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ITUジャーナル Vol. 45 No. 5(2015, 5)36
1.はじめに アジア・太平洋地域のICT分野の標準化活動を強化し、地域としての国際標準の策定に貢献することを目的に、アジア・太平洋電気通信共同体(APT:Asis-Pacific Telecommunity)に1997年11月に設立されたアジア・太平洋電気通信標準化機関(ASTAP:APT Standardization Program)は、第一回総会が1998年2月タイ・バンコクで開催されて以来、回を重ね、今回で25回目の記念すべき総会となった。今回もAPT本部が所在するバンコクにて2015年3月2日(月)~ 6日(金)に開催され、APTメンバーのうち、24か国及び23企業・団体から約130名が参加、日本から総務省をはじめ関係企業・団体から計34名が参加した。本稿では第25回ASTAP総会の結果として、初日に開催されたサーバセキュリティー、スマートシティ・スマートエナジマネジメント関係のインダストリワークショップの概要を報告するとともに、筆者が議長を務めるASTAP分科会 EG-DRMRS(防災・災害復旧システム専門家会議)の審議内容を中心に述べる。
2.オープニング ●アリーワンAPT事務局長挨拶 2015年2月9日にAPT事務局長に就任されたアリーワン事務局長から、APT大臣級会合やAPT総会のStrategic
Planや選挙等の結果報告、APT管理委員会でのWorking Methodsの承認等の報告を含めた挨拶があった。
●前田ASTAP議長挨拶 前回ASTAP-24で新議長に就任された前田氏(情報通信技術委員会専務理事)から、就任挨拶と、APT大臣級会合や戦略計画について、また、ASTAPの再編に係るWG議長候補の紹介、及びインダストリワークショップの概要説明を含めた挨拶があった。
3.インダストリワークショップの概要 オープニングに引き続き、サイバセキュリティ、スマートシティ・スマートエナジマネジメント関係のインダストリワークショップが開催された。午前中は、日本電気の永沼美保氏がモデレータを務め、サイバセキュリティ関係の以下の講演が実施された。
3.1 インダストリワークショップ:サイバセキュリティー・Japanese Government’s Cyber Security Strategy(筒井邦弘氏:総務省情報流通行政局情報流通振興課情報セキュリティ対策室)・Safe Internet:Capacity Building among Malaysia Children on Staying Safe Online
第25回ASTAP総会の結果報告
田た
中なか
進すすむ
日本電気株式会社 パブリックビジネスユニット エクゼクティブエキスパート
会合報告 会合報告
プレナリーの様子(左からアリーワンAPT事務局長、議長を務めるTTC前田氏、近藤APT事務局次長)
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(Mr. Philip Ling:Malaysian Technical Standards Forum Berhad)・APCERT:The roles of CSIRT and CERT Collaborations(Mr. Nuttachot Dusitanont:APCERT Delegate)・Introduction of NEC’s Cybersecurity(武智洋氏:日本電気)
これらの講演を通して、以下のトピックが共通の課題であると認識された。・サイバセキュリティに対する能力育成と意識向上・法律や法的なフレームワーク・CSIRTの活動のサポート ・SPAMやAdvanced Persistent Threat(APT)といったサイバーの脅威と戦うこと
・インターネット上の子どもの安全 またASTAP EG-IS(セキュリティ専門家会議)では、今後もITU-T SG17やAPTの他の活動と連携し、これらの課題やブルネイ宣言を受けたAPT戦略計画に沿った適切なアクションを取ることが確認された。
午後には前半をマレーシア技術標準評議会のLing氏が、後半を日本電信電話の近藤芳則氏がモデレータを務め、スマートシティ・スマートエナジマネジメント関係の講演が実施された。
3.2 インダストリワークショップ:スマートシティ・スマートエナジマネジメント
<前半>・Activities of ITU-T Focus Group on Smart Sustainable City (Dr. Sekhar Kondepudi:National University of Singapore) ・Activities of ISO TC268/SC1 (櫻井義人氏:日立製作所)・Smart City Solution for Social Value Creation (釼吉薫氏:日本電気)
<後半>・Activities of TTC Next Generation Home Network System Working Group (丹康雄氏:北陸先端科学技術大学院大学)・NICT’s Activities on R&D, Standardization and Promotion on Wi-SUN
(児島史秀氏:情報通信研究機構)・Toward the Spread of Smart Energy Network(中谷純之氏:東京瓦斯)・Internet of Things for Energy Management (Dr. Panita Pongpaibool, NECTEC, Thailand)・IoT Based Smart Fish Farm Management (Mr. Ji-Hyun Sohn, SK Telecom, Rep. of Korea )
これらの講演を通じ、スマートシティ、スマートエナジマネジメント、IoTの様々なアプリケーションが紹介された。ITU-TやISOでの標準化動向等の最新情報を得ることはASTAPとASTAP参加国にとって重要であり、これらのトピックを引き続き研究するために、特にASTAP EG M2M(M2M専門家会議)でIoTプラットフォームを含めたスマートシティとIoTについて情報収集していくこと、また、EG GICT&EMF(グリーンICTと電磁界ばく露専門家会議)でスマートシティに関連するEMF(電磁界ばく露)について研究することが提案された。
4.EG-DRMRS(防災・災害復旧システム専門家会議)審議内容 台風・モンスーン地帯に位置するアジア・太平洋地域は、地球温暖化に伴う海水上昇の影響もあり、高潮・洪水・暴風雨などの風水害が甚大化している。また、日本、インドネシア、ニュージーランド、中国などでは再三、巨大地震が発生し、それに伴う津波も含め、アジアの広い地域で人命を奪ってきた。このような自然災害に対して、ICTを駆使して被害を極小化し、また災害復旧を最大限促進するシステムをアジア・太平洋各地の状況にマッチした内容で標準化しようとするのが本会議の目的である。 これまでにAPT Recommendation on Radio-communication Systems for Early Warning and Disaster Relief Operationsをまとめ上げ、現在は災害に関する情報を速やかに多方面から収集し、その情報を報道機関、携帯電話、インターネットなどを通じて関連地域の住民が即座に共有できるDisaster Information Sharing System、また複数の定められた周波数を複数のユーザーで共同使用し、中継局が複数の通信チャンネル(周波数)から自動的に空きチャンネルを選択して割り当てる通信方式を取り、低コストで導入可能なCost Effective Disaster Management Communication SystemのAPTレポートの作成を目指し内容の審議を行っている。今回の審議では、レポート中の要件定義や優位性は定量的に示されるべき等の意見が出て、更に検討を深め
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ることとなった。 また、新たな検討テーマとして、車にWi-Fi等の通信手段を搭載しておけば、車自体が大災害時にシェルター、電源の役割を果たし、かつ災害時通信網ハブの役割を果たし得るDisaster Information and Communication System Using Vehicles an Communication Hubの提案があり、このシステムの標準化に向け検討を行うことになった。本件についてはEG-BSG(標準化格差解消専門家会議)にてアジア・パシフィック各国で活用可能な事例を集め、その事例に則してEG-DRMRSで標準化を進めていくことにて合意され、アンケート調査を実施することとなった。 またEG-DRMRSは2014年5月に活動を終了したITU-TのFG-DR&NRR(災害復旧・通信堅牢性検討グループ)と密接に関係しており、今回も同グループの議長を務めた荒木則幸氏(日本電信電話)より同グループ検討成果物のITU-T SG2・SG15における標準化作業の進捗状況の説明があった。これに基づき、EG-DRMRSとして、ITU-Tでの標準化検討の進捗を支援する趣旨のLiaison Statementを送ることを決議した。
5.全体(主な審議内容) プレナリー及び、他の分科会においては、以下の点を中心に審議がなされた。
1)プレナリー:議長 前田洋一氏(TTC)・第24回会合で立候補がなく空席となっていた副議長に、Ms. Li Haihua(中国 CATR)Dr. Hyoung Jun Kim(韓国ETRI)が選出された。
2)EG-BSG 標 準化格差解消専門家会議:議長Ms. Nguyen Thuan(ベトナム通信省)・ルーラル向けICT利活用ハンドブックの改訂内容審議・災害時の車搭載通信利用ユースケースの収集を決議
3)EG-PRS 政策・規制・戦略専門家会議:議長Mr. Felix Diou Rupokei (PNG通信省)・Mobile Qos Benchmarking Assessmentについてのレポートの審議完了・承認
4)EG-GICT&EMF グリーンICT・電磁界ばく露専門家会議:議長Mr. Samyoung Chung(韓国RRA/MSIP)・Human exposure to EMFについての質問状回答内
容の審議・韓国におけるEMFを扱う体制、SAR/EMF関連法案の紹介
5)EG-ITU-T ITU-T課題専門家会議:議長 釼吉薫氏(日本電気)・第3回APT/ITU C&Iイベント実行案の審議・ITU-T各種活動内容を寄書に基づき紹介
6)EG-FN&NGN 将来網と次世代ネットワーク専門家会議:議長Dr. Joon Won Lee(韓国 安東国立大学)・ITU-D及び関連SDOのFN及びNGN分野の活動状況の紹介
・「将来トランスポートネットワーク技術レポート」、「試験基準及び通信機器評の評価」についての検討開始を決議
7)EG-SACS シームレスアクセス通信システム専門家会議:議長 小川博世氏(ARIB)・シームレスアクセスシステムに関する新APT勧告案の審議(次回審議継続)
・RoFリレーリンク及びRoFフロントホール・バックホールに関する新APTレポート案の審議(次回審議継続)
8)EG-M2M M2M専門家会議:議長今中秀郎氏(日本電信電話)・日中韓のスマートグリッド事例やITUの標準化動向等を盛り込んだAPT Report on Smart Grid in APT Regionの審議完了・承認
・APT Report on e-Health in APT Regionの審議(次回審議継続)
・Liaison Statement on e-Health to ITU-T SGs and ITU-D SG2の審議・承認
9)EG-IS セキュリティ専門家会議:議長 永沼美保氏(日本電気)・セキュリティハンドブックについて審議(次回審議継続)
・ブルネイ宣言とAPT戦略計画2015-2017をレビュー、セキュリティに関するアクションとガイドプラン作成の関連性を確認
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10)EG-SNLP 音声翻訳・自然言語処理専門家会議:議長 深堀道子氏(情報通信研究機構)
・音声翻訳技術普及に向けた各国政府への働き掛け方策の審議
・ITU-T重複標準化回避についての審議
11)EG-MA マルチメディアアプリケーション専門家会議:議長 山本秀樹氏(沖電気工業)
・IPTVのアーキテクチャ・端末に関するITUの勧告内容の紹介
・IPTVを使ったアクセシビリティ機能を付与した端末のユースケース、及びITU-T SG16Q26で審議中のアクセシビリティ機能を付与した端末のプロファイルの紹介
12)EG-AU アクセシビリティ・ユーザービリティ専門家会議:議長 Dr. Jee-In Kim(韓国)
・IPTVを使ったアクセシビリティ機能を付与した端末のユースケース、及びITU-T SG16Q26で審議中のア
クセシビリティ機能を付与した端末のプロファイルの紹介
・モバイル端末のアクセシビリティのガイドラインの紹介
・ソフトウェアのアクセシビリティの標準化動向の紹介
6.おわりに APT及びその傘下のASTAPは、アジア太平洋地域におけるICT分野の専門機関として、同地域の状況に則したICTの発展や標準化に寄与してきた。地球環境の変動により増幅された自然災害が、アジア太平洋地域で猛威をふるっている今日、防災分野でのICT利活用はその重要性を益々強めている。ASTAP EG-DRMRS(防災・災害復旧システム専門家会議)では、アジア太平洋地域の自然災害状況に則し、その地域の国々が経済的にも導入可能なベストプラクティスを検討し、アジア太平洋地域での防災に貢献していきたい。また、本稿記載にあたっては、総務省通信規格課にもご協力頂いたことを併せてお伝えする。
会合報告
ASTAP組織構成図