間 を構成し 曲面 上のジョ

ルダン式曲面積の概念の数理モデルを構成する

上においてジョルダン測度空間 の存在に関して次の

定理 が成り立つ.

定理   は平面の中の可測な有界閉領域であるとする.

は 上のジョルダン測度空間であるとする.このとき,次

の が成り立つ:

  ならば,

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 高々可算個の が互いに素,かつ条件

が満たされるならば,

が成り立つ.

 区間 が に属するならば,

  が合同ならば,

このとき, 級写像

が関係式

によって定義される.

このとき, による測度空間 の像測度空間として曲面

上のジョルダン式測度空間 が定義できて,次の定理

が成り立つようにできる.

定理  曲面 上のジョルダン式測度空間 が存在

して,次の を満たす

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  ならば,

 高々可算個の が互いに素,かつ

条件

が満たされるならば,

が成り立つ.

  であるための条件は, が成り立つこと

である.このとき,

が成り立つ.ここで,曲面 の第一基本量を とする

と,関係式

が成り立つ.

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  面積分の定義とその基本性質

本節においては, 次元空間の曲面 上定義されたスカラー関数

のリーマン式積分として 面積分の定義を行い その基本

性質について考察する.

一般に 次元における 級正則曲面はパラメーター表示を用い

て定義されていると考えることができる

そこで いま 次元空間においてある 級正則曲面

を考える.ここで,パラメーターの領域 は平面の中の可測な有界

閉領域であるとする.このとき,曲面 には表裏の区別が定められ

ているとする.

さらに 曲面 上のジョルダン式測度空間 が定理

によって定義されているとする

このとき, 上定義されたスカラー関数が可測であるということ

の定義を与える.

最初に, 上の単関数の定義を与える.すなわち, 上定義され

たスカラー関数 が単関数であるとは, の任意の有限直

和分割

に対し,

と表されることをいう.ここで, は実数を表し,それらは必ずし

も互いに異なる必要はない. は集合 の定義関数を表

す.このとき,単関数 を と表す.

次に, 上のスカラー関数 が可測であるということの

定義を与える.

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ここで, に属する可測集合を用いて作った,曲面 の有限直

和分割 の全体からなる集合を と表す.このとき, は細分

という関係に関して有向集合になっていることを注意する.

定義  曲面 上で定義されたスカラー関数 が可測

であるとは, 上定義された単関数の一つの有向族

が存在して,ムーア・スミス極限の意味で,

上一様収束

が成り立つことである.

すなわち,任意の に対し,ある が存在して,

なる任意の に対して,

が成り立つことである.

例  曲面 上定義された単関数と連続関数は可測である.

いま,曲面 上定義された有界な可測関数 に対して,

リーマン式面積分の定義を行う.

これを 段階に分けて行う.

  が有界な単関数の場合.

このとき, は の一つの有限直和分割

に対し,

と表されているとする.

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このとき, の 上のリーマン式積分を

によって定義する.この積分の値は, に対する表現のとり

方に依存しないで定まっている.

このとき,定理 の より,

が成り立つ.

  が一般の有界な可測関数の場合.

このとき,定義 によって,有界な単関数の有向族

が存在して, に 上一様収束している.

ここで,ムーア・スミス極限

が存在するとき,この極限 を 上の可測関数 のリーマ

ン式積分といい,

と表す.

この値 は に一様収束する単関数の有向族

の選び方に依らない.

Page 25: 第 章 面積分第 章 面積分 本章においては, 次元空間の曲面のジョルダン式曲面積の概念 を定義しリーマン式の面積分の定義とその基本性質について考察

これを 上の面積分といい

と表す.ここで, は面積要素を表す 上のリーマン式面積分を

面積分ということがある

この右辺の積分はリーマン スティルチェス積分であると考えら

れる

このとき 曲面 の法単位ベクトル は

に等しいことを思い出す いま の成分を

と表す

同様にして 上の面積分として,

あるいは,

Page 26: 第 章 面積分第 章 面積分 本章においては, 次元空間の曲面のジョルダン式曲面積の概念 を定義しリーマン式の面積分の定義とその基本性質について考察

が定義できる.

このとき,関係式

を用いて書き換えると, 節の結果によって 等式

が得られる

これらの面積分の各種の表現は曲面 のパラメーターの選び方

の違いに依存している.一般に, 上の面積分の値は曲面 のパラ

メーターの選び方に依らないことが知られている.

また, 上の可測なベクトル関数 の面積分も同

様に定義できる.それは, 成分 の各々に対するスカラー

関数の面積分を行うことと同等である.

特に, 上の可測なベクトル関数 に対して,成

分の面積分の特別な組合わせとして,次のような面積分の関係式

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が成り立つことが分かる ここで はベクトル面積要素

を表す

面積分の定義がパラメーターの選び方に依らないこともわかって

いる

面積分の定義よりただちに次の公式が従う

定理   上の記号を用いるとき 次の が成り立つ:

  上の可測ベクトル関数 に対し 次が成り立つ:

  上の可測ベクトル関数 と実定数 に対し 次が成り

立つ:

定理  パラメーターの領域 を二つの可測な閉集合 と

に分割することによって 曲面 を二つの曲面部分 と に

分割する ここで, と の境界以外は交わりがないとする.こ

のとき 上の可測ベクトル関数 に対し

が成り立つ

面積分は 積分の特別な場合であるから 面積分の性質の

詳細については 伊東 の 積分の基本性質の項を参照しても

らいたい