第1回日本アミロイドーシス研究会 学術集会1st annual meeting of the japan...

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1st Annual Meeting of the Japan Amyloidosis Research Society 第1回日本アミロイドーシス研究会 学術集会 テーマ:アミロイドーシスの周知を目指して 会 期  2013年8月30日(金) 会 場  KKRホテル東京 東京都千代田区大手町1-4-1 TEL 03-3287-2921 大会長   池田 修一 信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科 教授

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1st Annual Meeting of the Japan Amyloidosis Research Society

第1回日本アミロイドーシス研究会学術集会

テーマ:アミロイドーシスの周知を目指して

会 期  2013年8月30日(金)

会 場   KKRホテル東京 東京都千代田区大手町1-4-1 TEL 03-3287-2921

大会長   池田 修一 信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科 教授

1

大 会 長 挨 拶

第 1 回日本アミロイドーシス研究会学術集会大会長 池田 修一

 アミロイドーシスはアミロイド細線維と呼ばれる絹糸のような形をした異常蛋白が全身

の種々な処へ沈着して、その組織または臓器の機能障害を生じる疾患の総称です。アミロ

イドの基となる蛋白は 20 種類以上あり、このアミロイド前駆蛋白の化学的性状の違いに

より、臨床像も多様ですが、アミロイドが沈着しやすい身体部位は脳、心臓、消化管、腎臓、

末梢神経です。わが国ではアミロイドーシスは厚生労働省が指定する難病の一つであり、

また厚生労働省特定疾患アミロイドーシス調査研究班という専門的家が集まるグループで

昭和 51 年以来長年に渡って精力的な研究が行われて来ました。また同時に、わが国のア

ミロイド研究者は国際的にも数々の成果を発表して、高い評価を得ております。そうした

国内外の研究進捗により、長年治療法の無い疾患とみなされていたアミロイドーシスも現

在は臓器移植、薬物療法等により治療可能となりました。近未来的にはアミロイドーシス

に対する新規薬物または遺伝子治療の導入も検討されております。アミロイドーシスは今

や不治の病と諦める疾患ではなくなりました。さらに重要なことは、アミロイドーシスの

成因解明で蓄積された蛋白のミスフォールディングと呼ばれる概念がパーキンソン病、脊

髄小脳変性症等の神経変性疾患の分子病態解明におけるキーワードとなっていることであ

ります。

 しかしこうしたアミロイドーシス研究の最近の著しい進歩は、残念ながら一般医家の知

るところまでには至っておりません。そこで今回、アミロイドーシスの成因と病態、診断法、

治療法を広く理解してもらい、同時にわが国のアミロイドーシス研究を一層活性化する目

的で平成 24 年 12 月に『日本アミロイドーシス研究会』を立ち上げました。そして第1回

学術集会を本年 8 月 30 日に私が大会長として開催します。本研究会では通常の症例報告、

研究報告、動物モデルの研究に加えて、教育講演・シンポジウム ・ 症例検討会なども計画

しております。多くの皆様の御参加をお待ちしております。本研究会の御支援を含めて、

皆様どうぞ宜しくお願い申し上げます。

1

22

目 次

大会長挨拶… ……………………………………………………………………………………………………………………… 1

日程表………………………………………………………………………………………………………………………………… 3

プログラム…… ……………………………………………………………………………………………………………………… 4

[講演要旨]

教育講演

E-1 アミロイドーシス診断におけるピットフォール………………………………………………………… 10

ランチョンセミナー

L-1 脳Aβアミロイドーシスの病態と治療・予防… ……………………………………………………… 11

L-2 AAアミロイドーシスの臨床…―…病態及び診断と治療の進歩…―… …………………………… 12

シンポジウム

S-1 免疫グロブリン関連アミロイドーシスUp…Date…… ……………………………………………… 13

S-2 アミロイドーシスの発症機序とその制御…… ………………………………………………………… 16

[症例検討要旨]

C-1 診断に難渋したSAA染色陽性のALアミロイドーシスの一剖検例… …………………… 20

C-2 メルファラン・デキサメタゾン併用療法が効奏し良好な経過を維持している…重鎖型(AH)原発性アミロイドーシスの一例… ………………………………………………… 20

[一般演題要旨]

O-1-1~6 ATTRアミロイドーシス…………………………………………………………………………… 21

O-1-7~11 肝移植…………………………………………………………………………………………………… 24

O-1-12~17 ALアミロイドーシス………………………………………………………………………………… 27

O-2-1~6 AAアミロイドーシス………………………………………………………………………………… 30

O-2-7~11 実験的アミロイドーシス…………………………………………………………………………… 33

O-2-12~14 脳アミロイドーシス… ……………………………………………………………………………… 36

O-2-15~18 透析アミロイドーシス…他…………………………………………………………………………… 38

日本アミロイドーシス研究会 会則…… …………………………………………………………………………………… 40

3

日…

程…

プログラム

教育講演

ランチョンセミナー

シンポジウム1

シンポジウム2

一般演題(第1会場)

症例検討

一般演題(第2会場)

会 

2013年8月30日(金)  KKRホテル東京 11階

第 1 会場(11階 孔雀)

第 2 会場(11階 朱鷺)

8:00

【役員会】8:15 ~ 8:45

9:009:00 ~ 9:10【開会式】

9:10 ~ 9:50

【教育講演】 E-1「アミロイドーシス診断におけるピットフォール」座長:山田 俊幸  演者:安東由喜雄共催:ファイザー株式会社

10:009:50 ~10:30

【症例検討】 C-1~C-2座長:池田 修一 コメンテーター:石原 得博,江原 孝史

10:45 ~11:45【一般演題】 O-1-1~O-1-6ATTRアミロイドーシス座長:小池 春樹

10:45 ~11:45【一般演題】 O-2-1~O-2-6AAアミロイドーシス座長:黒田 毅

11:00

12:00

12:00 ~12:45

【ランチョンセミナー1】 L-1「脳Aβアミロイドーシスの病態と治療・予防」座長:樋口 京一  演者:山田 正仁共催:武田薬品工業株式会社

12:00 ~12:45

【ランチョンセミナー2】 L-2「AAアミロイドーシスの臨床 -病態及び診断と治療の進歩-」座長:西 慎一  演者:奥田 恭章共催:中外製薬株式会社

13:00

13:00 ~13:50【一般演題】 O-1-7~O-1-11 肝移植座長:山下 太郎

13:00 ~13:50【一般演題】 O-2-7~O-2-11 実験的アミロイドーシス座長:澤下 仁子

14:00

13:50 ~14:50【一般演題】 O-1-12~O-1-17 ALアミロイドーシス座長:島崎 千尋

13:50 ~14:20【一般演題】 O-2-12~O-2-14 脳アミロイドーシス座長:亀谷富由樹

14:20 ~15:00【一般演題】 O-2-15~O-2-18 透析アミロイドーシス他座長:高市 憲明

15:00

15:10 ~16:25

【シンポジウム1】 S-1「免疫グロブリン関連アミロイドーシスUp Date」座長:麻奥 英毅演者:S-1-1 島崎 千尋   S-1-2 池田 修一   S-1-3 矢崎 正英

16:00

16:25 ~17:40

【シンポジウム2】 S-2「アミロイドーシスの発症機序とその制御」座長:内木 宏延演者:S-2-1 樋口 京一   S-2-2 小野賢二郎   S-2-3 横田 隆徳

17:00

18:00

18:00 ~19:30【懇親会】 会場:11階 白鳥  会費:2,000円 (開始・終了時刻は変更する可能性があります)19:00

日…

程…

日 程 表

4

プログラム

日…

程…

教育講演

ランチョンセミナー

シンポジウム1

シンポジウム2

症例検討

一般演題(第1会場)一般演題(第2会場)

会 

■ 第1会場(孔雀) ■

【教育講演】 E-1 アミロイドーシス診断におけるピットフォール

9:10 ~ 9:50[座  長] [演  者] [共  催]

山田 俊幸 安東由喜雄

(自治医科大学臨床検査医学) (熊本大学大学院 生命科学研究部・神経内科)

ファイザー株式会社

【症例検討】 [座  長] [コメンテーター]

池田 修一 (信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科) 石原 得博 (前 山口大学 病理学第一講座) 江原 孝史 (松本大学 スポーツ健康学科)

C-1 診断に難渋したSAA染色陽性のALアミロイドーシスの一剖検例

9:50 ~ 10:10 [筆頭演者] 水野 真一 (仙台社会保険病院 腎疾患臨床研究センター)

C-2 メルファラン・デキサメタゾン併用療法が効奏し良好な経過を維持している 重鎖型(AH)原発性アミロイドーシスの一例

10:10 ~ 10:30 [筆頭演者] 菊地 晃一 (虎の門病院腎センター・リウマチ膠原病科)

10:30 ~ 10:45 コーヒーブレイク

【一般演題】 ATTR アミロイドーシス[座  長] 小池 春樹 (名古屋大学 神経内科)

O-1-1 サイバニクスによる家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)患者における運動障害改善効果の検討

10:45 ~ 10:55 [筆頭演者] 山下 太郎 (熊本大学大学院神経内科学分野)

O-1-2 ATTR FAP眼症における蛍光眼底造影検査の検討

10:55 ~ 11:05 [筆頭演者] 今井  章 (信州大学医学部 眼科)

O-1-3 家族性アミロイドポリニューロパチーに対するジフルニサルの使用経験

11:05 ~ 11:15 [筆頭演者] 髙橋 良一 (金沢大学脳老化・神経病態学(神経内科))

O-1-4 老人性全身性アミロイドーシスと家族性ポリニューロパチー患者の心機能の比較検討

11:15 ~ 11:25 [筆頭演者] 南澤 匡俊 (信州大学医学部 循環器内科)

O-1-5 心筋生検でALアミロイドーシスが疑われたが組織の再評価で老人性アミロイドーシスの診断に至った一例

11:25 ~ 11:35 [筆頭演者] 今福  礼 (虎の門病院 腎センター)

O-1-6 心筋生検組織のアミロイド分析からみた心アミロイドーシスの基礎疾患の検討

11:35 ~ 11:45 [筆頭演者] 関島 良樹 (信州大学医学部 脳神経内科,リウマチ・膠原病内科)

【ランチョンセミナー 1】 L-1 脳 Aβアミロイドーシスの病態と治療・予防

12:00 ~ 12:45[座  長] [演  者] [共  催]

樋口 京一 山田 正仁

(信州大学大学院医学系研究科疾患予防医科学系加齢生物学) (金沢大学大学院 脳老化・神経病態学(神経内科学))

武田薬品工業株式会社

プ ロ グ ラ ム

プログラム

5

日…

程…

プログラム

教育講演

ランチョンセミナー

シンポジウム1

シンポジウム2

一般演題(第1会場)

症例検討

一般演題(第2会場)

会 

【一般演題】 肝移植[座  長] 山下 太郎 (熊本南病院 神経難病センター)

O-1-7 生体肝移植長期経過(15年)後死亡した家族性アミロイドポリニューロパチー患者の一例 ― 病理組織像とアミロイド蛋白の解析

13:00 ~ 13:10 [筆頭演者] 矢崎 正英 (信州大学大学院医学系研究科疾患予防医科学系加齢生物学)

O-1-8 生体肝移植後20年を経た家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)患者の病態

13:10 ~ 13:20 [筆頭演者] 池田 修一 (信州大学医学部 脳神経内科,リウマチ・膠原病内科)

O-1-9 FAP肝のドミノレシピエントにおけるアミロイド沈着と臨床症候の解析

13:20 ~ 13:30 [筆頭演者] 三隅 洋平 (熊本大学 神経内科)

O-1-10 ALアミロイドーシスによる急性肝不全に対してsalvage 肝移植を行うことで化学療法が可能となり寛解に至った1例

13:30 ~ 13:40 [筆頭演者] 清水 誠一 (広島大学 消化器・移植外科)

O-1-11 肝障害を主徴とした全身性ALアミロイドーシス(いわゆる原発性肝アミロイドーシス)に対して 待機的化学療法施行を目的に生体部分肝移植を先行させた一例

13:40 ~ 13:50 [筆頭演者] 上野 晃弘 (信州大学医学部 脳神経内科,リウマチ・膠原病内科)

【一般演題】 AL アミロイドーシス[座  長] 島崎 千尋 (社会保険京都病院 血液内科)

O-1-12 経時的肝生検によって自己末梢血幹細胞移植併用大量化学療法後に肝アミロイド沈着の退縮が証明されたALアミロイドーシスの一例

13:50 ~ 14:00 [筆頭演者] 加藤 修明 (信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科)

O-1-13 初発ALアミロイドーシスに対するmelphalan-dexamethasone(MDex)療法後の二次治療に関する検討

14:00 ~ 14:10 [筆頭演者] 淵田 真一 (社会保険京都病院 血液内科)

O-1-14 高齢者AL amyloidosis患者に対してBortezomibを使用した経験

14:10 ~ 14:20 [筆頭演者] 片山 雄太 (広島赤十字・原爆病院 血液内科部)

O-1-15 ALアミロイドーシスに対するボルテゾミブ皮下投与によるVCD療法の有用性

14:20 ~ 14:30 [筆頭演者] 竹田 勇輔 (千葉大学医学部附属病院 血液内科)

O-1-16 頭部限局型ALアミロイドーシスの2例

14:30 ~ 14:40 [筆頭演者] 鈴木 啓介 (愛知医科大学病院 腎臓・リウマチ膠原病内科)

O-1-17 消化管限局性ALアミロイドーシスの臨床像

14:40 ~ 14:50 [筆頭演者] 加藤 修明 (信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科)

14:50 ~ 15:10 コーヒーブレイク

プログラム

6

プログラム

日…

程…

教育講演

ランチョンセミナー

シンポジウム1

シンポジウム2

症例検討

一般演題(第1会場)一般演題(第2会場)

会 

プログラム

【シンポジウム 1】免疫グロブリン関連アミロイドーシス Up Date [座  長] 麻奥 英毅 (広島赤十字・原爆病院検査部)

S-1-1 全身性ALアミロイドーシスの治療 ― 最近の進歩 ―

15:10 ~ 15:35 [演  者] 島崎 千尋 (社会保険京都病院 血液内科)

S-1-2 限局性ALアミロイドーシス(amyloidoma)の診断と治療

15:35 ~ 16:00 [演  者] 池田 修一 (信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科)

S-1-3 AHアミロイドーシスの診断と治療

16:00 ~ 16:25 [演  者] 矢崎 正英( 信州大学大学院医学系研究科疾患予防医科学系加齢生物学) 信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科

【シンポジウム 2】アミロイドーシスの発症機序とその制御 [座  長] 内木 宏延 (福井大学医学部病因病態医学)

S-2-1 Seeding反応による伝播現象から見たアミロイドーシスの病態

16:25 ~ 16:50 [演  者] 樋口 京一 (信州大学大学院医学系研究科疾患予防医科学系加齢生物学)

S-2-2 Aβ凝集機序とその制御薬の開発

16:50 ~ 17:15 [演  者] 小野賢二郎 (金沢大学大学院脳老化・神経病態学)

S-2-3 独自に開発した新規核酸医薬を用いた家族性アミロイドポリニューロパチーの治療法の開発

17:15 ~ 17:40 [演  者] 横田 隆徳 (東京医科歯科大学大学院 脳神経病態学分野(神経内科))

7

日…

程…

プログラム

教育講演

ランチョンセミナー

シンポジウム1

シンポジウム2

一般演題(第1会場)

症例検討

一般演題(第2会場)

会 

■ 第2会場(朱鷺)■

【一般演題】 AA アミロイドーシス[座  長] 黒田  毅 (新潟大学 保健管理センター)

O-2-1 AAアミロイド沈着の検出におけるイムノブロットの有用性

10:45 ~ 10:55 [筆頭演者] 山田 俊幸 (自治医科大学臨床検査医学)

O-2-2 ヒト末梢血単核球培養を用いたAAアミロイド形成機序の解析

10:55 ~ 11:05 [筆頭演者] 石井  亘 (信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科)

O-2-3 血清アミロイドA蛋白(SAA)によるインフラマソームの活性化

11:05 ~ 11:15 [筆頭演者] 右田 清志 (独立行政法人国立病院機構長崎医療センター リウマチ科)

O-2-4 血清アミロイドAの線維形成に生体分子が与える影響

11:15 ~ 11:25 [筆頭演者] 高瀬ひろか (神戸薬科大学・薬品物理化学研究室)

O-2-5 関節リウマチに反応性アミロイドーシスを合併した1剖検例における腎組織へのアミロイド沈着の検討

11:25 ~ 11:35 [筆頭演者] 黒田  毅 (新潟大学保健管理センター)

O-2-6 関節リウマチ合併AAアミロイドーシスの治療戦略

11:35 ~ 11:45 [筆頭演者] 中村  正 (くまもと森都総合病院 リウマチ膠原病内科)

【ランチョンセミナー 2】 L-2 AA アミロイドーシスの臨床 ― 病態及び診断と治療の進歩 ―

12:00 ~ 12:45[座  長] [演  者] [共  催]

西  慎一 奥田 恭章

(神戸大学医学部附属病院腎・血液浄化センター) (道後温泉病院リウマチセンター)

中外製薬株式会社

【一般演題】 実験的アミロイドーシス[座  長] 澤下 仁子 (信州大学大学院医学系研究科疾患予防医科学系加齢生物学)

O-2-7 アミロイド線維のリフォールディングを促進させる赤外自由電子レーザーの開発

13:00 ~ 13:10 [筆頭演者] 川崎 平康 (東京理科大学総合研究機構赤外自由電子レーザー研究センター)

O-2-8 アミロイド線維形成の促進・検出装置HANABIの研究開発

13:10 ~ 13:20 [筆頭演者] 後藤 祐児 (大阪大学 蛋白質研究所)

O-2-9 マウス老化アミロイド線維(AApoAII)の構造と伝播性の解析

13:20 ~ 13:30 [筆頭演者] 劉  穎業 (信州大学大学院医学系研究科疾患予防医科学系加齢生物学)

O-2-10 マウスF型ApoA-IIのC末ペプチドはAApoAIIアミロイドーシスを軽減する

13:30 ~ 13:40 [筆頭演者] 澤下 仁子 (信州大学大学院医学系研究科疾患予防医科学系加齢生物学)

O-2-11 獣医学領域におけるアミロイドーシス

13:40 ~ 13:50 [筆頭演者] 渡邉 謙一 (東京大学 大学院農学生命科学研究科 獣医病理学研究室)

プログラム

8

プログラム

日…

程…

教育講演

ランチョンセミナー

シンポジウム1

シンポジウム2

症例検討

一般演題(第1会場)一般演題(第2会場)

会 

プログラム

【一般演題】 脳アミロイドーシス[座  長] 亀谷富由樹 (東京都医学総合研究所 認知症・高次脳機能研究分野)

O-2-12 老齢ネコ科動物の脳におけるβアミロイド沈着と高リン酸化タウ蓄積に関する検討

13:50 ~ 14:00 [筆頭演者] 高橋映里佳 (麻布大学獣医学部 獣医病理学研究室)

O-2-13 PiB-PETが確定診断に有効であった,新規PSEN1遺伝子変異を有する家族性アルツハイマー病の一例

14:00 ~ 14:10 [筆頭演者] 中川 道隆 (信州大学医学部脳神経内科、リウマチ・膠原病内科)

O-2-14 副腎皮質ステロイド治療による脳血管アミロイド退縮機序のプロテオミクス手法を用いた解析

14:10 ~ 14:20 [筆頭演者] 亀谷富由樹 (公益財団法人東京都医学総合研究所 認知症・高次脳機能研究分野)

【一般演題】 透析アミロイドーシス他[座  長] 高市 憲明 (虎ノ門病院 腎センター)

O-2-15 透析アミロイド症の発症リスクに関する検討~透析医学会統計調査より~

14:20 ~ 14:30 [筆頭演者] 星野 純一 (虎の門病院 腎センター)

O-2-16 維持透析患者のC末端unfolded β2-microglobulin (β2m92-99)の血中濃度

14:30 ~ 14:40 [筆頭演者] 本宮 善恢 (医療法人 翠悠会)

O-2-17 本邦初の遺伝性腎アミロイドーシスの一家系

14:40 ~ 14:50 [筆頭演者] 矢崎 正英 (信州大学大学院医学系研究科疾患予防医科学系加齢生物学)

O-2-18 膠様滴状角膜変性症による角膜ラクトフェリンアミロイドーシスの一例

14:50 ~ 15:00 [筆頭演者] 植田 光晴 (熊本大学 神経内科)

講 演 要 旨

教育講演

ランチョンセミナー

シンポジウム

10

プログラム

日…

程…

教育講演

ランチョンセミナー

シンポジウム1

シンポジウム2

症例検討

一般演題(第1会場)一般演題(第2会場)

会 

教育講演� 第 1 会場/ 9:10 ~ 9:50

E-1 アミロイドーシス診断におけるピットフォール

座 長:山田  俊幸  自治医科大学臨床検査医学 演 者:安東 由喜雄  熊本大学大学院 生命科学研究部・神経内科

アミロイドーシスの診断は、臨床症状や遺伝子診断、生化学的解析、病理所見などを組み合わせ総合的に行われているが、原因タンパク質が 27 種類も存在し、病型診断が困難なケースが少なくない。近年、ホルマリン固定組織を質量分析装置である LC-MS / MS を用いると、アミロイド原タンパク質を検出できる手法が確立されつつある。本法は、アミロイド沈着組織から直接タンパク質を抽出できるため、免疫染色とは異なり抗体との反応性が問題とならず、正確なアミロイドーシスの診断法となることが期待される。本解析法でアミロイド原因タンパク質を同定できるか検証するために、すでに診断がついている各種アミロイドーシス患者 36 例のホルマリン固定組織を解析した。解析の結果、本解析法と臨床診断の一致率は、97 % であった。またいずれの臓器からでもアミロイド原因タンパク質の検出は可能であった。病型診断に至っていないアミロイドーシス患者 29 例の組織を解析においても、各種アミロイドーシスの様々な臓器から、アミロイド原因タンパク質を同定することが可能であった。原因タンパク質が不明であった角膜アミロイドーシス標本においても 13 種のペプチドが得られ、本患者に認めるアミロイド原因タンパク質がラクトフェリンであることを明らかにした。従来行ってきた免疫組織染色では、アミロイド原因タンパク質と抗体との反応性の不良により、原因タンパク質を同定できなかったが、本解析の結果、AL アミロイドーシスと診断できた 3 例を経験した。アミロイド沈着量が極わずかであった FAP 検体 1例も本解析に含まれており、LC-MS / MS を用いた手法の有用性が示された。

教育講演

11

日…

程…

プログラム

教育講演

ランチョンセミナー

シンポジウム1

シンポジウム2

一般演題(第1会場)

症例検討

一般演題(第2会場)

会 

ランチョンセミナー1� 第 1 会場/ 12:00 ~ 12:45

L-1 脳Aβアミロイドーシスの病態と治療・予防

座 長:樋口 京一  信州大学大学院医学系研究科疾患予防医科学系加齢生物学 演 者:山田 正仁  金沢大学大学院 脳老化・神経病態学(神経内科学)

加齢に伴い脳にはアミロイドβ蛋白(Aβ)を主成分とするアミロイドの沈着がしばしば認められる。Aβアミロイド沈着は脳実質および脳血管に認められる。脳実質への Aβアミロイド沈着(老人斑)は異常リン酸化タウ蛋白の蓄積(神経原線維変化など)と神経細胞死を伴い、認知症を引き起こす(アルツハイマー病:AD)。一方、脳血管への Aβアミロイド沈着(脳アミロイドアンギオパチ―:CAA)は高齢者や AD 患者にみられる脳血管障害(出血性及び虚血性病変、炎症)の原因となる。脳実質、脳血管それぞれへの Aβ沈着の程度は多様であり、それに対応して脳 Aβアミロイドーシスの病態も多様 [認知症 / 脳血管障害 /(軽度の場合)無症状]である。最近、さまざまな検査方法(アミロイド PET、高感度 MRI、脳脊髄液マーカーなど)により AD および CAA の病態を臨床的に把握することによって、精度の高い臨床診断が可能になってきている。AD 治療薬については、現在 4 剤が使用可能であるが、いずれも神経伝達を標的とする症状改善薬であり、疾患の進行そのものを抑えることはできない。そのため、発病過程の最上流部に位置すると考えられるアミロイドβ蛋白の蓄積や、さらにはリン酸化タウ蛋白の蓄積を抑える治療法、すなわち、抗アミロイド療法やタウ標的療法の開発が活発に行われ、多数の臨床試験が進行している。セミナーでは、演者らが行っている Aβ凝集を標的とする脳 Aβアミロイドーシスの治療・予防法の開発研究についても紹介したい。

ランチョンセミナー

12

プログラム

日…

程…

教育講演

ランチョンセミナー

シンポジウム1

シンポジウム2

症例検討

一般演題(第1会場)一般演題(第2会場)

会 

L-2 AAアミロイドーシスの臨床 ― 病態及び診断と治療の進歩 ―

座 長:西  慎一  神戸大学医学部附属病院腎・血液浄化センター 演 者:奥田 恭章  道後温泉病院リウマチセンター

AA アミロイドーシスは、急性期炎症蛋白である SAA を前駆蛋白として、慢性炎症性疾患の経過中に続発し、今日では原疾患として RA をはじめとするリウマチ性疾患がもっとも頻度が高い。SAA は、遺伝子多型に富み、SAA1 は主なアミロイド原生蛋白である。さらに SAA1 には主に SAA1.1、SAA1.3、SAA1.5 の 3 種類のアレルが知られ、本邦では SAA1.3 は発症及び進行に促進的に働き、一方、SAA1.1 は防御的に働く。他の疾患感受性因子は、ageing が risk factor と考えられる。腎症状は、蛋白尿から腎不全に移行し、予後に重大な影響を及ぼす。消化管症状は、難治性下痢や麻痺性イレウスが感染症併発時、手術時、関節外症状出現時などに生じる。生検臓器は、感度・侵襲性の点から、上部消化管、特に沈着量の多い十二指腸生検が推奨される。当院の消化管アミロイドスクリーニングでは、年代の変遷にともない治療法の進歩によると思われる発症頻度の減少と発症までの期間の延長が認められる。治療は、前駆蛋白 SAAの産生をできるだけ抑えることがもっとも合理的である。近年、リウマチ性疾患では、抗サイトカイン療法の有用性に関する多くの報告がなされている。TNF 阻害剤は、強力に SAA を低下させるが、不十分な例も少なからず存在する。一方 IL-6 阻害剤は、その作用機序から薬剤血中濃度を維持できていれば、ほぼ全例 SAA の正常値化が可能であり、本疾患の治療の主役であると考えられる。しかし、多臓器障害を有する例は、抗サイトカイン療法などの強力な免疫抑制療法を行っても、日和見感染の併発等から、SAA の上昇、多臓器障害の進行が危惧される。早期の診断及び管理を常に心がけることが重要である。

ランチョンセミナー2� 第 2 会場/ 12:00 ~ 12:45

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S-1-1 全身性 AL アミロイドーシスの治療 ― 最近の進歩 ―

演 者:島崎 千尋  社会保険京都病院 血液内科

これまで難治性疾患と考えられてきた AL アミロイドーシスであるが、近年多発性骨髄腫に用いられる thalidomide(THAL)、lenalidomide(LEN)、bortezomib(BOR)などの新規薬剤の導入により本症の治療にも新たな光明が見られつつある。また、血清遊離軽鎖(free light chain: FLC)測定法の導入は本症の診断と治療効果の判定に大きく貢献し、効果判定基準に新たに very good partial response(VGPR)が設けられ、VGPR の達成が本症の治療目標となっている。

自家末梢血幹細胞移植は十分なエビデンスがあるわけではないが、現時点で適応と考えられる症例においては移植が行われる。移植の安全性については移植適応にcardiac staging を加味することにより早期の治療関連死亡を 6% 前後に低下させることが可能となった。CR 達成例の生存期間は 10 年を超える状況にある。

一方、移植非適応症例においては MEL/DEX が標準治療として行われてきた。本治療の奏効率、CR 率はそれぞれ 67-68%、32-33%、臨床効果は 39-48% であるが、心アミロイドーシスへの効果は劣る。新規薬剤の中では BOR の奏効率が高く、効果発現も早い。血液学的奏効率は 70% 弱、CR 率は 24-37% である。しかし、有害事象も多い。現在、BOR/MEL/DEX や BOR/CPM/DEX などの 3 剤併用療法の検討も行われている。

新たな新規薬剤(pomalidomide, ixazomib)の検討も進行中であり、本症の予後は明らかに改善しつつある。

免疫グロブリン関連アミロイドーシスUp Date座 長:麻奥 英毅  広島赤十字・原爆病院検査部

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S-1-2 限局性 AL アミロイドーシス(amyloidoma)の診断と治療

演 者:池田 修一  信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科

アミロイドーシスは i)血清中にアミロイド前駆蛋白が存在する、ii)複数の臓器を障害している、の2点を持って全身性か限局性かの区分をする。全身性アミロイドーシスは心臓、腎臓、消化管等の重要臓器を侵すため生命予後を悪くする。一方、限局性アミロイドーシスはアミロイド沈着を来している臓器または組織の局所でアミロイド前駆蛋白が産生されており、アミロイド沈着病変が広汎に進展することがないため、患者の生命予後は良好である。しかし限局性アミロイドーシスにおいても侵された臓器が高度な機能障害を呈することもあり、適切な治療を要する。また限局性のアミロイド沈着はしばしば腫瘤を形成し、この場合は amyloidoma と呼ばれるが、本病変は悪性腫瘍との鑑別が重要である。

Amyloidoma を含めた限局性アミロイドーシスの好発部位は脳、喉頭、肺、消化管、尿路ならびに皮膚である。脳に発生した amyloidoma の報告も散見され、喉頭を含む気道ならびに肺には AL アミロイドの限局性沈着がよくみられる。同様に尿管と膀胱にも AL アミロイドが限局性に沈着して、尿管の狭窄または膀胱出血の原因となる。この尿路系の病変は画像所見のみでは悪性腫瘍との鑑別が非常に難しい。最近注目されている病態としてシェーグレン症候群に皮膚の結節性 AL アミロイドーシス

(amyloidoma)が高率に合併することがあるが、この amyloidoma は乳腺、肺においても多発しており、多源性結節性ALアミロイドーシスと呼ぶにふさわしい状態である。

治療は少量副腎ステロイドが奏効することがある。

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S-1-3 AH アミロイドーシスの診断と治療

演 者:矢崎 正英 1, 2,池田 修一 2,亀谷 富由樹 3 1 信州大学大学院医学系研究科疾患予防医科学系加齢生物学 2 信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科 3 東京都医学総合研究所

AH アミロイドーシスは、免疫グロブリンの重鎖に由来するアミロイドーシスで、1990 年に Eulitz らにより初めて報告された。同じ免疫グロブリン関連アミロイドーシスである原発性 AL アミロイドーシスに比べて、圧倒的に報告数が少ないため、未だ正確な臨床像、診断法や治療法については確立されていない。当科では、2004 年に、本邦で初めて腎アミロイドーシスを主徴とした 70 歳代患者を報告した。その後、国内で 4 名の患者を同定している。今回、自験例患者 5 名の臨床像、診断、治療について報告する。臨床像の特徴としては、全例、腎アミロイドーシスが主徴で、他に明らかな心・肝障害は認めていない。血清 M 蛋白は全例陽性であり、骨髄検査で B cell proliferative disorder を認めている。当科で施行した抗λ、κ抗体を用いた免疫染色は陰性であった。診断は、腎生検組織からアミロイド線維蛋白を抽出し、アミノ酸シークエンス解析で施行したが、全患者でアミロイド蛋白は 15kDa 以下の蛋白で構成されており、重鎖の N 末端フラグメントであった(可変領域)。治療は、慢性リンパ球性白血病を呈した患者では、リツキシマブにて加療したが、70 歳代患者では、特に化学療法は施行せずに経過観察を行っている。その後腎機能は悪化し、血液透析導入となったが、現在まで(発症後 16 年)、明らかな心・肝障害は認めていない。AH アミロイドーシスは非常に希な疾患と考えられているが、AL アミロイドーシスと考えられている症例で、比較的予後の良い患者群に紛れている可能性がある。

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S-2-1 Seeding 反応による伝播現象から見たアミロイドーシスの病態

演 者:樋口 京一  信州大学大学院医学系研究科疾患予防医科学系加齢生物学

アミロイドーシスはタンパク質がアミロイド線維に重合して、組織に沈着し障害を与える疾患群(30 種以上が知られている)である。従来アミロイドーシスはプリオンのような伝播性アミロイドーシスとその他の非伝播性アミロイドーシスに分類されていた。しかし試験管内での線維形成機構の解析から、多くのアミロイドタンパク質で、既存のアミロイド線維が seed となって、線維形成を誘導・促進することが報告されるようになった(seeding 効果)。我々はマウスやチーター等のモデル動物を用いて、AApoAII や AA 等の全身性アミロイドーシスでも、体外から摂取したアミロイド線維の seeding 効果に基づいた「プリオン様伝播;prion-liketransmission」が重要な病態制御機構であることを明らかにして来た。これらの発見からアミロイドーシスは、「誘発性タンパク質症」(inducibleproteopathies)とも呼ばれる。我々が動物モデルで解析してきた「既存のアミロイド線維を介した個体間での伝播」という視点から、アミロイドーシスの病態や治療・予防法について紹介する。

アミロイドーシスの発症機序とその制御座 長:内木 宏延  福井大学医学部病因病態医学

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S-2-2 Aβ凝集機序とその制御薬の開発

演 者:小野 賢二郎 1,山田 正仁 1 1 金沢大学大学院脳老化・神経病態学

アルツハイマー病(AD)では,凝集したアミロイドβ蛋白(Aβ)やリン酸化タウ蛋白の蓄積が病態形成上重要な役割を果たしている。Aβが凝集していく過程では,Aβ が無構造状態からβ- シートへの構造変換を起こし,続いて重合核が形成され,幅約5nm のプロトファイブリル,さらには幅約 10nm の成熟線維が形成される。従来脳アミロイドとして蓄積する成熟線維が神経毒性を発揮すると考えられていたが, 近年,より早期の段階である可溶性オリゴマーの毒性に注目が集まっている。この凝集過程を抑制することは AD の重要な治療ターゲットとなり得る。我々は in vitro と in vivo

両方においてミリセチンやロスマリン酸をはじめとするフェノール化合物が Aβ凝集(線維形成,オリゴマー形成)を抑制することにより,細胞毒性だけでなくシナプス毒性を軽減させることを明らかにした。さらに 15N でラベルした Aβを用いて Nuclear Magnetic Resonance(NMR)で解析し,フェノール化合物が結合する Aβの特定領域を同定した。本発表では Aβ凝集機序とその抑制薬開発の現状について概説する。

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S-2-3 独自に開発した新規核酸医薬を用いた 家族性アミロイドポリニューロパチーの治療法の開発

演 者:横田 隆徳  東京医科歯科大学大学院 脳神経病態学分野(神経内科)

siRNA やアンチセンス核酸や遺伝子発現抑制効果を持つ核酸医薬を用いた遺伝子治療は、それぞれ欧米で臨床治験が進行中で新しい治療法として期待されている。我々は過去に siRNA に脂質を結合して肝への有効な核酸デリバリー技術を開発したが、遺伝子発現抑制効果が不十分であったため実際の臨床応用に際して困難であった。そこで今回、siRNA やアンチセンス核酸とその分子構造、作用機序のことなる新規の核酸医薬を開発したので発表する。標的遺伝子であるヒトトランスサイレチン(hTTR)に対して、Locked Nucleic Acid(LNA)を用いた新規の構造の核酸(ON)を設計し、これにビタミン E(Toc)を導入したもの(Toc-ON)を化学合成した。Toc-ON 静注時の肝へのデリバリーを共焦点顕微鏡や in vivo イメージング法(IVIS)にて確認した。各群 3 匹以上の hTTR(V30M)トランスジェニックマウスに対して Toc-ASO を単回若しくは複数回静注して、肝における hTTR の mRNA 発現量の抑制を定量的 RT-PCR 法で測定し、同時に血清 hTTR 値が低下するかどうか調べた。肝における共焦点顕微鏡や IVIS により、Toc-ON が効率的かつ肝特異的にデリバリーされたことを確認した。また hTTR トランスジェニックマウスに対する Toc-ON の単回投与では、0.75 mg/kg の静脈投与で肝における hTTR mRNA 発現の 96% 以上の抑制及び血清中のhTTR 値減少を用量依存的に認めた。この新規核酸の遺伝子抑制作用は通常のアンチセンス核酸や Toc-siRNA の 100 倍以上であった。さらに週 1 回の反復投与で 1 カ月以上の持続的な血清 hTTR 値の顕著な抑制に成功した。 この新規核酸医薬の家族性アミロイドポリニューロパチーへの臨床応用が期待される。

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シンポジウム2� 第 1 会場/ 16:25 ~ 17:40

症例検討要旨 一般演題要旨

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症例検討� 第 1 会場/ 9:50 ~ 10:30

C-1 診断に難渋したSAA染色陽性のALアミロイドーシスの一剖検例

水野 真一 1,城 謙輔 2,田熊 淑男 1,佐藤 壽伸 1

1 仙台社会保険病院 腎疾患臨床研究センター,2 仙台社会保険病院 病理部

【症例】75 歳男性.63 歳時に当院で腎生検を施行し,慢性間質性腎炎と診断.以後,近医通院中だったが,進行する腎障害,胸腹水,低血圧が認められたため当院へ紹介入院.IgGκ型 M 蛋白陽性,骨髄中形質細胞は 10.2%の増加を認め,AL アミロイドーシスが疑われたが,第 18 病日に心合併症により死亡.剖検にて,各臓器の細小動脈壁のアミロイド染色陽性,抗 AA 抗体陽性の剖検結果から一旦は AA アミロイドーシスの診断となった.使用した抗 AA 抗体は Abcam 社,Dako 社の 2 種類で確認したが,いずれも陽性であった.しかし,臨床診断に合致しないため,さらなる免疫染色を施行したところ,凍結切片の軽鎖染色では抗κ鎖抗体が優位に染色され,パラフィン切片の抗アミロイド軽鎖染色においても抗κ鎖抗体のみが陽性で,AL アミロイドーシスの診断となった.腎臓における染色部位では血管壁にのみ陽性で糸球体には陰性だった.

【考察】当院で施行した染色では,本症例は抗 AA 抗体,抗 Aκ抗体がともに陽性であり,アミロイドーシスの分類診断に難渋した一例を経験した.本症例は解剖例であったが,病理結果が臨床診断に合致しない場合は,治療方針に影響するため,慎重な判断が必要と考えられ,より専門的な検査を今後検討している.

C-2 メルファラン・デキサメタゾン併用療法が効奏し良好な経過を維持している 重鎖型(AH)原発性アミロイドーシスの一例

菊地 晃一 1,早見 典子 1,葉末 亮 1,川田 真宏 1,三瀬 広記 1,濱之上 哲 1,上野 智敏 1,住田 圭一 1,諏訪部 達也 1,星野 純一 1,高市 憲明 1,大橋 健一 2,藤井 隆志 2,矢崎 正英 3,松田 正之 3,池田 修一 3,乳原 善文 1

1 虎の門病院腎センター・リウマチ膠原病科,2 虎の門病院病理部 3 信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科

症例は 79 歳男性.68 歳時に蛋白尿指摘.72 歳時(sCre0.9mg/dL,尿蛋白 2.6g/ 日)に腎生検施行.光顕所見で,糸球体係蹄壁に spike 様病変を伴う膜肥厚像を認め,蛍光抗体法で IgG,IgG1 が陽性だったことから膜性腎症と診断された.しかし,電顕所見では上皮下沈着物はなく,係蹄壁肥厚とメサンギウム領域の拡大,強拡大で細網線維構造が確認され,DFS 染色陽性だった.血中・尿中で IgG・λ型 M 蛋白が検出され,免疫染色でλ鎖の沈着が確認された.骨髄穿刺で多発性骨髄腫は否定的だった.以上より,本症例は原発性アミロイドーシスと診断され,IgG1 単独の陽性像と併せて IgG・λ型重鎖軽鎖型が疑われた.アミロイドの沈着部位は糸球体に限局しているように観察された。76 歳時,尿蛋白増加(9.6g/ 日),浮腫の悪化に伴いメルファラン・デキサメタゾン併用療法を開始.治療開始後は腎機能は改善し,血中・尿中 M 蛋白は陽性が継続しているが,心臓・消化管病変なく良好な経過である.78 歳時に腎病変の再評価目的に腎再生検を施行.糸球体へのアミロイド沈着物増加が確認されたが,糸球体限局性沈着は変わらず IgG と IgG1 の陽性所見は明らかで,腎組織の LCMS/MS 分析にて重鎖の fragment が検出された.本例は発症から約 11 年で腎症の進展は緩徐で治療反応性もよく現時点では予後良好である.重鎖(heavy chain)の関与する AH や AHL アミロイドーシスは,極めて少ない報告例から AL アミロイドーシスに比べ予後良好と推察される.本例は臨床経過,組織所見から,まさに AH 型原発性アミロイドーシスと考えられた.

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O-1-1 サイバニクスによる家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)患者における運動障害改善効果の検討

山下 太郎 1, 2,中西 俊人 1,道鬼 つかさ 1,井上 泰輝 1,三隅 洋平 1,植田 明彦 1,植田 光晴 1,平原 智雄 1,渡邊 聖樹 1,山下 賢 1,前田 寧 1,大林 光念 3,安東 由喜雄 1

1 熊本大学大学院神経内科学分野,2 国立病院機構熊本南病院神経難病センター 3 熊本大学医学部附属病院アミロイドーシス診療体制構築事業

目的:近年、サイバニクスを駆使した装着型ロボットスーツ(HAL、サイバーダイン社)による、運動麻痺患者に対する動作補助が注目されている。しかし、HAL は、中枢神経系から骨格筋に至る動作意図を反映した生体電位信号を検出して動作補助を行うため、末梢神経障害患者において、信号が検出されず作動しないことが危惧される。また、FAP 患者においては、HAL 使用時に起立性低血圧や、心不全が出現する可能性も考えられる。本研究の目的は FAP 患者に対する HAL の有効性、及び安全性について検討することである。対象及び方法:トランスサイレチン型 FAP 患者、男性 4 名、年齢 70.1±4.5 歳、罹病期間 5.5±3.9 年、遺伝子変異 Val30Met 型 3 名、Ser77Tyr 型 1 名を対象とした。HAL 装着前と比較した装着後の効果を、著明改善 +2 点、改善 +1 点、不変 0 点、悪化–1 点、著明悪化–2 点をとして記録し、Wilcoxon 検定にて評価した。結果:HAL 装着による改善度(平均 , 中央値 , 最小値~最大値)は以下の通りであった。立ち上がる 0.75, 1, –1~2 点、腰を下ろす 1.25, 1, 1~2 点、歩行のしやすさ 0.5, 0.5, –1 ~ 2 点、歩行時の安定性 0.25, 0.5, –1~1 点、歩行時の膝折 0.75, 1, 0~1、装置の軽さ 0.5, 1, –1~1 点。腰を下ろす、及び膝折れにおいて有意な改善がみられ、その他の項目においても改善の傾向がみられた。使用時に立ちくらみや息切れはみられなかった。結論:HAL による FAP 患者の運動障害に対する有効性と安全性が示唆された。今後、HAL の継続的使用による、非装着時における運動機能の改善効果も検討されるべきである。さらに、HAL の次世代福祉用具としての一般家庭への普及が待たれる。

一般演題/ATTRアミロイドーシス� 第 1 会場/ 10:45 ~ 11:45

O-1-2 ATTR FAP眼症における蛍光眼底造影検査の検討

今井 章 1,宮原 照良 1,鳥山 佑一 1,山本 裕香 1,京本 敏行 1,村田 敏規 1

1 信州大学医学部 眼科

【背景】家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP TypeⅠ)はトランスサイレチン(TTR)変異が原因の全身性アミロイドーシスである。血中 TTR の主な産生部位である肝臓の移植により神経症状の進行抑制と延命が可能となったが、網膜色素上皮からも独自に TTR が産生されることから肝移植後も眼症状は進行する。眼症としては 硝子体混濁、緑内障などの眼症を合併し、罹病期間とともに頻度と重症度が増していく。また、アミロイドの沈着にともなって血管閉塞がおこり、網膜無潅流領域が形成されることがある。

【目的】FAP typeⅠにおける蛍光眼底造影検査所見の検討【方法】対象は 2012 年~ 2013 年にフルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA)またはインドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(IA)を施行した FAP 患者 13 名 26 眼。FA で網膜無潅流領域の有無を、IA で脈絡膜血管へのアミロイド沈着の評価を行った。

【結果】FAP 症状の発症の平均年齢は 54.9±10.2 歳。11 名が肝移植を施行されていた。IA での脈絡膜過蛍光部位は 18 / 20 眼(90%)で認めた。ドミノ肝移植後で現時点ではアミロイド眼症は認めない症例においても、IA で脈絡膜過蛍光を認め脈絡膜へのアミロイド沈着の所見と思われた。何れの症例も左右眼の程度は同程度であった。FA では網膜無潅流領域を7/26 眼(26.9%)の形成を認め 1 例 2 眼で硝子体出血を認めた。

【結論】IA が眼症状の早期発見に有効な可能性が示唆された。罹病期間の長い症例で網膜無潅流領域の形成を認めた。今後、無潅流領域の発生を念頭においた眼症状管理が必要と思われた。

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O-1-3 家族性アミロイドポリニューロパチーに対するジフルニサルの使用経験

髙橋 良一 1,小野 賢二郎 1,赤木 明生 1,小松 潤史 1,池田 芳久 1,島 啓介 1,能登 大介 1,坂井 健二 1,岩佐 和夫 1,山田 正仁 1

1 金沢大学脳老化・神経病態学(神経内科)

【目的】家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)はトランスサイレチン(TTR)遺伝子変異によりTTR 由来アミロイドが諸臓器に沈着し障害を起こす疾患である。近年、我が国における FAP の疫学調査で、石川県は長野県、熊本県に次ぐ集積地であること、他の集積地の症例と比べて発症年齢が高いことが明らかとなった。ジフルニサルは in vitro で TTR の 4 量体を安定化させアミロイド線維形成を抑制することから、FAPに対する有効性が期待されている。FAP患者にジフルニサルを使用し、治療効果を検討した。

【方法】当院の倫理委員会の承認のもとで、当科の FAP 患者 8 名(男性 6 名、女性 2 名、年齢 64.4 ± 13.9 歳、34-80 歳、Val30Met 7 名、Leu58Arg 1 名)に対して 500 mg/ 日のジフルニサルを経口投与した。臨床症候、神経伝導検査、心エコー、123I-MIBG 心筋シンチにより経過観察した。

【結果】ジフルニサルを使用し、3 年以上追跡しえた 4 名で筋力低下、感覚障害は増悪した。2 名で自律神経症状が改善した。神経伝導検査は 3 名で遠位潜時延長、運動神経速度低下が増悪した。心エコーでは心筋の壁肥厚、駆出率は変化せず、左室拡張能低下の指標である E 波の減速時間は増悪した。123I-MIBG 心筋シンチの H/M ratio は変化しなかった。1 名で血尿がみられたが、その他の患者では副作用を認めなかった。

【結論】ジフルニサル内服後、運動障害、感覚障害は緩徐に増悪したが、自律神経症状の改善例を認めた。進行抑制効果の有無を確認するため、ランダム化プラセボ対照二重盲検試験が必要である。

O-1-4 老人性全身性アミロイドーシスと家族性ポリニューロパチー患者の心機能の比較検討

南澤 匡俊 1,小山 潤 1,小塚 綾子 1,元木 博彦 1,伊澤 淳 1,池田 宇一 1

1 信州大学医学部 循環器内科

目的:老人性全身性アミロイドーシス(senile systemic amyloidosis SSA)の心病変は野生型トランスサイレチンの沈着により発症するのに対して、家族性ポリニューロパチー(familial amyloid polyneuropathy FAP)は変異型トランスサイレチンが心筋に沈着することで発症する。ともにトランスサイレチン関連の全身性アミロイドーシスであるが、心機能の相違について検討した報告は少なく、心臓超音波検査を用いて比較検討した。方法:生検にて SAA と診断された 13 例と、年齢、左室壁厚をマッチさせた FAP13 例を検討した。通常の心エコー指標に加えて、スペックルトラッキング法を用いて検討した。スペックルトラッキング法では、左室短軸像と心尖部3断面で、左室心筋ストレイン(longitudinal strain, radial strain, circumferential strain)と左房ストレイン(longitudinal strain)を計測し、心筋機能を評価した。結果:SAA は FAP に比して左房径や左室径が大きく、左室駆出率は低下していた。血流ドップラー指標には有意差がなかった。左室 global longitudinal strain には有意差がなかったが、左室基部の radial strain, circumferential strain と左房ストレインは SSA が低値であった。結論:SSA は FAP と比較して、左房径・左室径ともに大きく、左室駆出率、左房ストレインにて低値を示した。これらの指標は両者の鑑別を行う上で有用と考えられた。

一般演題/ATTRアミロイドーシス� 第 1 会場/ 10:45 ~ 11:45

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O-1-5 心筋生検でALアミロイドーシスが疑われたが組織の再評価で老人性アミロイドーシスの診断に至った一例

今福 礼 1,長谷川 詠子 1,乳原 善文 1,川田 真宏 1,澤 直樹 1,住田 圭一 1,諏訪部 達也 1,早見 典子 1,星野 純一 1,三瀬 広記 1,高市 憲明 1,藤井 丈士 2,大橋 健一 2

1 虎の門病院 腎センター,2 虎の門病院 病理部

【症例】77 歳男性。高血圧にて前医通院中、原因不明の心不全発症。心臓超音波検査にて EF30%、著明な左室壁肥厚認め心筋生検で AL-κ型アミロイドーシスと診断。この際血清クレアチニン 1.4mg/dl、尿蛋白 4.9g/gCre、沈渣赤血球 6-10 個 / 毎視野より腎アミロイドーシスの合併が疑われ当院紹介受診。胃十二指腸、結腸、腹壁脂肪織生検でアミロイド沈着は証明されず、腎生検でもアミロイド陰性、IgA 腎症の所見であった。また、免疫固定法で血清 M 蛋白と尿中 BJP 陰性、FLC でκ/λ比の異常なく、AL アミロイドーシスとして矛盾した結果であった。高齢で家族歴がなく心臓主体の障害より老人性アミロイドーシスを疑い心筋標本を再評価したところtransthyretin(TTR)+, kappa-, lambda-, AA-、さらに血清TTRのスクリーニングで野生型、TTR 遺伝子の全エクソンの sequencing で変異なく全身性老人性アミロイドーシス(SSA ; Systemic senile amyloidosis)の確定診断に至った。

【考察】SSA と AL アミロイドーシスの鑑別は治療方針や心病変の予後が大きく異なるため重要である。血清 M 蛋白や尿中 BJP の評価、他臓器のアミロイド沈着について生検組織の免疫組織学的な慎重な検討が必要である。

O-1-6 心筋生検組織のアミロイド分析からみた心アミロイドーシスの基礎疾患の検討

関島 良樹 1,中川 道隆 1,東城 加奈 1,池田 修一 1

1 信州大学医学部 脳神経内科,リウマチ・膠原病内科

背景:心アミロイドーシスは全身性アミロイドーシスの予後を左右する重要な病態である.本症は従来,治療が困難な疾患であったが,近年の治療研究の進歩により,病態に基づいた原因治療が可能となりつつある.我々は,当科で生検組織を検討した心アミロイドーシス患者の基礎疾患を検討した. 対象・方法:対象は 2001 年 7 月~ 2013 年 7 月に,心筋生検で心アミロイドーシスが疑われ当科に解析の依頼のあった患者 58 名(平均年齢 67.4 ± 10.9 歳,男性 38 名,女性 20 名).抗 transthyretin(TTR)抗体,抗λ鎖抗体,抗κ鎖抗体,抗 amyloid A (AA)抗体を用いた心筋生検組織の免疫組織染色を行い,アミロイド蛋白を同定した.抗 TTR 抗体陽性であった場合は,TTR 遺伝子の解析を行った.結果:ATTR アミロイドーシスが最多で 36 例(62.1%).TTR 遺伝子解析では解析した 23 例中 11 例で変異を認め,12 例が野生型.AL アミロイドーシスが二番目に多く 20 例(34.5%).AA アミロイドーシスは 2 例(3.4%)と稀.診断時の年齢は,老人性全身性アミロイドーシス(SSA)が 72.6 ± 4.7 歳 , 家族性ATTR アミロイドーシス(FAP/FAC)が 59.5 ± 10.6 歳 , AL アミロイドーシスが 64.7 ± 11.1 歳.結論 : 心アミロイドーシスの基礎疾患として,ATTR アミロイドーシス,特に SSA の頻度が非常に高かった.ジフルニサル,タファミディス,遺伝子治療などの新規の ATTR アミロイドーシスに対する治療は,SSA に対しても有効性が期待されることから,心アミロイドーシスの正確な早期診断が重要である.

一般演題/ATTRアミロイドーシス� 第 1 会場/ 10:45 ~ 11:45

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O-1-7 生体肝移植長期経過(15年)後死亡した家族性アミロイドポリニューロパチー患者の一例―病理組織像とアミロイド蛋白の解析

矢崎 正英 1, 2,加藤 修明 2,池田 修一 2,矢彦沢 裕之 3,渡辺 正秀 4,亀谷 富由樹 5

1 信州大学大学院医学系研究科疾患予防医科学系加齢生物学 2 信州大学医学部 脳神経内科,リウマチ・膠原病内科,3 長野赤十字病院神経内科 4 長野赤十字病院病理部,5 東京都医学総合研究所

【目的】家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)患者の肝移植施行長期経過後のアミロイドの沈着動態については不明な点が多い。今回肝移植 15 年経過後に死亡した FAP 患者の各臓器のアミロイド沈着について検討した。

【患者・方法】患者は死亡時 50 歳女性。28 歳時に下痢・便秘などの自律神経障害にて発症。TTR 遺伝子解析で Val30Met 変異が同定され、FAP と診断した。35 歳時に生体肝移植を施行。37 歳時に自律神経症状による激しい嘔吐発作後、意識消失となり、心肺停止状態で某病院搬送、失外套症候群となった。その後在宅医療に移行し、50 歳時に全身状態不良にて死亡した。剖検時に得られた心筋、坐骨神経、胃組織については、アミロイド線維蛋白を抽出し、野生型 TTR の構成比を検索した。

【結果】剖検所見では、心筋、末梢神経、消化管を中心に、高度なアミロイド沈着を認め、その他の臓器では、主に血管壁にのみアミロイド沈着を認めた。心筋、坐骨神経、胃粘膜沈着アミロイドの野生型 TTR の構成比については、各々 85%、70%、88% で、どの組織も全長型 TTR だけでなく断片化された TTR も検出された。

【結論】どの組織のアミロイドも野生型 TTR が優位となっており、移植後に野生型 TTR 由来のアミロイド沈着が起こった可能性が高い。我々は過去に、FAP 患者の腹壁脂肪組織では、肝移植後長期に経過すると沈着アミロイドが徐々に減少することを報告したが、本患者の結果より、移植後アミロイド沈着の減少(amyloid turn-over)については、臓器ごとだけでなく、患者ごとに異なる可能性が示唆された。

O-1-8 生体肝移植後20年を経た家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)患者の病態

池田 修一 1

1 信州大学医学部 脳神経内科,リウマチ・膠原病内科

肝移植は FAP 患者の根治療法として定着しているが、移植後の長期的病態は不明な点が多い。今回、1993 年 11 月 30 日に本邦で初めて成人間の生体肝移植を受けて術後 20 年の経過観察を行うことができたFAP 患者の病態について報告する。

患者は現在、50 歳の女性。上水内郡小川村の ATTRVal30Met 型の FAP 家系の一員であり、28 歳時に難治性の下痢と下腿の異常感覚で発症。31 歳時に姉をドナーとして生体肝移植を受けた。術後、下腿の異常感覚と消化管運動障害を中心とする神経症状は軽減したが、術後9年目に右眼の硝子体混濁による視力低下が出現、15 年目に硝子体置換術を受けた。現在、左眼にも同様な病変が出現している。また同年11 月一過性の失語、右手の麻痺等が出現、一過性脳虚血発作(TIA)を疑って検索したが、脳画像に異常はみられなかった。同様な発作が2回再発し、脳波所見からタクロリムス脳症を疑い、同薬剤の減量を行ったところ症状は消失した。最近、歩行時のふらつきがあり、全身的精査を行った。体重は 45.1kg と術前より 4kg 増加、神経学的には軽度の体幹失調がみられた。心電図では PR 間隔が 0.21 秒以上で第1度房室ブロックがあり、心エコーでは心室中隔が 0.9cm、EF78.2%、FS46.45% と全ての指標が正常であった。上下肢の運動・感覚神経伝導速度も正常、頭部の造影 MRI ではアミロイド沈着を示唆する脳軟膜の肥厚はみられなかった。生検胃粘膜ではわずかなアミロイド沈着が検出された。

本 FAP 患者では眼を除く心臓、消化管、末梢神経、脳軟膜等への新たなアミロイド沈着を示す所見はなく、全身状態は良好である。

一般演題/肝移植� 第 1 会場/ 13:00 ~ 13:50

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O-1-9 FAP肝のドミノレシピエントにおけるアミロイド沈着と臨床症候の解析

三隅 洋平 1,大嶋 俊範 1,植田 光晴 1,田崎 雅義 1,大林 光念 2,磯野 香織 3,猪股 裕紀洋 3,安東 由喜雄 1

1 熊本大学 神経内科,2 熊本大学 中央検査部,3 熊本大学 移植外科

[目的]トランスサイレチン(TTR)型家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)患者の肝臓は、しばしば末期肝硬変患者や肝臓癌患者にドミノ移植される。これらの患者の一部にアミロイドーシスを生じることが知られているが、これまで多数例での検討は少なく、アミロイドーシス発症の危険因子や詳細な臨床経過は明らかされていない。本研究は、FAP 肝のドミノレシピエントにおけるアミロイドーシス発症の病態を明らかにすることを目的とした。

[方法]当院で FAP 肝のドミノ移植を受けたレシピエント 19 例(男性 13 例、女性 6 例)について、生検によるアミロイド沈着の有無およびアミロイドーシスを示唆する臨床症候の有無を調査し、ドナーおよびレシピエントの性差、年齢、罹病期間、遺伝子変異型などの臨床情報と比較した。

[結果および考察]レシピエントの平均観察期間は約 5 年間であった。ドミノレシピエント 19 例中 7 例(男性 13 例中 4 例、女性 6 例中 3 例)にアミロイド沈着を認め、うち 3 例が下肢末梢優位の温痛覚低下を呈していた。アミロイド沈着および感覚障害が出現するまでの期間は、それぞれ平均7.0年および9.4年であった。ドミノレシピエントの年齢が 50 歳以上の場合、アミロイド沈着を認めるまでの期間が有意に短いことが明らかとなり、レシピエントの組織環境の老化がアミロイド線維形成・沈着に関与することが示唆された。

[結論]ドミノ肝移植レシピエントが 50 歳以上である場合は、アミロイド沈着がより早期に起こる可能性があり、ドミノ肝移植の際、十分なインフォームド・コンセントを行う必要性がある。

O-1-10 ALアミロイドーシスによる急性肝不全に対してsalvage 肝移植を行うことで 化学療法が可能となり寛解に至った1例

清水 誠一 1,井手 健太郎 1,大平 真裕 1,石山 宏平 1,田原 裕之 1,小林 剛 1,黒田 慎太郎 1,田代 裕尊 1,大段 秀樹 1

1 広島大学 消化器・移植外科

AL アミロイドーシスに対して肝移植を施行し、後療法で血液学的寛解に至った症例は非常にまれである。このたび我々は、AL アミロイドーシスによる急性肝不全に対し生体肝移植を施行し、その後化学療法を施行して寛解に至った 1 例を経験したため、文献的考察を加えて報告する。

症例は 60 代女性。疾患既往はなかったが、手術の 1 か月前に黄疸を指摘された。内科的加療を受けるも肝機能は改善せず、肝移植目的に当科紹介入院となった。急性肝不全に対して、右葉グラフトを用いた生体部分肝移植術を施行した。術中に胃出血を認め、切迫破裂の状態になったため、胃部分切除を施行し止血した。術後の病理組織学的検査にて肝臓及び胃にアミロイドの沈着を認め、免疫組織学的検査にてAL アミロイドーシス k 型と診断された。骨髄生検にて 6% の腫瘍性質細胞を認め、症候性骨髄腫からのAL アミロイドーシスと診断し、bortezomib+dexamethasone による化学療法を開始した。1 コース施行後に M 蛋白の消失を確認し、寛解状態に至ったと判断した。術後経過は良好であり、術後 83 日目に軽快退院となった。現在術後 10 か月経過しているが、再燃の所見は認めていない。

AL アミロイドーシスは進行性の全身性疾患であり、肝移植の適応については議論があるが、本症例のように肝不全を改善させれば全身化学療法で予後が期待できる症例においては、肝移植は全身化学療法への bridging therapy として肝不全治療の選択肢となりうると考える。

一般演題/肝移植� 第 1 会場/ 13:00 ~ 13:50

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O-1-11 肝障害を主徴とした全身性ALアミロイドーシス(いわゆる原発性肝アミロイドーシス)に対して待機的化学療法施行を目的に生体部分肝移植を先行させた一例

上野 晃弘 1,吉長 恒明 1,加藤 修明 1,松田 正之 1,池田 修一 1,幕内 雅敏 2

1 信州大学医学部 脳神経内科,リウマチ・膠原病内科,2 日本赤十字社医療センター

原発性全身性 AL アミロイドーシス(AL)に対する標準治療は異常形質細胞を標的とした強力な化学療法であるが、診断時の臓器障害により施行できないことがある。その中には AL の一病型で、肝障害が突出する反面その他の臓器障害は目立たないいわゆる原発性肝アミロイドーシスの症例も含まれる。このような患者では肝障害が妨げとなって化学療法が施行できず、結果として短期間で肝不全により死亡する。そのため機能不全に陥った肝臓を移植により正常化したのち、待機的に化学療法を施行する治療戦略が考えられるが、成功例は世界的にも少ない。今回我々は肝不全のために化学療法の導入が困難であった AL の患者に対し生体部分肝移植を施行した経験を報告する。症例は当科受診時 58 歳の男性。55 歳時に健診にて肝機能異常を指摘された。57 歳時に前医にて肝腫大と消化管粘膜へのアミロイド沈着を認めれられ AL と診断されたが経過観察された。58 歳時に精査加療のため当科紹介受診。免疫固定法で M 蛋白は陰性であったが、血清中κ型遊離軽鎖(FLC)の異常高値(694 mg/L)を認めた。T-bil(1.93 mg/dL)と ALP(1996 IU/L)の上昇、腹水、および高度な肝腫大を認めたが心機能、腎機能は保たれていた。肝不全により患者の余命は数ヶ月と判断して、肝機能を正常化した後に化学療法を施行する目的で息子をドナーとした生体部分肝移植を検討した。息子の肝左葉をグラフトとした生体部分肝移植が施行され、3100g の罹病肝が摘出された。生体肝移植後の経過は良好で、今後は全身状態の回復を待ってから FLCκの抑制を目指した化学療法を施行する予定である。

一般演題/肝移植� 第 1 会場/ 13:00 ~ 13:50

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O-1-12 経時的肝生検によって自己末梢血幹細胞移植併用大量化学療法後に 肝アミロイド沈着の退縮が証明されたALアミロイドーシスの一例

加藤 修明 1,松嶋 聡 1,松田 正之 1,池田 修一 1

1 信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科

AL アミロイドーシスにおいて化学療法が奏功した場合、血中の心 , 腎 , 肝機能マーカーは改善することが知られているが、一度沈着したアミロイドの組織学的な退縮を証明した報告は少ない。以前我々は消化管粘膜に沈着した AL アミロイドが治療後に退縮し得ることを報告したが、他には腹壁脂肪生検でアミロイド退縮を示した報告があるのみで、腎生検では証明できなかった。肝臓に関してはシンチグラフィーを用いて間接的にアミロイド退縮が示唆された報告があるものの、組織学的に証明された報告はない。今回我々は経時的な肝生検によって自己末梢血幹細胞移植併用大量化学療法(HDM/SCT)後に肝 AL アミロイド沈着の退縮を証明し得た一例を経験したので報告する。症例は当科受診時 54 歳の女性。52 歳時に高ALP 血症(571 IU/L)で発症。54 歳時に前医にて肝生検施行され肝アミロイド沈着が指摘された。その際の ALP 値は 738 IU/L。当科紹介受診され、精査の結果肝病変主体の原発性全身性 AL アミロイドーシスと診断した。HDM/SCT 施行したところ完全寛解(CR)を得て ALP 値は 500 台へ改善したが、移植1年後の評価時には CR 状態にもかかわらず ALP 800 台への増悪を認めた。肝アミロイドーシスの再発、増悪も疑われ肝生検を施行したところ、むしろアミロイド沈着は大きく減少しており再発は否定され、結果的に化学療法による肝 AL アミロイド沈着の退縮を初めて組織学的に証明し得た。なおその後の精査の結果 ALP 高値は原因不明の骨型高 ALP 血症と判明し、現在経過観察中である。

O-1-13 初発ALアミロイドーシスに対するmelphalan-dexamethasone(MDex)療法後の二次治療に関する検討

淵田 真一 1,岡野 晃 1,初瀬 真弓 1,村頭 智 1,島崎 千尋 1

1 社会保険京都病院 血液内科

[背景]AL アミロイドーシス(AL)は形質細胞異常症のひとつであり、多発性骨髄腫(MM)の治療が行われている。melphalan-dexamethasone(MDex)療法は、67% の血液学的奏効を認め、臓器効果は 48%、重篤な有害事象は 11% で、移植非適応患者の標準治療と考えられている。近年、MM に対する化学療法の進歩に伴い、AL の治療においても bortezomib(BOR)等の新規治療薬の有用性が報告されつつある。

[目的]初発 AL に対する MDex 療法後の二次治療の有効性を後方視的に検討する。[方法]2009 年から 2013 年に初期治療として MDex 療法を受けた AL 患者 21 例のうち、二次治療を受けた 12 例についてその有効性を検討した。

[結果]年齢中央値 70 歳(63-77 歳)、病変臓器数 4: 4 例、3: 10 例、2: 6 例、1: 1 例、病変臓器は心 15 例、腎 13 例、消化管 18 例、肝 3 例、神経 10 例。MDex 療法は中央値 3 コース(1 ~ 9 コース)実施され、評価可能 19 例の最良効果は VGPR 3 例、PR 3 例、Stable 10 例、PD 3 例、全奏効率(ORR)は 32% であった。二次治療として BOR-Dex(BD)療法 7 例、lenalidomide(LEN)-Dex(LD)療法 4 例、自家移植 1 例が行われ、BD 療法は CR 1 例、VGPR 1 例、PR 1 例で ORR 50%、LD 療法は CR 1 例、PR 1 例で ORR 50% であった。

[結論]初期治療としての MDex 療法は既報の結果より奏効率は低かった。二次治療として BOR、LENの新規骨髄腫治療薬は有用であった。

一般演題/ALアミロイドーシス� 第 1 会場/ 13:50 ~ 14:50

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O-1-14 高齢者AL amyloidosis患者に対してBortezomibを使用した経験

片山 雄太 1,麻奥 英毅 2,板垣 充弘 1,大地 哲朗 1,岡谷 健史 1,今中 亮太 1,許 鴻平 1,岩戸 康治 3,岡田 武規 4,許 泰一 1

1 広島赤十字・原爆病院 血液内科部,2 広島赤十字・原爆病院 検査部,3 広島赤十字・原爆病院 輸血部4 広島赤十字・原爆病院 循環器内科部

[目的]AL アミロイドーシス患者のうち、当科での自家末梢血幹細胞移植術(auto-PBSCT)適応外となる70 歳以上の患者を対象とし、高齢者に対する Bortezomib+Dexamethasone(BD)療法の有効性を検討する。

[方法]2009 年 3 月より 2011 年 12 月までに当院にて Bortezomib を使用した 70 歳以上の症例を対象とし、観察期間を 2013 年 6 月までとした。Bortezomib 投与量は 1.0mg/m2/day,(day1,day8, day15, day22)とし 35 日を 1 コースとした。Bortezomib 投与日には Dexamethasone20mg/day を投与し、6 コース施行を目標とした。VGPR 以上とならなかった場合、Bortezomib の投与量を 1.0mg or 1.3mg/m2/day(day1, day15)とし 1 ヵ月を 1 コースとした維持療法を行った。

[結果及び考察]対象患者は 3 症例で、前治療としては MD 療法 1 症例、auto-PBSCT1 症例であった。治療効果は CR 1 症例、PR 2 症例であった。CR 症例は、治療中止後 1 年 6 カ月で病状再燃し再度 BD 療法を行っている。PR 2 症例は病状及び認知機能障害の進行のため、治療開始後 2 年及び 2 年 6 か月後に治療中断した。3 症例とも病状悪化までは QOL 低下なく外来通院が可能で、2013 年 6 月時点で生存しており、発症からの生存期間は 4 年 7 か月、4 年、2 年 7 か月である。

[結論]高齢者 AL アミロイドーシス患者でも、BD 療法及び維持療法の施行により、QOL を維持し、2年以上の生存を確保することが可能であった。

O-1-15 ALアミロイドーシスに対するボルテゾミブ皮下投与によるVCD療法の有用性

竹田 勇輔 1,赤尾 健一 1,大旗 彩子 1,栢森 健介 1,長谷川 渚 1,川尻 千華 1,東ヶ崎 絵美 1,清水 亮 1,杉田 泰雅 1,山崎 敦子 1,武藤 朋也 1,川口 岳晴 1,塚本 祥吉 1,酒井 紫緒 1, 2,武内 正博 1,大和田 千桂子 1,堺田 恵美子 1,清水 直美 1, 2,井関 徹 1, 2,中世古 知和 1

1 千葉大学医学部附属病院 血液内科,2 千葉大学医学部附属病院 輸血・細胞療法部

背景:AL アミロイドーシスは、M 蛋白の軽鎖に由来するアミロイド蛋白が全身諸臓器に沈着し、種々の臓器障害をきたす疾患である。診断時すでに臓器障害をきたしていることが多く、治療に難渋することが多い。近年、多発性骨髄腫の新規治療薬の有用性が報告されつつある。今回我々は、多臓器障害を有する AL アミロイドーシスの 3 症例に対し、ボルテゾミブ皮下投与を用いた VCD 療法(Bor ; 1.3 mg/m2 s.c., day 1, 8, 15, 22, CY; 300 mg/m2 p.o. day 1, 8, 15, 22, Dex; 20 mg p.o., day 1, 2, 8, 9, 15, 16, 22, 23, every 5 weeks)を行ったので、報告する。症例1:69 歳男性。ネフローゼ、肝障害、リンパ節腫大で入院。胃粘膜生検で AL アミロイドーシスと診断。VCD 療法 6 コースを実施し、血液学的奏功とネフローゼ、肝障害、リンパ節腫大の改善を認めた。症例2:55 歳男性。起立性低血圧、下痢、神経障害、尿蛋白で入院。胃粘膜生検で AL アミロイドーシスと診断。VCD 療法 6 コースを実施し、血液学的奏功を得られたものの、臓器奏功は得られなかった。症例3:66 歳女性。心不全で入院。心筋生検で AL アミロイドーシスと診断。VCD 療法 2 コースを実施。CY による SIADH をきたしたが、その他の副作用を認めず、FLC の改善を認めた。いずれの症例でも、末梢神経障害の増悪や心不全の悪化は認めなかった。結論:ボルテゾミブ皮下投与による VCD 療法は、1 例で CY による SIADH をきたしたものの、良好な治療効果と忍容性を有しており、AL アミロイドーシスの治療として有用であると考えられた。

一般演題/ALアミロイドーシス� 第 1 会場/ 13:50 ~ 14:50

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O-1-16 頭部限局型ALアミロイドーシスの2例

鈴木 啓介 1,今井 裕一 1,野畑 宏信 1,小野 澄比佐 1,菅 憲広 3,木村 行宏 4,大林 光念 2

1 愛知医科大学病院 腎臓・リウマチ膠原病内科,2 熊本大学医学部附属病院中央検査部 3 西部医療センター,4 岐阜市民病院

「症例1」 50 歳 女性以前より副鼻腔炎・霰粒腫を指摘。右上眼瞼の腫脹・左眼球の突出も出現し画像検査にて副鼻腔・眼窩

内腫瘍を疑われ生検施行。AL アミロイドーシス(IgGκ型)診断。眼窩部にアミロイドが限局している状態であるが、PIC,TAT 軽度上昇あり全身性のアミロイドーシスの可能性も否定しきれていない。経過観察としていたが眼奥痛が出現したため M-Dex 療法施行し継続治療中。

「症例 2」 72 歳 男性 「現病歴」  2007 年より右眼球結膜に腫瘤を自覚し切除術施行。その後左下第 8 歯後方の歯肉の腫瘤切除術施行。

DFS 染色陽性であり、AL アミロイドーシス(λ型)と診断。CT/アミロイドPETを施行し頭部限局型アミロイドーシスと確定診断。しかし顔面病変の進行があり、

BMD 療法 3 コース施行。その後、以前の組織を免疫染色し再検討したところ CD20+ 細胞であり CD20+ malignant lymphoma として R-Dex3 クール追加施行。FLC は大幅な改善を認めており、血液学的には著効と考えるが、本人の身体所見(特に頭部腫瘤性病変)の改善に乏しい。

「考察」頭部限局型アミロイドーシスの 2 例を経験した。化学療法によって血清学的には有効であるが腫瘤病変

の縮小・改善には至っていない。治療効果判定・治療継続基準の設定が今後確立されることが望ましい。

O-1-17 消化管限局性ALアミロイドーシスの臨床像

加藤 修明 1,矢崎 正英 1,松田 正之 1,池田 修一 1

1 信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科

[目的]消化管限局性 AL アミロイドーシスの臨床病態を明らかにする。[方法]2001 年 4 月から 2012 年 12 月までに当科を受診した AL アミロイドーシス患者全 202 名のうち、消化管限局性 AL アミロイドーシスと診断された 13 名の診療録を後方視的に検討した。

[結果および考察]13 名の平均年齢は 50.5 歳、男女比は= 3:10 で女性に多い。型はκ:λ= 4:9 と、全身性 AL 同様λ型が多い。病気は検診(内視鏡、便潜血検査等)で無症状で見つかった例が最多(8 名 , 62%)で、次いで消化管出血(3 名 , 23%)、胃痛あるいは嘔気(1 名ずつ , 各 8%)であった。アミロイドの沈着分布は、上部のみが 6 名(46%)、下部のみが 5 名(38%)、両者が 2 名(15%)であった。内視鏡所見は、胃では初期には特異的所見に乏しいが、数年かけて進行して粘膜の粗造や浮腫、易出血性等の比較的特徴的な所見を呈すようになり、そこで進行が停止した。下部消化管においては発赤や易出血性びらん、潰瘍などを呈し、特異的所見に乏しかった。10 例(平均観察期間 5.8 年)で 長期経過が観察できているが、全例で自覚症状の増悪はなく、全身性アミロイドーシスへの移行も見られていない。

[結論]消化管限局性 AL アミロイドーシス患者の半数以上は検診等にて無症状で発見される。上部(病初期)および下部消化管内視鏡所見とも病変は非特異的であって、病理組織学的検索が重要である。消化管病変完成後の進行は明らかでない。全身性アミロイドーシスへの移行はなく生命予後は良好である。

一般演題/ALアミロイドーシス� 第 1 会場/ 13:50 ~ 14:50

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O-2-1 AAアミロイド沈着の検出におけるイムノブロットの有用性

山田 俊幸 1,生田目 久美子 1,奥田 恭章 2

1 自治医科大学臨床検査医学,2 道後温泉病院リウマチセンター

【背景・目的】AA アミロイドーシスでは前駆物質である SAA のN末端部分が沈着する。最も普遍的にみられるのは SAA の 76-77 残基間の切断により生じた AA76 であるため、組織中での AA76 の検出は AAアミロイド沈着な間接的な証明となりうる。今回は未固定の生検組織においてイムノブロット(IB)でAA76 を検索し、従来法と比較した。

【方法】関節リウマチ患者で、アミロイドーシスのスクリーニングのため胃十二指腸生検を受け、結果的に陰性(CR)であった 14 症例 14 試料(陰性群)と過去に診断されていて経過観察のために生検された 47 症例 115 試料(経過観察群)を対象とした。生検は十二指腸第 2 部、同球部、胃前庭部で行い、各部位あたり隣接した 2 か所から粘膜小片を採取した。小片のうち、一方は固定して切片を作製し、congo red 染色(CR)と抗 SAA 抗体による免疫染色(IHC)を行った。他方は 6M 尿素中でホモジナイズし、IB に供した。簡単には、低分子用の SDS-PAGE 後、PVDF 膜に転写し抗 SAA 抗体を反応させ、酵素化学発光系で検出した。AA76 の確認はリコンビナント AA76 との易動度の一致によった。

【結果】陰性群においては全例が IHC、IB とも陰性であった。経過観察群では、CR 陰性であった 38 例においては、IHC では 6 例が陽性、32 例が陰性であった。IHC 陰性の 32 例においては IB で 23 例が陽性、9 例が陰性であった。CR 陽性で IHC 陰性はなく、IHC 陽性で IB 陰性はなかった。

【結論】IB は検出感度が優れており補助診断として応用可能である。

O-2-2 ヒト末梢血単核球培養を用いたAAアミロイド形成機序の解析

石井 亘 1,池田 修一 1,山田 俊幸 2,Liepnieks Juris 3,Kluve-Beckerman Barbara 3,Benson Merrill D. 31 信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科,2 自治医科大学 臨床検査医学 3 Department of Pathology and Laboratory Medicine, Indiana University School of Medicine

目的:AA アミロイドーシスは、関節リウマチなどの慢性炎症性疾患に合併し、生命予後を悪化させる難治性の病態である。今まで Human SAA から AA アミロイドを作成できるモデルがなかったため、Human SAA を用いた AA アミロイド形成機序の検討はできなかった。我々は、Human SAA から AAアミロイドを作成できるモデルの開発を行った。方法:1、リコンビナント Human SAA を加えた培地でヒト末梢血単核球を培養する。2、コンゴーレッド染色を用いて、AA アミロイドの有無について確認する。3、ウエスタンブロッティングおよび N 末端アミノ酸配列解析を用いて、AA アミロイドの解析を行う。結果:脂質を含んだ無血清培地を用いることにより、Human SAA から AA アミロイドを作成できるモデルの開発に成功した。この培養モデルでは、Human SAA1.3 で 1.1、1.5 と比べ、より多くの AA アミロイドが沈着しており、Human SAA1.3は分解されてAAアミロイドになり易い性質があると考えられた。この培養モデルで作られる AA アミロイドは、臓器に沈着している AA アミロイドと同様、SAA の N末端側断片であり、11、9、7、6 kDa の SAA 断片および 12 kDa の SAA より構成されていた。Human SAA1.3 で培養した細胞には、1.1、1.5 と比べ、7 および 6kDa の SAA 断片が多く含まれていた。結論:この培養モデルを用いることにより、Human SAA から AA アミロイドが作られる機序および血中 SAA 濃度を下げる以外の方法での AA アミロイドーシスの治療を検討することができると考えられる。

一般演題/AAアミロイドーシス� 第 2 会場/ 10:45 ~ 11:45

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O-2-3 血清アミロイドA蛋白(SAA)によるインフラマソームの活性化

右田 清志 1,和泉 泰衛 1,中村 正 2

1 独立行政法人国立病院機構長崎医療センター リウマチ科 2 くまもと森都総合病院 リウマチ膠原病内科

【目的】血清アミロイド A 蛋白(SAA)のインフラマソーム活性化に対する影響について検討した。【方法】比重遠沈法で分離した健常人末梢血好中球をヒト recombinant SAA で刺激し、その活性化能を検討した。pro-IL-1βの mRNA 発現は real-time PCR 法で、活性型 IL-1βの検出はイムノブロットを用い検討した。シグナル伝達に関しては、リン酸化抗体を用いたイムノブロットで検討した。

【結果】ヒト好中球を SAA で刺激すると pro-IL-1βの mRNA 発現が誘導され、活性型 IL-1β(p17)の産生が誘導された。SAA の刺激により、好中球に活性型 caspase-1 が誘導され、caspase の阻害薬である Z-VAD-fmk により、SAA による活性型 IL-1βの産生が阻害されることより、SAA による活性型 IL-1β誘導は NLRP3 インフラマソームを介していることが示唆された。SAA による活性型 IL-1βの誘導は、Spleen tyrosine kinase(Syk)阻害剤 R406 により、阻止されることより SAA によるシグナル伝達を検討した。好中球を SAA で刺激することで Syk のリン酸化が誘導された。さらに SAA 刺激により MAPKキナーゼである JNK のリン酸化が誘導され、R406 により阻害することが判った。

【考察】SAA の刺激により、種々のシグナル分子が活性化されることが知られているが、今回の検討の結果、SAA により Syk およびその下流に位置すると考えられる JNK の活性化を誘導され、これらシグナルをブロックすることで、IL-1βの活性化を制御することが可能と考えられた。

【結語】SAA はインフラマソームを介して活性型 IL-1βを誘導し、炎症を惹起する作用があることが示唆された。

O-2-4 血清アミロイドAの線維形成に生体分子が与える影響

高瀬 ひろか 1,田中 将史 1,山田 俊幸 2,向 高弘 1

1 神戸薬科大学・薬品物理化学研究室,2 自治医科大学・臨床検査医学講座

AA アミロイドーシスの原因となるヒト血清アミロイド A(SAA、104 残基)は、血液中でそのほとんどが高密度リポ蛋白質(HDL)に結合して存在する。病変部に沈着したアミロイド線維からは SAA の1-76 残基からなる蛋白質断片とグリコサミノグリカン(GAG)の一つであるヘパラン硫酸が共に検出されている。本研究では生体分子である脂質や GAG が SAA の線維形成に与える影響について検討した。

SAA の二次構造を円二色性(CD)測定で評価した結果、37℃では明確な高次構造を形成していなかった。酸性条件下で GAG の一つであるヘパリンを添加したところ、アミロイド線維に特異的に結合する蛍光色素であるチオフラビン T(ThT)の蛍光強度が上昇し、CD 測定よりβ-sheet 構造の形成が認められた。その形態を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、線維状ではなく粒子状であった。そこで、ヘパリン濃度を変化させず SAA 濃度のみを上昇させたところ、線維状の構造体が観察された。したがって、ヘパリンは線維の伸長を促すのではなく、SAA 分子の凝集の起点となることで線維形成に関与するものと考えられる。一方、SAA と脂質の相互作用により作製した人工 HDL 様粒子中の SAA は 37℃で α-helix 構造を形成していた。一般的にα-helix 構造を安定して形成した場合、β-sheet 構造への構造変化の誘起は困難であるため、生体内で線維形成するには HDL からの解離が必要であると考える。本研究の結果より、GAG は SAA の凝集の起点となることにより線維形成を促し、一方、脂質は SAA の高次構造を安定化させることにより構造変化を伴う線維形成を抑制することが示唆された。

一般演題/AAアミロイドーシス� 第 2 会場/ 10:45 ~ 11:45

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O-2-5 関節リウマチに反応性アミロイドーシスを合併した1剖検例における腎組織への アミロイド沈着の検討

黒田 毅 1,2,佐藤 弘恵 2,中枝 武司 2,和田 庸子 2,村上 修一 2,中野 正明 3,成田 一衛 2

1 新潟大学保健管理センター,2 新潟大学大学院医歯学総合研究科腎膠原病内科学分野 3 新潟大学医学部保健学科

【目的】アミロイドーシスの腎障害は糸球体障害に重点がおかれ詳細な検討がされてきたが、腎障害のマーカーとの相関は乏しかった。我々は腎組織におけるアミロイドの総量に着目し、腎生検組織内の生検腎に占めるアミロイドの領域と腎障害のマーカーの相関を AA 及び AL アミロイドーシスにおいて報告した。しかし、腎生検で得られた組織がすべての腎臓の部位で均一か否かに関しては明らかではない。これを明らかにするため剖検例において腎臓の部位別にアミロイドの分布を検討した。

【対象と方法】関節リウマチで腎生検により腎アミロイドーシスと診断され、膵炎で死亡した 1 症例の剖検腎を対象とした。腎組織を左右それぞれ上部、中部、下部の 6 箇所を 20mm 角で切り出し、さらに 1箇所を 4 分割し計 24 のアミロイドの局在を検討した。さらに、腎生検では 16 ゲージの生検針が汎用されるが、幅 1.3mm、長さ 10mm の長方形の枠を作り皮質からこの枠を髄質に向けて配置し沈着したアミロイドの割合を部位ごとに検討した。統計は ANOVA を用い P<0.05 を有意とした。

【結果】腎組織全体では 9.2% にアミロイドの沈着を認めた。腎組織の左右および上部、中部、下部の比較では部位による差は認められなかった。長方形の枠による検討では全体で 7.9% のアミロイドの沈着を認めた。腎の高さによる差は認められなかったが、左腎の沈着が有意に上昇していた(P=0.03)。本症例の造影 CT では軽度の形態変化があり、これが影響した可能性が考えられた。 【結論】腎組織のアミロイドの沈着は部位による違いはほとんど無く均一である。 【利益相反】無し。

O-2-6 関節リウマチ合併AAアミロイドーシスの治療戦略

中村 正 1,右田 清志 2

1 くまもと森都総合病院 リウマチ膠原病内科,2 長崎医療センター 臨床研究センター

【目的】関節リウマチ(RA)に合併する AA アミロイドーシスは難治性病態で、治療アプローチの中で重要な点は、病態に伴う炎症性サイトカインを制御し、前駆体の血清アミロイド A 蛋白(SAA)の産生を抑え、組織に沈着したアミロイド線維の代謝を促すことである。免疫抑制療法や抗サイトカイン療法の有用性を検討し、治療戦略に考察を加えた。

【方法】エンドキサン療法(CYC: n=62)と TNF 阻害療法(ETN: n=22)を受けた RA 合併 AA アミロイドーシス患者を後方視的に解析し、治療戦略について文献的検索を行なった。

【結果】(1)SAA1.3 アレル頻度とアミロイドーシス病悩期間は 2 治療群で有意差があった(それぞれ、P=0.015、P<0.001)。(2)CYC で治療開始時の腎機能低下が強かった(P=0.02)。(3)ETN は有意にCRP を低下し(P<0.01)、血清 Alb と eGFR を増加し(それぞれ、P<0.01、P=0.032)、生存率を改善した

(P=0.025)。(4)死亡を最終評価項目にすると、eGFR と 1 日蛋白尿が有意なハザード比を示した(それぞれ、P=0.024、P=0.025)。(5)SAA1.3 アレルの有無は治療効果に影響を与えなかった。

【考察】RA 合併 AA アミロイドーシスの治療では、TNF 阻害療法が CYC 療法に比べ、生命予後を有意に改善させた。IL-6 阻害が TNF 阻害よりも SAA、CRP、eGFR を改善すると報告され、IL-6 阻害薬は第一選択薬と思われるが、各サイトカイン療法の長所を活かしながら選択することが望ましい。JAK 分子標的療法は SAA の誘導を in vitro では抑制するが、全ての症例で SAA 正常化は得られず今後の検証が必要である。稀少疾患の故に大規模臨床研究には不向きと予想される。

一般演題/AAアミロイドーシス� 第 2 会場/ 10:45 ~ 11:45

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O-2-7 アミロイド線維のリフォールディングを促進させる赤外自由電子レーザーの開発

川崎 平康 1,伊藤 寛晃 2,藤岡 隼 3,築山 光一 1,3

1 東京理科大学総合研究機構赤外自由電子レーザー研究センター 2 昭和大学医学部・横浜市北部病院消化器センター,3 東京理科大学大学院総合化学研究科

アミロイド沈着が認められる臓器には、心臓、舌、骨格筋、腸管、小血管、腱、末梢神経、肺、肝、腎、脾、リンパ節、皮膚、皮下組織、骨髄などがあり、臨床的には多発性骨髄腫に伴うアミロイドーシスも重要であり、いくつかの治療法が試みられているが、確実に有効な治療法は未だ確立されていない。アミロイド沈着の正体は、様々な配列を有するタンパク質やペプチドの線維体であり、水素結合や疎水結合のネットワークの形成の結果、アミロイド線維特有のβ-sheet 構造を構築している。このβ-sheet 構造を解離させ、もとのネイティブな構造へとリフォールディングさせる方法は、必ずしもアミロイドーシスの治癒へ結びつくとは言えないが、アミロイド線維の減少による組織機能の変化を明らかにする上においても有用である。赤外自由電子レーザー(IR FEL)は、中赤外領域において波長可変かつ直線偏光性を有するパルス性の発振レーザーである。分子に対する IR FEL の照射により、多段階的に光子が吸収され、結合の分解や異性化反応等が引き起こされる現象が生じる。そこで、リゾチーム、インスリン、及びカルシトニン短鎖フラグメントをモデルとして、3種類のアミロイド線維を in vitro で形成させた後、グラススライド上において IR FEL を照射した。TEM(SEM)及び Congo-Red アッセイ等による解析の結果、アミド I(1600-1700 cm-1)に調整した IR FEL を用いた場合にのみ、それぞれネイティブ構造へのリフォールディングが促進され、各アミロイド線維の減少が観測された。今後、アミロイド沈着組織へ IR FEL を照射する予定である。

O-2-8 アミロイド線維形成の促進・検出装置HANABIの研究開発

後藤 祐児 1,八木 寿梓 1,吉村 優一 1,宗 正智 1

1 大阪大学 蛋白質研究所

アミロイド線維の物性研究は、蛋白質科学との連携によって大きく展開している。我々は、β2ミクログロブリンやアミロイドβペプチド、αシヌクレインなどを用いて、アミロイド線維の構造物性と形成機構を研究してきた。自発的なアミロイド線維の形成反応は、撹拌や振とうなどのアジテーションによって促進される。我々は超音波照射がアミロイド線維形成を促進することを見出した。さらに 96 マイクロプレートを用いて超音波照射実験を行い、蛍光プレートリーダーによってチオフラビンT蛍光を測定したところ、アミロイド線維形成を効率よく検出することができた。超音波照射実験をより効率よく行うために、超音波照射装置とプレートリーダーを合体させたアミロイド線維の自動誘導・検出装置 HANABI(HANdai Amyloid Burst Inducer)を、エレコン科学、コロナ電気と共同研究開発した。本装置では、一定の遅延時間後、チオフラビンTの蛍光強度が急上昇する。例えばβ2ミクログロブリンを用いたモデル実験では、約1時間に同期させて、自発的なアミロイド線維形成反応を検出することができた。HANABI によってアミロイド線維の原理的研究が加速すると共に、同装置がアミロイドーシスの臨床研究や先制医療にも貢献することが期待できる。

文献:Yoshimura, et al.(2012)Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 109, 14446;後藤祐児(2013)領域融合レビュー , 2, e002.

一般演題/実験的アミロイドーシス� 第 2 会場/ 13:00 ~ 13:50

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O-2-9 マウス老化アミロイド線維(AApoAII)の構造と伝播性の解析

劉 穎業 1,田 耕 1,羅 宏敏 1,李 林 1,宮原 大貴 1,澤下 仁子 1,森 政之 1,樋口 京一 1

1 信州大学大学院医学系研究科疾患予防医科学系加齢生物学

【目的】マウス老化アミロイドーシスでは ApoA-Ⅱが加齢に伴って、アミロイド線維(AApoAII)を形成し全身の臓器に沈着する。AApoAII アミロイドーシスではアミロイド線維の投与により、発症が誘発される「伝播」が重要である。しかし AApoAII の構造と伝播力との関係は十分には解析されてこなかった。本研究では、AApoAII のタンパク質科学的特性が伝播力に及ぼす効果を解析したので報告する。

【方法】AApoAII を投与し重度なアミロイド沈着が認められた SAMR1C マウス肝臓より、アミロイド線維を分離し、非変性ポリアクリルアミド電気泳動と western blot によって、モノマー~オリゴマー~凝集体の 5 分画を切り出した。各分画の ApoA-II 量 , チオフラビン T(ThT)結合量を測定し、ApoA-II 10μg 相当量を SAMR1C マウスに投与し伝播力を解析した。また AApoAII による誘発 4 ヶ月及び 13 ヶ月後の SAMR1C マウス肝臓の可溶性、3kG 沈殿、100kG 沈殿分画へのアミロイド線維の分布とその伝播性を調べた。

【結果・考察】1)AApoAII 線維に比較して、モノマー~デカマーの分画には伝播力はほとんど無く、オリゴマー以上での伝播力は ThT との結合量とほぼ相関した。2)投与 4,13 ヶ月後 のマウス由来線維はほとんど 3kG 沈殿分画に分布するが、sonication によって投与 4 ヶ月後マウス由来線維は 100kG 沈殿分画に移動した。伝播力は ThT 結合量に相関した。

【まとめ】AApoAII アミロイド線維の伝播力は ThT 結合量で表される線維量とほぼ相関することが示唆された。

O-2-10 マウスF型ApoA-IIのC末ペプチドはAApoAIIアミロイドーシスを軽減する

澤下 仁子 1,張 蓓茹 1,李 琳 1,田 耕 1,亀谷 富由樹 2,樋口 京一 1

1 信州大学大学院医学系研究科疾患予防医科学系加齢生物学 2(財)東京都医学総合研究所 認知症・高次脳機能研究分野

【背景】マウス AApoAII アミロイドーシスの関連タンパク質 ApoA-II について、高発症マウスが持つ C型 ApoA-II(APOA2C)の N 末と C 末に線維形成コア領域があること、また、この領域にアミノ酸置換がある F 型 ApoA-II(APOA2F)のマウスはアミロイドーシスを全く発症しないことを見いだしている。

【目的】線維形成コア領域の合成ペプチドを用い、APOA2F の(1) 線維形成能と(2) 高発症マウスに対する作用を解析した。

【方法】(1) 合成ペプチドの重合反応を ThT 結合法で、生成物の特性を TEM とコンゴ赤染色性で、また、生成物の組成を LC-MS/MS で同定した。(2) 合成ペプチドを封入した浸透圧ポンプをアミロイドーシス高発症 Apoa2c Tg マウスの腹腔に留置し、翌日、AApoAII 投与により AApoAII アミロイドーシスを誘発した。誘発 27 日後の組織切片のコンゴ赤染色像から、線維沈着程度を評価した。

【結果】(1) APOA2F ペプチドは線維を全く形成しなかった。APOA2F の N 末ペプチドは APOA2C ペプチドの重合反応に影響せず、形成線維にも含まれなかった。一方、APOA2F の C 末ペプチドは、62 番が APOA2F のアミノ酸であるだけでも APOA2C の重合反応を強力に阻害した。(2) 62 番が APOA2Fのアミノ酸である C 末ペプチドを投与されたマウスでは、APOA2C の C 末ペプチドの投与よりも線維沈着程度が有意に少なかった。

【結論】APOA2F は線維形成不能で、APOA2F の C 末ペプチドにはアミロイドーシスの発症を軽減する作用が有ることを見いだした。

一般演題/実験的アミロイドーシス� 第 2 会場/ 13:00 ~ 13:50

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O-2-11 獣医学領域におけるアミロイドーシス

渡邉 謙一 1,内田 和幸 1,チェンバーズ ジェームズ 1,鄭 明奈 1,中山 裕之 1

1 東京大学 大学院農学生命科学研究科 獣医病理学研究室

動物におけるアミロイドーシスは約 10 種類あり、ヒトの分類を踏襲している。各アミロイドーシスにおけるアミロイドの沈着様式はヒトのそれと基本的に同じであるが、発症率は動物種により大きく異なる。

獣医学領域において最も多いアミロイドーシスは AA で、様々な動物で報告があるが、とくに水禽類とネコ科動物に多い。水禽類では趾瘤症に続発する AA の集団発症事例が多く、また飼育下のチーターでは AA が死因として重要である。これらの現象の背景として感染症や SAA の遺伝子多型等様々な要因が考えられているが、AA の伝播を示唆するモデルケースとしても注目されている。動物の AL は稀である。全身性 AL はイヌ、ネコ、ウマなどで比較的多いとされるが、動物の免疫グロブリン軽鎖を認識する市販の抗体が少ないため確定診断まで至る症例はあまり多くない。一方で、イヌではアミロイド沈着を伴う形質細胞腫が皮膚や粘膜に比較的多く発生し、限局性 AL と診断されている。Aβはサル、クマ、イヌ、ネコ、ラクダ、キツツキなどで報告されているが、その沈着様式は動物種によって異なる。AIAPP はネコおよびフェレットに多くみられ、とくに高齢ネコに頻発するが、臨床症状を伴うものは稀である。

アミロイドーシス研究における獣医学領域と医学領域との接点はこれまで実験動物が主体であった。多様な動物種を対象とする獣医学領域の利点を生かし、比較生物学的観点から解析を行うことはアミロイドーシスの発症メカニズム解明につながる新しいアプローチとして期待される。

一般演題/実験的アミロイドーシス� 第 2 会場/ 13:00 ~ 13:50

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O-2-12 老齢ネコ科動物の脳におけるβアミロイド沈着と高リン酸化タウ蓄積に関する検討

高橋 映里佳 1,鳥山 理恵子 1,チェンバーズ ジェームズ 2,亀谷 富由樹 3,宇根 有美 1

1 麻布大学獣医学部 獣医病理学研究室,2 東京大学農学研究科 獣医病理学教室 3 東京都医学総合研究所

【目的】動物のβアミロイド(Aβ)沈着、高リン酸化タウ蓄積の頻度は低いが、我々はチーターには高率にみられることを報告した。この事象がネコ科動物に普遍的であるかを検証し、Aβと高リン酸化タウの関係について検討した。

【方法】老齢のネコ科動物 9 種 42 頭の大脳について、Aβ沈着、高リン酸化タウ蓄積を病理学的に検索し、RT-PCR および質量分析による Aβのアミノ酸配列の解析を行った。

【結果】全 9 種で大脳皮質に、老人斑形成がない瀰漫性の Aβ沈着を認めた。Aβは頭頂部、側頭部に多く分布し、重症例では海馬にも観察された。ヒト AβN 末抗体に反応する Aβは僅かで、解析により共通して Aβの 7 番目のアミノ酸残基がグルタミン酸であることを確認した。高リン酸化タウの蓄積はチーター、ピューマ、イエネコで、NFT はチーターでのみ観察され、主に海馬傍回から海馬の神経細胞に分布し、3R および 4R タウの凝集を認めた。この 3 種において Aβ42 沈着面積と高リン酸化タウ蓄積の程度に相関がみられた。

【考察】ネコ科動物は共通して、老人斑形成は伴わず瀰漫性 Aβ沈着のみが観察されることを見出し、 Aβの N 末端領域のアミノ酸配列の違いが関連すると推察した。高リン酸化タウの蓄積を認めた 3 種において、その分布やアイソフォームはヒトのアルツハイマー病と類似し、タウのリン酸化亢進に Aβ42 が関与している可能性が示唆された。また、この 3 種は系統学的に近縁であることから、何らかの進化発生的要因の存在も考えられる。ネコ科動物を用いた病変の種間比較によりアルツハイマー病発病機序の解明の糸口が得られると考える。

O-2-13 PiB-PETが確定診断に有効であった,新規PSEN1遺伝子変異を有する 家族性アルツハイマー病の一例

中川 道隆 1,小川 有香 1,関島 良樹 1,吉田 邦広 2,伊藤 公輝 3,松田 博史 4,池田 修一 1

1 信州大学医学部脳神経内科、リウマチ・膠原病内科,2 信州大学医学部神経難病学 3 国立精神・神経医療研究センター病院放射線診療部 4 国立精神・神経医療研究センター病院脳病態統合イメージングセンター

【症例】48 歳,男性【主訴】物忘れ,意欲・判断力低下【既往歴】特記すべきことなし【家族歴】姉が 40 歳後半から認知症を発症し当院精神科通院中【現病歴】X-2 年頃から家人に言われたことをすぐ忘れるようになり,意欲低下も出現した.X 年 6 月頃から会話の減少,漢字が書けない,何をして良いかわからない,運転中に道に迷うなどの症状が目立つようになった.X 年 9 月 21 日近医脳神経外科を受診,認知症が疑われ精査加療目的に 10 月 9 日当科入院した.身体所見では認知機能低下(MMSE 15 点)以外には異常を認めなかった.頭部 MRI では脳全体のびまん性脳萎縮を,I123IMP 脳血流シンチグラフィでは頭頂葉,後部帯状回に有意な血流低下を認めた.以上から,遺伝性の若年性認知症を診断し,確定診断の目的で PiB-PET を施行した.PiB-PET では両側前頭葉および頭頂葉皮質に明瞭な集積増加を認め早発型家族性アルツハイマー病と診断した.PSEN1 遺伝子を検索したところ,新規の p.Gly209Ala 変異を認めた.認知症の姉にも同変異を認めた.

【考察】近年,若年性認知症の原因遺伝子がいくつか同定され,遺伝学的な確定診断が可能になっている.本例では,臨床所見や一般的な放射線学的検査では疾患特異的な所見に乏しかったが, PiB-PET で非侵襲的に脳へのアミロイド沈着を検出することができ,新規の PSEN1 遺伝子変異の同定につながった.

一般演題/脳アミロイドーシス� 第 2 会場/ 13:50 ~ 14:20

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O-2-14 副腎皮質ステロイド治療による脳血管アミロイド退縮機序の プロテオミクス手法を用いた解析

亀谷 富由樹 1,池田 修一 2

1 公益財団法人東京都医学総合研究所 認知症・高次脳機能研究分野 2 信州大学医学部 脳神経内科,リウマチ・膠原病内科

<目的>脳アミロイドアンギオパチー(CAA)に対する有効な治療法はない。我々は CAA 関連脳病変に副腎皮質ステロイドを投与することで、脳血管アミロイドが退縮し、病変を寛解させることを報告した。本研究では、この副腎皮質ステロイド投与による脳血管アミロイド退縮メカニズムについて検討した。<方法>副腎皮質ステロイド治療 CAA 患者髄膜血管から Aβアミロイド粗画分を分離し、その中に含まれる Aβおよび関連タンパク質を LC/MS を用いて網羅的に解析した。対照には未治療 CAA 患者髄膜血管を用いた。<結果>未治療 CAA 髄膜血管から抽出された Aβは、全分子型 Aβ、N 末端あるいは C 末端一部欠損 Aβ、内部切断 Aβ断片であったが、治療後 CAA 髄膜血管からは全分子型 Aβのみが抽出された。また、未治療 CAA 髄膜血管アミロイド粗分画には、apoE、A-I、A-IV、clusterin、S100A9/MRP14 等のアミロイド線維結合タンパク質および炎症関連タンパク質等が顕著に検出されたが、治療後 CAA 髄膜血管アミロイド粗分画にはこれらのアミロイド線維結合および炎症関連タンパク質は検出されず、細胞骨格系タンパク質が検出された。<考察>脳血管沈着 Aβ形態およびそれに関連するタンパク質が副腎皮質ステロイド治療の有無で明らかに異なっていた。特に、S100A9/MRP14 産生は、Aβのアミロイド線維化促進、ミクログリアの貪食作用抑制等を導くと報告があり、副腎皮質ステロイド治療による S100A9/MRP14 の激減が Aβアミロイド線維化抑制、除去に寄与したと推定された。副腎皮質ステロイド投与はCAAの有効な治療法と考えられる。

一般演題/脳アミロイドーシス� 第 2 会場/ 13:50 ~ 14:20

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O-2-15 透析アミロイド症の発症リスクに関する検討~透析医学会統計調査より~

星野 純一 1,山縣 邦弘 2,西 慎一 3,高市 憲明 1,中井 滋 4,政金 生人 5,井関 邦敏 6, 椿原 美治 7

1 虎の門病院 腎センター,2 筑波大学医学医療系腎臓内科,3 神戸大学大学院腎臓内科 4 藤田保健衛生大学臨床工学科,5 矢吹病院腎臓内科,6 琉球大学医学部血液浄化療法部 7 大阪大学大学院医学系研究科腎疾患統合医療学講座

目的:透析アミロイド症(DRA)の新規発症リスクを検討した。方法:日本透析医学会統計調査をもとに、週3回血液維持透析を施行し、2010,11 年末の手根管症候群手術(CTS)記載のある 166,237 名を対象に、CTS 進展リスクと各種因子補正後の調整オッズ比(aOR)を算出した。結果:対象群の 1.30%(2,157 名)が新規 CTS に至った。透析歴毎の CTS risk は透析歴 10-15, 15-20, 20-25, 25-30, > 30 年で 1.5, 3.4, 7.8, 14.3, 21.3%、aOR は 0.18, 0.44, 1.00, 2.32, 3.76 であった。年齢毎の aOR は40-50, 50-60, 60-70, 70-80, > 80 歳で 0.52, 1.00, 1.84, 1.48, 1.01 であり、70 歳以上で減少傾向を示した。性別・アルブミン・糖尿病性腎症も有意な因子であった。またβ 2MG 除去率 80% 以上で aOR の減少を認めたが、それ以下の除去率や透析前β 2MG 値では明らかな相関関係を認めなかった。結語:近年の CTS 進展因子が示された。透析時β 2MG 除去 80% 以上で DRA 進展を抑制しうる可能性が示唆された。

O-2-16 維持透析患者のC末端unfolded β2-microglobulin(β2 m92-99)の血中濃度

本宮 善恢 1,安東 由喜雄 2

1 医療法人 翠悠会,2 熊本大学大学院 生命科学研究部 神経内科学分野

目的: ß2-microglobulin(ß2 m)のアミロイド遷移過程では C 末端の unfolding が必須と考えられている。一方、従来よりアミロイド組織では、ほぼ普遍的に N 末端が 6 個欠けた ß2 m variant、Δ N6ß2 m の存在が知られていたが、2000 年 Esposito らの詳細な解析で、この分子は C 末端が unfolding しており、core部分の立体構造は維持されていることが報告された。そこで今回、ß2 mC 末端特異モノクローナル抗体

(mAb92-99)およびΔ N6ß2 m を用いて C 末端 92-99 部位が unfold した ß2 m92-99 の血中濃度の測定を試みた。方法: mAb92-99 および人工遺伝子により作製したΔ N6ß2 m を用いて ELISA 系を組み立て血中 ß2

m92-99 濃度を測定した。検体は同意を得た維持透析者(n = 55、年齢 64 ± 10 歳、透析期間 197 ± 119 ヵ月)および健常者(n = 3)の血清を用いた。結果: 1)血中 ß2 m92-99 濃度の pH 依存性の確認は 2013 年 1 月の我々の東京での報告のごとく、pH6.0では確認出来ず、5.0 で一部測定可能、4.1 で最大、3.0 で低下した。 2)阻害物質確認のため、ELISA 測定系に透析患者血清を 25% および 50% の割合で添加し、mAb92-99 濃度測定を実施したが、阻害効果は確認できなかった。 3)血中 ß2 m 濃度は 28.7 ± 6.7mg/L(16.7 - 36.9 mg/L)であった。

一般演題/透析アミロイドーシス他� 第 2 会場/ 14:20 ~ 15:00

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O-2-17 本邦初の遺伝性腎アミロイドーシスの一家系

矢崎 正英 1,2,池田 修一 2,山中 修一郎 3,亀谷 富由樹 4

1 信州大学大学院医学系研究科疾患予防医科学系加齢生物学 2 信州大学医学部 脳神経内科,リウマチ・膠原病内科 3 富士市立中央病院腎臓内科,4 東京都医学総合研究所

【目的】これまで本邦では、腎アミロイドーシスを主徴とする遺伝性アミロイドーシスの報告はない。今回、ネフローゼ症候群を主徴とする腎アミロイドーシスの家族例を経験し、沈着アミロイドの解析を行ったので報告する。

【患者・方法】発端者は 40 歳代女性。20 歳代前半より蛋白尿指摘。尿蛋白量の増加(4.4g/day)から腎生検施行。腎糸球体中心に高度のアミロイド沈着が認められた。発端者の母は 60 歳代で、糖尿病と末端肥大症の罹患歴あり。50 歳代より蛋白尿を指摘。腎生検が施行され、発端者と同様に、腎糸球体に高度のアミロイド沈着が認められた。発端者には、軽度顔面筋麻痺(まつげ徴候陽性)以外は、明らかな末梢神経障害は認められなかったが、母親に顔面筋麻痺と眼瞼下垂、軽度の嚥下障害を認めた。

【結果】腎生検検体からアミロイド蛋白を抽出し、アミノ酸シークエンス解析を施行したところ、ゲルソリンのフラグメントであることが同定された。ゲルソリン遺伝子解析では、発端者とその母とも p.D214Nのヘテロ接合体であり、家族性ゲルソリン型アミロイドーシスと診断した。その後の眼科診では、両者とも角膜格子状変性を認めた。

【結論】家族性ゲルソリン型アミロイドーシス(フィンランド型家族性アミロイドポリニューロパチー)では、これまでホモ接合体患者で重度の腎障害が報告されているが、ヘテロ接合体患者では報告はない。発端者では、四肢末梢神経障害、脳神経障害が目立たず、家族性ゲルソリン型アミロイドーシスでも、腎障害が主徴になる病型(いわゆる Ostertag 型アミロイドーシス)をとる可能性が示唆された。

O-2-18 膠様滴状角膜変性症による角膜ラクトフェリンアミロイドーシスの一例

植田 光晴 1,田崎 雅義 1,三隅 洋平 1,山下 太郎 1,松本 光希 4,川路 隆博 2,谷原 秀信 2,大林 光念 3,安東 由喜雄 1

1 熊本大学 神経内科,2 熊本大学 眼科,3 熊本大学 アミロイドーシス診療体制構築事業 4 くまもと森都総合病院 眼科

27 歳の男性、角膜の混濁を主訴に受診した。両親はいとこ婚。角膜上皮の沈着物を切除し、病理組織検査で精査したところ角膜下にコンゴレッド陽性のアミロイド沈着が確認された。アミロイド前蛋白質を免疫組織化学的に解析したところ、ラクトフェリンによるアミロイドーシスであることが疑われた。さらに、アミロイド原因蛋白質を抽出し、ウエスタンブロット法や質量分析法で解析したところ、アミロイドを構成している蛋白質はラクトフェリンであることが確認できた。また、遺伝子検査により tumor-associated calcium signal transducer 2(TACSTD2)遺伝子に Q118X のホモ変異が検出された。これらの所見から、膠様滴状角膜変性症の診断に至った。本疾患は、本邦に比較的多く認められる疾患であり、近年、角膜上皮のバリア機能が著しく低下することで、涙液中に存在するラクトフェリンが、角膜上皮下でアミロイド沈着をきたすメカニズムが判明している。文献的考察を含めて、本症例を報告する。

一般演題/透析アミロイドーシス他� 第 2 会場/ 14:20 ~ 15:00

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会 

第 1条(名称)本会は、日本アミロイドーシス研究会 Japan Amyloidosis Research Society と称する。第 2条(事務局)

本会に事務局を置く。その所在は幹事会の決定に従い細則に定める。第 3条(目的)

本会の目的は下記事項を実施することとする。

・ 症例検討、病態解明、新規治療法の開発、モデル動物の検討

・ 会員・参加者に対する教育、及び相互の情報交換

・ 一般医師に対する診断・治療に関する啓発活動

・ 患者・家族に対する指導法の確立・指導の実施

・ その他アミロイドーシスに関する事項第 4条(事業)

本会は、前条の目的を達成するために、下記の事業を行う。

・ 学術集会などの開催

・ 患者団体への協力

・ その他、目的を達成するために必要な事業第 5条(会員)

会員は、本会の目的に賛同する者とする。会員となることを希望する者は、幹事会の承認を得て会員となることができる。第 6条(入退会)

入会希望者は、所定の手続きを経て事務局に申し込むことができる。 退会しようとする者はその旨を事務局に申し出ることとする。また会員が死亡し、あるいは脱会を申し出た場合、会員の資格を喪失することとする。第 7条(懲戒)

会員が、本会の名誉に著しく傷をつけた場合、幹事会にて除名の決定をすることができる。第 8条(役員)

本会は、下記の役員をおく。なお、その人選は幹事会の推薦により、総会において出席会員の過半数の賛成を以て決定する。任期は2年とし、再選を拒まない。なお、幹事会は、下記役員を以て構成される。

・ 代 表 幹 事  (1名)

・ 副代表幹事  (1名)

・ 会   計  (1名)

・ 監   査 (若干名)

また、幹事会承認により、顧問を若干名おくことができる。第 9条(総会)

総会は、原則として年1回開催し、事業計画・経過・会計等の報告を行い、出席会員の過半数の賛成を以て承認を受けるものとする。また臨時に総会を開催する必要が生じた場合、幹事会にて開催を決定することができる。第 10条(学術集会)

学術集会は、原則として年 1 回以上開催する。会員以外の参加も可とする。学術集会の大会長は幹事会で決定する。第 11条(会費)

本会の運営のため、会費を徴収する。その額は幹事会の決定に従い細則に定める。第 12条(賛助会員)

本会の運営のために賛助会員を得ることができる。第 13条(会計年度)

本会の会計年度は、4月1日から次年3月 31 日までとする。第 14条(改正)

本会則は、幹事会の提案により、総会において出席会員の過半数の賛成を以って改正することができる。第 15条(付則)

発足時においては、発起人会の提案により、発足会にて入会の意思を表明した者の過半数の賛成を以て、会則を決定する。

平成 25 年 5 月制定

■ 細 則第 1条(会費)

会費は、年額 2,000 円とする。第 2条(事務局)

本会の事務局は、信州大学医学部脳神経内科、リウマチ ・ 膠原病内科内に置く。第 3条(改正)

本細則は、幹事会の承認により、改正することができる。

平成 25 年 5 月制定

日本アミロイドーシス研究会 会則

会