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第2部 市町における景観形成の推進 75 市町における 景観形成の推進

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Page 1: 市町における 景観形成の推進 - Shizuoka Prefecture...第2部 市町における景観形成の推進 79 分類 制度・事業名 制度・事業の概要 所管 桜づつみモデル事業

第 2 部 市町における景観形成の推進

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第 2 部

市町における 景観形成の推進

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第1章 第2部「市町における景観形成の推進」の性格

平成 16 年 6月に「景観法」が制定され、平成 17 年 6月より全面施行されている。

景観法施行以前、全国各地で 500 以上の景観関連の条例が制定されるなど、自治体で

地域独自の景観の方策が積極的に実施されてきた。しかしながら、自治体による自主条

例に基づく方策には担保性の弱さなど一定の限界があった。景観法は、このようなこと

を背景に、自治体の自主的な取組を支援することをひとつの目的として制定された。

さらに、景観法運用指針(平成 17 年 6月 国土交通省、農林水産省、環境省)の景観

法の運用に当たっての基本的考え方においては、景観行政を担う主体である「景観行政

団体」について、「良好な景観の形成は、居住環境の向上など住民の生活に密接に関係す

る課題であること、地域の特性に応じたきめ細やかな規制誘導方策が有効であることか

ら、基礎的自治体である市町村が中心的な役割を担うことが望ましい」と示されている。

本県では、昭和 62年度に「静岡県景観形成ガイドプラン」を策定し、これに基づく各

市町村の自主的な取組を支援してきた。その結果、46市町村において景観形成ガイドプ

ランが策定され、9市町で景観関連条例が制定された。(合併以前の市町村を含む)

以上のような点から、本県では、今後においても「市町」が景観形成の中心的な役割

を担うものとし、本県は市町の取組を支援していくものと考える。

そこで、第2部「市町における景観形成の推進」では、景観法が施行された中で市町

が景観形成を推進していく際の参考として、次のような事項を示す。

・市町における景観形成の意義・効果

・景観形成の主要施策、景観法などの活用イメージ

・景観条例(自主条例)の推進方策の景観法への移行、住民などの景観形成活動を支

援する自主方策

・まちづくりのケースに応じた景観形成主要施策の活用イメージ及び事例

・景観法などの活用の留意事項

●第2部の性格

・県内市町が景観形成を推進する際の参考書(国の指針や景観関連の既存の図書を補

完し、本県の各地域での活用をイメージできるように配慮した)

●第2部の対象者

・市町で景観を担当する職員、景観に配慮すべき事業などを担当する職員 ・景観に関わりのある団体職員、市民団体など

●市町と県との関係

・各地域における総合的な景観形成は市町が中心となって推進 ・広域的な景観、多くの住民に係る景観の形成は、県と当該市町の連携のもとに推進

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第 2 部 市町における景観形成の推進

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第2章 市町における景観形成の意義・効果

本来、良好な景観を形成すること自体が行政の目的となりうるが、現実に行政の一環

として景観形成に取り組む意義及び効果は次のようなことが考えられる。

①生活環境の質の向上 バブル経済の崩壊、地球規模の環境問題の進展、団塊世代の退職の始まりなどを要因に、

経済や社会の成長より、日々の生活の充実を重視する志向もみられるようになっている。 その生活の舞台は、戦後・高度経済成長期の社会資本整備において量的な充足が目指さ

れた故、美しさ、歴史性、地域性に欠けたものになっている。各種製品などのデザイン性

が重視され、また、旅行やメディアを通して諸外国などのまちの美しさに触れる中で、多

くの人が日本のまちに美しさが欠けている事を感じている。 今後、生活や仕事の環境において、質の面での向上を図る上で、安全・安心の確保とと

もに、良好な「景観」を形成することが求められている。

②観光や交流の活性化 本県において、今後、第二東名自動車道や伊豆縦貫道、富士山静岡空港などが整備され、

広域交通条件が飛躍的に向上する中で、観光振興や国内外との交流はこれからの地域活性

化に必要不可欠な方策である。 全国総観光地化、都市間競争の激化の中で誘客や交流人口増加を図っていくには、地域

固有の魅力を持つことが求められる。富士山の自然景観、茶園の農山村景観、旧東海道の

歴史的なまち並みなどの「景観」は魅力のひとつとなりうるものであり、良好な景観の保

全や形成を進めていくことが重要である。

③商店街の活性化への寄与 まちの郊外化や消費活動の変化により買い物客が減少し、賑わいが失われつつある中心

商店街がみられる。しかしながら、中心商店街は、買い物以外に、まちの歴史に触れたり、

おしゃれをして歩き、色々な物や人に触れたりできる、生活の楽しさを生む場所でもある。

商店街の活性化において、その魅力である地域性や非日常性を高める際に、「景観」が寄

与できるところは大きいと思われる。

④地域活動などの機会の創出 生活圏の広域化やライフスタイルの多様化などの中で、住民の地域への関心や関わりが

薄くなってきている。しかしながら、住み場所である地域は、住環境の悪化の可能性、防

災、高齢社会の中での地域福祉などの問題を抱えており、住民の主体的な活動抜きには解

決が難しいものもある。 そのような中、地域への関わりのきっかけとして、「景観」は目に見えてわかりやすく、

活動の成果がすぐ表れるといった性格から適していると思われる。景観を通して、地域を

見つめ直し、地域の価値や問題を地域住民で共有し、様々なまちづくりの活動に発展させ

ていくことが考えられる。

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第3章 景観形成方策と活用イメージ

(1)景観形成の主要方策

平成 16 年に景観法が施行され、それに伴い屋外広告物法や都市緑地保全法(現 都

市緑地法)などが改正され、制度が創設・拡充された。これらの法で今回位置づけられ

た方策を整理する。あわせて、景観形成に関連する国や本県の制度・事業を整理する。

分類 制度・事業名 制度・事業の概要 所管

景観計画 84 ページ参照 市街地整備室

景観重要建造物・樹木 89 ページ参照 市街地整備室

景観重要公共施設 91 ページ参照 市街地整備室

景観農業振興地域整備計画 93 ページ参照 農山村計画室・農

地利用室

市町村森林整備計画の変更 95 ページ参照 森林計画室

自然公園法の特例 96 ページ参照 自然保護室

景観協定 99 ページ参照 市街地整備室

景観協議会 100 ページ参照 市街地整備室

景観整備機構 101 ページ参照 市街地整備室

景観法

景観地区 97 ページ参照 市街地整備室

屋外広告物法 屋外広告物条例(県) 102 ページ参照 都市計画室

緑化地域 103 ページ参照 公園緑地室 都市

緑地法 緑地保全地域 104 ページ参照 公園緑地室

景観法など

文化財保護法 文化的景観 104 ページ参照 文化課

生活環境保全林整備事業 森林の機能を多目的かつ高度に発揮させるための造成

改良整備などを実施(保安林内) 森林保全室

森林空間総合整備事業 森林空間の利用を重視する森林において、遊歩道や景

観整備などを実施(国費 1/2、県費 2/10) 森林整備室

絆の森整備事業 「森林と人との共生」を重視する森林において、市民

グループによる森づくり活動を推進(国費 1/2、県費

2/10)

森林整備室

山地

森林

里山

里山保全活動推進事業 森林を利用した環境教育のための景観に配慮したフィ

ールドを整備する事業 自然ふれあい 室

漁港海岸環境整備事業 国土の保全と併せて、海岸部の総合的レクリエーショ

ンの機能を整備する事業(国費 1/3、県費 1/3) 漁港整備室

海岸

河川海岸環境整備事業

住民の憩いの場・健康増進の場となる公園や運動場な

どとして河川、海岸の区域内を利用できるように整備

する事業

河川海岸整備 室

ふるさとの川整備事業

河川本来の自然環境の保全・創出や周辺景観との調和

を図りつつ、地域整備と一体となった河川改修により

良好な水辺空間を形成する事業

河川海岸整備 室

マイタウン・マイリバー整

備事業

大都市などの中心市街地及びその周辺部の河川のう

ち、改修が急務でありかつ良好な水辺空間の整備の必

要性が高く、また、沿川における市街地の整備とあわ

せて河川改修を進めることが必要かつ効果的と考えら

れる河川について、水辺環境の向上に配慮した河川改

修を行う事業

河川海岸整備 室

河川など

水辺プラン21推進事業

治水安全度を向上し、併せて人々が水辺に親しみ、憩

い、活力を養う場所を創生し、地域の特性を活かした

次世代に誇れる水辺空間を重点的かつ計画的に実施

※平成 13 年度で完了

河川海岸整備 室

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第 2 部 市町における景観形成の推進

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分類 制度・事業名 制度・事業の概要 所管

桜づつみモデル事業 良好な水辺空間の形成を図り、併せて堤防の強化及び

水防活動に必要な機能などを確保するための堤防側

帯、植樹その他地域住民が水辺空間に親しむための施

設を整備する事業

河川海岸整備 室

水系環境整備事業 浄化施設及び導水事業、親水などの河川利用の推進を

図るために必要な施設などの整備を行う事業 河川海岸整備 室

河川海岸環境整備事業 住民の憩いの場・健康増進の場となる公園や運動場な

どとして河川、海岸の区域内を利用できるように整備

する事業

河川海岸整備 室

浜名湖係船施設整備事業 浜名湖の秩序ある湖面利用の確保のため、プレジャー

ボートなどの係留施設を整備する事業 河川海岸整備 室

河川など

新世代下水道支援事業 健全な水循環系の再生のため、下水道処理水または雨

水などをせせらぎ用水として活用する事業。また、公

共下水道雨水渠などを利用し、親水性のある水辺空間

の整備などを実施

下水道室

夢舞台しずおかの邑創造計

画策定(県)

“夢舞台しずおかの邑”の実現に向けた、拠点となる

集落の整備構想の策定への補助 農山村計画室

中山間地域等直接支払制度 中山間地域などの耕作放棄を防止し、多面的機能を確

保するため、農業生産活動などを営む農業者などに対

して平地とのコスト差を支払う

農山村振興室

元気な地域づくり交付金 良好な農村景観の再生・保全に向けた土地改良施設な

どの改修、里地棚田・自然景観などの保全の推進 農山村計画室

田園空間整備事業 農村の有する自然、伝統、文化などの地域資源を生か

しながら、魅力ある田園空間づくりを推進する事業 農山村振興室

農村振興総合整備事業 「美しいむらづくり推進計画」に基づき、農業生産基

盤の整備と農村生活環境の整備を総合的に実施 農山村振興室

農地環境整備事業 耕作放棄地を含めた農地を対象として、国土・環境の

保全と優良農地を保全するための整備を実施 農山村振興室

農 地

農山村

地域用水環境整備事業 農業水利施設の保全管理・整備と一体的に、親水護岸、

遊水施設、せせらぎ水路などの整備を実施 農山村振興室

港整備交付金 地方港湾と第1種漁港における地域の交流促進のため

の環境整備事業(国費 50%、県 20%以内) 漁港整備室

漁村再生交付金 生産基盤と生活環境効率的整備を推進し、漁村の再生

を支援する事業(国費 50%、県 20%以内) 漁港整備室

自然調和型漁港づくり推進

事業

水質の保全、周辺環境への影響緩和など、自然環境と

の調和に配慮した漁港施設を整備する事業 漁港整備室

漁港環境整備事業

漁業集落環境整備事業

漁港、漁村における景観の保持、美化を図り、快適に

して潤いのある漁港、集落環境を形成する事業(国費

50%、県費 20%以内)

漁港整備室

漁 港

漁 村

景観・生態系配慮について 漁港施設を周辺環境と調和させる必要がある場合は、

景観、生物の生態系などに配慮した構造とすることが

できる 漁港整備室

地区計画 都市計画法に基づく都市計画の一つであり、建築物の

形態、公共施設その他の施設の配置などから見て、そ

れぞれの区域の特性にふさわしい良好な環境の街区を

整備し、保全するための計画

都市計画室

高度地区 都市計画法に基づく地域地区の一つで、市街地の環境

の維持または土地利用の増進を図るため、建築物の高

さの 高限度または 低限度を定める制度

都市計画室

風致地区 都市の風致を維持するため、建築行為などについて必

要な指導及び規制・誘導を行う制度 公園緑地室

特別緑地保全地区 都市の良好な自然環境を形成する枢要な緑地を現状凍

結的に保全する制度 公園緑地室

市民緑地 緑地の所有者と市町などが契約を結び、市町などが緑

地を管理し、地域の人々に公開する制度 公園緑地室

住宅地

商業地

温泉街

工業地

建築協定

土地の環境を維持・増進するため、区域内における建

築物の位置、構造、用途、形態、意匠などの基準を定

め、土地所有者などの全員合意により締結する協定

建築安全推進 室

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分類 制度・事業名 制度・事業の概要 所管

緑地協定 市街地の良好な環境を確保するため、土地所有者など

の合意により、住民自身による自主的な緑地の保全や

緑化に関する協定を締結する制度

公園緑地室

土地区画整理補助事業 公共施設の整備改善と宅地の利用促進を図り、個性あ

る街づくりや良好な市街地形成を推進(国 1/2) 市街地整備室

都市再生土地区画整理事業 都市基盤が貧弱で整備の必要がある既成市街地におい

て、幹線道路などの整備と併せて街区の再編を行い、

安全で快適に暮らすことのできる市街地の再生を行う

事業(区画道路、公園などの整備、無電柱化など)(重

点地区 国 1/2、一般地区 国 1/3)

市街地整備室

土地区画整理事業調査費 公共施設の整備改善と宅地の利用促進を図り、個性あ

る街づくりや良好な市街地形成を推進するための調査

費(都市計画区域内)(国 1/3) 市街地整備室

歴史的建築物等活用型再開

発事業

市街地再開発事業の施行地区内において、都市景観上

重要な歴史的建築物などを保存・有効活用し、機能面

での向上を図りながら一体的な整備を行う事業 市街地整備室

都市再生総合整備事業

市街地環境整備事業

街路、区画整理、再開発などの基幹的事業の実施にあ

わせ、優れたまち並みの形成のため、地区計画など規

制・誘導措置の講じられる地区において、景観形成の

ための各種施設などの整備を総合的に支援(国 1/3)

市街地整備室

まちなみデザイン推進事業 良好なまちなみ形成の推進のため、国、市町村が地区

権利者などによる住民参加の協議会組織が行う検討に

要する経費(委託費、会議費、印刷費など)に助成

(国…事業費の 1/3 以内かつ市町村が補助する額の

1/2 以内)

市街地整備室

街なみ環境整備事業 住宅が密集し、かつ地区施設が未整備であること、住

宅などが良好な美観を有していないことなどにより住

環境の整備改善を必要とする区域において、ゆとりと

うるおいのある住宅地区の形成のため住環境の整備改

善を行う事業(平成 17 年度から、対象地区要件に景観

法に基づく景観計画区域又は景観地区が追加された)

(国 1/2 又は 1/3)

市街地整備室

緑化重点地区総合整備事業 緑の基本計画に基づき、都市景観形成地区、都市環境

改善地区及び防災機能向上地区において、緑の骨格を

なす公園緑地の整備及び公共公益施設の緑化を総合的

に推進し、緑豊かな環境を形成する事業

公園緑地室

①優良景観樹木保全事業

地域の優れた緑地景観を形成する樹木を保全するため

の経費を補助。(補助率 1/2 以内)

(財)静岡県グリーンバン

ク事業

②街の森づくり事業

市街地における市町村・法人及び民間施設の公共的施

設を緑化する経費を補助。(補助率 1/2 以内)

(財)静岡県

グリーン

バンク

住宅市街地基盤整備事業

良好な住宅及び住宅の供給を特に推進させるため、住

宅建設事業及び宅地開発事業に関連して早急に整備す

ることが必要となる公共施設など(道路、区画整理、

都市公園、下水道、河川など)に対する補助(既存事

業の補助率)

市街地整備室

ブロック塀等耐震改修促進

事業(県)

地震に対するブロック塀の倒壊などによる災害を未然

に防止し県民の生命及び緊急路などの安全性を確保す

るため、ブロック塀の撤去及び改善を行う事業

(撤去…全域 県 1/4 市町 1/4)

(改善事業…緊急輸送路、避難路 県 1/4 市町 1/4)

建築安全推進室

いきいき商店街づくり事業

(県)

商店街などが行うシンボル的施設や景観統一施設など

に対応した基盤整備事業、地域の特性を活かしたソフ

ト事業に対しての支援

商業まちづくり室

住宅地

商業地

温泉街

工業地

賑わいの道づくり事業 商店街の再活性化を図るため、まち並みの快適性の向

上やアクセシビリティの確保などを目指し、道路整備

を一体的かつ重点的に行う事業 国 1/2

道路整備室

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第 2 部 市町における景観形成の推進

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分類 制度・事業名 制度・事業の概要 所管

工場立地法

工場立地が、環境の保全を図りつつ、適正に行われる

ようにするため、生産施設、緑地などの面積及び配置

の基準に基づき、敷地利用の適正化などを図る制度

産業集積室

住宅地

商業地

温泉街

工業地 富士地域煙突ゼロ作戦事業

(県)

富士市内の高さ 20mかつ付属施設から 10m以上の煙

突撤去を行う事業者に補助する富士市に対し助成

(富士市助成額の 1/2(上限 1本当たり 250 万円))

地球環境室

港 湾 歴史的港湾環境創造事業 石積みの防波堤や護岸などの歴史的港湾施設を保全・

活用しながら、周囲に緑地などを配置し、海辺の交流

拠点を形成する事業

港湾整備室

電線共同溝整備事業 道路の地下空間を活用して、既存電線類の地中化と併

せ、光ファイバーなども収容する電線共同溝(C.C.BOX)

を整備する事業

(国道 国 1/2 地方道 国 5.365/10)

道路整備室

沿道区画整理型街路事業 街路整備の効果を沿道だけでなく、周辺地区に及ぼし

良好な沿道市街地を形成しようとする事業。都市計画

道路の整備について公共施設管理者負担金制度を活用

して土地区画整理事業により行うもので、街路事業者

が負担する公共施設管理者負担金について国が補助

(国 1/2)

街路整備室

シンボルロード事業 地域の特性を活かした整備を行い、人々に親しみと潤

いを与え、快適で美しく、楽しい道路空間を形成する

事業(国 1/2)

街路整備室

身近なまちづくり支援街路

事業

幹線道路の整備や地区レベルの街路の再整備(グレー

ドアップなど)などを面的に実施する事業 街路整備室

歴史の道活用推進事業 古道などの歴史的遺産の調査・整備に対する補助事業 街路整備室

沿道再開発型街路事業 未整備な都市内の幹線道路で、道路網の早期形成など

の観点から整備優先度が高い狭隘区間のうち、直接買

収手法ではなく、公共施設管理者負担金制度を活用し

た市街地再開発手法により一体的に整備することが有

効な区間について国が補助(国 1/2)

街路整備室

道 路

沿道整備街路事業 直買方式で街路事業を推進していく過程において、一

部地権者に現地残留希望や代替地希望があり、事業の

円滑な推進が困難あるいは不適当な場合に、換地手法

を活用して沿道市街地の一体的整備を推進する事業

(国 1/2)

街路整備室

景観形成事業推進費 景観法に基づく景観計画に位置づけられた事業、景観

計画区域や景観地区、風致地区などにおいて行われる

景観形成事業への補助(既存事業の補助率)

市街地整備室

まちづくり交付金 市町が作成した都市再生整備計画に位置付けられたま

ちづくりに必要な幅広い施設などを対象に、事業の費

用に充当するための交付金を交付する制度(国費率が

概ね事業費の 40%)

市街地整備室

まち再生総合支援事業 都市再生に資する優良な民間都市開発事業の立ち上げ

を支援するため、まちづくり交付金と連携した民間都

市開発事業への出資、住民参加型まちづくりファンド

支援、ストック再生型まちづくり支援など、まち再生

のために民間資金を誘導する制度

市街地整備室

都市公園事業 都市公園などの新設又は改築に関する事業への補助

(用地費 1/3、施設費 1/2) 公園緑地室

緑地保全等統合補助事業 「都市緑地法」に基づく特別緑地保全地区内又は緑地

保全指定計画地における土地の買入れ及び施設の整備

に対し補助。市町が策定する事業計画に基づき補助金

を交付(用地費 1/3、施設費 1/2)

公園緑地室

その他

緑地環境整備総合支援事業 広域的な緑の骨格軸及び緑の拠点、都市内の水と緑の

ネットワークの形成などに関する中期的な事業計画に

基づき、都市公園整備、特別緑地保全地区などの土地の

買入れ、施設整備及び民有緑地の公開に必要な施設整

備などへの支援(用地費 1/3、施設費 1/2)

公園緑地室

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分類 制度・事業名 制度・事業の概要 所管

公園・緑化推進事業(県) 緑豊かな優れた都市環境の形成を図るために、都市緑

化を推進する市町において、それを誘導する公園やそ

の他緑化施設の整備に対し補助金を交付(補助率 1/4)

公園緑地室

文化財建造物保存修理事業 国及び県指定の文化財などを後世に継承するため、文

化財の所有者などが行う保存・修理事業及び埋蔵文化

財発掘調査事業などに対して助成 教育委員会文化課

伝統的建造物群保存地区 都市計画法と文化財保護法が連携した、城下町、宿場

町などの歴史的な集落・町並みを保存する制度 教育委員会文化課

文化的景観保護推進事業 重要文化的景観の保存のために特に必要と認められる

物件の管理、修理、修景、復旧措置の経費を補助 教育委員会文化課

その他

観光施設整備助成

市町及び観光関係団体が観光振興を図るために行う施

設整備に要する経費を補助(補助率 1/4~1/2) 観光交流室

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第 2 部 市町における景観形成の推進

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(2)景観法などの活用イメージ

前項の「(1)景観形成の主要方策」で示した方策のうち、今後において活用が期

待される「景観法、改正された都市緑地法および屋外広告物法に基づく景観形成関連

方策」について、その概要と活用イメージを示す。 「景観法運用指針」(国土交通省、農林水産省、環境省)や景観法などの解説書を

補い、方策の活用のイメージがより持てるようにすることを目的に作成してある。 各市町が、地域の景観の特性や景観形成の課題に対応した方策の活用方法を検討す

る際の参考書として活用いただきたい。

〈図:景観法などの方策の体系〉

景観法

屋外広告物法

都市計画法

都市緑地法

文化財保護法

緑化地域

緑地保全地域

地区計画

景観地区・準景観地区

景観計画

文化的景観

屋外広告物条例

景観条例 (委任条例)

(景観計画区域)

景観重要建造物・樹木

景観重要公共施設

景観農業振興地域整備計画

景観協議会

景観協定

自然公園法の特例

市町村森林整備計画の変更

景観整備機構

農業振興地域整備法

森林法

自然公園法

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〈活用イメージの見方〉

〈概要〉 :方策の概要を示す。詳細は、景観法などの解説書や景観法運用指針を参照さ

れたい。 〈活用イメージ〉:県内各地域において考えられる方策の活用のイメージを示す。あくまでも一

例であり、これを参考に、地域の状況に応じた活用方法を検討いただきたい。 〈留意事項〉 :景観法運用指針の中の重要な事項、指針に示されている以外で留意が必要と

思われる事項を整理してある。

①景観計画(景観法) 〈概 要〉

・景観法の基本となる仕組みであり、計画対象区域を設定し、良好な景観形成の指

針を示すとともに、建築や開発の行為の制限に関する事項などを定める。

①―1 良好な景観形成の指針 〈活用イメージ〉

・市町における景観のマスタープランとして位置づけ、景観形成の将来像や方針な

どを示す。 ・既に良好な景観の形成を図るためのマスタープランとして位置づけのある行政計

画がある場合は、本方針に位置づけ直すことが考えられる。

〈留意事項〉 ・必ずしも景観計画区域全体に関する方針とする必要はなく、必要に応じて区域内

の景観の特性に応じて区域内を区分し、区域ごとに方針を定めることも考えられ

る。 ・具体的には、景観の特性や課題、将来の景観像、景観形成方策の方向性などを示

すことが考えられる。 ・良好な景観の形成に向けた住民、市民団体、事業者などの参加や合意形成方策の

考え方、景観整備機構の活用の考え方、景観協議会の活用の考え方などを示すこ

とも考えられる。 ・公共施設管理者としての景観行政団体が、公共施設整備・管理に係る景観上の考

え方を示すことも考えられる。

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第 2 部 市町における景観形成の推進

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①―2 景観計画区域における行為制限

〈活用イメージ〉 ア.行政区域全域などにおける大規模な行為の制限 ・行政区域全域などを景観計画区域に設定し、景

観形成に大きな影響を与える大規模な開発行

為や建築行為などを対象として、制限内容を定

める。 -活用が考えられる市町―

・景観法制定を契機に、良好な景観形成に実質的に取り組み始めることを考え

ている市町において、一段階目の方策として大規模な建築行為などの規制・

誘導を行うことが考えられる。

県内市町の景観関連条例において規制・誘導対象としている大規模建築物などの行為

市町名 対象としている大規模建築物などの行為

静岡市 ・ 都 市 計 画 区 域 内 に お け る 建 築 物 で 、 高 さ が 10m (近 隣 商 業 地 域 、 商 業 地 域 、 準 工

業 地 域 、工 業 地 域 及 び 工 業 専 用 地 域 の 地 域 に あ っ て は 、15m )を 超 え 、又 は 延 べ 面

積 が 1, 000 ㎡ を 超 え る も の

・ 高 さ が 10 メ ー ト ル を 超 え る 工 作 物

・ 開 発 行 為 の 許 可 を 受 け て 行 う 土 地 の 区 画 形 質 の 変 更

浜松市 ・ 高 さ が 20m 以 上 又 は 延 ベ 面 積 が 5,000 ㎡ (3,000 ㎡ )以 上 の 建 築 物 な ど

・ 高 さ 用 途 地 域 内 商 業 地 域 ・ 近 隣 商 業 地 域 18m 以 上 、 そ の 他 15m 以 上

用 途 地 域 外 15m 以 上

・ 大 幅 用 途 地 域 内 40m 以 上 、 用 途 地 域 外 25m 以 上

・ 延 床 面 積 用 途 地 域 外 1,000 ㎡ 以 上 、 近 隣 商 業 及 び 商 業 地 域 内 2, 000 ㎡ 以

上 、 そ れ 以 外 の 用 途 地 域 1,500 ㎡ 以 上 、

工 作 物 ・ 地 上 高 5m 以 上 ・ 総 延 長 50m 以 上 ・ 総 面 積 500 ㎡ 以 上

熱海市

広 告 物 ・ 標 示 板 面 積 1 面 に つ き 5 ㎡ 以 上 ・ 建 築 物 の 屋 上 に 設 置 す る も の

・ 建 築 物 の 壁 面 か ら 突 出 す る も の ・ そ の 他 の も の

伊東市 ・ 建 築 物 の 延 べ 床 面 積 が 3,000 ㎡ 以 上

・商 業 地 域 は 、建 築 物 の 高 さ が 6 階 又 は 低 地 盤 面 か ら 17m 以 上 。た だ し 、隣 接 す

る 道 路 中 心 線 か ら 6m 以 上 後 退 の 建 築 物 は 8 階 又 は 低 地 盤 面 か ら 23m 以 上

・近 隣 商 業 地 域 は 、建 築 物 の 高 さ が 5 階 又 は 低 地 盤 面 か ら 14m 以 上 。た だ し 、隣

接 す る 道 路 中 心 線 か ら 5m 以 上 後 退 の 建 築 物 は 7 階 又 は 低 地 盤 面 か ら 20m 以 上

・ 商 業 地 域 及 び 近 隣 商 業 地 域 以 外 の 地 域 は 、 建 築 物 の 高 さ が 4 階 又 は 低 地 盤 面 か

ら 11m 以 上

・ 工 作 物 の 高 さ が 10m 以 上 又 は 延 長 が 50m 以 上

・ 広 告 物 な ど の 高 さ が 4m 以 上 、 表 示 面 積 合 計 が 20 ㎡ 以 上 又 は 1 面 が 20 ㎡ 以 上 三島市 ・ 高 さ 10m (市 街 化 区 域 で は 15m )以 上 又 は 延 べ 面 積 1, 000 ㎡ 以 上 の 建 築 物 な ど

富士市 ・ 市 街 化 区 域 に あ っ て は 、 高 さ が 15m ( そ の 他 の 区 域 に あ っ て は 10m ) 以 上 又 は

延 べ 面 積 が 2, 000 ㎡ 以 上 の 建 築 物 な ど

富士宮市 ・ 都 市 計 画 区 域 内 の 建 築 物 で 、 高 さ が 10m (近 隣 商 域 、 商 業 、 準 工 業 、 工 業 及 び 工

業 専 用 地 域 は 15m )を 超 え 、 又 は 延 べ 面 積 が 1, 000 ㎡ を 超 え る も の

・ 工 作 物 で 、 高 さ が 10m を 超 え る も の 又 は 橋 梁 で 長 さ が 50m を 超 え る も の

旧伊豆長

岡町

(伊豆の

国市)

・ 高 さ が 15m を 超 え 、 又 は 建 築 面 積 が 1000 ㎡ を 超 え る 建 築 物

・ 高 さ が 15m を 超 え る 工 作 物

・ 高 さ 1m を 超 え る の り を 生 ず る 切 土 又 は 盛 土 を 伴 う 土 地 の 形 質 の 変 更 で 、 面 積 が

1000 ㎡ を 超 え る も の

行為制限の区域

景観計画区域(一点鎖線)

参 考

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86

イ.各地域の特性に応じた行為制限 ・行政区域全域などを地域特性に応じて区分し、各地域の特性に応じた制限の対象

行為、内容を定める。 ・地域区分の切り口としては、現況土地利用(住

宅地、商業地、工業地、集落・農地、森林など)、

都市計画の地域地区(用途地域など)や区域区

分、市街化の状況(既成市街地、進行市街地、

新市街地)、山地や河川、鉄道など地形地物で

区切られた空間的なまとまり、旧市町村界など

が考えられる。 -活用が考えられる市町―

・各地域で特徴的な土地利用がみられる市町において、地域区分をすることが

考えられる。 ・合併した市町では、旧市町村の景観に係る取組に大きな差異があることもあ

りうる。その場合には、旧市町村に対応した区分を行い、景観形成が推進さ

れてきた地域についてはきめ細やかな制限を行い、推進されてこなかった地

域では大規模な建築行為などを対象に緩やかな制限を導入することなどが考

えられる。 ウ.2段階の行為制限 ・アやイの行為制限の型に加えて、特定の地区について、その地区に適した景観形

成を推進したい場合に、その地区における制限の対象行為や内容をより具体的に

定める。 その場合、アやイの行為制限よりも、届出対象範囲を拡大すること、制限内容を

増やすこと、産業活動などに配慮し制限内容を絞り込むこと、数値基準を盛り込

んだ基準を設定することなどが考えられる。 ・特定の地区として、駅周辺、商店街、良好な低

層住宅地、歴史的なまち並み、第二東名自動車

道IC周辺、農山漁村観光に取り組んでいる集

落、郊外の観光拠点、まちのシンボルとなって

いる河川の沿岸のまち並みなどが考えられる。

-活用が考えられる市町― ・景観に係る自主条例を制定している市町では、条例による大規模建築物など

の規制・誘導及び景観形成地区指定を景観計画に基づく2段階の行為制限に

移行することが考えられる。(詳しくは 110~112 ページ参照)

・特定の地区において景観上早急の対応が求められている市町においては、景

観計画区域全体について非常に緩い制限を設定しておき、特定の地区におい

て実質的な行為制限を行うことが考えられる。

○○地区

◇◇地区

△△地区

□□地区

◇◇地域

△△地域

○○地域

□□地域

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第 2 部 市町における景観形成の推進

87

エ.一部の地域における行為制限 ・良好な景観形成を推進したい地域・地区に限定

して景観計画区域を設定し、その特性に応じた

制限の対象行為、内容を定める。 -活用が考えられる市町―

・景観法制定を契機に、良好な景観形成に実質的に取り組み始めることを考え

ている市町において、一段階目の方策として特定の地域・地区の建築行為な

どの規制・誘導を行うことが考えられる。 ・特定の地域において景観上早急の対応が求められている市町において、一部

の地域・地区における行為制限を行うことが考えられる。その後、他地域や

行政区域全域の行為制限に取り組んでいく。

〈留意事項〉 -景観計画区域の設定について ・景観計画区域を対象として、良好な景観形成のための行為の制限をはじめ、景観

重要建造物・樹木、屋外広告物の表示などに関する行為の制限、景観重要公共施

設、景観農業振興地域整備計画、自然公園法の特例、景観協定、景観協議会の各

種措置が講ぜられる。 市町の各地域における様々な取組を支援することができるように景観計画を定

めることが望まれることから、行政区域全体を景観計画区域に設定し、良好な景

観形成の指針を示すことが望まれる。 ただし、山岳地域など開発・建築行為や住民活動、産業活動などがほとんど無い

地域などのある市町については、その地域を除いて景観計画区域を設定すること

が考えられる。 -景観計画策定のプロセスについて ・行為制限の施行にあたっては住民の理解が必要であり、景観計画の策定は住民参

画で進めていくことが欠かせない。そのため、イ、ウ、エの行為制限の型につい

ては、住民の合意形成が図れた地域・地区から順次景観計画に行為制限を位置づ

けていくという策定プロセスをとることも考えられる。 ・富士山や河川など複数の市町にわたる広域的な景観の形成については、各市町の

連携により行為制限を図ることが望まれる。本県では第1部第2章に示す「しず

おか景観形成重要地域」において、市町や県などの連携による広域的な景観の形

成を推進する考えである。 -勧告・命令について ・景観計画に定めた行為の制限に適合していない場合は必要な措置を勧告すること

ができる。さらに、建築物・工作物の形態・意匠については、条例を定めること

により変更命令が可能になる。

◇◇地区

△△地域

行政区域界

景観計画区域 (一点鎖線)

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88

他制度との比較

・特定の区域において建築行為の形態・意匠などを制限する制度として、景観計画

のほかに景観地区、景観協定、地区計画などがある。適用区域、制限事項、制限

手段などの点から、地域に合った制度を選択するようにする。

景観計画 景観地区 景観協定 地区計画

根拠法 景観法 景観法、都市計画法 景観法 都市計画法

適用区域 景観計画区域内

(都市計画区域内外で可) 都市計画区域内 景観計画区域内 都市計画区域内

制限事項 ・建築物、工作物の形

態意匠

・建築物、工作物の高

さの 高限度又は

低限度

・壁面の位置

・敷地面積の 低限度

・その他、建築物の建

築、工作物の設置、

開発行為、土地の形

質の変更、木竹の植

栽・伐採、さんごの

採取、土砂などの堆

積、水面の埋立・干

拓、特定照明、火入

れなど

・建築物、工作物の形

態意匠

・建築物、工作物の高

さの 高限度又は

低限度

・建築物、工作物の壁

面の位置

・敷地面積の 低限度

・開発行為

・土地の形質の変更

・木竹の植栽・伐採

・土砂などの堆積

・水面の埋立・干拓

・特定照明

・建築物の形態意匠

・建築物の敷地、位置、

規模、構造、用途、

建築設備

・工作物の位置、規模、

構造、用途、形態意

・樹林地などの保全、

緑化

・屋外広告物の表示、

掲出物件の設置

・農用地の保全・利用

・その他

・建築物などの用途

・容積率の 高限度又

は 低限度

・建ぺい率の 高限度

・敷地面積、建築面積

の 低限度

・建築物の壁面の位置

・高さの 高限度又は

低限度

・建築物の形態意匠

・緑化率の 低限度

・垣さくの構造

・現に存する樹林地な

どの保全に関する事

・地区施設の配置規模

制限手段 ○届出・勧告

○変更命令

・建築物、工作物の形

態意匠が対象

○認定

・建築物、工作物の形

態意匠

○建築確認

・建築物の高さ

・建築物の壁面の位置

・敷地面積の 低限度

○許可

・開発行為

・土地の形質の変更

・木竹の植栽・伐採な

○是正措置など

・工作物の高さの 高

限度又は 低限度

・工作物の壁面の位置

○協定

・違反措置は協定で定

める

○届出勧告

○建築確認(建築基準法に

基づく条例を定めた場合)

・建築物などの用途

・容積率の 高限度又

は 低限度

・建ぺい率の 高限度

・敷地面積、建築面積

の 低限度

・建築物の壁面の位置

・高さの 高限度又は

低限度

・建築物の形態意匠(屋

根・壁面の形状・材

料)

○認定(景観法に基づく条

例を定めた場合)

・建築物の形態意匠

住 民 の 意 見

反映・合意

公聴会など住民意見を

反映させるために必要

な措置(条例規定可)

都市計画の手続き 土地所有者など全員の

合意

都市計画の手続き

参 考

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第 2 部 市町における景観形成の推進

89

②景観重要建造物・樹木(景観法)

〈概 要〉 ・景観計画に即し、景観上重要な建築物や工作物、樹木を指定する。所有者などに

適切な維持・管理を求め、現状変更には届出許可が必要となる。

〈活用イメージ〉 写真はイメージ

・農山漁村の古民家、長

屋門、蔵、火の見櫓を

指定。

・東海道、秋葉道など旧

街道の旅籠、町家、付

属する庭園や燈篭を

指定。

・地域のランドマークに

なっている神社・寺院

やシンボル的な樹木

を指定。

・建築デザインに優れた

公共公益施設、住宅、

別荘、店舗を指定。

・デザインに優れた文化

施設を指定。 ・人工林の中にあり景観

のアクセントとなっ

ている単木の広葉樹

を指定。

・田畑や森林においてラ

ンドマークとなって

いる樹木を指定。

・住宅地にある比較的大

きな樹木で、地域の景

観のアクセントとな

っているものを指定。

・街なかの商業施設やオ

フィスビルの公開空

地などに植えられた

複数の樹木を指定。

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90

〈留意事項〉

・良好な景観の形成を推進する上で重要な建造物・樹木を指定するものであり、建

造物・樹木自体の歴史的・文化的価値を問うものではない。 ・現状変更に対する許可などは、良好な景観の保全を図るための措置であり、公共

の場所から見えない箇所や建造物内部の増改築など、良好な景観の保全に支障な

い行為を制限するものではない。 ・景観重要建造物・樹木の指定は、文化財保護法に基づく国宝、重要文化財、特別

史跡名勝天然記念物、史跡名勝天然記念物として指定された建造物・樹木には適

用されない。

建造物・樹木の保存に係る制度の比較 ・建造物・樹木の保存に係る制度として、景観重要建造物・樹木のほかに文化財保

護法関連の制度や保存樹などがある。適用物件、保存手段(強制力)、緩和事項な

どの点から、各建造物・樹木に合った制度を選択するようにする。

景観重要

建造物・樹木 指定有形文化財 記念物 保存樹

根拠法 景観法 文化財保護法に基づく

地方公共団体の文化財

保護条例※

文化財保護法に基づく

地方公共団体の文化財

保護条例※

都市の美観風致を維持

するための樹木の保存

に関する法律

適用物件 ・景観計画区域内の良

好な景観形成に重要

な建造物

・景観計画区域内の良

好な景観形成に重要

な樹木

・有形文化財 ・記念物 ・都市計画区域内の、

美観風致を維持する

ために必要な樹木又

は樹木の集団

義務など ・建造物、樹木の管理

・所有者変更届出

・文化財の管理

・所有者変更届出

・滅失、き損届出

・記念物の管理

・所有者変更届出

・滅失、き損届出

・保存の義務

・所有者変更届出

保存手段 ・現状変更の許可、現

状回復命令など(損

失補償)

・管理に関する命令・

勧告

・管理修理の勧告

・現状変更などの許可

・修理の届出

・管理修理の勧告

・現状変更などの許可

・修理の届出

・必要な助言

補助援助

緩和事項

・景観行政団体などと

の管理協定

・建築基準法上の制限

の一部緩和

・建造物及びその敷地

の相続税の適正評価

・管理修理の補助 ・管理修理の補助 ・必要な援助

※ここでは参考として静岡市文化財保護条例の概要を示す

参 考

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第 2 部 市町における景観形成の推進

91

③景観重要公共施設(景観法)

〈概 要〉 ・景観上重要な公共施設について、あらかじめ景観行政団体と公共施設管理者が協

議し同意をした場合、景観計画に位置づけ、景観計画に則して整備を推進する。 〈景観重要公共施設に指定できる施設〉以下の特定公共施設であって良好な景観形成に重要なもの 法律に定める公共施設(第8条) ・道路 ・河川 ・都市公園 ・海岸保全区域等に係る海岸 ・港湾 ・漁港 ・自然公園における施設

政令に定める施設(施行令第2条) ・土地改良施設 ・下水道 ・保全施設事業に係る施設 ・市民緑地契約に係る市民緑地 ・雨水貯留浸透施設 ・砂防設備 ・地すべり防止施設、ぼた山崩壊防止施設 ・急傾斜地崩壊防止施設

〈活用イメージ〉 写真はイメージ

ア.海岸の修景 ・景勝地となっている海岸を位置づけ、堤防、突堤、護岸、離岸堤などの修景の指

針を示す。 ・露店や電柱などの占用施設・工作物について、良好な眺望を阻害しないような配

置や高さ、周囲と調和した色彩など、修景に係る占用許可基準を定める。 イ.河川の修景 ・まちのシンボルとなっている河川や街なかの親しまれている河川を位置づけ、護

岸、堤防堰、高水敷などの修景の指針を示す。 ・公園や広場、防災施設、休憩所、花壇、売店、自然観察施設などの占用施設・工

作物について、配置や高さ、色彩など修景に係る占用許可基準を定める。

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92

ウ.港湾・漁港の修景 ・まちの産業拠点や観光スポットとなっている港湾や漁港などを位置づけ、防波堤、

護岸、岸壁、桟橋、道路、駐車場、倉庫、緑地、休憩所などの港湾施設・漁港施

設などの修景の指針を示す。 ・露店や電柱などの占用施設・工作物について、配置や高さ、色彩など修景に係る

占用許可基準を定める。 エ.道路の修景 ・まちのシンボルとなっている通り、旧東海道など歴史的な街道、眺望のよい道路、

観光道路などを位置づけ、舗装や路上施設(街路樹、街灯、防護柵、駒止など)

などのデザインや電線共同溝整備などの指針を示す。 ・道路占用物件である電柱や消火栓、バス待合所、歩道をオープンカフェなどとし

て活用するためのテーブルやテントなどについて、配置や高さ、色彩など修景に

係る占用許可基準を定める。 オ.公園の修景 ・広域公園や街なかのシンボルとなっている公園などを位置づけ、公園外縁の植栽、

施設の形態・意匠や高さなどのデザインの整備指針を示す。 ・公園の管理者以外が設置する公園施設(売店、花壇など)や工作物(電柱など)

について、配置や高さ、色彩など修景に係る設置・占用許可基準を定める。 カ.既に良好な景観を形成している公共施設の維持・管理 ・並木道、近代に整備され地域のシンボルとなっている橋梁、親水空間の整備され

た河川など既に良好な景観を形成している公共施設について、景観重要公共施設

に位置づけ、管理の指針を示し、関係機関と連携し適切に維持・管理していく。

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第 2 部 市町における景観形成の推進

93

〈留意事項〉

・景観重要公共施設の周辺地区において、景観計画や景観地区、景観協定により開

発・建築行為を規制・誘導し、公共施設と周辺地区が一体となった良好な景観を

形成することが望まれる。

④景観農業振興地域整備計画(景観法、農振法)

〈概 要〉 ・景観計画区域内の景観と調和のとれた良好な営農条件の確保を図るべき区域にお

いて、景観と調和のとれた土地の農業上の利用、農業生産基盤や農業近代化施設

の整備・開発、農用地の保全に関する事項を定める。 ・景観農業振興地域整備計画に基づき、市町長が景観農業振興地域内の農地につい

て景観と調和のとれた農業的土地利用についての勧告を行うことが可能となる。

また、景観整備機構が農地の利用権の取得など行うことができる。

〈活用イメージ〉 写真はイメージ

ア.グリーンツーリズムを推進している農山村 ・グリーンツーリズムを推進している地域において、地域の魅力を高めるために、

良好な農山村景観の形成に取り組む。 ・景観と調和の取れた土地の農業上の利用に関する事項として、耕作放棄地などの

活用による景観作物や体験作物の共同栽培の方法(作物の種類、栽培場所、栽培

時期、管理体制など)、放置されている棚田や茶園の都市住民参加による栽培方法

や石垣の保全方法を定める。 ・農業生産基盤整備、農用地保全、農業近代化施設整備に関する事項として、安全

に農業体験ができるようにする農道の整備、周囲の自然景観に配慮した農業用用

排水路の整備、体験の場として利用する加工所やハウスの景観に配慮した整備、

体験作物を利用した特産物の加工施設の整備を定める。 ・景観作物や体験作物の共同栽培を行わない者などに対して市町長が勧告を行う。

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94

イ.地域固有の良好な景観がみられる農山村 ・地域固有の良好な農山村景観として、周辺の自然と調和した茶園、みかん山、棚

田、わさび田などが挙げられる。これらは地域の文化的財産であり、積極的に保

全に取り組む。 ・景観と調和の取れた土地の農業上の利用に関する事項として、栽培方法(作物の

種類、栽培場所、栽培時期、農業資材の種類)や田畑の石垣の保全方法を定める。 ・農業生産基盤整備、農用地保全、農業近代化施設整備に関する事項として、昔な

がらの農地や生産基盤施設の形状(石垣、空積の用排水路、曲線の農道など)に

配慮した基盤整備、周辺の自然や農地の景観に調和した集出荷所や加工所などの

整備を定める。 ・異なる作物を栽培しようとする者、石垣をコンクリートなどで修繕しようとする

者などに対して市町長が勧告を行う。

〈留意事項〉 ・景観と調和のとれた農地の保全や農業生産基盤などの修景とあわせて、景観計画

による集落の景観の規制・誘導、景観重要建造物・樹木による地域のランドマー

クとなっている民家や樹木などの保存を行うことが望まれる。 ・景観農業振興地域整備計画を策定する場合には、庁内の農業部局、対象地域の農

業者や農業委員会などとの調整が求められる。(155~156 ページ参照)

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第 2 部 市町における景観形成の推進

95

⑤市町村森林整備計画の変更(景観法、森林法)

〈概 要〉 ・景観計画区域に含まれた森林で、市町村森林整備計画で定める伐採・造林・保育

などの方法で特に景観に留意する事項がある場合は、区域を定め、その内容を盛

り込むことができる。

〈活用イメージ〉 ・皆伐の細分・分散、択伐、比較的大きい樹木の保存など、立木竹の伐採方法を定

める。 ・人工的に整形された森林をつくる場合は同じ樹種を同一時期に格子状に植栽

する、針葉樹人工林を四季の彩りを感じられるようにする場合は針葉樹を部

分的に伐採して紅葉する落葉広葉樹を植栽するなど、造林の方法を定める。 ・林内を明るく保つための間伐方法、枝打時期、林床植生の取扱いや林内の利

用方法による立木密度の設定など、保育方法を定める。 ・保健機能森林における遊歩道や休憩施設などの整備についての景観への配慮事項

(建材の種類、色彩、高さなど)、林間広場とする区域の立木密度や樹種などを定

める。

〈留意事項〉 ・市町村森林整備計画で定めた取り扱いが、適正に行われている林業生産活動の支

障とならないよう留意する。 ・森林観察会や間伐体験教室の開催など、住民参加による森林の整備・管理活動を

森林整備計画に併せて位置づけることが望まれる。 ・市町村森林整備計画に規定する木竹の伐採に関する事項と景観計画に基づく木竹

の伐採に係る景観形成基準と整合を図る必要がある。 ・景観協定と市町村森林整備計画で定める森林の取り扱い方法は整合性を図る必要

がある。

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96

⑥自然公園法の特例(景観法、自然公園法)

〈概 要〉 ・景観計画に位置づけられた自然公園内における建築物の新築などについて、きめ

細やかな基準設定が可能となる。

〈活用イメージ〉 ・富士箱根伊豆国立公園の特別地域内の集落や景勝地などにおいて、建築物の高さや

屋根などの色彩の制限、屋外広告物の規模や色彩の制限を強化する許可基準を設定

する。

国立公園特別地域の制限の一例 自然公園法特例による対応イメージ ・工作物の新築、改築又は増築のうち、

集合別荘、集合住宅、分譲地の建築物

などについて、屋根及び壁面の色彩並

びに形態がその周辺の風致又は景観

と著しく不調和でないこと。

・屋根の形状は、原則として、当該地域

に多くみられ、周囲の山並みに調和す

る勾配屋根とする。 ・屋根の色彩は、明度・彩度の高いもの

を避け、灰黒系、焦げ茶系とする。 ・所在地、名称、商標などを明らかにす

るための広告物などの掲出、設置また

は表示について、表示面積が5㎡以下

であり、かつ、同一敷地内における表

示面の面積合計が 10 ㎡以下であるこ

と。

・同一敷地内における表示面の面積合計

が5㎡以下であること。

・所在地、名称、商標などを明らかにす

るための広告物などの掲出、設置また

は表示について、色彩及び形態がその

周辺の風致又は景観と著しく不調和

でないこと。

・基調色は、自然材料を使用した場合は

素材の色、その他の材料を使用した場

合はこげ茶系とする。

〈留意事項〉

・特例の設定対象となる県内の自然公園は、富士箱根伊豆国立公園、南アルプス国立

公園、天竜奥三河国定公園である。 ・特例を定める際には、国立公園などの管理者と事前に協議を行うことが必要である。

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第 2 部 市町における景観形成の推進

97

⑦景観地区(景観法)、地区計画の特例(都市計画法)

〈概 要〉 ・都市計画区域内において、積極的に良好な景観の形成を図る地区を都市計画に定

め、建築物などの形態・意匠などを規制・誘導する。 ・地区計画では、建築物などの形態・意匠などについて、景観法に基づく条例を制

定し、認定を行うという、景観地区と同様の仕組みを導入することが可能である。

〈活用イメージ〉 写真はイメージ

ア.景観形成を積極的に推進する地区 ・景観形成を積極的に推進する地区、既に良好な景観が形成されており保全が望ま

れる地区などに景観地区を導入する。

・駅前地区や商店街において、建築物の正面などの形態・意匠、道路境界線からの

壁面の後退距離などを制限する。

・良好な景観の低層住宅地や農山村集落、別荘地において、建築物の高さ、建ぺい

率の 高限度、建築物の色彩や屋根の形状、敷地規模の 低限度などを制限する。

・歴史的なまち並み地区で、建築物の正面などの形態・意匠、高さの 高限度、街

道の道路境界線からの壁面位置などを制限する。

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98

・第二東名自動車道IC周辺など整備・開発が進む地区で、建築物の高さの 高限

度、前面道路からの壁面の後退距離、敷地規模の 高限度、外壁の色彩などを制

限する。 イ.地区計画導入済みの地区

・地区計画導入済みの地区で、区域内の建築物や工作物の形態・意匠の制限につい

て景観法に基づく条例を制定し、市町長の認定の仕組みにより計画の担保性を高

める。

〈留意事項〉 ・景観地区において、景観計画との大きな違いは、建築物の建築などの行為に対し

て、景観法に基づく認定と建築基準法に基づく建築確認で、その内容を担保して

いく点である。 認定制度により、一義的・定量的に定めることが難しく、また、適当でないこと

が多い建築物などの色や意匠などの制限について、市町が裁量的・定性的な基準

を定め判断することにより、地域の景観の質を高めることが可能になった。 景観地区は、良好な景観を形成するために必要な事項を総合的に規制・誘導する

ことができるものであり、積極的な活用が望まれる。 ・都市計画区域外などの景観計画区域のうち、相当数の建築物があり、良好な景観

が形成されている地区(在来の農山村集落など)については、準景観地区を指定

することができる。 ・景観計画区域内で景観地区を定める場合には、景観地区内の行為は景観計画によ

る規制・誘導の適用除外となるが、当該景観計画による良好な景観の形成に支障

が無ないように定めるものとする。 ・良好な景観形成を目的とした景観地区では、建築物の用途を制限することはでき

ない。景観形成のみならず生活環境の保全など総合的な観点から建築物の用途の

制限が必要な場合は、地区計画や特別用途地区、特別用途制限地域の活用が考え

られる。

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第 2 部 市町における景観形成の推進

99

⑧景観協定(景観法) 〈概 要〉

・景観計画区域内において、景観に関する事柄をソフトな点まで含めて、住民間の協

定により一体的に定めることができる。

〈活用イメージ〉 ア.景観のイメージが共有されており、コミュニティ活動がさかんな地区

・商店街、良好な低層住宅地、歴史的なまち並み地区など、地域住民間において景

観のイメージがある程度共有されており、コミュニティ活動がさかんな地区にお

いて、まちづくりのきっかけとして活用する。 ・商店街において、建築物の正面のデザイン、ショーウィンドウのデザイン、ライ

トアップやイベント時の飾りつけの方法などを定めた協定を締結する。 ・良好な低層住宅地において、建築物や外構の基調とする色彩や素材、緑化、美化

活動、空地の管理などの方法を定めた協定を締結する。 ・歴史的なまち並み地区で、建築物の正面の形態・意匠、行事時における飾りつけ

の方法などを定めた協定を締結する。 ・農山村において、集落の民家の形態・意匠、集落周辺の農地の維持・管理などを

一体的に定めた協定を締結する。

イ.景観計画や景観地区などを導入している地区 ・景観計画、景観地区、地区計画が定まっている又は定める地区で、それらを補完

する形で協定を締結する。 ・建築物や工作物の細部のデザイン、用途の制限などを補完する。 ・美化活動や事業活動のルールなどソフト面に関する取り決めを補完する。

〈留意事項〉 ・地域住民のまちづくりの取り決めに法的な効力を与える協定として、建築協定や

緑地協定があるが、これらの協定では工作物や屋外広告物、農用地などに関する

事項を定めることはできなかった。景観協定は、建築協定や緑地協定で定められ

る事項も含めて幅広い事項を対象にすることができるようになっている。良好な

景観形成のために協定で対応する場合には、景観協定の積極的な活用が望まれる。

景観協定 建築協定 緑地協定 根拠法 景観法 建築基準法 都市緑地法

適用区域 景観計画区域内 行政区域全域 都市計画区域内

制限 事項

・建築物の形態意匠、敷地、位置、規

模、構造、用途、建築設備 ・工作物の位置、規模、構造、用途、

形態意匠 ・樹林地などの保全、緑化 ・屋外広告物の表示、掲出物件の設置 ・農用地の保全・利用 ・その他

・敷地の 低面積 ・建築物の位置、構造、用途 ・建築物の形態、意匠 ・建築設備

・保全・植栽する樹木の種類 ・樹木などの保全・植栽する所 ・保全・設置する垣・柵の構造 ・その他緑地保全、緑化

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⑨景観協議会(景観法)

〈概 要〉 ・景観行政団体、公共施設管理者及び景観整備機構は、関係する団体や公益事業者、

住民などの関係者を加えて、良好な景観形成に向け協議を行う場となる景観協議

会を組織することができる。景観協議会で合意された事項は尊重義務が発生する。

〈活用イメージ〉 ・中心商店街において、景観行政団体、道路管理者、商店街組合、商工会、警察、

電気事業者、町内会などが参加して、建築行為の制限の細かな部分の運用、通り

の具体的なデザイン、通りを活用したイベントの開催などを協議する。 ・歴史的なまち並み地区において、景観行政団体、道路管理者、町内会、市民団体、

建築士会、観光協会などが参加して、建築行為の制限の細かな部分の運用、旧街

道の具体的なデザイン、景観重要建造物の活用方法、旧街道を活用した行事・祭

りの開催などを協議する。 ・体験観光に取り組んでいる農山漁村において、景観行政団体、町内会、JA、市

民団体、関連行政機関、観光協会などが参加して、景観作物や体験用の作物の共

同栽培の方法、生産基盤施設の修景、景観重要建造物に指定した古民家の活用な

どを協議する。 ・第二東名自動車道IC周辺など整備・開発が進む地区において、景観行政団体、

道路管理者、地権者、町内会などが参加して、沿道の建築物や屋外広告物の形態・

意匠の制限の細かな部分の運用、幹線道路や公園の具体的なデザインなどを協議

する。

〈留意事項〉 ・景観計画の策定前に、景観協議会と同様の構成員による任意の協議会を組織し、

景観計画案の検討などを行い、景観計画策定後、景観協議会へ移行することが考

えられる。 ・景観協議会は景観計画を定めた後に組織できるものであるが、法的に位置づけら

れた協議の仕組みとして、まちづくりの初動期からの活用も考えられる。 そこで、まず、行政区域全体についての景観計画を策定し、次に、景観形成の課

題を抱える地区において景観協議会を組織し、住民・事業者・行政の参画のもと、

当該地区の行為の制限などを検討する。その結果を踏まえ、景観計画を変更して

いく(景観計画区域に当該地区を設定し、地区内における行為制限を定める)と

いう策定プロセスも考えられる。

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第 2 部 市町における景観形成の推進

101

⑩景観整備機構(景観法)

〈概 要〉 ・景観行政団体が、地域で活動するNPO法人や公益法人を景観整備機構として指定

することができる。景観整備機構は、景観に関する住民の取組の支援、所有者との

協定による景観重要建造物や樹木の管理、景観重要建造物と一体となって良好な景

観を形成する公共施設に関する事業などの実施・参加などを行う。

〈活用イメージ〉 ・まちづくりセンターや住民活動の支援を行っているNPO法人などを指定し、住民

のまちづくり活動の支援業務を推進する。 ・建築士会や歴史・文化に関連する公益法人・NPO法人などを指定し、景観重要建

造物の管理、景観重要建造物と一体となった公園の整備などを進める。 ・自然や教育に関連するNPO法人、農業公社などを指定し、景観農業振興地域整備

計画の区域内において、耕作放棄地を活用した景観作物の栽培、棚田や急傾斜地の

茶園など良好な景観の田畑の管理などを推進する。

〈参考〉 静岡県における「景観法に規定する景観整備機構の指定等に関する規則」 ・各景観行政団体で規則を作成する際の参考とされたい。

(趣旨)

第1条 この規則は、景観法(平成16年法律第110号。以下「法」という。)第5章の規定による景観整備機構

(以下「機構」という。)の指定等に関し必要な事項を定めるものとする。

(指定の申請の様式等)

第2条 法第92条第1項の規定による指定を受けようとする者(以下「申請者」という。)は、様式第1号による

景観整備機構指定申請書に次に掲げる書類を添えて知事に提出しなければならない。

(1) 機構として行おうとする業務(以下「業務」という。)に関する計画書

(2) 定款又は寄附行為

(3) 登記事項証明書

(4) 法人の組織及び沿革を記載した書類

(5) 事業計画書

(6) 収支予算書

(7) 前各号に掲げるもののほか、知事が必要と認める書類

2 前項の書類の提出部数は、正本1部及び副本1部とする。

(指定の基準)

第3条 知事は、前条第1項の規定による申請書の提出があった場合において、申請者が次の各号に掲げる基準

のいずれにも該当すると認めるときは、当該申請者を機構として指定するものとする。

(1) 必要な人員の配置その他業務を適正に遂行するために必要な措置を講じていること。

(2) 業務を的確かつ円滑に遂行するために必要な経済的基礎を有すること。

(変更の届出の様式)

第4条 法第92条第3項の規定による変更の届出は、様式第2号による名称等変更届出書により行うものとする。

(業務の報告)

第5条 機構は、事業年度開始後速やかに、その事業年度の業務に関する計画書及び収支予算書を知事に提出し

なければならない。

2 機構は、事業年度終了後速やかに、その事業年度の業務に関する報告書及び収支決算書を知事に提出しなけ

ればならない。

(補則)

第6条 この規則に定めるもののほか、機構の指定等に関し必要な事項は、別に定める。

附 則

この規則は、公布の日から施行する。

参 考

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⑪景観行政団体独自の屋外広告物条例(屋外広告物法)

〈概 要〉 ・県は、屋外広告物条例の全部又は一部を制定する権限を景観行政団体である市町に

対して協議した上で移譲することができようになった。 ・景観計画に広告物の表示及び提出物件の設置に関する行為の制限に関する事項を定

めた場合は、これに即して条例を定める。

〈活用イメージ〉 ア.独自の基準の設定 ・県条例による適用除外の基準や普通規制地域の許可基準を、地域の状況にあわせ

て、より強化した設定とする。 ・例えば、普通規制地域である商業地域などについて、表示面積や高さの許可基準

を強化する。 ・併せて、適用除外となっている「地方公共団体が公共的目的により表示する広告

物、提出物件」について、表示面積や高さの基準を強化する。 イ.独自の地域の設定 ・県条例による特別規制地域、普通規制地域の指定区域を、地域の状況に合わせて

次のように再設定する。 ・第1種・第2種中高層住居専用地域を特別規制地域に指定する。 ・第1種特別規制地域となっている河川、湖沼、海岸などの地域を拡大する。 ・景観農業振興地域整備計画の対象区域となった良好な農山村の景観が維持されて

いる地域、別荘地、自然の中の観光施設が集積した地域、景観重要建造物・樹木

や景観重要公共施設の周辺地域などにおいて、新たに規制地域を指定する。 ・県条例の規制地域は、用途地域、主要建築物周辺、主要道路沿道・鉄道沿線、主

要河川・海岸沿岸、自然環境保全地域や保安林などに限られているが、規制地域

を行政区域全域に拡大する。 ・歴史的なまち並み地区や商店街などにおいて、新たに規制地域を指定し、屋外広

告物の位置や表示面積、色彩、素材などを統一・調和させる基準を設定し、良好

な屋外広告物の景観を形成する。(景観地区や景観協定などでの対応も考えられ

る)

〈留意事項〉 ・屋外広告物の規制・誘導は、景観計画の「屋外広告物の設置に関する行為の制限に

関する事項」に定めた上で、屋外広告物条例により行うことになる。 ・県条例による道路沿道及び鉄道沿線、河川沿岸などの地域指定は、複数の市町にわ

たるものである。景観行政団体による独自の条例の制定にあたっては、広域にわた

る地域指定への配慮が求められる。

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第 2 部 市町における景観形成の推進

103

⑫緑化地域(都市緑地法)

〈概 要〉 ・用途地域が指定されている区域において、敷地面積が一定の規模以上の建築物の新

築・増築を対象に、建築物・敷地の緑化率の 低限度を定める。

〈活用イメージ〉 写真はイメージ ・まちの中心の商業・業務地を指定し、建築物の壁面や屋根、公開空地などの緑化を

進める。 ・臨海部や山麓部の工業地を指定し、敷地外縁部の緑化やそれと一体となった広場や

園路の整備などを進める。 ・規模の大きい敷地が多い住宅地で緑の乏しい地域を指定し、建物の外回りや垣、駐

車スペースなどの緑化を進める。

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⑬緑地保全地域(都市緑地法)

〈概 要〉 ・都市近郊の比較的大規模な緑地などにおいて、比較的緩やかな行為の規制・誘導に

より、一定の土地利用との調和を図りながら緑地を保全する。

〈活用イメージ〉 写真はイメージ ・市街地の外縁に位置し、都市の景観にまとまりを与えている斜面の緑地を指定する。 ・市街地の内部に位置し、まちのランドマークとなっている比較的大規模な里山を指

定する。

〈留意事項〉 ・都市計画の地域地区として県が定めるものであり、県と連携しつつ地域指定を目指

していく必要がある。

⑭文化的景観(文化財保護法)

〈概 要〉 ・地域における生活や生業及び風土により形成された文化的景観を文化財として位置

づける。特に重要なものは文部科学大臣が重要文化的景観として選定し、滅失した

場合や変更などをしようとする場合には届出が必要となる。

〈活用イメージ〉 ・次に示すような景観を単独または複数組み合わせて文化的景観に指定する。

・棚田、茶園、放牧地などの農耕・放牧に関する景観 ・防風林、用材林であるスギ・ヒノキ林などの森林の利用に関する景観 ・養殖いかだ、海苔ひびなどの漁ろうに関する景観 ・茶園の中のため池、街なかの水路や農村の水路、漁港など水の利用に関する景観 ・槙の生垣や屋敷林などの居住に関する景観 ・東海道や秋葉道など流通・往来に関する景観 ・工場群、鉱山・採石場などの製造・採掘に関する景観

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第 2 部 市町における景観形成の推進

105

(3)景観条例(自主条例)から景観法への移行イメージ

静岡県内では、現在8つの市において景観条例(自主条例)が制定されているが、景観形

成地区指定や景観協定、大規模建築物などの規制・誘導、重要建造物の指定などは、景観法

に類似の方策が位置づけられている。一方で、助成や審議会など自主条例独自の方策もある。 景観法を活用することで、自主条例に位置づけられている方策に法的効力を与えることが

できることから、本県では景観法に基づく措置へ移行することを勧めている。 ここでは、自主条例に位置づけられている方策の景観法への移行イメージを示す。

1)景観法への移行の全体的なイメージ ・景観計画では、制限内容の一部などを条例に委任することができるようになっており、委

任に係る事項を条例に位置づけるようにする。 ・自主条例の方策で景観法に移行する事項は、自主条例から削除するようにする。ただし、

自主条例に基づく地区指定や重要建造物指定などを行っている場合は、景観法への移行に

ついて住民や所有者の同意を得ることが求められる。 ・助成や審議会など、景観法にはない市町独自の方策は、引き続き自主条例で位置づけてい

く。

・上記の点を踏まえ、景観法委任条例と自主条例を一体化した景観条例を制定することが想

定される。その際、委任事項と自主的な事項が混在するため、委任部分を明快に示すこと

に配慮するようにする。

2)自主条例に位置づけられている個別方策の移行イメージ ・自主条例に位置づけられている個別の方策について、景観法への移行のイメージを次ペー

ジに整理する。

3)合併市における対応 ・合併市町に自主条例を制定していた旧市町村が含まれる場合には、新市町としての景観条

例を制定し、景観形成方策の体系を再構築することが必要である。 ・その際には、景観法の積極的活用が求められるとともに、自主条例にあった住民活動支援

などの独自の方策を新市町で全面展開させていくことが望まれる。 ・景観計画の策定においては、自主条例の制定を始め景観行政に取り組んでいた旧市町村の

区域を先行させ、その他の旧市町村の区域は地域住民の景観への理解を踏まえながら進め

ていくといったプロセスをとることも考えられる。

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〈表:自主条例に位置づけられている個別方策の移行イメージ〉

自主条例の方策 移行イメージ

景観基本計画 ①景観計画区域を行政区域全域とする場合は、景観計画の景観形成指針部分

に移行。 ②景観計画区域を行政区域の一部とする場合は、自主条例の方策として継続

し、景観基本計画の一部を景観計画の景観形成指針部分に反映。 景観形成地区 指定

①規制・誘導を強化するため、景観計画(行為制限)に移行し、助言指導か

ら勧告による対応に切り替える。 ②積極的に景観形成を図る地区や合意が円滑に形成できる地区などがある場

合は、景観地区に指定。 景観協定 ・景観法に基づく協定に移行。

・自主条例の景観協定に伴う方策である推進団体・協議会の認定は継続し、

計画策定などへの助成を行い、景観法に基づく景観協定の締結につなげて

いくことが考えられる。 大規模建築物な

どの規制・誘導 ・規制・誘導を強化するため、景観計画(行為制限)に移行し、助言指導か

ら勧告による対応に切り替える。 重要建造物 重要樹木

①建築基準法の特例や税制による支援のある景観法の景観重要建造物・樹木

に移行。 ②変更行為が届出制である自主条例の仕組みを継続。地権者の理解が得られ

たものは、景観法に基づく重要建造物など(変更行為が許可制)に指定。 ・特定地域の指定の方策は、上記の「大規模建築物などの規制・誘導」と同

様の対応。

景観法に類似する方策

水や緑の 景観形成

・水や緑の保全の協力要請は、自主条例の方策として継続。

・景観形成重点事業指定(熱海、伊東市)は、自主条例の方策として継続。 景観形成 重点事業 ・景観形成地区・協定地区内の公共施設の景観整備(静岡、浜松、富士宮市)

は、景観法の景観地区、景観協定に適用する方策として、自主条例に位置

づけ直す。また、その区域の中の主要な公共施設を景観重要公共施設に指

定することが考えられる。 助成 ・景観法の景観重要建造物・樹木の所有者も対象に含めて、方策を継続。 表彰など ・独自の方策として継続。 審議会 ・独自の方策として継続。

・景観計画の作成・変更、景観計画に基づく届出対象行為に対する勧告・変

更命令の検討、景観重要公共建造物・樹木の指定の検討、景観地区などの

認定の手続きなどにあたり、審議会を活用することが考えられる。(条例に

おいて、景観計画の策定手続きや景観地区の認定手続きなどに景観審議会

による審議を付加することが考えられる)

独自の方策

活動団体認定 ・独自の方策として継続。 認定団体は、景観計画策定などの提案ができる団体として位置づける。

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第 2 部 市町における景観形成の推進

107

(4)住民などの景観形成活動を支援する自主方策

ここでは、住民や事業者の主体的な景観形成活動を支援するために、市町が自主的に実施

することが考えられる方策を整理する。支援方策は、景観関連などの自主条例に位置づけ、

積極的に推進していくことが考えられる。 面的な景観の規制・誘導や公共施設の修景と、住民の主体的な活動を連携させ、より良好

な景観を形成していくことが望まれる。

分類 方策イメージ

景観点検 景観宝探し

複数の住民でまちを歩き、良好な景観や好ましくない景観

を発掘・点検し、地図にまとめるイベントなどを開催 景観コンテスト 景観写真やまちの地図作りなどのコンテストを開催 景観教育 小中学校・市町・専門家の連携により、子どもを対象に、

まち歩きやまちの模型づくりなどを行う授業を開催

意識づくり

景観便り 景観計画の策定などにあわせて、広報やホームページなど

に景観のコーナーを確保し、まちの景観、計画策定の状況、

担当職員などを紹介 バンク制度・

オーナー制度 森林や棚田などの管理をお願いしたいと思っている所有

者と活動場所を探している市民団体・ボランティアなどを

斡旋

ボランティアや 場所の斡旋

アダプト制度 河川や道路の各区間や公園などにおいて、希望する住民、

市民団体、事業者が里親になり、清掃や美化、樹木の維持・

管理などを行う 広葉樹苗木支給 景観上重要な森林の区域において、季節の感じられる景観

とするために、広葉樹の苗木を支給 森林管理機器貸出 森林管理に必要な樹木粉砕機、チェーンソー、炭焼機など

を貸出

材料の支給など

景観作物種苗支給 耕作放棄地などに蒔く景観作物の種を支給 景観重要建造物・

樹木管理費助成 景観法や自主条例などにより指定された景観重要建造

物・樹木の所有者に管理費などの助成 景観重要建造物

固定資産税軽減措置

景観法や自主条例などにより指定された景観重要建造物

に係る固定資産税の軽減措置 生垣設置助成 緑豊かな市街地や集落とするため、生垣設置に対し助成 商店街環境整備助成 街灯や歩道などの修景、統一デザインの看板の設置などに

対し助成 色彩変更等助成 景観上重要な地区において、周辺の自然景観やまち並みに

調和した建築物とするために、建築物の外壁の色彩変更な

どに対し助成

資源保存や 修景への助成 など

煙突撤去助成 使用していない煙突の撤去に対し助成

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分類 方策イメージ

広場整備助成 空き地などを利用した広場の整備への助成

景観コンペ 地区の景観を向上させる市民団体などの活動の提案を募

集し、優秀な提案に対し活動費を助成

資源保存や 修景への助成 など

まちづくり基金 住民、企業、市町からの資金による景観形成をはじめとし

たまちづくりのための基金を創設し、市民団体などの活動

に対し助成 計画づくりへの

助成 計画作成助成 景観計画や景観地区、景観協定などの住民案づくりを目的

とした市民団体などの活動に対し助成 アドバイザー派遣 活動の進め方や計画作成に悩んでいる市民団体などに対

し、専門家を派遣(団体への事前ヒアリングによる、ニー

ズに合ったアドバイザーの派遣)

アドバイス

まちづくりセンター まちづくりセンターを設置し、情報の提供や活動へのアド

バイスなどを行う 表彰 景観賞 住民、事業者、市民団体などの活動により形成された良好

な景観の表彰・PR

参考:景観整備機構

-景観整備機構について

・景観整備機構とは、良好な景観の形成に関する専門家の派遣や相談その他援助業務などを行な

う公益法人又はNPO法人で、景観行政団体が景観法に基づき指定するものです。

-静岡県建築士会が景観整備機構に

・静岡県は、平成 18 年 2 月 17 日に「社団法人静岡

県建築士会」を景観整備機構として指定しました。

・全国で 6 番目、東海地域では初の景観整備機構とな

ります。

・静岡県建築士会は、今後、「景観まちづくりに対する

提案」や「地域住民による景観まちづくり活動への

専門家の派遣」などに取り組んでいく予定です。

景観整備機構指定書交付式

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第 2 部 市町における景観形成の推進

109

第4章 ケース別の景観形成方策の活用イメージ

・静岡県の各地域の景観特性や景観に係る課題などを踏まえ、以下の9ケースを想定

し、各ケースに対応した景観形成の主要な方策の活用イメージを示す。

・各市町が、地域の景観の特性や景観形成の課題に対応して、景観法などの活用を検

討する際の参考書として活用いただきたい。また、活用にあたっては、第2部第3

章「景観形成の主要方策」「景観法などの活用イメージ」を合わせてご覧いただき

たい。

〈9つのケース〉

①ランドマークとなっている富士山などの眺望を守り活かす(山地など) ・景観計画 ・屋外広告物条例 ・市町村森林整備計画の特例

②都市にうるおいを与える里山の景観を守る(市街地縁辺の緑地) ・緑地保全地域 ・市民緑地制度 ・里山保全体制整備

③茶園などの景観を守り活かす(農山村地域) ・景観農業振興地域整備計画 ・景観重要建造物 ・景観協定 ④地域のシンボルとなっている河川の景観を守る(河川及び沿川地域) ・景観重要公共施設 ・アダプト制度 ・景観協議会

⑤落ち着いた住宅地の景観を保つ(住宅地域) ・景観地区 ・まちづくり活動支援方策 など ⑥美しい駅前・商店街の景観をつくる(駅前、商店街地域) ・屋外広告物条例 ・景観重要公共施設 など ⑦周辺と調和した工業地の景観をつくる(工業地域) ・景観計画 ・緑化地域 ・緑地協定 ・景観重要公共施設 ・景観協議会 ⑧インターチェンジ周辺に新たな都市景観をつくる(IC周辺地域) ・景観重要公共施設 ・景観計画 屋外広告物条例 など ⑨旧東海道などのまち並み景観を守る(歴史的なまち並み地域) ・景観重要建造物 ・景観計画 ・景観協定 ・景観協議会

〈活用イメージの見方〉

1)想定する地域の概況 :地域の景観、土地利用や開発・建築、市町や住民の取組の状況

を想定し、示している。 2)想定する地域の特定課題:想定した地域において考えられる問題のうち、特に対応が求め

られるものを示している。 3)方策の活用イメージ :想定した特定課題を解決するため、景観法などの活用イメージ

や参考事例を示している。あわせて、景観に係る様々な取組を

紹介する。 内は事例 内は様々な取組の紹介

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(1)ランドマー クと なって いる 富士 山な どの 眺望 を守 り 活かす ( 山地 など )

1)想定する地域の概況 写真はイメージ

・まちに、特徴的な形を有しており、他と比べて標高の高い山がある。市街地から眺

めることができ、まちのランドマークとなっている。 ・山頂及び山麓部にお宮があり、古くから地域の人々の信仰の対象として崇められて

きている。 ・山麓部などは、集落が近く、道路が整備されていることから造林が進んでおり、ス

ギ・ヒノキの森林景観が形成されている。

2)想定する地域の特定課題 ・都市化の進展により大規模な建築物や屋外広告物の設置が進む中で、良好な眺望場

が失われつつある。また、前景の市街地の景観が乱雑になることで、眺望全体が悪

化している。 市街地から眺望できる山の景観を保全し、活かしていくために、市街地などにおけ

る建築行為などの規制・誘導が求められる。 ・山麓部などに広がるスギ・ヒノキ林は、管理者の高齢化などにより放置され、荒れ

た暗い森林となっている。山に近い市街地からはその森林の様子を眺めることがで

きるが、その自然植生の単調さと相まって、良好な景観とはいえない状況である。 山麓部などの森林景観を良好なものにするために、森林の維持・管理を推進する必

要があるが、その際には景観に配慮した森林施業が求められる。

3)方策の活用イメージ

①良好な眺望景観の保全に配慮した建築物の形態・意匠などの規制・誘導

A.山の前景である

市街地において、

眺望に大きな影響

を与える大規模な

建築物などの形

態・意匠を制限 C.良好な眺望場からの

眺望を保全するため、

眺望場と主対象の間

の区域の建築物、屋外

広告物などの高さ、形

態・意匠を制限

ランドマークと

なっている山

B.山の前景である市街

地において、眺望に大

きな影響を与える屋

外広告物の高さや大

きさを制限

眺望場

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第 2 部 市町における景観形成の推進

111

A.景観計画による大規模建築物の形態・意匠などの規制・誘導

・山の眺望の前景である市街地などにおいて、景観上影響の大きい大規模な建築物が

周囲と調和していない形態・意匠であると、良好な眺望景観を阻害してしまう恐れ

がある。景観法を活用して、行政区域全域を景観計画区域に設定し、大規模な建築

などの行為※1を届出の対象にし、景観形成基準※2を設けて、建築物の形態・意匠

などを規制・誘導する。

※1 大規模な建築などの行為のイメージ

市町の土地利用事業指導要綱や過去の大規模開発・建築の状況などを踏まえ設定。

・高さが、商業・工業系用途地域で 15m、住居系用途地域・その他の地域で 10

mを超える建築物・工作物

・延べ面積が 1,000㎡を超える建築物

・1haを超える開発行為

※2 景観形成の主要な基準のイメージ

B.景観行政団体の独自の屋外広告物条例による規制・誘導の強化 ・高さのある、あるいは表示面積の大きい屋外広告物が良好な眺望景観を阻害するこ

とが考えられる。県などの関係機関と協議の上、景観行政団体による屋外広告物条

例を制定し、これまでの県条例より高さ・面積などを抑えた独自の許可基準※3を

設定する。

※3 主要な許可基準のイメージ

許可基準のイメージ(特別規制地域はこれまで通り) 項目

第1種普通規制地域 第2種普通規制地域

野立て ・高さは、広告塔は地上 15m以下、広告板は地上 5m以下

・表示面積の合計は、20㎡以内

屋上設置 ・高さは、建築物の高さの 1/3

以下で、かつ、10m以下

・高さは、建築物の高さの 1/2

以下で、かつ、12m以下

3mを超える盛土高・切土高が

発生する場合は、法面または

擁壁を緑化するようにする

土地の形質の大幅な変更による後背の自然

景観との不調和を抑えるため、長大な法面

または擁壁を生じないように配慮する

建築設備を屋上に設置する

場合は、外部から見えにくい

位置に設置する、あるいは、

ルーバーなどにより目隠し

をするなど、修景に配慮する

屋根や壁面などの

色彩は、後背の自

然景観との調和に

配慮し、原色を基

調色として用いる

ことは避けるよう

にする

市街地からの山の眺望を

著しく遮らないように、建

築物などの位置、高さ、幅

などに配慮する

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112

C.景観計画による、良好な眺望の得られる地区における建築物の規制・誘導の強化 ・より印象的な眺望の得られる場の確保が重要であり、自主条例に山の眺望場指定の

方策を位置づける。多くの住民の参画を得て、眺望場の調査を実施し、住民共有の

財産としたい眺望場と眺望を発見し、指定を行う。市町は、指定した眺望場の整備

を行う。

・指定した眺望場の内、○○神社及び○○橋は、大規模な建築物の建築などにより、

良好な眺望が損なわれる可能性が高い。この眺望を保全するため、眺望場と眺望の

主対象である山の間の市街地の区域※4において、前述のAの景観計画とは別の景

観計画区域を設定し、建築物や屋外広告物などの高さや形態・意匠を規制・誘導※

5する。CGやフォト・モンタージュなどのシミュレーションを適宜用いて、眺望

保全の必要性や制限内容の合意形成を図るようにする。

※4 区域設定のイメージ

・保全する眺望の範囲を設定し、眺望場とその範囲を結ぶ空間の平面投影図を制限対

象の区域とする。

※5 景観形成の主要な基準のイメージ

主要な基準のイメージ 項目

○○神社周辺地区 ○○橋周辺地区

高さ ・建築物などは、境内地からの神

社本殿の屋根越しの山の眺望を

阻害にしない高さとし、眺望場

からXmのエリアでは高さの

高限度をYmする。

・橋からの山の眺望を保全するた

め、建築物などは、眺望場と山

の標高 1,000mラインを結ぶ線

を超えない高さとし、眺望場か

らXmのエリアでは高さの 高

限度をYmする。

形態・意匠 ・屋根や壁面などの色彩は、後背の自然景観との調和に配慮し、低彩

度、低明度の色彩とし、原色は避けるものとする。

・屋上への建築設備の設置は極力避けるようにする。設置する場合は、

眺望場から見えにくい場所に設置するものとし、ルーバーなどで目

隠しを行うようにする。

・屋上への屋外広告物の設置は制限する。屋外広告物の色彩は原色を

基調色として使用することを避ける。

保全する眺望の範囲

眺望場規制対象の区域

保全する眺望の範囲

1000m

○ ×○

眺望場

ランドマークの山

○ ×

眺望場

ランドマークの山

鳥居

本殿

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第 2 部 市町における景観形成の推進

113

眺望の保全

盛岡市 都市景観形成ガイドライン及び都市景観形成建築指導要綱

-取組の経過

・盛岡市では、市街地の高層化が進む中で、街な

かから、まちの象徴である岩手山が眺められな

くなってきていた。

・市民の環境や景観への意識の高まりの中、眺望

の確保などのため、市で都市景観形成ガイドラ

イン及び都市景観形成建築指導要綱をつくり、

建築物の形態・意匠の規制・誘導を行っている。

-山並みの眺望の保全の仕組み

・ガイドラインに、山並み眺望確保の領域が設定

されている。(岩手公園から岩手山、岩手山か

ら南昌山、開運橋から岩手山、字橋から愛宕山)

・領域では、眺望場から 200mずつ区分され、

各々の高さ制限の基準が設定されている。

眺望領域図

高さ制限基準の断面図

②山麓部などにおける景観に配慮した森林施業の推進

-市町村森林整備計画の変更による伐採・造林などの誘導 ・ランドマークである山に近い市街地から眺望できる山麓部などの森林景観を向上さ

せるために、市町村森林整備計画の変更により、景観に配慮した伐採・造林などの

方法※6を定めるようにする。

※6 市町村森林整備計画に定める主要な事項のイメージ

項目 主要事項のイメージ

立木竹の伐採に

関する事項

・○○区域は市街地から眺望できる森林であるため、大面積の伐

採は避け、細分・分散して実施するように努める。

・景観木として残してあったサクラやモミジは、景観のアクセン

トして保存に努める。

・樹高 15mまたは地上 1.3mの高さで幹回りが 2m以上を超える

樹木は景観に良好な変化を与えていることから、保存に努め

る。

造林に

関する事項

・人工的なイメージを抑えるために、地形に合わせた変化のある

造林区域を設定する。

・森林内の散策道の沿道、休憩所、眺望場の周辺において、森林

景観の良好な変化を創出するために、サクラやモミジなどの落

葉広葉樹の単木を植樹するようにする。

事 例

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114

項目 主要事項のイメージ

その他

森林整備に

関する事項

・枯木や枯枝など景観阻害要因の除却を行う。

・名所旧跡周辺の森林は、維持・管理を強化するとともに、散策

道を整備する。

・森林内の眺望場からランドマークの山の眺望を確保するため

に、眺望場周辺の森林の適切な管理を行い、眺望を遮らないよ

うにする。

景観に配慮した伐採・造林

日光森林管理署の取組

-取組の概要

・栃木県の日塩もみじライン沿道は、日光国立公

園の第2種特別地域に指定されており、多くの

人が景観を楽しむために訪れている。

・日光森林管理署では、平成 13 年度から本格的

に日塩もみじライン沿道の森林の景観づくり

の事業に着手している。

森林景観の活用

森林セラピーロード

-取組の概要 ・森林セラピーとは、森の風景や香りなどから森

の命や力を感ずることによって、人間の心身に

元気を取り戻させようとするものである。 ・森林セラピー協議会では、推進の一環としてセ

ラピーロードの認定を行っている。県内では、

伊東市伊東大川沿いの山林道、河津町の佐ヶ野

川上流の散策道において認定の申請が出され

ている。

眺望場前景

の森林景観

の修景

眺望場の整備

沿道の森林

景観の修景

事 例

事 例

出典:森林の公益的機能を重視した森林管理について

(林野庁、日光森林管理署)

出典:森林セラピー研究会ホームページ

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第 2 部 市町における景観形成の推進

115

(2)都市にうるおいを与える里山の景観を守る(市街地縁辺の緑地)

1)想定する地域の概況 写真はイメージ

・市街地の縁辺部にある低山地の山麓部に、竹林や雑木林、スギ・ヒノキ林、畑など

が混在している地域がある。 ・それらの里山が市街地の視覚的なまとまりをつくっており、市街地の背景としてう

るおいのある地方都市の景観を形成している。 ・尾根には散策路が整備され、住民の健康増進や憩いの場として利用されている。 ・大半の土地所有者は、高齢や地域外への転居などを理由に、里山の管理を行ってお

らず、竹林の増殖やスギ・ヒノキ林の荒廃などがみられる。 ・里山地域は、未線引きの白地地域であり、住宅や別荘の建設がまばらにみられる。

2)想定する地域の特定課題 ・うるおいのある市街地の景観を保全していくために、里山地域における開発・建築

行為の規制・誘導を行うことが求められる。 ・建築行為などの規制・誘導が行われても、里山の管理が十分に行われないと、景観

は悪化する。良好な里山景観の維持・管理を進めるための体制づくりが求められる。

さらには、住民が里山に触れることのできる空間を設けることが望まれる。

3)方策の活用イメージ

①里山地域の開発・建築の規制・誘導

A.緑地保全地域(都市緑地法)による建築・開発の規制・誘導 ・当該地域は、良好な自然景観を有しているが、保存価値の高い植生、歴史資源や地

域の伝承と結びついた緑地は存在しておらず、現状凍結的な保全は必要とされてい

ない。また、市街地が広いとはいえない中で、里山地域においてある程度の土地利

用を許容していくことが求められている。 ・このような状況の中、地権者や住民の参画のもと、当該地域の今後の土地利用や緑

地保全の方向性を検討する。その結果を踏まえ、緑の基本計画において、里山を緑

の軸とし、保全施策として緑地保全地域を位置づける。その上で、県と市町の連携

の下で当該地域を緑地保全地域に指定し、開発・建築行為の規制・誘導と緑地の保

全措置※1を進める。 ・保全措置は、風致地区の許可基準を参考に、それより厳しい基準とする方向で検討

することや、これまでの開発・建築行為と自然景観の保全の状況の関係などを踏ま

えて検討することが考えられる。

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116

※1 行為制限の主要な基準のイメージ

②里山の維持・管理体制の整備

A.市民団体による里山保全活動の推進体制の整備 ・自然志向の高まりや団塊世代の退職などに伴い、自然環境の保護を目的とした市民

団体が増えている。そのような団体と里山の維持・管理が行えない土地所有者を結

びつけ、里山の保全を進める仕組み※2をつくる。

・さらに、里山の土地所有者と市民団体、竹関連の業者との連携により、竹の活用方

法や製品の研究・開発を行う。

市民団体による里山保全

佐鳴湖里山楽校

-活動の概要

・浜松市佐鳴湖畔の雑木林、湿地帯の環境の保全

と復元を図るために、地区住民などからなる

「佐鳴湖里山楽校」を平成 11 年に設立し、浜

松城北工業高校や地元の児童生徒、市民の参加

を得ながら、活動を進めている。

-活動内容

・繁殖した竹の伐採

・伐採した竹を材料とした竹炭づくり

・落葉広葉樹や照葉樹の苗木の植樹

・田んぼの復元と稲作、あぜと水路の補修

・植物や動物、昆虫などの観察会の開催

事 例

樹高が 10mを超える落

葉広葉樹は、極力保存

に努める

周辺の緑と調和するよ

うに、土地の造成にお

ける緑被率は10分の 6

以上とする

建築物が接する地盤面の

高低差は、6m以下とする

周辺の緑と調和するよう

に、垣・柵を設置する場合

は、生垣とする

屋外広告物の設置はでき

ないものとする

周辺の緑と調和するよ

うに、屋根、壁面の色

彩は、彩度の低い茶系、

緑系、灰色とする

周辺の樹木の高さを超え

ないように、建築物の高さ

の 高限度は 8m以下と

する

敷地における庭などの空

地を多く確保するため、建

築物の建ぺい率は 10 分の

2 以下とする

木竹の皆伐は、伐採区域の

面積を 0.5ha 以下とし、伐

採後の成林は確実に行う

ものとする

出典:活動パンフレット、ホームページ

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第 2 部 市町における景観形成の推進

117

※2 市民団体による里山保全活動を進める仕組みのイメージ

①里山の管理をお願いしたい土地所有者

を募集

②利用できる里山の情報を発信

③市民団体が市町に里山の利用を申込

④市町が地権者に市民団体を紹介

⑤土地所有者と市民団体で、利用につい

ての協定を締結

⑥市町は、協定を審査し認定

市民団体による里山保全の仕組み

横浜市森づくりボランティア団体育成・支援要綱

-要綱制定の背景

・横浜市は、「緑の環境をつくり育てる条例」に

基づく「市民の森」などの指定や公園の整備に

より、緑地の量的・面的な確保を進めている。

・指定した緑地の中には、所有者の高齢化などに

より管理が行き届かなくなった私有緑地があ

り、市所有の緑地や公園内の樹林地においても

人の手を必要としているところが増えている。

・一方、緑地の保全に関わりたいという市民も増

えており、近年、市民団体から市民の森や公園

内の樹林地などで活動したいという相談が市

に寄せられている。

・このような中、市民と緑地をつなげる仕組みと

して「横浜市森づくりボランティア団体育成・

支援要綱」が平成 14 年に定められた。

-対象者の基準

・緑地の保全を行う団体

・規約、組織が明確である団体

・活動の目的や内容が非営利である団体

・5名以上の構成員がいる団体

-対象地

・公園の既存樹林地

・市有緑地

・市民の森(市民の憩いの場として利用可能な区

域を土地所有者の同意を得て指定している樹

林地)

・緑地保全地区(都市緑地保全法に基づく地区)

-活動を承認する範囲

・草刈り、間伐、倒木の処理などの管理活動、発

生材の活用

・清掃及び美化活動、マナー啓発活動

・生態系の維持に関わる活動

-団体の遵守事項

・事前に活動計画書を出し、活動終了後速やかに

報告書を提出

・活動時間は原則日の出から日の入りまで

・活動に際しては保険に加入すること

-活動の手順

①市に森づくりボランティア団体として登録

②活動を行うときに活動承認を市に申請

③市有緑地などの管理者、土地所有者などから同

意を得た上で、市が活動を承認(活動の承認期

間は1年間)

里山の土地所有者 市民団体

市 町

募集 申込

協定締結

申し出 情報 発信

認定申請紹介 ①

② ③④

事 例

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118

③里山に親しむことのできる空間の整備

A.緑地保全地域における施設の整備 ・緑地保全地域において、「緑地保全計画」の「緑地の保全に関連して必要とされる施

設の整備に関する事項」として、散策路の整備、良好な市街地の眺望が得られる地

点における休憩施設の整備を定め、緑地環境整備総合支援事業(国の補助事業)な

どを活用し、整備を実施する。

B.市民緑地制度(都市緑地法)の活用 ・散策路の沿道に、住民が自由に出入りでき、里山の自然に触れることのできる緑地

を確保するため、市民緑地制度を活用する。

・土地所有者と市町の間で市民緑地契約を締結し、市町で緑地の維持・管理(市民団

体に管理委託)、園路、休憩施設、林間広場の整備などを進める。

市民緑地制度

東京都世田谷区 市民緑地制度

-指定されている市民緑地

喜多見五丁目竹山市民緑地

・区立公園に接する、

約 3000 ㎡の広大

な孟宗竹の竹林

北烏山九丁目屋敷林市民緑地

・約 56 種 571 本の樹林と様々な草花がみられ

る屋敷林

成城三丁目なかんだの坂市民緑地

・国分寺崖線上の孟宗竹に囲まれた樹林

・開放前後に住民参加

のワ ークショッ プ

を開催し、竹垣づく

り、園路補修、間伐、

イベ ントなどを 行

っている

成城三丁目こもれびの庭市民緑地

・住民からの「近代建築のある洋風庭園をいつま

でも残したい」という声を受けて、所有者の同

意のもと、市民緑地契約を締結

・昔の成城の風景を伝

え残す貴重な建 築

物と合わせ、多数の

植栽を施しウッ ド

チップの園路を 整

-市民緑地の管理

・緑地所有者と「緑地管理機構」の指定を受けた

「財団法人せたがやトラスト協会」が市民緑地

契約を結び、協会が緑地の管理を行っている。

・せたがやトラスト協会は、区の緑や歴史的・文

化的環境を保全するため、市民緑地契約締結の

ほか、ボランティア育成、緑化活動支援などを

行っている。

事 例

出典:せたがやトラスト協会ホームページ

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第 2 部 市町における景観形成の推進

119

県立森林公園

・静岡県立森林公園は、浜松市の中心に位置し、天

竜奥三河国定公園に属し、アカマツの天然林をは

じめとして四季を通じた豊かな自然が楽しめる公

園である。

・ジョギングや自然散策など利用者のニーズに合わ

せて、様々なコース設定が可能となるよう、数多

くの遊歩道や散策道が整備されている。

・平成 17 年度に新たに公園管理計画を策定し、自

然の植生を活かしながら利用目的に応じた管理手

法を採用している。

〈県立森林公園のゾーン別管理計画〉

ゾーン 森林植生 利用形態 管理方法

野鳥の森 広葉樹林 自然観察 植生保護を目的として、10 年に 1 回程度、下刈り、

除伐を実施

自然観察の森 アカマツ林 自然観察 アカマツ保護を目的として、適切な防虫と、3 年に

1 回程度、除伐、下刈り、ご掻きを実施

里山の森

昆虫の森 コナラ林 昆虫観察

いろどりの森 広葉樹林 自然散策

県民の利用を目的として、1 年~3 年に 1 回程度、

除伐、下刈りを実施

わんぱくの森 アカマツ林 森林

レ ク リ エ ー シ ョ ン

アカマツ保護と森林利用を目的として、適切な防虫

と、5 年に 1 回程度、中高木の除伐、下刈りを実施

アカマツ林 同上

スギ・ヒノキ林 自然体験学習

10 年に 1 回程度、除間伐を実施 学びの森

展示林、見本林 試験研究 試験研究を目的として、5年から 10年に 1 回程度、

下刈り、間伐を実施

環境保全の森 広葉樹林 環境保全 自然の遷移に任せ、10 年に 1 回程度必要に応じ下

刈り、除伐を実施

景観に係る様々な取組の紹介

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(3)茶園などの景観を守り活かす(農山村地域)

1)想定する地域の概況 写真はイメージ

・都市計画区域外で農業振興地域内の中山間地域にある農山村であり、山地斜面など

に茶園が分布し、河川沿川には水田が広がり、山麓部に集落が形成されている。 ・人口減少や住民の高齢化が進む中で、急傾斜地など営農条件の厳しい茶園から耕作

が放棄され始めている。また、集落は、古民家などもみられるが、所有者は地域外

に転居し、空き家となっているものもある。 ・地域の中心に農産物直売所と食堂が整備されており、週末には都市部から人々が余

暇・観光に訪れてくる。ただ、開業後数年が経ち、来訪者は減少の傾向にある。

2)想定する地域の特定課題 ・耕作放棄されている茶園、空き家となっている古民家など地域資源を活用し、来訪

者が農山村に直に触れることのできる空間を設けて、人々でにぎわう景観を取り戻

すとともに、茶園や古民家などの重要な景観資源を保全していくことが求められる。 ・人工物である農業生産基盤施設や近代化施設、近代住宅などにより、農山村の美し

さが半減してしまっているところがある。今後の施設整備や住宅建築にあたっては、

農地や周囲の自然の景観との調和に配慮することが求められる。

3)方策の活用イメージ

①景観資源の保全と交流の場としての活用

A.景観農業振興地域整備計画による、良好な茶園景観の維持と耕作放棄地の活用 ・山地の急斜面に石垣積みでつくられている茶園は景観的に優れているものの、営農

者が高齢となり、耕作放棄地となっている区域がある。この茶園を都市住民の農業

体験の場として活用するようにする。 ・活用を推進するために、景観農業振興地域整備計画の「景観と調和のとれた土地の

農業上の利用に関する事項」「農用地等の保全に関する事項」に、茶園の保全と活用

に関する事項※1を定める。

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第 2 部 市町における景観形成の推進

121

※1 景観農業振興地域整備計画に定める主要な事項のイメージ

・景観を特徴づけている石積みを保全するため、現在の形状の変更を禁止する。

補修にあたってはモルタルなどの充填材を用いないこととする。

・農産物直売所などの運営を受託している地域組織が、管理困難となった茶園に

おいて、年間を通した施肥、防除、草刈りなどの作業を受託する。

・都市住民の農業体験として、すげ笠・たすきの格好で2番茶から4番茶の摘採、

手揉みを行う。地域組織が指導を行い、参加人数は目の届く 30名程度とする。

耕作放棄地の活用

松崎町石部赤根田村「百笑の里」棚田オーナー制度

-経緯

・平成 11 年度に「石部地区棚田保全推進委員会」

が組織され、「しずおか棚田くらぶ」の支援を

得て、都市住民との協働による荒廃した田の復

旧、田植えや稲刈りなどの管理作業を実施して

きた。

・平成 13 年度には、「ふるさと水と土ふれあい

事業」により、農道や水車小屋、交流棟など、

都市住民受け入れのための施設を整備した。

・平成 14 年度から、一歩進んだ交流形態の「棚

田オーナー制度」を導入した。

-制度の概要

・実施主体:松崎町棚田保全推進委員会

・オーナー会員:約 100 ㎡の区画で栽培・管理

を体験。収穫した米 20 ㎏を受け取る

・トラスト会員:棚田保全に賛同する人で、イベ

ント、作業体験に参加。米 5 ㎏を受け取る

B.景観重要建造物指定による空き家の活用と良好な集落景観の維持 ・空き家となっている古民家は荒廃が進んでいるが、良好な農山村の景観の重要な一

要素であり、地域の歴史を伝える建築物でもあることから、景観重要建造物に指定

し、保存を図る。 ・所有者は地域外に住んでおり、高齢であるため、自ら維持・管理を行うことは困難

であることから、所有者と景観行政団体である市町の間で管理協定を締結する。 ・都市住民の茶摘体験と連携させて、古民家を茶業や茶摘に関するガイダンス、茶業

に関する道具や文献などの展示、茶名人による試飲、体験者の休憩・宿泊の場とし

て活用する。利用方法についても所有者と景観行政団体の間で協定を締結する。

②美しい農山村景観の形成

A.景観農業振興地域整備計画による農業生産基盤施設、近代化施設の修景 ・今後、農業農村整備事業が予定されている中、茶園や周囲の自然の景観に調和した

整備を推進するため、景観農業振興地域整備計画の「農業生産の基盤の整備及び開

発に関する事項」「農業の近代化のための施設の整備に関する事項」において、景観

上必要な事項※2を定める。

事 例

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122

※2 景観農業振興地域整備計画に定める主要な事項のイメージ

項目 主要事項のイメージ

・○○地区の農道整備にあたっては次の点に配慮する。

・周囲の地形に調和するように、農道の整備に伴う切土面はラウンデ

ィングを行う。

・農道の整備に伴う法面は、近隣の表土(種子)を利用した吹付工な

どにより、郷土の植生に配慮した緑化を行う。

・防護柵を設置する場合は、茶園の景観と調和するダークブラウンの

ガードパイプ又は間伐材を利用した木製とする。

・○○~○○区間は、農地との境界部分に低木を植栽し、既に植栽さ

れている町道との景観の連続性を確保する。

・○○地区の用排水路整備にあたっては次の点に配慮する。

・○○~○○区間は、石積み護岸とするとともに、部分的に親水護岸

とする。沿川部に低木を植栽する。

農業生産

基盤

・防霜ファンは、周辺の自然や農地から地域の色を採集し(123 ペー

ジ参照)、その中の色である茶系や深緑系の色彩を採用する。

農業

近代化

施設

・○○地区の荒茶加工施設の設置にあたっては次の点に配慮する。

・周囲の農山村景観と調和するように、屋根の色彩を低彩度の緑系、

外壁をベージュ系またはライトグレー系とする。

・屋根の形態は、周辺の集落景観と調和するように、当該地域に固有

の傾斜屋根とする。

・周囲の農山村景観と調和するように、施設の周囲を中高木で緑化す

る。植栽する樹種は、周辺の植生と連続性が感じられるものにする。

景観に配慮した農業農村整備事業

沼津市戸田饗の里 中山間地域総合整備事業

-経緯 ・戸田地区の農業は、みかん、水稲、椎茸などを

中心に発展してきた。大部分の農地が山間部に

点在し、棚田などもみられる。 ・中山間地域の生産性や生活の快適性の向上を目

的に、景観に配慮しつつ、中山間地域総合整備

事業が実施された。 -景観に配慮した事業の実施 ・棚田の景観の保全に配慮したほ場整備を実施し

た。 ・用排水路の整備にあたっては、直線でない地形

なりの線形とし、石積みとした。 ・農業集落排水施設の整備にあたり、老朽化した

石積みを残す形で補修を行った。

事 例

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第 2 部 市町における景観形成の推進

123

〈参考:地域のカラーパレットのイメージ〉

出典:景観法を活用するための環境色彩計画 著作者:吉田愼悟 丸善株式会社

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124

B.景観農業振興地域整備計画による良好な農地景観の維持・管理の推進 ・傾斜地の茶園の耕作放棄を防止するため、景観農業振興地域整備計画の「景観と調

和のとれた土地の農業上の利用に関する事項」「農用地等の保全に関する事項」に茶

園の維持管理方法※3を定める。 ・水稲の生産調整などにより遊休している水田の景観の向上を図るため、景観農業振

興地域整備計画の「景観と調和のとれた土地の農業上の利用に関する事項」「農用地

等の保全に関する事項」に遊休農地の利用方法※3を定めるとともに、景観作物に

係る補助金制度を活用する。

・遊休水田で景観作物の栽培が行われていない場合は、計画に沿った栽培の実施を市

町長から農地所有者に指導・勧告するようにする。

※3 景観農業振興地域整備計画に定める主要な事項のイメージ

・○○地区の茶園の維持・管理を進めるため、中山間地域等直接支払い制度など

を活用し、集落協定を締結して、茶園の防除、施肥、草刈、茶園に至る農道の

草刈、修繕などを行うようにする。 ・○○地区の水田において、水稲その他の作物を栽培しない場合には、景観への

配慮のため、景観作物を栽培するようにする。洋風の花を栽培することとし、

春季はポピー、夏季はヒマワリ、秋季はコスモスとする。

C.景観協定による、集落の建築物の形態・意匠などの規制・誘導 ・周辺の茶園や自然と調和した良好な集落の景観を保全していくため、建築物の形態・

意匠や緑化などの規制・誘導を行う。

住民の結びつきが強く、自治力も高く、また、開発圧力が高い地域ではないことか

ら、集落全世帯の合意による景観協定※4を方策として選択し、住民が主体的に協

定を運用していく。

※4 景観協定の主要な事項のイメージ

家庭ごみや農業資

材の廃棄物などは、

道路からみえる位

置に置かないよう

に努める

敷地内に車庫や倉

庫を設置する場合

は、周りを低中木で

緑化し、周囲の景観

と調和させるよう

努める

季節が感じられる

集落とするために、

道路から見える位

置に、実のなる木、

花の咲く木を植栽

するように努める

道路に面して垣・柵

を設置する場合は、

コンクリート塀、ブ

ロック塀は極力避

け、生垣とする。生

垣は、昔から利用さ

れている槙とする

外壁の色は、周辺の自然や茶園

と調和する落ち着いた色彩と

し、茶、ベージュを基調とする

建築物は平屋又は2

階建ての在来軸組工

法とする 屋根は、原則として

灰色の日本瓦の切妻

屋根とする

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第 2 部 市町における景観形成の推進

125

(4)地域のシンボルとなっている河川の景観を守る(河川及び沿川地域)

1)想定する地域の概況 写真はイメージ ・河川が農山村地域及び郊外地域を流れている。沿川は、大半が水田・畑として利用

されている。 ・地域のシンボルとなっている河川であり、緑や水辺に触れようと堤防上を散策する

人の姿がよく見られる。 ・美しいデザインの橋梁が、河川景観のアクセントとなっている。 ・以前の河川改修後、魚、鳥や昆虫の姿を見かけることが少なくなってきている。子

供が川で遊ぶ姿もみられなくなった。 ・河川は2級河川であり、下流から河川改修が進められているところである。

2)想定する地域の特定課題 ・現在の河川は、人工物である堤防や護岸などのイメージが強く、水辺としての景観

のイメージは薄く、沿川の田園景観と調和しているとはいいがたい。周辺の田園景

観と一体となって緑豊かなうるおいのある河川景観を形成していくために、河川改

修の方法・デザインを工夫していくことが求められる。 ・子どもや大人の環境学習の場やまちづくり活動の場として河川が注目されている。

より自然が感じられる景観を形成し、水辺に触れることのできる空間を確保してい

くことが求められる。

3)方策の活用イメージ

①周辺の景観と調和した河川改修などの推進

A.景観重要公共施設の指定による河川改修の推進 ・当該河川を景観重要公共施設に指定し、多自然型の川づくり、沿川で予定している

農村公園との一体的整備、親水空間の創出に関する事項※1を定める。

B.景観重要公共施設の占用許可基準の設定による施設の修景 ・緑地に付属する休憩施設などの河川占用施設について、周辺との調和を図るために、

修景に係る占用許可基準※2 を定める。

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126

※1 整備に関する主要事項のイメージ

・○○~○○区間の河川改修は、治水機能の確保を第一にしつつ、以下の点を踏まえ

多自然型の川づくりを実施する。 ・また、農村公園との一体的整備、親水空間の創出を図るため、以下の点を踏まえ河

川改修を実施する。

※2 占有許可基準のイメージ

・ベンチは、赤や青などの原色のものを避け、茶系や灰色系など周囲の景観と調

和する色彩とする。

②河川景観のアクセントとなる要素の整備・保全

A.景観公共重要施設の指定による桜並木の整備 ・河川改修にあわせて、河川景観のアクセントとなる桜並木を整備するため、景観重

要公共施設の整備に関する事項※3を定める。

・市町では、桜づつみモデル事業などを活用し、河川植栽基準を遵守した上で、桜の

植樹を実施するようにする。

※3 整備に関する主要事項のイメージ

・○○~○○区間において、植樹のための堤防側帯を整備するようにする。

B.景観公共重要施設の指定による橋梁景観の保全 ・当該河川に架かっている橋梁は、水辺や田園の景観と調和し、デザインに優れてい

ることから、景観重要公共施設に指定し、既存の形態や色彩を踏まえた適切な管理・

改良を進めていくようにする。

○○~○○区間の左岸の

堤防上に遊歩道を整備し、

途切れている遊歩道を結

ぶようにする

市町において整備する農村公園に接する部分の

左岸の堤防は、階段状とし、公園利用者が円滑に

水辺に近づくことができるようにする

瀬や淵ができるよ

うに河道・河床な

どを整備する

護岸肩部はラウンデ

ィングを施すことな

どにより、やわらかい

イメージとする

石による自然護岸

を基本とする

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第 2 部 市町における景観形成の推進

127

狩野川景観アセスメント

国土交通省では、美しい国づくりの具体的施

策の一つとして、公共事業における景観アセス

メント(景観評価)システムを確立することと

しており、狩野川の沼津市中心部区間における

堤防整備が「アセスメント試行事業」として選

定された。

沼津河川国道事務所では、関係者の多様な意

見を聴取しつつ景観評価を行い事業に反映する

ため、学識経験者などからなる委員会の設立、

行政・市民が参加するワークショップの開催、

HP などによる住民意見聴取のための景観意見

提案窓口の設置などを行っている。

③河川景観の維持の推進

A.アダプト制度による河川景観の維持の推進 ・当該河川の各区間について、希望する住民、市民団体、事業者に里親となってもら

い、清掃・美化などの活動を推進する仕組みを導入する。

アダプト制度

静岡市 河川環境アダプトプログラム

-仕組み

・安倍川・藁科川・興津川の河川敷などを一定

区間に分け、区間ごとに団体・事業所・グル

ープ・サークル・家族・個人などを募り、参

加者と市の間で活動に係る合意書を締結す

る。

-活動内容など

・縁組した河川敷などの環境美化の定期的実施

・鳥や花、水辺の様子などの環境情報の提供

・市は、河川敷に参加者の名称を表記した看板

の設置

-活動状況(平成 17 年度)

・学校など :14 団体 5,903 人

・事業所 :36 団体 3,218 人

・市民団体 :31 団体 1,410 人

・家族、個人:22 団体 71 人

・活動支援 (清掃用具、保険など)

・活動を知らせる看板の設置

里親 (住民、市民団体、事業者)

河川管理者 市町

・ごみ処理などの支援 ・ごみ拾い ・草刈り ・桜並木の管理

事 例

景観に係る様々な取組の紹介

出典:静岡市エコネット ウェブインフォメーション

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128

④協働による河川景観の維持・向上

A.景観協議会の設立 ・右岸の景観行政団体である市町、左岸の景観行政団体である市町、河川管理者の県、

近隣地域の町内会や小学校、河川に係る市民団体などにより、当該河川及び沿川地

域の景観協議会を設立する。 ・協議会では、河川改修の修景と沿川の農村公園のデザインの調整、アダプト制度の

取組状況の確認、河川を活用した環境学習活動の企画・実施、水質改善の活動(水

質検査、洗剤利用抑制など)の推進などを行うようにする。

河川の景観協議会

木曽川景観協議会

-取組の経緯

・愛知県犬山市と岐阜県各務原市は、木曽川を挟

んで、互いに景観を見合う位置関係にある。

・木曽川は、飛騨木曽川国定公園に指定されてい

るが、沿川で宅地開発や国宝犬山城対岸への高

層マンション建設などが行われ、今後、良好な

景観が損なわれることが懸念されている。

・そこで、景観法 15 条(景観協議会)を見据え

てた両市による景観協議会が設立され、両市の

連携で当該地域の景観計画を策定し、木曽川文

化圏の景観形成を目指すこととなった。

-協議会の概要

・目的:木曽川中流域の河川及び河川沿い市街地

について、その景観の保持・創造を図るため、

2市が連携して、木曽川景観基本計画の策定及

び当該計画に係る事業などを行うこと。

・構成:両市長、中部地方整備局建政部・木曽川

上流河川事務所、岐阜県都市整備局都市政策

課、愛知県建設部公園緑地課、岐阜県岐阜建設

事務所、愛知県一宮建設事務所、各務原市商工

会議所、犬山市商工会議所、各務原市観光協会、

犬山市観光協会、漁業協働組合、木曽川観光株

式会社

・事務:木曽川景観基本計画の策定、計画に係る

事業の実施、2市の景観条例の運用に係る連絡

調整、景観形成に係る意見の表明・関係機関へ

の要望など

景観協議会 ・河川改修と沿川の農村公園の

デザインの調整 ・アダプト制度の取組の確認 ・環境学習活動の企画・実施 ・水質改善の活動の推進

右岸の市町 左岸の市町

河川管理者 の県

地域の町内 会や小学校

河川に係る 市民団体

参加 参加

事 例

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第 2 部 市町における景観形成の推進

129

(5)落ち着いた住宅地の景観を保つ(住宅地域)

1)想定する地域の概況 写真はイメージ

・中心市街地周辺の既成の住宅地では、第1種・第2種中高層住居専用地域、第1種

住居地域などに指定されている。地域の幹線道路沿道には店舗などが立地している

が、地域幹線道路に囲まれた住区内は戸建住宅や低層の集合住宅が主となっており、

比較的良好な住環境が保たれている。これまで住環境が脅かされることはなく、地

区での任意の協定の締結や地区計画などの指定はされていない。 ・市町において都市景観条例が制定されており、大規模な建築行為などの届出制度が

運用されている。景観形成上重要な地区の指定は、住居系地域ではなされていない。

2)想定する地域の特定課題 ・会社の寮の跡地や空地などを利用して中層集合住宅の立地が進んでいる。良好な景

観や日照などが損なわれることを危惧し、建築着手後、紛争の起こった地区もある。

このような中、良好な景観や住環境を保全するために、建築物などの適切な規制・

誘導を行い、地区に適さない建築物が建たないように予防することが必要である。 ・事が起こってから住民の活動が始まることが多いが、その時点では手遅れである場

合が多い。事が起こる以前に、住民のまちづくりへの関心を高めることが必要であ

る。さらに、予防に向けた住民の活動を推し進める支援の体制づくりが求められる。

3)方策の活用イメージ

①モデル地区における建築物の高さなどの規制・誘導

A.モデル地区でのまちの将来像の検討 ・近年、マンション紛争が起こり住民の関心が

高まっているような地区で、市町としても地

区における高さ制限が妥当と考えるところ

を良好な景観づくりのモデル地区として位

置づけ、住民・地権者・行政の協働のもとで、

規制・誘導のルールづくりを検討する。 ・高さ制限のみを検討するのではなく、住民参

加を促し、地区の景観や住環境を総合的に保

全・向上するための契機と捉え、適宜ワーク

ショップ手法を用いながら検討※1 を行う。

①地区の環境点検・宝探しによる、

地区の良いところや問題点の把握

②地区の景観や住環境の将来像の

検討

③将来像を実現するために必要な

ルールの検討

④景観地区などの活用

※1 検討の進め方のイメージ

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130

B.景観地区の指定による建築物の高さなどの制限 ・高さの制限については、地区に暗黙のルールのようなものがあり、既存の建築物の

高さは、近年建築されたマンションを除き、3階建て 10m以内である。現在の良好

な住環境を保全することが目的であるため、高さの 高限度を 10mと設定する。

ただし、一定の敷地規模以上で、一定の壁面後退距離を確保できる建築物について

は 高の高さを緩和する、既存建築物の建替で、敷地規模が変わらず、既存の高さ

以下で、周辺環境の維持に支障がないと認めるものを適用除外とするなどの配慮を

行う。

・また、ボリュームのある集合住宅の圧迫感を抑えるために、道路や隣地からの壁面

の後退、屋外建築設備の目隠し、周辺の建築物と調和する色彩の採用、外構や駐車

場の緑化などの規制・誘導を併せて行う。

・建築物の高さの 高限度や周辺の建築物と調和する色彩の採用などについて、規制

力を高いものとするため、景観地区※2を活用する。 ・緑化については、緑地協定※2を締結し、ブロック塀等耐震改修促進事業(県の補

助事業)や生垣設置事業(市町の補助事業)などを活用する。

※2 建築物の景観形成の主要基準などのイメージ

建築物の 高の高さは

10m以下とする。 建築物の1階部分の外壁

は、ゆとりの感じられる空

間を形成するとともに、中

木の植栽を可能にするた

め、道路境界線及び隣地境

界線から2.0m以上離すよ

うにする。

屋外の建築設備は、道

路から見えない位置に

設置する、または、植

栽やルーバーなどで目

隠しを行うようにす

る。

屋根は、現在多くみら

れる傾斜屋根とし、灰

色系、焦げ茶系を基調

とする。

敷地の道路に面する部分は生垣とする。

その他の垣・柵を設置する場合は、前面

に花壇を設置するようにし、そのための

スペースを確保するため、垣・柵を道路

境界線より 0.5m後退させる。

駐車場は、緑化ブロックに

よる舗装、外縁への花木の

植栽を行う。

建築物の外壁の色彩

は、現在多くみられる

白、ベージュ系、茶系

を基調とする。

〈景観地区〉 〈景観地区〉

〈緑地協定〉

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第 2 部 市町における景観形成の推進

131

良好な住宅地の環境・景観保全のためのルールづくり

浜松市山手町 地区計画

―地区の概況・取組などの経過

・JR浜松駅と佐鳴湖の間に位置する住宅地。

面積 23.8ha、第一種中高層住居専用地域。

・良好な住宅地を形成してきたが、近年、地区

内に中高層建築物などの計画が持ち上がっ

ている。

・住民は、山手町まちづくり協議会を立ち上げ

て、浜松市中高層建築物の建築に係る紛争の

予防及び調停に関する条例に基づく手続き

をとるとともに、まちづくりのルールづくり

に取り組んだ。

・今後、住宅地の良好な環境・景観を保全する

ために、地区計画を定める予定である。

―想定される地区計画(地区整備計画)の概要(案)

事項 内容

用途の

制限

以下に示す以外の用途は建築

できない。

・住宅

・兼用住宅

・共同住宅、寄宿舎又は下宿

・学校、図書館など

・保育所、老人ホームなど

・診療所

・巡査派出所、その他公益上

必要なもの

・前各号に付属するもの

高さの

高限度

地上 12m以下とする。

ただし、

①敷地面積が 900 ㎡未満の

場合は 10m以下

②敷地面積が 1500 ㎡以上の

場合は 17m以下

*平成 18 年 3 月現在、手続き中

②住民の景観形成のルールづくりに係る活動への支援体制づくり

A.活動支援方策の整備 ・モデル地区での成果を踏まえ、他地区においてもまちづくり活動が進められるよう

に、活動の支援方策を整える。 ・まず、担当課やまちづくりセンター

が中心となって、モデル地区の成果、

他都市の事例、都市計画マスタープ

ラン策定の調査などを活用し作成

した地区カルテなどの情報提供、職

員による出前講座、まちづくり相談

窓口の設置などにより、地区のまち

づくりに関心を持ってもらうよう

働きかける。 ・住民のまちづくり活動の初動期、その後の地区の将来像やルールづくりの検討を支

援するために、専門家の派遣制度を都市景観条例(自主条例)に定めるようにする。

あわせて、条例に基づき、ワークショップの資料印刷代や備品代、地区への広報紙

の印刷費などの助成を推進する。

地区のまちづくり活動

情報提供 相談窓口

専門家の 派遣

助成の 推進

情報

技術

資金 支援

事 例

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132

B.まちづくりの提案制度の活用 ・市町などによる支援を受けて住民がとりまとめた地区のまちづくりルール案をもと

に、景観地区や地区計画などを指定することを推進する。 住民などによるまちづくりの提案を法的に位置づけたものとして、

景観法第 11条「住民などによる景観計画の提案」

都市計画法第 21条の 2「都市計画決定などの提案」

都市計画法第 16条第 3項「地区計画などの案の申し出」

があり、これらの活用をPRしていくものとする。 ・さらに、都市景観条例(自主条例)に位置づけられている「まちづくり協議会」を、

提案できる団体として同条例や地区計画等の手続き条例などに定める。

③中層建築物の建築などに係る手続きなどの充実

・景観地区による中層建築物の景観面の規制・誘導に加えて、良好な住環境を保全する

方策や中層建築物の建築に係る紛争の予防などの方策を導入する。

A.土地利用事業指導要綱の条例化 ・良好な景観形成とあわせて良好な住環境の形成などを進めるため、市町の土地利用

事業などの指導要綱を条例化し、法的な担保を与えるようにする。あわせて、事前

協議段階における協議書の公告・縦覧、地元説明会の開催、必要措置の勧告など、

土地利用事業の手続きなどを充実する。

B.中高層建築物の紛争の予防・調整に係る条例の制定 ・中高層建築物の建築に係る紛争の予防・調整についての条例を制定し、計画の事前

公開やあっせん・調停の仕組みをつくる。

土地利用事業指導要綱の条例化

熱海市 まちづくり条例

・熱海市は、平成 17 年、協働のまちづくり、計

画的なまちづくり、住み良いまちづくりを進め

るための条例を制定した。

-土地利用事業指導要綱の条例化

・これまで土地利用事業指導要綱により、一定規

模以上の開発事業の指導を行ってきたが、より

住み良い市域の形成を推進するため、条例の中

に、開発事業の手続きや開発事業の基準などを

定めた。

・事業者による看板設置や説明会の開催、利害関

係者などの要請による公聴会の開催、公聴会報

告書の縦覧、市長による指導書の交付など、事

前協議手続きを充実させ、義務付けた。

・開発基準(道路の幅員、建築物の高さ、施工区

域内の緑化率など)を強化した。

・利害関係者と事業者の間で起きた紛争などを円

滑に解決するために、市によるあっせん、調停

委員会の設置などの仕組みを定めた。

・一定の手続き及び基準に違反した場合に罰則を

適用するなど、条例の担保を行った。

事 例

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第 2 部 市町における景観形成の推進

133

(6)美しい駅前・商店街の景観をつくる(駅前、商店街地域)

1)想定する地域の概況 写真はイメージ

・まちの玄関口である鉄道駅の駅前広場周辺及び駅前通り沿道に商業業務施設が集積

している。また、駅前通りにつながる通りに商店街が形成され、小売店舗や飲食店

が建ち並んでいる。用途地域は商業地域・近隣商業地域に指定されている。 ・まちの郊外化や消費活動の変化により買い物客が減少し、空き店舗がみられるよう

になり賑わいが失われつつある。 ・現在、県屋外広告物条例により、商業地域及び一部の近隣商業地域は第2種普通規

制地域に指定されている。駅前や駅前通り沿道の建築物の壁面には、面積の大きい

屋外広告物が表示されており、屋上にも大きな屋外広告物が設置されている。また、

電柱や防護柵には、立て看板やはり札などが違法に括り付けられたり、貼られたり

している。 ・駐輪に関する条例を制定し、放置禁止区域・放置規制区域を指定して、監視員の配

置や放置自転車の撤去を行っている。

2)想定する地域の特定課題 ・屋外広告物や電柱・電線、放置自転車などにより、地域の景観が非常に雑然とてい

る。 美しいまち並みを駅前や商店街の魅力として打ち出していくために、景観を阻害し

ている要素の規制や除却を推進することが求められる。 ・道路などの公共空間を活用して、賑わいの感じられる景観を創出することが求めら

れる。

3)方策の活用イメージ

①屋外広告物の規制・誘導、除却の強化

A.屋外広告物条例による商業地域での規制・誘導 ・県屋外広告物条例による規制・誘導について、商業者・住民に周知を図る。

・景観に配慮した屋外広告物の設置を推進することについて、商業者や住民の合意形

成が図られた場合は、県などの関係機関と協議の上、景観行政団体である市町にお

いて独自の屋外広告物条例を制定し、商業地域及び一部の近隣商業地域を県条例の

第1種普通規制地域並みの基準※1とする。

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134

※1 独自の屋外広告物条例による主要な許可基準のイメージ

項目 県条例での基準(第2種普通規制地域) 市町条例での基準のイメージ

野立て ・高さは、広告塔にあっては地上 15m以

下、広告板にあっては地上 5m以下

・表示面積の合計は、30㎡以内

・同左

・表示面積の合計は、20㎡以内

屋上設置 ・高さは、建築物の高さの 2/3 以下で、

かつ、15m以下

・高さは、建築物の高さの 1/2 以下で、か

つ、12m以下

壁面突出 ・外壁からの出幅は、1.5m以下 ・外壁からの出幅は、1.0m以下

壁面利用 ・1 面の表示面積は、その壁面面積の

1/5 以内

・壁面の 1 面の面積が 300 ㎡未満の場合に

おいては、表示面積は、その壁面面積の 1

/5 以内

・壁面の 1 面の面積が 300 ㎡以上の場合に

おいては、表示面積は、その壁面面積の

1/10以内

意匠・色彩

・地色には、原則として原色や黒色を使用

しない

駅前・商店街における屋外広告物の規制・誘導

静岡市 呉服町名店街まちづくり協定

-協定の概要

・商店街の空間構成の良さを保つこと、アイデン

ティティを維持することなどを目的に、個々の

店舗などの営業、新築・改修などについて遵守

すべき目標を示している。

-看板・広告物に係る協定の内容

①袖看板:基本的には設置しない

②庇下看板:統一看板とし、指定形状のもの。原

則、通りに面する 1階の 1店舗あたり 1 個

③壁面看板:各個店の個性を活かしたものとす

る。位置は、各階の壁面で横幅は間口の 2/3

以内かつ 3m 以内、高さは 90m 以内、壁面から

の出幅は 20cm 以内

④置き看板:歩道上、壁面後退部分に置かない

⑤屋上看板:

設置しない

屋外広告物の表彰制度

静岡市 しずおか市民景観大賞(サイン・看板の部)

・第5回景観大賞では「サイン・

看板」の部、第6回では「粋活

き看板賞」が設けられた。 ・魅力的なデザインで、かつ周囲

のまち並みなどに配慮し、まち

の景観の向上に寄与している

サイン・看板が表彰された。

事 例

事 例

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第 2 部 市町における景観形成の推進

135

B.立て看板や置看板などの簡易除却、自主撤去の推進 ・道路上にある電柱や街路樹、信号機などに貼られているはり札や防護柵に括り付け

られている立て看板、歩道上ののぼり旗などによる景観悪化を防ぐため、自治会、

シルバー人材センター、街なか活性化に関連する市民団体などに業務委託を行い、

屋外広告物のパトロール、違反屋外広告物の簡易除却を進める。

・商業地域における屋外広告物は簡易除却できないもの(店舗前に出されている広告

物など)が多いため、自主撤去を促す。

簡易除却の推進

大阪市 かたづけ・たい(路上違反簡易広告物撤去活動員制度)

-制度概要

・道路上の違反広告物(はり紙、はり札、立看板、

のぼり旗、簡易広告板)について、市民が無償

のボランティアとして撤去活動を行う制度

-活動内容

・法令上の撤去要件を満たしている道路上の違反

簡易広告物のうち、一般商業広告物を撤去

・活動の前に法令などの講習会を受講

・道具(ニッパー、手袋など)は、市が提供

-参加資格

・市内に居住又は勤務する 18 歳以上の人 2 名

以上で構成された団体、または企業などの法人

-登録状況

・198 団体、約 2,800 名(平成 17 年時点)

-活動実績

・平成 14 年度:約 8 万 6 千枚(半年間)

・平成 15 年度:約 20 万 8 千枚

・平成 16 年度:約 21 万枚

②景観を阻害している要素の除却

A.駅前通りや商店街通りの無電柱化 ・電線・電柱による雑然とした道路景観を改善するため、駅前通りや商店街通りを景

観重要公共施設に位置づけた上で、電線共同溝法における「電線共同溝整備道路」

に指定する。

〈 参 考 〉無電柱化の概要

事 例

地中化による無電柱化 電線類地中化以外による無電柱化

電線共同溝方式以外 電線共同溝方式 裏配線 軒下配線

道路の地下空間を活用して

電力線、通信線等などをま

とめて収容する無電柱化の

手法

自治体管路方式:地方公共

団体が管路設備を敷設 単独地中化方式:電線管理

者が自らの費用で地中化 要請者負担方式:各地方の

無電柱化協議会で優先度が

低いとされた箇所などにお

いて無電柱化を実施する場

合に用いる手法であり、原

則として費用は全額要請者

が負担

無電柱化したい主要な通り

の裏通りなどに電線類を配

置し、主要な通りの沿道の

需要家への引込みを裏通り

から行い、主要な通りを無

電柱化する手法

無電柱化したい通りの脇道

に電柱を配置し、そこから

引き込む電線を沿道家屋の

軒下または軒先に配置する

手法

表通り

電線

電柱

電線

地中化済

出典:大阪市建設局 HP

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136

B.駐輪対策の強化 ・放置自転車の削減を進めるため、駐輪に関する条例に基づく監視員の増強、道路管

理者による歩道・車道上への駐輪場の整備(平成 17 年 3月道路法施行令改正)など

を進める。

③公共空間を活用した賑わいづくり

A.公共空間のイベント会場、オープンカフェなどとしての活用 ・公共空間を活用して賑わいのある景観を創出するために、商店街のメインストリー

トをイベント会場、オープンカフェやギャラリーなどとして利用することを進める。

公共空間の活用

静岡市 中心商店街のみちまち実験

-実験の概要

・「道」の多様な使い方を提案するとともに、街

の情報を道から発信し、街の賑わいや回遊性を

高めることを目的に、街なかにメイン拠点とな

るオープンカフェとサブ拠点となるサテライ

トポストを配置し、それらをつなげる「回遊の

ためのシステム」を構築する社会実験を平成

17年10月の1ヶ月間実施した。

-実験の内容

・オープンカフェ(茶店風の休憩処を道路上に設

置、日本茶を提供)

・サテライトポスト(中心市街地の情報を提供す

る発信拠点の設置)

・ラジオ端末を利用した街なかのポイント巡り

・回遊促進イベント(道でダンス、まち歩きツア

ー、道で折り紙、竹細工、伝統芸など)

・お街のコンシェルジュ(大型店の総合案内で街

の情報の紹介)

浜松市の街なかのユニバーサルデザイン

・浜松市は、平成12年度に都市計画課内にユニ

バーサルデザイン室を設置し、ユニバーサルデ

ザインを推進してきた。

・平成15年度には、市ユニバーサルデザイン条

例の施行に伴い、ユニバーサルデザインを総合

的・計画的に進めるため、企画課に移管し全庁

的な推進を図っている。

・浜松駅周辺では、駅前広場、道路、公共施設な

どのユニバーサルデザインが面的に進められ、

安心が感じられる景観が形成されている。

屋根、電光掲示板、音声案内のあるバス停 まちなかのベンチ

段差のない歩道・横断歩道 幅の広い歩道

事 例

景観に係る様々な取組の紹介

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第 2 部 市町における景観形成の推進

137

(7)周辺と調和した工業地の景観をつくる(工業地域)

1)想定する地域の概況 写真はイメージ

・駿河湾沿岸部に形成された工業地域で、規模の大きい工場や倉庫などが集積してお

り、用途地域は工業地域、工業専用地域に指定されている。 ・周辺には駿河湾や大河川の自然景観があり、後背には富士山が眺望できる。静岡県

を代表する自然景観に囲まれているといえる地域である。 ・市町は景観条例(自主条例)を制定しており、大規模な建築物の建築などを行う場

合には届出をすることになっている。 ・また、市町では、周辺の自然景観との調和や良好な都市景観の形成のために、工業

地域における色彩のガイドラインを作成しており、新設や外装の塗り替え時に際し、

事業者へガイドラインの遵守をお願いしている。

2)想定する地域の特定課題 ・色彩ガイドラインに沿った工場が現れつつあるが、工業地域で良好な景観形成を推

進していくために、もう少し規制力を持った方策を活用することが求められる。 ・古くからの工業地域は殺伐とした景観である。工業地域の建築物や工作物などの景

観と周辺の海や河川、山の景観を調和させるため、公共空間や民地の外構などの緑

化を図ることが求められる。

3)方策の活用イメージ

①工場地域の色彩の規制・誘導

A.景観計画による工業地域の色彩の規制・誘導 ・景観法を活用して、行政区域全域を景観計画区域に設定し、大規模な建築物の形態・

意匠の規制・誘導を自主条例による届出・指導制から届出・勧告制とし、法的な担

保を与える。

まち全体において、

景観計画により、大

規模建築物の形態・

意匠を規制・誘導 工業地域において、景

観計画により、全ての

建築物などの色彩を規

制・誘導

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138

・その上で、工業地域において、良好な色彩の景観形成を進めるため、工業地域にお

ける色彩ガイドラインの対象となっている区域については、上記とは別の景観計画

区域を設定する。 ・その区域の景観計画においては、全ての建築物・工作物の建築行為などを届出の対

象にし、色彩に関する景観形成基準は色彩ガイドラインを移行する。

色彩の規制・誘導

静岡市 清水港みなと色彩計画

―計画策定の経過

・昭和 63 年度に実施された都市景観のアンケー

トにおいて、嫌いな景観に「港」があげられた。

・平成 2 年度に、女性で組織されたレディース・

マリンフォーラムから、港に関して「自然に調

和する、地域の機能と特性に合った色彩計画の

策定」の提言がなされた。

・平成 3 年度、専門家と地元企業の代表者など

により「清水港・みなと色彩計画策定委員会」

が組織され、色彩計画が策定された。

―配色の基本方針

・シンボルカラーは、空・海・富士山といった自

然条件や住民・企業アンケートなどを踏まえ、

アクアブルーとホワイトの2色を設定。

・臨港地区内の機能から8つのゾーンに分け、各

地区の特性を活かす色彩計画を作成 。

・企業の CI カラーなどで配色計画にない色は、

アクセサリーカラーとして使用を認めている。

―計画の推進

・新築、増築、改築、塗替えなどを清水港管理局

へ届出することとしている。

・専門家及び行政からなるアドバイザー会議が、

色彩計画の検証、助言、提案を行っている。

各ゾーンの配色基準 と事例

事 例

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第 2 部 市町における景観形成の推進

139

②工業地域の緑化の誘導

A.緑化地域の指定による緑化の推進 ・工場立地法により、敷地面積 9,000 ㎡または建築面積合計 3,000 ㎡以上の製造業な

どの工場を対象に、緑地などを確保することとなっている。

しかしながら、本地域の敷地規模は 9,000 ㎡を下回るものが大半であるため、原則

1,000 ㎡以上の敷地を対象としている緑化地域を工業地域全体に指定し、外構の緑

化や建物の壁面緑化などを推進する。

・緑化地域における建築物の緑化率の 低限度は、建ぺい率 60%の工業地域において、

「1-(建ぺい率 60%+10%)」又は「敷地面積の 25%」のうち小さい値である 25%

を上限として設定する。現状において敷地内に空地が十分みられることから、上限

である 25%を 低限度として定める。

B.緑地協定による緑化の推進 ・緑化地域では緑化の位置や樹種などを誘導できないため、地域の事業者による緑地

協定を締結※1し、地域全体としてまとまりのある緑を創出するようにする。

※1 協定の主要事項のイメージ ・緑のボリュームを確保するため、緑化地域の 低緑化率 25%のうちの 10%は、

高木を植栽することとする。(高木1本当たり 10 ㎡と算出する)

・道路に面した敷地部分の幅 5mの区域は緑化を行う。高木を植える場合は、樹種

をケヤキとする。 ・道路からみえる擁壁は、緑化ブロックや蔓性植物などにより緑化を行う。 ・駐車場を整備する場合は、その外周に高木・低木を植栽する。 ・敷地内において、多様な生き物の住処となるビオトープ空間の創出に努める。

C.景観重要公共施設の指定による道路緑化の推進 ・地域内の幹線道路を景観重要公共施設に指定して、並木の整備や低木の植栽を進め

る。 ・海岸の防風林や河岸の並木と緑のネットワークを形成するように、景観重要公共施

設の路線を指定する。

道 路

民 地 民 地A.緑化地域

で民地の緑

量を確保

B.緑地協定で、緑

化の位置や樹種

などを誘導し、地

域全体でまとま

りのある緑を創

C.景観重要公

共施設で道路

の緑を確保

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140

施設の緑化

袋井市 ポーラ化成工業 磐田市 ロック・フィールド静岡ファクトリー 浜松市 静岡文化芸術大学

・敷地周囲を樹木で取り囲み、

四季折々の花々、落葉高低木、

花文字を植栽し、「美 ing 作

戦」と題した従業員による管

理を行っている。

・平成 16 年度に緑化推進運動功

労者内閣総理大臣表彰を受賞

・工場周辺に段状の庭園、ビオ

トープなどが整備され、また、

柿の木が植栽されている。

・ビオトープの草木の成長に伴

い、魚や昆虫が棲息し、鳥も

集まるようになった。

・屋上全体(長さ 220m、面積

約 2,800 ㎡)を芝生やクロ

ーバーなどで緑化。

・学生だけでなく、市民などに

も公開し、散策や浜松市街地

の眺望場の場として利用され

ている。

③協働による工業地域の景観の向上

A.景観協議会の設立 ・景観行政団体、事業所の代表者、近隣地域の町内会、学識経験者などにより、当該

工業地域の景観協議会を設立する。 ・協議会では、事業所の色彩や植栽の計画づくりへの助言や提案、事業所が届け出た

計画への助言、民地や公共空間の緑地の維持・管理状況の確認や改善の指導などを

行うようにする。 ・協議会が中心となり、緑化優良工場等表彰制度の申込みや社会・環境貢献緑地評価

システムの申請・認定を進め、緑豊かな工業地域のイメージを地域内外にPRする。

富士山地域煙突ゼロ作戦

・本県と富士市では、事業者が温暖化対策を実施

し不要になった煙突ついて、産業振興のシンボ

ルとして残すことも検討したが、富士山の景観

や防災対策の向上のため、撤去を促進すること

とし、その費用の補助を行ってきた。

・平成 14~16年度で 18本の煙突が撤去された。

景観協議会 ・計画づくりへの助言、提案 ・届け出された計画への助言 ・維持管理状況の確認、指導

事業所の 代表者

近隣地域の 町内会

学識 経験者

景観 行政団体

参加 参加

撤去後 撤去前

事 例

景観に係る様々な取組の紹介

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第 2 部 市町における景観形成の推進

141

(8)インターチェンジ周辺に新たな都市景観をつくる(IC周辺地域)

1)想定する地域の概況 写真はイメージ

・まちにおいて第二東名自動車道及びインターチェンジの整備が進められている。こ

れに伴い、インターチェンジと市街地を結ぶアクセス道路の整備が計画されている。 ・アクセス道路が通る郊外及び農村地域は、都市計画区域の用途白地地域及び都市計

画区域外であり、良好な農村景観や森林景観が広がっている。

2)想定する地域の特定課題 ・インターチェンジの開設に伴い、観光客などを目当てにした商店や飲食店、ブティ

ックホテルなどが立地する可能性がある。 観光客などに美しいまちを印象づけるために、アクセス道路の景観に配慮した整備、

沿道の建築物や屋外広告物の形態・意匠などの規制・誘導が求められる。

3)方策の活用イメージ

①景観に配慮したアクセス道路の整備

A.景観重要公共施設の指定によるアクセス道路の整備 ・周辺の農村・自然景観と調和した美しい道路景観を形成するため、アクセス道路を

景観重要公共施設に指定し、道路付属施設の修景や緑化など良好な景観形成に必要

な整備事項※1を定める。

※1 景観重要公共施設の主要な整備事項のイメージ

周辺の景観との調

和や眺望の確保に

配慮し、防護柵を設

置する場合は、ガー

ドケーブル、ダーク

ブラウンのガード

パイプまたは木製

とする

周辺の眺望の確保に

配慮し、街路樹の植

栽間隔は 18mとする 地域らしさを表現す

るため、街路樹は郷

土樹種を植栽する

緑豊かな道路景観と

するために、植栽帯

を設け、低木及び高

木を植栽する

車道照明灯は、直線

ポール・アーム無し

の形状とし、色彩は

ブラウンとする。ま

た、車道照明灯、道

路標識、信号の共架

化を適宜行う

電線共同溝法における電

線共同溝整備道路に指定

し、無電柱化を進める

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142

②沿道の建築物の形態・意匠などの規制・誘導

A.景観計画による、沿道の建築物の形態・意匠の規制・誘導 ・派手な色彩や形態の建築物などの立地による沿道景観の悪化や周辺の農村景観との

不調和を防ぐために、景観計画を活用して、アクセス道路沿道を景観計画区域に設

定し、建築行為、木竹の植栽を届出の対象にし、景観形成基準※1を設けて、建築

物の形態・意匠などを規制・誘導する。

※2 景観形成の主要基準のイメージ

B.屋外広告物条例による規制・誘導及び公共による案内板の設置 ・屋外広告物の乱立による沿道景観の悪化を防ぐために、景観行政団体独自の屋外広

告物条例により、アクセス道路及び沿道地域を特別規制地域に指定する。 ・アクセス道路沿道の道標や案内図板を整理するために、インターチェンジとアクセ

ス道路の結節点に市町が集合案内板を設置する。

C.準都市計画区域の設定などによる特定用途の規制 ・ブティックホテルなどの用途が立地した場合、地域の景観のみならず、郊外や農村

の生活環境も悪化することが考えられる。都市計画区域外のインターチェンジ周辺

やアクセス道路沿道で乱開発の恐れがある区域を準都市計画区域に設定し、必要に

応じて用途地域や特定用途制限地域を指定することにより、ホテルなどの用途を規

制する。

駐車場は、周辺の農村・森林景

観との調和を図るため、緑化に

努めるものとする

屋外建築設備は、アクセス

道路から見えない位置に配

置するよう努める 屋根・壁面の色彩

は彩度の低い色と

し、原色は避ける

ようにする

屋根は、周辺の景観

と調和する適度な

勾配を有するもの

とする

建築物の形態・意匠

は、周辺の建築物や

農村・森林景観と調

和した落ち着きあ

るものとする

開放的な景観とするため、建

築物の壁面を道路境界線か

ら5m以上離すものとする

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第 2 部 市町における景観形成の推進

143

シーニックバイウェイ北海道

-シーニックバイウェイ北海道の概要

・シーニックバイウェイは、「景色」を意味する

シーン(scene)の形容詞(scenic)と、「わ

き道」を意味するバイウェイ(byway)の組

み合わせ。

北海道では、みちをきっかけに地域住民と行政

が連携し、景観をはじめとした地域資源の保

全・改善の取組を進めることにより、美しい景

観、魅力ある観光空間、活力ある地域をつくる

ことと捉えている。

・シーニックバイウェイの発祥の地はアメリカ。

日本では、国土交通省が北海道型モデルの検討

を開始した。モデルルートを選定し、活動団体

を募集し、2年間の試行を行った。平成 17 年

度から本格導入となっている。

-支笏洞爺ニセコルートの取組

・支笏湖や洞爺湖、有珠山、羊蹄山などがある支

笏洞爺国立公園、ニセコ連峰を中心としたニセ

コ積丹小樽国定公園を通るルートである。

・シーニックバイウェ

イが主体となり、沿

道 の 民 設 看 板 の 調

査、不要看板の撤去

を実施した。

・洞爺湖エリアの5団体が連携し、453 キャン

ペーンと銘打って、国道 453 号線の約 50 ㎞

の沿道の清掃を実施。

・NPO法人洞爺にぎわいネットワークが、花い

っぱいロードづくりとして、洞爺湖温泉街の沿

道をプランター1000 個分の花で飾る。

・美しい田園風景や眺望を発掘するためのフォト

コンテストの開催。

・NPO法人WAOニ

セコ羊蹄再発見の

会で、360 度のパ

ノラマと特産品を

楽しんでもらうシ

ー二ックカフェを開設。

・「食」をテーマにしたガイドブックの制作。

・シーニックポイントやシーニックレストランを

選び出し、ルートを決め、地元の観光ボランテ

ィアがガイドするツアーを実施。

※シーニックバイウェイは現在、日本風景街道という名称となっている

看板の現況調査

看板の状況の評価

老朽化看板の選定

所有者へ主旨説明

看板の撤去

行政 安全 ・安 心 な交 通の 確 保

美し い沿 道 景観 ・国 土 づく りの 創 出 普及 啓発 に よる ブラ ン ド化 の確 立

舞台装置づくり

地域(住民、NPO、企業など)

地域 活性 化 への 取組 ( 提案 ・実 施 )

地域 固有 資 源の 再発 見 ・保 全・ 活 用

地域 情報 の 発信

地域への愛情・誇りの醸成

訪れる人へのホスピタリティの向上

連携

地域資源の保全・改善による、美しい景観づくり、活力ある地

域づくり、魅力ある観光空間づくりを行う

競争力のある美しく個性的な北海道を実現

景観に係る様々な取組の紹介

出典:シーニックバイウェイ北海道

のパンフレット、ホームページ

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144

(9)旧東海道などのまち並み景観を守る(歴史的なまち並み地域)

1)想定する地域の概況 写真はイメージ

・旧東海道の宿場があった地域である。まちの中心地に近く、都市化が進んでおり、

伝統的建造物群保存地区のように歴史的な建築物は連たん・密集して残ってはいな

い。しかしながら、街道の線形や地割、ある程度揃った屋根並みなど、歴史を背景

とした魅力的な景観を感じることができる。 ・また、時間の流れの中で、様々な時代の建築物が混在し、現在もそこに生活がある

ことで、より深い魅力が感じられる景観ともいえる。

2)想定する地域の特定課題 ・住民が主体となって、地域の歴史的な資源を見直し、まち並み景観の固有性を形作

っている要素を見出し、保全・育成していくことが求められる。 ・地域で も古い町家は、空き家になっており、老朽化も進んでいるため、取り壊さ

れる可能性がある。改修する場合も、建ぺい率などにおいて既存不適格建築物とな

っており、外観の保存が難しい状況である。このような建築物をまち並みづくり・

まちづくりの拠点として保全していくことが望まれる。

3)方策の活用イメージ

①歴史的な建築物の保存

A.景観重要建造物の指定による歴史的な建築物の保存 ・歴史的な建築物で地域のシンボルとなっている町家を保存するために、町家を景観

重要建造物に指定する。 ・東海道の歴史を研究しており、町家の保存活動も行ってきたNPO法人を、景観整

備機構に指定する。 ・町家の所有者は、地域外に在住しており、自ら維持・管理を行うことは困難である

ため、所有者と景観整備機構の間で管理協定を締結し、景観整備機構が建築物や敷

地の清掃、軽易な補修などを行うようにする。 ・景観重要建造物の指定に伴う建築基準法の制限の一部の緩和(建ぺい率、居住の採

光及び換気など)を条例に定め、老朽化した町家について、現在の外観を保存しな

がら、修繕を行う。 ・景観重要建造物の保存に係る助成制度の創設や固定資産税の減免措置などを行い、

景観重要建造物指定のメリットを厚くするようにする。

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第 2 部 市町における景観形成の推進

145

・景観重要建造物の公開、東海道にまつわる文献や生活用具、芸術品の展示など、建

造物の利用方法についても所有者と協定を締結する。

歴史的な建築物の保存・活用

静岡市 蒲原宿の旧五十嵐邸

-施設の概要

・東海道蒲原宿は今でも沿道に町割りを残し、新旧の建築物

が混在しながらも宿場の雰囲気を残している。

・旧五十嵐邸は、宿場内にある和洋折衷建築で、在来の町家

の形態を残しながら、歯科医院を開業する際に洋風に改造

された外観などが特性となっており、まち並みの中でアイ

ストップになっている。平成 12 年には、国の登録有形文

化財に登録された。

-取組の経過

・「旧五十嵐邸を考える会」を中心に、旧五十嵐邸の価値の学

習と活用の検討、実験的活用が繰り返し行われた。

・また、「蒲原宿まちなみの会」、「東海道蒲原宿の会」など、

地域住民の活動が活発になってきた。

・これらの活動の拠点として、旧五十嵐邸の整備が行われた。

・整備にあたっては、地元の職人による修復、地域住民を対

象とした修復方法の学習、町民投票による外壁のペンキの

色の選定、ペンキ塗りへの子どもの参加など、今後の地域

によるまち並みづくりに繋がる取組を取り入れていった。

・整備後は、観月の夕べ、ひな祭りイベント、コーヒーサロ

ン、施設公開のボランティアガイド、まちづくり講座など、

様々な活用が行われている。

②歴史的な魅力の感じられるまち並み景観の保全・育成

届出勧告制により規制・誘導を推進

建築物の現状や現在の生活など

を考慮しつつ柔軟に規制・誘導

歴史的な魅力の感じられる

まち並み景観を保全・育成

するために重要な事項

より良好なまち並み景観を

保全・育成をするために望

まれる事項

景観計画

景観協定

上乗せの規制・誘導

事 例

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146

A.景観計画による建築物の形態・意匠などの規制・誘導 ・地域住民などによるまちづくりの話し合いを進め、様々な時代の建築物が建ってい

る中で、まち並み景観の魅力を形成している重要な要素で、魅力を保っていくため

に積極的な規制・誘導が必要な事項※1を明らかにする。 ・その上で、景観計画を活用して、旧街道の沿道地域を景観計画区域に設定し、全て

の建築行為などを対象とし、景観形成基準※1を設けて、届出・勧告制度により建

築物の形態・意匠などを規制・誘導する。

※1 景観形成の主要基準のイメージ

B.景観協定による建築物の形態・意匠などの規制・誘導の上乗せ ・景観計画による景観形成基準に加えて、良好なまち並み景観の保全・育成を更に進

めるための事項を景観協定※2に定める。 ・協定は、各建築物の現状や周囲の建築物などとの関係、現在の生活などを考慮しな

がら、地域住民が主体となって柔軟に運用していく。それにより、まち並みが美し

く、暮らしやすい地域を実現していく。 ・あわせて、季節や風習が感じられる景観とするために、季節行事の飾り付けを行う

ことや飾りの種類や位置などを景観協定※2に定めるようにする。

③協働による歴史的なまち並みの保全・育成

A.景観協議会の設立 ・景観行政団体、地域住民、NPO法人、地元建築士会などにより、当該地域の景観

協議会を設立する。 ・協議会では、景観重要建造物の維持や修繕の方法、利用方法、景観協定に基づいて

届出された建築物の形態・意匠のチェックや助言、街道の修景方法の協議などを行

うようにする。

既存の屋根並みを

維持するため、屋

根の形状は、切妻

屋根とする

壁面の揃った良好な

まち並みを維持する

ため、街道に面する

建築物の壁面の位置

は、道路境界線から 1

m以内とする

建築物の高さは、既存の屋

根並みを維持するため、2

階以下かつ 高高さが 10m

を超えないものとする

屋根の色彩は灰色、

壁面の色彩は茶系

とし、原色は避ける

ものとする

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第 2 部 市町における景観形成の推進

147

※2 協定の主要事項のイメージ

歴史的なまち並み景観の保全・育成

静岡市 宇津之谷地区の美しいまちづくり活動

-取り組みの経過

・当該地区は、江戸末期から明治にかけての比較的古い

建築物が多い。旅人を泊めた旅籠の造りとなっている

ものもあり、歴史的な街道の面影を残している。

・市都市景観条例に基づく「美しいまちづくり協議会」

を設立し、「美しいまちづくり整備計画」を策定、そ

れに基づく「美しいまちづくり協定」を締結した。

・市では、当該地区を条例に基づく「美しいまちづくり

推進地区」に指定し、建築物などの修景への助成、「屋

号」看板の設置、石畳をイメージした舗装整備などを

推進してきている。

施行前

施工後

-主な景観形成基準

項目 基準

構造 主体構造は原則木造。その他の場合は外観を木造風

高さ 階数は原則2階以下、棟高は 10m以下、軒高は周囲の軒線と調和させる

位置 家屋など連続している通りでは、壁面の位置をできるだけ隣接する建築物の壁面

に揃える

屋根 切妻屋根を原則とするが建築物の用途によっては寄棟、入母屋でもよい

外壁 大壁又は又は真壁とし、下見板張りを原則とするが、漆喰壁、リシン壁でもよい

石垣など 宅地の整備などを行う際は、コンクリート擁壁は避け、野面石積みを基本とする

事 例

街道に面した部分

の玄関扉、窓の素材

や意匠は、周囲の景

観を損なわないも

のとする 正月には、各建築物

の玄関上部中央に

玉飾りを付けるよ

うにする

お盆には、玄関脇に

盆提灯を飾るよう

にする

固有の地割を保存するた

め、現在の敷地形状を変更

しないように努める

車庫やカーポート

は、色彩の配慮や周

囲の緑化、道路境界

線からの後退などに

より、周囲の景観を

損なわないように努

める 街道に面した部分

には原則、垣・柵を

設置しないように

する。設置する場合

は、板塀や生垣など

景観に調和するも

のとする

屋外建築設備は、街

道から見えない位

置に設置するよう

努める

軒高は、両隣など周

囲の建築物と合わせ

るようにする

外壁、屋根の素材は、

周囲の景観を損なわ

ないものとする

出典:美しいまちづくり推進地区

宇津之谷地区

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148

フィルム微助人

-フィルムコミッションについて

・アメリカで活発に行われているフィルムコミ

ッションは、産業としての映像制作を自治体レ

ベルで援助し、ひいては産業そのものを育成す

るとともに、映画制作の誘致を通して地域経済

の活性化を図ることを目的としている。

・国内でも、観光産業の育成や地域振興を図るこ

とを目的に、全国的な展開がみられる。

・フィルムコミッションを通し、良好な景観を活

用してロケを誘致し、地域の活性化につなげて

いくことができる。

-設立までの経過

・沼津青年会議所のイベントを通して、沼津市出

身の映画監督との交流が始まり、フィルムコミ

ッション活動に興味のある地域生活者のネッ

トワークが形成され、同時期に監督の作品の撮

影を沼津市・三島市に誘致することができた。

・フィルム・コミッションの地域サポート団体と

して「沼津ロケ応援団」を結成し、エキストラ

手配を主に、活動の幅を広げてきた。

・結果として、

活動を県東部地域・県全域に広げ、

映像制作という非日常を地域の人達と体験し、

サポートする活動を通して、

地域の恵まれた自然や景観、まちの資産(人的、

物的、歴史的)を掘り起こし、地域の活性化を

図り、

国内外に地域の魅力を発信し、同時に地域生活

者のネットワークをつくり、まちに新たな歴史

をつくることを目的に、

「フィルム微助人」が設立された。

-活動の概要

・映像制作者及びフィルムコミッションへのエ

キ ス トラ 紹 介か

ら ロ ケー シ ョン

の紹介、制作への

協力・補助を行っ

ている。

・ロケーションマップの作成、各活動の交流など

により、人的・物的な地域固有の資源を発掘・

蓄積している。

・Web サイト、ロケシンブン、メールマガジン、

コミュニティ FM などにより、活動やロケ情

報、地域情報などを発信している。

・地域で活動する様々な人との交流を図り、勉強

会・イベントを開催している。

-景観形成に係る活動

・映像制作者のニーズに合う良好な景観の発掘を

行っている。電信柱や防霜ファンなどの工作物

の無い富士山を正面に見る茶畑、周辺を茶畑に

囲まれた昭和初期の

木造民家などを発掘

し、CM や映画のロ

ケ地として採用され

た。

・富士市芸術村や起雲閣など、歴史的な建造物を

ロケ地として紹介することを通して、その保存

を支援している。メディアに露出することで、

その建造物や地域

住民などによる保

存活動への理解・関

心を高めることに

つながる。

・ホームページなどによるロケ地の紹介を通し

て、静岡県の素晴らしい景観を PR している。

制作者からの依頼はもとより、ロケ地巡りに訪

れる人の増加につながっている。

景観に係る様々な取組の紹介

情報の フィード バック

人、場所、物、 サービスなど

地域資源

・エキストラやロケーションの紹介 ・ロケーションマップの作成 ・フィルムコミッション活動やロケ情報などの発信 ・勉強会・イベントなどの開催

フィルム微助人の活動

映像制作会社 市民 企業

情報集約 料金 提供

ロケの誘致

観光振興 地域活性化

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第 2 部 市町における景観形成の推進

149

第5章 景観法の活用における留意事項

(1)景観行政団体の協議・同意における手続き

・政令市・中核市以外の市町が景観行政団体となる場合の協議・同意の手続きを以下に示す。 ・景観行政団体になった上で、景観計画の策定に着手することが望ましい。

1)協議の手続き ・協議を行おうとする市町の長は、協議書(正本1部及び副本1部)に次に掲げる書類を添え

て知事に提出する。 -景観行政団体の事務、その他良好な景観の形成に係る事務を行う部署の事務処理体制図を

記載したもの -景観計画の策定、その他良好な景観の形成に関して実施する施策の内容及び実施予定時期

を記載したもの -市町をまたがる広域的な景観の形成に関する考え方を記載したもの -その他知事が必要と認めるもの

〈記載例〉

部署の事務処理体制図

○○課長

△△係長

係員(○名)

実施する施策の内容及びその実施予定時期

平成 17,18 年度(予定) 各種景観施策の検討、景観計画(案)の作成

平成 19年度(予定) 景観計画の策定、景観法委任条例の制定・施行

市町をまたがる広域的な景観の形成に関する考え方

○○川の両岸、△△山の眺望など、市町をまたがる広域的な景観の形成については、隣

接する□□市などと連携し、調和のとれた景観形成が図れるよう検討していく。

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150

2)同意の基準

・景観行政団体の事務は住民に身近な業務であることに鑑み、知事は、市町の長から協議があ

ったときは、当該市町の事務処理体制上明らかに景観行政団体の事務の執行が困難であると

認める場合その他当該市町が景観行政団体の事務を行うことについて特段の支障があると認

める場合を除き、これに同意をする。 〈図:協議・同意の手続きの流れ〉

景観行政団体となる

関係各室

同 意 通 知同意書受領

公 示

市 町 村 県市街地整備室

協議の検討

通 知

 ※景観行政団体となる日の30日前までに公示

内部決裁

土木事務所(都市計画課)

受理・進達

(議会等で報告)

協議書提出 受 理

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第 2 部 市町における景観形成の推進

151

(2)景観計画の策定の手続きなど

1)景観計画の策定の手続き

①策定の手続き ・景観法第9条では景観計画策定の手続きとして以下の事項を定めている。

・あらかじめ、公聴会の開催など住民の意見を反映さ

せるために必要な措置

・都市計画区域などに係る部分について、あらかじめ、

県都市計画審議会(景観行政団体に市町都市計画審

議会が置かれているときは当該市町都市計画審議

会)の意見を聴くこと

・景観重要公共施設の整備・許可基準に関する事項を

定めるときは、あらかじめ、当該施設の管理者と協

議し、同意を得ること

・自然公園法の特例を定めるときは、国立公園などの

管理者と協議し、同意を得ること

・景観計画を定めたときは、その旨を告示し、公衆の縦覧に供すること

・以上の規定は、景観行政団体が景観計画を定める手続きに関する事項について条例で必

要な事項を定めることを妨げるものではないこと

②住民の意見を反映させるために必要な措置について ・景観は住民の生活に密接に関係し、景観計画は住民の建築行為などを制限するものである

ことから、計画策定にあたっては、住民の参加機会を十分に確保し、かつ、条例に定める

ことが望まれる。住民の参加機会のイメージを 152ページに示すので参照されたい。

・参加の対象は、景観計画区域内の住民が基本となるが、景観計画の中で扱っている景観の

性格によっては、区域外の住民の参加を得ることが必要となることも考えられる。計画策

定にあたっては、参加対象とする住民をよく検討する必要がある。

2)景観地区の指定の手続き ・景観地区は都市計画法に位置づけられた地域地区であり、都市計画決定手続きを経て指定

される。 ・都市計画法第 17条の 2 では、都市計画決定手続きの条例による付加を定めている。

景観地区を始め都市計画決定事項全般において、住民参加機会の拡大を図るために、152

ページのイメージを参考に、条例による手続きの付加を推進することが望まれる。

・住民意見を反映させる措置 ・都市計画審議会の意見聴取

・景観重要公共施設管理者 との協議・同意

・国立公園などの管理者との 協議・同意

・景観計画の告示・縦覧

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152

〈図:景観計画策定などにおける住民参加機会のイメージ〉

策定手続きの段階 住民参加機会

アンケート(A)

住民会議による素案の作成(B)

市民団体や業界団体の代表などから構成する策定委員会による原案の作成(C)

景観協議会による原案の作成(計画変更)

広報紙やホームページなどによる作成経過や素案の公開(D)

景観協議会は景観計画策定後でないと設立できないため、

ここでは計画変更の原案の作成をイメージしている

パブリックコメントの募集(F)

公聴会、説明会の開催(E)

原案の公告・縦覧、意見書の提出、回答書の作成と縦覧(G)

都市計画審議会の意見聴取(都市計画区域内などの計画部分)

景観審議会の意見聴取 (自主条例において景観審議会が設置されている市町)

パブリックコメントの募集(F)

公聴会、説明会の開催(E)

案の公告・縦覧、意見書の提出、回答書の作成と縦覧(G)

原 案 の

作 成

原 案 の 広聴・公聴

案 の

広聴・公聴

景観計画の決定

案の作成(原案の修正)

住民等提案制度による素案の提案(景観法第 11~14 条)

都市計画審議会の意見聴取(都市計画区域内などの計画部分)

景観審議会の意見聴取

(自主条例において景観審議会が設置されている市町)

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第 2 部 市町における景観形成の推進

153

〈図:住民参加の手法〉152ページの図の A~G に対応

手法 概要

A アンケート 住民アンケート

・住民を対象に、景観の現状や問題点、景観形成の方向性、

景観形成手法の導入などに係る意向を調査する

来訪者アンケート

・観光客や近隣市町からの来訪者を対象に、印象的な景観

や好ましくない景観などに係る意向を調査する

B 住民会議 ・市民団体や業界団体の推薦者、公募住民などの参画によ

り、ワークショップ手法を適宜取り入れ、景観点検のウ

ォーキング、景観形成についての意見交換などを行い、

景観計画の素案を作成する

C 策定委員会 ・市民団体や業界団体の代表、学識経験者などから構成し、

住民会議や庁内組織から提案された案について、各立場

からの協議を行う

D 広報紙・ホームページ ・アンケート結果、住民会議や策定委員会の様子、景観計

画の素案などを公開する

・まちの良好な景観を紹介する

E 公聴会・説明会 ・景観計画の原案や案がまとまった段階で、公開の場にお

いて計画を説明し、住民の意見を伺う

F パブリックコメント ・景観計画の原案や案がまとまった段階で、計画を広く住

民に公表し、住民から意見を募集する

G 案の縦覧、意見書の提出 ・景観計画の原案や案を住民に公表する。住民から意見書

が提出できるものとし、意見があった場合は、行政は回

答書を作成し、縦覧できるようにする

その他

シンポジウム、

パネルディスカッション

など

・学識経験者や景観形成に係る市民団体などによる景観に

関する意見を聴くことのできる場を設け、住民の意識を

啓発する

・あわせて、景観計画の策定の経過や計画素案などの紹介

を行う

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154

条例による都市計画決定手続きなどの付加

熱海市まちづくり条例

・協働のまちづくり、計画的なまちづ

くり、住み良いまちづくりの推進を

目指すまちづくり条例において、市

民などが積極的に都市計画法を活

用できるようにするために、都市計

画法に基づき、都市計画の提案方

法、地区計画等の申出方法、都市計

画決定手続きの付加などの都市計

画決定の仕組みについて定めた。

―付加した内容

・条例にある「地区まちづくり協議会」

「テーマ型まちづくり協議会」を提

案できる団体として位置づけた。

・案の前段の原案の段階で、原案の縦

覧・意見書提出、都市計画審議会に

よる審議を行うこととした。

・原案及び案の縦覧期間を 28 日間に

延長した。(ただし、地区計画にお

いて、土地所有者全員の同意を得て

いる場合は 14 日間にできるように

した)

一般的な手続き の流れ

場合によって必要と なる手続きの流れ

凡例

都市計画(地区計画)

の決定または変更 の提案

都市計画審議会による審議

市による説明会・公聴会の開催 (地区計画を除く)

都市計画決定

都市計画(地区計画)原案の作成

市による委員会などの設

置、説明会の開催など

都市計画(地区計画)の原案の縦覧

都市計画(地区計画)の案の作成

意見書への回答書の縦覧 (地区計画の場合は、説明会の開催)

都市計画(地区計画)の 案の縦覧・説明会の開催など

都市計画審議会による審議

市民などによる意見書提出 ・市による回答の縦覧

地区計画の決定、変

更または案の申出

市民などによる意見書の提出

市による説明会 の開催など

事 例

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第 2 部 市町における景観形成の推進

155

3)景観農業振興地域整備計画の策定の手続き ・景観農業振興地域整備計画の策定の手続きは、農業振興地域整備計画の策定手続きを準用

すること(景観法第 55条第4項)になっている。

(市町村の定める農業振興地域整備計画) ・農業振興地域整備計画を定めようとするときは、都道府県知事と協議

(農業振興地域整備計画の基準) ・農業振興地域整備計画は、当該市町の建設に関する基本構想に即すること

(農業振興地域整備計画の案の縦覧など) ・農業振興地域整備計画を定めようとするときは、その旨を公告し、計画の案を縦覧に

供すること ・当該市町の住民は、当該市町村に意見書を提出することができる ・農用地利用計画に係る農用地区域内にある土地の所有者などは、案に対して異議があ

るときは申し出ることができる ・市町村は、異議の申出を受けたときは、これを決定しなければならない ・決定に不服がある申出人は、都道府県知事に対し審査を申し立てることができる ・都道府県知事は、審査の申立てを受理したときは、これを裁決しなければならない ・市町村は、異議の申出がないとき、異議の申出があつた場合はその全てについて決定

があり、かつ、審査の申立てがなかったとき、又は審査の申立てがあった場合はその

全てについて裁決があったときでなければ、協議の申出をしてはならない

(農業振興地域整備計画の公告など) ・都道府県又は市町村は、計画を定めたときは、その旨を公告し、かつ、都道府県にあ

っては農林水産大臣及び関係市町村長に、市町村にあっては都道府県知事を経由して

農林水産大臣に、当該計画書の写しを送付 ・都道府県知事又は市町村長は、当該計画書又はその写しを当該都道府県又は市町村の

事務所において縦覧に供すること ※変更に関する事項は省略

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〈図:景観農業振興地域整備計画の策定の手続き〉

異議 申出 なし

決定に対し不服

計画決定の公告

計画の縦覧 県知事

農林水産大臣

(地方農政局等)

送付

送付

計画の決定

審査申立ての裁決

(申立てを受理した日から60日以内)

審査の申立て

(決定の翌日から 30 日以内)

異議の申出の決定

(縦覧期間満了後 60 日以内)

計画案への異議申出

(縦覧期間満了の翌日から15日以内)

計画案の公告・縦覧

(30 日間)

計画案の作成

県知事との協議

不服なし

異議申出あり

国有地所管の長の

景観農振計画区域編入

の承認

関係機関

(農業委員会、農業協同組合、土地改良区など)

からの意見聴取

案の作成にあたっては ・住民アンケートの実施 ・住民会議による素案の作成 ・パブリックコメントの募集 ・広報などでの作成経過の報告

など、住民の参画が望まれる

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第 2 部 市町における景観形成の推進

157

4)景観計画区域及び景観地区における建築・開発などの手続き

①建築・開発などの手続き ・景観計画区域においては、対象としている行為の届出を受け、基準に基づき勧告を行う。

必要な場合には、条例を定めることにより変更命令が可能となる。

・景観地区では、建築物の高さや壁面の位置などは建築確認の対象となる。建築物や工作物

の形態・意匠は市町長による認定の対象となる。 ②景観地区の認定などの手続きの条例による付加 ・景観地区の認定などの手続きを、条例により付加することが可能である。 ・建築物の色彩や意匠など景観に影響を与える定性的な事項について、地域の自然、歴史、

文化などの状況や周辺との調和、地区の景観像の達成などの観点から審査を行う上で、住

民や専門家が参画する場を設けることは有効である。 ・具体的には、例えば、市町が独自に設置した景観審議会などの第三者機関や自主条例に位

置づけられた住民団体などの意見を聞くこととすること、申請された建築計画について縦

覧などの開示方法を定めることなどが考えられる。

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〈図:景観計画区域における建築・開発などの手続きの流れ〉

〈図:景観地区における建築・開発などの手続きの流れ〉

建築物 工作物

届出対象・勧告基準

届出(届出違反に対する罰則)

勧 告

必要な場合には、条例を定めることにより変更命令

高さ・壁面の位置など デザイン・色彩 デザイン・色彩 高さなど

都市計画決定(建築物に関する制限を定める)

市町長に認定申請

条例の制定

認 定

行為の着手

認定の表示

検査(場合により)

是正命令など(場合により)

確認申請

建築確認

行為の着手

確認の表示

完了検査

使用制限など(場合により)

適合義務 (届出違反に対する罰則)

建築物 工作物 高さ・壁面の位置など デザイン・色彩 デザイン・色彩 高さなど