第2節 保健・医療・福祉包括ケアシステムの推進 · 第2節...

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第2節 保健・医療・福祉包括ケアシステムの推進 保健・医療・福祉包括ケアシステムの推進 (1)包括ケアシステムの考え方 県民が住み慣れた地域で生涯にわたり健康で安心して生活していくためには、保健・医療・ 福祉サービスが、必要な時に適切な内容で、総合的・一体的に提供されることが望まれます。 「包括ケアシステム」は、保健・医療・福祉サービスを関係機関が連携して一体的に提供す る仕組みです。 (2)施策の位置付け 平成 20 12 月に策定した本県の基本計画である「青森県基本計画未来への挑戦」の最重要 戦略キーワードである「あおもり型セーフティネット」の内容の一つとして「保健・医療・福 祉包括ケアの推進」を位置付けています。 (3)包括ケアシステムのイメージ 住民に身近な行政単位である市町村レベルを基本として、包括ケアシステムの整備を推進し ています。 県民や保健・医療・福祉分野の関係者と協働して、それぞれの役割分担を踏まえつつ、保健、 医療、福祉及び地域資源の各種サービスの連携により、住民一人一人の命と健康を守り、地域 で生涯にわたり健康で生活できる体制の整備を目指しています。 そうした中で、住民の基本的な生活圏域である市町村の保健部門を中心とした疾病予防や介護 予防などの「予防を重視した包括ケアシステム」の取組を支援するほか、市町村のエリアを越え た専門性の高い医療サービスを提供する二次保健医療圏との円滑な連携を図るために、医師の確 保や医師を育てる環境づくり、二次保健医療圏域での自治体病院機能再編成、医療と地域とを結 ぶ地域連携パスの普及など、具体的な取り組みを進めています。 - 57 -

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Page 1: 第2節 保健・医療・福祉包括ケアシステムの推進 · 第2節 保健・医療・福祉包括ケアシステムの推進 1 保健・医療・福祉包括ケアシステムの推進

第2節 保健・医療・福祉包括ケアシステムの推進

1 保健・医療・福祉包括ケアシステムの推進

(1)包括ケアシステムの考え方

県民が住み慣れた地域で生涯にわたり健康で安心して生活していくためには、保健・医療・

福祉サービスが、必要な時に適切な内容で、総合的・一体的に提供されることが望まれます。

「包括ケアシステム」は、保健・医療・福祉サービスを関係機関が連携して一体的に提供す

る仕組みです。

(2)施策の位置付け

平成 20年 12月に策定した本県の基本計画である「青森県基本計画未来への挑戦」の最重要

戦略キーワードである「あおもり型セーフティネット」の内容の一つとして「保健・医療・福

祉包括ケアの推進」を位置付けています。

(3)包括ケアシステムのイメージ

住民に身近な行政単位である市町村レベルを基本として、包括ケアシステムの整備を推進し

ています。

県民や保健・医療・福祉分野の関係者と協働して、それぞれの役割分担を踏まえつつ、保健、

医療、福祉及び地域資源の各種サービスの連携により、住民一人一人の命と健康を守り、地域

で生涯にわたり健康で生活できる体制の整備を目指しています。

そうした中で、住民の基本的な生活圏域である市町村の保健部門を中心とした疾病予防や介護

予防などの「予防を重視した包括ケアシステム」の取組を支援するほか、市町村のエリアを越え

た専門性の高い医療サービスを提供する二次保健医療圏との円滑な連携を図るために、医師の確

保や医師を育てる環境づくり、二次保健医療圏域での自治体病院機能再編成、医療と地域とを結

ぶ地域連携パスの普及など、具体的な取り組みを進めています。

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(4)これまでの取組

市町村を単位として包括ケアシステムを構築する取組を平成9年度から推進してきました。

平成9年度から 12年度までは、包括ケアの普及・啓発に力を入れ、市町村長等を対象とした

トップセミナーを開催したほか、包括ケアシステムの構築に向けた推進方策として「指針」を

策定し、さらにモデル市町村における包括ケアシステムの構築支援に取り組みました。

平成 13年度から 15年度までは、包括ケアシステムをより具体化していくための事業として、

市町村の取組に対して支援・助言を行う構築支援事業、関係機関との連携方策に関する調査研

究を行う調査研究事業、市町村では対応が困難なケースについて処遇検討を行うケース検討会

議、地域リハビリテーション支援体制の整備などの広域的な調整などを実施し、市町村に対す

る構築支援・ネットワークづくりに取り組みました。

平成 16年度から 19年度までは、包括ケアシステムをさらに改善させていくために、ケース

検討会議の継続的開催と市町村巡回支援を実施するとともに、市町村が自らの包括ケアシステ

ムを自己評価し現状や課題を明らかにしてシステムを継続・改善させていく自己評価手法を開

発しました。さらに、広域的なネットワークを構築するため、地域リハビリ調整者の養成研修

や医療機関と地域との橋渡しを担う人材の育成とともに、急性期から慢性期に至る医療機関の

連携パスを地域まで延長し、保健・福祉のサービスを連動させる地域連携パスの標準化モデル

の開発と普及に取り組みました。

平成 20年度から平成 24年度までは、包括ケアシステムの定着と発展のため、かかりつけ医

と地域包括支援センター職員との意見交換会、医療連携室職員等と市町村保健師の意見交換会

を実施し、医療から介護、保健をつなぐ情報共有のあり方について検討したところです。

さらに、「予防を重視した包括ケアシステム」の構築に向けて、市町村の支援に重点的に取

り組んでいます。

(5)今後の施策の方向

①予防を重視した包括ケアの推進

地域保健活動の重要性を再認識し、地域住民との連携・協働のもとに予防活動に取り

組む保健師の活動強化を図りながら、県民が生涯にわたり健康で安心した生活ができるよ

う、介護を必要とする高齢者や障害者はもとより、すべての県民を対象に、疾病予防を含ん

だ健康づくりをはじめ、介護予防、重症化予防などの予防を重視した取組を推進していく

こととしています。

②地域リハビリテーション、地域連携パスなどの広域的な取組について

広域的な取組としては、平成 22年度に改訂した「青森県地域リハビリテーション連携指

針」を活用して、県高齢者等地域リハビリテーション支援センターと6広域支援センターを

拠点とした地域リハビリテーション支援体制の定着とネットワークの形成に取り組むことと

しています。

また、医療機関の利用者が安心して日常生活に復帰することができるよう、保健・医療・

福祉関係者の共通のツールである地域連携パスの活用促進と定着を支援することとしていま

す。

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2 地域連携パスの普及

(1)これまでの取組

現在、医療の高度専門化や機能分化の進展等により、がんや脳卒中、心臓病などの主要疾

病に罹患した場合、一つの病院では治療が完結せず、在宅復帰するまでには複数の医療機関

や介護関係機関、市町村などが関わっています。

県では、平成17年度から大腿骨頸部骨折及び脳卒中地域連携パス等の開発を支援し、圏

域毎の地域連携パスの活用促進と連携強化に取り組んできました。

平成18年4月には大腿骨頸部骨折の地域連携パスについて診療報酬上の評価が行われ、

平成20年4月には脳卒中が、平成22年4月にはがん等の地域連携パスが、評価の対象疾

患に追加されました。

県内では、平成24年度現在、大腿骨頸部骨折地域連携パスは2圏域、脳卒中地域連携パ

スは6圏域中4圏域において活用されており、がん地域連携パスについては平成24年度か

ら本格運用が開始されたところです。

(2)今後の取組

保健・医療・福祉のサービスが切れ目なく、かつ効率的に提供される地域連携体制づくりを

推進します。

①地域連携パスの導入を支援します。(県、市町村、医療機関、介護施設、関係団体)

②患者を支える地域関係者の地域連携パス・ネットワークの形成と充実を支援します。

(県、市町村、医療機関、介護施設、関係団体)

③地域連携パスの定着を支援します。(県、市町村、医療機関、介護施設、関係団体)

【用語説明】

<地域連携パス(path:道筋)>

地域連携パスとは、急性期から慢性期に至る医療機関の連携パスを地域まで延長し、保健

・福祉のサービスを連動させるものです。医療機関の利用者にとっては、回復していく過程

に沿って、回復に必要な機能をもった病院や診療所、施設などを上手に使っていく道標でも

あります。

また、保健・医療・福祉のサービス提供者にとっては、サービスの質の向上や連続性の確

保、リスク管理、情報提供推進等に活用できます。

包括ケア関連HP http://www.pref.aomori.lg.jp/welfare/care/index.html

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3 地域リハビリテーション支援体制の整備

(1)現状と課題

障害のある人々や高齢者及びその家族が住み慣れたところで、そこに住む人々とともに、生

き生きと安全に生活を送ることができるよう、地域の医療や保健・福祉はもとより、生活に関

わるあらゆる人々が協力しながら、地域リハビリテーションを提供できる体制を整えることが

必要です。

県では、このようなリハビリテーションの提供が円滑に行われることを目的に、平成 12年度

から高齢者等地域リハビリテーション支援体制整備推進事業を実施しています。

また、平成 14年 12月から、高齢者等のリハビリテーションに関する「青森県高齢者等地域

リハビリテーション協議会」と障害者のリハビリテーションに関する「青森県地域リハビリテ

ーション協議会」について統合を図り、「青森県リハビリテーション協議会」を設置して、総

合的な視点から地域リハビリテーション体制のあり方を含めた協議をしています。

この一環として、平成 13年の青森県高齢者等地域リハビリテーション支援センターの指定に

引き続き、平成 17年までに、すべての二次保健医療圏域で青森県高齢者等地域リハビリテーシ

ョン広域支援センターの指定を行い、各圏域の地域リハビリテーションの推進拠点を整備しま

した。

平成 20年度からは、医療と介護分野との連携を重点項目に掲げ、リハビリテーション従事者

への技術支援、研修会や学習会への講師派遣や教材等作成支援等に取り組んできました。

一方、本県の地域リハビリテーションの課題として、理学療法士や作業療法士及び言語聴覚

士などリハビリテーション専門職のマンパワーの確保、医療機関と介護事業者等との更なる連

携強化などがあげられます。

障害者に対するリハビリテーション施策は、近年の障害の重度化や重複化により、ニーズが

多様化していることから、相談、治療、訓練、指導などの一連のサービスを総合的、継続的に

提供する体制の整備が求められています。

青森県リハビリテーション協議会の体系

(2)目標

障害のある人々や高齢者及びその家族が住み慣れた地域で、生涯にわたって生き生きと安全

に生活を送ることができるよう、地域リハビリテーションを提供できる体制を整備します。

(3)施策の方向・主な施策

① 地域リハビリテーション支援体制づくりの推進

ア 地域リハビリテーション支援体制整備推進事業を推進します。

(県、市町村、医療機関、介護関係事業所)

イ 地域リハビリテーション連携指針に基づく関係機関の連携強化を推進します。

(県、市町村、医療機関、介護関係事業所)

青森県リハビリテーション協議会

(事務局:青森県健康福祉政策課)

障害者リハビリテー

ション推進連絡会議

(事務局:青森県障

害者相談センター)

福祉用具利用・普及

連絡部会

青森県リハビリテーション協議会

(事務局:青森県健康福祉政策課)

障害者リハビリテー

ション推進連絡会議

(事務局:青森県障

害者相談センター)

福祉用具利用・普及

連絡部会

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ウ 地域リハビリテーション活動を推進するための人材育成を図ります。

(県、市町村、医療機関、介護関係事業所)

② 地域リハビリテーション事業の充実強化

ア 障害者や高齢者に係る健康増進事業を推進します。(県、市町村)

イ 介護予防事業を推進します。(県、市町村、介護関係事業所、介護関連団体)

③ 障害者に対する総合的リハビリテーションシステムの確立

障害者のための総合的リハビリテーションシステムの整備を図ります。(県)

【用語説明】

<地域リハビリテーション>

障害のある人々や高齢者及びその家族が住み慣れたところで、そこに住む人々とともに、

一生安全に、いきいきとした生活が送れるよう、医療や保健、福祉及び生活にかかわるあら

ゆる人々や機関・組織がリハビリテーションの立場から協力し合って行う活動のすべてのこ

と。(日本リハビリテーション病院・施設協会定義)

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【本県が目指す地域リハビリテーション連携体制イメージ】

包括ケア(連携サービス提供)推進体制

住 民

かかりつけ医

(地域リハビリ調整者)

救 【医 療】 【介 護】 【市 町 村】 【住民組織】

急 ・病院 ・老人保健施設 ・地域包括支援センター ・患者の会

医 ・診療所 ・デイ・ケア施設 ・地域自立支援協議会 ・家族の会

療 ・薬局 ・特別養護老人ホ ・保健担当 ・ボランティ

施 ・訪問看護ステー ーム等 ・介護保険担当 ア団体等

設 ション等 ・福祉担当

【連携協力施設等】

地域リハビリ調整者

リハ従事者等

【地域リハビリテーション広域支援センター】 【保健所】

・リハ実施機関への支援 ・広域支援センターへの協力

・リハ従事者への支援 情報 ・地域連携パスの定着支援

・相談・テクノエイド等 共有

・リハビリ資源の共同利用

各圏域別のネットワーク

支援

【青森県高齢者等地域リハビリテーション支援センター】

・地域リハビリテーション広域支援センターの支援

・地域リハビリテーション資源の調査・研究

連携

【青森県リハビリテーション協議会】

・青森県地域リハビリテーション連携指針の協議・検討

・青森県地域リハビリテーション支援センターの指定

・青森県地域リハビリテーション広域支援センターの指定

・地域リハビリテーション推進方策、事業計画の調整、システム評価手法の開発

・地域リハビリテーションに係る研究討議・研修の推進(障害者地域リハビリテ

ーションに係る研究討議・研修の推進)

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