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第一 するに するこ ある . よって に1 を割愛して およびそ るこ にした.したがって,ここに てあるこ ある みに してあるから, りたい されたい . また している いて よい . 1・1 振子の微小振動,振動方程式 (1) し, を一 した が, をする えてみる . 第 1・1 図において 変位を から し,こ す角を (rad) すれ する ある . (2) が2° 3°以 大きさ をradian (1) する . したがって第一 して しい えて い.す わち (2) にだけ変位していた , これを に引き そう する に変位 きに, 大きさ している . す わち そう する をし,そ している . よって における (3) (1) いうこ それに 較して す. (2)g によって ずる あるが によって異る. -1- x l = sin tan , cos θ θ θ θ 1 M dx dt P x l Mg x l 2 2 =- =- ( ), Ν P Mg ( ). Ν M( ) kg lm ( ) O A OA xm ( ) OA θ Mg (N) P(N) θ P Mg t x A x P sin θ P 980 2 . / m s 第・ 1 1

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Page 1: 第 一 章 振 動 の 理 論contents.acoust.ias.sci.waseda.ac.jp/genron/genron-1_080821.pdf · 第 一 章 振 動 ... 振子が,鉛直平面内でその安定な平衡位置 を中心とし微小なる振動をする場合を考えてみる

第 一 章

振 動 の 理 論

音響現象を理論的に解析するには,振動理論の概要を熟知することが必要である.よって最初に1

章を割愛して振動現象の解析法およびその基本的性質を述べることにした.したがって,ここに述べ

てあることは音響現象に関係のある部分のみに限定してあるから,振動論の詳細を知りたい者は別の

専門書を参照されたい . また振動の理論に精通している人はこの章を省いて先へ進んでもよい.

1・1 振子の微小振動,振動方程式

質量 なる質点を長さ なる軽い(1)糸の尖端に吊し,糸の他端を一定点 に固定した

振子が,鉛直平面内でその安定な平衡位置 を中心とし微小なる振動をする場合を考えてみる.

第1・1図において振子の変位を 軸からの距離 で示し,この時に糸が となす角を

(rad)とすれば,質点に作用する力は重力 と糸の張力

である.(2)

微小振動とは が 2°乃至 3°以内の場合を指すので角の大きさ

を radian で測れば

(1)

が成立する .したがって第一近似として糸の張力 は常に重力

に等しいと考えて差支えない.すなわち

(2)

質点が なる時刻に だけ変位していた場合,これを平衡点 に引き戻そうとする力は常に変位

とは逆向きに, の大きさで作用している .すなわち張力 の水平成分が振子を平衡位置に

戻そうとする作用をし,その垂直成分は常に重力と平衡している . よって振子の運動時における力の

平衡は

(3)

(1) 軽いということは糸の質量が質点のそれに比較して無視し得る程度を指す. (2) gは地球重力によって生ずる加速度 であるが正確な値はその土地によって異る.

- 1 -

x

l= ≈ ≈ ≈sin tan , cosθ θ θ θ 1

Md x

dtP

x

lMg

x

l

2

2= − = − ( ),Ν

P Mg≈ ( ).Ν

M( )kg l m( ) O

A

OA x m( ) OA θMg (N)

P(N)

θ

PM g

t x A

x Psinθ P

9802

. /m s

第 ・ 図 振子の運動.1 1

oikawa
ノート
Mgがずれている
oikawa
ノート
m/sの書体を立体へ
oikawa
ノート
立体に
oikawa
ノート
立体に
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1・1 振 動 の 理 論

または

(4)

ここで

(5)

とおくと(4)は

(6) (振動方程式)

なる形となる.(6)の形の微分方程式を振動方程式と呼ぶ.その理由は,この方程式の解は が実

数であれば常に時間 の経過にしたがって振動する形で求められるからである.(6)の一般解(3)は

(7)

である .何となれば(7)は(6)を満足し,かつ二つの任意定数 を有しているからであ

る.(7)はまた

(8)

とも置くことができる.ここに は任意定数であって

(9)

(10)

なる関係があり, を変位の振幅(4)、 を初期位相角(5)と呼ぶ.

一般解に含まれている任意定数 または は振子の出発点の条件すなわち初期条件(6)に

よって定められる.すなわち振子の運動は最初の出発のしかたによって色々になりうることを意味し

ている.たとえば, 点に静止していたものを の瞬間に なる初速度で弾くことにより運動が

開始したものとすると,このような場合の初期条件は

(11) にて変位 初速度

とおけばよく,これを(7)に適用すると

(12)

となる.よって なる各時刻の振子の変位は

(3) 第ニ階線形微分方程式の一般解(general solution)は二つの独立の解を求め,それぞれに任意定数を 乗じて加え合せることによって構成される. (4) amplitude (5) initial phase angle (6) initial condition

- 2-

d x

dt

g

lx

2

2= − .

g

l= ω 2

d x

dtx

2

22 0+ =ω

( )x C t= −cos ω ϕ

C A BB

A= + = −2 2 1, tanϕ

A

B u

==

0

0

,

ω

ϕ

ω

t

A B,

C ,ϕ

x A t B t= +cos sinω ω

C

A B, C , ϕ

A t = 0 u0

t = 0 x = 0 ,d x

d tu m st

== 0 0 ( / )

t > 0

A C= cos ,ϕ B C= sinϕ

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振子の微小振動,振動方程式 1・1

(13)

で与えられる.なお各時刻の質点の速度は

(14)

であり,(13)(14)を を横軸として描い

てみると第1・2 図のようになる.なお

は速度振幅 である.

次に最初に質点を だけ変位させてお

いてそっとはなした場合を考えてみよう.

振子をはなす瞬間を とすれば,この

時刻には質点の変位は であるが初速度

は0である.よって初期条件は

(15) にて初変位

初速度

と書け,(7)にこの条件を代入すると

(16)

となる.よってこの場合の なる任意の時刻の変位および速度は

(17)

で与えられる(第1・3図).

次に最も一般的な場合として なる初

変位と なる初速度とを同時に与えた場

合を解いて見よう.つまり だけ変位さ

せておいて, の速度で突きはなす場合

である.この場合の初期条件は

(18) にて

であり,解は

(19)

(7) velocity amplitude, 振動速度の尖頭値である.

-3-

( )udx

dtu t m s= = 0 cos /ω

( )7

u0

x0

x0

x x= 0 ,

dxdt t

==0

0

B A x= =0 0,

x0

u0

u0

x0

x x= 0 ,

dx

dtu

t

==0

0

x x t u x t= = −0 0cos , sinω ω ω

xu

t= 0

ωωs in ( m )

t

t = 0

t = 0

t >0

t = 0

x x tu

t

xu

tu

x

= +

= +

00

02 0 2 1 0

0

cos sin

cos tan

ωω

ω

ωω

ω

第 ・ 図 静止していた振子に の時刻に初速度 を与えたときの振子の運動.

1 2 00

t u=

第 ・ 図 振子を だけ変位させて, の時刻に静かにはなした場合の振子の運動.

1 3 00

x t =

oikawa
ノート
(7)がずれている
oikawa
ノート
立体に
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1・1 振 動 の 理 論

となる.この場合は が正( 同方向)なるか負( と逆方向)なるかによって趣を異にするが正

の場合を図示してみると第 1・4 図のように

なる.

これらの場合で解が正確に現象を記述す

るためには最初の仮定である が

保たれていなければならない.そのために

は変位の最大振幅が

(20)

の範囲に保たれていなければならぬ.よっ

て初変位および初速度は

(21)

(22)

の範囲に保つことが必要となる.

次に,振動の周期 について考えてみよう.周期とは質点が振動する際に,ある一点を通過して後

1 往復して再び同一点を同一方向に通過するまでの時間をいう.たとえば変位が零の点を通過する時

間から周期を求めてみよう.今右向きを変位 の正方向と考え , なる時刻に 点を通過したと

仮定すると,この時刻には である.よって

(23)

次に質点が再び右向きに 点を通過する時刻を とすると,このときもやはり

(24)

である.しかるに三角函数はその変数が だけ増すごとに同一の値を繰返す.よって1往復に要す

る時間である周期 は

(25)

(26)

となる.これより明らかなように周期は振子の長さ と重力定数 のみにて定まり質量の大小には関

係しない.このことは振子の等時性として GALILE0(1583)が発見した事実である.周期の逆数

(27)

は振子が 1秒間に往復する回数を表わす.よってこれを毎秒の振動数 と呼び Hz なる単位で

(8) period of vibration (9) frequency

-4-

u0 x0 x0

x l/ <<1

( )8

( )cos ,ω ϕt1 0− =

( )T t tl

gs= − = =2 1

22

πω

π

( )vT

g

lz= = =1

2

1

2

ωπ π

H

( )9

( )x l

u l

0

0

1

1

/ ,

/

<<

<<ω

x l0 << ,

u gl0 <<

x t 1 Ax=0

A t2

cos( )ω ϕt2 0− =2π

T

ω ω πt t2 1 2− = ,

l g

C xu

u

x

x u

= +

=

0

2 0

2

1 0

0

0 01 4

ω

ϕω

,

tan .

第 ・ 図 初変位 初速度 とを与えた振子の運動.

oikawa
ノート
sを立体に
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振子の微小振動,振動方程式 1・1

表わす.振動数したがって周期は と のみに関し,変位の振幅には関係しないことは注意してお

くべきことである.振動教の 倍は定数 である. が何を表わしているかを知るには第1・5図の

ような模型を想像すると都合がよい.一つの円板の中心を固定して自由に回転させてみると円周上の

一点 が回転するにつれて の 上の射影 は にしたがって移動する.もしも円

板が の角速度で回転したとすると,1秒間に 点が回転する角度は となる.

よって の瞬間 点が の位置にあり,それ以後 なる角速度

で回転したとすると なる時刻の後のP点の位置は

の所にあり,このときの の位置は で与えられる.こ

う考えてみると はその軸上の投影が なる運動をする

ような円周上の一点の回転角速度を示していることがわかる.よって

この を用いて振動数と回転数とを結びつけることができる.この概 第 1・5 図

念は後で複素数を導入する場合に重要なものである.われわれは今後に を振動数 と同様な意味

に用いる.そしてこれを振動角速度 と呼ぶ.

なお前に示した と との関係を示す曲線を変位曲線または空間-時間曲線 と呼び, と と

の曲線を速度-時間曲線と呼ぶ.方程式(6)の解は常に なる振動数で振動する正弦波振動であ

る.

次に単弦振動 として扱い得る場合を例示する. その一つに質点をバネで吊

した振子がある.質点の質量 に比較してバネの質量が無視し得る場合

には,質点がその平衡の位置の上下に微小振動をするときの運動方程式は

(28) 第1・6図

である.ここに は質点がバネの弾性と重力 とで平衡する位置からの変位を示し,変位に

比例して,バネが質点を平衡の位置に押し戻そうとする力を としてある(押し戻す力は常に

と逆方向に向くから負号を附す).この をバネの硬さ と呼ぶ.(28)は

(29)

とおけば(6)と同形になるので,その解は前に述べたものと同形となる.この場合の振動数および

周期は

(30)

(10) angular velocity(11) curve of position,space-time-curve(12) 正弦波振動を単弦振動ともいう.(13) stiffness

- 5 -

l g

cosθ

( )θ ω ϕ= +t rad

( )cos ω ϕt +( )cos ω ϕt +

( ) ( )10 rad / s

(11)

(12)

(13)

Md x

dtKx

2

2= −

ω 2 = K

M

( )vK

Mz= 1

2πH ,

ω ω2π

P P XOX′ OP′ω ( / )rad s P

t = 0 P ϕ ωt

′P

ω

ωω v

x t u t

ω

M kg( )

x M g (N)

− Kx xK m(N/ )

ω ( )rad

oikawa
ノート
立体に
oikawa
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振動数
oikawa
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立体に
oikawa
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立体
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1・2 振 動 の 理 論

(31)

となり,質点の質量 とバネのコワサ のみで定まる.

次の例として質点を絃で吊った振子を示す.質量 なる質点の付いた絃を張力 で張った場合

に を充分大きくとって,重力の影響と絃の質量が無視され得る場合には,質点の平衡の位置の近

くの微小振動の変位 の各位置における張力の値は近似的にー定値 に保たれているとみなすこ

とができるので,質点を平衡の位置へ戻そうとする力の大きさは

(32)

であり,この力は常に と逆向きに作用する.よって運動方程式は

(33) 第1・7図

これより

(34)

(35)

(36)

この振子は容易に可聴周波の振動数を得ることができるので便利である.たとえば

とし,張力 を重力単位で にしたとすれば

となるので

となる.

1・2 振子の強制振動

前節では振子が自由振動をする場合について述べた.すなわち最初 に運動を生ぜしめるの

に力を加える以外には振子には振動を強制するような外力は作用せず,ポテンシャルを持った保存力

の場の中で振子はその自由周期にしたがって運動をする場合であった.これに反して,振子に外から

強制力 が作用する場合には,振子はもはや自由振動はせずに外力に強制された振動をする.

(14) 1・5 参照. (15) 2・1・6 参照. (1) disturbing force

-6-

( )TM

Ks= 2π

(14)

P P Px

aP

x

bsin sinθ θ1 2+ = +

Md x

dtP

x

aP

x

b

2

2= − − ,

ω 2 = +P

M

a b

ab,

( )vP

M

a b

ab= +1

2πH z ,

( )TMP

aba b

s=+

2π .

(15)

(1)

M K

M P

P

x P

x

M gr a b= =5 ,

= 50cm P 10kg

P = ×9 8 0 1 0. (N )

v z= 44 6. (H )

( )t =0

oikawa
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立体に
oikawa
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立体に
oikawa
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oikawa
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立体
oikawa
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立体
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振 子 の 強 制 振 動 1・2

強制振動の内で最も簡単な場合は外力が時間的に正弦的変化をする場合である.変位に比例して押

し戻すような保存力が作用する振子に,この正弦変化の外力が作用した場合の力の平衡の式は

(1)

である. は外力の瞬時の大きさを示す. (1)は

(2)

とおくと

(3) (強制振動方程式)

となる.(3)は強制振動方程式 と呼ばれ,右辺の強制項 が無ければ同次形の微分方程

式 となり,自由振動の方程式と一致する.(3)のような非同次微分方程式 の一般解の形は,この

非同次微分方程式の特別解 の一つを見出して,それに(3)の強制項を0とおいた同次形徴分方程式

の一般解を附加すればよいことが知られている.(3)の強制項を0にした同次形の一般解は 1・1 の

(7)または(8)で既に求められているから,(3)の特別解の一つを見出せば一般解は定まる.

振子が外力に強制されて振動する場合には,外力の加わり始めは別として,適当に長い時間を経て

定常状態に達してしまえば,振子は強制された振動角速度 で振動するようになるであろう.したが

って(3)の特別解の一つとして なる振動をする解があってもよさそうである.もしもこのような

解がありうるとすれば

(4)

が(3)の解でなければならぬ.よって (4)を(3)に代入してみると,

(5)

なる条件があれば(4)は(3)の解であることがわかる.よって(3)の特別解の一つは

(6)

であり,したがって(3)の一般解は

(7)

となる. は振幅を表わす任意定数であり,その値は初期条件で定まる.

たとえば最初 振子が静止していて, の瞬間に外力が作用しはじめたとすると,初期条

件は

(2) equation of forced vibration (3) homogeneous differential equation (4) inhomogeneous differential equation (5) particular solution

-7-

( )Md x

dtKx F pt

2

2= − + cos N

F ptcos

d x

dtx f pt

2

22+ =ω cos

( )2 f ptcos( )3 ( )4

( )5

x a pt= 0 cos

xf

ppt A t B t=

−+ +

ωω ω

2 2 cos cos sin

( )t < 0

ω 2 = =K

Mf

F

M,

p

p

af

p0 2 2=

−ω

xf pt

p=

−cos

ω 2 2

A B,

t = 0

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1・2 振 動 の 理 論

(8) にて

と表わせるから

(9)

となり, なるすべての時刻の変位は

(10)

で与えられる.

(10)は強制振動 と自由振動 とが重畳した振動をすることを示しており,その振幅は強制力の

大きさ に比例すると同時に,両周波数の平方の差 に反比例する.したがって強制振動の

周期が自由振動周期に接近すると変位振幅は急に増大し, となると不定となる.よって,この

場合には

(11)

と書き直して を に近づけると

(12)

なる関係式が存在するので(11)は

(13)

となる.これを見ると振幅は時間 の経過に

したがって次第に増大し,遂に無限大になる

ことが示される(第 1・8 図). また(6)より

明らかなように, ならば強制振動の変

位は外力 と同相であり, ならば逆相

となる.振動の一例を示すと第1・9図および

第1・10 図のようになる.

このような振動を実際に生じさせる一つの

例は振子の固定端を一定の周期で動かすこと

によって実現できる.第1・11 図にて固定端

の変位を とすると,運動の方程式は

(14)

または

-8-

dx

dt= 0

Af

pB= −

−=

ω 2 20,

( )xf

ppt t=

−−

ωω

2 2cos cos

ω 2 2− p

p ω

p → ω

limsin

x

xt

xt

→=

0

p ω

t

p <ωp >ω

ξ

Md x

dtMg

x

l

2

2= −

− ξ,

t = 0 x = 0 ,

t > 0

f

xft

t=2ω

ωsin

f

xf

p

pp

t

p=

++

−ωω

ω

ωsinsin

22

2

xf

ppt t

p

=−

= <

ωω

ω ω

2 2

1 92

3

(cos cos )

第 ・ 図 振子の強制振動, の場合.

第 ・ 図 固有振動数 と等しい強制振動数の外力が加えられた振子の運動,

1 8 2ω π/.p w=

oikawa
鉛筆
oikawa
鉛筆
oikawa
鉛筆
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振 子 の 強 制 振 動 1・2

(15)

となるから,もし

(16)

なる形で の変位を与えたとす

れば,(15)は(3)の形となる.

この場合 である.した

がって変位 は(7)または(10)で与えられる.

この場合に強制項のみを見れば, であれば振子

は第 1・12 図(a)のように の延長上の 点で固定

された振子のような運動をし, あれば(b)のよ

うに 上の 点で固定された振子のような振動をし,

長さ は自由振動数が である振子の長さに等

い この問題は,YOUNG が潮汐の力

学的理論に引用する例として用いたものである.

振子の強制振動を一般的に取扱うには,外力の形を制

限せずに

(17)

から出発することが必要である.この一般解は

(18)

である.二つの任意定数はそれぞれ二つの積分の内に含まれているから,この外に

を附加する必要はない.

(6) Dr.Thomas YOUNG(1773-1829):"A Theory of the Tides lncluding the Consideration of Resistance "Nicholsons Journal,1813.

-9-

d x

dtx

g l

2

22 2+ =

=

ω ω ξ

ω

,

/

ξ ξ= 0 cos pt

ξ

p< ω

C

CP p/ 2π

( )CP g p= / .2 ( )6

( )d x

dtx f t

2

22+ =ω

f =ξ ω02

( ) ( )x t f t t d t t f t t d t= −∫ ∫1 1ω

ω ωω

ω ωsin cos cos sin

A t Bco s s inω +ωt

x

p >ω

OP C

PO

C P

CO

x

p

O

′= =

ξω

0

2

1

1

1 12

.

第 ・ 図 振子の固定端 に強制力を加えた場合の振動姿態.

xJ

pt pt

p

=−

= >

2 2

1 1032

ωω

ω ω

(cos cos )

第 ・ 図 振子の強制振動, の場合.第 ・ 図1 11

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1・3 振 動 の 理 論

(18)は の形が与えられれば各時刻の変位を決定することができる.この場合もし が

ある限られた時間の間だけ作用し,力が作用する以前には振子が静止していたとすれば,力が作用し

始めた後の任意の時刻 における変位の瞬時値は

(19)

である.何となれば,この式は力が作用するずっと以前 では となり,ま

た力が作用して,それが作用し終った後には

(20)

なる自由振動を表現するからである.たとえば の前後 なる時間だけ力が作用したとすると

(21)

でなる.衝撃函数 で力を表現することができ,力が作用し終った後の変位は

(22)

である.この結果を見ると振幅は自由振動数と衝撃力の

作用する時間 との積で定まることがわかる.この計算

を行うのに

(23)

なる恒等式を利用している.なお(21)で示した衝撃函数は が小さなほど幅がせまく,高さの高い

ピ-クを示す.

1・3 減衰振動をする振子

いままではエネルギーの消費の無い振動系について述べてきたが,このような状態は理想化された

一つの状態であって,実際問題では常にエネルギーの消費があり,自由振動は時間と共に減衰する.

すなわち振動系の有するエネルギーは刻々他の形のエネルギーに変形され消費されてゆく.このエネ

ルギー消費の状態を最も簡単に記述するには速度に比例した抵抗力を導入するのが普通である.

本来,抵抗力は速度の函数であるが,その函数形は不明の場合が多い.しかし微小振動の場合には

(7) impulse function

- 10 -

f t( ) f t( )

t

x t f t t dt t f t t dtt t

= −−∞ −∞∫ ∫1 1

ωω ω

ωω ωsin ( )cos cos ( )sin

t = − ∞ xdx

dt= =0 0,

x A t B t

A f t t dt

B f t t dt

= +

= −

=

−∞

−∞

∫∫

cos sin ,

( )sin ,

( )cos

ω ω

ωω

ωω

1

1

t =0 τ

( )7

xu

e t= −

ωωωτ sin

τ

cos,

sin

ωτ

πτ

ωτ

ωτt

tdt e

t

tdt

2 2

2 20

+=

+=

−∞

∞−

−∞

∫τ

f tu

t( ) =

+πτ

τ2 2

第 ・ 図 衝撃函数1 132 2

yt

=+τ

τ.

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減 衰 振 動 を す る 振 子 1・3・1

この函数形を速度 の幕級数に展開し,その一次の項のみを取れば充分な場合が多い.たとえばマサ

ツ抵抗による抵抗力の形を とすれば, の小さな範囲においては

と展開できるが 以下の項は第二項に比して無視することができ,且つ のときは抵抗力が生

じないこと から とおくことができるので

と表わす.この力が速度 と逆向きに作用することから である. をマサツ抵抗 と呼ぶ.

振子が空気中で振動する場合には,振子と空気のマサツがあり,その抵抗力はこのような形で与えら

れる.

1・3・1 減衰振子の自由振動

一般に速度に比例した抵抗力がある場合,平衡の位置の近傍での微小自由振動の運動方程式は

(1)

と書ける.ここで

(2)

とおくと(1)は

(3) (減衰振動方程式)

となる.これを解いて を決定する一つの方法は

(4)

とおいて(3)に代入する方法である.その結果(3)は

(5)

となる.ここで

(6)

とおけば,(5) は1・1の(6)と同形となるので, は

(7)

したがって(4)より

(8)

となり,初期条件により二つの任意定数 または が決定されれば,それ以後のすべての時

刻の変位 が(8)で表わされる. (1) frictional resistance

- 11-

v

v

F v R R v R v( )= + + +0 1 22

L

v 2 v= 0

[ ]F( )0 0= R0 0=

F v R v( ) ≈ 1

v R< 0 (1)

Md x

dtKx R

dx

dt

2

2= − −

ω 2 = =K

Mk

R

M,

d x

dtk

dx

dtx

2

22 0+ + =ω

x

x yek t

=−

1

2

d y

dtk y

2

22 21

40+ −

′ = −ω ω2 2 21

4k

y A t B t= ′ + ′cos sin .ω ω

( ) ( )x e A t B t Ce tk

tk

t= ′ + ′ = ′ −

− −2 2cos sin cosω ω ω ϕ

R

F v( )

A B, C,ϕx

y

oikawa
ノート
「冪級数」の間違い
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1・3・1 振 動 の 理 論

(8)と 1・1の結果とを比較すると,第一に異なる点は振動が に比例して減衰することであ

る.この場合振幅が となるまでの時間

(9)

を減衰率 と呼び, を減衰定数 ,

を制動係数 と呼ぶ.なお振幅が60

(dB)減衰するまでの時間 を減

衰時間 と呼び,

で与えられる.減衰時間は室内音響学で

用いる残響時間 と同じ単位である(第

1・16 図).

第二に異なる点は,振動角速度が(6)

のように

(10)

となることにある.よってマサツ力によって自由振動の振

動数は減少することが知られる.しかし通常は と と

の相違は非常に小さい.(10)において と との相違

が問題となるためには が1に比較しうる程度の値とな

らねばならぬ.しかるに が1と比較しうる値になるた

めには

(11)

であって,減衰して振幅が となるまでの時間が1周

期の であることを必要とし,このことから が1

と比較しうる値になるためには非常に大きな制動係数でなければならないことが分る.この理由から

通常は

(2) modulus of decay (3) attenuation constant (4) damping coefficient (5) decay time (6) reverberation time

- 12 -

( )τ =2

ks

( )2 ( )3

k ( )4

( )T s( )5

exp ,

.

=

=

−kT

k T

210

1382

26

( )6

ω ′ω

ωωτ

′ω

ωτ

ωτ

′ = −

= −

= −

ω ω ω

ωω

ωτ2

2 2 2

21

1

21

1k k( )rad / s

τϖ π π

= = =1 1

2 2v

Ts( )

1

e1

ek t−2

1

e

k

2

第 ・ 図 の形,1 141

7 82y e ee

kt

t

= = = −− −τ . ( ) .d B

第・ 図 の形.1 15 2y e tk

t= −−

cos ( )ω ϕ

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減 衰 振 動 を す る 振 子 1・3・1

(12)

として取り扱える場合が多い(第 2・9 図参照).

が非常に大きくなり となると,(10)の が虚数となるので,(5)の解の形は(7)で

は満足されなくなる.このときには(7)の代りに

(13)

と書けばよく,したがって は

(14)

(15)

となり振動せずに減衰する運動を

表わす. これは粘性のある液体

とか,充分制動された検流計の振

動によくある形であるが,音響に

は余り必要がない.

また の場合には解が

(16)

となる.これを臨界制動 の状態

という.

次に指数函数を用いて(3)を

解く方法を示しておく.(3)のよ

うな定係数線形微分方程式は解の

形を

(17)

( は未定定数 )

と仮定し,この を(3)に代入すると,(3)の各項は

(18)

となるから, の満足せねばならぬ条件として

(19)

を得る.すなわち(19)を満足するように を選べば(17)は(3)の解である.(19)より

(7) と書けば (7)は(5)の解である. (8) critical damping

- 13-

ω ω=

k k > 2ω ′ω

y Ae Be

k kt t

= +−

−2

42

2

42ω ω

x

x Ae Bet t= +− −α β ,

αβ

ω

= −k k

2 4

22

m

( )7

k = 2ω

( )x A Bt e t= + −ω

( )8

x Ae t= λ

A , λ

dx

dtx

d x

dtx= =λ λ,

2

22

λ λ ω2 2 0+ + =k

λ

x

sin sinh , cos cothix i x ix x= =

λ

第 ・ 図 制動係数 減衰時間 との関係,

振幅 ∽

1 162

10

213 82

2

6kk

xk

k

ℑ − ℑ

=

− ℑ

ℑ =

−exp ,

exp , . .

oikawa
鉛筆
oikawa
鉛筆
oikawa
鉛筆
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1・3・2 振 動 の 理 論

(20)

となり,

(21)

なることを想起すれば, と との大小の関係に応じた解が得られる .すなわち

(i) ( 振動状態 ):

(22)

(ii) ( 非振動状態 ) :

(23)

(iii) ( 臨界制動状態 ) :

(24)

1・3・2 減衰振子の強制振動

マサツ力が作用している振子に任意の周期で振動する外力が加わる場合を解いてみよう .外力を

とすると,力の平衡条件を記述した方程式(運動方程式)は

(25)

これを 1・2の(3)と同様に変形すると

(26)

となる. が に関する周期函数であるときに に対応する を求めるのが目的であるが,

その一手段として,変位が

(27)

なる周期運動を保持するに必要な の大きさを(26)から求めてみる.(27)を(26)に代入すれば,

変位の振幅 と外力 との間には

(28)

(9) この解は交流回路理論では周知のものであるが,ここでは別な解法を示す.

-14 -

ω

x e Ae Be

e ak

t bk

t

k k k

k

t i t i t

t

= +

= −

+ −

− − − −

22 2

42 2

4

2 22

22

4 4

( )

cos sin .

( ) ( )ω ω

ω ω

ω <k

2

( )x Ae Be . t t= +− −α β

ω = k

2

( )x A Bt e t= + −ω .

F

( )Md x

dtKx R

dx

dtF t

2

2= − − + .

d x

dtk

dx

dtx f t

2

22+ + =ω ( )

t x ( )9

x A pt= cos

f

( )f t

A f

i = − 1

λ ω ω= − ± − = − ± −k k ki

k

2 4 2 4

22 2

2

,

k2

4

e ii± = ±θ θ θcos sin

ω > k

2

( ){ } ( )f A p pt pk pt A pt= − − = +ω α2 2 cos sin cos ,Φ

f t( )

oikawa
鉛筆
oikawa
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oikawa
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oikawa
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oikawa
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oikawa
ノート
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減 衰 振 動 を す る 振 子 1・3・2

(29)

(30)

なる関係が存在せねばならぬ.すなわち変位 が(27)なる形の振動を保持するためには,外力の大

きさは変位 の 倍であり,その位相は変位の位相より だけ進んでいることを必要とする.この

結果は逆に外力が

(31)

なる形であるときに,これによって生ずる変位は

(32)

でなければならぬと推論することができる.

(32)は(26)の特別解の一つである.よって(26)の一般解は(32)に自由振動解(8)を附加し

たものであり

(33)

である. は初期条件より決定される定数であるが,この項は時間と共に減衰するので運動が始

まってから充分時間を経過した後の定常状態では無視してもよい.(33)の第一頃は定常解 ,第二

項を過渡解 という.

たとえば で振子が停止していたとすれば,そのときは変位 も速度 も0である. で

なる外力が作用し始めたとすれば, における解の形は(33)にて

(34) にて

を満足するものであることか必要である.よって

(35)

なることを要し, における任意の時刻の変位および速度は

(36)

(10) (28)の を を とおくと(31)と同形となる.よってこれに対する は(27)の と とに同様の 置換を施せばよい. (11) steady state solution (12) transient state solution

- 15-

( )Φ = − + =−

ω αω

2 2 2 2 22 2

p k pk p

p, tan ,

Φ > < <0 0, ,α π

Φ Φcos , sinα ω α= − =2 2p k p

x

A Φ α

f f pt= 0 cos

( )xf

pt= −0

Φcos α

( )10

( ) ( )xf

pt e A t B tk t= − + ′ + ′−0 2

Φcos cos sin ,α ω ω

′ = −ω ω 22

4

k

A B,

( )11

( )12

t ≤ 0 x t = 0

f t ≥0

t = 0 xdx

dt= =0 0,

Af

Bf

pk= − = −

′+

0 0

2Φ Φcos , sin cosα

ωα α

t > 0

( )xf

pt e tp k

tk t= − − ′ +

′+

−0 2

2Φcos cos cos sin cos sin .α α ω

ωα

ωα ω

Af

t0

Φ, x A t

&x

oikawa
ノート
誤植:「が」
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1・3・2 振 動 の 理 論

(36')&x

dx

dt=

( )= − − + ⋅ ′ −′

+

+ ′

−pfpt e t

k p k

pt

k t0

2

2

2 2

1Φ sin sin cos sin cos sinα α ω

ωα

ωω α ω

となる.(36)を見ると振動のし始めには二つの振動数 と とが重合して存在し,自由振動成分

の振幅は外力と変位との位相差 に関係し, のときには変位の過渡項の が大きくな

p ′ω

′ω α α = 0 cos ′ω t

り, のときには が大きくなることが示されている.

定条項を見ると,その振幅は に比例し, に反比例し,かつ変位と外力との間に だけの位相

差が存在する.振幅について考えると,外力の大きさ が一定の場合に変位を決定するのは の大

きさであり, が極小のときに変位は極大となる.(29)から の極小となる振動数を求めると

(37)

より

(38)

となり,強制角周波数 が自由角周波数 から少し異なり,しかも とも少し異なる値 で共振

することが示される.このさきの の値は

(39)

であり,振幅の極大値は

(40)

で与えられる.もしも ならば

(41)

となる.

次に外力 と変位 との位相差について述べよう.(29)より明らかなように, のとき

となり, ならば ならば となって(32)変位 は常に外力 よ

り位相が遅れている.いま を一定に保ち, を に近づけると, は または に収斂し,マサツ

のない場合の強制振動の位相と同相かまたは逆相かになる.しかし を一定に保っておき を に

近づけると は に収斂し, と との位相差は 周期 となる.このときは外力

と振動速度 とは同位相となり,同期することが示される.すなわち と とが等しいときには外

力 の最大となる時刻と振動速度 が最大となる時刻とが一致することを意味する (第1・17 図).

(13) この状態を共振(resonance)と呼ぶ.

-16-

α π=2 sin ′ω t

f0 Φ α

f 0 Φ

Φ Φ

( ) ( )∂∂

ωΦ 2

3 2 24 2 2 0

pp k p= − − =

pk k

p= − = − =ω ωω

22 2

2 02

12

p ω ′ω p0

Φ

Φ0

2

214

= −kkωω

xf

kk

00

2

12

=

ω

ωk

21

ω<

xf

k00≈ω

f x ω = p α =π2

ω > p α π ω< <2

, p α π>2

x f

p k 0 α 0 π

k p ω

απ2

f x1

4α π=

2

f

p ωf ( )13

&x

&x

oikawa
鉛筆
oikawa
鉛筆
oikawa
鉛筆
oikawa
ノート
誤植:「定常項」
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減 衰 振 動 を す る 振 子 1・3・2

と との位相差は振動系で消費するエネルギーを振動源 から補給するために必要なものであ

る. と との位相が完全に一致し かまたはπとなったときには,外力 と振動速度 とは

の位相差を持ち,1周期間の仕事の和は完全に0となる.これを天文学用語で“in quadrature”

(距) と呼ぶ.(第1・18図)

が 0でない振動系に対して外力がなす仕事の

割合(仕事をする速度,単位は Watt すなわち

Joule/sec)は

(42)

であり,1 周期間の時間平均値 は

(43)

- 17-

f x f

f x f

(14 )

k

( )

( ){ } ( )

F xMp

f pt pt

Mpfpt

& sin cos

sin sin W

= − −

= − −

Φ

Φ

02

02

22

α

α α

( ) ( )FxMpf Mf

k

F

Rkp& sin sin sin W , sin= = = = =0

2

20

2

2

1

2

222

ΦΦα α α α

π2

k

α = 0 &x

( )c p≫ , の場合.第 ・ 図ω α π=

1 18

( , ( )b) p≪ の場合.ω α = 0( , , &a) p x x

f

= =

ω απ2の場合の変位 速度 と

外力 の位相関係(共振状態).

第 ・ 図1 17

( a) 変位 と外力 との位相差 が との大小によって 間に変化す

ることを示す.

x f pαω α π0 < <

( ) &b 速度 と外力 との位相差 が と

との大小によって の間

に変化することを示す.

x f p′

< ′ < −

α ωπ α π2 2

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oikawa
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1・3・2 振 動 の 理 諭

となる.この値は の時間平均値と等しいことが容易に示される.よって一定振幅の振動を特続

している系に補給される仕事量はその系で消費されるエネルギー量に等しく,系に貯えられているエ

ネルギー量は常に一定値に保たれていることがわかる.この結果よりエネルギー消費 が極大とな

る場合は

(44)

の場合であり,このときのエネルギー消費速度は

(45)

である.よって制動係数 の小さなほど系は多量のエネルギーを消費することができ,このことは

の小さなほど多量のエネルギーを振源から取ることができることを意味する.

次に となる附近のエネルギー消費を調べてみよう.(43)を

(46)

(47) は共振鋭度

と変形すると,(46)の第二の因数は のとき なり, と とが等しいあたりで が1

から遠去かると急激に から減少する.この様子を を横軸にとって図示するにあたり,音の高

さの感覚から見て を用いる方が好都合なので,横軸 を

(48)

とおき,(46)の第二因数を とおいて

(49)

と変形すると, が に近い所では

(50)

と書くことができ,簡単に図示することができる.(50)の の形は第1・13 図に示してある通り

に関しては対称形であり

(51) で

(52) で

となる.この形は第1・19図に示すとおりである.したがって は共振曲線の半値幅を表わす. は

(14) の時間平均は は1周期,ただし について0から まで積分する.

-18 -

( )α π ω ω= = <2

, ,p k

( )M f

k

F

R20

21

2

2= W

k

k

p= ω

F

R

Mf

kp

p k p

F

pp

2

22

2 0

2

2 2 2 2 2

2

4 2 14

2

2sin ,αω ω

β

β ωω

=−

+

=+ −

ω → p β −1

w

p p / ω

β −1 p / ω

( )ln p /= ω

y

yp

pSin x

=+ −

=+

β

β ωω

β

β2 14

2 2 2

ω p

xp

yx

= − =+ωβ

β1

2 2,

y x=0

x y

x y pk

= =

= ± = − = ±

−0

1

21

2

β β ω

,

,

βω ωτ

ωβ

= = = =

1

2

1 1

2

k

kQ

ω

x

xp p

ex= =

ln ,

ω ω

β β

f t( ) 10T

fT t dt T∫ ( ) , pt 2π

Rx& 2

R x&2

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減 衰 振 動 を す る 振 子 1・3・2

小さなほど,曲線の形は鋭くなり, の極限では幅が0となり,高さは無限大となる.しかし

の値がどうあってもこの曲線と 軸との内の面積は一定値 である.すなわち

(53)

この性質がこの函数を単位衝撃函数として利用する根底と

なっている.

次に複素数を用いて(26)を解く方法を附加しておく.

外力 は複素数 の実数部で与えられるか

(54)

の解の実数部は(26)の解となるべきである.(54)の解が定常状態では なる強制振動であること

から(26)の解の一つは

(55)

の形であってもよい筈である.ここに は複素任意定数で の形である.(55)が(54)の

解であるためには,これが(54)を満足せねばならぬから

(56)

なることが必要であり,これより と との間に

(57)

なる関係が存在すればよいことになる.これは実数部を取れば(32)と同じものであり,(33)に相当

する解は

(58)

である.

また,(26)は(4)と(5)を用いて変形すると

(59)

ただし

となり,1・2 の(19)を用いて積分すると,(26)の一般解は

(60)

β → 0 β

x πβ

βπ

2 2+− ∞∞∫ =

xdx .

(15)

f pt0 cos f ei p t

i = −1

p

x Ae i pt= ±

A eiφ

ω 2 20−

±

=p i p k A f

Af

p i p k=

±

02 2ω

xf e

i p t

p i p ke

k tae

t tbe

i t=±

±

+− ± ′ + ′

02 2

2

ω

ω ω

( )d

d tx e

k tx e

k te

k tf t

2

22 2 2 2

+

+ ′

+=

+ω ,

d x

dtk

dx

dtx f e i pt

2

22

0+ + = ±ω ,

A

A f0

′ = −ω ω2 2 21

4k

x e t e f t t dt e t e f t t dtk k k kt t t t=

′′ ′ −

′′ ′− −∫ ∫1 1

2 2 2 2

ωω ω

ωω ωsin ( )cos cos ( )sin

(15) 1・2の(21)式または第1・13図参照.

-19-

第 ・ 図 衝撃函数1 192 2

yx

=+β

β.

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-20 -

1・3・2 振 動 の 理 論

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減 衰 振 動 を す る 振 子 1・3・2

- 21-

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1・3・2 振 動 の 理 論

-22 -

第1・20 図 (続き)

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減 衰 振 動 を す る 振 子 1・3・2

- 23-

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1・4・1 振 動 の 理 論

となる.初期条件が で なる場合に なる時刻の変位を求めるには積分限界を

から までとすればよい.たとえば の時刻の変位は

(61)

である.これを見ると, の項があるので が負の大きな値の場合の の影響は消滅してしま

い に影響をおよぼさないことが示されている .つまり,過去のある時刻より以前に加わった外

力の影響はほとんど現われないことが示されている .

(36)の変位および速度を実際に計算して図示すると第1・20 図のようになり,自由振動数 , 強制

振動数 およひ減衰率 の相互関係によって過渡波形が著しく異なることが示されている.

1・4 自由度の多い振動系の振動

運動系の自由度とは,その系の運動を記述するのに必要な独立変数の数をいう.ある運動系のあら

ゆる部分の運動がすべての時間にわたって一つの独立変数 で記述されるならば,この系の自由度

は1であるという.たとえば単振子の振動などはこの例である.たとえ構造の複雑な機械でも,これ

が一つの蓄勢輪 に連結され各部の運動位置がすべての時刻にわたってこの輪の回転角で定められる

ようなものはやはり自由度1である.しかしどうしても一つの変数では,その運動を記述し切れない

場合が生ずる.その例を次に示そう.

1・4・1 1本の絃に2個の質点を吊した振動系の自由振動

問題を簡単にするために,系が中心に対して対称形な湯合を考え

る. 二つの質量は等しく絃の張力も一様なものと仮定する. 二つの

質点は第1・21 図に示すように全く独立に運動し得るから,それぞ

れを記述するのに変数 を必要とする(自由度は2).運動方 第1・21 図

程式は

(1)

(2)

変形すると

(3)

(4) 第 1・22 図

(1) fly wheel

- 24 -

t

− ∞ t t = 0

ek t2 t ( )f t

( )x 0

v0

v τ

x

(1)

x y,

d x

dt

PM

a b

abx

PM b

y2

22

21

20+

+− = ,

d y

dt

P

M

b a

aby

P

M bx

2

22

2

1

20+

+− = .

t = − ∞ x x= =0 0, &

x e f t t dtk t

( ) ( ) sin01

20

= −′

′−∞∫ω

ω

Md x

dtP

x

aP

x y

b

Md y

dtP

y x

bP

y

a

2

2

2

2

2

2

= − − −

= − − −

(N) ,

(N) .

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自 由 度 の 多 い 振 動 系 の 振 動 1・4・1

この連立微分方程式を解くにあたり,まず二つの質点が同じ周波数でしかも同一の位相で振動する場

合があるかどうかを試してみる.もしそのような場合があれば,解は

(5)

となるべきである.よって(5)を(3)に代入すると と を規定する関係として

(6)

を得る.これを(3),(4)の永年方程式 と呼び,これより を定めねばならぬ.しかるに

(6)は三つの未知数の間に二つの関係式しか無いので,一般には解は求まらない.ただ(6)を

に関する連立方程式とするとき,これから を消去して のみの式を導くことかできる.そ

の方法は, の係数で作った行列式を とおけばよい.よって

(7)

または

(8)

より は決定される.これを連立微分方程式(3),(4)の決定式 と呼ぶ.これより

(9) または

すなわち(5)を満足する自由振動数はニつあり,それぞれ

(10)

この または を(6)に代入すると,それぞれの に対して,比 が決定される.すな

わち

(11)

(12)

この結果を(5)に代入すれば,それぞれの に対する変位 が定まる.

(2) secular equation (3) determinantal equation

- 25-

A

( )2 A B, ,ω

A,

B A B,

A B,

( )3

ω 2 1=

+P

M a

P

M

a b

ab.

ω ω1 2

= =+P

Ma

P

M

a b

ab, ( ) .rad / s

A B:

A

B

PM b

PM

a bab

=+

12

22

2ω,

x y,

x A t

y B t

= −= −

cos( ) ,

cos( )

ω ϕω ϕ

ω

ω

0

ω

ω

2

2

2

2

1

20

1

2

2

20

−+

+ =

+ − +

=

P

M

a b

abA

P

M bB

P

M bA

P

M

a b

abB

,

ω

ω

2

2

2

2

1

2

1

2

2

2

0

−+

− +

=

P

M

a b

ab

P

M b

P

M b

P

M

a b

ab

,

,

,

ω ω4 2 22 10−

++

+=P

M

a b

ab

P

M a

a b

ab

ω 2

ω1 ω 2 ω

A

B

A

B1

1

2

21 1= = −, .

ω

oikawa
ノート
(3),(4)に代入すると
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1・4・2 振 動 の 理 論

これを見ると,この振動系が一定の振動数で自由振動し得る場合が二つあり,低い方の振動は

なる角速度を持った振動であり,そのときは両質点は同方向に等しい変位をし,他の一つの振動は

なる角速度の振動であり,このときは,各質点の変位は互に反対方向であるが,その振幅は等しい.

この二つは共に線形微分方程式(6)の特別解であるから,これの合成された振動姿態もまた(6)

の解である.よって任意の初期条件によって生ずる変位を記述する形

(13)

(14)

が(6)の一般解となる. 等は初期条件で定まる任意定数である .このように質点を2個

吊した振子は変数を2個用いればその運動が完全に定まり,かつ自由振動が二つ現われる.これは自

由度が2なる運動系の特長であり, をこの振動系の規準振動角速度,それぞれの振動姿態を

規準振動姿態 という.

1・4・2 二 重 振 子

自由度2なる振動系の他の一つの例として二重振子を示す.第1・23 図のように で固定された系

に2個の質量 が吊され地球重力の場の内で自由振動をする場合を考える.

同一鉛直面内で二つの質点が運動する場合の運動方程式は,各質点の変位を

とすれば

(15)

(16)

ただし はそれぞれの糸の長さである.この場合も全体が一つの振動体として

振動する場合があるとすれば

(17)

が (15),(16)の解でなければならぬ.したがって は

(18)

ただし

を満足せねはならぬ.これより を消去すると, を決定する式として

(4) 間にはそれぞれ(6)で規定される関係があるので, この4個の任意定数は互に独立 なものではない. (5) normal mode of vibration

- 26 -

ω1

ω 2

( ) ( )x A t A t= + + +1 1 1 2 2 2cos cos ,ω ϕ ω ϕ

( ) ( )y B t B t= + + +1 1 1 2 2 2cos cosω ϕ ω ϕ

A B, ,ϕ ( )4

ω ω1 2,( )5

O

M m,

x y,

Md x

dtM m g

x

amg

x y

b

2

= − + −−

( ) ,

md y

dtmg

y x

b

2

2= −

−,

a b,

x A t

y B t

= −= −

cos( ) ,

cos( )

ω ϕω ϕ

A B,

( )11

0

0

2

2

− − +

+ =

+ −

=

µ ω µ µ

ω

ga b

Ag

bB

g

bA

g

bB

,

,

µ =+m

M m

A B, ω

A B A B1 1 2 2

, , ,

第 ・ 図1 23

oikawa
ノート
\frac{d^2 x}{d t^2}
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自 由 度 の 多 い 振 動 系 の 振 動 1・4・2

(19)

を得る.(19)の判別式は

(20)

であるから は常にニつの実根を有し,かつ は常に正であることも示される.よって は常に

実数であり,したがってこの系には常に二つの規準振動 が存在する.

いま すなわち なる場合を考えると(19)より

(21)

を得る.したがって系が なる振動数で振動する場合には,質点 が なる長さの糸で吊され,

が存在しない振子の振動数で振動し, はただ に強制されて に附随して振動する.この場合

の両質点の振幅の比は

(22)

であり, と の大小によって両質点の変位が同方向になったり逆方向になったりする.また系が

なる振動をするときは, 点を支点とする なる長さの振子の振動数となり,かつその振幅は

(23)

となって はほとんど静止して のみが振動する.また判別式(20)は となることがないので,

と が等しくなることはないが, が小さくかつ の場合には となる.この場合

に両方の質点を振動させると と との間にはエネルギーの交換が行われ,振動のウナリ現象 を

呈する.すなわち振動系は と との混合した振動をするので,ある時刻には の変位が増大し

はほとんど停止するが,しばらく経つと はほとんど停止し の振幅が増大し,この経過を順

次に繰返す.すなわち一つの振子についてみると なる振動をしながらその振幅が大きくなったり

小さくなったり周期的に変化し,音のうなりの現象に似た結果を生ずる.

次に が1に近い場合 には

(24)

(25)

となるから, なる振動をするときは, は一直線となって の長さの振子のよう

に振動し, の振動のときは はほとんど停止し は張られた絃に吊された錘のような振動をす

(6) beat,詳細は 1・6・6参照.

- 27-

( )11 1

04 22

− − +

+ =µ ω ωg

a b

g

ab

ga b

g

ab2

2 21 1

4 0−

+ >µ

ω 2 ω 2 ωω ω1 2,

µ << 1 M m>>

ω ω12

22= =g

a

g

b,

ω1 M a m

m M M

A

B

g

bg

b

b

a1

1

12

1=−

= −ω

a b ω 2

M b

A

B2

20≈

M m 0

ω1 ω 2µ a b≈ ω ω1 2≈

M m ( )6

ω1 ω 2 M

m M m

ω1

µ ( )M m<<

ω12 1

1

=+

=+g

a b

B

A

a b

a, ,

ω 22 2

20=

+≈mg

M

a b

ab

B

A,

ω1 O M m− − ( )a b+

ω 2 m M

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1・4・3 振 動 の 理 論

る(第1・24図). また とすると の1根は となり他の根は

(26)

(27)

となる.

(19)を解いて の一般形を求めると

(28)

の場合の振幅は

(29)

の場合は

(30)

たとえば とすれば となり

第1・24図

である.なお(15),(16)の一般解の形は(13),(14)を用いればよい.二重振子の解法は Lord

KELVIN によって始めて解法が確立した.

1・4・3 3質点を吊した絃

自由度3なる振動系の例として3個の質点を絃に吊して張った振動系を示す.張力が充分大きく重

力は無視し得る場合について考えることとし,質点の質量は三つとも相等しく絃の長さも全部 に等

(7) Lord KELVIN: William Thomson(1824-1907) が後に改名した. Grasgow における Natural phylosophy の教授 (1846-49), 著書"Natural Phylosophy”2nd ed.(1877).

- 28 -

a→ ∞ ω 2 0

ωµ

2

11=

−= +

g

b

g

b

m

M( ),

A

B

m

M= −

ω 2

ωω µ

µ1

2

2

2

2

22 1

1 14 1

=+

−± −

+

g

a

g

bgab

g

a

g

b( )

( ),

ω ω= 1

A

B

b

a

g

abg

a

g

b

1

1

2

211

2 11 1

4 1= −

+

−+ −

+

( )

( ),µ

µ

ω ω= 2

A

B

b

a

g

abg

a

g

b

2

2

2

211

2 11 1

4 1= −

+

−− −

+

( )

( ),µ

µ

M m a b= =, µ = 0 5.

[ ]ωω

12

22 2 1 05

= ±

g

a. ,

ω1 1848≈ . ,g

a

( )A

B1

12 1≈ − + .

ω 2 0 765≈ . ,g

a

A

B2

22 1≈ −

( )7

a

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自 由 度 の 多 い 振 動 系 の 振 動 1・4・3

しいものとする.

各質点の変位を とすれば運動の方程式は

(31)

(32)

(33)

ここで

(34)

とおくと

(35)

解の形を

(36)

と仮定してみると,永年方程式は

(37)

となり,三元連立方程式となる.これより を消去し決定式を求めると

(38)

なる対称形の行列式となり,その対角線要素は皆等しい.(37)はまた

(39)

とも書け,これより三つの の値が求まる.それぞれを求め

ると

(40) 第1・15図(a)

(41)

- 29-

x y z, ,

Md x

dtP

x

aP

x y

a

2

2= − −

−,

Md y

dtP

y x

aP

y z

a

2

2= −

−−

−,

Md z

dtP

z

aP

z y

a

2

2= − −

−.

µ = P

Ma

d x

dtx y

d y

dtx y z

d z

dty z

2

2

2

2

2

2

2 0

2 0

2 0

+ − =

− + − =

− + =

µ µ

µ µ µ

µ µ

,

,

.

x A t y B t z C t= + = + = +cos ( ) , cos( ) , cos( )ω ϕ ω ϕ ω ϕ

( ) ,

( ) ,

( )

ω µ µµ ω µ µµ ω µ

2

2

2

2 0

2 0

2 0

− + =+ − + =+ − =

A B

A B C

B C

A B C, ,

( )

( )

( )

ω µ µ

µ ω µ µ

µ ω µ

2

2

2

2 0

2

0 2

0

=

( )( )ω µ ω µω µ2 4 2 22 4 2 0− − + =

ω 2

ω µ1 2 0= = − =, , .A C B

ω µ2 2 2 2 22 2 2= + = = −( ) , , .A C B A

oikawa
ノート
omega = omega_1 第1・25図(a)
oikawa
ノート
A_1 = -C_1, B_1 = 0
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1・5・1 振 動 の 理 論

第1・25 図(b) 第 1・25図(c)

(42)

これを の小い順にならべると

である.以上より(31)~(33)の一般解は

(43)

となる. ただし の間には(37)の関係がある.

1・5 自由度1なる振動系の一般理論

自由度1なる力学系とは前にも述べた通り,ある質点系の取り得るすべての布置 が一つの変数(ま

たは座標)に適当な値を与えることによって表示できるような系をいう.

【例 1】 任意の形状の断面を有する長い筒が水平面上をころがる場合の筒の各部分の位置は,その

回転角のみにて表示できる.

【例 2】 第1・26 図のように両端 を固定した糸に 2個の質点

を吊し が を含む鉛直平面内でのみ移動できるようにし

たときはこの系の自由度は1であり,その変数はどれか一つの絃

(たとえば )と水平面とのなす角 である.

【例 3】 この他,一つの fly wheel に結合された複雑な機械など

自由度1なる運動系は多数存在する. 第1・26図

1・5・1 自 由 振 動

自由度1なる運動系の一般的性質を述べるにあたり,最初は消費力 の作用しない場合を考える.

消費力を省いた自由度1なる系の運動は一つのエネルギー方程式で表現され,特に安定な平衡布置の

近傍における微小運動は常に 1・1の(6)の形で表示されるということが一般的に証明できる.

いま, 個の質点よりなる自由度1なる系の布置を表示する変数(座標)を とし, の微小変化

(1) configuration (2) dissipative force

- 30 -

ω µ3 3 3 3 32 2 2= − = =( ) , , .A C B A

ω

ω ω ω3 1 2< <

x A t A t A t

y B t B t B t

z C t C t C t

= − + − + −= − + − + −= − + − + −

1 1 1 2 2 2 3 3 3

1 1 1 2 2 2 3 3 3

1 1 1 2 2 2 3 3 3

cos( ) cos( ) cos( ) ,

cos( ) cos( ) cos( ) ,

cos( ) cos( ) cos( )

ω ϕ ω ϕ ω ϕω ϕ ω ϕ ω ϕω ϕ ω ϕ ω ϕ

A B C, ,

( )1

A B,

C D, CD AB

BD θ

( )1

q qj

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自 由 度 1 な る 振 動 系 の 一 般 理 論 1・5・1

によって質点 が だけ 方向に変位したとすると, と との間には

(1)

なる関係がなければならぬ.ここに は質点 に固有の係数であり,かつ特定の布置 にも関係す

る値であるが,一つの布置 の近傍の微小変化に対しては, は質点 に固有の定数とみなすこと

ができる.(1)を で微分して速度を求めると

(2)

となるから,系全体の運動エネルギ - は

(3)

ここに

(4)

となる. は一般に の函数であり,これをある特定布置 に関する系の慣性係数 と呼ぶ.

系の位置のエネギ- は系の布置 のみに関し速度 には関係しない量であるから,これを

と書くと,外力も作用せず消費力も存在せぬ場合には,エネルギー保存則 が成立せねばならぬので

一定,すなわち

(5) 一定

(5)の右辺の一定値は初期条件として運動の最初に与えられた系のエネルギーである.(5)を時間

で微分して で除すと

(6)

となる.(6)は質点系各部の質点相互間に作用する不明な反作用 を除去した式で,系全体が一体

となって運動する自由振動を記述している.

この式は安定な平衡布置の近傍の微小振動の場合にはさらに簡単になる.平衡の布置が存在する場

合にはこの点で一度静止した運動系は外力が作用せぬ限り永久にこの布置に止まる筈である.このこ

とは速度 と加速度 が である場合に(6)が成立する(系のとり得る の値が存在する)ことを

(3) kinetic energy,

(4) coefficient of inertia

(5) potential energy (6) conservation of energy (7) mutual reaction

- 31-

δq ml δsl sl δq δsl

δ α δs ql = 1

α l ml q

q α l ml

t

vdq

dtql l l= =α α &

( )3

( )T m v aqll

j

l= ==∑1

2

1

21

2 2& J ,

a mll

j

l==∑

1

a q q ( )4

( )5 q v V q( )( )6

T V+ =

1

22aq V q& ( )+ =

t &q

aqdadq

qdVdq

&& &+ + =12

02

( )7

&&q 0&q q

1

2

2mv

oikawa
ノート
エネルギー
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1・5・1 振 動 の 理 論

意味する.よって平衡の布置では

(7)

でなければならぬ.これによって平衡の布置 とはその布置から微小の変位をしたときの位置のエネ

ルギー の変化は静定的 であるという事実で表現できる. が与えられていれば(7)より平

衡布置 が見出されるので,座標原点を に移動し が平衡の布置を表現するようにすると,

平衡布置の近傍の微小振動は が の近傍の微小振動として表現でき, の形は

(8) 定値

と展開することができる.ただし(6)の関係により の一次の項は存在しない.(8)の を安定

係数 と呼び, が正ならば安定な平衡, が負ならば不安定な平衡と呼ぶ.これらの結果より安定

な平衡布置の近傍では(6)は

(9)

と書くことができ 1・1の(6)と同形となり,この解は

(10)

(11)

(12)

である.

この結果を見ると,振動数は安定係数と慣性係数との比の平方根に比例することが示され,また各

質点の平衡位置からの変位は であるから に比例することがわかる.そして各質点は なる振動

数の単弦振動をし,全質点は歩調を揃えて同時にその平衡点を通過する.また各質点相互間の振幅の

比は一定に限定されていて,ただその絶対振幅 と位相 のみが任意に変えられる.

振動している場合の運動のエネルギーおよびポテンシャルエネルギーは

(13)

(14)

であり,全エネルギーは

(15)

(8) stable equilibrium configulation (9) stationary (10) coefficient of stability

- 32 -

dVdq

= 0

( )8

V ( )9 V q( )

q0 q0 q = 0

q 0 V

V cq= + +1

22

L

q c

( )10

aq cq&&+ = 0

q C t= −cos( ) ,ω ϕ

ω = c

a( ) ,rad / s

( )vc

a= =ω

π π2

1

2Hz

α l q q v

C ϕ

( )T aq a C t= = −1

2

1

22 2 2 2& sin ( ) J ,ω ω ϕ

( )V cq cC t= = −1

2

1

22 2 2cos ( ) Jω ϕ

( )T V a C cC+ = =12

12

2 2 2ω J

c c

oikawa
ノート
v_l
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自 由 度 1 な る 振 動 系 の 一 般 理 論 1・5・2

その時間的平均値を求めれば

(16)

以上の解法により自由度1なる系の振動は,その系の慣性係数 と安定係数 とを求めれば決定で

きることが明らかとなった.これを実際問題に照して見ると, を決定することに困難を感ずる場合

が多く,解き得ない問題というのは多くこの点にかかっている.

【例 1】 鉛直な針金に質量を吊した場合のネジリ振動(第 1・27図):

は針金に関する慣性能率 ,

はネジリ係数 ,

を回転角とすると, は角度 に対するねじり偶力 である.

【例 2】 ばねに質量を吊した振動系でバネの質量が無視できぬ場合(第1・28 図)

運動エネルギーは

(17)

ここに はバネの綿密度

は平衡位置のバネの長さ

は の変位

これより

として 1・1の結果を補正することができる.

1・5・2 強 制 振 動

次に強制振動について考えてみる.自由度1なる系に外力が作用し,その布置が から だけ微

小変位をしたとすると なる変位に伴う仕事量は の形で表示できる.この を“座標 に関

して系に作用する外力”と呼ぶ.たとえば がある軸のまわりの角度を表わす座標ならば, は角度

の中心軸に関する偶力(または能率)である.

外力が仕事をなす時間的の割合は で表示されるから

(18)

と書け,これに(3)を代入すると

(11) moment of inertia(12) modulus of torsion(13) couple または moment

- 33-

T a C cC V= = =1

4

1

42 2 2ω (J ) ,

a c

c

a

c

( )11

( )12

q cq q ( )13

21

32

0

2

2 2T Mq

z

lq p dz M pl q

l

= +

= +

∫& & & ,

p

l

q M

( ) ,kg / m

( ) ,m

( ) .m

a M pl= +

1

3,

( )c K= L stiffness

q δq

δq Q qδ Q q

q Q

Qq&

( ) ( )d

d tT V Qq+ = & W

第 ・ 図 ネジリ振子.1 27

第 ・ 図 バネ振子.1 28

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1・5・3 振 動 の 理 論

(19)

となる.平衡布置の近傍の微小変位の場合には(8)を用いて

(20)

と書くことができ,1・2の結果と同形となる.特に が なる周期変化をする場合には

(21)

ただし

となる.

もしも が に比して非常に小さければ

(22)

となる. を変位の平衡値 と呼び,慣性を持たぬ と考えられる系に外力が作用した

ときに系が変位する大きさである.もしも が に比して遙かに大きければ

(23)

となる.これは系がポテンシャルエネルギーを持たず慣性ばかりであると考えた場合の振幅である.

またニつ以上の外力が同時に作用するときには

(24)

と書けば変位の大きさは

(25)

となる.したがって変位 は外力 の有するすべての周波数成分 を有し,その振幅成分は に

比例する以外に に反比例している.したがって変位 の周波数成分の含み方は外力 と

は異なる形となり, に近い周波数成分 の振幅 が著しく増大する.これを選択共

振 の現象という.

1・5・3 減 衰 振 動 系

消費力の存在する場合には,消費エネルギーが速度の平方に比例して消費されるという仮定の下に

エネルギー方程式を書くと,外力の作用しない場合には

(26)

(14) equilibrium value of displacement (15) selective resonance

- 34 -

aqd a

d qq

dV

dqQ&& &+ + =

1

22

aq cq Q&&+ =

Q

qQ

c p a

Q

a

p=

−=

−2 2 2ω,

ω 2 = c

a

p ω

cospt

q

Q

c

p=

−12

2ωQ

c

( )14 ( )a = 0

qQ

p a=

−2

Q f p t f p t= + + + +1 1 1 2 2 2cos( ) cos( )α α L

q Q p j f j

( )ω 2 2− p j q Q

ω p j f pj j/( )ω 2 2−

d

dtaq cq bq

1

2

1

22 2 2& & (+

= − W) .

( )15

p ω

qf

pp t

f

pp t=

−+ +

−+ +1

2

1

2 1 12

2

2

2 2 2ωα

ωαcos( ) cos( ) L

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自 由 度 1 な る 振 動 系 の 一 般 理 論 1・5・3

これを変形すると

(27)

となり 1・3の結果と一致する.よって容易に解くことができる.

しかし(27)の解法として STOKES が行った方法は興味のある方法なので次に紹介しておく.

エネルギ-の消費の割合が小さい範囲では(27)の振動角速度はほとんど であって の

影響は無視してよく,したがって(27)の解の形は

(28)

と考えることができる.ただしこの場合 と とは時間と共に徐々に変化( なる振動波形に比べ

て緩慢に変化)する函数 と見なすことができる.(27)のような振動をする場合系のもつエネル

ギー の1周期間の時間平均値は

(29)

であり,またこの系のエネルギー消費速度は

(30)

であるから,1周期間内の時間平均を求めると,(30)の第二頃は0となり

(31)

となる.しかるに外力が作用しない系ではエネルギー消費と系の持つ全工ネルギーとの間には,エネ

ルギ -不滅の原理より

(32)

なる関係がなければならぬ.よって

(33)

でなければならず,これより振幅函数 の有すべき条件として

(34)

これを解くと

(35)

ここに

(16) Sir George GabrieI STOKES(1819-1903):Lucasian Professor of Mathematics at Cambridge (1849-1903). (17) slowly changing function

-35-

aq bq cq&& &+ + = 0

( )16

ω = c

ab

q C t= −cos ( )ω ϕ

C ϕ ω( )17

( )T V+

( )E aC= 12

2 2ω J

{ } ( )W bq bC t= W& cos ( )2 2 21

21 2= − −ω ω ϕ

( )W bC=1

22 2ω W

( )WdE

dt= − W

1

2

1

22 2 2 2ω ωbC

d

dtaC= −

C

dC

dt

b

aC+ =1

20 ,

C C e C eba

tt= =− −0 0

2 τ ,

τ = 2a

b

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1・6・1 振 動 の 理 論

を得る.この結果は 1・3の結果と一致する.

次に外力の作用する場合を扱ってみると,この場合のエネルギ-方程式は

(36)

であり,容易に

(37)

と書くことができる.この解法は既に 1・3・2 に述べてあるから繰返さぬことにする.

1・6 自由度の多い系の一般理論

1・6・1 多次元系の運動方程式の概要

一次元 の運動の場合にはエネルギー方程式のみに立脚して論じることが可能であったが,二次元

以上の場合には,これだけでは充分でなく,さらに力学的な考察を加えねばならぬ.よって最初は簡

単化するために二次元の場合を例にとって説明する.

考察の対象となるべきすべての布置が2個の独立な幾何学的変数(すなわち座標) で記述で

きるような運動系を考えてみる.ある任意の布置 において, のみが微小量 だけの変

化をした時に系内の1質点 が 方向に だけの変位をし, のみが微小量 だ

けの変化をした時に同一質点が前とは異なった 方向に だけの変位をするものと仮

定すると,両方の変化が同時に生じた時の合成の変位は

(1)

となる.ここに は, と とのなす角である.

質点 の移動速度 を求めるには を で除せばその2乗が得られ

(2) 第1・29図

分 で与えられる.

系の全運動工ネルギー は

(3)

ここに

第1・30 図

(1) 自由度が1の場合,変数は1個で充分である.これを一次元の運動をいう.

-36 -

d

dtaq cq bq Qq

1

2

1

22 2 2& & &+

= − +

aq bq cq Q&& &+ + =

( )1

q q1 2,

( , )q q1 2q1 δq1

mj s1 δ α δs q1 1 1= q2 δq2

s2 δ α δs q2 2 2=

δ δ δ δ θ δ

α δ α α θ δ δ α

s s s s s

q q q q

j

j

21

21 2 2

2

12

12

1 2 1 2 22

22

2

2

= + +

= + ⋅ +

cos

cos

θ jδ s1 δ s2

mj v δ s2 δ t 2

vs

tq q q qj

22

2 1

2

1

2

1 2 1 2 2

2

2

22= = + ⋅ +δ

δα α α θ α& cos & & &

& , &q q1 2

2 2211 1

212 1 2 22 2

2T m v a q a q q a qj

j j= = + +∑ ( ) & & & & ,

a mjj

j11 12= ∑ ( ) ,α

T

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自 由 度 の 多 い 系 の 一 般 理 論 1・6・1

(4)

であり , は系の全質量について総計する.ここに は一般に と の函数であり,

ある特定の布置に対する“慣性係数”と呼ぶ.なお は自己憤性係数, は相互結合慣性係数で

ある .

次に質点 に作用する全合成力の 方向の成分を 方向の成分を とすると,微小の変

位が生ずる場合に系に加えられる仕事量は

(5)

であるから,もしも外力が作用していない場合には,この仕事量は系のポテンシャルエネルギ -の減

少量によって補給されねばならないが,外力が作用する場合には,外力による仕事量と系のボテンシ

ャルエネルギーの減少によって得る仕事量との和によって補給される.外力のなす仕事量を

と書くと( は一般化された外力の座標成分),エネルギー方程式は

(6)

よって

(7)

この結果を微小振動に利用するには, が平衡の布置において0となる微小量であり,したが

って, も小さい値であると仮定する.また は定数であると考え,したがって

も定数とみなす. 方向および 方向の質点速度はそれぞれ で与えられ,また二次

の微小量を省略すると,加速度は の形で与えられる. この加速度を 方向および

方向の成分に分解すると運動方程式は

(8)

となる.(8)の前式に をかけ後式に をかけて加え(4)を用いると,(8)は

(2) この形は,あくまでも近似である. を求めるには のみ変化し は一定とみなし, を求めるに

は のみが変化するとみなし,これを合成して求めている.このようなことは微小変位の範囲でのみ可能である.

- 37-

a m

a m

j j j j

j

j j

j

12 1 2

22 22

=

=

∑∑

( cos ) ,

( )

α α θ

α

j∑ a a a11 12 22, , q1 q2

a jj a jk

m δ s1 F s1 2,δ F2

( ) ( ) ( )F s F s F q F qj

j jj

jj

j1 1 2 2 1 1 1 2 2 2∑ ∑ ∑+ = ⋅ +δ δ α δ α δ

Q q Q q1 1 2 2δ δ+

Q Q1 2,

( ) ( ) ( , ) ,F q F q V q q Q q Q qjj

jj

j j1 1 1 2 2 2 1 2 1 1 2 2∑ ∑+ = − + +α δ α δ δ δ δ

( ) ,

( ) .

FV

qQ

FV

qQ

jj

j

jj

j

1 1

1

1

2 2

2

2

= − +

= − +

α ∂∂

α∂∂

q q1 2,

Q Q1 2, α α1 2, a a11 12, ,

a22 δ s1 δ s2 α α1 1 2 2& , &q q

α α1 1 2 2&& , &&q q ( )2 δ s1

δ s2

m q q F

m q q F

( && &&cos ) ,

( && cos && )

α α θα θ α

1 1 2 1

1 1 2 2 2

+ =+ =

α1 α 2

α1 1&&q &&q1 α 2 2&&q α 2 2&&q

&q2

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1・6・1 振 動 の 理 論

(9)

外力の全く加わらない場合には(9)の一つの解は でなければならぬ.よって平衡

の布置は

(10)

によって特長づけられねばならぬ.すなわち二次元の運動の場合にもポテンシャルエネルギーは微小

の変位に対して静定的である.よって を の幕級数に展開すると, の一次項は含まれ

ず,充分な近似度をもって

(11)

の形で表わせる.ただし定数項は省いてある.ここに は安定係数と呼ばれ, は自己

安定係数, は相互結合安定係数である.この結果を用いれば運動方程式(9)は

(12)

の形に書ける.

実際の問題を解くと,現に(12)の形が現われる.たとえば二重振子の場合には

(13)

となり

(14)

(15)

この結果を 次元の一般形に拡張してみると,ただ式の形が長くなるだけで同様に

取扱うことができ,運動方程式は

(16)

の形が 個並ぶ.ここに よってテンソル表示を用いれば,(16)は

第1・31 図

- 38 -

a q a qV

qQ

a q a qV

qQ

a a

11 1 12 2

1

1

21 1 22 2

2

2

21 12

&& &&

&& && ,

.

,+ = − +

+ = − +

=

∂∂∂∂

&& , &&q q1 20 0= =

∂δ

∂δ

V q q

q

V q q

q

( , ),

( , )1 2

1

1 2

20 0= =

V q q1 2, q q1 2,

2 21 2 11 12

12 1 2 22 22V q q c q c q q c q( , ) = + +

c c c11 12 22, , c jj

c jk

a q a q c q c q Q

a q a q c q c q Q

c c

11 1 12 2 11 1 12 2 1

21 1 22 2 21 1 22 2 2

21 12

&& && ,&& && ,

+ + + =+ + + =

( )2

2

2 2

2 2 2

1 2

T M x my

V Mgx

amg

x

a

y x

b

q x q y

= +

= + +−

= =

& & ,

,

,

a M a a m11 12 220≡ ≡ ≡, , ,

( )c

M m g

a

mg

bc

mg

bc

mg

b11 12 22=+

+ = − =, , .

a q a q a q c q c q c q Qj j jn n j j jn n j1 1 2 2 1 1 2 2&& && && &&+ + + + + =L L

n j n= 1 2 3, , , .L

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自 由 度 の 多 い 系 の 一 般 理 論 1・6・2

(17)

と表わすことができる.ただし,テンソル表示の規約にしたがって, のように一つの積を構成

する因数の添字に重複する文字(ここでは )があるときは,この積の項を について1から まで

加え合すものとする.(17)は 次元の運動を表現した方程式である.

1・6・2 多次元系の自由振動

外力の作用しない二次元の運動の場合には であり,系は自由振動をすることが予想

される.この場合(12)は 1・4の自由度の多い運動の例題の解法と同じ方法で解くことができる.ま

ず振動の形を

(18)

と仮定すると永年方程式は

(19)

となり,これから と との比を消去すると,決定式は

(20)

となる.この式が対称行列式であることは振動の問題を扱うのに重要な性質であるから記憶しておく

必要があろう.この式から系が振動し得る二つの自由振動角速度の を求めることができる.

その一方 を採用すれば(19)のどららかの式から振幅比 が定められる.こうして定められ

た解は または の絶対値と位相角 とを任意定数として含む1組の自由振動解となる.もう一

方の を採用するとまた別の二つの任意定数を有する1組の自由振動解が得られる.この2組の自

由振動姿態をこの系の規準振動姿態と呼び,この二つの振動姿態以外の姿態は永続性のある周期運動

とならないために自由振動を行うことができない.

次元の自由度を有する系の振動も全く同様に論ずることができるから,ここではその結果のみ述

べる. 個の自由度をもった保存系はすべての安定な平衡の布置を中心として 個の異なる規準振動

姿態を有する.そしてその各規準振動の振動数は に関する 階の対称行列式から決定される.こ

れらの規準振動姿態の一つ一つについてみると,各振動姿態における系の運動はあたかも自由度が1

なる振動系のような運動をなし,変位 は相互に一定の比を保っている.よって系が一つ

の規準姿態で振動しているときの質点の運動方向と相対的振幅とは一定に保たれている.この一定

値は勿論姿態が変化すれば別の値をとる.そして一つの規準振動において,任意に取り得る量は振幅

の絶対値と初期位相だけである.

以上の取扱いにおいて座標とその時間微分の二次または積の項は省略してあるので,運動の方程式

- 39-

a q c q Q

j n

jk k jk k j&&

, , ,

+ =

= 1 2 3 L

a qjk k&&

k k n

n

Q Q1 20 0= =,

q A t q A t1 1 2 2= − = −cos( ) , cos( )ω ϕ ω ϕ

( ) ( ) ,

( ) ( )

c a A c a A

c a A c a A

112

11 1 122

12 2

212

21 1 222

22 2

0

0

− + − =

− + − =

ω ω

ω ω

A1 A2

c a c a

c a c a

112

11 122

12

212

21 222

22

0− −

− −=

ω ω

ω ω

,

,

ω ω1 2,

ω1 A A1 2:

A1 A2ϕ

ω 2

n

n n

ω 2 n

q q qn1 2, ,L

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1・6・3 振 動 の 理 論

は必然的に線型となる .したがって異なった色々の解を適当に加え合すことにより別の解を重畳し構

成することが可能である.この方法を用いてそれぞれ任意の振幅と位相とをもった 個の規準振動

を重畳すると, 個の任意定数をもった解が得られ,この任意定数は 個の初期値

によって決定することができる.よって,安定な平衡布置の近傍における系の最も一

般的な運動の形は適当な振幅と初期位相を持った 個の規準振動の合成によって表現することがで

きる.この原理は D.BERNOULLI (1741)によって与えられたものである.

現実の場合にはしばしば二つ以上の規準姿態の振動数が一致することがある.このような場合には

その二つの規準振動の区別を示すことができなくなり,したがって一致した固有値の数だけの不定度

か生ずる.このような例は球面振子や正方形膜の振動などによく現われ,これを縮退 という.

1・6・3 規準振動姿態,固有値およびエネルギー

多次元の運動系は,その次元数と等しい数の規準振動姿態を有し,ある特定の規準振動が成立する

ためには特定の振動角速度で振動しなければならぬことは既に述べた通りである.この特定の規準振

動角速度をその運動系のある規準振動姿態に関する固有値 と呼ぶ.固有値は,やはり次元数だけ存

在する.

運動系の規準振動姿態が見出されると,これによってその系のすべての運動を表現することができ

ることも既に述べてある.しかし,このことをさらに詳しく理解しておくことは,他の問題を理解す

るために重要なことであるから,ここにやや詳しく説明する.

二次元の運動の一般式(12)は,具体的の問題に対して,もう少し簡略化した形でも充分な場合が

多い.すなわち

(21)

なる場合には,(12)の自由振動方程式は

(22)

と書ける.ここで各自己慣性係数 の大きさの相異による繁雑さを除去するために各座標の長

さの単位を変更し, すなわち (23) すなわち

(3) Daniel BERNOULLI(1700-1782):スイスの数学者,St.Petersburg にて数学教授(1725- 33),Baleにて物理学教授 (1750- 82).著書は "Hydroynamics" "Theory of Vibrating of Strings” “The Flexure of Elastic Beam” などに関するものである. (4) degenerate (5) eigen value

- 40 -

n

2n 2n q q qn1 2, , ,L

& , & , &q q qn1 2 L

n

( )3

( )4

( )5

a a c c12 21 12 210= = =,

a q c q c q

a q c q c q11 1 11 1 12 2

22 2 22 2 21 1

0

0

&& ,&&

+ + =+ + =

a a11 22,

y q a q y a= =2 22 2 22/

x q a q x a= =1 11 1 11/ ,

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自 由 度 の 多 い 系 の 一 般 理 論 1・6・3

なる新しい座標 を導入すると,(22)は

(24)

となる.ここに

(25)

は運動系に固有の定数であり, は結合係数 である.

(24)の規準振動姿態を求めるために解の形を

(26)

と仮定すると,永年方程式は

(27)

よって各規準振動姿態の振幅比 および固有値 は

(28)

(29)

となる.ただし

なる規準振動をする場合には,固有値は

(30)

であるから,ここで

(31)

とおくと

(32)

となり,(28)より

(6) coupling coefficient

-41-

x y,

&& ,

&&

x x y

y y x

+ + =

+ + =

ω ω

ω ω11

212

2

222

212

0

0

ω

ω

ω ω

112 11

11

222 22

22

122 12

11 22

21

22 1121

2

=

=

= = =

c

a

c

a

c

a a

c

a a

,

,

ω122 ( )6

x A t

y B t

j j

j j

= −

= −

cos( ) ,

cos( )

ω ϕ

ω ϕ

( ) ,

( ) .

ω ω ω

ω ω ω11

2 212

2

212

222 2

0

0

− + =

+ − =j j j

j j j

A B

A B

B

A

j

j

ω j

B A Ajj

jj

j=−

=−

ω ω

ωω

ω ω

211

2

122

212

222

2 ,

ωω

ω ω ω ω ω12

22

112

222

112

222 2

124

2 2

= + ± −

+

j = 1 2,

ω ω= 1

( ) ( )ω

ω ω ω ω ωω ω1

112

222

112

222

122

112

222

2

1

2

2 21

2=+

+−

+−

tan 22 12

2

112

222θ

ωω ω

= −−

ω ωω

θ12

112

122

−= − tan

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1・6・3 振 動 の 理 論

(33)

したがって

(34)

よって(26)より

(35)

なる1組の規準振動姿態が定まる.

同様にして, なる振動をする場合には(31)を用いれば

(36)

となり

(37)

(38)

より他の1組の規準振動姿態が

(39)

と定まる.

したがって(24)の一般解は

(40)

ただし

(41)

と書くことができるが,ここで

(42)

とおいて見ると(40)は

(43)

-42 -

B

A1

1

1

2

11

2

12

2=−

= −ω ω

ωθtan ,

A C

B C1 1

1 1

== −

cos ,

sin .

θθ

x C t

y C t1 1 1 1

1 1 1 1

= ⋅ −= − ⋅ −

cos cos( ) ,

sin cos( )

θ ω ϕθ ω ϕ

ω ω= 2

ω ωω θ

2

2

11

2

12

2

1−=

tan

B

A2

2

1=tan

A C

B C2 2

2 2

==

sin ,

cos

θθ

x C t

y C t2 2 2 2

2 2 2 2

= ⋅ −= ⋅ −

sin cos( ) ,

cos cos( )

θ ω ϕθ ω ϕ

x C t C t

y C t C t

= ⋅ − + ⋅ −= − ⋅ − + ⋅ −

1 1 1 2 2 2

1 1 1 2 2 2

cos cos( ) sin cos( ) ,

sin cos( ) cos cos( ) ,

θ ω ϕ θ ω ϕθ ω ϕ θ ω ϕ

tanθω ω

ωω

ω ωω

ω ωω ω

ω= −

−= −

−=

−=

−1

2

11

2

12

2

21

2

1

2

22

2

12

2

2

2

11

2

2

2

22

2

21

2

X C t

Y C t

= −= −

1 1 1

2 2 2

cos( ) ,

cos( )

ω ϕω ϕ

x X Y

y X Y

= += − +

cos sin ,

sin cos

θ θθ θ

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自 由 度 の 多 い 系 の 一 般 理 論 1・6・4

の形となり,これは平面幾何学の座標回転の変換式と同形となる.すなわち,空間の1点 の座標を

直交座標 系で測ったときに であったとすると,原点を共有し 系と だけの傾き

をなす別の直交座標 系で表わした 点の座標 は(43)で表わされる(第1・32 図).一方

(42)より は なる規準振動姿態の振幅を意味し,また(23)より は なる座標に沿

った変位の大きさを現わしている.よって(43)は系の各質点の

運動を規定する各座標成分の振幅が規準振動姿態の振幅によって

合成されることを示しており,各規準姿態の振幅が規準座標系

を構成し,実際の各質点の変位はこの規準座標系から だけ傾い

た座標系への変換によって求められることを示している.

次元の運動系の場合には, 次元の直交座標系を想像し,そ

の各座標軸に1組ずつの規準姿態を対応させて規準座標系を構成

し,それと なる角をなすような 次元の直交座標系への座標変

換を行うことにより系の各質点の変位が定められる.

二次元の振動系の全エネルギーは,一般座標で表わせば 第1・32 図

(44)

また規準座標で表わせば

(45)

となるが,これに(42)を代入すると

(46)

となる.規準系で表わした場合には の積の項が現われない.

1・6・4 規準姿態の静定性

規準姿態からわずかにずれた姿態を強制しようとするとき,その強制周期に対していくつかの規準

姿態の周期が静定的であることが,Lord RAYLElGH により 1883年に指摘された.いま系に対して

仕事をせず,かつマサツのない拘束力を導入し,系が一つの規準姿態からわずかにずれた振動姿態で

振動するように制限したとすると,振動の周期の規準周期からのズレは二次の微小量であることが証

明される.一つの例として,座標 だけが変化し他の座標が変化しないような規準姿態を扱うこと

にすると,このような姿態は(19)の の場合に相当し,規準振動数は よ

り定められる.この規準振動姿態からわずかに異なった強制姿態を の形で与えたとすると

(7) normal coordinate

- 43-

P

XY ( , )X Y0 0 XY θx y P ( , )x y0 0

X ω1 x q a1 11

( )7

θ

n n

θ n

[ ][ ]

E a q a q c q c q c q q

x y x y x y

= + + + +

= + + + +

1

22

1

22

11 1

2

22 2

2

11 1

2

22 2

2

12 1 2

2 2

11

2 2

22

2 2

12

2

& &

& & ,ω ω ω

[ ]E X Y X Y= + + +1

22 2

1

2 2

2

2 2& & ω ω

[ ]E A A= +1

21

2

1

2

2

2

2

2ω ω

X Y,

q1

c a12 120 0= =, ω11

2

11 11= c a/

q q2 1= λ

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1・6・4 振 動 の 理 論

(規準姿態は ), 強制力のなす仕事は であるから,強制力が仕事をしないためには

加えられた仕事量が変化しないこと,すなわち

(47)

であることを要し,形を変えて

(48)

または(12)より

(49)

よってこの姿態の自由振動角速度を とすると

(50)

となり が微小量であれば は に比して微小量だけの相違しかない.よって振動姿態が規準姿

態からわずかに変化しても,その自由振動数はほとんど規準振動数と変らない.以上の証明は二次元

で行ったが,これを多次元に拡張することは容易である.すなわち,ある姿態に対し を常に変化

する座標とし,他の強制変位を とおけばよい.なお(50)より強制姿態の振

動数は二つの規準振動数の中間にあることがわかる.

ある特定の規準姿態の正確な特性を確めることが困難な場合でも,その姿態をかなりよく代表する

ような全く別の基礎的の現象から判断した姿態を仮定することにより,非常によい近似度で規準周波

数を求めることができる.これが特に最低基準振動であるときには,こうして求めた値が上限となる

ことがある.たとえば第 1・33 図のような3質点を等間隔に吊した絃の振動の規準振動を求めるのに

対称形の姿態を仮定し,変位を

(51)

と仮定すると運動のエネルギーは

(52)

となるから,慣性係数は であり,またポテンシャ

ルエネルギーは絃を張り伸すのに必要な仕事量から計算し 第1・33 図

(53)

となるので安定係数は である.よって振動数は

(54)

から定められる.これは のとき静定的となり 1・4・3の結果と一致する.

(8) とおく.

-44 -

q2 0= Q q Q q1 1 2 2+

d

d tQ q Q q Q q Q q( ) & &1 1 2 2 1 1 2 2 0+ = + =

Q Q q1 2 10 0+ = ≠λ , ( & ) ,

p

pc c

a a2 11

2

22

11

2

11

=++

λλ

( ) && ( ) .a a q c c q11

2

22 11

2

22 0+ + + =λ λ

λ p2 ω11

2

q1

q q q q2 1 3 1= =λ µ, ,L

x z y= = λ

2 1 22 2 2 2 2T M x y z M y= + + = +( & & & ) ( ) &λ

M ( )1 2 2+ λ

{ } { }2 4 4 22 2 2 2 2 2VP

ax y x z y z

P

ay= + − + − + = − +( ) ( ) λ λ

( / ) ( )P a 4 4 22λ λ− +

pP

Ma2

2

2

4 4 2

1 2= ⋅

− ++

λ λλ

λ = ± 1

22

δλ λ λ λ λ

λp

P

M a2

2 2

2 2

8 4 1 2 4 4 4 2

1 20=

− + − − ++

=( ) ( ) ( )

( )

( )8

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自 由 度 の 多 い 系 の 一 般 理 論 1・6・4

多次元の消費系の理論は,音響工学には大した重要な問題でないから省くが,大体は一次元の消費

系の場合と同様である.自由振動は漸次減衰するが,消費力が小さければ,周期はほとんど変化が認

められない.

二次元の振動の例として摺鉢の底を転がる球の運動を示す.

第 1・34図の鉢の底(平衡点)を原点 とし,直角座標を用い

るとき,原点の近傍の鉢の内面の形が

(55)

で表わせるものとする. それぞれ 面および 面

で切った截口の 点附近の曲率半径である.いま球が 面ま

たは 面内のみに局限され図の 上または なる軌

道上を自由に転がり得るものと仮定すると,エネルギーは 第 1・34図

(56)

(57)

であり,LAGRANGE 函数は

(58)

運動方程式は

(59)

であるから結局

(60)

(61)

となり, 面内を運動するときの固有振動角速度は

(62)

面内で運動するときの固有角速度は

(63)

になるので球の変位は

(9) Joseph Louis LAGRANGE:1736年 Turin に生れ,1813年 Paris で死す.NEWTON 以降最大の数学者である.

-45 -

O

zx

R

y

R= +

2

1

2

22 2

R R1 2, xz y z

O xz

y z A OB CO D

T m x y= +1

22 2( & & ) ,

V mg z mgx

R

y

R= = +

2

1

2

22 2( )9

L T V= − .

d

d t

T

q

T

q

V

qj j j

∂∂

∂∂

∂∂&

= −

&& ,xg

Rx+ =

1

0

&&yg

Ry+ =

2

0

xz

ω y

g

R=

2

( ) , rad / s

y z

ω x

g

R=

1

( )rad / s

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1・6・5 振 動 の 理 論

(64)

で与えられる. は の初期値によって定められる.

次に BLACKBURN の振子を示す.第1・35図のように, 2点で固定された三角形 の 点

から錘 を吊し, は常に 平面内でのみ自由に振動できるようにしておくと,この振子

は平衡位置 を中心として を支点とし なる曲率半径の円周上の運動を

すると同時に, を中心として なる長さの曲率半径の運動をする.かつ

その二つは互いに直交している.よって前例において

(65)

とおけば,解は前例の場合と同様となる.第1・36 図は振動面を示したもので

ある.

第1・35 図

1・6・5 強制振動,可逆定理

(12)にて外力の形を とおくと系内の一質

点に強制外力が加わって系全体が振動する場合を表わす.この場

合の定常解は が共に なる変化をするものと考え

られ,その場合の の大きさは

(66)

より定められる.すなわち, と との関係は

(67)

で与えられる.ただし

(68) 第1・36 図

もしも なる場合には(23)を用いると(12)は

(69)

ただし

となるから,定常状態の解を

(70)

-46 -

x A t A t

y B t B tx x

y y

= += +

1 2

1 2

cos sin ,

cos sin

ω ωω ω

A Bj j, x y x y, , & , &

A B, ABC C

P CP A CB

O C CP

E EP

R CP R EP1 2= =,

Q pt Q1 2 0= =cos ,

q q1 2, cospt

q q1 2,

( ) ( ) ,

( ) ( )

c p a q c p a q Q

c p a q c p a q11

2

11 1 12

2

12 2 1

12

2

21 1 22

2

22 2 0

− + − =− + − =

q q1 2, Q

qc p a

pQ q

c p a

pQ1

22

2

22

2 1 2

12

2

12

2 1=−

=−

∆ ∆( ),

( )

∆ ( ),

,.p

c p a c p a

c p a c p a2 11

2

11 12

2

12

12

2

21 22

2

22

=− −− −

a a12 21 0= =

&& cos ,

&& ,

x x y F pt

y y x

x+ + =

+ + =

ω ωω ω

11

2

12

2

22

2

21

20

FQ

ax = 1

11

x A pt

y B pt

==

cos ,

cos

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自 由 度 の 多 い 系 の 一 般 理 論 1・6・5

と仮定すると

(71)

よって各質点の振幅は

(72)

ただし

または(29)を用いて

(73)

このことより,系の1 箇所に単絃交番外力が作用すると,系の各部分はその強制周期で位相を揃えて

振動するが,ただ振幅のみが各部分によって異なることが明らかとなった.また外力の周期が規準周

期の一つに近い場合には分母が小さくなるため振幅が異常に増大する.しかしこの振幅の大きさを求

めるには消費力をも考えに入れて解かねばならぬ.

HELMHOLTZ が空気振動について証明し,後にLord RAYLEIGH が拡張した可逆定理 を(67)

から証明してみよう.系に前とは異なる外力が加わる場合,すなわち なる場合

に の振幅は

(74)

となる.これと(67)の とを比較すると

(75)

この結果 と とが同種類の力(共に普通の静力学的の力か,または共に偶力かというもの)

であれば とおくことができ,このときは となる.すなわち,系の質点1に加えられ

(10) Hermann L.F.HELMHOLTZ(1821- 94):Konigsberg にて生理学教授(1849), Bonn にて解剖学教授(1855),Heidelberg にて生物学教授(1858),Berlin にて物理学教授(1871)を歴任. 著書“Die Lehre von den Tonempfindungen als physiologische fur die Theorie der Musik” Brunswick、1862.その第四版(1877)を英訳したものが A.J.ELLIS "Sensations of Tone”Longmans,Green,and Co., London,1912. (11) Lord RAYLEIGH:John william STRUTT が後に改名した.英国の数理物理学者.著書 "Theory of sound”1st ed. London Macmillan & Co.1877, 2nd ed. London 1849-6 ; "Scientific Papers" Cambridge 1849-1922. (12) reciprocity theorem

- 47-

( ) ,

( ) .

ω ωω ω

11

2 2

12

2

21

2

22

2 2 0

− + =+ − =p A B F

A p B

x

Ap F

p p

Bp F

p p

x

x

=−

− − −

= −− − −

( )

( ) ( ),

( )

( )( ),

ωω ω ω ω

ωω ω ω ω

22

2 2

11

2 2

22

2 2

21

2

12

2

11

2 2

11

2 222

2 221

2

12

2

ω ω ω ω11

2 11

11

22

2 22

22

12

2 12

11 22

21

11 22

21

2= = = = =c

a

c

a

c

a a

c

a a, , .

Ap F

p p

Bp F

p p

x

x

=−

− −

=−

− −

( )

( )( ),

( )

( ) ( ).

ωω ω

ωω ω

22

2 2

2

1

2 2

2

2

11

2 2

2

1

2 2

2

2

( )10 ( )11 ( )12

Q Q pt1 20= ′ ∞, cos

q1

qc p a

pQ1

21

2

21

2 2

′ =− ′

∆ ( )q2

q Q q Q2 1 1 2: : .= ′ ′

Q1 Q2

Q Q1 2= ′ q q2 1= ′

oikawa
ノート
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1・6・6 振 動 の 理 論

た周期性外力によって質点2に生じた振動の振幅と位相は,同じ大きさの外力が質点2に作用したと

きに質点1に生ずる振幅と位相に全く等しいという結論を得る .

1・6・6 結合振動系の基本的性質

多数の質点が結合して一つの振動系を構成している場合には,各質点間に相互作用が生じエネルギ

ーの授受が行われる.そのために振動姿態は非常に複雑な形となる場合が多い.しかし幾つかの基本

的性質は2個の質点が結合した振動系を例にとって説明することができる.

2個の質点よりなる振動系の自由振動は(24)から出発すれば完全に解くことができるが,特に結

合係数 が より小さい場合には(30)の平方根の中を二項定理で展開してその

第二項まで取ることにより,規準振動角速度は

(76)

と表わせる.ここに は第 番目の質点だけが振動し,他の質点が固定しているときの自由振動

角速度である.いま であるとすれば,一方の規準振動角速度 は質点1の自由振動角速

度 よりわずかに大きく,他の規準振動角速度 は よりもわずかに小さい.しかして(41)

より

(77)

であるから

(78)

とみなすことができ, 姿態の場合の両質点の振幅比は(33)より

(79)

姿態の振幅比は(37)より

(80)

となる.すなわち,一定の規準姿態で振動する場合に一方の質点の振幅が定まれば,他の質点の振幅

は結合係数の平方 と各質点の自由振動角速度の平方の差 との比で定まることにな

る.ここで注意すべきは,(79),(80)の表現が(23)で定義された座標に準じているから,実際の

振幅比は 座標に換算した値 で与えられることである.なおこのように

(81)

- 48 -

ω ω12 21( )≡ ( )ω ω11 22−

ω ωω

ω ω

ω ωω

ω ω

1

2

11

2 12

4

11

2

22

2

2

2

22

2 12

4

11

2

22

2

≈ +−

≈ −−

,

ω j j j

ω ω11 22> ω1

ω11 ω 2 ω 22

tanθω ω

ωω ω

ω= −

−=

−<<1

2

11

2

12

2

2

2

22

2

21

2 1

sin tan ,

cos

θ θω

ω ωθ

≈ ≈−

−≈

12

2

11

2

22

2

1

ω1

B

A1

1

12

2

11

2

22

2=−

ωω ω ,

ω 2

B

A2

2

11

2

22

2

12

2= −−ω ω

ω

ω12

2 ( )ω ω11

2

22

2−

q q1 2, qx

aq

y

a1

11

2

22

= =,

ω ω ω12 11 22< −( )

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自 由 度 の 多 い 系 の 一 般 理 論 1・6・6

なる状態を疎結合の状態 という.

2個の質点が全く等しい状態に置かれている場合には,その自由角速度は相等しく

(82)

しかし,このような全く等しい2個の質点が結合された場合にも,規準振動姿態は2個存在し,その

固有値は(29)から求められる.すなわち

(83)

この場合に,結合係数 が よりも遙かに小さければ(83)は

(84)

となり,規準振動角速度の一つは自由角速度よりわずかに大きく,他はわずかに小さい値となる.こ

れより

(85)

となるから, 姿態の場合の振幅比は

(86)

姿態の振幅比は

(87)

となる.よって(40)は

(88)

となる.初期条件として,初めに質点(1)を だけ変位をさせておき,質点(2)の初変位は0

としておき, の時間にこれを放して自由振動を始めさせたとすると,初期条件は

にて

なる任意の時刻の変位は

(89)

これは(84)を用いて変形すると

(13) loose coupling

- 49-

( )13

ω ω11 22= .

ωω

ω ω1

2

2

2 11

2

12

2

= ± .

ω12 ω11

ω ω ωω

ω ωωω

1 1112

2

11

2 11

12

2

11

2

2

≈ + +

≈ − +

L

L

,

tan ,θ θ π= − = −14

ω1

B

A1

1

1= − ,

ω2

B

A2

2

1= +

x C t C t

y C t C t

= − − −= − − −

1 1 1 2 2 2

1 1 1 2 2 2

cos( ) cos( ) ,

cos( ) cos( )

ω ϕ ω ϕω ϕ ω ϕ

x0

t = 0

t x x y= = =0 00 , ,

t > 0

xx

t t

yx

t t

= +

= −

01 2

01 2

2

2

( cos cos ) ,

(cos cos ) .

ω ω

ω ω

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1・6・7 振 動 の 理 論

(90)

の形となる.これは第1・37図に示すように包絡線が でゆっくり変化しながら の角

速度で振動するいわゆるウナリ波形 である.両質点の

瞬時波形も包絡線も共に位相が だけ異なっているこ

とは記憶しておくべきである.その結果を見ると,最初は

なる初変位を与えられた方の振子が振動しているが,そ

の振動エネルギーは次第に他方の質点に移行するため,他

方の質点が運動を始め,それにしたがって初め振動してい

た質点の振動は次第に小さくなり遂に全工ネルギーが第二

質点に移行して第一質点は停止し,第二質点が最大振幅で振動するようになる.しかしその後再び

工ネルギーは第二質点から第一質点に移行を始め,しばら <の後第二質点は停止し,第一質点が最大

振幅で振動するようになる.以下これを繰返す.この場合の包絡線の振動数 をウナリ振動数

という.なお両質点の振幅を の座標で表わせば

(91)

となり,振幅比は

(92)

である.

1・6・7 リサジウ図形

前に 1・6・4 で示した BLACKBURN の振子のように,1質点が同時に2方向に振動する場合には

質点が運動する軌跡は非常に面白い形となることが LISSAJOUS によって発見され,以後リサジウ

図形と呼ばれて振動現象を扱う場合に重要な知識となっている.

一平面内の直交座標に沿う自由度2なる振動を表現した式は

(14) beat(15) beat frequency(16) H.BLACKBURN(1849-79):英国の数学者.(17) J.A.LISSAJOUS (1822- 80):Lycee St Louis の物理学教授(1850 -74),Academy of Chambery の学長

(1874-5),Academy of Besancon の学長(1875-9),主な著書 "Etude optique des mouvements vibratoires"1873 年出版.

-50 -

x x t t

y x t t

=

=

012

2

11

11

0

12

2

11

11

2

2

cos cos ,

sin sin

ωω

ω

ωω

ω

cos

sin

ωω

12

2

112t

ω11

( )14

π2

ωπω

12

2

114( )15

q q1 2

qx

at t

qx

at t

1

0

11

12

2

11

11

2

0

22

12

2

11

11

2

2

=

=

cos cos ,

sin sin

ωω

ω

ωω

ω

q

q

a

a

2

1

11

22

=

( )16

( )17

x0

第 ・ 図 ウナリ波形.1 37

Page 51: 第 一 章 振 動 の 理 論contents.acoust.ias.sci.waseda.ac.jp/genron/genron-1_080821.pdf · 第 一 章 振 動 ... 振子が,鉛直平面内でその安定な平衡位置 を中心とし微小なる振動をする場合を考えてみる

自 由 度 の 多 い 系 の 一 般 理 論 1・6・7

(93)

と書けるが,この場合の質点の運動は, 軸上では 軸上では の範囲でしか運動できない

から,運動の軌跡は辺の長さがそれぞれ なる短形の内側に限定される.いま, と の

比が既約分数となる場合には, および の値は と で定まる周期の最小公倍数だけの

時間の後にはもとの値に戻ってくる.よって質点の軌跡はこの最小公倍数の時間を周期として同一図

形を繰返すことになる.またもしも と の比が簡単な整数とならず,したがって両周期の最小公

倍数が見出せぬ場合には,質点の軌跡は出発点に戻らないから周期性を有しなくなり,非周期運動と

-51-

x A t

y B tx x

y y

= += +

cos ( ) ,

cos ( )

ω ϕω ϕ

x ± A y, ± B

2 2A B, ω x ω y

x y, & , &x y ω xω y

ω x ω y

左側リサジウ図形,右側は変位の各座標成分を示す.第 ・ 図 なる場合の二次元振動図形.1 38 ω ω

x y=

oikawa
ノート
矩形
Page 52: 第 一 章 振 動 の 理 論contents.acoust.ias.sci.waseda.ac.jp/genron/genron-1_080821.pdf · 第 一 章 振 動 ... 振子が,鉛直平面内でその安定な平衡位置 を中心とし微小なる振動をする場合を考えてみる

1・6・7 振 動 の 理 論

なる.このように,自由度の多い系の運動は運動の与え方によっては周期を持った振動ばかりでなく

非周期性の運動をもするものである.

最も簡単な例は の場合である.このときは(93)から を消去すると質点の軌跡は

(94)

となり,これは一般に楕円を表わす.しかし,位相差

が0または の場合には直線に縮退し,また

で,かつ の場合には円となる

(第1・38 図).

もしも の場合には第1・39図のような2個

のループが現われる.ただし,位相の関係によっては

1個の放物線に縮退する場合がある.このように

と の比が複雑になると図形も次第に複雑化するが,

一般的には作図によって求めることができる.第 1・40

図はその方法を示したものである.また と の比

が簡単な整数とならぬ場合に非周期運動を行う例を

第1・41 図に示しておく.

リサジウ図形は周波数測定や位相差の測定にも盛に

利用され,特に,二つの電圧の周波数や位相を比較測

定する場合に,ブラウン管の縦軸と横軸にそれぞれの

電圧を加え,リサジウ図形を描かせて測定する方位は

重要なものである.

-52 -

ω ωx y

= t

x

A

x y

AB

y

Bx y x y

2

2

2

2

22− − + = −cos( ) sin ( )ϕ ϕ ϕ ϕ

ϕ ϕx y− π

A B= ϕ ϕ πx y− =

2

ω ωx y= 2

ω x

ω y

ω x ω y

第 ・ 図 なるリサジウ図形.1 39 2ω ωx y

=

[ ]第 ・ 図 二次元の振動系が非周期的運動

をする例1 41

M o r s e .

第 ・ 図 なる場合のリサジウ図形の一例.

1 40 2ω ωx y=