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INNERVISION ( 30・6 ) 2015 1 第29回日本医学会総会 2015 関西(主催:日本医学会)が 井村裕夫会頭(京都大学名誉教授)の下,4 月 11 日(土)〜 13 日(月)の日程で,国立京都国際会館をメイン会場に開催 された。明治 35(1902)年に第 1 回が開催されてから,4 年ご とに行われてきた本総会であるが,前回の第 28 回は 2011 年 3 月に発生した東日本大震災により大幅に規模を縮小しての 開催となったため,本格的な開催は 8 年ぶりとなる。これまで の総会は,東京,大阪,京都,名古屋,福岡と 1 都市開催で あったが,今回初めて,メイン会場を置く京都だけでなく,一 般公開展示「未来医XPO’ 15」(3 月 28 日〜 4 月 5 日)を神戸 で,連携イベント「医と健康フォーラム 2015 関西」(3 月 20 〜 22 日)を大阪で,また,「医療チーム 学生フォーラム」などの プレイベントを関西 6 府県で行うなど,“オール関西”での開 催となった。 学術講演は 3 日間の会期中,メイン会場の国立京都国際会 館と隣接するグランドプリンスホテル京都,京都大学百周年 時計台記念館,京都劇場(京都駅ビル内)の市内 4 か所で行 われ,各会場間はシャトルバスやハイヤーで結ばれた。 学生など若い世代が参加しやすいようにと,春休み期間に 一足先に開催された一般向けイベントの未来医 XPO’ 15 の来 場者は延べ 29 万人を超え,メインとなる学術講演,学術展示 の参加登録者数は 2 万 6000 人に上った。 ● ● ● 本総会のメインテーマは,「医学と医療の革新を目指して ─ 健康社会を共に生きるきずなの構築 ─ 」。2015 年は戦後ベ ビーブームで生まれたいわゆる“団塊の世代”がすべて 65 歳以 上となる年であるが,一方で出生率は低いままであり,わが国 はいま,医療や介護,社会保障制度などのあらゆる社会シス テムを変革する必要に迫られている。井村会頭は会頭挨拶に おいて,これからの医療のあり方は,医療者のみならず国民の 〈0913-8919/15/¥300/ 論文 /JCOPY〉 シンボルマークには,少子高齢 社会を人間らしく健やかに生き るための医学と医療の革新を実 現する,人間の叡智と未来の可 能性が込められている。一組の 人型の造形は,のびやかに健や かに生きようとする男女を表すと ともに,人と人との強いきずなを 示している。濁りのない水色の 直線と六角形の輪郭は,関西 6府県の医師会,大学,医療機 関の叡智と連携を象徴している。 特 集 1 第29回 医学と医療の革新を目指して 健康社会を共に生きるきずなの構築 日本医学会総会 2015 関西 日本医学会総会 2015 関西 The 29th General Assembly of the Japan Medical Congress 2015 Kansai The 29th General Assembly of the Japan Medical Congress 2015 Kansai The 29th General Assembly of the Japan Medical Congress 2015 Kansai

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INNERVISION (30・6) 2015  1

 第29回日本医学会総会 2015 関西(主催:日本医学会)が井村裕夫会頭(京都大学名誉教授)の下,4月11日(土)〜13日(月)の日程で,国立京都国際会館をメイン会場に開催された。明治35(1902)年に第1回が開催されてから,4年ごとに行われてきた本総会であるが,前回の第28回は2011年 3月に発生した東日本大震災により大幅に規模を縮小しての開催となったため,本格的な開催は8年ぶりとなる。これまでの総会は,東京,大阪,京都,名古屋,福岡と1都市開催であったが,今回初めて,メイン会場を置く京都だけでなく,一般公開展示「未来医XPO’15」(3月28日〜4月5日)を神戸で,連携イベント「医と健康フォーラム2015関西」(3月20〜22日)を大阪で,また,「医療チーム 学生フォーラム」などのプレイベントを関西6府県で行うなど,“オール関西”での開催となった。 学術講演は3日間の会期中,メイン会場の国立京都国際会館と隣接するグランドプリンスホテル京都,京都大学百周年時計台記念館,京都劇場(京都駅ビル内)の市内4か所で行われ,各会場間はシャトルバスやハイヤーで結ばれた。 学生など若い世代が参加しやすいようにと,春休み期間に一足先に開催された一般向けイベントの未来医XPO’15の来場者は延べ29万人を超え,メインとなる学術講演,学術展示

の参加登録者数は2万6000人に上った。● ● ●

 本総会のメインテーマは,「医学と医療の革新を目指して ─健康社会を共に生きるきずなの構築─」。2015年は戦後ベビーブームで生まれたいわゆる“団塊の世代”がすべて65歳以上となる年であるが,一方で出生率は低いままであり,わが国はいま,医療や介護,社会保障制度などのあらゆる社会システムを変革する必要に迫られている。井村会頭は会頭挨拶において,これからの医療のあり方は,医療者のみならず国民の

〈0913-8919/15/¥300/ 論文 /JCOPY〉

シンボルマークには,少子高齢社会を人間らしく健やかに生きるための医学と医療の革新を実現する,人間の叡智と未来の可能性が込められている。一組の人型の造形は,のびやかに健やかに生きようとする男女を表すとともに,人と人との強いきずなを示している。濁りのない水色の直線と六角形の輪郭は,関西 6府県の医師会,大学,医療機関の叡智と連携を象徴している。

特 集 1

第29回

医学と医療の革新を目指して健康社会を共に生きるきずなの構築

日本医学会総会2015 関西

日本医学会総会2015 関西

The 29th General Assembly of

the Japan Medical Congress 2015 KansaiThe 29th General Assembly of

the Japan Medical Congress 2015 KansaiThe 29th General Assembly of

the Japan Medical Congress 2015 Kansai

2  INNERVISION (30・6) 2015

合意の下に決めていく必要があると述べており,今回のメインテーマには,すべての人が自らの責任と努力,社会との連携によって,少子高齢社会を幸せに生きてほしいとの期待と願いを込めていると説明している。 今回は,「医学と医療の転換期を迎えているなか,国民一人ひとりが自分や周囲の人の健康をどう守り,どのような死生観を持つのかを考える必要がある」との基本理念から,一般公開展示だけでなく,学術講演や特別講演も市民参加型の公開講座が多く設けられた。医療・介護従事者だけでなく,学生,企業,行政,一般市民まで幅広い参加者を集め,それぞれの立場で医学・医療が直面している課題について開かれた議論をすることが,今回の目的の一つとなっている。

● ● ● 学術講演は,従来,分科会からの専門的演目の提案をベースにプログラムを組む方法が採用されていた。しかし今回,医学会総会の意義は,個々の分科会を超えて分野横断的に広く医学・医療全般にかかわる問題を討議することにあるとの考

えから,プログラム委員会が基本理念・メインテーマに基づいた「20の柱」を設定して全体を構成する方法で企画された。

「医学」「医療」「きずな」の3つをキーワードに,20の柱をベースにした76のセッションに加え,66の産業医向けセッション,開会講演や記念講演,特別企画など,合わせて150を超えるセッションが行われ,演者・座長は500人余りに上った。 本総会では毎回,最終日に特別シンポジウムが設けられるが,今回は特別シンポジウムを学術講演プログラムとして,市民参加型で行われた。「特別企画4:健康社会を支える医と産業の新しい連携〜新医療時代の開花に向けて〜」と題して,さまざまな産業分野の経営者をシンポジストに招き,政府の成長戦略でもある“健康寿命の延伸”のための新たな健康社会システムの構築に向けた議論が行われた。

● ● ● 医学・医療関係者を対象とした学術展示は,国立京都国際会館(4 月 11 〜 13 日)と京都市勧業館・みやこめっせ

(4月10〜12日)の2会場に設置。最新の医療技術・情報サービスなどを紹介する企業展示と,将来的な課題と解決方法を提言するテーマ展示が行われた。 3月28日〜4月5日の9日間にわたり開催された一般公開展示「未来医XPO’15」は,“あなたの暮らしと医の博覧会”をコンセプトに,神戸国際展示場をメイン会場として多彩な企画が行われた。4つの“アイランド”を巡りながら,最新の医学・医療や科学に触れることができるメイン会場では,展示や映像コンテンツ,セミナーなどに加え,手術支援ロボット

【医学】 1)トランスレーション科学の振興 2)臨床研究の推進 3) 先制医療(個の視点からの予防医学) 4)再生医療 5)リハビリテーションのこれから 6)環境変化と健康 7) サイエンスからみた心の問題・

心の発達 8)基礎医学からの提案

【医療】 9) 日本の医療・介護制度を考える 10) 医療技術の評価(ヘルステクノロジー

アセスメント)と医療資源の配分 11)医療とIT(情報技術) 12)周産期・小児医療の課題 13)在宅医療を含んだ慢性期医療 14)グローバルヘルス

【きずな】 15)効率的な医療人養成制度 16) 死生学(終末医療・臓器移植・

緩和医療) 17)学生企画 18)震災に学ぶ 19)チーム医療の新しい展開 20) 移行医療

(transitional medicine)

学術講演の“20の柱”

国立京都国際会館 国立京都国際会館・イベントホール

国立京都国際会館の駐車場に特設されたテントでの参加登録受付 佐渡 裕とスーパーキッズ・オーケストラによるオープニングコンサート