第226回 日本小児科学会宮城地方会 · 第226回 日本小児科学会宮城地方会...

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第 226 回 日本小児科学会宮城地方会 会 長 呉 繁夫 日 時 2018(平成 30)年 11 月 18 日(日)10 時 会 場 星陵オーディトリアム 仙台市青葉区星陵町 2-1 東北大学星陵会館内 時 間 厳 守

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第 226 回

日本小児科学会宮城地方会

会 長 呉 繁夫

日 時 2018(平成 30)年 11 月 18 日(日)10 時

会 場 星陵オーディトリアム

仙台市青葉区星陵町 2-1 東北大学星陵会館内

時 間 厳 守

第 226 回 日本小児科学会宮城地方会 プログラム

◆10:00-10:05 開会の辞 日本小児科学会宮城地方会会長 呉 繁夫

◆10:05-10:32 腎・内分泌 座長:稲垣徹史(宮城県立こども病院 腎臓内科)

01. 小陰唇肥大により非典型的な外性器を呈した女児2例

東北大学病院 小児科 1)

仙台市立病院 小児科 2)

○梅木郁美1)、菅野潤子1)、島彦仁1)、鈴木大1)、上村美季1)、藤原幾磨1)、呉繁夫1)、山田瑛子2)、

小野頼母 2)、新田恩 2)

02. トスフロキサシン内服後に尿濃縮能低下を伴う急性腎障害を来した1例

東北労災病院 小児科

○千葉靖、沼田美香、高柳玲子

03. 腎機能障害を伴う不明熱を契機に診断された Sjögren 症候群

東北大学病院 小児科

○三浦拓人、内田奈生、菅原典子、坂本修、菅野潤子、市野井那津子、上村美季、鈴木大、

梅木郁美、島彦仁、呉繁夫

◆10:32-10:59 血液・腫瘍 座長:入江正寛(東北大学病院 小児科)

04. 初回治療に不応であったサイトメガロウイルス関連免疫性血小板減少性紫斑病の1乳児例

国立病院機構仙台医療センター 小児科 1)

たかだこども医院 2)

○中村春彦 1)、橋本朋幸 1)、酒井秀行 1)、石田智之 1)、渡邉浩司 1)、渡邊庸平 1)、大沼良一 1)、

千葉洋夫 1)、久間木悟 1)、高田修 2)

05. 当院における乳児血管腫に対するプロプラノロール塩酸塩シロップ内服治療の経験

宮城県立こども病院 血液腫瘍科 1)

同 形成外科 2)

○鈴木信 1)、鈴木資 1)、南條由佳 1)、小沼正栄 1)、佐藤篤 1)、今泉益栄 1)、浅野裕香 2)、

真田武彦 2)

06. プレドニゾロンによる治療が奏功した acute hemorrhagic edema of infancy の1例

国立病院機構仙台医療センター 小児科

○酒井秀行、大沼良一、橋本朋幸、石田智之、渡邉浩司、渡邊庸平、千葉洋夫、久間木悟

◆10:59-11:26 循環器 座長:田澤星一(仙台赤十字病院 小児科)

07. 当科通院中の Marfan 症候群の臨床像と大動脈基部径に対する ARB の効果

東北大学病院 小児科 1)

東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 遺伝疫学研究支援分野 2)

○荒川貴弘 1)、大田千晴 1)、木村正人 1)、小林朋子 2)、呉繁夫 1)

08. 母の病歴より遺伝性出血性末梢血管拡張症の診断に至った肺動静脈奇形の新生児例

宮城県立こども病院 新生児科

○名和達郎、宇根岡慧、三浦雄一郎、内田俊彦、渡邉達也

09. 川崎病と化膿性頸部リンパ節炎の早期鑑別に有用な検査所見の検討

仙台市立病院 小児科

○佐藤大二郎、新田恩、熊坂衣織、崔裕貴、川嶋有朋、山田瑛子、梅津有紀子、高橋俊成、新妻創、

星雄介、小野頼母、守谷充司、北村太郎、村田祐二、大浦敏博

◆11:26-12:02 膠原病・アレルギー

座長:梅林宏明(宮城県立こども病院 リウマチ・感染症科)

10. 術前採血で aPTT 延長を認め、一過性に抗リン脂質抗体の陽性を認めた1小児症例

仙台赤十字病院 小児科 1)

仙台赤十字病院 小児外科 2)

堀田修クリニック 3)

○宮川千弘 1)、内田崇 1)、山村菜絵子 1)、高橋安佳里 1)、秋はるか 1)、田澤星一 1)、小澤恭子 1)、

田中佳子 1)、浅田洋司 1)、岡村敦 2)、伊勢一哉 2)、永野千代子 3)

11. 一般診療で遭遇した急性リウマチ熱2例の検討

坂総合病院 小児科

○角田亮、渡辺瑞香子、丹野仁、境志穂、豊田将夫、佐藤優子、飯塚千恵、玉橋征子

12. イクラアレルギー児におけるタラコ除去の必要性の検討

宮城県立こども病院 アレルギー科

○二瓶真人、佐藤大記、堀野智史、三浦克志

13. 宮城県における食物経口負荷試験の実施状況

宮城県食物アレルギーフォーラム実行委員会

○阿部弘、佐藤大記、二瓶真人、斉藤秀憲、林千代、渡邊庸平、北沢博、箕浦貴則、森川貴美子、

森川みき、堀野智史、三浦克志

◆12:02-12:08 若手優秀演題賞表彰

◆12:08-12:30 休憩

◆12:30-13:00 ランチョンセミナー 座長:呉繁夫(日本小児科学会宮城地方会会長)

「日常診療におけるムコ多糖症 ~モルキオ症候群を含めて~」

東北大学大学院医学系研究科 発生・発達医学講座 小児病態学分野准教授

坂本 修先生

共催:BioMarin Pharmaceutical Japan 株式会社

◆13:00-13:10 休憩

◆13:10-14:10 特別講演 座長:呉繁夫(日本小児科学会宮城地方会会長 )

「自閉症研究、5歳児発達健診と学校コホートの試み」

弘前大学大学院医学研究科神経精神医学講座教授

中村 和彦先生

◆14:10-14:20 休憩

◆14:20-14:56 救急・消化器 座長:小泉 沢(宮城県立こども病院 集中治療科)

14. 加熱式たばこ誤飲の2例

大崎市民病院 小児科

○齋藤江未里、北西龍太、萩野有正、安齋豪人、宮野俊輔、齋藤秀憲、工藤充哉

15. 痙攣重積型(二相性)急性脳症における予測スコアの検討

仙台市立病院 小児科

○川嶋有朋、守谷充司、佐藤大二郎、熊坂衣織、崔裕貴、山田瑛子、梅津有紀子、星雄介、

髙橋俊成、新妻創、小野頼母、新田恩、北村太郎、村田祐二、大浦敏博

16. 診療ガイドラインに基づいた小児急性虫垂炎 42 例の後方視的検討

宮城県立こども病院 消化器科 1)

同 リウマチ・感染症科 2)

同 臨床病理科 3)

同 放射線科 4)

同 外科 5)

○篠崎まみ 1)、伊藤貴伸 1)、星雄介 1)、本間貴士 1)、桜井博毅 2)、角田文彦 1)、武山淳二 3)、

島貫義久 4)、大久保龍二 5)、佐々木英之 5)、遠藤尚文 5)、虻川大樹 1)

17. 繰り返す腹痛を契機に来院し、腹部超音波検査で発見された腸間膜リンパ管腫の1例

仙台赤十字病院 小児科 1)

仙台赤十字病院 小児外科 2)

堀田修クリニック 3)

○佐藤大地 1)、宮川千弘 1)、内田崇 1)、山村菜絵子 1)、高橋安佳里 1)、秋はるか 1)、田澤星一 1)、

小澤恭子 1)、田中佳子 1)、浅田洋司 1)、岡村敦 2)、伊勢一哉 2)、永野千代子 3)

◆14:56-15:32 神経・発達 座長:佐藤 亮(宮城県立こども病院 神経科)

18. 愛情をかけられない理由~被虐待下にあった母親が抑圧していた実母への思慕と悲しみを解放するこ

とが改善起点となった1例~

宮城県立こども病院 発達診療科

〇涌澤圭介、奈良隆寛

19. 交通多発外傷後、リハビリテーションや退院支援に苦慮した重度精神発達遅滞の1例

大崎市民病院 小児科

○萩野有正、北西龍太、斎藤江美里、安齋豪人、宮野峻介、斎藤秀憲、工藤充哉

20. メディアの影響で特異な症状を呈した自閉スペクトラム症の8歳男児

東北大学病院 小児科 1)

仙台市北部/南部発達相談支援センター(アーチル)2)

○阪本昌樹 1)、奈良千恵子 2)、佐藤寛記 1)、植松有里佳 1)、久保田由紀 2)、植松貢 1)、呉繁夫 1)

21. 三世代コホート調査参加児に対する発達評価方法の検討

東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 子どもコホートセンター1)

同 三世代コホート室 2)

○小林美佳 1)、小林朋子 1),2)、山中千鶴 2)、峯岸直子 1)、栗山進一 2)、呉繁夫 1)

◆15:32-16:08 感染症 座長:大田千晴(東北大学病院 小児科)

22. 当院 PICU に入室した RS ウイルス感染症の特徴

宮城県立こども病院 集中治療科

○其田健司、小泉沢、川名信

23. 当院における乳幼児に対する High Flow Nasal Cannula 使用の現状

仙台市立病院 小児科

○熊坂衣織、小野頼母、佐藤大二郎、崔裕貴、川嶋有朋、山田瑛子、梅津有紀子、星雄介、新妻創、

高橋俊成、守谷充司、新田恩、北村太郎、村田祐二、大浦敏博

24. 急性副鼻腔炎を契機とした細菌性髄膜炎の1例

大崎市民病院 小児科

○粕壁幸恵、安齋豪人、萩野有正、齋藤江未里、宮野峻輔、齋藤秀憲、北西龍太、工藤充哉

25. 母児から同一ウイルスが検出された新生児エンテロウイルス髄膜炎の1例

仙台市立病院 小児科 1)

東北大学大学院医学系研究科 病理病態学講座微生物学分野 2)

○梅津有紀子 1)、北村太郎 1)、新田恩 1)、守谷充司 1)、小野頼母 1)、新妻創 1)、髙橋俊成 1)、

星雄介 1)、川嶋有朋 1)、山田瑛子 1)、熊坂衣織 1)、崔裕貴 1)、佐藤大二郎 1)、八亀健 1)、

村田祐二 1)、大浦敏博 1)、岡本道子 2)

◆16:08-16:13 閉会の辞 日本小児科学会宮城地方会会長 呉 繁夫

※一般演題は口演 6 分、討論 3 分、計 9 分で進行します。時間厳守でお願いします。

※ランチョンセミナーで、お弁当をご用意しています(配布時間:午前のセクションが

終わり次第)。数に限りがありますので品切れの際はご容赦ください。

※若手優秀演題を2題選出し表彰します。

※日本小児科学会/日本専門医機構専門医(新制度)の単位取得について

1) ⅳ学術業績、および診療以外の活動実績単位

学会参加により 1 単位取得可能です。

参加証は、受付にてお渡し致します。

2) ⅲ小児科領域講習聴講単位

特別講演(13:10-14:10)の聴講により 1 単位取得可能です。

特別講演開始前に会場入り口にて入室カードをお渡し致しますので、ご記名を

お願い致します。受講証は、講演終了後から学会終了時までに、受付にて入室

カードと交換でお渡し致します。

機構の強い指導もあり、講演開始 10 分後以降には入室カードをお渡しできません。

ご注意下さい。

<特別講演>

自閉症研究、5歳児発達健診と学校コホートの試み

弘前大学大学院医学研究科神経精神医学講座教授

弘前大学子どものこころの発達研究センター長

中村 和彦先生

自閉症は多因子疾患で、環境要因と遺伝要因により、神経機能の異常が起こり、精神症

状が出現する。自閉症の画像研究を紹介する。PET (positron emission tomography) を

施行し、自閉症は全脳でセロトニン・トランスポーターが低下しており、特に小脳、中

脳、視床、前帯状回、後部帯状回などの重要な部位でセロトニン・トランスポーターが低

下していることがわかった。次に、自閉症の免疫系に関してミクログリアに注目した。自

閉症では活性型ミクログリアが小脳、脳幹、中脳、橋で最も顕著で、帯状回、眼窩前頭

回、紡錘状回にも顕著な増加があり、様々な重要な部位で活性型ミクログリアが上昇して

いることがわかった

次に 5歳児発達健診について紹介する。発達障害児の早期発見は重要である。某市で 5

歳児発達健診を始めた。自閉症の有病率が 3.31%であった。5歳で初めて自閉症と診断さ

れた例が認められた。合併率については、例えば ASD は ADHD を 33%が合併していた。

次に子どものコホート研究を紹介する。学校の中でどのような特性のある子どもに配慮が

必要か、どのような様子に気をつけなければならないか、そしてどのような働きかけを行

うべきか、まだ十分にわかっていない。某市の小学校、中学生に対して、様々なツールを

用い子どもや保護者に調査を行った。抑うつ傾向に関しては、小学 1年生から 3年生は

15.3%、小学校 4年生から 6年生は 21.2%、中学生では 29.5%に抑うつ傾向があった。

イライラについては小学 2年生から 3年生は 15.9%、小学 4年生から 6年生は 21.3%、

中学生は 16.0%に攻撃性が認められた。子どもたちが心の問題を抱えている可能性があ

ることが明らかになった。

[御略歴]

I. 経歴

現職:弘前大学大学院 医学研究科 神経精神医学講座 教授

学歴:1990 年 香川医科大学 医学部 医学科卒

1994 年 香川医科大学 大学院修了(医学博士)

職歴(主なもの):

1998 年 香川医科大学 精神神経科 助手

2000 年 東京都精神医学総合研究所 臨床心理研究部門 研究員

2002 年 浜松医科大学 精神神経科 講師

2009 年 浜松医科大学 精神神経医学講座 准教授

2013 年 弘前大学大学院 医学研究科 神経精神医学講座 教授

II. 専門分野:児童青年期精神医学、分子精神医学

III. 資格:日本精神神経学会専門医、指導医、日本児童青年精神医学会認定医

IV. 研究実績

研究内容:精神疾患の臨床遺伝学的解析と血清解析、精神疾患の脳画像解析、精神疾患モ

デル動物解析他。論文は上記研究内容に関するもの。

委員会:成人期注意欠陥・多動性障害の疫学、診断、治療法に関する研究の主任研究者

(厚生労働科学研究費補助金)、発達障害を含む児童・思春期精神疾患の薬物治

療ガイドライン作成と普及の主任研究者(厚生労働省科学研究費)、国立研究開

発法人理科学研究所客員主管研究員、日本児童精神医学会理事、日本精神神経

学会代議員、日本生物学的精神医学会評議員、日本脳科学会評議員、日本神経精

神薬理学会評議員

著書: 大人の ADHD 臨床(金子書房、編著 2016 年)、子どもこころの医学(金芳堂、編

集 2014 年)、子どもの精神医学(金芳堂、編集 2014 年)、CAARS 日本語版 マニ

ュアル(金子書房、監修 2012 年)、CAADID 日本語版 マニュアル(金子書房、

監修 2012 年)他

<一般演題>

01. 小陰唇肥大により非典型的な外性器を呈した女児2例

東北大学病院 小児科 1)

仙台市立病院 小児科 2)

○梅木郁美 1)、菅野潤子 1)、島彦仁 1)、鈴木大 1)、上村美季 1)、藤原幾磨 1)、呉繁夫 1)、

山田瑛子 2)、小野頼母 2)、新田恩 2)

非典型的な外性器を呈する児の性別決定には、心理社会的面からも迅速さが求められ

る。陰核肥大様の小陰唇肥大を呈した女児 2例について報告する。【症例 1】在胎 40 週 0

日、自然分娩で出生。日齢 1に陰核肥大を指摘された。明らかな色素沈着はなく、膣口は

あり、超音波検査で子宮を同定。血液ガス分析で副腎不全の所見なく、同日提出した

17OHP は 1.2 ng/ml と正常範囲内。同日の ACTH は 74.7 pg/ml と高値だったが、日齢 7に

は 22.2 pg/ml と正常範囲内まで低下。日齢 7に当科受診。陰核様に見えたものは小陰唇

であることが判明。XY FISH で Y 染色体のシグナルは陰性で、日齢 11 に女児と判断され

た。【症例 2】在胎 39 週 3 日、吸引分娩で出生。日齢1に陰核肥大と外陰部・腋窩・乳輪

の色素沈着を指摘された。21 水酸化酵素欠損症 (21OHD) 疑いで、日齢 2に当院転院。転

院後、肥大しているのは小陰唇と判明。膣口はあり、超音波検査で子宮を同定。日齢 1の

17OHP 3.16 ng/dl、ACTH 34.4 pg/ml と正常範囲内で、連日の血液ガス分析は異常なく、

色素沈着も徐々に薄くなったため、21OHD は否定的と考えられた。XY FISH で Y 染色体の

シグナルは陰性で、日齢 8に女児と判断された。【結語】非典型的な外性器を認めた場

合、詳細な診察と多面的な評価を行い、慎重かつ迅速に性別決定を行う必要がある。

02. トスフロキサシン内服後に尿濃縮能低下を伴う急性腎障害を来した1例

東北労災病院 小児科

○千葉靖、沼田美香、高柳玲子

症例は 10 歳男児。入院4日前、気管支喘息発作のためステロイド点滴静注を行った。

この時点で腎機能は正常であった(血清 Cr 0.35mg/dl)。翌日肺炎の診断でトスフロキサ

シン(TFLX)を開始。その後入院前日の夕方より嘔気と呼吸苦を認め、3回嘔吐した。腹痛

も伴い水分摂取できず、約1㎏の体重減少を認めたため翌日当科入院となった。4日前と

比較し 2.7 倍の血清 Cr 上昇を認め(血清 Cr 0.94mg/dl)、KDIGO の急性腎障害(AKI)ガイド

ラインより AKI Stage2と診断した。腹部超音波検査で腎尿路に異常なく、腎後性は否定

的であった。輸液開始前に低比重尿を認めたが、尿一般・沈渣は正常範囲であった。血液

浸透圧が 301mOsm/kg と高値にもかかわらず、初期輸液施行中の2時間にさらに3回排尿

を認めたことから尿濃縮能低下が示唆された。初期輸液後間もなく嘔気・腹痛は消退し強

い口渇を訴え始め、その後多飲多尿が数日間続いた。内服薬は TFLX を含めすべて中止し

経過観察を行った。入院 12 日目、腎機能・尿濃縮能が正常範囲に回復したことを確認し

退院した。尿濃縮能低下を伴う AKI の原因として TFLX による薬剤性腎障害が強く疑われ

た。近年小児への TFLX 使用が増加しているが、薬剤性腎障害のリスクを念頭に置き慎重

に投与する必要がある。

03. 腎機能障害を伴う不明熱を契機に診断された Sjögren 症候群

東北大学病院 小児科

○三浦拓人、内田奈生、菅原典子、坂本修、菅野潤子、市野井那津子、上村美季、

鈴木大、梅木郁美、島彦仁、呉繁夫

【背景】Sjögren 症候群(SS)は涙腺・唾液腺等の外分泌腺の障害に加え多彩な腺外障

害を伴うことがある全身性の炎症性自己免疫疾患である。小児での有病率は 1.25/10 万人

とされ、初発時の腺外症状として半数程度が発熱などの非特異的症状を呈するが、腎病変

の合併は 9%程度である。今回腎機能障害を伴う不明熱を契機に診断した SS を経験したの

で報告する。【症例】14 歳女子。1年前から頭痛・倦怠感を自覚していた。発熱を繰り返

すため前医を受診し、炎症反応の上昇(CRP 13.85 mg/dL)、腎機能障害(Cr 1.16

mg/dL)、高 IgG 血症(2984 mg/dL)を指摘された。抗生物質の開始数日後に解熱したが、

腎機能障害が持続するため当科に紹介された。抗核抗体及び抗 SS-A 抗体陽性、唾液分泌

量低下と慢性唾液腺炎の所見から SS と診断された。腎病理像は間質性腎炎と半月体形成

性糸球体腎炎を呈し、メチルプレドニゾロンパルス療法に引き続き、プレドニゾロンとミ

コフェノール酸モフェチルが併用された。治療開始 6ヶ月が経過し、蛋白尿は残存してい

るが、血清 Cr 値は改善傾向にある。【考察】小児期 SS は乾燥等の腺症状より発熱などの

腺外症状の先行が多く、診断及び治療が遅れる場合がある。発熱などに高 IgG 血症や高蛋

白血症などを伴う場合には、自己免疫疾患による不可逆的な臓器障害を防ぐために速やか

に診断・治療を行う必要がある。

04. 初回治療に不応であったサイトメガロウイルス関連免疫性血小板減少性

紫斑病の1乳児例

国立病院機構仙台医療センター 小児科 1)

たかだこども医院 2)

○中村春彦 1)、橋本朋幸 1)、酒井秀行 1)、石田智之 1)、渡邉浩司 1)、渡邊庸平 1)、

大沼良一 1)、千葉洋夫 1)、久間木悟 1)、高田修 2)

【症例】3か月男児。2週間前から顔面に点状出血がみられ次第に体幹、上下肢に拡大

してきた。近医受診時に血小板数 1.6 万/μl と低値であり当院紹介となった。当科受診

時、顔面や上肢に点状出血が散在しており、肝脾を1横指触知した。しかし表在リンパ節

の腫脹は認めなかった。検査所見では血小板数は 3000/μl まで低下、リンパ球優位の白

血球の増加を認め、AST の軽度上昇も認めた。骨髄検査で骨髄巨核数 1520/μl と著明な

増加を認め免疫学的血小板減少性紫斑病(ITP)と診断した。治療は免疫グロブリン大量

投与療法(IVIG)(1g/kg)を行ったが血小板数の増加はみられず不応と判断。サイトメガ

ロウイルス(CMV) IgM 抗体陽性であったため、CMV 初感染に続発した ITP を疑い、CMV

高力価免疫グロブリンを再投与したところ、速やかに血小板数の正常化を認めた。

【考察】後天性 CMV 感染症に伴う ITP は標準治療に抵抗性であることが報告されてい

る。本症例も初回の IVIG には不応であった。しかし、CMV 高力価 IVIG 投与に反応し血小

板の増加が見られた。また本症例の発症年齢は生後 3か月と ITP 患者としては低年齢であ

った。これまでの報告でも CMV 関連 ITP の発症年齢は 6か月以下のことが多いとされてお

り、このような症例を早期に発見するためには低年齢の ITP 患児で CMV の検索を積極的に

行う必要があると考えられた。

05. 当院における乳児血管腫に対するプロプラノロール塩酸塩シロップ内服

治療の経験

宮城県立こども病院 血液腫瘍科 1)

同 形成外科 2)

○鈴木信 1)、鈴木資 1)、南條由佳 1)、小沼正栄 1)、佐藤篤 1)、今泉益栄 1)、浅野裕香 2)、

真田武彦 2)

【緒言】乳児血管腫(いちご状血管腫)は、有病率 1.7%の、比較的よく見られる疾患

である。多くの場合は、生後数週間の後に出現し、約 3~5か月の増殖期を過ぎると、数

年のうちに自然退縮していく。しかし、実際は、経過観察例の 2割~7割が、皮膚瘢痕な

どの後遺症を呈するとも言われており、早期治療介入の必要性が示唆されていた。乳児血

管腫に 2016 年にプロプラノロール塩酸塩シロップが保険適応となり、また、2017 年には

血管腫・血管奇形・リンパ管奇形ガイドラインが改訂され、乳児血管腫に対して有効な治

療法としてプロプラノロール内服が明記されたことから、これまで経過観察とされてきた

症例の多くで、早期治療が検討されうる状況となった。今回我々は当科でプロプラノロー

ル内服治療を行った症例の経験をまとめたので報告する。

【対象および治療】対象は過去 2年間に当院形成外科に紹介された乳児血管腫 85 例の

うち、機能的・整容的な問題などから内科的治療が必要と考えられプロプラノロール内服

による早期治療介入を行った 16 例。うち 11 例では外来通院で治療を開始した。プロプラ

ノロールは 1mg/kg/day 投与で初期投与を開始し、1週間後に 2mg/kg/day に増量し以後継

続した。投与開始時と増量時、および各々その翌日に有害事象の有無を確認した。

【結果】全例において、重篤な副作用をきたさず、自然経過よりも早い退縮傾向が認め

られたが、1例では早期の減量に伴い再燃を経験した。

【結語】プロプラノロール内服治療の安全性と有効性が確認できたが、適切な投薬量・

使用期間については、今後の検討の余地があるものと考えられた。

06. プレドニゾロンによる治療が奏功した acute hemorrhagic edema of

infancy の1例

国立病院機構仙台医療センター 小児科

○酒井秀行、大沼良一、橋本朋幸、石田智之、渡邉浩司、渡邊庸平、千葉洋夫、久間木悟

症例は 1歳女児。第 1病日から顔面、両下肢、体幹に蕁麻疹様の発疹が出現。翌日には

発熱が加わり、両側大腿部に紫斑が認められたため近医小児科を受診し、当科紹介となっ

た。当科受診時には顔面、体幹、四肢に多型紅斑様発疹を認めた。また、両側大腿上部に

比較的大きな紫斑を認めた。特徴的な紫斑と手足の著明な浮腫から Acute hemorrhagic

edema of infancy(AHEI)と診断した。第 3病日になっても発疹および浮腫の改善がみら

れなかったためプレドニゾロンによる治療を開始したところ翌日には発疹が消褪傾向とな

り、第 6病日にはほぼ消失したため治療を中止し、症状の再燃がないことを確認し第 7病

日に退院とした。

AHEI は 2 歳までの乳幼児に急激に発症する斑状紫斑性発疹と四肢の浮腫が特徴で、他

の臓器症状に乏しく数週間のうちに自然回復する予後良好な疾患である。これは IgA 血管

炎が 3歳以上の児に好発し、下腿を中心に紫斑を認め、関節痛、腹痛、胃腸症状、腎炎を

伴いやすいのと対照的である。しかし、AHEI はその派手な皮疹と皮下出血、急激な発症

様式から重篤な疾患であると判断されてしまう可能性があり、小児の紫斑性疾患の鑑別の

際に念頭に入れておくべき疾患である。また、治療は支持療法が基本であるが、ステロイ

ドが浮腫や皮疹に有効であると報告されており、本症例もステロイドが浮腫と皮疹に有効

であった。

07. 当科通院中の Marfan 症候群の臨床像と大動脈基部径に対する ARB の効

東北大学病院 小児科 1)

東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 遺伝疫学研究支援分野 2)

○荒川貴弘 1)、大田千晴 1)、木村正人 1)、小林朋子 2)、呉繁夫 1)

【背景】Marfan 症候群は常染色体顕性(優性)遺伝の全身性結合組織疾患である。症

状は多彩で類縁疾患も多いことから、確定診断がつきにくい症例も多い。致死的合併症と

して大動脈瘤・解離があるが、その原因とされる大動脈基部拡大の進行予防薬として、ア

ンギオテンシン II 受容体拮抗薬(ARB)が有用であるとの報告がある。【目的】Marfan 症

候群の臨床像を明らかにし、ARB 投与による大動脈基部病変の進行抑制効果を検討する。

【方法】改定 Ghent 基準を用いて Marfan 症候群と診断されフォロー中の 14 症例につい

て、診断の契機となった症状、および 2018 年 7 月時点での年齢、性別、家族歴、大動脈

病変の有無、ARB 内服の有無とその効果について後方視的に解析した。【結果】診断の契

機となった症状では漏斗胸が最多であった。年齢は 5歳~29 歳、中央値 15.5 歳、性別は

男性 11 人、女性 3人、家族歴を有する症例は 79%、大動脈基部拡大を有する症例は 100%

であった。ARB は 7 人に投与されていた。投与開始 10 か月時点で、ARB 投与群では非投与

群に比較して有意に大動脈基部拡大が抑制されており、4年間の追跡期間中での解析でも

ARB 投与群では大動脈基部拡大が抑制される傾向にあった。【まとめ】Marfan 症候群の臨

床像を明らかにし、ARB 投与による大動脈基部径に対する拡張抑制効果を検証した。今後

症例の長期的な解析を行うことで、ARB の致死的大動脈合併症に対する抑制効果を検討し

ていきたい。

08. 母の病歴より遺伝性出血性末梢血管拡張症の診断に至った肺動静脈奇形

の新生児例

宮城県立こども病院 新生児科

○名和達郎、宇根岡慧、三浦雄一郎、内田俊彦、渡邉達也

【はじめに】遺伝性出血性末梢血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia:

HHT)は全身の血管形成異常を起こし、脳、肺、消化器、肝動静脈奇形を高率に合併する常

染色体優性遺伝性疾患である。今回、我々は母の病歴から HHT の診断に至った新生児例を

経験した。

【症例】母体は 24 歳、1経妊 0経産。胎児肺動静脈奇形と診断されていた。妊娠 38 週

3 日、母体発熱、胎児機能不全のため緊急帝王切開で出生した。出生体重 3210 g、Apgar

スコアは、3/1 分、6/5 分であった。重症新生児仮死、子宮内感染、胎便吸引症候群およ

び、遷延性肺高血圧症のため、集中治療を行い、日齢 4には全身状態は安定した。出生後

の胸部造影 CT で右肺動静脈瘻の診断となり、日齢 38 に退院した。その後、母の家系に頻

回の鼻出血の既往が判明したため、母の遺伝子検査を実施した。その結果、ACVRL1 の変

異を認め HHT の診断となり、本児も臨床所見と家族歴より HHT と診断した。

【考察】母児ともに Curacao による HHT の診断基準を 1項目しか満たしていなかった

が、母の遺伝子検査の結果から HHT と診断することができた。HHT は未診断の家系も多

く、診断基準を 1項目しか満たしていない場合でも遺伝子検査の適応となる場合もある。

現在のところ、東北地方における HHT の包括的なフォロー体制が整備されていないという

課題がある。

09. 川崎病と化膿性頸部リンパ節炎の早期鑑別に有用な検査所見の検討

仙台市立病院 小児科

○佐藤大二郎、新田恩、熊坂衣織、崔裕貴、川嶋有朋、山田瑛子、梅津有紀子、

高橋俊成、新妻創、星雄介、小野頼母、守谷充司、北村太郎、村田祐二、大浦敏博

【背景】頸部リンパ節腫脹の鑑別診断として化膿性頸部リンパ節炎や川崎病があげられ

る。川崎病では病初期に主要症状が揃わず、化膿性頸部リンパ節炎と診断され治療が遅れ

る危険性がある。

【目的】頸部リンパ節腫脹を伴う川崎病と化膿性頸部リンパ節炎の早期鑑別に有用な検査

所見について後方視的に検討した。

【方法】2015 年 1 月から 2018 年 6 月までの 3年 6か月間に経験した川崎病 239 例のうち

頸部リンパ節腫脹を伴う 136 例(K群)と化膿性頸部リンパ節炎 39 例(P群)を対象と

した。両群における初診時の検査所見(白血球、好中球分画、血小板、Fibrinogen、

FDP、D-dimer、AST、ALT、T-bil、Na、CRP)を後方視的に比較検討した。

【結果】K群は月齢 3~109(中央値 30.0)、有熱期間 1~9日(中央値 4)、P群は月齢 4~

268(中央値 54.0)有熱期間 0~11 日(中央値 3)であった。K群では P群と比較し AST、

ALT、T-bil、Fibrinogen、FDP が有意に高く、Na が有意に低かった。

【考察】川崎病では以前より AST、ALT の上昇、Na の低値が有意であるとされている。今

回の検討ではさらに Fibrinogen、FDP、T-bil の上昇を認めたので、文献的考察を加えて

報告する。リンパ節腫脹を伴う川崎病と化膿性頸部リンパ節炎は発症早期の検査所見にお

いて鑑別できる可能性が示された。

10. 術前採血で aPTT 延長を認め、一過性に抗リン脂質抗体の陽性を認めた

1小児症例

仙台赤十字病院 小児科 1)

仙台赤十字病院 小児外科 2)

堀田修クリニック 3)

○宮川千弘 1)、内田崇 1)、山村菜絵子 1)、高橋安佳里 1)、秋はるか 1)、田澤星一 1)、

小澤恭子 1)、田中佳子 1)、浅田洋司 1)、岡村敦 2)、伊勢一哉 2)、永野千代子 3)

1 歳男児。既往歴:生来出血が止まりにくいといったことはなし。両親には出血傾向の

エピソードなし。経過:第 X日に熱性痙攣を伴う突発性発疹症に罹患あり。第 X+28 日に

鼠径ヘルニアの術前採血目的で当科来院した。採血で aPTT 延長(84.3 sec)を認めた。PT-

INR は 0.99 と正常であった。ループスアンチコアグラント(LA)陽性、抗カルジオリピン

抗体 IgG(aCL-IgG)陽性で、aPTT original cascade(Ⅷ, Ⅸ, Ⅹ, Ⅻ)はⅨ因子活性のみ

70%と軽度の低下を認めた。出血傾向の既往ないことから、後天性のインヒビターによる

aPTT 延長が疑われた。経過中に紫斑を含めた出血傾向は認めなかった。無治療にて経過

観察したところ、第 X+68 日に aPTT 43.2 sec と回復したものの、第Ⅸ因子活性は 45%と

低下したが、第 X+96 日には aPTT 40.8 sec、第Ⅸ因子活性 69%と両者ともに改善傾向を

示し、同日に LA, aCL-IgG も陰性化した。第 X+110 日に無事、鼠径ヘルニアの手術を完遂

できた。感染症を契機として一過性に抗リン脂質抗体が産生されることがあるが、小児で

は、本症例のように無治療にて自然軽快する例が多い。感染源としては、アデノウイルス

感染症が最も多く報告されており、その他、種々の感染症の報告がある。今回は突発性発

疹症の先行感染が認められた。突発性発疹症を先行感染とする一過性の抗リン脂質抗体陽

性の報告は稀であり、本症例を報告すると共に、感染後の抗リン脂質抗体陽性例につい

て、その治療適応についても考察する。

11. 一般診療で遭遇した急性リウマチ熱2例の検討

坂総合病院 小児科

○角田亮、渡辺瑞香子、丹野仁、境志穂、豊田将夫、佐藤優子、飯塚千恵、玉橋征子

急性リウマチ熱(ARF)は A群溶血性レンサ球菌(GAS)による咽頭炎に続発する非感染

性の免疫性疾患である。心炎、関節炎、舞踏病などが主症状であり、特に心炎はリウマチ

性弁膜症や房室ブロックなどの後遺症の原因となり、ARF での死亡は心合併症に起因する

ものが多い。ARF は適切な抗菌薬投与で予防できることが示されており、世界的に減少し

てきている。途上国では依然稀な疾患ではないが、先進国では 10 万人当たり 10 人以下と

稀な疾患である。日本でも発生数は少なく一般臨床で遭遇することは稀である。

今回、当院にて 2例の ARF 症例を経験した。症例 1は 5歳女児で溶連菌性咽頭炎の約

2週間後に発熱、環状紅斑、小舞踏病様症状で発症した。当初薬疹を疑ってステロイドと

抗菌薬の投与で治療を開始し、ARF の診断となった後もそのままステロイド投与を継続し

て症状の改善を認めた。症例 2は 5歳男児で急性咽頭炎後、解熱せずに経過し、多発関節

痛、持続する発熱で発症した。抗菌薬、アスピリン投与で治療を開始したが症状持続し、

ステロイド投与の追加で改善を認めた。2例とも心病変は認めず、ARF 再発予防のため抗

菌薬(PCG)の予防内服を行いつつ経過観察を継続している。

近年では予防接種普及と、「抗菌薬の適正使用」の推進によって一般診療での抗菌薬使

用率が減少し、潜在性の GAS 感染が増加している可能性がある。その結果、ARF の発生が

増加する可能性があり、注意が必要ではないかと思われた。

12. イクラアレルギー児におけるタラコ除去の必要性の検討

宮城県立こども病院 アレルギー科

○二瓶真人、佐藤大記、堀野智史、三浦克志

【背景】魚卵アレルギーは、本邦における食物アレルギーの原因食物の 3.7%(第 6

位)、新規発症に限ると 2-3 歳児の原因食物の 20.2%(第 1位)を占めるなど一般的な疾

患である。しかし、魚卵アレルギーに関連した報告は卵・乳・小麦に比して少なく、例え

ばイクラアレルギーがあると、他の魚卵を一括りに除去されるケースがしばしば経験され

る。

【目的】イクラアレルギー児で、タラコを除去する必要性を検討することを目的とし

た。

【対象・方法】宮城県立こども病院において、2014 年 1 月~2018 年 8 月にイクラの食

物経口負荷試験(OFC)陽性であったイクラアレルギー児、かつ、タラコの OFC を実施さ

れた児を対象とし診療録から後方視的に調査した。

【結果】イクラアレルギー児 12 人中、タラコの OFC を受けた者は 8人であり、タラコ

の即時型症状既往を有していたのは 1 / 8 人、アナフィラキシー既往を有していたのは 0

/ 8 人であった。OFC 前における直近 1年以内のタラコ特異的 IgE 抗体価の中央値は 1.52

UA/mL であった。タラコ OFC 陽性者は 0 / 8 人であった。

【結論】イクラアレルギー児であっても、一律にタラコまで除去する必要性は乏しいと

示唆される。

13. 宮城県における食物経口負荷試験の実施状況

宮城県食物アレルギーフォーラム実行委員会

○阿部弘、佐藤大記、二瓶真人、斉藤秀憲、林千代、渡邊庸平、北沢博、箕浦貴則、

森川貴美子、森川みき、堀野智史、三浦克志

【背景】食物アレルギーの診療において、食物経口負荷試験は重要である。宮城県の食物

アレルギーの病診連携を推進するために、2010 年より宮城県食物アレルギーフォーラム

を毎年開催している。2012 年より食物経口負荷試験の実施状況について調査し、フォー

ラム開催時に報告している。本年(2018 年)もアンケートを実施し、これまでの動向に

関して検討したので報告する。

【対象・方法】宮城県食物アレルギーフォーラム開催前に、宮城県小児科医会会員を対象

にアンケート調査を行った。ハガキによる 1次アンケートで「食物経口負荷試験を実施し

ている」と回答した施設を中心に、詳細な実施状況について 2次アンケートを行った。

【結果】病院 6施設、医院 7施設で食物経口負荷試験を実施していた。2012 年の同じ調

査では病院 4施設、医院 1施設で実施しており、実施施設数は 2.6 倍と増加し、特に医院

で増加していた。実施施設の所在地は仙台市内に多かった。

全体での年間の実施総件数は約 2700 件で、その約 2/3 が入院負荷試験、約 1/3 が外来

負荷試験であった。経時的には、外来での負荷試験は増加傾向であった。

【考察】宮城県内に食物経口負荷試験の実施施設が増え、食物経口負荷試験がより普及し

てきていると思われたが、実施施設の所在地は仙台市内に多く分布しており、仙台市内と

仙台市外の地域では格差がある可能性があることが示唆された。

14. 加熱式たばこ誤飲の2例

大崎市民病院 小児科

○齋藤江未里、北西龍太、萩野有正、安齋豪人、宮野俊輔、齋藤秀憲、工藤充哉

【背景】

加熱式たばことは、たばこの葉を加熱して吸うことにより、有害物質であるタールを摂

取せずに、ニコチンを摂取できる商品である。国内での加熱式たばこの普及に伴い、小児

の加熱式たばこの誤飲も増加している。当院での小児の加熱式たばこの誤飲 2症例につい

てその危険性を考察し報告する。

【症例 1】

10 か月男児、使用前の加熱式たばこ専用スティックを 4本分食べているところを起床

した家族が発見した。1時間ほどして唇が青ざめ、ぐったりしたため当科受診した。診察

時には誤飲後 3時間経過しており、やや活気不良を認めるのみであり、経過観察入院し症

状は改善し翌日退院とした。

【症例 2】

7 か月女児、家族が使用した加熱式たばこの燃えカスを口に含んでいるところを母が発

見した。口の中から燃えカスを吐き出させ、すぐに当科受診した。経過観察入院とした

が、症状が出現することなく経過し、翌日退院となった。

【考察】

従来のたばこ誤飲であれば口に含んだ際に苦みで吐き出すことが多いため大量摂取はま

れであり、苦みに驚き啼泣することで家族に早期に発見されることが多かった。しかし加

熱式たばこの場合、特に苦みで吐き出すことなく複数本食べたのちに発見される上に、発

見されるまでに時間を要し、ニコチン中毒を発症する可能性が高くなる。今後も加熱式た

ばこの普及に伴い誤飲は増加すると考えられ、たばこ誤飲予防と加熱式たばこ誤飲の危険

性の啓蒙がより重要となる。

15. 痙攣重積型(二相性)急性脳症における予測スコアの検討

仙台市立病院 小児科

○川嶋有朋、守谷充司、佐藤大二郎、熊坂衣織、崔裕貴、山田瑛子、梅津有紀子、

星雄介、髙橋俊成、新妻創、小野頼母、新田恩、北村太郎、村田祐二、大浦敏博

痙攣重積型(二相性)急性脳症(以下 AESD)は、発熱 1~2病日に痙攣(early

seizure)で発症し、さらに 3~7病日に痙攣の再発(late seizure)もしくは意識障害の

増悪を来し、その 66%に後遺症を認める重篤な疾患である。小児期で最も頻度が高い急

性脳症であるが、初診時に AESD を予測することは難しい。早期診断の指標として、Tada

ら(J Neurol sci,2015)が提唱した予測スコア(4点以上が AESD ハイリスク、以下 Tada

スコア)がある。今回、2014 年 11 月から 2018 年 8 月までの 3年 9か月の間、急性脳症

と診断された 60 例を後方視的に解析し、その有用性を検討した。急性脳症 60 例のうち

AESD は 21 例(35%)。男児 9例(43%)、女児 12 例(57%)で、年齢は 0歳 8か月~4歳 3

か月(中央値 1歳 3か月)。early seizure は重積型が 11 例(52%)と最多であり、16 例

(76%)は late seizure を認めた。神経学的後遺症を認めたのは 10 例(48%)であった。

21 例の内データ不足を除いた 16 例において Tada スコア 4点以上は 11 例(69%)、early

seizure が重積型である 10 例は全例 4点以上であった。early seizure が重積型の場合は

Tada スコアが有用である可能性が示された。今後症例を増やし、さらなる検討を加える

予定である。

16. 診療ガイドラインに基づいた小児急性虫垂炎 42 例の後方視的検討

宮城県立こども病院 消化器科 1)

同 リウマチ・感染症科 2)

同 臨床病理科 3)

同 放射線科 4)

同 外科 5)

○篠崎まみ 1)、伊藤貴伸 1)、星雄介 1)、本間貴士 1)、桜井博毅 2)、角田文彦 1)、

武山淳二 3)、島貫義久 4)、大久保龍二 5)、佐々木英之 5)、遠藤尚文 5)、虻川大樹 1)

【背景・目的】小児急性虫垂炎診療ガイドライン(2017 年,以下 GL)では、入院判断

としてスコアリングによる重症度評価が推奨され、また単純性虫垂炎では保存的治療の選

択を有効な手段としている。過去 2年間に当院で経験した小児急性虫垂炎 42 例を GL に基

づいて後方視的に検討し、その治療選択について検証する。【対象・方法】年齢 2~18 歳

(中央値 10.8 歳)、男女比 22:20。入院時の Pediatric Appendicitis Score (PAS) は 7

点以上(PAS 高値群)が 28 例、4〜6点(PAS 低値群)が 14 例。初期治療方針として 26

例は保存的治療が選択され(A群)、うち 21 例は保存的治療を完遂した(A1 群)が、5例

は経過中に増悪して手術を施行した(A2 群)。残る 16 例は入院時に手術が選択された(B

群)。各群間で年齢、PAS 等の臨床データを統計学的に比較検討した。【結果】(1) PAS 高

値群は PAS 低値群に比べて低年齢で、複雑性虫垂炎が多く、汎発性腹膜炎を合併しやす

く、手術を要する症例が有意に多かった。(2) 保存的治療を完遂した 21 例(A1 群)は、

保存的治療が無効だった 5例(A2 群)、および手術を施行した全 21 例(A2 群+B群)に

比べて有意に PAS が低く、年齢と単純性虫垂炎の割合が高かった。【考察】PAS は年齢と

ともに治療方針の判断にも有用である。単純性虫垂炎では保存的治療が第一選択となりう

る。

17. 繰り返す腹痛を契機に来院し、腹部超音波検査で発見された腸間膜リン

パ管腫の1例

仙台赤十字病院 小児科 1)

仙台赤十字病院 小児外科 2)

堀田修クリニック 3)

○佐藤大地 1)、宮川千弘 1)、内田崇 1)、山村菜絵子 1)、高橋安佳里 1)、秋はるか 1)、

田澤星一 1)、小澤恭子 1)、田中佳子 1)、浅田洋司 1)、岡村敦 2)、伊勢一哉 2)、

永野千代子 3)

【症例】11 歳 5 ヶ月、男児。1年前より臍周囲やや右側部に突然の腹痛が出現するよう

になった。1ヶ月前より、疼痛の程度と頻度が増加し、X日、当科を受診した。腹痛は横

になると軽減した。また、便意を催した時にしばしば腹痛が悪化したが、排便後は消失し

た。腹部診察で腫瘤を触知しなかったが、繰り返す腹痛であり、精査のため、腹部超音波

検査を施行したところ、膀胱の上に嚢胞状構造を認めた。腹部 CT では下腹部正中に最大

径 10cm 程の造影されない不定形低吸収構造を認めた。腹部 MRI では最大径 11cm の多房性

嚢胞状構造あり、T1 強調像で低信号、T2 強調像で内部は高信号、壁と隔壁は低信号であ

り、腸間膜リンパ管腫を疑った。初診から 1ヶ月後、当院小児外科にて腫瘍摘出術を施

行。術中所見は、Treitz 靭帯から 5cm 肛門側の腸間膜に、10cm 大の腫瘍を認め、近接し

た空腸の部分切除を伴う腸間膜腫瘍摘出術を施行した。病理診断は、腸間膜リンパ管腫で

あった。術後、腹痛なく経過し、術後 11 日目に退院となった。退院後、繰り返す腹痛は

消失した。術後 3ヶ月後の腹部 CT では腸間膜リンパ管腫の残存や再発は認められなかっ

た。

【考察】初診時、ご家族は、過敏性腸症候群を疑って来院されたが、腹痛の程度、頻度

が増加していることから、腫瘍性疾患、尿膜管遺残などの外科疾患のスクリーニングのた

め、腹部超音波検査を施行し腫瘤を発見した。腹痛を繰り返す場合、まず侵襲のない腹部

エコーでの精査が推奨される。

18. 愛情をかけられない理由~被虐待下にあった母親が抑圧していた実母へ

の思慕と悲しみを解放することが改善起点となった1例~

宮城県立こども病院 発達診療科

○涌澤圭介、奈良隆寛

極小未熟児双胎一子である 10 歳の注意欠如多動症+自閉スペクトラム症女児。癇癪が

酷く、母としばしばお互い怒鳴りあってしまう状況だった。子育てのみならず家計のやり

くりにも疲弊していた母は児を受け入れられず否定的だった。「褒められない」「愛情がか

けられない」という訴えがあり母の併行治療が開始された。育成歴上、継父からの虐待や

実母との死別、その後の人生上の様々な失敗体験が聴取され、解離やうつの症状も認めら

れた。複雑性 PTSD の診断の下、心理治療が行われた。現状リソースの開発は遅々として

いたものの、抑圧されていた実母への想いを解放したことをきっかけに現状認知の歪みが

急速に改善され、再体験に基づく機能的でない行動・感情パターンも変容し、児へも徐々

に肯定的に向き合えるようになった。

愛着形成障害を始めとした親子関係の問題を呈するケースに関しては、背景として親自

身が育成歴上、不当に“背負わされていた”病理があることが多く、それが自分の責任で

あると刷り込まれていることもまた多い。その背景病理には治療介入の余地があり、それ

により家族関係が改善に進む余地も十分にあると考えられた。

19. 交通多発外傷後、リハビリテーションや退院支援に苦慮した重度精神発

達遅滞の1例

大崎市民病院 小児科

○萩野有正、北西龍太、斎藤江美里、安齋豪人、宮野峻介、斎藤秀憲、工藤充哉

【症例】15 歳男性。重度の精神発達遅滞と自閉症スペクトラムがあり、自宅で生活し

ていた。経口摂取・歩行は可能だが、会話や意思疎通は困難であり、夜間に一人で外出し

徘徊することもあった。

【経過】電車にはねられたため当院に救急搬送となった。来院時出血性ショック、

DIC、骨盤骨折を含む多発骨折を認めたため当院救急科に入院し全身状態に合わせて順次

手術を行った。入院後 1週間ごろからリハビリを開始したが、意思疎通が困難なため、嚥

下や四肢体幹のリハビリは進まなかった。入院から 4か月が経過したころ、急性期治療が

終了し状態も安定したため転院調整目的に当科に転科となった。転科後は順次、創外固定

の抜去、ギプス解除行った。その後は荷重の可否について評価しつつリハビリを継続した

が、リハビリは進まず、経口摂取は不可能で、お座りが何とかできる状態だった。そのた

め、入院 5か月後に胃瘻造設術を施行した。その後、宮城県こども病院をはじめ県内外の

病院へのリハビリ転院を目指したが受け入れ先はみつからず、最終的には、入院から 8か

月後に放課後デイサービスを利用しながら自宅退院となった。

【考察】当院のように急性期病院では人員や設備の都合上、十分な長期的リハビリを行

うことができず、急性期の治療終了後は慢性期病院へのリハビリ転院が望ましい。しかし

重度の精神発達遅滞を伴う患者のリハビリが可能な病院は県内ではわずかであり、今後の

拡充が望まれる。

20. メディアの影響で特異な症状を呈した自閉スペクトラム症の8歳男児

東北大学病院 小児科 1)

仙台市北部/南部発達相談支援センター(アーチル)2)

○阪本昌樹 1)、奈良千恵子 2)、佐藤寛記 1)、植松有里佳 1)、久保田由紀 2)、植松貢 1)、

呉繁夫 1)

症例は 8歳男児。自閉スペクトラム症で療育を継続していたが、経過中に女児につきま

とう、コスプレが好きといった特異な症状を認めた。当初は父の仕事により、海外に留学

していたことの影響が疑われ、経過を見ていた。しかし、症状は増悪し、後にメディアの

影響であることが判明したため、制限することで症状は改善した。

メディアへの暴露が小児の言語発達や注意、睡眠、学業などに悪影響を与えることは知

られている。近年の脳画像研究によって、ゲームなどのメディアへの暴露によって、前頭

葉や海馬などの容積が低下してしまうことも報告されている。正常発達児にも、メディア

は大きな影響を及ぼすが、自閉スペクトラム症の児では、こだわりや社会コミュニケーシ

ョン障害の特性によって、メディアに依存しやすく、より注意が必要となる。さらに本症

例のように、注意や学力、睡眠以外の特異な症状を呈することもあるため、メディアへの

暴露がないか注意して診療にあたることが重要になってくる。

21. 三世代コホート調査参加児に対する発達評価方法の検討

東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 子どもコホートセンター1)

同 三世代コホート室 2)

○小林美佳 1)、小林朋子 1), 2)、山中千鶴 2)、峯岸直子 1)、栗山進一 2)、呉繁夫 1)

東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)の三世代コホート調査参加者は約

7万人(平成 25~28 年度にリクルート実施)、その内小児は約 3万人(対象児 2万人+対

象児の同胞 1万人)である。小児の参加者には、出生後から保護者が児の健康状態を記入

する質問紙調査(日本語版 ASQ(Ages and Stages Questionnaire)-3、CBCL(Child

Behavior Checklist)、SDQ(Strengths and Difficulties Questionnaire)、TABS(東京

自閉症行動尺度)を含む)が定期的に実施され、加えて 4歳以降には健康調査(身長・体

重・頭囲・腹囲・眼科(視力/眼軸長/レフケラトメーター)・歯科・純音聴力・心電図・

かおTV(Gazefinder)・採血(総 IgE、特異的 IgE)検査、8歳以上では前述に加えて握

力・血圧・骨密度・呼吸機能・体組成・血液(脂質代謝/糖代謝/甲状腺機能)検査)を受

けて頂く詳細二次調査が実施される。質問紙調査は平成 26 年度、詳細二次調査は平成 29

年度から実施されており、平成 32 年度まで継続される計画になっている。ToMMo 所属の

小児科医を中心に、発達状況を評価する調査項目を詳細二次調査に取り入れることを検討

しており、その経過をご報告すると共に ToMMo の三世代コホート調査参加児に対する発達

評価実施計画についてご紹介する。

22. 当院 PICU に入室した RS ウイルス感染症の特徴

宮城県立こども病院 集中治療科

○其田健司、小泉沢、川名信

【背景】RS ウイルス(RSV)感染は、上気道感染の誘因となるが、基礎疾患を有する年少児

では呼吸不全から高度な呼吸管理を要することがある。

【目的】当院 PICU に入室した RSV 感染症の特徴を明らかにすること。

【対象】2014 年 4 月から 2018 年 8 月に当院 PICU に入室した RSV 症例。

【方法】診療録から後方視的に、患者背景、介入、転帰を検討した。

【結果】対象は 19 例。月齢中央値は 5 ヵ月(0-179 ヵ月)。1歳以上(9 例)は、全例呼吸器

疾患、重症心身障害児等の基礎疾患を有していた。主たる入室理由は全例呼吸不全で、肺

実質障害が 15 例(78%)、下気道閉塞が 6例(31%)、呼吸調節障害が 5例(26%)であった(重

複含む)。気管挿管、人工呼吸管理を要したのは 13 例(68%)で、経鼻高流量療法(HFNC)を

導入したのは 6例(31%)、その後人工呼吸に移行したのは 3例であった。全例合併症なく

退院が可能であった。1歳以上群(n=10)は、1歳未満群(n=9)と比較して、ICU 在室日数

(p=0.02)および総入院日数(p=0.04)が長かった。

【考察】基礎疾患を有する年長児は治療期間が長期化する可能性がある。無呼吸発作に対

して HFNC のみで管理可能であった年少例については短い治療期間となった一方で、HFNC

導入後に病勢が悪化する症例もあり、小児の人工呼吸管理に慣れた施設での導入が望まし

い。

23. 当院における乳幼児に対する High Flow Nasal Cannula 使用の現状

仙台市立病院 小児科

○熊坂衣織、小野頼母、佐藤大二郎、崔裕貴、川嶋有朋、山田瑛子、梅津有紀子、

星雄介、新妻創、高橋俊成、守谷充司、新田恩、北村太郎、村田祐二、大浦敏博

High Flow Nasal Cannula(HFNC)は装着の簡便さから、努力呼吸や酸素化の改善、挿管

回避等を目的として乳幼児への使用頻度が増加している。一方その適応は明確でなく、患

者の選択や侵襲的人工呼吸療法との使い分けは医療者の判断によっている。そこで、当院

に HFNC を導入した 2017 年 4 月 1 日から 2018 年 8 月 31 日までに RSV 感染で入院した 200

例を対象とし、乳幼児に対する HFNC 使用の現状について後方視的に調査した。

HFNC 装着は気管支炎 5例、肺炎 3例、細気管支炎 2例の 10 例(年齢中央値 3か月[日齢

14-2 歳]、男児 7例)。HFNC 開始日は第 2病日(1-4)で、開始前 pCO2(静脈血)は

48mmHg(36-65)、装着理由は高 CO2 血症 4例、呼吸努力の増大 2例、SpO2 低下 2例、無呼

吸 2例であった。酸素投与やβ刺激剤吸入の使用頻度に HFNC 装着例と非装着例で差はな

かった。早産低出生体重(p=0.7)、先天性心疾患(p>0.9)、21 トリソミー(p>0.9)において

も有意差はなかった。月齢 6ヵ月未満の割合は非装着例に比して装着例の方が高い傾向に

あったが(73/190[38%], 7/10[70%], p=0.09)、気管挿管の頻度に差はなかった

(2/190[1%], 1/10[10%], p=0.2)。乳幼児の RSV 感染では基礎疾患がなくても重症化しや

すいと考えられる低年齢に HFNC を装着する傾向にあったが、その効果の検証には今後も

症例の積み重ねが必要であり、現時点では症例毎に HFNC の選択が適切であるか十分に吟

味することが肝要であると考えられた。

24. 急性副鼻腔炎を契機とした細菌性髄膜炎の1例

大崎市民病院 小児科

○粕壁幸恵、安齋豪人、萩野有正、齋藤江未里、宮野峻輔、齋藤秀憲、北西龍太、

工藤充哉

今回急性副鼻腔炎を契機とした細菌性髄膜炎に対し、緊急内視鏡下鼻副鼻腔手術、抗菌

薬投与により加療し治癒した1例を経験したため報告する。

症例は 11 歳の男児。X-4 日から頭痛と左眼痛が持続し近医で副鼻腔炎の診断となって

いた。症状が改善しないため X-1 日に当院を受診し抗菌薬が処方され帰宅となった。X日

に上記症状に加え 39℃台の発熱も出現したため再度来院した。来院時、頭痛・悪寒の症

状に加え、JCS1 と軽度意識障害を認めた。診察開始直後から悪寒戦慄も出現し JCS10 ま

で意識状態が増悪した。頭部 CT 画像で脳底部に気脳症を認め、急性副鼻腔炎から頭蓋内

へ炎症が波及していると判断され緊急内視鏡下鼻副鼻腔手術が施行され、セフォタキシム

の投与が開始された。X+1 日に頭痛の改善がなく、血液培養でグラム陽性球菌が 2セット

陽性であり、敗血症・細菌性髄膜炎疑いとして当科に紹介となった。腰椎穿刺を施行後に

セフォタキシムを髄膜炎量まで増量し、バンコマイシンの併用も開始した。治療後から

徐々に意識状態や頭痛などの臨床症状は改善を認めた。血液や鼻汁からは Streptococcus

intermedius が培養されたが、髄液の培養は陰性であった。

本症例の起因菌である Streptococcus intermedius は、他の起因菌と比較して脳膿瘍な

どの頭蓋内合併症が多く予後不良とされている。急性副鼻腔炎は一般的には予後良好で自

然治癒も期待できるが、頭蓋内感染症を合併し重症化する危険性が高い場合は、原因巣の

早期の感染コントロールが効果的である。

25. 母児から同一ウイルスが検出された新生児エンテロウイルス髄膜炎の1

仙台市立病院 小児科 1)

東北大学大学院医学系研究科 病理病態学講座微生物学分野 2)

○梅津有紀子 1)、北村太郎 1)、新田恩 1)、守谷充司 1)、小野頼母 1)、新妻創 1)、

髙橋俊成 1)、星雄介 1)、川嶋有朋 1)、山田瑛子 1)、熊坂衣織 1)、崔裕貴 1)、

佐藤大二郎 1)、八亀健 1)、村田祐二 1)、大浦敏博 1)、岡本道子 2)

【症例】症例は日齢 9の女児。来院数時間前からの発熱を主訴に受診した。髄液検査で

単核球優位(88%)の細胞数上昇(587/・l)を認め、グラム染色で菌体を認めないこと

から無菌性髄膜炎を疑った。血液、尿、髄液細菌培養およびウイルス PCR 検査のための髄

液、血清、便検体を提出後抗菌薬と抗ウイルス薬で治療を開始した。入院後は緩徐に解熱

して全身状態が改善し、入院 3日目に髄液 PCR 検査で単純ヘルペスウイルス陰性、エンテ

ロウイルス陽性を確認し抗微生物薬を中止した。全身状態が安定し入院 5日目に退院し

た。その後 PCR 産物の解析結果により、児の髄液、血清、便ならびに母の血清、咽頭ぬぐ

い液からコクサッキーウイルス B4 型が同定された。

【考察】エンテロウイルス感染症の臨床症状は不顕性感染から重症心筋炎、髄膜炎など

まで幅広い。感染経路は一般的に糞口感染、飛沫感染であるが、子宮内感染や分娩時の垂

直感染は暴露するウイルス量が多いため新生児が重症化するリスクが高いとされる。本症

例では児の発症 2日目の時点で母が同一ウイルス血症であり、潜伏期を考えると分娩後に

発症した母から患児へ水平感染したと推測する。エンテロウイルス感染は無症候性感染も

多いが、感染後もウイルスの排泄が数週間続くため伝播に注意が必要である。新生児のい

る家庭や流行期には有症状者との接触だけでなく他児のおむつなどの取り扱いにも注意す

ることが重要である。

<優秀演題賞 歴代受賞者(敬称略)>

第 215 回(H25・春) 堅田有宇 (国立病院機構仙台医療センター 小児科)

塙 淳美 (東北大学病院 小児科)

第 216 回(H25・秋) 窪田祥平 (石巻赤十字病院 小児科)

松原容子 (国立病院機構仙台医療センター 小児科)

第 217 回(H26・春) 内田 崇 (宮城県立こども病院 総合診療科)

鈴木菜絵子(国立病院機構仙台医療センター 小児科)

第 218 回(H26・秋)

伊藤貴伸 (仙台赤十字病院 総合周産期母子医療センター 新生児科)

岩瀨愛恵 (仙台市立病院 小児科)

第 219 回(H27・春) 阿部雄紀 (大崎市民病院 小児科)

相原 悠 (仙台市立病院 小児科)

第 220 回(H27・秋) 鈴木智尚 (仙台市立病院 小児科)

三浦舞子 (国立病院機構仙台医療センター 小児科)

第 221 回(H28・春) 佐藤優子 (坂総合病院 小児科)

目時嵩也 (国立病院機構仙台医療センター 小児科)

第 222 回(H28・秋) 西條直也 (いわき市立総合磐城共立病院 小児科)

佐々木都寛(八戸市立市民病院 小児科)

<若手優秀演題賞 歴代受賞者(敬称略)>

第 223 回(H29・春) 楠本耕平 (宮城県立こども病院 集中治療科)

星 雄介 (宮城県立こども病院 消化器科)

第 224 回(H29・秋) 荒川貴弘 (仙台市立病院 小児科)

三浦拓人 (国立病院機構仙台医療センター 小児科)

第 225 回(H30・春) 鈴木智尚 (宮城県立こども病院 新生児科)

中川智博 (仙台市立病院 小児科)

日本小児科学会宮城地方会 若手優秀演題賞審査方法

1. 賞の目的 日本小児科学会宮城地方会では、2013 年春の第 215 回学会より、優れ

た研究発表に対し「優秀演題賞」の表彰を始めた。2017 年春の第 223 回

学会より、名称を「若手優秀演題賞」と改め、受賞者の条件を定めること

により、若手研究者の育成を図ることを目的とする。

2. 審査対象

地方会開催時年度で、卒後 6 年以内の発表筆頭演者とする。

3. 審査方法

拡大運営委員会が演題申込抄録の事前審査にて選出する。 審査対象者の抄録を拡大運営委員に事前に送付し、5 段階評価で対象演

題を採点する。採点基準は下記の通りとする。 ・対象演題の 5%程度を 5 点 ・対象演題の 15~20%程度を 4 点

・対象演題の 40~50%程度を 3 点 ・対象演題の 15~20%程度を 2 点 ・対象演題の 5%程度を 1 点

なお、対象演題の共同演者に採点者が含まれていた場合は、同演題を採

点対象から除外する。 平均得点の上位者2名を「若手優秀演題賞」に選出する。同点数などで

2 名以上となる場合には、宮城地方会会長が受賞者 2 名を決定する。

4. 表彰

受賞者には賞状と金 3 万円を学会当日に贈呈する。

[査読者一覧]

運営委員 呉 繁夫 東北大学病院

中川 洋 仙台市医療センター

今泉 益栄 宮城県立こども病院

大浦 敏博 仙台市立病院 (外部査読委員兼任)

奥村 秀定 宮城県小児科医会

川村 和久 仙台小児科医会

久間木 悟 国立病院機構仙台医療センター (外部査読委員兼任)

笹原 洋二 東北大学病院

永井 幸夫 永井小児科医院

梅林 宏明 宮城県立こども病院

渡邊 庸平 国立病院機構仙台医療センター

大橋 芳之 大はしこどもクリニック

花水 啓 花水こどもクリニック

森本 哲司 東北医科薬科大学病院

菅野 潤子 東北大学病院

植松 貢 東北大学病院

力石 健 東北大学病院

木村 正人 東北大学病院

埴田 卓志 東北大学病院

新妻 秀剛 東北大学病院

外部査読委員 鈴木 豊 八戸市立市民病院

三上 仁 岩手県立中央病院

饗場 智 山形県立中央病院

鈴木 潤 いわき市立総合磐城共立病院

伊藤 健 石巻赤十字病院

工藤 充哉 大崎市民病院

浅田 洋司 仙台赤十字病院

大原朋一郎 みやぎ県南中核病院

虻川 大樹 宮城県立こども病院

日本小児科学会宮城地方会会則

第 1章 総則

第 1条 本会は日本小児科学会宮城地方会と称する。

第 2条 本会は小児医学の進歩、発達及び知識の普及を図ると共に、会員相互の親睦を図ることを目的

とする。

1.学術講演会の開催。

2.各種の団体、機関との連絡を図り、社会の福祉に寄与する事。

3.その他必要と認めた事業。

第 3条 本会は事務局を東北大学医学部小児科教室に置く。

第 2 章 会員

第4条 本会は小児医学に関心を有する医師で宮城県在住の者及び県外居住者の希望者をもって構成す

る。但しその他学会の主旨に賛同する者は、いずれかの運営委員の推薦を得て、本会会員とな

ることが出来る。

第 5条 会員になろうとする者は、氏名、現住所及び勤務する者は勤務先を記し、当該年度の会費を添

えて、事務局へ申込むものとする。会員で前項に変更を生じた時は,速やかに事務局に届け出

なければならない。

第 6条 退会しようとする者は、その旨を事務局へ届け出なければならない。但し既納の会費は返付し

ない。

第 3 章 役員

第 7条 本会に次の役員を置く。

会長 1 名,運営委員 若干名,監事 2 名

第 8条 本会に名誉会員若干名を置くことが出来る。名誉会員は本会に特に功労のあった会員のうちか

ら会長の推薦を受け、総会の承認を経て決定される。名誉会員は会費を納入しない。

第 9条 (1)会長は全会員の投票により決める。任期は 4年とし、任期を全うするよう努める。但し

再任は妨げない。

(2)運営委員は総会において会員の互選で決める。

(3)運営委員長は会長がこれを兼ねる。

(4)運営委員・監事の任期は 2年とする。但し再任は妨げない。

第 10 条 (1)運営委員は、運営委員会を組織し、庶務、会計、渉外連絡、プログラム作成その他、本

会の運営に関する事項を協議、処理し、総会に報告する。監事は、会計を監査する。監事は運

営委員会を構成しないが、運営委員会にオブザーバー参加はできる。

(2)運営委員会は、委員長が必要に応じて召集する。

(3)運営委員会には、事務局代表および事務局主務を置く。事務局主務は第 10 条(1)に関す

る実務を中心的に行い、事務局代表はそれを統括する。

(4)運営委員に欠員がでた場合には、運営委員会の推薦により、補充する。任期は前任者の

残りの任期とする。但し再任は妨げない。

(5)会長より任期途中の辞意の希望があった場合および職務を執行し得ないと判断された場

合には、事務局代表が運営委員会を収集する。第 9条(1)を優先するが、やむを得ず辞任が認

められた場合には、新任の会長選出までは事務局代表が会長職を代行する。会長選出までの期

間の決定は運営委員会で行う。

第 4 章 学会

第 11 条 (1)地方会:運営委員会の議を経て、会長がこれを開催する。

(2)北日本小児科学会:当番年度においては当地方会がその主催、運営にあたる。

(3)学会における学術発表者は会員とする。ただし会員以外で入会の希望なしに演題申し込

みがあった場合に演題を採択の可否はその都度、運営委員会のプログラム作成部門で事前に審

議する。初期研修医に関しては、所属施設の小児科指導医が共同演者となっている場合にかぎ

り入会の有無にかかわらず演題を採択する。

第 5 章 総会

第 12 条 (1)当該年度第 1回の学会の際、会長が総会を開催する。必要に応じ運営委員会の議を経て、

臨時総会を開催することが出来る。

(2)総会は会員現在数の 1/10 以上を以て成立する。

(3)総会の議事は、出席会員の過半数を以て決する。

(4)総会の議長は出席会員の中から互選する。

第 6 章 会計

第 13 条 本会の会計年度は毎年 4月 1日に始まり、翌年 3月 31 日に終り、経費は会費その他の収入に

よって支弁する。ただし運営委員会の認めるものを会費免除とする。

第 14 条 会員は毎年会費 5,000 円を納入する(平成 6年度より)。会費の額の変更は総会の議を経るも

のとする。

第 15 条 総会において、庶務、会計の報告を行う。

第 7 章 会則変更

第 16 条 本会会則は総会の議を経て変更することが出来る。

附則

(1)本会会則は昭和 44 年 11 月8日より施行する。

(2)平成 7年 6月 24 日一部改訂。

(3)会費は 3年以上滞納の場合は退会とする。

(4)平成 20 年 6 月 7日一部改訂。

(5)会費免除対象者として第 8条(名誉会員)のほか、海外への留学者、海外からの留学生、初期研修

医とする(平成 20 年 6 月 7日)。

(6) 平成 30 年 7 月 1日一部改訂(第 4条、第 9条(1)、第 10 条(1)(3)(4)(5)、第 11 条(3))

日本小児科学会宮城地方会運営委員(H30 年) (敬称略)

会長(運営委員長) 呉 繁夫 *

運営委員会事務局代表 中川 洋

運営委員会事務局主務 新妻 秀剛

運営委員会会計 木村 正人

運営委員会庶務

(日本小児科学会代議員) 今泉 益栄 * 、大浦 敏博、奥村 秀定、川村 和久 * 、

久間木 悟 * 、笹原 洋二 * 、永井 幸夫

運営委員会プログラム委員

(勤務) 梅林 宏明、渡邉 庸平

(開業) 大橋 芳之、花水 啓

(東北大学) 力石 健、植松 貢、菅野 潤子、埴田 卓志、

(新妻 秀剛、木村 正人)

(東北医科薬科大学) 森本 哲司

監事 岡田 美穂、坂本 修

注:* の 5 名は、北日本小児科学会幹事を兼任する。

メーリングリスト参加のお願い

日本小児科学会宮城地方会メーリングリストは、現在 248 名の地方会会員に

登録頂いております。メーリングリストに参加されますと、地方会のご案内や

プログラムを早めに把握することができます。地方会の事務運営上、多くの会

員の皆様にメーリングリストの会員になっていただきたく存じます。個人情報

の問題もありますので、東北大学小児科地方会事務局の新妻が管理者となりま

す。

日本小児科学会宮城地方会

事務局代表 新妻 秀剛

◆メーリングリストへの参加方法◆

(1)お名前、勤務先、勤務先住所を記したメールを、

メーリングリストに登録したいメールアドレスで作成する。

(2)メールの件名を「メーリングリスト参加希望」とする。

(3)作成したメールを下記アドレス(東北大学小児科医局)へ送る。

[email protected]

(4)登録済みをお知らせする返信メールが届く。

以上の手続きで、登録は完了です。

尚、既に参加されている方はお申込み不要です。

謝辞

この度、第 226 回日本小児科学会宮城地方会を開催するにあたり、多くの企業・団体の

方々にご支援をいただきました。ここに厚く御礼申し上げます。

第 226 日回日本小児科学会宮城地方会

会長 呉 繁夫

<ご協力企業一覧>

◆ アステラス製薬株式会社

◆ アレクシオンファーマ合同会社

◆ 協和発酵キリン株式会社

◆ CSL ベーリング株式会社

◆ 第一三共株式会社

◆ 大日本住友製薬株式会社

◆ 日本イーライリリー株式会社

◆ ノボ ノルディスク ファーマ株式会社

◆ BIOMARIN Pharmaceutical Japan 株式会社

◆ ファイザー株式会社

2018 年 10 月 9 現在

次回 第 227 回宮城地方会開催予定

2019(平成 31)年 6 月 16 日(日)

於 星陵オーディトリアム