第103回日本脳神経外科学会関東支部会 抄録集 -...

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第 103 回日本脳神経外科学会関東支部会 抄録集 くも膜下出血にて発症し、診断に苦慮した悪性神経膠腫の一例 Subarachnoid hemorrhage associated with malignant glioma, case report 藤井 博子 1 、神田 大 1 、山崎 滋孝 2 、鈴木 尚 3 、草鹿 元 3 、篠田 宗次 3 A-01 1 東京臨海病院 脳神経外科、 2 東京臨海病院 病理診断部、 3 自治医科大学附属さいたま医療センター 脳神経 外科 【目的】くも膜下出血にて発症した、悪性神経膠腫の一例を報告する。【症例】59 歳男性、主訴は頭痛。平成 19 年 1 月 18 日、頭痛・嘔吐を来たし当院に搬入された。来院時意識レベルは JCS2、頭部 CT にて右側頭葉に血腫を伴うびまん性くも膜 下出血を認めた。脳血管撮影上明らかな血管異常を確認できず、経過観察とした。翌日には脳腫脹により意識状態の悪化を きたしたため、開頭血腫除去術および外減圧術を施行した。術中、血腫内に AVM 様の異常血管と思われる部分と底部に腫瘍 に類似した組織を認めた。病理所見では異常血管増生が主であり、このときは AVM と診断した。経過中、腫瘍性病変も疑い 、MRI を定期的に施行したが、術後変化と判断した。それ以上に、頭蓋内圧管理、全身管理、特に創感染、水頭症の管理に 難渋した。発症後 3 ヶ月を経た 4 月半ばに頭蓋形成術を行い、5 月半ばに ADL がほぼ改善した。この頃施行した MRI 上腫瘍 を疑う腫瘍増生変化が確認され、病理標本を再度検討した結果、最終的に悪性神経膠腫(anaplastic oligodendroglioma) と診断した。【結果】くも膜下出血にて発症し、診断に苦慮したが、最終的に悪性神経膠腫と診断、現在は化学療法を施行 中である。【考察】原因不明のくも膜下出血の中には、本症例のように 1.悪性神経膠腫が原因で出血した症例や、2.AVMに 神経膠腫が合併し出血発症した報告、さらに 3.AVM の出血の中でも、病理標本は神経膠腫に類似した反応を示すこともあり 、本症例をこれら過去の報告と合わせて検討する。

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第 103 回日本脳神経外科学会関東支部会 抄録集

くも膜下出血にて発症し、診断に苦慮した悪性神経膠腫の一例

Subarachnoid hemorrhage associated with malignant glioma, case report

藤井 博子 1、神田 大 1、山崎 滋孝 2、鈴木 尚 3、草鹿 元 3、篠田 宗次 3 A-01

1東京臨海病院 脳神経外科、2東京臨海病院 病理診断部、3自治医科大学附属さいたま医療センター 脳神経

外科

【目的】くも膜下出血にて発症した、悪性神経膠腫の一例を報告する。【症例】59 歳男性、主訴は頭痛。平成 19 年 1 月 18

日、頭痛・嘔吐を来たし当院に搬入された。来院時意識レベルは JCS2、頭部 CT にて右側頭葉に血腫を伴うびまん性くも膜

下出血を認めた。脳血管撮影上明らかな血管異常を確認できず、経過観察とした。翌日には脳腫脹により意識状態の悪化を

きたしたため、開頭血腫除去術および外減圧術を施行した。術中、血腫内に AVM 様の異常血管と思われる部分と底部に腫瘍

に類似した組織を認めた。病理所見では異常血管増生が主であり、このときは AVM と診断した。経過中、腫瘍性病変も疑い

、MRI を定期的に施行したが、術後変化と判断した。それ以上に、頭蓋内圧管理、全身管理、特に創感染、水頭症の管理に

難渋した。発症後 3 ヶ月を経た 4 月半ばに頭蓋形成術を行い、5 月半ばに ADL がほぼ改善した。この頃施行した MRI 上腫瘍

を疑う腫瘍増生変化が確認され、病理標本を再度検討した結果、最終的に悪性神経膠腫(anaplastic oligodendroglioma)

と診断した。【結果】くも膜下出血にて発症し、診断に苦慮したが、最終的に悪性神経膠腫と診断、現在は化学療法を施行

中である。【考察】原因不明のくも膜下出血の中には、本症例のように 1.悪性神経膠腫が原因で出血した症例や、2.AVM に

神経膠腫が合併し出血発症した報告、さらに 3.AVM の出血の中でも、病理標本は神経膠腫に類似した反応を示すこともあり

、本症例をこれら過去の報告と合わせて検討する。

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脱髄疾患との鑑別が困難であった神経膠腫症の一例

A case of gliomatosis which was difficult to differentiate from demyelination

金澤 恭子 1、土居 浩 1、大橋 元一郎 1、吉田 陽一 1、徳永 仁 1、中村 精紀 1、望月 由武人 1、野原 千

洋子 2

A-02

1財団法人東京都保健医療公社 荏原病院 脳神経外科、2財団法人東京都保健医療公社 荏原病院 神経内科

<はじめに>神経膠腫症は、2葉以上の大脳葉に腫瘍性の神経膠細胞がびまん性に浸潤する gliomatosis cerebri としての

臨床像を呈するのが典型的である。今回われわれは、大脳白質病変を伴わない、小脳及び脳幹の神経膠腫症を経験したので

、報告する。<症例>68 歳女性。歩行障害を主訴に来院した。神経学的には、水平注視方向性眼振を認め、軽度の左中枢

性顔面麻痺、右上下肢の深部腱反射亢進及び筋力低下があり、wide-based で右足をひきずり歩行していた。感覚系では、

左耳介後部、及び両上下肢の左側優位のしびれ感、Lhermitte 徴候、両下肢深部覚の低下、左側優位の四肢の失調を認めた

。頭部 MRI では、T2WI で、延髄下部腹側正中部~左傍正中部、外側領域、被蓋側、及び延髄上部左外側領域に、多発性の

軽度の高信号病変を認めた。mass effect は軽度で、内部に出血や、変性性壊死の所見を認めなかった。造影 T1WI では明

らかな異常増強効果を認めなかった。小脳虫部左側にもわずかな高信号があり、同様の病態が存在すると考えられた。MRS

では、NAA の軽度低下を認めたが、Choline の有意な上昇はなく、腫瘍性病変を示唆する所見を認めなかった。頚椎 MRI で

は、脳幹~上位頚椎にかけて連続性に T2WI で髄内に円形の高信号を認めた。小脳扁桃ヘルニアに対し後頭開頭による外減

圧術を行うとともに、小脳病変の生検を行った。病理組織学的診断は、gliomatosis of the cerebellum で、免疫組織学的

には、p53、MIB-1 陽性であった。<考察>大脳病変を伴わない神経膠腫症はまれであり、報告も少ない。本症例は、神経

膠細胞のびまん性の浸潤を認めること、正常の脳実質の構築が保たれていること、mass effect が軽度であり、壊死を伴っ

ていないことから、神経膠腫症として矛盾しないと考察した。

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Tractography 及び MEP が機能温存に有効であった運動野直下 ependymoma の一例

Preservation of motor function by using motor evoked potential and tractography in ependymoma

adjacent to motor area

高尾 洋之、森 良介、中崎 浩道、中島 真人、坂井 春男

A-03

東京慈恵会医科大学附属第三病院 脳神経外科

【はじめに】運動野近傍の脳腫瘍においては,治療後 QOL の観点から術後の麻痺の出現をいかに回避するかは重要な問題で

ある.今回われわれは術前 tractography 及び術中 MEP モニターが機能温存に有効であった症例を経験したので報告する.

【症例】56 歳女性.40 年前より左上肢の一過性の不随意運動,巧緻運動障害を自覚していたが,放置していた.今回,犬

咬傷で来院した際,頭痛,眩暈,左上肢の不随意運動を訴えたため頭部 CT を行った所,右大脳半球に石灰化を伴う嚢胞性

病変を認めた.MRI では,側脳室体部に接した充実性成分は不均一に造影され,複数の小出血を伴っていた.tractography で

は錐体路は腫瘍の前後に圧排されており,この所見を参考に皮質切開部位と進入方向を考慮した手術計画を立てた.運動野

直下に存在するため,MEP モニターのバイポーラ刺激で運動野を同定し,その後方に皮質切開を加え嚢胞内に進入した。安

全な方向を考慮しながら腫瘍を摘出していくと MEP は不安定となり,摘出終了時には消失した.術後は一過性の麻痺が出現

したが,覚醒と共に改善した.病理組織学的には ependymoma であった.術後,tractography では若干の線維の減少を認め

たものの,簡易上肢機能検査(STEF)では僅かな増悪(術前 56/100,術後 50/100)のみで,ほぼ術前同様まで回復した.【考察

】tractography は線維の方向が比較的一定な錐体路や脳梁を解剖学的構造とほぼ同様に描出が可能と言われており,術前

に錐体路と腫瘍の位置関係を把握することができる.術中 MEP との併用により手術の進入路や操作の方向・範囲に有益な情

報が得られ,なおかつ術前後の tractography の比較により機能予後の予測の可能性も示唆された.

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Chordoid glioma of the third ventricle の一例

A case of chordoid glioma of the third ventricle

善本 晴子 1、松尾 成吾 1、澁谷 誠 2、福島 孝徳 1、新村 核 1、森山 貴 1 A-04

1森山記念病院脳神経外科、2東京医科大学八王子医療センター病理診断部

症例は 34 歳男性、頭部外傷時撮影された CT にて第三脳室腫瘍を認めた。無症候であったが、若年であり、診断確定等の

目的で手術施行。手術は interhemispheric transcallosal approach で行った。腫瘍は第三脳室壁、視床下部内側に強く癒

着していたが慎重に剥離し、全摘出を行った。術後の意識覚醒はよく、明らかな尿崩症も出現しなかった。記名力障害も出

現せず神経学的異常なく自宅退院した。外来にて MRI での経過観察を行っているが、術後4ヶ月の時点で異常を認めていな

い。病理所見では、 chordoid glioma of the third ventricle、WHO grade 2 と診断された。Chordoid の要素が少ない

のはこれまでの症例に較べて本症例で特徴的であった。Chordoid glioma of the third ventricle は 2000 年の WHO 分類で

初めて記載されたもので、最近症例報告が増加している。文献的考察を含めて報告する。

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診断に苦慮した小脳 Glioblastoma の一例

Cerebellar Glioblastoma-difficult case to diagnosis

井関 征祐、山本 宗孝、下地 一彰、堀中 直明、菱井 誠人 A-05

順天堂練馬病院 脳神経外科

テント下原発の glioblastoma(GBM)はきわめて稀であると考えられている。今回脳梗塞様の症状が突然出現し、診断に苦

慮した小脳 GBM を経験したので文献的考察を含め発表する。症例は 75 歳男性。2006 年 7月 5 日飲酒中に突然呂律障害が出

現し当院救急外来を受診。既往症として高血圧・糖尿病を認めていた。神経学的には構音障害・軽度の右顔面神経麻痺(H&B:

grade2)、右上下肢に MMT1/5 程度の weakness がみられた。小脳症状はみられなかった。頭部 CT では出血等認められず頭部

MRIを施行したところ明らかな新しい脳梗塞を示す所見はなかったがFLAIRにてラクナ梗塞と診断され当院神経内科に入院

となった。その後症状は軽快し一旦退院。しかし 2007 年 5 月ふらつき増強したため MRI を再度施行。T2WI、DWI、FLAIR に

て右小脳半球に淡い hyper intensity area を認めた。頭部 CT でも同部位に low density area がみられたため再入院とな

る。この mass は徐々に増大し第四脳室への圧迫が出現。頭蓋内圧亢進を示唆する頭痛、嘔吐も出現した。腫瘍性病変の可

能性があったためガドリニウムを使用し造影 MRI 施行。Mass に一致してわずかに造影効果が得られたため開頭生検術を行

った。病理診断は GBM であった。放射線と temozolomide の併用療法を施行したが著効せず死亡した。小脳の GBM はきわめ

て稀に見られる疾患である。画像所見も文献的にもテント上の GBM と異なり初めは典型的な所見を取らず特に血管撮影では

avascular lesion として描出されることもあるといわれている。本症例は発症形式も突然であり、明らかな mass effect

を持つ病変でなかったため脳梗塞と診断された。Retrospective に画像を検討すると症状に一致する画像所見に乏しく、脳

梗塞としても非典型的な経過および画像所見を呈していた。小脳領域の病変で非特異的な経過・所見が得られる症例は極め

て稀とはいえ、astrocytoma などの腫瘍性病変を常に鑑別診断に入れるべきであると思われた。

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Lymphocytic Infundibular hypophysitis を合併した視床下部胚細胞腫の 1例

A case of suprasellar hypothalamic germinoma masking with lymphocytic infundibularhypophysitis

四宮 あや、師田 信人、井原 哲 A-06

国立成育医療センター 脳神経外科

lymphocytic Infundibularhypophysitis に合併したと考えられ、診断に苦慮した視床下部胚細胞腫の症例を経験したので

報告する。患者は 16 歳女児。周産期歴異常なし。低身長、多飲・多尿を主訴に 2000 年国立小児病院を受診し、尿崩症・成

長ホルモン分泌障害の疑いで、頭部 MRI を実施。視交差上方から下垂体茎にかけての腫瘤形成を認めたため、脳腫瘍を疑わ

れ他院に転院の後、腫瘍生検術を行われた。2 回の生検の結果、2 回とも炎症性肉芽所見のみとの結果であった。以降、画

像上、腫瘤性病変は明らかな変化を認めないため、当院の内分泌科にてホルモン補充療法のみを行っていたが、2005 年 5

月から 2006 年 11 月にかけ、画像上、視交差上方から視床下部、脳弓に沿ってのう胞形成を伴った腫瘤性病変が進展増大し

、それに伴い、視力・視野障害の進行を認めたため、当院脳神経外科にて腫瘍部分摘出術を実施した。その結果、病理学的

に lymphocytic Infundibular hypophysitis を合併した胚細胞腫と診断された。術後、放射線・化学療法を行い、現在まで

、画像上の病変は消失している。文献的考察を踏まえ報告する。

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Germinoma 治療 5年後、Choriocarcinoma で局所再発した 1例

local recurrence of intracranial germinoma with malignant transformation

鈴木 剛、高里 良男、正岡 博幸、早川 隆宣、大谷 直樹、吉野 義一、八ツ繁 寛、住吉 京子、青柳

盟史、竹内 誠

A-07

独立行政法人国立病院機構災害医療センター 脳神経外科

【はじめに】Germinoma は 10 年生存率 90%以上に達し、十分に治癒の期待できる小児の悪性腫瘍である。我々は Germinoma

治療 5 年後に choriocarcinoma で再発を認め、ともに病理組織にて確定診断できた症例を経験したので、若干の文献的考

察を加えて報告する。【症例】23 歳男性。既往歴、家族歴に特記事項なし。2001 年 9 月 頭痛にて近医受診。MRI にて松果

体部および下垂体部に腫瘍性病変が認められ紹介となり入院となった。入院時、上方注視麻痺、尿崩症を認めた。HCG(-)

、AFP (-)、下垂体前葉機能は正常であった。2001 年 9 月松果体部腫瘍に対し開頭部分摘出術施行。病理組織診断は germinoma

であった。2001 年 10 月~2002 年 2 月化学療法(CDDP+VP-16: 3 クール)の後、放射線照射(局所 28Gy)施行。画像上腫瘍

は消失したため、外来にて経過観察としていた。2007 年 2 月 頭痛、嘔気にて当院救急外来受診。2006 年 10 月 3 日の定期

MRI にて消失のままであった松果体近傍に腫瘍および腫瘍内出血が認められた。神経学的に軽度失語、右同名半盲が認めら

れた。 血中 HCG >1024 IU/L、HCG-β150 ng/ml、AFP 7.0 ng/ml。開頭腫瘍摘出術施行し病理組織にて choriocarcinoma

と診断した。術後、放射線照射(局所 30Gy)、化学療法(ICE)施行中である。【考察】本症例は Germinoma 治療後、長期間経

て悪性転化を認めた非常に稀な症例である。本症例においては初発、再発ともに病理組織診断を得ることができたという点

でも貴重な症例である。

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頭蓋内転移にて発見された無色素性黒色腫の一例

A case of brain metastasis of amelanotic melanoma

田中 雅樹、井手 隆文、金中 直輔、高須 雄一、金山 政作、柳橋 万隆、花川 一郎、中村 安伸、村

尾 昌彦、竹村 信彦

A-08

東京都立墨東病院 脳神経外科

【目的】今回我々は頭蓋内転移にて発症し、無色素性黒色腫と診断した一例を経験したので報告する。【症例】症例は 41

歳の女性。突発する嘔吐にて発症。他院 CT 上脳腫瘍の診断にて転院搬送された。左側頭部、左側胸部皮下に腫瘤が触知さ

れるが、体表上色素沈着は認めず。諸検査にて計 13 個の頭蓋内病変と、左頭皮下、左鎖骨下、左側胸部、膨大動脈、右傍

腸骨、右鼠径部に腫瘤性病変を認めた。減圧、診断確定目的に開頭腫瘍摘出術、頭皮下腫瘍生検術施行。術後に上下部消化

管内視鏡施行し、十二指腸にも病変を認めた。病理所見は頭蓋内、頭皮下、十二指腸内すべて同一所見であり、色素沈着を

伴わない悪性黒色腫の診断であった。頭蓋内の他病変に関しては他院にてガンマナイフを施行した。【考察、結論】悪性黒

色腫の頭蓋内転移は転移性脳腫瘍の約 1.5%程度と報告され、中枢神経系の転移率 65%と最高の転移率を持つ悪性腫瘍である

。メラノサイトは発生学的には神経堤由来でありの大多数は皮膚より生じるが、皮膚以外にも眼窩内、粘膜、消化管等より

発生する例も認められ、頭蓋内原発例の報告も認める。メラノサイトより発生する悪性腫瘍であることから色素沈着を伴う

事が多いが、腫瘍細胞のメラニン産生能が低いために無色素性黒色腫を呈する例が存在する。メラニン沈着がある場合は、

MRI 上メラニン内に存在する常磁性体のフリーラジカルによって T1WI 高信号、T2WI 低信号を呈し、診断の補助となりうる

が、無色素性黒色腫である場合この限りではない。また病理組織学的にもメラニン顆粒を見いだし難い事があり、免疫染色

にて S-100 蛋白抗体や抗悪性黒色腫単クローナル抗体 HMB-45 等が特異性も高く有用とされる。今回の症例も免疫染色が有

用であった。遠隔転移例(Stage4)の 5年生存率はほぼ 0%と極めて予後不良である。

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側頭窩下腫瘤を形成した多発性骨髄腫の一例

A Case of multiple myeloma with infratemporal fossa tumor

藍原 正憲、塚田 晃裕、塚原 隆司 A-09

北信総合病院脳神経外科

症例は 72 歳男性。一ヶ月の経過で右眼球突出、右側頬部の膨隆、右眼窩周囲の痛みが出現。CT では右側頭窩下に等吸収域

の腫瘤あり、造影剤により増強された。骨 CT では眼窩外側、中頭蓋窩の広範な骨融解所見を認めた。Punched out lesion

は認なかった。MRI で腫瘤は側頭窩下に主座を置き T1 で等信号を呈し、造影剤で増強された。右側頭葉は後内側へ圧排さ

れていた。手術摘出時、腫瘍は眼窩外側から側頭部硬膜に強く付着していたが周囲軟部組織とは境界明瞭であった。病理診

断は多発性骨髄腫であった。術後全身検索を行い Darie&Salmon 分類 stageIIIA,IgG-λ型と診断。後療法として局所照射お

よび化学療法を行ったが診断から11ヶ月の経過で永眠。多発性骨髄腫が腫瘤を形成することは稀である。今回我々は多発

性骨髄腫が側頭窩下に腫瘤を形成した稀な症例を経験したので報告する。

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眼窩内 Solitary fibrous tumor の 2 例

2cases of orbital solitary fibrous tumor

上野 英明、猪原 正史、春日 千夏、菅野 秀宣、石井 尚登、宮嶋 雅一、新井 一 A-10

順天堂大学 医学部

眼窩内 solitaly fibrous tumor を二例経験した。solitaly fibrous tumor は、間葉系の mesenchymal tumor であり発生頻

度は少ない。全身のあらゆる器官に発生しうるが大多数の報告は胸壁発生であり、眼窩内発生は非常にまれで 50 例程の報

告がされているのみである。症例1は、数ヶ月の経過で眼球突出・視力低下・視神経萎縮・眼球運動障害をきたした 33 歳

7 ヶ 月 の 男 性 で あ る 。 頭 部 M R I で は 、 筋 円 錐 内 に T 1 W I Low Intensity, T 2 W

I High Intensity,heterogenously enhanced であり、頭部CTにて周囲骨への浸潤は認めなかった。開頭腫瘍摘出術にて

筋円錐内の皮膜に包まれた腫瘍を全摘出した。腫瘍は、免疫組織学的染色に S100 protein 陰性・CD34 陽性

で solitaly fibrous tumor と診断された。症例 2は、眼球突出・眼瞼下垂にて発症し 12 年の経過にて 3回の腫瘍摘出術を

施行した 38 歳 2ヶ月の男性である。前医で施行された二回の手術では fibrous histiocytoma の診断であった。頭部MRI

では筋円錐内外にT1WI High Intensity,T2WI iso Intensity,hemogenously enhanced であり、頭部CTにて眼窩上

・内側壁への浸潤が示唆された。第 3回手術は、開頭腫瘍摘出術にて眼窩上方筋円錐外より筋円錐内に連続する腫瘍を摘出

し,かつ不整形の眼窩上壁骨を摘出した。腫瘍は、骨浸潤を認めており免疫組織学的染色にCD34 陽性・bcl-2 陽性・CD

68 陰性で solitaly fibrous tumor と診断された。以上の二症例について文献的考察を行う。

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術前に涙腺腫瘍と診断した眼窩内 epidermal inclusion cyst

Intraorbital epidermal inclusion cyst. A rare intraorbital lesion

工藤 健太郎、阿部 祐介、菅 康郎、大倉 英浩、堤 佐斗志、安本 幸正、伊藤 昌徳 A-11

順天堂大学付属浦安病院 脳神経外科

(はじめに) 術前画像診断とは異なる意外な病理診断に至った眼窩内病変の一例を経験したので報告する。(症例) 85 歳女

性。3ヶ月前に左眼上部の皮下に腫瘤を触知し、徐々に拡大した。視力低下・流涙・複視を自覚し、近医眼科を経て当科を

受診した。左眼球突出・眼球下方偏位・眼瞼腫脹を認めた。MRI では T1WI で high, T2WI で iso intensity の病変が眼窩

内の左上外側に位置していた。CT では病変は均一な等吸収域を呈する瓢箪形、後外側に石灰化を認め、辺縁が不均一に造

影されていた。涙腺腫瘍の画像診断のもとに外側到達法にて腫瘍摘出術を行った。腫瘍は筋円錐外にあり、腫瘍内容はチョ

コレート様の混濁した液体であった。Cyst wall は肉眼上線維性で外直筋との癒着は見られず全摘出したが、涙腺の確認は

できなかった。病理診断は epidermal inclusion cyst であった。術後の MRI では全摘出が確認され、自覚症状も消失し退

院した。(考察) Henderson は、眼窩内腫瘍は metastatic tumor, lymphoma, meningioma, hemangioma などが多く

、non specific orbital inflammation は約 5~6%と報告している。epidermal inclusion cyst は外傷に伴って発現すると

言われている。本症例においても 5 年前に同側の眼外傷歴があった事より、外傷を契機として発現したと推測されるが、眼

窩内発生の epidermal inclusion cyst の報告は少ない。(結語) 本症例のような非腫瘍性眼窩内病変は稀であるが、眼窩内

腫瘍の鑑別診断として epidermal inclusion cyst も考慮するべきである。

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繰り返す画像検索により発見された破裂内頸動脈瘤の一例

SAH of IC dorsal AN found by some moderlities

花北 俊哉 1、西村 健吾 1、木村 俊運 1、森田 明夫 1、白水 一郎 2 A-12

1NTT 東日本関東病院 脳卒中センター 脳神経外科、2NTT 東日本関東病院 放射線科

(はじめに)非外傷性クモ膜下出血では、初回血管撮影で明らかな出血源不明となるものは 4-14%との報告があり、繰り返

す血管撮影を有用とする報告もある一方で、2 回目以降の血管撮影に否定的な報告もある。今回我々はクモ膜下出血発症後

、繰り返す画像検索にも関わらず出血源の同定に困難した症例を経験した。(症例)76 歳女性。突然の頭痛とめまいが改善

せず近医耳鼻科より day2紹介受診。W.F.N.S grade1 Fisher grade2の SAH 認め緊急入院。同日、血管撮影施行したが

、明らかな出血源不明。day3に3DCTA ,day8に再度血管撮影施行したが、出血源不明。day14、3DCTA で内頸動脈前壁に

動脈瘤と思われる隆起を認めた。day15 開頭クリッピング術を施行。血豆状の 2mm 大の動脈瘤が IC dorsal に認められ clip

on wrap とした。他部位も検索したが明らかな異常は認めず。術後経過良好にて神経脱落所見なく独歩退院となった。(考

察)今回我々の経験した症例は、76 歳と比較的高齢であり、高齢患者に対して様々な moderlity を用いながら検索を進め

た有用性についていくつかの文献的考察を踏まえて報告する。

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短期間に形状変化し破裂した小動脈瘤の一例

A case of ruptured small aneurysm

吉山 道貫 1、鈴木 賀織 1、白水 秀樹 1、下田 雅美 1、松前 光紀 2 A-13

1東海大学 医学部 八王子病院 脳神経外科、2東海大学医学部付属病院脳神経外科

症例は 63 歳女性。2006 年 2 月に前交通動脈瘤破裂によるくも膜下出血にて開頭クリッピング術を施行。破裂動脈瘤の処置

後、右内頚動脈に wide neck で約 3mm 大の小動脈瘤を同定したが、さらなる手術侵襲の増大を危惧し、処置せず手術は終了

とした。その後、合併症なく経過良好で独歩退院し、外来において降圧管理するとともに、3DCTA を行いつつ、右内頚動脈

瘤の形状、大きさを follow up した。術後 1 年 3 ヵ月、動脈瘤に変化なく経過していたが、2007 年 5 月、突然の頭痛で再

びくも膜下出血を発症し救急搬送となった。来院時頭部 3DCTA では、その8日前に外来で施行した 3DCTA 所見と比較し、経

過観察していた内頚動脈瘤に形状変化を認めたため、緊急開頭クリッピング術を施行した。2回の開頭手術の術中所見と画

像所見供覧し、未破裂の小動脈瘤に対する経過観察の問題点を、術中同定した未破裂の微小動脈瘤の処置をいかにするかを

含めて考察する。

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10 年前にクリップされた破裂脳動脈瘤の病理所見について

An aneurysm clipped ten years ago. It's clinicopathological implication

前田 大介、都築 伸介、魚住 洋一、豊岡 輝繁、鈴木 隆元、大角 篤司、宮澤 隆仁、苗代 弘、島 克

A-14

防衛医科大学校 脳神経外科

【目的】10 年前に開頭クリッピング術の行われた破裂脳動脈瘤の病理所見を検討したので報告する.【症例】患者:74 歳,

男性.10 年前,左中大脳動脈分岐部破裂脳動脈瘤に対し,開頭クリッピング術が行われていた.今回,de novo 前交通動

脈破裂脳動脈瘤に対し,開頭クリッピング術を行った.その際,前回の左中大脳動脈瘤の neck 近傍に dome の残存を認めた

為,以前のクリップを外し,再度 neck clipping を行った.動脈瘤の dome を切除し病理標本として提出した.【結果】Clip

blade によって挟まれていた dome wall は繊維化していたものの,dome 自体はその内腔が保たれ,肉眼的,組織学的にも

脳動脈瘤としての形態を維持していた.【考察】10 年前にクリップされた脳動脈瘤は器質化される事なく,その肉眼的,組

織学的形態を維持していた.この事実は clip の slip-off や,coil 塞栓術後の coil compaction により脳動脈瘤内に血流

が流入した際に,再度くも膜下出血を起こす可能性を示唆するものである.脳動脈瘤根治の意味を考える上で,貴重な経験

であった.

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脳動脈瘤 coiling 中の coil migration に対し外科的摘出術にて良好な予後を得られた一

good prognosis of surgical evacuation of an embolized coil

根木 宏明 1、森川 栄治 1、杉山 達也 1、小倉 丈司 1、斎藤 寛浩 1、神山 信也 1、山根 文孝 1、石原 正

一郎 1、佐藤 章 1、松谷 雅生 2

A-15

1埼玉医科大学国際医療センター 脳卒中センター、2埼玉医科大学国際医療センター

【はじめに】近年脳動脈瘤に対してコイル塞栓術を施行する症例が増えてきている.今回 coiling 中に生じた migration に

対して早急な外科的摘出術を行うことにより症状出現を防ぐことができた一例を経験したので報告する.【症例】81 歳女

性.77歳時に破裂動脈瘤(Rt.IC-PC AN.)に対してコイル塞栓術施行され後遺症無く元気に生活していた.1週間前より右眼瞼

下垂を認め,二日前より眼の奥が重い感覚を訴え,1 日前より開眼不可能となったため当院救急搬送となった.搬入時,軽度

の右前頭部痛,右瞳孔散大,右動眼神経麻痺を認めた.3DCTAにて動脈瘤の再増大を認め,血管造影にて3DCTAと同様に動脈瘤

の再増大を認めたためコイル塞栓術施行となった.3 本目のコイルにて塞栓中にコイル塊が瘤頸部へ移行し,修復回収を試

みたが中大脳動脈 M2-M3分岐部まで migrationした.そのため外科的摘出が必要と判断し緊急に開頭術施行.Coilが M2に存

在しているのを血管上から確認でき血管長軸を垂直方向に切開し,Migration後 3時間で coil塊の摘出ができた.AN.に対し

ては neck clipping を施行した.術後 CT にて右側頭葉皮質領域に shower emboli を示唆する所見を認めるが,明らかな麻痺

も出現せず経過良好であった.【考察,結語】過去の文献においても外科的摘出にて良好な予後を得られた報告が散見されて

おり,本症例も早急な外科的処置を行うことができたため症状出現なく,良好な経過であった.血管内治療と外科的治療の密

な連携と早急な処置を行える環境にあるかどうかがが患者の予後を左右する事態があることを経験したので症例提示した.

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ウェゲナー肉芽腫に伴う内頚動脈未破裂動脈瘤の 1例

Unruptured internal carotid artery aneurysm in a patient with Wegener granulomatosis

平本 準 1、森嶋 啓之 1、伊藤 英道 1、小野寺 英孝 1、大岡 正道 2、尾崎 承一 2、橋本 卓雄 1 A-16

1聖マリアンナ医科大学脳神経外科、2聖マリアンナ医科大学リウマチ膠原病アレルギー内科

ウェゲナー肉芽腫が頭蓋内血管病変を合併する報告があるが、脳神経外科医の間ではあまり知られていない。22 歳女性の

ウェゲナー肉芽腫に合併した未破裂動脈瘤を経験した。2006 年 1 月 16 日、患者は強い鼻閉を主訴に来院し、当院の膠原病

内科でウェゲナー肉芽腫と診断された。リツキシマブによる治療が効を奏し寛解に向かっていた。経過観察の目的で定期的

に施行された副鼻腔の MRI で左の内頚動脈の急速な拡大を認めたため、脳神経外科に紹介された。内頚動脈径は 4 ヶ月で

3.5mmから7mmにまで拡大しており、さらに後交通動脈分岐部に径 3mm の動脈瘤を伴っていた。この動脈瘤は後交通動

脈を dome に含有しているため、単純な塞栓術では閉塞する可能性が高かった。しかし、内頚動脈本幹の急速な拡大に対す

る治療が必要であると判断し、detachable balloon を用いた内頚動脈近位側閉塞を行った。予想通りに内頚動脈内の血行

動態の変化がおこり、動脈径の縮小と、後交通動脈分岐部動脈瘤の消失が得られ、現在経過良好である。この種の動脈瘤は

自然歴がわかっておらず、報告例は破裂動脈瘤がほとんどである。幸運にも未破裂で発見された場合は積極的に出血予防の

策を検討すべきであると考えられる。発生機序や報告例についてのレヴューを加え、報告する。

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X-celerator による exchange technique で balloon-assist を行った大型動脈瘤の 1例

A case of large aneurysm embolized by using exchange technique with X-celerator

重田 恵吾、戸根 修、富田 博樹、秋元 秀昭、原 睦也、廣田 晋、山本 崇裕、松本 学、金子 純也A-17

武蔵野赤十字病院 脳神経外科

症例は 60 歳代、女性。白内障の手術時に両耳側半盲を指摘され当科に紹介された。MRI でトルコ鞍上の mass は左内頚動脈

(IC)の大型動脈瘤と判明した。予定した脳血管撮影の前日にGrade Vのくも膜下出血を発症した。脳血管撮影で内頸動脈(C3)

から内側に突出する瘤は、最大径が 21mm、neck が 7mm のため balloon-assisted coiling が必要と判断した。Balloon に

は HyperForm 7/4 を選択し、Xpedion で balloon 誘導を試みたが、瘤壁から分岐する形状の IC 遠位部に Xpedion を誘導す

ることは困難だった。そこで X-celerator による exchange technique を使用することとした。Excelsior SL-10 先端を

、neck を通過しやすい形状に shaping し、GTwire にて左 IC 遠位部に進めることを試みた。しかし直接 IC 遠位部へ進める

事が困難だったため、GTwire を瘤壁に沿って一回転させ、ようやく左中大脳動脈(MCA)に到達できた。この GTwire に沿っ

て SL-10 を左 MCA まで挿入し、GTwire を抜去して X-celerator を左 MCA 末梢まで挿入した。この X-celerator を使って SL10

を balloon に exchange し、balloon を瘤内壁に沿って左 MCA(M1)まで進めた。ここで balloon inflation を行い X-celerator

を手前に引くことで瘤内に loop を描いた X-celerator を直線化した。Balloon を neck まで引き戻し、GDC18 本で

balloon-assisted coiling を施行した。動画を供覧し、balloon 留置困難な大型脳動脈瘤塞栓の対策の一つを提示する。

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失語、右上下肢不全麻痺で発症した左中大脳動脈の巨大血栓化動脈瘤の 1例

A case of giant thrombosed left MCA aneurysm with aphasia and right hemiparesis

相原 功輝、磯尾 綾子、矢向 今日子、鎌田 恭輔、斉藤 延人 A-18

東京大学 医学部 脳神経外科

失語、右上下肢不全麻痺で発症した左中大脳動脈の巨大血栓化動脈瘤の 1手術例を経験したので、文献的考察を含め報告す

る。【症例】56 歳男性。2006 年夏頃から徐々に失語が出現し、同年 11 月、右上下肢不全麻痺出現した為、他院受診。左中

大脳動脈(M1)に 6cm 大の血栓化動脈瘤を認め、second opinion 目的に当院当科紹介受診。診察時、中等度の失語、MMT 4/5

の右上下肢不全麻痺を認めた。頭部 CT にて動脈瘤の周囲ほぼ全周にわたって 4mm 程度の高吸収域を認め、midline shift

を伴っていた。血管造影にて動脈瘤は部分的に造影された。SPECT にて左大脳半球の血流低下が認められた。症状が進行性

であったため、手術治療が必要であり、2007 年 1 月、開頭トラッピング、動脈瘤切除術、STA-MCA 吻合術施行した。術後、

右片麻痺、失語は一過性に悪化したが、退院時には術前より改善した。

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Retroorbital pain を主訴として発見された海綿静脈洞内巨大未破裂動脈瘤の 3例

Intracavernous Giant Aneurysms Presenting with Retroorbital Pain: 3 case report

福田 直 1、小松 大介 1、北原 功雄 1、上山 博康 3、阿部 琢巳 2 A-19

1塩田病院 脳神経外科、2昭和大学 脳神経外科学教室、3旭川赤十字病院 脳神経外科

海綿静脈洞内未破裂動脈瘤は未破裂脳動脈瘤のうち 2-5%認められると報告されており、UCAS 中間報告でも 4%認められた

と報告されている。またその中で巨大脳動脈瘤は 3-39%認められると報告されている。症候性海綿静脈洞内未破裂動脈瘤

の症状は diplopia が最も多いと報告されているが、今年になり diplopia がなく Retroorbital pain を主訴に発見された 3

例の海綿静脈洞内巨大未破裂動脈瘤の手術症例を経験した。

症例は 3 例とも女性、年齢は 44-79 歳、症候性の巨大動脈瘤で治療はすべて頚部内頚動脈閉塞と ECA-RA-M2 bypass を施行

した。3 例とも生活が困難な程の強い retroorbital pain を主訴として来院され、1例で眼瞼下垂、2 例で三叉神経

の Hypalgesia を認めた。術後 retroorbital pain は直後から改善し、いずれも約 2 週間の経過で消失した。また術後 2 例

で外転神経麻痺が新たに出現したものの、症状は約1週間をピークに改善し 2ヵ月後には消失した。

無症候性海綿静脈洞内未破裂脳動脈瘤は破裂の危険性が低く経過観察が推奨されているが、症候性、大型、一部硬膜内に存

在する症例に関しては、生命予後、機能予後を含め手術治療を考慮するべきだと考えられている。今回我々が経験した 3

症例はいずれも症状として頻度が高い眼球運動障害は認めなかったものの、強い retroorbital pain を認め、3例とも手術

により症状は軽快し、QOL の向上に寄与した。術前後の症候を中心に、自験例の報告と文献的考察を加え報告する。

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被殻出血に合併した仮性動脈瘤の一例

Lenticulostriate artery pseudoaneurysm presenting with basal ganglia hemorrhage

田中 佐衣子、黒島 義明、中村 芳樹、三島 牧 A-20

東京医療センター 脳神経外科

【症例】62 歳女性、既往歴は子宮筋腫及び十二指腸潰瘍で高血圧の既往は認めず。来院時の血圧は正常。JCS-200 の意識障

害にて救急搬送された。来院時神経学的所見として、左共同偏視、右不全片麻痺、右バビンスキー反射を認め、頭部単純 CT

上 6.3×2.4×4cm の左被殻出血を認めたため、当科入院となった。手術目的の出血源精査のため翌日施行した造影 CT 上、

血腫内に腹側前方内側に造影される径 5mm の類円形病変を認めた。同日脳血管造影を施行したところ、左レンズ核線条体動

脈の末梢に 4mm 大の動脈瘤を認め、仮性動脈瘤が疑われた。左前頭開頭血腫除去術を施行し、顕微鏡下に血腫吸引したとこ

ろ内側にやや青みを帯びた 8mm の塊を認め仮性動脈瘤と考え、全周性に剥離し凝固切断摘出した。術後 CT では血腫の 90%

及び造影効果のあった病変の摘出を確認でき、後日の MRA でも動脈瘤は認めなかった。病理診断にて血腫の中に径 200μm ほ

どの動脈の破裂が確認され、フィブリン血栓もしくはフィブリノイド変性を伴うもの、あるいはフィブリンが輪状に存在す

るのが観察された。術後、JCS-3 まで回復したが、右片麻痺及び失語が残存したためリハビリ病院へ転院となった。【考察

・結語】一般的に、レンズ核線条体動脈の動脈硬化性変性、あるいは微小動脈瘤の破綻が基底核出血の原因としてあげられ

る。しかしながら微小動脈瘤は通常 200~2000μm であり、拡大撮影でない通常の血管造影で造影される大きさではない。

被殻出血において動脈瘤が造影された症例は極めて稀である。本症例について文献的考察を加え報告する。

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内頚動脈解離性動脈瘤に対し RA グラフトバイパス術が有効であった一例

RA graft bypass is very effecitve to treat internal carotid artery dissection aneurysm

纐纈 健太 1、水成 隆行 1、小林 志郎 1、寺本 明 2 A-21

1日本医科大学 千葉北総病院 脳神経センター、2日本医科大学 脳神経外科

内頚動脈動脈瘤の処置に際し、RA グラフトバイパス術が有効であることはよく知られている。今回我々は、動脈炎による

と考えられた、蛇行し比較的長い距離をもった内頸動脈解離性動脈瘤に対して RA グラフトバイパス術が有効であった一例

を経験したのでこれを報告する。症例:64 歳 男性 既往歴:左真珠種性中耳炎にて過去 2 回の手術歴あり。 現症:突

然の頭痛、吐き気を主訴に近医受診、受診時意識レベル 2/JCS、明らかな神経学的異常所見なし、頭部 CT にて脳底層左側

、左シルヴィウス裂に強い SAH を認めた。続いて施行された MRA にて左内頚動脈に非常に蛇行の強い解離性変化と考えられ

る病変を認めた、精査・加療目的にて Dr.Heli にて静岡県より当院まで転院搬送となった。今回の我々の経験した症例は、

非常に良い RA グラフトバイパス術の適応があったと考えられるが、内頚動脈動脈瘤に対し RA グラフトバイパス術が有効で

あったという報告は多いが、その明確な適応基準となるものは示されていない、我々の施設での内頸動脈動脈瘤症例で RA

グラフトバイパス術を施行した症例と今回の症例を比較検討し、いくつかの文献的考察を加えこれを発表する。

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虚血にて発症した若年者における椎骨脳底動脈系の解離性動脈瘤の検討

Clinical analysis of dissecting aneurysm occurring at vertebrobasilar system in young patients

笹原 篤、鰐渕 博、浪岡 愛 A-22

埼玉県済生会栗橋病院 脳神経外科

(はじめに) 当院における虚血にて発症した若年者椎骨動脈解離性動脈瘤の臨床経過について検討したので報告する。(対

象)2004 年 4 月から 2007 年 3 月まで当院で加療を行った 40 歳以下椎骨脳底動脈系の解離性動脈瘤の 4 例である。すべて

の症例において脳血管撮影、3-D CTA にて診断した。全例発症から数ヶ月ごとに症状の変化ならびに動脈瘤の形態の変化を

脳血管撮影もしくは 3-D CTA にて追跡、評価した。(結果)4 例の内訳は平均 37.25 歳ですべて男性であった。動脈瘤の部

位は椎骨動脈が 3 例、後下小脳動脈本幹 1 例であった。平均 follow up 期間は 11.7 ヶ月であった。発症時の症状はめまい

を伴う小脳梗塞 2 例、Wallenberg 症候群 2 例であった。発症時全例神経症状に加えて頭痛を伴っていた。治療は降圧剤の

みで抗血小板剤、抗凝固剤を用いなかったが症状は改善し、動脈瘤も消失ないし縮小していた。(結語)虚血発症の解離性

動脈瘤は降圧剤のみで治癒することが出来る。最近脳梗塞急性期に用いられる t-PA も血管の形態的評価を行ってから投与

する必要があると考えられた。

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Flow control 下に NBCA と GDC を用いて治療した破裂脳底動脈本幹部解離性動脈瘤の一

A case of ruptured basilar trunk dissecting aneurysm treated with NBCA and GDC under flow control

溝上 泰一朗 1、森川 健太郎 1、定作 実紀 1、西原 哲弘 1、森本 正 1、鈴木 一郎 1、戸根 修 2

A-23

1日本赤十字社医療センター 脳神経外科、2武蔵野赤十字病院 脳神経外科

はじめに破裂脳底動脈本幹部解離性動脈瘤に対する有効な治療方法は確立されておらず、予後不良であり、最も治療困難な

脳血管病変のひとつである。今回我々は治療法決定に苦労しながらも液体塞栓物質である NBCA と GDC を用いて治療できた

破裂脳底動脈本幹部解離性動脈瘤を経験した。動脈瘤に対する血管内治療においては一般的でない NBCA を用いて治療でき

、しかも経過が良好であった大変貴重な症例であるので、治療方法の詳細も含め文献的考察を加え報告する。症例79歳女

性。突然の後頭部痛で発症した Hunt&Kosnik Grade2 ,CT Fisher group3 のくも膜下出血。脳血管撮影で脳底動脈本幹部は

全周性に拡張し壁不整を認め、内耳道の高さで特に著しく拡張した部分は右前方に突出する bleb 様の所見を伴っており

、ruptured point と考えられた。治療法として、by-pass&trapping など報告されている手術法も考慮したが、aged case で

あり focal sign も認めなかったことから ruptured point の閉塞を優先に考えた。十分なインフォームドコンセントの下

、以下のように血管内治療を行った。治療第4病日に全身麻酔下に施行。ruptured point を含め拡張した lesion を GDC の

みで閉塞するのは困難と考え NBCA の利用を決定した。NBCA が親血管内に流出しないようにするため、ruptured point が最

下点となるように頭を右へ 90 度回旋した。著しく拡張した lesion の基部に GDC を用い慎重に framing を行った後、両側椎

骨動脈を遮断し、proxymal flow control 下に lipiodol にて 33%に希釈した NBCA を coil frame 内に慎重に注入した。注入

30秒後に両側椎骨動脈の遮断を解除し、bleb 様の ruptured point を含めた著しく拡張した lesion の消失と脳底動脈と

その分枝に閉塞のないことを確認し、治療終了した。第10病日に右外転神経麻痺を認めた。第21病日の脳血管撮影で拡

張した lesion の消失を再確認した。術後 MRI 上虚血性変化を認めず、第24病日に独歩退院した。

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頸椎に発生した骨軟骨種の一例

A case of osteochondroma on cervical supine

内田 一好、榊原 陽太郎、中山 博文、吉田 泰之、田口 芳雄 A-24

聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院 脳神経外科

(はじめに)骨軟骨種は原発性骨腫瘍において、最も頻度の高い骨腫瘍である。しかし脊椎からの発生は、少なく、希少な

一例を経験したので報告する。(症例)36歳男性。平成17年9月頃より、頚部のしびれが出現した。近医にて頚髄 MRI

を施行し、第4頚椎右側に腫瘤性病変を指摘されていた。その後徐々に症状が悪化したため、平成19年1月、当院外来受

診した。症状は、C4 領域の知覚障害で、頚部右側を中心としたしびれがみられ、頚部の動きにて痛みが出現した。MRI にて

、腫瘤は、楕円形の嚢胞状であり、T1 低信号域、T2 高信号域を示し、造影効果は見られなかった。右椎骨動脈は腫瘤によ

り、前方内側へ変位していた。術前診断は困難であったが、神経鞘腫を考え、前方アプローチによる摘出術をおこなった。

病理組織診断にて、軟骨腫の組織像を呈した。術後経過良好である。(考察)骨軟骨腫のうち、脊椎に発生するものは、本

邦では 0.77%と報告されており、頚椎からの骨軟骨腫の発生は 0.31%と比較的まれである。本症例では、腫瘍による圧迫症

状が出現したため、手術を施行した。一般的に軟骨腫は、骨の成熟が得られると、その発生、増大も終了するが、頚椎発生

例では、骨成熟が得られた後でも、腫瘍増大などが認められたとしており、長期的観察が必要と思われる。

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頚椎神経根に発生した Ganglioneuroma の1例

A case of ganglioneuroma originated from the cervical nerve root.

渡辺 新、内田 幹人、堀越 徹、木内 博之 A-25

山梨大学 医学部 脳神経外科

今回、我々は頸椎に発生した稀な ganglioneuroma の症例を経験したので報告する。症例は 61 歳女性、頭部を左に回旋し

た際の右頚部痛、および体動時めまい感の訴えにて、当院耳鼻科を受診。頸部 MRI 上、C1/2 の脊柱管右側に腫瘍を認め当

科紹介となった。受診時には頸部痛のみが残存していたが、その他神経学的異常は認められなかった。MRI では硬膜管を圧

排する 2cm大の類円形の腫瘍を認め、腫瘍内部は不規則に造影された。CT上、骨破壊は明らかでなく、血管撮影では腫

瘍中心部に淡い造影効果を認めるのみで、頭部回旋によっても腫瘍による椎骨動脈の閉塞は生じなかった。神経原性腫瘍の

疑いにて摘出術を施行した。腫瘍は弾性硬、境界明瞭で硬膜外に存在し、C2 神経根と連続していた。神経根とともに腫瘍

を全摘出した。病理学的には紡錘状細胞の錯綜、nuclear pallisading を認め、神経節細胞が混在していた。以上より

ganglioneuroma と診断された。Ganglioneuroma は交感神経幹の神経節細胞に由来するとされ、傍脊椎部に発生したもので

は脊椎管内に進展する場合がある。頸椎での発生は極めて稀であり、硬膜内外や、脊椎間内外に進展した例が報告されてい

る。本例ではその形状、占拠部位より後根神経節付近の C2 神経根から発生したものと思われた。

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広範な浮腫を伴った胸髄 capillary hemangioma の 1例

A case of spinal cord capillary hemangioma presenting with extensive intramedullary edema

上田 泰弘 1、稲次 基希 1、前原 健寿 1、青柳 傑 1、大野 喜久郎 1、富田 博樹 2 A-26

1東京医科歯科大学 医学部 脳神経外科、2武蔵野赤十字病院 脳神経外科

【背景】Capillary hemangioma は皮膚に好発する疾患であるが、稀に脊髄に発生することが報告されている。脊髄では髄

内,髄外に発生し、perifocal edema を伴うことが特徴とされている。今回我々は頸髄から腰髄に及ぶ広範な浮腫を伴い、

術前の鑑別が困難であった胸髄 capillary hemangioma の 1 症例を経験したので報告したい。【症例】67 歳男性。2006 年 8

月より左下肢知覚障害にて発症。徐々に知覚障害の増強と範囲の拡大を生じ、MRI にて Th8 に腫瘍性病変を認めた。10 月 5

日当科紹介入院時の神経所見は意識清明、四肢の筋力低下は見られず、Th8 以下の著明な知覚低下・異常知覚および膀胱直

腸障害を認めた。また深部知覚障害のため歩行不能であった。MRI では Th8 の髄内に、T1 等信号、T2 高信号で均一な造影

効果を有する径 10mm の病変を認め、一部は髄外に突出していた。さらに病変の上下には頚髄より腰髄に至る広範な浮腫を

認めていた。10 月 27 日 SEP・MEP monitoring 下に腫瘍摘出術を施行した。腫瘍は赤色で柔らかく髄内より髄外に突出し、

深部では中心管に達していた。周囲脊髄組織との剥離は容易で、piecemeal に全摘出された。病理所見は、毛細血管様の管

腔組織の増生による腫瘍性病変であり、capillary hemangioma と診断された。術後経過は良好で、術後早期より浮腫は消

失した。術後8ヶ月の現在、再発は認めず、独歩可能に改善している。【考察・結語】脊髄 capillary hemangioma は良性疾

患であるが、広範な浮腫を認めた場合には他の髄内腫瘍との鑑別が困難である。しかし手術により良好な予後が期待される

ため、術前診断のひとつとして念頭におくことが重要であると考えられた。

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脊椎・脊髄外科における新たなナビゲーションガイド下手術の試み

Intrapoerative C-arm navigation in spinal surgery

長島 弘泰 1、磯島 晃 1、池内 聡 1、谷 諭 1、村山 雄一 2、阿部 俊昭 1 A-27

1東京慈恵会医科大学 脳神経外科、2東京慈恵会医科大学 脳血管内治療部

コンピューターナビゲーションシステムは、脊椎・脊髄手術において難易度の高い症例のスクリュー挿入時などに用いられ

、その精度と安全性の向上が期待できる手術支援システムである.現在、主に用いられているシステムは、術前に撮影した

3 次元画像を用いて椎体ごとのレジストレーションを要する CT-based navigation system と、術中透視画像の 2 次元画像

データを用いた fluoroscopy-based navigation system である.しかし、これらのシステムでは術中のリアルタイムな 3

次元データを取込むことが難しいことに問題があるように思われる.一方、以前より当施設では血管撮影装置用の C-arm を

用いた CT スキャン機能(C-arm CT)を使用して術中画像診断を行い、リアルタイムな情報をもとに安全で的確な手術の実施

を志してきた.今回、この C-arm CT を利用して、従来のシステムの問題を軽減すべく、術中 3 次元データをナビゲーショ

ンシステムに取込み使用することを試みた.このシステムを用いて、C1-C2 後方固定と腰椎椎間固定におけるスクリュー挿

入手術を行ったので、若干の考察を加え報告する。

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髄外発育を呈した spinal tanycytic ependymoma の一例

A case of tanycytic ependymoma with extramedurally extention

田中 俊生 1、池田 尚人 1、飯田 昌孝 1、村上 幸三 1、小林 信介 2、阿部 琢巳 2 A-28

1昭和大学横浜市北部病院 脳神経外科、2昭和大学病院 脳神経外科

tanycytic ependymoma は脊髄に好発する稀な良性腫瘍であり ependymoma の亜型である。病理診断においては、schwannoma

や astrocytoma との鑑別が重要である。今回我々は胸髄に発生した tanycytic ependymoma の一例を経験したので報告する

。症例は 57 歳男性。H18 年 7 月より両下肢の痺れ感を自覚。次第に背部痛を認め始め、11 月には対麻痺が出現し増悪を認

め、当科紹介入院となった。入院時に両膝関節以下の筋力低下、L1 以下の感覚低下を認めた。胸髄 MRI で Th 7-9 level に

長径 7cm、硬膜内髄内から髄外に突出する腫瘍を認めた。入院精査中に対麻痺・知覚障害の急激な増悪を認めた為、12 月

26 日、椎弓形成・腫瘍摘出術を施行した。病理診断は tanycytic ependymoma であった[GFAP(+)、Vimentin(+)S-100(+)]

。尚、MIB-1 index は 4.9%であった。このため、術後の後療法を考慮し総線量 39Gy の局所照射を追加した。一方神経症

状は術後増悪したため、リハビリテーションを継続し、H19 年 3月 26 日リハビリ病院に転院なった。tanycytic ependymoma

の自然歴には不明な点も多く、検索しえた範囲では良性の経過が多く MIB-1 index は 1% 以下との報告が多い。本症例は

、肉眼的全摘出であったが MIB-1 index 4.9% と比較的高値であったため後療法を施行した。また一般に tanycytic

ependymoma は髄内腫瘍であり、本症例の様に、髄外に突出する形態で進展した例は稀である。特に本症例では髄外成分が

多く、術前診断に苦慮した。

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腰仙部に発生した paraganglioma の一例

A case of lumbo-sacral paraganglioma

白水 牧子、村田 英俊、岡村 泰、田邊 豊、坂田 勝巳、菅野 洋、山本 勇夫 A-29

横浜市立大学 医学部 脳神経外科

<目的>今回我々は馬尾神経に発生した paraganglioma の症例を経験した。同部に発生する paraganglioma は本邦では稀で

ある。若干の文献的考察を加えて報告する。 <症例>75 歳女性。14 年前より腰痛から下肢筋力低下およびしびれを呈し、

当時から L2~4の脊髄硬膜内腫瘍を指摘された。その後、本人の意向で保存的療法を行ってきたが歩行障害が進行し、独歩

不能となり、当院紹介された。L2~4 レベルの脊柱管内を占拠する大きな腫瘤で、MRI にて T1WI で軽度高信号、T2WI にて

不均一な信号を示し、Gd-DTPA で強い増強効果を認めた。腫瘤周囲にはうっ滞した静脈と思われる多数の血管陰影を認めた

。CT では腫瘤に接する骨が融解、菲薄化し、脊柱管が著明に拡大していた。神経刺激モニタリング下で腫瘍摘出術を施行

した。vascularity が高く、馬尾神経との癒着も強かった。馬尾神経に癒着した一層を残存させ、腫瘍を摘出した。神経刺

激に対する反応性は保たれた。病理診断は paraganglioma であった。その後行った髄液検査ではノリアドレナリンが高値で

あった。術後経過中に術前からの水頭症が増悪し V-P シャント術を行った。その後下肢筋力低下は改善し、杖歩行で退院と

なった。<考察>馬尾神経発生の paraganglioma は本邦では稀である。画像上 schwannoma に類似するが、大きいものでは

骨融解が目立ち、周囲の静脈拡張が強いことが特徴である。大きいものでは癒着が強く摘出に難渋することもある。髄液か

らノルアドレナリンが高値で認められ、補助診断に有用である。<結論>脊柱管内 paraganglioma は稀な疾患であるが、MRI

や髄液検査が特徴的で、鑑別すべき腫瘍である。同腫瘍が疑われ、周囲との癒着が推測される場合には、摘出に際し神経モ

ニタリングを備えておくことが有用である。

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Filum terminale externa から発生した仙骨部硬膜外粘液様上衣腫の一手術例

A case of sacral myxopapillary ependymoma arising from the filum terminale externa

久保田 真由美 1、谷口 真 1、辛 正廣 2、寺尾 亨 1、中内 淳 1、高橋 宏 1、保谷 克巳 3 A-30

1東京都立神経病院 脳神経外科、2東京大学 医学部 脳神経外科、3獨協医科大学越谷病院 脳神経外科

【はじめに】特異な経過により術前鑑別診断が困難であった仙骨部病変の一例を経験したので報告する。【症例報告】58 歳

男性。18 歳頃から、まれに右下腿の痛みを自覚。27 歳時、腰痛・坐骨神経痛・排尿障害が出現。他院にて馬尾腫瘍と診断

され、L2-4 レベルの腫瘍摘出術を受けた。病理診断は”astrocytoma”、残存腫瘍ありと説明を受けていた。手術直後より

痛みは消失したが、膀胱直腸障害・肛門周囲・両側足底部の知覚低下が出現。坐骨神経痛も再燃。29 歳時、疼痛緩和・残

存腫瘍抑制目的に放射線治療を受けた。その後 37 歳頃から徐々に臨床症状が増悪、55 歳頃より痛みが増強したため、57

歳時、他院受診。仙骨部に病変を認め当科紹介受診。入院時、右に優位な両側臀部・下肢背側の疼痛、両側軽度の下肢筋力

低下・表在覚低下・両側下肢深部腱反射減弱・括約筋障害による尿便失禁を認めた。画像所見上、CT で脊柱管を膨張性に

拡大する径 54×47mm 程度の境界明瞭な仙骨部腫瘤を認めた。MRI では L5 レベルの硬膜管内に増強効果を示す結節を 2 個認

め、一方は点状、他方はリング状の増強効果を示した。S1-3 硬膜内には充実成分と嚢胞成分から成る長径 6cm 程度の腫瘤

を認めた。経過期間より悪性疾患は否定的であり、主に診断目的に仙骨部病変摘出術を施行。腫瘍は硬膜外に存在し、細胞

成分に乏しく、病理診断は変性所見の強い myxopapillary ependymoma であった。【考察】Myxopapillary ependymoma は脊

髄終糸から発生するが、2箇所異なる病巣が同時に発見された症例について報告されている。本症例において、27 歳時の病

理所見は不明確だが、病状経過や、一方が硬膜内・他方が硬膜外病変であることを考慮すると、共に神経終糸から発生した

myxopapillary ependymoma であった可能性が高いと考えられる。

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馬尾原発悪性リンパ腫の一例

Primary malignant lymphoma of the cauda equina: a case report

橋本 秀子、下田 仁恵、松岡 浩司、小林 秀 A-31

東京都老人医療センター 脳神経外科

馬尾原発悪性リンパ腫の一例を経験したので報告する。

症例は 83 歳女性。

2006 年 11 月頃より末梢性顔面神経麻痺が持続し、感音性難聴、声帯麻痺、感覚障害等も出現したため、当院神経内科を受

診、ベル麻痺、陳旧性脳梗塞等と診断された。ステロイド投与により一時軽快するもすぐに増悪した。2007 年 3 月 16 日頃

より右下肢筋力低下・歩行障害を発症、徐々に増悪した。右腸腰筋の筋力低下と右大腿部外側の異常感覚が認められた。腰

椎 MRI にて第1腰椎椎体レベルに硬膜嚢内右側を占拠する紡錘状腫瘤を認めたため、当科紹介。腫瘤は T2WI では軽度高信

号、T1WI では等~軽度低信号、均一に強い造影効果が得られた。椎弓切除(Th12, L1)・脊髄腫瘍摘出術を施行。腫瘍は馬

尾の繊維を巻き込むように存在して一塊としての剥離は困難であった。迅速検査では転移性腫瘍、永久病理標本で悪性リン

パ腫(びまん性大細胞型 B 細胞)と診断された。

頭部 MRI 上明らかな頭蓋内腫瘍無く、頚部-骨盤部 CT ではリンパ節腫大・肝脾腫の所見は認めなかった。Ga シンチは脊髄腫

瘍部位に一致した異常集積像を認めた。骨髄穿刺所見はリンパ腫細胞の浸潤なく、馬尾原発と考えられた。術後、Rituximab

併用 THPCOP(R-THPCOP)による全身化学療法を行ったところ、1ヵ月半後の腰椎 MRI では腫瘍性病変は縮小した。また、顔面

神 経 麻 痺 や 声 帯 麻 痺 な ど 種 々 の 神 経 症 状 は 腫 瘍 性 病 変 の 縮 小 に 伴 い 、 軽 快 し た 。 こ れ ら の 症 状 は

、paraneoplastic syndrome 様症状を呈した馬尾原発悪性リンパ腫の症例報告があり、本症例もその可能性はある。今

後 R-THPCOP 療法を計 6コース程度行う予定としている。

原発する中枢神経系悪性リンパ腫は頭蓋内腫瘍の 0.8%-1.5%であるが、脊髄に生じるのはその 1%以下と言われている。さ

らに馬尾原発悪性リンパ腫は、10 例程度の報告であり極めて稀である。確立された治療法はなく、予後不良である。摘出

病理標本で診断し、R-THPCOP 療法により寛解を得た一例を報告する。

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クリプトコッカス小脳炎の 1例

A case of cryptococcus cerebellitis

松田 真秀 1、柴田 靖 1、織田 彰子 2、渡邊 雅彦 2、玉岡 晃 2、松村 明 1 A-32

1筑波大学 脳神経外科、2筑波大学 神経内科

症例は 72 歳男性。構音障害、運動失調が出現し、近医に入院。頭部 MRI で小脳腫大、小脳溝に沿った造影効果が認められ

、急性小脳炎が疑われた。意識障害も出現したため、当院紹介入院となった。入院時意識レベルは JCSII-20 で、注視方向

性眼振、構音障害、嚥下障害、測定異常、運動分解がみられた。髄液細胞数 158/mm3(91%単核球)、蛋白 213mg/dl、糖 49mg/dl

、Cl 107mEq/l。入院翌日に意識レベルが JCSIII-300 に悪化し、頭部 MRI で小脳腫大の増悪と脳幹部の圧排変形、水頭症が

認められた。水頭症に対して脳室ドレナージ術を行ったが、状態の改善が得られなかったため、後頭蓋窩減圧術を施行した

。同時に小脳の生検を行ったところ、クモ膜下腔に多数のクリプトコッカスと肉芽腫形成を認め、一部小脳皮質に伸展して

いた。髄液培養からもクリプトコッカス菌体が検出され、クリプトコッカス小脳炎と診断。AMPH-B、FLCZ、5-FC、VRCZ の

投与を行い、小脳腫脹は改善した。また、シャント術を行うことなく水頭症も改善した。意識レベルは JCSI-1 に改善した

が、運動失調、嚥下障害は残存している。

急性小脳腫脹を伴う小脳炎は稀であり、迅速な治療が要求される。脳幹の圧排および水頭症をきたしている症例においては

、タイミングを逃さずに外科的治療を行う必要があると考えられた

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Campylobacter fetus による髄膜炎に両側硬膜下膿瘍を併発した 1例

A case of bilateral subdural empyema complicating Campylobacter fetus meningitis

金山 政作 1、濱邊 祐一 2、竹村 信彦 1 A-33

1東京都立墨東病院脳神経外科、2東京都立墨東病院救命救急センター

Campylobacter 属は人畜共通感染菌であり中枢神経領域では Campylobacter fetus による髄膜炎が重要である

。Campylobacter fetus による髄膜炎の報告は散見されるが硬膜下膿瘍に関しては以前に 2例しか報告はみられていない。

今回われわれは、Campylobacter fetus による髄膜炎に両側の硬膜下膿瘍を併発した症例を経験したのでこれを呈示する。

症例は当院入院1ヶ月程前に頭部外傷にて他院入院歴のある 52 才男性で、意識障害、痙攣重責発作にて当院救急搬送され

た。髄液検査より髄膜炎所見を認めたため empirical に治療開始したが経過中意識障害の進行、急速に増大する両側硬膜下

膿瘍を併発し穿頭ドレナージを施行した。術中所見より感染性の硬膜下血腫が考えられた。グラム染色により早期よ

り Campylobacter 感染が疑われていたが最終的に髄液、血液、膿瘍培養いずれからも Campylobacter fetus が同定された。

本症例では早期からの適切な抗生剤投与と穿頭によるドレナージにて良好な結果が得られた。また、頭部外傷後に硬膜下血

腫、水腫のみられる場合に髄膜炎を発症すると急速に増悪する硬膜下膿瘍を引き起こすリスクがあることが示唆された。

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硬膜外カテーテルによる硬膜外膿瘍の 1例

A case of spinal epidural abscess due to epidural catheter

井守 洋一、戸田 茂樹、佐藤 俊、寺本 明 A-34

日本医科大学 医学部 脳神経外科

【目的】脊髄硬膜外カテーテルによる硬膜外膿瘍は、硬膜外カテーテルの合併症としては十分に考えうるものである。今回

我々は腰痛に対して挿入された脊髄硬膜外カテーテルにより、頸椎から腰椎にかけて広範囲に硬膜外膿瘍をきたし、加療に

より改善した症例を経験したので報告する。【症例】78 歳、男性。他院にて腰部脊柱管狭窄症の疼痛コントロールの目的に

て腰椎部に硬膜外カテーテルを挿入された。カテーテルを通して局所麻酔薬を投与されていたが、5 日目に発熱を認め、8

日目に後部硬直、対麻痺を認めたため、髄膜炎が疑われ診断加療を目的に当院へ転院となった。髄液検査では細胞数の増加

より髄膜炎が認められたが、脊髄 MRI 行ったところ頸椎から腰椎にかけて広範囲に脊髄硬膜外膿瘍を認めた。治療は抗生物

質の全身投与を行ったが、さらに腰椎部及び頸胸椎部から硬膜外に直接抗生物質の投与を数回行った。これにより脊髄硬膜

外膿瘍は縮小していき、発症後約 1 ヶ月で改善することができ、若干残存した対麻痺に対してのリハビリテーション目的に

て前医へ転院となった。【考察】硬膜外カテーテルによる硬膜外膿瘍の合併症はよく知られている合併症ではあるが、実際

には留置期間が短期間であったり、挿入手技や挿入後の管理の進歩からあまり症例数は多くはなく、また頸椎から腰椎まで

広範に硬膜外膿瘍を発症する例は少ない。加療に関しては抗生物質の全身投与が一般的であるが、我々は直接抗生物質の投

与を硬膜外に数回投与することで改善することができ、有効な治療法と考えられた。【まとめ】硬膜外カテーテルによる頸

椎から腰椎までの広範な硬膜外膿瘍に対して硬膜外腔に直接抗生物質を投与することで改善した症例を経験したので報告

する。

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チタンプレート使用により頭皮穿孔を生じた 2例

Two cases of scalp perforation

吉田 俊、小島 昭雄、西村 敏 A-35

平塚共済病院 脳神経外科

現在、開頭手術の閉頭時に骨弁固定のためチタンプレートが汎用されている。今回我々は、通常の前頭側頭開頭の数年後、

チタンプレートが頭皮を穿孔し露出した 2 例を経験したので報告する。一例目は 75 歳女性。2002 年にくも膜下出血(SAH

)を発症、右前頭側頭開頭にて前交通動脈瘤に対する開頭クリッピング術を受け閉頭時にチタンプレートを用いて骨弁を固

定されている。なお、後に右後角穿刺で脳室-腹腔短絡術も行われている。2006 年 7 月より前頭部に瘻孔を生じここからチ

タンプレートが観察された。手術を勧めたが、なかなか同意を得られなかった。しかし、排膿がとまらず本年 4 月に瘻孔閉

鎖およびデブリードマンを行った。皮下膿瘍から MRSA が検出され、皮膚は菲薄化しており露出していたチタンプレートを

摘出したが骨弁の動揺は生じなかった。二例目は 67 歳女性。96 年に SAH 発症、右前頭側頭開頭で前交通動脈瘤に対する開

頭クリッピング術をうけ、さらに左後角穿刺で脳室-腹腔短絡術が施行されている。手術から 5 年ほど経過した時点から骨

弁の萎縮が著明となり、その結果、チタンプレートが皮膚に突出するようになり、本年 5 月チタンプレートが露出するに到

ったが、本症例では排膿は認めなかった。このため、チタンプレートを全て摘出し、萎縮した骨弁により陥没した部分には

レジンで人口骨を作成して補填する手術を行った。なお、人口骨の固定にはナイロン糸を用いている。骨弁は著明に萎縮し

ていたが、骨癒合を生じていて動揺は生じず、頭皮は本症例でも菲薄化していた。二症例とも術後の感染はなく、創傷治癒

も良好で二例目においては審美的にも満足できる結果を得た。現在広く用いられているチタンプレートであるが比較的高齢

で皮膚の薄い女性の症例などにおいては注意を要することがあると考えられた。また、脳室-腹腔短絡術で複数の頭皮切開

を要したことも一因となりうると思われた。

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肺腫瘍術後の髄液漏に対して直達手術を施行した一例

A case report of direct surgery for liquorrhea induced by lung surgery

安達 忍 1、堤 一生 1、井上 智弘 2、印東 雅大 1、國井 尚人 2 A-36

1公立昭和病院 脳神経外科、2富士脳障害研究所附属病院

[はじめに]開胸手術後に髄液漏及び気脳症となることは、まれではあるが重篤な合併症として報告されている。今回我々の

施設でも同様の症例を治療したので報告する。[症例]65 才男性、他院にて右肺癌に対して開胸腫瘍摘出術を施行した。第 3

から第 5 肋骨後部を胸椎から剥離切除したが、その際に肋間動脈損傷による大量出血があり止血剤などで圧迫止血したとの

ことであった。術後経過は良好ですでに離床していたが、9日目に意識障害が出現。脳 CT で多量の気脳症を、胸部 Xp で右

胸水を認めたため、精査加療目的で当院転院となった。胸腔ドレナージをクランプしてベッド上安静臥床とすると、頭蓋内

の空気は減少し意識障害も改善した。ミエロ CT ではわずかな造影剤の漏出が疑われたのみであったので経過観察の方針と

したが、シンチグラムで多量の核種の漏出を認めたため、後方アプローチで髄液漏閉鎖術を施行した。術後経過は良好で 2

週間後に独歩退院となった。[考察]開胸手術後の髄液漏の診断はミエロ CT やシンチグラムがあるが、後者の方が鋭敏で経

過をみるのに適していると思われた。治療法は直達手術や、腰椎ドレナージ、経過観察などがあるが、最も確実な方法は直

達手術である。[結語]開胸手術後に気脳症となり、髄液漏が多量に持続していた症例に対して直達手術を施行した。手術の

実際をビデオにて供覧する。

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特発性血小板減少性紫斑病に合併した慢性硬膜下血腫の1例

A case of chronic subdural hematoma associated with idiopathic thrombocytopenic purpura

高瀬 創、持松 泰彦、高木 信、橋本 瑞基、山本 大輔 B-01

横浜市立みなと赤十字病院 脳神経外科

特発性血小板減少症に合併した慢性硬膜下血腫の1例

【症例】66 歳女性

【既往歴】1996 年 自己免疫性肝炎精査中に特発性血小板減少性紫斑病と診断され治療中

高血圧、糖尿病

【経過】2007 年 3 月下旬、転倒したが頭部は打撲しなかった。十数日後より頭痛を自覚。徐々に増悪し当科受診。来院時

に明らかな神経学的脱落症状は認められなかったが、頭部 CT 上左慢性硬膜下血腫を認めた。血腫量・脳圧迫所見より手術

適応と考えられたが、同日の採血にて血小板 3000/μl と低値であり、保存的治療で経過観察とした。翌日には意識障害出

現、左不全片麻痺も加わり CT 上血腫の増大を認めたが血小板値は不変で手術は行えず、血小板輸血・γグロブリン・ステ

ロイドを投与後待機手術の方針とした。その後、血小板の漸増に伴って血腫は減少し臨床症状も改善したため手術を行うに

は至らず独歩退院となった。follow up CT では血腫は完全に吸収されている。

【考察】特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura;以下 ITP)をはじめ、血液凝固異常を有する患

者の頭蓋内合併症は、急性出血の形態をとることが多いことが報告されている。ITP の患者に慢性硬膜下血腫を合併したと

いう報告例は少なく、経過観察のみで治癒した例は極めて稀である。ITP に合併した慢性硬膜下血腫の治療方針について、

本例の経験に文献的考察を加え発表する。

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後頭部打撲後に対側損傷による硬膜外血腫,遅発性小脳脳挫傷を合併した一例

A traumatic case with late onset of countercoup epidural hematoma and cerebellar contusion

佐藤 慎祐、石井 暁、光山 哲滝、川俣 貴一 B-02

東京女子医科大学附属 八千代医療センター

目的)我々は、交通外傷により後頭部打撲後、後頭蓋窩急性硬膜外血腫、遅発性右小脳脳挫傷・左前頭部硬膜外血腫を呈し

、その後、Heubner artery 領域の脳梗塞を合併した、非定型的な経時的変化をきたした症例を経験したので、文献的考察

を加え報告する。症例)75 歳女性。横断歩道を歩行中に車と接触し後頭部を打撲した。来院時神経学的所見は、意識レベ

ル JCS2-10、瞳孔不同なく、四肢麻痺等も認めなかった。頭部 CT にて、右後頭蓋窩急性硬膜外血腫、右後頭骨線状骨折を

認めた。下肢静脈血栓症、肺塞栓の既往があり、ワーファリン 3.5mg/day 内服中であったが、PT-INR は 1.36 であった。た

だちにビタミン K を投与し、PT-INR は 1.12 と低下した。受傷 4 時間後の頭部 CT で、左前頭部に硬膜外血腫を新たに認め

たが、意識レベル JCS1-1、瞳孔不同なく、四肢麻痺等も認めなかった。意識レベルが改善傾向であり、神経学的異常所見

を認めなかったため、保存的治療とした。翌日の頭部 CT では、右小脳半球に脳挫傷を新たに認めたが、意識レベルの低下

や、神経学的異常所見はみられず、経過観察となった。その後、受傷 15 日目に右上肢の軽度筋力低下を認め、MRI にて Heubner

artery 領域の脳梗塞を認めたが、リハビリにて症状は改善した。結論)後頭部打撲後の小脳出血性病変を伴う症例は、テ

ント上の病変の発症が予後に影響するという報告があり、中には急速な症状悪化例もある。今回の症例は、countercoup

injury による急性硬膜外血腫をきたしたが経過は良好であり、その後、穿通枝領域に脳梗塞をおこした非典型的な経時的

変化をきたした症例であった。

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高齢者頭部外傷の特徴と予後からの治療戦略

Treatment of traumatic brain injury in eldery patients from epidemiology,out

高山 泰広 1、桑本 健太郎 1、古市 真 2、佐藤 秀貴 3、横田 裕行 3、喜多村 孝幸 4、寺本 明 4 B-03

1川口市立医療センター救命救急センター、2川口市立医療センター脳神経外科、3日本医科大学付属病院高度救

命救急センター、4日本医科大学付属病院脳神経外科

【背景】高齢化社会に伴い年々増加する高齢者外傷を診療する機会が増えている。高齢者頭部外傷は予後が悪く治療に苦慮

することが多い。今回は高齢者鈍的外傷、頭部外傷の特徴をまとめ予後因子を検証し治療戦略を考察した。【対象】1994 年

から 2006 年に当施設に搬送された 65 歳以上の鈍的外傷 661 例を対象とした。【法方】重症頭部外傷及び軽度中等度頭部外

傷の予後因子について GOS1-2 と GOS3-5 に分けて解析とした。【結果】高齢者の頭部外傷の特徴として脳挫傷と SDH がその

大半であった。GCS≦8の重症頭部外傷 65 例では単独頭部外傷が多く病態は脳挫傷の割合が多かった。GOS1-2 が 5 例と少な

く高齢自体が予後不良であった。軽度中等度頭部外傷 152 例の予後因子を多変量解析すると骨盤外傷、年齢、GCS が最終的

な予後因子となった。年齢と GCS の感度特異度曲線から 75 歳と GCS12 をカットオフ値とした場合それぞれ感度 72%、80%

特異度 71%、70%であった。75 歳以上、GCS≦12 では 61.1%が予後不良であった。さらに 75 歳以上、GCS12 以下、骨盤外

傷を用いて多変量解析したところすべて p<0.001 となった。【考察】重症頭部外傷例は高齢自体が予後不良であり、新たな

治療戦略の見解に至らなかった。しかし軽度中等度頭部外傷では年齢 75 歳以上と GCS12 以下に対する重症度評価を見直し

、予後予測することが今後の治療戦略として重要と考えた。

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Tourette 症候群 2例の検討

Case reports of Tourette's syndrome

仲間 秀幸、開道 貴信、金子 裕、大槻 泰介 B-04

国立精神・神経センター 武蔵病院 脳神経外科

【目的】Tourette 症候群は、運動チックと音声チックを特徴とする、慢性の精神神経疾患である。今回、我々は Tourette 症

候群の二例を経験したので、文献的考察を含めて報告する。【症例】症例1は18歳女性。10歳頃から首を前後にカクカ

クする、あごをパクパクする、などの運動チックが出現し、16歳時には、息を吸ったり吐いたりする時に奇声(音声チッ

ク)が出現。17歳で四肢の不随意運動が出現し、当院神経内科を経て当科紹介となった。頭部 MRI では前部帯状回(BA24)

に腫瘍性病変を認めた。症例2は22歳女性。5 歳頃、両目をぱちぱちする運動チックで発症。8歳頃には首を左右にふる

運動が、13歳頃には体全体のピクッとした動きが出るようになった。15歳時には、息を吸う時のハッとした感じの奇声

(音声チック)が出現。以後、運動、音声チックが持続するため、当院心療内科、神経内科を経て当科紹介受診。頭部 MRI

では左尾状核頭に海綿状血管腫と思われる病変を認めた。【考察】Tourette 症候群の発生機序については、黒質線条体ドパ

ミン系の機能亢進が、大脳基底核・視床・皮質を連絡する神経回路に影響を及ぼして症状が発現する、と考えられている。

この考えに沿って、近年は視床や淡蒼球を標的とした脳深部刺激療法が行なわれ、効果的であるとの報告が少数ではあるが

なされている。今回報告した二例とも、症状発現に関与するとされる部位に明らかな頭蓋内病変を有しており、内科的治療

が奏功しない場合は病変摘除や、脳深部刺激療法などの外科的治療を考慮すべきと考えられる。

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長期シャント依存性非交通性水頭症に対する第三脳室開窓術

Third ventriclostomy for the long term V-P shunt dependenting noncommunicating hydrocephalus

原岡 怜、冨田 丈博、深見 真二郎、橋本 孝朗、秋元 治朗、三木 保、原岡 襄 B-05

東京医科大学 脳神経外科

【はじめに】今回、出生時に先天性水頭症と診断され、生後4ヶ月の時に脳室腹腔シャント術が施行された患者が、シャン

ト機能不全による頭痛発症を機に内視鏡下第三脳室開窓術を施行し、シャント再建を要せず陳旧化したシャントシステムを

抜去し得たので報告する。【症例】25歳 女性【主訴】頭痛【既往歴】特記すべきこと無し【現病歴】昭和56年出生時

より先天性水頭症の疑いあり経過観察。3ヶ月健診で先天性水頭症と診断され、生後4ヶ月で脳室腹腔短絡術施行となった

。その後16歳までに計5回のシャント再建術を行った。平成18年11月当院初診。元来歩行障害あり、杖歩行。頭部 CT

上、slit ventricle であった。平成19年3月 follow up MRI にて脳室拡大所見認めたため、頭部・胸腹部レントゲンを

施行。頸部でシャントチューブの断裂を認め、腹腔側チューブ全体が腹腔内に脱落していたが、無症状のため経過観察とし

ていた。4月頭痛、嘔気出現、頭部 CT 上第三脳室の拡大あり緊急入院となる。MRI 上中脳水道狭窄による非交通性水頭症

と診断。内視鏡下第三脳室開窓術、腹腔鏡下シャントチューブ除去術を施行。脳室側チューブは2本あり、1本は脈絡叢と

の癒着が強く、抜去困難のため、そのまま留置とした。術後、脳室ドレナージによる脳圧管理とし、術後6日まで30cmH2O

以上の脳圧、頭痛、嘔吐を認めたが、術後7日目で脳圧は正常化し症状も改善。CT cisternography にて脳表への造影剤の

灌流を認めた。術後9日で脳室ドレーン抜去しその後も状態安定のため退院となる。【考察】本症例は第三脳室開窓術によ

り、術後約一週間の経過中にくも膜下腔への髄液灌流、くも膜顆粒からの髄液吸収能の再開により髄液循環の正常化に至っ

たものと考えられる。シャント依存性閉塞性水頭症患者に対し第三脳室開窓術によるシャント抜去の可能性の示唆する。

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昏睡を呈した特発性低髄圧症候群の一例

Spontaneous intracranial hypotension resulting in coma

内田 貴範、木幡 一磨、高野 一成、永石 雅也、田中 喜展、保谷 克巳 B-06

獨協医科大学 越谷病院 脳神経外科

特発性低髄圧症候群(spontaneous intracranial hypotension、以下 SIH)は原因不明の脊髄腔からの髄液漏出と髄液量減

少、頭蓋内圧低下により、典型的には起立性頭痛を特徴とし、視機能障害、耳鳴、めまいなど多彩な症状を呈する症候群で

ある。今回我々は重篤な意識障害に至った SIH 症例を経験したので報告する。症例は 57 歳男性。持続性頭重感を主訴に受

診し、頭部 CT 上、両側慢性硬膜下血腫を認め、穿頭術を行った。術後の経過は問題なかったが、退院後、起立性頭痛が出

現し、再入院となった。腰椎穿刺で低髄圧症と診断、保存的治療を行った。その経過中、次第に意識障害が進行し、昏睡に

至った。CT 上は前回の術後の空気が残存し、血腫成分はやや増加程度で mass effect や頭蓋内圧亢進は考えにくい所見で

あった。再度穿頭術を行い、回路を接続して硬膜下ドレナージを持続的に行ったところ意識は速やかに改善した。SIH にお

ける意識障害はまれであるが、高度の脳の下垂により生じると考えられている。それには頭蓋内と脊髄腔との圧較差が関与

するが、本症例では再手術にて持続的ドレナージを行い、0cm 以下の低圧で設定して頭蓋内圧を下げたことにより、脳の下

垂が軽減し、意識障害が改善したと考えられる。その後は保存的治療を継続し症状は改善、意識清明で神経学的欠損なく退

院となった。

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腫瘍内出血にて発症した髄膜腫の一例

Meningioma with intratumoral hemorrhage

宮城島 孝昭、井上 雅人、寺西 裕、星野 岳郎、鈴木 健也、大野 博康、岡本 幸一郎、原 徹男、近

藤 達也

B-07

国立国際医療センター 脳神経外科

【はじめに】出血で発症する髄膜腫は非常にまれである。今回われわれは腫瘍内出血で発症した髄膜腫の一例を経験したの

で報告する。

【症例】54 歳男性、3 日前、仕事終了後に突然の左下肢の脱力を自覚。改善しないため当院神経内科を経て当科受診。神経

学的には左下肢に MMT4-5/5 程度の麻痺を認めた。頭部 CT では右 flax に経 4cm×2.5cm の高信号域を認めた。来院同日より

入院精査を行い、造影 CT、MRI、血管撮影、FDG-PET 行った。以上より髄膜腫の術前診断にて腫瘍塞栓術を行い、翌日腫瘍

摘出術を行った。術中、腫瘍からの出血が多く、eloquent area であることより部分摘出にて終了した。病理組織診断は髄

膜腫で異型の要素はなかった。術後左下肢に MMT4/5 の麻痺、感覚障害が出現したがリハビリテーションにて改善傾向であ

る。

【結果】文献上髄膜腫の 1.3 から 2.4%のみが出血発症と報告され、まれな病態であり、文献的考察を含めて報告する。

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硬膜動静脈瘻を合併した大脳鎌髄膜腫の一例

Case report: Falx meningioma with dural anteriovenous fistula

溝上 康治、宮島 良輝、河島 雅到、宇津木 聡、岡 秀宏、岩本 和久、鈴木 祥生、倉田 彰、藤井 清

B-08

北里大学病院 脳神経外科

症例は 70 歳女性.54 歳頃よりうつ病・退行期パラフレニーの診断で他院精神科通院中だった.1 年程前より物忘れが出現

,口数も少なくなり,自発性も低下してきた.最近になって物忘れがさらに進んだ為,他院にて頭部 MRI・MRA を施行した

ところ,左後頭部 extra-axial に falx および小脳テントに接する径 6cm 程の腫瘍性病変を認め,精査・加療目的で当科入

院となった.画像所見からは左大脳鎌髄膜腫が考えられたが,右側頭葉の軽度腫脹および右小脳半球に flow void を認め,

硬膜動静脈瘻の合併も疑われた.入院時には物忘れ・自発性低下がさらに進んでおり,頭部 CT では腫瘍の大きさに変化な

かったものの,右側頭葉の脳腫脹は増悪していた.脳血管撮影では両側 MMA を feeder とする腫瘍濃染像の他,

右Transverse-Sigmoid sinusに,OA・MMA・APAをfeederとし,小脳のcortical veinおよびSPSへ逆流するisolated dural AVF

の所見を認めた.腫瘍への feeder および右 OA に対する TAE と,isolated dural AVF に対しての TVE を 2 日に分けて行い

,後日,左大脳鎌髄膜腫に対して開頭腫瘍摘出術を行った.髄膜腫が静脈洞を狭窄あるいは閉塞することはしばしばみられ

るが,それに硬膜動静脈瘻を合併することは少なく,さらに腫瘍と離れた部位に硬膜動静脈瘻を合併することは稀である.

文献的考察を加えて報告する.

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脳浮腫を伴った Cystic meningioma の一例

A case of cystic meningioma with peritumoral edema

植草 啓之 1、青木 美憲 1、根本 匡章 1、坂田 義人 1、本多 満 1、羽鳥 努 2、狩野 利之 1、後藤 昌三 1

、周郷 延雄 1、清木 義勝 1

B-09

1東邦大学医療センター大森病院 脳神経外科、2東邦大学医療センター大森病院 病院病理

頭蓋内腫瘍において嚢胞を伴うことはよく知られているが、meningioma での嚢胞形成は稀である。cystic meningioma は、

その神経放射線学的特徴から、転移性脳腫瘍や悪性神経膠腫との鑑別に苦慮することが多い。また、手術治療においては、

嚢胞壁での腫瘍細胞の有無が、再発を考慮した摘出範囲を決定する上で重要となる。今回我々は、cystic meningioma の一

例を経験したので報告する。【症例】38 才、男性。痙攣発作を主訴に当院受診、神経学的異常所見は認めないものの、 CT

上、左前頭葉に浮腫を伴う嚢胞性病変を認め、腫瘍の充実性部分で強い造影効果を示した。 MRI の T1 強調画像では、CT

と同様に嚢胞性病変を示し、T2 強調画像で周囲浮腫が明瞭に描出された。Gd 造影によって、大脳鎌に接した充実性部分と

ともに、嚢胞壁が増強効果を示した。左外頚動脈撮影では、左中硬膜動脈からの著明な腫瘍濃染像が認められた。頭蓋内腫

瘍摘出術を施行したところ、腫瘍は軟らかく、血管豊富で赤褐色を呈していた。大脳鎌に付着していたことから、falx

meningioma と診断、腫瘍は周囲脳組織と強く癒着していたものの、嚢胞壁を含めて全摘出した。術後、supplementary motor

area の症状によって一過性の運動性失語がみられたが、2 週後に改善し、神経症状を残すことなく退院した。病理所見上、

meningothelial meningioma の所見が主であり、嚢胞壁にも腫瘍細胞が認められた。【結語】今回、浮腫を伴った cystic

meningioma の一例を経験した。本症例の術前診断に脳血管撮影が有用であり、また、MRI 上、嚢胞壁に造影効果を認め、周

囲浮腫が存在する例では、嚢胞壁での腫瘍細胞の存在が示唆された。したがって、これらの所見を示す症例では、再発予防

のために、嚢胞壁を含めて摘出すべきであると考えられた。

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Primary extradural meningioma の2例

Primary extradural meningioma;report of 2 cases

帯包 雄次郎、林 祥史、坂田 義則、田中 美千裕、波出石 弘 B-10

亀田総合病院 脳神経外科

髄膜腫は脳腫瘍の 15-18%を占め、ほとんどは硬膜下腔に存在する。しかしながら、髄膜腫のうち 1-2%が頭蓋骨、頭皮、

眼窩、副鼻腔、肺、指などに発生することも知られており、primary extradural meningioma と呼ばれている。症例 1 は 64

歳男性。2年前からの左頭頂部に無痛性の腫瘤があり徐々に増大していることから当科受診。CT 上、左頭頂部に SSS をまた

ぐように 7cm の溶骨性骨腫瘍を認めた。一部で頭蓋内に進展しており、脳の圧排を認めた。MRI の所見と合わせて髄膜腫と

診断した。脳の圧排があり、増大傾向であることから塞栓術を行った後、開頭腫瘍摘出術を行った。頭蓋内に進展した部分

は皮質静脈、SSS の損傷の可能性があり、硬膜内操作は行わずに硬膜外の腫瘍を全摘出した。病理にて transitional

meningioma と診断した。症例 2 は 46 歳 女性。乳癌の診断にて骨シンチ施行し、頭蓋骨腫瘍を 2 カ所指摘された。MRI に

て均一に造影される 1-2cm の骨腫瘍を認め、一部で硬膜内進展していた。当初は転移性骨腫瘍を考えていたが確定診断目的

にて生検術を施行。病理にて fibrous meningioma と診断した。primary extradural meningioma の病態については、

頭蓋骨形成や頭蓋骨骨折の際に縫合線に硬膜が陥入する、先天的に神経管閉鎖不全により arachnoid cell が皮膚に残存す

る、硬膜から発生するものなど幾つかの説がある。また、分類についても硬膜進展を含むか否かでの議論もなされているな

ど、統一された見解が得られていない。 今回我々は primary extradural meningioma の 2 例を経験したので文献的考察を

交えて報告する。

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硬膜付着部を持たない後頭蓋窩髄膜腫の1例

A case of meningioma in the posterior fossa without dural attachment.

紺野 武彦 1、益子 敏弘 1、宮田 五月 1、五味 玲 1、庄島 正明 2、渡辺 英寿 1 B-11

1自治医科大学 脳神経外科、2自治医科大学 血管内治療部

[目的]後頭蓋窩の髄膜腫は髄膜腫全体の約4分の1を占めるが、そのほとんどが小脳橋角部、小脳円蓋部、テントから発生

したものである。今回我々は、硬膜に明らかな付着部を持たない後頭蓋窩髄膜腫を経験したので報告する。[症例]22 歳女

性、頭痛を主訴に近医から当院へ紹介された。MRI では延髄を右側に大きく圧排し、小脳偏桃を上外側に圧排して尾側に伸

展するような直径35mmの腫瘍があり、第四脳室は強く圧排されるも、菲薄化した白質が介在して腫瘍は脳室内に露出し

ていない。T1 で等信号、ガドリニウムで均一に造影され、T2 でやや高信号。血管造影で腫瘍濃染は無く、明らかな栄養血

管は描出されない。後頭下開頭にて手術を行った。小脳扁桃の尾側から突出した部分から腫瘍の表面をたどり周囲のくも膜

から剥離して肉眼的に全摘した。第四脳室は開放されなかった。腫瘍の大部分は比較的軟らかく、硬膜や脳神経根との付着

はなかった。病理組織診断は meningothelial meningioma。術後一過性に嚥下障害と歩行傷害が出現したが軽快した。[考

察]硬膜に付着部を持たない髄膜種はまれで、脳室内・シルビウス裂・松果体部などに発生する。後頭蓋窩においては第4

脳室に発生した症例の報告が散見されるが、その他は極めてまれである。本症例の腫瘍発生母地は不明であるが、手術所見

より tela choroidea またはその近傍の脈絡叢から外側に発育したものと推測した。[結語] 硬膜に付着しない後頭蓋窩髄膜

腫の1例を報告した。

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左視神経に播種性転移をきたした側脳室髄膜腫の一例

Anaplastc meningioma of lateral ventricle disseminated to left optic nerve

北村 洋平、武藤 淳、吉田 一成、河瀬 斌 B-12

慶應義塾大学 医学部 脳神経外科

今回我々は左視神経に播種性転移を来たした側脳室髄膜腫の一例を経験したので報告する.症例は 36 歳女性.2003 年 5

月に右側脳室三角部髄膜腫を診断され他院にて腫瘍摘出術を施行された.病理診断は anaplastic meningioma で,局所放射

線療法60Gy を施行した.その後再発を認めたために SRS を 20Gy 照射.2005 年 2 月 MRI で摘出部位と右頭頂円蓋部に再発

を認め,徐々に増大したため,同年 11 月にガンマナイフを施した.その後も増大傾向続き,2006 年 8 月に痙攣と左下肢の

麻痺が出現したため同年 10 月に開頭腫瘍摘出術を施行した.その後外来でフォローアップ中に左の視力障害が出現し,MRI

を施行したところ,視神経を圧迫するような径 1.8cm の腫瘍を認め,meningioma の再発が疑われた.このとき,視力は右

が 0.1 左は光覚弁なしであった.2007 年 7 月 6 日左側頭開頭にて腫瘍摘出術を施行した.術中所見より,第三脳室前壁の

視神経窩に転移し,さらに,視神経に沿って進展した meningioma であると診断された. このような,症例はまれであり,

ここに,画像的所見,術中所見を交えて報告する.

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病理組織学的診断に難渋した後頭蓋窩悪性腫瘍の1例

A case of difficult pathological diagnosis of posterior malignant tumor

佐々木 正史 1、芳村 雅隆 1、久保田 叔宏 1、高田 義章 1、伊藤 栄作 2、冨士井 睦 3 B-13

1青梅市立総合病院 脳神経外科、2青梅市立総合病院 臨床検査科、3中野総合病院 脳神経外科

症例は 50 歳女性。高血圧の既往がある。初発症状として軽度の呂律不良が出現、その 8 日後に強い頭痛と嘔吐も出現し当

科受診。CT 上で左小脳虫部を中心とした約 3cm の iso density mass と脳室拡大を認めた。意識混濁とめまい、歩行障害も

伴っていたため、同日脳室外誘導を施行したが、脳圧の亢進は認めなかった。MRI 上では T1 iso、Gd 造影剤にて増強効果

を認める腫瘍で、頭側は小脳テント面と接しており、腹側は脳幹を圧迫していた。血管撮影上腫瘍は avascular であった。

また、右内大脳静脈のうっ滞が認められ、腫瘍の下方からの圧排によるものであると考えられた。入院 8 日目

に C1 laminectomy と後頭蓋窩減圧を伴う開頭腫瘍摘出術を施行した。腫瘍は白色で硬く、腫瘍への血管流入は一部から少

量認めるのみで、腫瘍内からの出血は少なかった。脳表との境界が一部不明瞭な所も存在したが、硬膜との癒着はほとんど

認めなかった。腫瘍尾側には陳旧性の出血を認めた。腫瘍は肉眼的に全摘出できたものと考えられた。病理組織所見は類円

形~紡錘形核と弱抗酸性胞体をもつ腫瘍細胞のシート状の増生よりなる腫瘍であった。免疫組織化学的には EMA、CD34

、FactorVIII、CD99、CD57 は陰性、Epithelioid な配列は認められるが、AE1/AE3、CAM5.2、GFAP、S100 も陰性、クロモグ

ラニンA、シナプトフィジンも陰性であった。bcl-2 はびまん性に陽性であった。Ki-67 陽性率は最も高いところで 70%、p53

は多くの細胞の核で陽性となっていた。銀染色では好銀線維の増生が認められるが、細胞を取り囲むほどの増生ではなかっ

た。以上のことから病理診断は anaplastic meningioma が最も疑われた。術後再発予防に後頭蓋窩を中心とした放射線療法

を施行し、独歩退院した。

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臨床的に下垂体腺腫と鑑別困難で病理診断に難渋した極めてまれなトルコ鞍部腫瘍の一

A case of the rare sellar tumor mimicing a non functioning pituitary adenoma

福原 紀章 1、大山 健一 2、臼井 雅昭 1、井下 尚子 3、太田 泰徳 3、大橋 健一 3、佐野 壽昭 4、山田 正

三 2

B-14

1虎の門病院 脳神経外科、2虎の門病院 間脳下垂体外科、3虎の門病院 病理部、4徳島大学大学院 ヘルスバイ

オサイエンス研究部 人体病理学

【はじめに】今回、われわれはトルコ鞍内より発生し、画像上下垂体腺腫と鑑別が困難で、その病理診断に難渋したトルコ

鞍部腫瘍の一例を経験したので報告する。【症例】症例は 35 歳女性。特記すべき既往歴、家族歴なし。月経不順を主訴に近

医を受診し、高 PRL 血症を指摘された。MRI でφ2cm の鞍上部伸展を伴うトルコ鞍部腫瘍が認められたため当院を紹介受診

。血中 PRL 値が 49.0ng/ml(基準値上限:31.2)と軽度高値を認める以外、他の前葉ホルモンには異常を認めず、stalk section

effect による高 PRL 血症を呈する非機能性下垂体腺腫と術前診断を行った。また視野検査にて両耳側上 1/4 に視野欠損を

認めたため手術適応と考え経蝶形骨洞的腫瘍摘出術を施行した。腫瘍は肉眼的に通常の下垂体腺腫とは異なり硬い腫瘍であ

った。術中腫瘍からの出血はそれほど強くなく、また強固に海綿静脈洞内側壁に癒着していたが明らかな海綿静脈洞内への

浸潤は認められなかった。腫瘍は可及的に根治切除とした。【病理所見】HE 染色では腫瘍は好酸性の細胞質を有する紡錘状

の細胞で索状配列を呈していた。核は類円形または多角形で異形成、分裂像はなく、免疫染色では既知の前葉ホルモンはす

べて陰性で、Vimentin、S-100、GFAP、EMAに対し陽性像を呈していた。以上の病理所見からはFibrous meningioma、Pituicytoma

、Schwannoma などが鑑別診断として考えられたが、腫瘍細胞配列が Antoni type A の組織構築に類似することを考慮し、

免疫染色の所見も合わせて Schwannoma を最も考えた。【考察】傍鞍部の Schwannoma の多くは第三、五脳神経などから発生

する。一方トルコ鞍内から発生する Schwannoma は極めてまれで文献的には 10 例の報告があるのみで、明らかな発生毋地は

不明とされている。本症例もトルコ鞍内に主座をおき、臨床的には下垂体腺腫と鑑別は不可能であった。以上極めて稀なト

ルコ鞍部腫瘍につきその臨床、病理所見を報告する。

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サイバーナイフ治療を実施したのう胞性、大型、再発聴神経腫瘍の 1例

Cyberknife treatment for a case with large, cystic, and recurrent acoustic tumor

田草川 豊 1、尼崎 賢一 1、藤田 曜三 1、立林 恭子 1、宮崎 紳一郎 2 B-15

1三井記念病院 脳神経外科、2日立サイバーナイフセンター

聴神経腫瘍に対する Radiosurgery の有効性は、徐々に認識が広がっているが、ガンマナイフには治療対象の大きさが限定

されるという重大な欠陥がある。それに対してサイバーナイフでは分割照射という手法を駆使することによって大型腫瘍に

も対応できるという優位性がある。我々は過去 2 年弱の間に 30 数例の聴神経腫瘍に対してサイバーナイフ治療を実施した

が、その中でのう胞性、大型かつ再発の腫瘍の 1 例を報告する。症例:TS 63 歳 女性 左聴神経腫瘍。1996 年 4月 J 大学

で手術を実施。術後顔面神経が完全に麻痺したため再建術を追加。数年後に再発あり。2005 年 9 月 今後の治療方針に関し

て当院へ相談あり。本人は手術への忌避が強く、再手術には消極的であった。サイバーナイフを実施。2005 年 11 月 腫瘍

の増大を認めたため再度手術の話を本人にするが、やはり消極的なためそのまま観察とする。2006 年 10 月 腫瘍サイズの

縮小を認める。2007 年 3月 腫瘍は更に縮小。臨床症状(ふらつき)の改善を認める。

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脈絡叢乳頭腫を併発した聴神経腫瘍の一症例

one report of occurrence of choroid plexus papilloma and schwannnoma in the same patient. : case report

and review of the literature.

唐沢 康暉 1、阿部 肇 1、野村 昌志 1、山谷 昌之 1、森脇 寛 1、三輪 博志 1、佐藤 博明 1、横山 宗伯 2

、河野 道宏 1

B-16

1東京警察病院 脳神経外科、2東京警察病院 病理部

内耳道から発生した聴神経腫瘍と第 4脳室から発生した脈絡叢乳頭腫が併発し、小脳橋角部で両腫瘍が接するように発達し

、あたかも一つの腫瘍を形成していた症例を経験したので報告する。【症例】52 歳女性。19 歳の時に突然右難聴、右耳鳴が

発症したが経過観察されていた。52 歳の時、頭部 MRI で右聴神経腫瘍を指摘され、当院に紹介された。右側聴力は平均標

準純音聴力 51.3dB、語音明瞭度 48%で、Carolic test で反応低下、前庭誘発筋電位(VEMP)は異常、第八脳神経以外の神

経学的異常所見は見られなかった。MRIで右小脳橋角部に腫瘍が認められ、右内耳道内へ進展し、正中側では第四脳室ま

で進展し脳幹を軽度圧迫していた。下方は延髄まで進展していた。内耳道側の腫瘍は径1×1.5cm、脳幹側の腫瘍は径

2.5cm。T1 強調画像で等信号域、T2 強調画像で等~高信号域、Gd 造影剤によりほぼ均一な増強効果が見られたが、内耳道

側と脳幹側の腫瘍では信号強度に差が見られ、内耳道側の腫瘍の方がより高信号であった。CT では腫瘍の脳幹側の一部に

石灰化が見られた。骨条件で内耳道の拡大が見られた。水頭症はなかった。血管造影で腫瘍濃染はみられなかった。後頭下

開頭腫瘍摘出術を施行した.術中所見、病理迅速診断より脳幹側の腫瘍は第4脳室から発生した脈絡叢乳頭腫と診断。下位

脳神経の間にも腫瘍は発育しており、神経を温存し摘出した。内耳道後壁を削除し内耳道内の腫瘍を摘出、術中所見、病理

迅速診断より神経鞘腫と診断した。 両腫瘍とも 99%摘出し手術を終了した。術後嚥下障害なく経過は良好であり,現在外

来通院中である.最終病理診断は脈絡叢乳頭腫と神経鞘腫(Antoni A パターン)であった。上記の症例につき文献的考察

を加えて報告する。

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診断に難渋した後頭葉 lymphomatoid granulomatosis の一例

Lymphomatoid granulomatosis in the occipital lobe. A case report.

笹森 寛生 1、小林 啓一 1、藤岡 保範 2、土屋 一洋 3、栗田 浩樹 1、永根 基雄 1、塩川 芳昭 1 B-17

1杏林大学 医学部 脳神経外科、2杏林大学 医学部 病理学教室、3杏林大学 医学部 放射線科

Lymphomatoid granulomatosis(LYG)は比較的稀な疾患で、肺、上気道、皮膚、腎臓、末梢および中枢神経系において血管

周囲にリンパ球の浸潤および血管破壊を伴った肉芽形成疾患であり、悪性リンパ腫の類縁疾患と考えられている。今回我々

は、頭痛・視野障害で発症し、急速に進行した後頭葉 LYG の一例を経験したので報告する。症例は 30 歳男性で 2006 年秋よ

り頭痛・視野障害を生じ、当院眼科にて MRI 施行するも異常なく、虚血性視神経障害との診断を受け外来観察中であった。

2007 年 2月に進行性に頭痛と視野障害が悪化し、頭部 MRI にて腫瘍性病変が疑われ当科入院となった。頭部 CT では明らか

な造影所見はなく、MRI 上 diffuse に造影される右後頭葉の病変と更に一回り大きな T2WI および FLAIR の高信号域を認め

た。全身検索、TM では転移性脳腫瘍は否定的であり、可溶性 IL2 レセプター(sIL2R)も正常範囲内であった。症状の急速

な進行のため、悪性神経膠腫との術前診断にて 2007 年 3 月開頭腫瘍摘出術を施行した。腫瘍は周囲脳よりやや硬く、境界

不明瞭、出血は少なく MRI 造影部分を全摘した。術中蛍光診断(5ALA)は陰性であった。病理組織診断では、血管周囲性に

異型の乏しい小型リンパ球浸潤とマクロファージの増生、星細胞の腫大と増生を認め、主な病変は血管壁の破壊と血栓形成

を伴っていた。免疫組織学的には CD3・CD45RO 陽性の T 細胞優位で、CD20 の B 細胞陽性率は低く、以上より LYG と診断し

た。2007 年 4月より 3クールのステロイド・パルス療法を行い、T2WI 高信号域の縮小を認めた。今後 PD 時には放射線治療

、HD-MTX 療法を検討している。LYG について文献的考察を加えて報告する。

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難聴で発症した小脳橋角部 granuloma の 1 例

cerebellopontine angle granuloma; case report

林 正孝、鈴木 咲樹子、加藤 宏一、比嘉 隆、氏家 弘、久保 長生、堀 智勝 B-18

東京女子医科大学 脳神経外科

cerebellopontine angle(CPA)には腫瘍性病変のほか、解離性・血栓化動脈瘤も生じるため、ときに術前診断が困難である

。今回、CPA に生じ、術前診断が困難であった granuloma を経験したため画像所見、手術所見とともに報告する。【症例】

62 歳、女性。【既往歴】僧帽弁狭窄症に対し 40 歳時に弁置換術施行。【経過】2 年前から右聴力低下出現し、近医受診する

が原因不明といわれ放置していた。その後、右舌の味覚障害、嚥下障害、平衡失調が進行。当院耳鼻科受診し右難聴ととも

に右CPAに腫瘍を認め当科紹介となる。頭部CTでは右内耳道の拡大、頭部MRIではT1でmixed intensity、T2にて中心がhigh

、周囲に hypointense rim を伴う extra-axial mass を認めた。Gadlinium で腫瘍壁の造影が認められた。脳血管造影では

異常血管を認めなかった。血栓化動脈瘤、meningioma、schwannoma、cavernous angioma 等を疑い手術を行なった。術中所

見は境界明瞭な腫瘍で古い血腫も認められた。病理所見は慢性炎症と陳旧性出血を伴う granuloma であった。【考察】頭蓋

内 infectous granuloma は副鼻腔炎から頭蓋骨骨髄炎が波及し生じるものや、他の化膿巣から血行性に感染するもの、開放

性頭部外傷に続発するもの等が報告されているが、稀な病態である。CPA では microvascular decompression 後のガーゼに

よる発症の報告がある。本症例は症状の進行が早く、耳鼻科での精査が行なわれる前に当科紹介となった。術前、内耳道の

拡大と思われた錐体骨の変化も骨融解の変化であった可能性が大きい。弁膜症術後で、心内膜血栓症や敗血症等の既往はな

いが、血行性の感染や中耳炎が発症原因になったと思われる。病理所見では陳旧性出血を認め、微少出血の繰り返しによる

granuloma の増大および脳幹圧迫症状が進行したと考えられる。錐体骨の変化を伴う CPA lesion では鑑別すべき疾患と思

われた。

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後頭蓋窩 Xanthogranuloma の一例

Xanthogranuloma of the posterior cranial fossa : A Case Report

長岐 智仁、今井 英明、赤尾 法彦、嶋口 英俊、好本 裕平 B-19

群馬大学 大学院医学系研究科 脳脊髄病態外科学講座

【背景】Xanthogranuloma は皮膚科領域の稀な疾患であり、頭蓋内発生は極めて稀である。今回我々は後頭蓋窩に発生した

一例を経験した為、文献的考察も含め報告する 【症例】36 歳男性。2007 年 1月を初めに数回の強い頭痛を自覚し近医受診

。左後頭蓋窩腫瘍性病変を認め当科紹介受診。既往歴に高脂血症(未治療)あり。家族歴に実母・祖母の高脂血症治療歴あ

り。神経学的脱落所見を認めず。全身状態良好。頭部 CT:左後頭骨から錐体部にかけて内板より板間層に至る骨破壊像あ

り。MRI:T1及び T2 は軽度高信号、DWI は高信号、Gd 造影効果認めず。Mass effect による脳幹圧迫所見と軽度脳室拡大

を認めた。骨シンチ・FDG-PET:同部位集積認めた。FAMT-PET:同部位集積認めず。脳血管撮影:明らかな Tumor stain 認

めず。腫瘍マーカー:陽性所見認めず。術前診断は骨原発悪性腫瘍を疑い、2007 年 5 月開頭腫瘍摘出術施行。術中所見で

腫瘍は主に頭蓋骨内に存在し骨浸潤を認めたが硬膜浸潤は認めず。硬膜上から板間層に至る黄色調腫瘍と繊維質病変を認め

た。柔らかく吸引可能で亜全摘出した。骨変性部は全摘出し骨形成術施行した。病理組織は泡沫細胞浸潤とコレステリン裂

隙を伴った線維性肉芽組織増生を認め Xanthogranuloma の診断であった。術後経過良好で合併症無く、独歩退院した。【考

察】本症例は特徴的所見を欠く為、術前診断に苦慮した。本疾患の発生原因は不明な点が多く、この病態が

Neoplastic, Inflammatory あるいは Metabolic であるのかも議論が分かれている。【結語】後頭蓋窩 Xanthogranuloma の一

例を経験した。本症例は既往歴に高脂血症があり、脂質代謝異常とこれに伴う炎症作用が病態に関連している可能性がある

。後療法は施行せず、患者は外来経過観察中である。

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多発性小脳血管芽腫摘出例の検討

Surgical treatment of multiple cerebeller hemangioblastoma

坂田 義則、波出石 弘、田中 美千裕、帯包 雄次、林 祥史 B-20

亀田総合病院 脳神経外科

【緒言】小脳血管芽腫は比較的まれであり、根治治療となる外科的摘出術は多く経験するものではない。今回、多発性小脳

血管芽腫に対する摘出術を経験したため報告する。【症例】症例は 2007 年 1 月から 5 月までに当科で外科的加療をした 2

症例 4病巣。内訳は 1例は左小脳半球嚢胞性腫瘍再発で嚢胞内に 2 つの壁在結節を認めた。一方の壁在結節は MRI 上明瞭に

造影され、血管撮影では左 PICA から主に feeding された。他方の壁在結節は MRI では同定できず、血管撮影にて左 SCA か

ら僅かに濃染され同定された。手術は左外側後頭下開頭後、嚢胞内から 2つの壁在結節が摘出された。他例は両側小脳半球

嚢胞性(右)及び充実性(左)腫瘍でそれぞれ右 SCA と PICA、左 AICA-PICA common trunk からの main feeder を認めた。

嚢胞性腫瘍は最初に嚢胞を開放し減圧した後、脳表から壁在結節を摘出した。すべての病巣において全摘出され、2 症例と

も術後合併症状を来すことなく独歩自宅退院した。手術内容についてはビデオ供覧し解説する。【考察・結語】脳腫瘍全国

統計によれば血管芽腫は原発性脳腫瘍の 1.7%とされ比較的稀とされる。後頭蓋窩血管芽腫の中で多発例は 12.5%とされ更に

稀となる。血管芽腫は WHO 分類上 grade I で全摘出されれば根治が可能となるため、治療においては摘出術が大きな役割を

担う。多発性血管芽腫に対する一期的全摘出の経験をもとに、特に手術について文献的考察を加えて報告する。

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化学療法が奏功した central neurocytoma の1例

Chemotherapy in central neurocytoma

谷地 一成、太田 隆、福島 崇夫、渡邊 学郎、吉野 篤緒、川又 達朗、片山 容一 B-21

日本大学医学部脳神経外科学系神経外科分野

Central neurocytoma は、成人に好発し脳室内に発生する腫瘍である。同腫瘍に対しては可能な限り全摘出術を行い、残存

腫瘍に対しては放射線治療を行うことが標準的な治療とされている。しかしながら、再発を繰り返し、治療に難渋する症例

がしばしば報告されている。また、central neurocytoma に対する化学療法の意義については、不明である。我々は全摘出

が困難で、放射線療法に抵抗性を示した症例に対して化学療法を行ない、完全寛解が得られた稀な1例を報告する。

【症例】24 歳男性。頭痛、嘔吐が出現し、近医を受診した。頭部 CT 上脳腫瘍を指摘され、当科へ紹介された。来院時意識

レベルは清明で、明らかな神経学的異常所見は認められなかった。MRI 上側脳室内に不均一に造影される腫瘍を認めた。発

症から1ヶ月後、腫瘍摘出術を施行した。腫瘍の一部が脳梁に浸潤していたため、機能の温存を考慮し亜全摘出にとどめた

。病理診断は central neurocytoma であったが、MIB-1 labeling index が 15%と高い増殖能を認めた。手術より 10 ヶ月後

、残存腫瘍に対して、定位的放射線治療(辺縁線量 37,5Gy)を施行した。その後、腫瘍の再増大に伴う頭蓋内圧亢進症状

を認めたため、初回手術より 24 ヶ月後、再手術(subtotal removal)を施行した。しかしながら、わずか 2ヶ月で再増大を

認めたため、白金製剤を中心とした ICE 療法(ifosfamide、cisplatin、etoposide)を施行した。計 6 回施行し 26 ヶ月経

過した現在、CR の状態である。

【結語】化学療法が奏功した central neurocytoma の1例を経験した。手術療法を行い、放射線照射後再発を繰り返した症

例に対し、白金製剤を中心とした化学療法は選択すべき治療法の1つであると考えられた。

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両側頚部内頚動脈狭窄症を伴う全身性動脈硬化性血管病変に対する血管内治療戦略

Endovascular treatment of manegement for systemic arteriosclerotic multiple vascular lesions with

bilateral cervical carotid artery stenosis

竹内 昌孝 1、小西 善文 2、関 隆史 1、梅本 朋幸 3、小山 誠剛 1、柴田 憲男 1、阿波根 朝光 1

B-22

1葛西循環器脳神経外科病院 脳神経外科、2杏林大学 脳神経外科、3葛西循環器脳神経外科病院 循環器内科

【はじめに】頸部内頚動脈狭窄症は動脈硬化性病変の一つと定義される。特に冠動脈病変、下肢動脈硬化性病変との合併例

が多く、治療戦略に難渋するケースがある。今回、我々は全身性動脈硬化性血管病変に対し、すべて血管内治療にて良好な

転帰を得られた 2 例につき報告する。【症例 1】59 歳 男性 左新生血管性緑内障発作にて発症。頸動脈病変を疑われ当院

紹介受診。血管性病変として、左内頚動脈 nearly occlusions、右内頸動脈狭窄 NASCET85%狭窄、両側総腸骨動脈高度狭窄

の所見であった。頸動脈病変には、flow reversal が必要と判断し、右総腸骨動脈血行再建術後、右上腕動脈および右大腿

動脈アプローチにより flow reversal にて左内頚動脈血行再建術施行。その後、右内頚動脈、左総腸骨動脈の順に血行再建

術施行し、経過良好にて自宅退院。【症例 2】68 歳 男性 TIA にて発症。脳血管撮影にて両側内頚動脈 NASCET90%狭窄を認

めた。Tolerance 不良と判断され、全身麻酔下にて 2 週間の間隔をおき両側内頚動脈血管形成術。冠動脈病変として LAD CTO

の所見。治療時の back up として IABP が必要の可能性があるため左総腸骨動脈血行再建後、経皮的冠動脈形成術施行し良

好な転帰を得られた。【考察・結語】全身性硬化性病変に対し、すべて血管内治療にて良好な転帰がえられた。治療の優先

順位、治療間隔およびアクセスルートなど治療戦略のさらなる検討が必要である。

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木村氏病に合併した内頚動脈閉塞症の一例

Internal carotid artery occlusion in Kimura's Disease

山崎 道生 1、玉置 智規 1、野手 洋治 1、寺本 明 2 B-23

1日本医科大学付属多摩永山病院 脳神経外科、2日本医科大学付属病院 脳神経外科

我々は、木村氏病に右内頚動脈閉塞による脳梗塞を合併した、稀な症例を経験したので報告する。症例は25歳、左片麻痺

にて来院、CT、MRI にて右前頭葉、側頭葉に梗塞巣を認めた。また、脳血管造影では、C1セグメントで右内頚動脈は閉塞

しており、眼動脈からもやもや様の新生血管を認めた。木村病(軟部好酸球性肉芽腫症)は 1948 年に木村らにより「リン

パ組織増生を伴う異常肉芽」と報告され、肉芽腫は全身に発生するが、好発部位は頭頚部であり、全症例数の約75%を占

める。 特に耳下腺や耳介周囲(頬部、顎下腺)に多く見られ自己免疫性疾患としても認知されている。自己免疫性疾患に

合併する内頚動脈閉塞症には、報告例が散見されており、我々の症例も、木村氏病の自己免疫性疾患としてのメカニズムが

内頚動脈閉塞の原因として考えられた。

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シロスタゾール、アスピリンの内服にて改善を得られた内頸動脈閉塞症の一例

A case of internal carotid artery occlusion recanalized by treatment with cilostazol and aspirin

中山 禎理、松本 浩明、和田 晃、藤島 裕丈、阿部 琢巳 B-24

昭和大学 脳神経外科

今回、我々は急激な視力障害で発症した内頸動脈閉塞症の患者において、シロスタゾール、アスピリンの内服にて閉塞の改

善を得られた症例を経験したため報告する。【症例】57 歳男性、糖尿病の既往があり、インスリン療法中であった。平成 17

年 1 月に右視力障害を認め眼科を受診し、FAG 蛍光眼底検査にて網膜動脈流入時間遅延を認め、内頸動脈、眼動脈閉塞が疑

われ脳外科転科となった。【経過】DSA にて右内頸動脈 near occlusion の所見であり、頸動脈エコーにおいても同様の所見

を認め CEA 施行となった。術中所見にて総頸動脈、外頚動脈をクランプしたところ、内頸動脈からの back flow をほとんど

認めず、内頸動脈末梢での完全閉塞が考えられ CEA は施行せず手術終了とした。術後 MRI では脳梗塞巣は認めず、また、SPECT

、PET にて脳血流評価を行ったところ、右大脳半球の循環予備能低下はみられたが、misery perfusion は認めず血行再建術

は行わなかった。その後、シロスタゾール、アスピリン内服にて外来経過観察とし、MRI、MRA でフォローとした。経過中

に MRA にて徐々に右内頸動脈の描出改善を認め、2年後の MRA においてほぼ左右差なく描出されるようになった。現在も新

たな脳梗塞などの出現はなく、外来通院中である。【考察】抗血小板薬の内服による保存的加療での頭蓋内主幹動脈狭窄の

改善を得られた症例は、近年報告されてきている。有効性に関しては抗血小板薬の種類や、狭窄の程度、粥腫斑の形態によ

る違いなど諸説あり、症例の蓄積が待たれる。

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当院脳卒中センターで14ヶ月間に施行した rt-PA 静注療法53例の治療成績

Results of intravenous rt-PA therapy for 53 patients with hyperacute stroke.

野末 恭子、栗田 浩樹、脊山 英徳、西山 和、岡野 晴子、山田 智美、山田 深、松本 由美、塩川 芳

昭、山口 芳裕

B-25

杏林大学医学部付属病院・脳卒中センター

【目的】杏林大学病院脳卒中センターで 2006 年 5 月の開設より 2007 年 6 月までの 14 ヶ月間に施行した tPA 静注療法 53

例の治療成績を報告する。【方法】当センターでは専従スタッフが当直して救急隊との間に hotline 体制を構築し、rt-PA

静注療法の適応が推定された場合、脳卒中センタースタッフを救命救急センターに集中させる「tPA シフト」体制をとっ

ている。この体制により、超急性期脳梗塞症例に対して迅速に対応が可能となった。【結果】53 例の内訳は男性 33 例、女

性 21 例で、平均年齢は平均 72.9 才であった。入院時 NIHSS は平均 17.1P、発症より rt-PA 投与までの時間は平均 157.6 分

であった。投与後 6 時間以内の神経学的改善は 33 例(62.3%)で認め、19 例(35.8%)では著効(NIHSS 10P 以上の改善または

神経症状の消失)した。一方 20 例(37.7%)では明らかな効果が認められなかった(NIHSS 5P 以下の改善)。投与後 36 時間以

内の頭蓋内出血は 7 例(13.2%)で認め、うち 2 例(3.8%)が症候性(頭痛 1,片麻痺の悪化および意識障害 1)で、1 例で外科的

血腫除去術を必要とした。治療 3 ヶ月後の予後が判明した 43 例では、良好(mRS 0-2)が 14 例(32.6%)、不良(mRS 3-6)が 29

例で死亡例(4;9.3%)は全例が rt-PA の効果が認められない症例であった。rt-PA の効果に関与する因子としては有意であっ

たのは MCA および VB 閉塞(p<0.01, P<0.005)および塞栓症(p<0.01)で、患者の年齢や投与までの時間は有意ではなかっ

た。【結語】厳密な適応基準下に施行される rt-PA 療法は低い合併症率で高い治療効果が期待できる。今後、いかに多くの

症例に治療機会を提供できるかが重要な課題である。

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視床動静脈奇形γナイフ治療後 15 年目に生じた血栓性腫瘤の一例

A case of hematoma mass at 15 years after gamma knife treatment for thalamic AVM

田島 洋佑、長谷川 祐三、村井 尚之、佐伯 直勝 B-26

千葉大学 医学研究院 脳神経外科

【初めに】脳動静脈奇形(AVM)のγナイフ治療後には、再出血やのう胞や放射線誘発腫瘍の形成など種々の晩期合併症が

知られているが、今回初回γナイフ治療後 15 年、放射線学的 AVM 消失後 10 年で血栓性腫瘤と水頭症の発生をみた症例を経

験したので文献的考察を交えて発表する。【症例】症例は 30 歳男性。平成 4 年 14 歳時に出血にて発症した右視床 AVM に対

し、同年血管内治療とγナイフ治療を行った。2 年後には 2 回目のγナイフを施行。5 年で MRI および脳血管造影にて異常

血管が消失しフォローは終了となっていた。平成 19 年に入ってから頭痛・立ちくらみが出現し、2 月 1 日に近医受診し、

右視床より第 3 脳室に突出する腫瘤と閉塞性水頭症を指摘され同院入院。腫瘤は一部にのう胞を有し、実質性部分は CT で

高吸収、MRI T1W1 にて等信号、T2W1 にて高信号であった。2 月 9 日、精査加療目的に当院転院となった。脳血管造影では

若干の流入血管を認めたが、明らかな AVM は認めなかった。その後傾眠傾向となり、2 月 19 日、開頭腫瘤摘出術を施行し

た。右前頭開頭経皮質経脳室で、脈絡裂を開いて第三脳室に突出した腫瘤を亜全摘出した。腫瘤は赤黒く弾力があり易出血

性であった。病理では新旧の hematoma が混在しており AVM の残存は認めなかった。腫瘤周辺部にはリポフスチンと古い血

栓が、中央には比較的新しい血栓があり、新生血管は余り目立たなかった。その後残存する水頭症のために内視鏡的第三脳

室底開窓術を要したが、障害を残すことなく退院し原職に復帰した。【結語】視床 AVM に対し血管内治療およびγナイフ治

療後 15 年目に発症した血栓性腫瘤の 1 例を報告した。γナイフ治療後、長期を経てから血栓性腫瘤を形成することがある

ことを念頭にフォローすべきであり、発症時には積極的な摘出術を考慮すべきものと思われた。

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ライナック定位放射線手術による AVM 治療後に嚢胞形成しオンマイヤ槽を留置した一例

A case of cyst formation after LINAC radiosurgery for arteriovenous malformation treated with

Ommaya reservoir

安藤 亮、冨田 伸、渡辺 三郎、大屋 滋、持田 英俊、スィーワッタナクン キッティポン、島 伸嘉、

山本 邦厚、小野田 吏絵

B-27

旭中央病院 脳神経外科

AVM に対し gamma-knife 照射を行った後の嚢胞形成を来す症例はしばしば報告されている。我々の施設ではライナックを用

いた X-knife を採用しているが、今回 AVM に対し X-knife 治療後 3 年目に嚢胞形成を来した症例を経験したので報告する。

症例)42 歳男性。SAH 発症の AVM(右側頭葉、右 MCA の posterior trunk から 2本の feeder, nidus は 24×25×10mm, drainer

は superficial vein のみ)に対して X-knife を施行した(中心線量 25Gy、辺縁 18.3Gy)。1 年後の MRI では nidus は縮小

、1年半後 MRI 上は nidus がみられなくなったが、T2 で治療部周囲に脳浮腫と考えられる高信号域が増強していた。これ以

降フォローが途絶えてしまうが、治療から 3年後、頭痛を主訴に再診、頭部 MRI にて脳浮腫、嚢胞形成、壁のガドリニウム

増強をみとめた。脳血管撮影施行し nidus の消失は確認された。治療から 3年半後、頭痛、全身倦怠感の増強を訴え、頭部

MRI 上もさらなる脳浮腫、嚢胞形成の増大がみとめられため、嚢胞部分切除、オンマイヤ貯留槽留置術を施行し、症状の改

善が得られた。病理所見では放射線壊死と考えられた MRI 上ガドリニウム増強を示す部位からは、hyaline necrosis に相

当する血管壁の硝子化、壁構造の消失がみられたが悪性所見はみられなかった。また嚢胞壁では脈管構造は正常範囲内であ

るも脳組織の浮腫がみられ、血液脳関門の異常が示唆された。考察)現在、嚢胞形成のメカニズムに関して確定的なものは

ない。放射線治療により局所的な凝固壊死が起こり、血液脳関門が破綻し、その状態が数年後に液化壊死に置き換わり、嚢

胞が形成されるという機序が想定されている。本症例においても血液脳関門の破綻が嚢胞形成に関わる可能性が病理学的に

考えられた。

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くも膜下出血で発症した tentorial Dural AVF with leptomeningial drainage の一例

tentorial Dural AVF with leptomeningial venous drainage,case report

伊澤 仁之 1、大野 晋吾 1、村上 守 1、西岡 宏 1、中島 智 1、池田 幸穂 1、原岡 襄 2 B-28

1東京医科大医学八王子医療センター、2東京医科大学病院脳神経外科

(症例)63歳男性。既往には Basedow 病があるが、内服加療はされてなかった。2007.2.14 誘因なく突然の後頭部痛にて

発症。軽快しない為救急車にて来院。初診時 Bp138/72、意識清明、神経学的異常所見なかった。CT にて後頭蓋窩から ambient

cistern にかけて、Fisher 分類 Group II のくも膜下出血を認めた。脳血管撮影にて左右 Middle meningial Artery、Dorsal

meningial Artery を feeder とし、vraix をともない Inferior hemispheric vein を drainer とする tentorial Dural AVF

(with leptomeningial venous drainage)を認めた。MRI,3D-CTA にて vraix をともなった drainer は描出されたが、feeder

は描出されなかった。MRI にて drainer 近傍の小脳半球内に静脈循環障害を疑う T1WI にて LSI,T2WI にて HSI の領域を認め

た。2007.2.25 dural AVF 直後の draining vein の切離術施行した。術後脳血管撮影では AVF は消失し、MRI の異常信号域

消失し、神経脱落症状なく退院した。(まとめ)出血発症した leptomeningial venous drainage や vraix をともなった

dural AVF は早期に再出血することが多く、早期に根治術を必要とする。draining vein の切離術は比較的低浸襲であり根

治性が高い治療法である。文献的考察を加え報告する。

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大脳鎌に発生した硬膜動静脈瘻の一例

A case of dural arteriovenous fistula of the anterior falx

佐藤 健一郎、岩渕 聡、富山 新太、平田 容子、斉藤 紀彦、古川 博規、林 盛人、伊藤 圭介、青木

和哉、上田 守三

B-29

東邦大学 医療センター 大橋病院 脳神経外科

【はじめに】大脳鎌に発生する硬膜動静脈瘻は比較的稀である。今回我々は偶然に発見された前頭蓋窩付近の大脳鎌硬膜動

静脈瘻を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。【症例】63 才の男性。以前より後頭部を中心とした頭痛を認

め精査目的にて近医受診。頭部 MRI にて前頭蓋窩に異常な flow void を認めたため当院紹介となった。入院時神経学的に明

らかな異常所見は認めなかった。脳血管撮影にて左右の前篩骨動脈、中硬膜動脈を介した大脳鎌動脈を流入動脈とし、嗅静

脈を介して脳底静脈へ還流する前頭蓋窩近傍大脳鎌の硬膜動静脈瘻が確認された。流出静脈には複数の vascular pouch が

認められた。本例は偶然に発見された無症候性病変であったが、頭蓋内出血の予防のため外科的手術を行った。シャント部

位は術前脳血管撮影と同様に、前頭蓋窩付近の大脳鎌に存在し、その部位に集簇する流入動脈を凝固し、大脳鎌から流出す

る静脈を遮断すると、拡張蛇行静脈は虚脱し、ドップラー超音波でも血流の消失を認めた。術中脳血管撮影にて硬膜動静脈

瘻が造影されないことを確認し手術を終了した。術後 MRI では異常な flow void は消失し、vascular pouch の血栓化がみ

られ、経過良好にて退院となった。【考察】本例は広義には前頭蓋窩硬膜動静脈瘻の範疇に入ると考えられるが、大脳鎌に

発生した硬膜動静脈瘻の報告例は少ない。今回は偶然に発見された例であったが、導出静脈が脳表静脈であり、複数

の vascular pouch を伴っていたため、出血の危険性が高いと判断し積極的治療を行った。治療方法として血管内治療も考

慮されたが、中硬膜動脈からシャント部位への誘導は困難と考え開頭術を選択した。外科的治療として、流入動脈の遮断、

動静脈瘻それ自身の焼却、導出静脈の遮断があげられるが、本例では容易にシャント部位が同定でき、導出静脈が一つであ

ったため、動静脈瘻の電気焼却と導出静脈の遮断で、比較的容易に完治が得られた。

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前頭側頭開頭術後に出現した二次性硬膜動静脈瘻の一例

A case of secondary dural arteriovenous fistula following frontotemporal caniotomy

篠原 毅之、孫 宰賢、渡邉 丈博、高梨 成彦、望月 俊宏、上野 俊昭、古屋 一英、藤巻 高光、中込

忠好

B-30

帝京大学 医学部 脳神経外科

【はじめに】前頭側頭開頭術後に開頭術時操作していない部位に生じた右前頭部 dural AVF の一例を報告する。【症例】70

歳女性、頭痛精査のために施行した MRI で Rt.IC-PC 未破裂動脈瘤が発見されたため、Rt.IC-PC 未破裂動脈瘤に対して右前

頭側頭開頭による開頭クリッピング術を施行した。7 ヶ月後の follow-up MRI にて右大脳半球広汎に静脈拡張と思われ

る T2-flow void を認め、脳血管撮影では spheno-parietal sinus に流入する異常血管が描出され皮質静脈への逆流が著明

であり durral AVF と診断された。まず血管内手術で中硬膜動脈前枝及び後枝、maxillary artery からの feeder occlusion

を行ったが、dural AVF 及び皮質静脈への逆流は消失しなかったため 10 日後に開頭術を行った。spheno-parietal sinus に

流入する異常血管を遮断し、同 sinus 周囲の硬膜を十分に凝固焼灼し、術中脳血管撮影にて dural AVF と皮質静脈の逆流の

消失を確認し手術を終了した。【考察】Dural AVF はいまだその成因の不明な疾患であるが、外科的治療を契機に発生する

可能性も考えられ、これまでに開頭術後に dural AVF と診断された症例の報告は 13 例あり、開頭部近傍に発生したものが

4 例、遠隔部位に発生したものは 9 例であった。今回の症例では、開頭術時に操作していない部位に短期間に動静脈瘻が形

成されていた。これは潜在的な微小動静脈瘻が手術操作による頭蓋内圧の変化によって拡張した等の機序が考えられた。【

結語】開頭術後に手術操作と直接は関係なくとも dural AVF が顕在化することがあるため術後 follow up の際には頭蓋内血

管の評価を行うことが望ましいと思われた。