社会のあり方力強く主張 - @s[アットエス] | 静岡新聞sbs ...心 の 壁 を 超...

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〆〇ー―‐ /\~‖| 姿 中学生の部 静岡新聞社賞 〆〇ー―‐ /\~‖| 高校生の部 静岡県教育長賞 〆〇ー―‐ /\~‖| 小学生の部 静新会会長賞 社会のあり方 力強く主張 駿 調 優秀賞 ▽小学生の部 松下ちひろ(静岡市立葵小5) 牧野瀬叶葉(浜松市立中郡小5) 島村和希(静岡市立大里西小5) ▽中学生の部 石切山未羽(静岡大成中3) 浦野彩花(島田市立島田第一中1) ▽高校生の部 中西野々香(桐陽高3) ▽小学生の部 原田耀(静岡市立葵小5) 古沢春(静岡大学付属浜松小6) ▽中学生の部 加藤優佳(浜松市立開成中1) 沢米梨々子(浜松市立曳馬中2) ▽高校生の部 奥村実矢(浜松西高1) 小倉明希菜(浜松市立高2) 最優秀賞 ▽小学生の部(静新会会長賞) 新村知己(静岡大学付属浜松小6) ▽中学生の部(静岡新聞社賞) 高橋有珠(静岡大学付属浜松中2) ▽高校生の部(静岡県教育長賞) 遠藤有人(韮山高2) (15) 令和元年( 年)12月4日 (水曜日) (第三種郵便物認可) (15) 令和元年( 年)12月4日 (水曜日) (第三種郵便物認可)

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Page 1: 社会のあり方力強く主張 - @S[アットエス] | 静岡新聞SBS ...心 の 壁 を 超 え て 高た か 橋は し 有あ り 珠す さ ん 〆〇ー―‐ 静 大 付

心の壁を超えて

高たか

橋はし

有あり

珠す

さん〆〇ー―‐

静大付属浜松中

年/\~‖|

あれっ?私が思っているの

とは違う。地下鉄の階段で助

けてもらった体験に感動して

日本に来たという、車椅子の

グリズデイルさんの記事を見

て、率直にそう思った。なぜ

なら、実際に公共交通機関で

席を譲ったり、誰かを助けた

りしている日本人には、あま

りお目にかからないからだ。

むしろ、家族旅行で行った台

湾と韓国の車内で、現地の若

者やカップルが、ごく自然に

祖母と弟に席を譲る姿が新鮮

で、日本人も同じようにスマ

ートな行動が出来ればいいの

に、とさえ思っていたほどだ。

通学に電車を利用する私

は、駅員が乗客に分かりやす

く行き方を教えたり、丁重に

トラブルに対応したりする場

面を時々見かける。グリズデ

イルさんの体験も、このよう

な職務行動の一環である。外

国人から「日本のサービスは

質が高い」と言われるのは、

こうした勤勉で丁寧な仕事ぶ

りが評価されているのだが、

その一方で、個人として親切

な行動をとる国民は、非常に

少ないと常々感じている。

この違いは一体何だろう

か。一つには国民性が関係し

ているのではないかと思う。

夏休みに目撃した光景が良い

例である。それは、旅行で行

った京都の電車内で、中年の

女性が高齢の婦人に席を譲ろ

うとしたが、「私はすぐ降り

るから、大丈夫です」と断ら

れたというものだ。せっかく

勇気を持って行動しても、相

手から「老人扱いされたくな

い」「そんなに不自由してい

ないのに、失礼ね」という態

度を取られると、日本人は委

縮してしまい、次からは声か

けを躊躇してしまう。反対に、

席を譲られる立場になった時

にも、変なプライドが邪魔を

して、素直に応じることが出

来ない。さらに、横並び

「普

通であること」に大きな価値

が置かれ、障害のある人を異

質なものとして見てしまう傾

向がある。外国は、障害も一

つの「個性」と捉え、社会全

体で受け入れる土壌があるか

ら、自然な対応が出来るので

はないかと思う。

東京オリンピック・パラリ

ンピックの開幕まで一年を切

った。外国のホテルに行くと、

サービス料がかかる割に、従

業員が必要最低限の仕事しか

しないなど、不親切に感じる

ことが多い。それに比べて、

日本の旅館やホテルは確かに

サービスレベルが高く、観光

地のバリアフリー化も着々と

進んで、施設面での充実も図

られている。しかし、『ここ

ろのバリアフリー』という問

題を解決しなければ、訪日客

に対する本当の「おもてなし」

は出来ないのではないか。

仕事とプライベートにおけ

る圧倒的な温度差。日本を愛

するカナダ人の記事を通じ

て、私は、日本人の特性に改

めて気づくことが出来た。そ

して今、日本が真の国際化を

実現するためには、私たち一

人ひとりが、日常生活の中で

「見えない壁」を取り除く努

力をしていくことが必要だと

強く感じている。

中学生の部 静岡新聞社賞

「2019年度しずおか新聞

感想文コンクール」(静岡新聞

社・静岡放送主催、県教委、県

私学協会など後援、静新会協力)

の審査結果が発表された。応募

総数は7472点。小学生、中

学生、高校生の3部門で審査は

行われ、最優秀賞にはそれぞれ、

静岡大学教育学部付属浜松小6

年・新村知己さんの「大阪サミ

ット海洋プラごみ対策宣言と

僕」、静岡大学教育学部付属浜

松中2年・高橋有珠さんの「心

の壁を超えて」、静岡県立韮山

高2年・遠藤有人さんの「優生

思想と社会への思い」が選ばれ

た。学

校賞(団体賞)は応募作品

数などを総合的に選考し、小学

生の部から2校、中学生の部か

ら8校、高校生の部から3校が

決定した。

優生思想と社会への思い

遠えん

藤どう

有ゆう

人と

さん〆〇ー―‐

韮山高

年/\~‖|

僕が「優生思想」という得

体の知らない言葉を初めて知

ったのは、約三年前の障害者

施設「津久井やまゆり園」で

起きた殺傷事件のときだ。犯

人が語ったというヒトラーの

思想、これが人間を優劣で分

け、優れた人間のみに存在を

認めるという「優生思想」だ

った。家族の中に障害者をも

つ僕としては、当時、かなり

の憤りと恐怖を感じたものだ

が、まだまだ、ヒトラーも犯

人もある特定の思想をもつ特

別な人物という認識しかなか

った。

まさか憲法で基本的人権の

尊重が定められ、自由と権利

が守られているはずのこの現

代の日本で、僕が生まれるほ

んの数年前まで国家が制定し

た障害者に不妊手術を強制す

る「優生保護法」という法律

が存在していようとは。千言

万語を費やしてもこの衝撃を

言い尽くし難い。どこに人権

が、どこに自由があるという

のだ。やっと謝罪と救済が始

まったといえども、すべてを

踏みにじられた被害者の痛み

は想像を絶するものがあるは

ずだ。当時としては、戦後の

食糧不足の中、よかれと思っ

て作られたという。今現在の

感覚では、正気の沙汰かと信

じられないというのが正直な

思いだ。現代の社会では、当

然であったり仕方のないこと

と思われていることが、近い

将来、時代や政治が変わる中

で実はあまりにも残酷なこと

であったということが多々あ

ることは、歴史も証明し、そ

して今回のこの記事によって

改めて思い知らされた。そし

て、社会や国家の勝手な都合

や思惑により攻撃の的とされ

るのは、常に社会的弱者なの

だ。さ

らに驚いたことに、この

法律と共に生きてきたはずの

祖父母、両親とも全くこのよ

うな法律が存在し施行されて

いたことを知らなかったこと

だ。毎年、いくつもの法律が

知らない内に国会で成立して

いる。無知、無関心でいるこ

とは、ある種の罪であるとも

実感した。来年は僕もいよい

よ選挙権を手にすることにな

る。このような過ちを繰り返

さないためにも社会や政治に

無関心では済まされないと深

く心に刻みこんでおかなけれ

ばと思う。また、憲法がある

からといって、すべての人の

人権が守られていると安心す

るのは禁物であると気付かさ

れた。人権を守らなければと

いう一人一人の強い思い、憲

法によって国家権力を見張る

という社会全体の意識が必要

不可欠なのだ。

記事の中で、「今なお内な

る優生思想は存在しないか」

と問いかけている。僕はある

種の優生思想が社会に息づい

ているように思う。ますます

進化を遂げる出生前診断で、

異常確定九割が中絶だと聞

く。いろいろな事情や考え方

があり、判断は個人の自由が

前提だが、障害者の生活を知

っている僕としては障害があ

るというだけで、かわいそう

で不幸な存在、或いは不要な

存在だと淘汰されていくの

は、少し寂しい思いがする。

幸か不幸かなど本人にしか決

めることはできない。生産性

等の優劣だけではなく、多様

性を認めた共に生きる社会で

あって欲しいと願ってやまな

い。

高校生の部 静岡県教育長賞

大阪サミット海洋プラごみ対策宣言と僕

新しん

村むら

知とも

己き

さん〆〇ー―‐

静大付属浜松小

年/\~‖|

大阪サミットの首脳宣

言の新聞記事を僕は楽しみに

していた。四月から海洋プラ

スチック(プラ)ごみ問題に

ついて学校で、また、独自に

勉強してきたからだ。

新聞二面の記事を読むと、

「大阪ブルー・オーシャン・

ビジョン」という大目標の設

定が目に入った。二〇五〇年

までにプラごみによる追加的

な汚染をゼロに削減すること

を目指すということだが、や

や期限が遅いのではないかと

感じた。しかし、多くの国と

の共同作業なので、そうテン

ポ良く進まないのだろう。設

定達成に価値があると思う。

残念だったのは、扱いが小さ

く掲載順が最後であること

だ。G

サミットは基本的に

世界の経済問題が主で、環境

問題はオマケと思われている

ことに、少し不満が残った。

さて日本としては、このビ

ジョンを実現するためにどう

していくのか。新聞には、具

体例が書かれていなかったの

で、外務省のホームページを

見てみた。すると、「MAR

INE・イニシアティブ」と

いう言葉が出てきた。詳細を

見ると、環境省の海洋プラス

チックごみ対策アクションプ

ランを国際的な視点からまと

め直したものであることが分

かった。対外的に日本の活動

をアピールするという点で良

い方策と思われた。

最後に僕自身の取り組みに

ついて考えてみた。一つ目は

海洋プラごみ問題の知識をよ

り深めることだ。最近は「ク

ジラのおなかからプラスチッ

ク」という本を読み、自分で

問題点を再考してみた。海洋

生分解性プラにも興味があ

る。二つ目は海洋プラごみ拾

いだ。夏休みに父と中田島海

岸に行きプラごみ拾いをした

が、思ったよりごみが多く驚

かされた。今後もこの活動を

続けようと思った。

海洋プラごみ問題は地球レ

ベルの課題である。大切な海

を守りたい。地球の一員とし

て。

小学生の部 静新会会長賞

審査員長

三み

科しな

守まもる

(静岡県立中央図書館長)

社会のあり方力強く主張作品について意見を交わす審査

静岡市駿河区登呂の静岡

新聞放送会館

今年はどのような作品に

出会えるのか、とても楽し

みでした。

全ての作品に共通してい

ることが一つあります。そ

れは、現在を見つめ、過去

を振り返り、未来を考え、

世の中はどうあるべきか、

これからどう行動するべき

か、社会のあり方や、自分

を含む人間の生き方につい

て、主体的に力強く主張し

ていることでした。

小学生の部の新村知己君

は、G

サミットでの宣言

内容を熟読し、地球レベル

での対応が急務であるべき

環境問題の取り扱いが低い

ことに批判と懸念を表明し

ます。そして日本独自の取

り組みを調べ、積極的に評

価したうえで、自分自身の

環境問題への取り組みにつ

いて、「地球の一員」とい

うグローバルな視点を盛り

込みながら簡潔かつ説得的

にまとめており、文章構成

力も高い力作です。

中学生の部の高橋有珠さ

んは、バリアフリーに関す

る記事の内容と自分の身近

な経験事例との対比という

鋭利な切り口から、日本人

の、「仕事」と「プライベ

ート」での他者への関わり

方・心配りの違いについて

論じ、海外での実体験も交

えながら、日本人の特性に

まで考察を深めます。それ

を踏まえ、日本人の国際化

への対応としての「心のバ

リアフリー」「見えない壁」

という課題とその解決につ

いて具体的に提言する、論

理的で表現力豊かな文章で

す。高

校生の部の遠藤有人君

は、旧優生保護法と強制不

妊救済法とに関わる記事か

ら、人権を保障するために

制定されるべき法律が、結

果として社会的弱者の人権

を否定した理不尽を強く批

判します。有権者となる自

覚を胸に、憲法や法律の内

容に無関心でいることへの

自戒を込め、さらに出生前

診断と内なる優生思想の存

在との関連についても複眼

的に問いかけながら、多様

性を認める共生社会の実現

を願う、熱のこもった迫力

ある作品です。

現代は、高い専門能力と

ともに、自らの専門性の社

会的意義を総合的・俯瞰

(ふかん)的に確認する視

野と知識が求められる時代

です。今年ノーベル化学賞

を受賞された吉野彰氏は、

若い世代に向けて「ずばぬ

けて得意な科目が自分の武

器になるが、幅広い教養も

身につけてほしい」とコメ

ントしています(

付静岡新聞から)。新聞は、

自分を取り巻くあらゆる分

野のタイムリーな話題を対

象とし、簡潔でわかりやす

い文章にまとめています。

総合的な視野を養い、豊か

な教養を身につけるうえ

で、信頼度と完成度が格段

に高い情報源といえます。

これからも新聞を活用し、

広く深く、人間と社会を見

る目、考える力を育ててほ

しいです。

優 秀 賞▽小学生の部

松下ちひろ(静岡市立葵小5)

牧野瀬叶葉(浜松市立中郡小5)

島村和希(静岡市立大里西小5)

▽中学生の部

石切山未羽(静岡大成中3)

浦野彩花(島田市立島田第一中1)

▽高校生の部

中西野々香(桐陽高3)

入 選▽小学生の部

原田耀(静岡市立葵小5)

古沢春(静岡大学付属浜松小6)

▽中学生の部

加藤優佳(浜松市立開成中1)

沢米梨々子(浜松市立曳馬中2)

▽高校生の部

奥村実矢(浜松西高1)

小倉明希菜(浜松市立高2)

最優秀賞▽小学生の部(静新会会長賞)

新村知己(静岡大学付属浜松小6)

▽中学生の部(静岡新聞社賞)

高橋有珠(静岡大学付属浜松中2)

▽高校生の部(静岡県教育長賞)

遠藤有人(韮山高2)

(15)   令和元年( 年)12月4日 (水曜日) (第三種郵便物認可)(15)   令和元年( 年)12月4日 (水曜日) (第三種郵便物認可)