第2節 北陸地方と各県の気候変化 北陸地方の年、季 …...1945 1950 1955 1960 1965...

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。 -2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(℃) 9地点平均の冬平均気温偏差 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(℃) 9地点平均の年平均気温偏差 -2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(℃) 9地点平均の春平均気温偏差 -2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(℃) 9地点平均の夏平均気温偏差 -2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(℃) 9地点平均の秋平均気温偏差 第 2 節 北陸地方と各県の気候変化 2.1 北陸地方 2.1.1 北陸地方の長期変化 ① 北陸地方の平均気温の長期変化 北陸地方の地方気象台・特別地域気象観測所 (新潟、相川、高田、富山、伏木、金沢、輪島、福 井、敦賀)で観測された年の平均気温偏差の経年 変化を図 2.1.1 に、季節ごとの平均気温偏差の経 年変化を図 2.1.2 に示す(統計期間:19462018 年)。 北陸地方の年、季節ごとの平均気温にはいずれ も上昇傾向が現れている。年平均気温では、 1960 年前後の高温を除けば 1980 年代半ばまではやや 低温の時期となっていて、1980 年代後半から高 温傾向が続いている。季節別にみると、春と秋の 上昇幅が他の季節に比べて大きい。 2.1.2 北陸地方の季節ごとの平均気温偏差の経年変化 2.1.1 北陸地方の年平均気温偏差の経年変化 春(35 月) 夏(68 月) 秋(911 月) 冬(122 月) 長期変化傾向:+0.9(℃/50 年) 長期変化傾向:+1.1(℃/50 年) 長期変化傾向:+0.9(℃/50 年) 長期変化傾向:+1.1(℃/50 年) 長期変化傾向:+0.7(℃/50 年) 68

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

-2.5

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

1981-2010年

平均

から

の差

(℃

9地点平均の冬平均気温偏差

トレンド=1.32 (℃/100年)

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

1981-2010年

平均

から

の差

(℃

9地点平均の年平均気温偏差

トレンド=1.89 (℃/100年)

-2.5

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

1981-2010年

平均

から

の差

(℃

9地点平均の春平均気温偏差

トレンド=2.25 (℃/100年)

-2.5

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

1981-2010年

平均

から

の差

(℃

9地点平均の夏平均気温偏差

トレンド=1.83 (℃/100年)

-2.5

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

1981-2010年

平均

から

の差

(℃

9地点平均の秋平均気温偏差

トレンド=2.26 (℃/100年)

第 2節 北陸地方と各県の気候変化

2.1 北陸地方

2.1.1 北陸地方の長期変化

① 北陸地方の平均気温の長期変化

北陸地方の地方気象台・特別地域気象観測所

(新潟、相川、高田、富山、伏木、金沢、輪島、福

井、敦賀)で観測された年の平均気温偏差の経年

変化を図 2.1.1 に、季節ごとの平均気温偏差の経

年変化を図 2.1.2 に示す(統計期間:1946~2018年)。

北陸地方の年、季節ごとの平均気温にはいずれ

も上昇傾向が現れている。年平均気温では、1960年前後の高温を除けば 1980 年代半ばまではやや

低温の時期となっていて、1980 年代後半から高

温傾向が続いている。季節別にみると、春と秋の

上昇幅が他の季節に比べて大きい。

図 2.1.2 北陸地方の季節ごとの平均気温偏差の経年変化

図 2.1.1 北陸地方の年平均気温偏差の経年変化

春(3~5 月) 夏(6~8 月)

秋(9~11 月) 冬(12~2 月)

長期変化傾向:+0.9(℃/50 年)

長期変化傾向:+1.1(℃/50 年) 長期変化傾向:+0.9(℃/50 年)

長期変化傾向:+1.1(℃/50 年) 長期変化傾向:+0.7(℃/50 年)

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

550

600

650

1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

降雪

の深

さ(cm

9地点平均の年降雪量

40

60

80

100

120

140

160

180

200

1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

198

1-2010年

平均

に対

する

比(%

9地点平均の春降水量比

40

60

80

100

120

140

160

180

200

1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

1981-2010年

平均

に対

する

比(%

9地点平均の夏降水量比

トレンド=13.83 (%/100年)

40

60

80

100

120

140

160

180

200

1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

1981-2010年

平均

に対

する

比(%

9地点平均の秋降水量比

40

60

80

100

120

140

160

180

200

1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

1981-2010年

平均

に対

する

比(%

9地点平均の冬降水量比

40

60

80

100

120

140

160

180

200

1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

198

1-2010年

平均

に対

する

比(%

9地点平均の年降水量比

② 北陸地方の降水量の長期変化

北陸地方の地方気象台・特別地域気象観測所で

観測された年と季節ごとの降水量(平年比)の経

年変化を、図 2.1.3~図 2.1.4 に示す(統計期

間:1946~2018 年)。

夏の降水量には増加傾向が現れているが、年、

夏を除く季節ごとの降水量には変化傾向は確認

できない。

③ 北陸地方の降雪量の長期変化

北陸地方の地方気象台・特別地域気象観測所で

観測された年降雪量の経年変化を、図 2.1.5 に示

す(統計期間:1962~2018 年)。降雪量は 2006 年

に観測方法を変更しており、長期変化傾向は算出

していない。

観測方法変更前までの年降雪量には減少傾向

が現れていた。1980 年代半ばを境に急激に減少

し、その後は少ない年が多くなっている。降雪量

の減少傾向は地球温暖化の影響の可能性がある

ものの、自然要因に伴う年々~数年の周期の変動

が大きく、温暖化との因果関係については今後の

更なる観測データの蓄積が必要である。

図 2.1.4 北陸地方の季節ごとの降水量(平年比)の経年変化

図 2.1.3 北陸地方の年降水量(平年比)の経年変化

春(3~5 月) 夏(6~8 月)

秋(9~11 月) 冬(12~2 月)

図 2.1.5 北陸地方の年降雪量の経年変化 棒グラフは年降雪量の地域平均値、青線は 5 年移動平均。

長期変化傾向:+7(%/50 年)

69

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

2.1.2 北陸地方の気候変化の将来の見通し

北陸地方の平均気温の現在気候(1980~1999年)と将来気候(2076~2095 年)の差の予測を図

2.1.6 に、年平均気温の将来変化量の予測分布を

図 2.1.7 に示す。平均気温は約 4.5℃上昇すると予

測され、季節別には秋と冬に上昇幅が大きい傾向

がみられる。

北陸地方の 1 時間降水量 50mm 以上の発生回数

と無降水日数の将来気候における変化の予測を、

図 2.1.8 と図 2.1.9 に示す。どちらも増加が予測

されており、短時間強雨に対する備えと共に水資

源の管理にリスクが増大することが懸念される。

北陸地方の降雪量と最深積雪の将来気候にお

ける変化率を、図 2.1.10 と図 2.1.11 に示す。ど

ちらも現在に比べて減少すると予測されている。

図 2.1.8 北陸地方の 1 時間降水量 50mm 以上回数の将来気候の

変化

図 2.1.7 北陸地方の年平均気温の変化(将来気候の現在気候との差)

図 2.1.11 北陸地方の最深積雪の将来気候における変化

図 2.1.10 北陸地方の降雪量の将来気候における変化

図 2.1.9 北陸地方の無降水日数の将来気候における変化 図 2.1.6 北陸地方の平均気温の将来気候における変化

70

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

2.2 新潟県

2.2.1 新潟県の地勢

新潟県は本州の中央部よりやや北の日本海側

に位置し、本州の部分(藩制時代の越後)と佐渡島

及び粟島あわしま

を含めてその県域としており、面積は

12,584km2(全国第 5 位)である。 県の北西側は日本海に面し、北東側から南西側

にかけては山形・福島・群馬・長野・富山の 5 県

と接し、この地域は 2,000m 級の山を中心とした

山岳地帯で、北から朝日山地、飯豊い い で

山地、越後山

脈、三国山脈、上信越連峰(妙高山など)、飛騨山

脈(北アルプス)などで県境を造っている。 これらの山岳地帯を源とする多くの河川が県

内を流れて日本海に注ぎ、特に信濃川、阿賀野川

の二大河川が県の中央部を流れ、支流の中小河川

も多い。県の北部や西部では山岳地帯から海岸ま

での距離が短いため、この地域を流れる川は比較

的急流となっている。

信濃川及び阿賀野川流域には、広大な越後平野

がある。その他の平坦な地として、平野や盆地が

あるが、一方で、山岳地帯、丘陵地帯の面積も大

きい。 佐渡は北側に大佐渡

お お さ ど

山地、南側に小佐渡こ さ ど

丘陵が

北東から南西に平行に走り、その中間が国仲くになか

平野

となっている。

2.2.2 新潟県の気候

新潟県の気候は典型的な日本海岸気候区に分

類される。晩秋になると大陸から寒気が吹き出し

てしぐれる。冬は冬型の気圧配置が多く現れ、大

雪となる日もある。強い冬型の気圧配置になると

海岸や平野部では吹雪となり、山沿いではしんし

んと雪が降り積もり、家々を埋もれさせる。住宅

や商店の軒先を長く出した家々が連なる「雁木が ん ぎ

(高田、長岡で現れている)は歩行者に配慮した雪

国独特の風情と優しさを醸し出している。 夏は梅雨による雨の時期と梅雨明け後の晴天

の季節となる。海上では波が穏やかになることが

多く、夕日がとてもきれいな季節である。一方で、

梅雨末期や梅雨が明けてからも災害をもたらす

ような大雨となることがある。太平洋高気圧の勢

力が衰えたときに、高気圧の縁辺をまわる、暖か

く湿った空気が西の海上から前線に向かって流

れ込み、前線付近で積乱雲が発達して大雨となる

もので、これまでも、昭和 42 年 8 月 26 日~29日の羽

越えつ

豪雨、平成 16 年 7 月新潟・福島豪雨、

平成 23 年 7 月新潟・福島豪雨により、甚大な被

害が起きている。

71

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

2.2.3 新潟県の長期変化

(1) 新潟市

① 新潟地方気象台(新潟市)の

平均気温の長期変化

新潟地方気象台で観測された年平均気温の経

年変化を図 2.2.1 に、季節ごとの平均気温の経年

変化を図 2.2.2 に示す(統計期間:1886~2018 年)。

新潟地方気象台は 1928 年 1 月と 1938 年 7 月、

2012 年 6 月に観測場所を移転しており、図中の

移転前の値と平年値は補正を行っている。

年、季節ごとの平均気温の経年変化にはいずれ

も上昇傾向が現れており、春の上昇幅が他の季節

に比べて大きい。

② 新潟地方気象台(新潟市)の

降水量の長期変化

新潟地方気象台で観測された年降水量の経年

変化を図 2.2.3 に示す(統計期間:1886~2018 年)。

年降水量には変化傾向は確認できない。

-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.03.54.04.55.05.56.06.57.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

新潟の冬平均気温

トレンド=1.3 (℃/100年)

12.012.513.013.514.014.515.015.516.016.517.017.518.018.519.019.520.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

新潟の秋平均気温

トレンド=1.1 (℃/100年)

19.019.520.020.521.021.522.022.523.023.524.024.525.025.526.026.527.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

新潟の夏平均気温

トレンド=1.3 (℃/100年)

6.06.57.07.58.08.59.09.5

10.010.511.011.512.012.513.013.514.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

新潟の春平均気温

トレンド=1.8 (℃/100年)

1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900 2000 2100 2200 2300 2400 2500 2600

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

降水

量(m

m)

新潟の年降水量

9.09.5

10.010.511.011.512.012.513.013.514.014.515.015.516.016.517.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

新潟の年平均気温

トレンド=1.4 (℃/100年)

平年値:13.9℃

図 2.2.2 新潟地方気象台の季節ごとの平均気温の経年変化

図 2.2.3 新潟地方気象台の年降水量の経年変化 図 2.2.1 新潟地方気象台の年平均気温の経年変化

春(3~5 月) 夏(6~8 月)

秋(9~11 月) 冬(12~2 月)

平年値:1821.0mm

平年値:11.3℃

平年値:16.5℃ 平年値:3.7℃

長期変化傾向:+1.4(℃/100 年)

長期変化傾向:+1.8(℃/100 年) 長期変化傾向:+1.3(℃/100 年)

平年値:23.9℃

長期変化傾向:+1.1(℃/100 年) 長期変化傾向:+1.3(℃/100 年)

72

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

55

60

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数(日)

新潟の年間真夏日日数

10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数(日)

新潟の年間冬日日数

③ 新潟地方気象台(新潟市)の

真夏日、熱帯夜、冬日の日数の長期変化

新潟地方気象台で観測された真夏日、熱帯夜、

冬日の年間日数の経年変化を、図 2.2.4~図 2.2.6に示す(統計期間:1882~2018 年)。1928 年と

1938 年、2012 年に観測場所を移転したため、長

期変化傾向は算出していない。 1939~2011 年の期間では、真夏日日数には変

化傾向は確認できなかったが、熱帯夜日数には増

加傾向が、冬日日数には減少傾向が現れていた。

④ 新潟地方気象台(新潟市)の

降雪量と最深積雪の長期変化

新潟地方気象台で観測された年降雪量と年最

深積雪の経年変化を、図 2.2.7 と図 2.2.8 に示す

(統計期間:降雪量 1954~2018 年、最深積雪 1962~2018 年)。降雪量は 2005 年に観測方法を変更

しており、長期変化傾向は算出していない。なお、

平年値は観測方法変更後の値となるように補正

を行っている。

観測方法変更前までの年降雪量には変化傾向

は確認できなかった。年最深積雪にも変化傾向は

確認できない。

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

積雪深(cm)

新潟の年最深積雪

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

降雪の深さ(cm)

新潟の年降雪量

0

5

10

15

20

25

30

35

40

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数(日)

新潟の年間熱帯夜日数

図 2.2.4 新潟地方気象台の真夏日日数の経年変化

図 2.2.5 新潟地方気象台の熱帯夜日数の経年変化

図 2.2.6 新潟地方気象台の冬日日数の経年変化

図 2.2.7 新潟地方気象台の年降雪量の経年変化

図 2.2.8 新潟地方気象台の年最深積雪の経年変化

平年値:33.5 日

平年値:11.1 日

平年値:37.3 日

平年値:217cm

平年値:36cm

73

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

新潟の年間雷日数

トレンド2.6 日/10年

⑤ 新潟地方気象台(新潟市)の

さくらの開花日とかえでの紅葉日の長期変化

新潟地方気象台の観測によるさくらの開花日

とかえでの紅葉日の経年変化を、図 2.2.9 と図

2.2.10 に示す(統計期間:1953~2018 年)。

さくらの開花は早まる傾向が現れており、50 年

あたり約 6 日早くなっている。かえでの紅葉は遅

れる傾向が現れており、50 年あたり約 9 日遅く

なっている。

⑥ 新潟地方気象台(新潟市)の

雷日数の長期変化

新潟地方気象台で観測された年間の雷の観測

日数の経年変化を図 2.2.11 に示す(統計期間:

1931~2018 年)。

雷日数には増加傾向が現れており、50 年あたり

約 13 日増加している。なお、新潟地方気象台で

は雷の年間観測日数の約 4割を冬季に観測してい

る。

図 2.2.9 新潟地方気象台のさくらの開花日の経年変化

平年値:11 月 12 日

図 2.2.10 新潟地方気象台のかえでの紅葉日の経年変化

図 2.2.11 新潟地方気象台の年間雷観測日数の経年変化

長期変化傾向:-6(日/50 年)

長期変化傾向:+9(日/50 年)

長期変化傾向:+13(日/50 年)

平年値:4 月 9 日

74

Page 8: 第2節 北陸地方と各県の気候変化 北陸地方の年、季 …...1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(

グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

(2) 佐渡市

① 相川特別地域気象観測所(佐渡市)の

平均気温の長期変化

相川特別地域気象観測所で観測された年平均

気温の経年変化を図 2.2.12 に、季節ごとの平均気

温をの経年変化を図 2.2.13 に示す(統計期間:

1911~2018年)。相川特別地域気象観測所は1995年 7 月に観測場所を移転しており、図中の移転前

の値と平年値は補正を行っている。

年、夏を除いた季節ごとの平均気温の経年変化

にはいずれも上昇傾向が現れており、春と冬の上

昇幅が他の季節に比べて大きい。

② 相川特別地域気象観測所(佐渡市)の

降水量の長期変化

相川特別地域気象観測所で観測された年降水

量の経年変化を図 2.2.14 に示す(統計期間:1912~2018 年)。

年降水量には変化傾向は確認できない。

900 1000 1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900 2000 2100 2200 2300

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

降水

量(m

m)

相川の年降水量

0.00.51.01.52.02.53.03.54.04.55.05.56.06.57.07.58.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

相川の冬平均気温

トレンド=1.3 (℃/100年)

13.013.514.014.515.015.516.016.517.017.518.018.519.019.520.020.521.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

相川の秋平均気温

トレンド=0.5 (℃/100年)

19.019.520.020.521.021.522.022.523.023.524.024.525.025.526.026.527.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

相川の夏平均気温

6.06.57.07.58.08.59.09.5

10.010.511.011.512.012.513.013.514.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

相川の春平均気温

トレンド=1.3 (℃/100年)

10.010.511.011.512.012.513.013.514.014.515.015.516.016.517.017.518.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

相川の年平均気温

トレンド=0.8 (℃/100年)

図 2.2.13 相川特別地域気象観測所の季節ごとの平均気温の経年変化

図 2.2.12 相川特別地域気象観測所の年平均気温の経年変化

春(3~5 月)

秋(9~11 月) 冬(12~2 月)

夏(6~8 月)

図 2.2.14 相川特別地域気象観測所の年降水量の経年変化 平年値:1506.4mm 平年値:13.9℃

平年値:11.0℃

長期変化傾向:+0.8(℃/100 年)

平年値:4.8℃ 平年値:16.9℃

平年値:23.0℃

長期変化傾向:+0.5(℃/100 年)

長期変化傾向:+1.3(℃/100 年)

長期変化傾向:+1.3(℃/100 年)

75

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

③ 相川特別地域気象観測所(佐渡市)の

真夏日、熱帯夜、冬日の日数の長期変化

相川特別地域気象観測所で観測された真夏日、

熱帯夜、冬日の年間日数の経年変化を、図 2.2.15~図 2.2.17 に示す(統計期間:1912~2018 年)。

1995 年に観測場所を移転したため、長期変化傾

向は算出していない。なお、平年値は移転後の値

となるように補正を行っている。 移転前までの真夏日、冬日、熱帯夜の各日数に

は減少傾向が現れていた。

④ 相川特別地域気象観測所(佐渡市)の

降雪量と最深積雪の長期変化

相川特別地域気象観測所で観測された年降雪

量と年最深積雪の経年変化を、図 2.2.18 と図

2.2.19 に示す(統計期間:降雪量 1954~2018 年、

最深積雪 1962~2018 年)。降雪量は 2005 年に観

測方法を変更しており、長期変化傾向は算出して

いない。なお、平年値は観測方法変更後の値とな

るように補正を行っている。 観測方法変更前までの年降雪量には減少傾向

が現れていた。年最深積雪にも減少傾向が現れて

いる。

0 5

10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70

1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

積雪

深(cm

相川の年最深積雪

トレンド-2.2 cm/10年

0 20 40 60 80

100 120 140 160 180 200 220 240 260 280

1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

降雪

の深

さ(cm

相川の年降雪量

0 5

10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

相川の年間冬日日数

0

5

10

15

20

25

30

35

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

相川の年間熱帯夜日数

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

相川の年間真夏日日数

図 2.2.15 相川特別地域気象観測所の真夏日日数の経年変化

図 2.2.17 相川特別地域気象観測所の冬日日数の経年変化

図 2.2.16 相川特別地域気象観測所の熱帯夜日数の経年変化 図 2.2.19 相川特別地域気象観測所の年最深積雪の経年変化

図 2.2.18 相川特別地域気象観測所の年降雪量の経年変化 平年値:20.7 日

平年値:26.3 日

平年値:7.7 日

平年値:119cm

平年値:18cm

長期変化傾向:-11(cm/50 年)

76

Page 10: 第2節 北陸地方と各県の気候変化 北陸地方の年、季 …...1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(

グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

(3) 上越市

① 高田特別地域気象観測所(上越市)の

平均気温の長期変化

高田特別地域気象観測所で観測された年平均

気温の経年変化を図 2.2.20 に、季節ごとの平均気

温の経年変化を図 2.2.21 に示す(統計期間:1922~2018 年)。

年、季節ごとの平均気温の経年変化にはいずれ

も上昇傾向が現れており、春の上昇幅が他の季節

に比べて大きい。

② 高田特別地域気象観測所(上越市)の

降水量の長期変化

高田特別地域気象観測所で観測された年降水

量の経年変化を図 2.2.22 に示す(統計期間:1923~2018 年)。

年降水量には減少傾向が現れている。

1600

1800

2000

2200

2400

2600

2800

3000

3200

3400

3600

3800

4000

4200

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010

降水

量(m

m)

高田の年降水量

トレンド=-318.9 (mm/100年)

-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.03.54.04.55.05.56.06.57.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

高田の冬平均気温

トレンド=1.4 (℃/100年)

12.012.513.013.514.014.515.015.516.016.517.017.518.018.519.019.520.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

高田の秋平均気温

トレンド=1.4 (℃/100年)

20.020.521.021.522.022.523.023.524.024.525.025.526.026.527.027.528.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

高田の夏平均気温

トレンド=1.0 (℃/100年)

7.07.58.08.59.09.5

10.010.511.011.512.012.513.013.514.014.515.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

高田の春平均気温

トレンド=2.4 (℃/100年)

10.010.511.011.512.012.513.013.514.014.515.015.516.016.517.017.518.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

高田の年平均気温

トレンド=1.6 (℃/100年)

図 2.2.21 高田特別地域気象観測所の季節ごとの平均気温の経年変化

図 2.2.20 高田特別地域気象観測所の年平均気温の経年変化

春(3~5 月)

秋(9~11 月) 冬(12~2 月)

夏(6~8 月)

図2.2.22 高田特別地域気象観測所の年降水量の経年変化

平年値:11.1℃

長期変化傾向:+1.4(℃/100 年)

長期変化傾向:+1.6(℃/100 年)

平年値:2755.3mm 平年値:13.6℃

平年値:3.3℃ 平年値:16.1℃

平年値:23.8℃

長期変化傾向:+1.4(℃/100 年)

長期変化傾向:+2.4(℃/100 年) 長期変化傾向:+1.0(℃/100 年)

長期変化傾向:-319(mm/100 年)

77

Page 11: 第2節 北陸地方と各県の気候変化 北陸地方の年、季 …...1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(

グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

③ 高田特別地域気象観測所(上越市)の

真夏日、熱帯夜、冬日の日数の長期変化

高田特別地域気象観測所で観測された真夏日、

熱帯夜、冬日の年間日数の経年変化を、図 2.2.23~図 2.2.25 に示す(統計期間:1923~2018 年)。

真夏日日数には変化傾向は確認できないが、熱

帯夜日数には増加傾向が、冬日日数には減少傾向

が現れている。

④ 高田特別地域気象観測所(上越市)の

降雪量と最深積雪の長期変化

高田特別地域気象観測所で観測された年降雪

量と年最深積雪の経年変化を、図 2.2.26 と図

2.2.27 に示す(統計期間:降雪量 1954~2018 年、

最深積雪 1962~2018 年)。降雪量は 2005 年に観

測方法を変更しており、長期変化傾向は算出して

いない。なお、平年値は観測方法変更後の値とな

るように補正を行っている。 観測方法変更前までの年降雪量には変化傾向

は確認できなかった。年最深積雪には減少傾向が

現れている。

0

50

100

150

200

250

300

350

400

1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

積雪

深(cm

高田の年最深積雪

トレンド-14.0 cm/10年

100 200 300 400 500 600 700 800 900

1000 1100 1200 1300 1400 1500 1600

1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

降雪

の深

さ(cm

高田の年降雪量

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

高田の年間冬日日数

トレンド-3.8 日/10年

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

高田の年間熱帯夜日数

トレンド0.3 日/10年

10

15

20

25

30

35

40

45

50

55

60

65

70

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

高田の年間真夏日日数

図 2.2.23 高田特別地域気象観測所の真夏日日数の経年変化

図 2.2.25 高田特別地域気象観測所の冬日日数の経年変化

図2.2.24 高田特別地域気象観測所の熱帯夜日数の経年変化 図 2.2.27 高田特別地域気象観測所の年最深積雪の経年変化

図 2.2.26 高田特別地域気象観測所の年降雪量の経年変化

長期変化傾向:-38(日/100 年)

平年値:42.6 日

平年値:56.2 日

平年値:3.4 日

平年値:635cm

平年値:122cm

長期変化傾向:+3(日/100 年) 長期変化傾向:-70(cm/50 年)

78

Page 12: 第2節 北陸地方と各県の気候変化 北陸地方の年、季 …...1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(

グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

2.2.4 新潟県の気候変化の将来の見通し

新潟県内平均による平均気温、日最高気温、日

最低気温の現在気候(1980~1999 年)と将来気候

(2076~2095 年)の差の予測を、図 2.2.28~図

2.2.30 に示す。平均気温は約 4℃上昇すると予測

され、季節別には秋と冬に上昇幅が大きい傾向が

みられる。日最高気温と日最低気温でも、秋と冬

に上昇幅が大きい傾向がみられる。

新潟市における階級別日数の将来変化量の予

測を図 2.2.31 に示す。現在ほとんどみられていな

い猛暑日が年間約 30 日増加し、真夏日、夏日、熱

帯夜も増加、冬日は減少すると予測されている。

新潟県内平均における 1 時間降水量 50mm 以上の

発生回数と無降水日数の将来気候における変化

の予測を、図 2.2.32 と図 2.2.33 に示す。どちら

も年間の回数や日数は、将来気候において増加す

ると予測されている。

図 2.2.28 新潟県の平均気温の将来気候における変化

図 2.2.30 新潟県の日最低気温の将来気候における変化

図 2.2.29 新潟県の日最高気温の将来気候における変化

図 2.2.33 新潟県の無降水日数の将来気候における変化

図 2.2.32 新潟県の 1時間降水量 50mm以上回数の将来気候における変化

図 2.2.31 新潟市の階級別日数の将来気候における変化

79

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

2.3 富山県

2.3.1 富山県の地勢

富山県は本州中部の日本海側に位置しており、

東は新潟県と長野県、南は岐阜県、西は石川県に

隣接している、東西約 90km、南北約 76km、総面

積は 4,248km2(全国第 33 位)の県である。東に

3,000m 級の立山連峰を擁する飛騨山脈(北アルプ

ス)、南に飛騨高地、西は両白りょうはく

山地に囲まれ、各

山地を源にしている黒部川、常じょう

願がん

寺じ

川、神通じんづう

川、

庄川、小矢部川等の急流で大きな河川がほぼ南北

に流れ、富山湾に注いでいる。これらの河川の扇

状地として発達した富山平野は、県中央部の呉羽く れ は

丘陵によって二分され、東側が呉東ご と う

、西側が呉西ご せ い

と呼ばれている。

2.3.2 富山県の気候

富山県の気候は典型的な日本海岸気候区に分

類され、比較的温暖な対馬海流の影響もあり、初

夏から秋にかけての降雨や、冬の冷たい季節風が

暖かい海上を吹走することによる降雪が現れて

いるなど、降水量の多い地域である。 梅雨期、前半は比較的穏やかな天気が続くが、

後半に入ると梅雨前線が北上して大雨に見舞わ

れることが多くなる。特に、一度日本海に北上し

た前線がゆっくり南下する際の大雨による被害

は大きい。また、台風による災害は山岳等の影響

で比較的少ないが、台風が日本海を通過する際に

は、南風が強まることによる顕著なフェーン現象

が現れている。

冬季、上空に強い寒気が流れ込むと降雪は強ま

り、たびたび大雪に見舞われる。特に、山間部は

豪雪地帯で、立山から黒部に通じるルートは雪に

閉ざされる。このルートが除雪されるのが春の風

物詩となっている。 また、山間部の積雪地帯で冷やされた空気が流

出することにより、冬季でも南よりの風が現れて

いるといった特徴がある。海上では、強い季節風

の影響で波の高い日が続く。特に発達した低気圧

が北海道の東海上で停滞するとき、日本海北部で

発生した風浪がうねりとなって富山湾に侵入し、

富山湾特有の海底地形の影響で「寄り回り波」と

呼ばれる高波となって沿岸に打ち寄せる。この高

波は低気圧が日本海を通り過ぎ、風や波が静まっ

た後に来襲するため、沿岸の人々から恐れられて

いる。また、冷たい季節風の影響で、「鰤ぶり

起こし」

と呼ばれる雷が発生し、上向きに放電し水平に広

がる様子が現れている。落雷による被害も少なく

ないが、鰤起こしの到来とともに富山湾の漁港が

賑わい始める。山の雪解けが進む 4 月~5 月頃、

富山湾の下層大気が冷やされることで逆転層が

形成され、春の風物詩でもある「春の蜃気楼」が

現れていることがある。

80

Page 14: 第2節 北陸地方と各県の気候変化 北陸地方の年、季 …...1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(

グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

2.3.3 富山県の長期変化

(1) 富山市

① 富山地方気象台(富山市)の

平均気温の長期変化

富山地方気象台で観測された年平均気温の経

年変化を図 2.3.1 に、季節ごとの平均気温の経年

変化を図 2.3.2 に示す(統計期間:1939~2018 年)。

年、季節ごとの平均気温の経年変化にはいずれ

も上昇傾向が現れており、春の上昇幅が他の季節

に比べて大きい。

② 富山地方気象台(富山市)の

降水量の長期変化

富山地方気象台で観測された年降水量の経年

変化を図 2.3.3 に示す(統計期間:1939~2018 年)。

年降水量には変化傾向は確認できない。

-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.03.54.04.55.05.56.06.57.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

富山の冬平均気温

トレンド=1.8 (℃/100年)

12.012.513.013.514.014.515.015.516.016.517.017.518.018.519.019.520.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

富山の秋平均気温

トレンド=2.2 (℃/100年)

20.020.521.021.522.022.523.023.524.024.525.025.526.026.527.027.528.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

富山の夏平均気温

トレンド=1.9 (℃/100年)

7.07.58.08.59.09.5

10.010.511.011.512.012.513.013.514.014.515.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

富山の春平均気温

トレンド=2.8 (℃/100年)

1400

1600

1800

2000

2200

2400

2600

2800

3000

3200

3400

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

降水

量(m

m)

富山の年降水量

10.010.511.011.512.012.513.013.514.014.515.015.516.016.517.017.518.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

富山の年平均気温

トレンド=2.2 (℃/100年)

平年値:14.1℃

図 2.3.2 富山地方気象台の季節ごとの平均気温の経年変化

図 2.3.3 富山地方気象台の年降水量の経年変化 図 2.3.1 富山地方気象台の年平均気温の経年変化

春(3~5 月) 夏(6~8 月)

秋(9~11 月) 冬(12~2 月)

平年値:2300.0mm

平年値:11.8℃

平年値:16.5℃ 平年値:3.7℃

長期変化傾向:+2.2(℃/100 年)

長期変化傾向:+2.8(℃/100 年) 長期変化傾向:+1.9(℃/100 年)

平年値:24.1℃

長期変化傾向:+2.2(℃/100 年) 長期変化傾向:+1.8(℃/100 年)

81

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

③ 富山地方気象台(富山市)の

真夏日、熱帯夜、冬日の日数の長期変化

富山地方気象台で観測された真夏日、熱帯夜、

冬日の年間日数の経年変化を、図 2.3.4~図 2.3.6に示す(統計期間:1939~2018 年)。

真夏日と熱帯夜の日数には増加傾向が、冬日日

数には減少傾向が現れている。

④ 富山地方気象台(富山市)の

降雪量と最深積雪の長期変化

富山地方気象台で観測された年降雪量と年最

深積雪の経年変化を、図 2.3.7 と図 2.3.8 に示す

(統計期間:降雪量 1954~2018 年、最深積雪 1962~2018 年)。降雪量は 2005 年に観測方法を変更

しており、長期変化傾向は算出していない。なお、

平年値は観測方法変更後の値となるように補正

を行っている。

観測方法変更前までの年降雪量には変化傾向

は確認できなかった。年最深積雪にも変化傾向は

確認できない。

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

積雪

深(cm

富山の年最深積雪

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

富山の年間冬日日数

トレンド-3.7 日/10年

0 2 4 6 8

10 12 14 16 18 20 22 24 26 28

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

富山の年間熱帯夜日数

トレンド1.0 日/10年

50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

降雪

の深

さ(cm

富山の年降雪量

10

15

20

25

30

35

40

45

50

55

60

65

70

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

富山の年間真夏日日数

トレンド1.6 日/10年

図 2.3.4 富山地方気象台の真夏日日数の経年変化

図 2.3.5 富山地方気象台の熱帯夜日数の経年変化

図 2.3.6 富山地方気象台の冬日日数の経年変化

平年値:40.3 日 図 2.3.7 富山地方気象台の年降雪量の経年変化

平年値:44.0 日

長期変化傾向:+5(日/50 年)

平年値:6.2 日

長期変化傾向:-19(日/50 年)

平年値:383cm

平年値:62cm

図 2.3.8 富山地方気象台の年最深積雪の経年変化

長期変化傾向:+8(日/50 年)

82

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

55

1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日)

富山の年間雷日数

トレンド2.6 日/10年

⑤ 富山地方気象台(富山市)の

さくらの開花日とかえでの紅葉日の長期変化

富山地方気象台の観測によるさくらの開花日

とかえでの紅葉日の経年変化を、図 2.3.9 と図

2.3.10 に示す(統計期間:1953~2018 年)。

さくらの開花は早まる傾向が現れており、50 年

あたり約 7 日早くなっている。かえでの紅葉は遅

れる傾向が現れており、50 年あたり約 13 日遅く

なっている。

⑥ 富山地方気象台(富山市)の

雷日数の長期変化

富山地方気象台で観測された年間の雷の観測

日数の経年変化を図 2.3.11 に示す(統計期間:

1939~2018 年)。

年間の雷日数には増加傾向が現れており、50 年

あたり約 13 日増加している。なお、富山地方気

象台では雷の年間観測日数の約 3割を冬季に観測

している。

図 2.3.9 富山地方気象台のさくらの開花日の経年変化

平年値:4 月 5 日

平年値:11 月 20 日

図2.3.10 富山地方気象台のかえでの紅葉日の経年変化

図 2.3.11 富山地方気象台の年間雷観測日数の経年変化

長期変化傾向:+13(日/50 年) 長期変化傾向:-7(日/50 年)

長期変化傾向:+13(日/50 年)

83

Page 17: 第2節 北陸地方と各県の気候変化 北陸地方の年、季 …...1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(

グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

(2) 高岡市

① 伏木特別地域気象観測所(高岡市)の

平均気温の長期変化

伏木特別地域気象観測所で観測された年平均

気温の経年変化を図 2.3.12 に、季節ごとの平均気

温の経年変化を図 2.3.13 に示す(統計期間:1886~2018 年)。

年、季節ごとの平均気温の経年変化にはいずれ

も上昇傾向が現れている。

② 伏木特別地域気象観測所(高岡市)の

降水量の長期変化

伏木特別地域気象観測所で観測された年降水

量の経年変化を図 2.3.14 に示す(統計期間:1886~2018 年)。

年降水量には変化傾向は確認できない。

-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.03.54.04.55.05.56.06.57.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

伏木の冬平均気温

トレンド=0.8 (℃/100年)

12.012.513.013.514.014.515.015.516.016.517.017.518.018.519.019.520.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

伏木の秋平均気温

トレンド=0.9 (℃/100年)

20.020.521.021.522.022.523.023.524.024.525.025.526.026.527.027.528.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

伏木の夏平均気温

トレンド=0.9 (℃/100年)

7.07.58.08.59.09.5

10.010.511.011.512.012.513.013.514.014.515.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

伏木の春平均気温

トレンド=1.4 (℃/100年)

10.010.511.011.512.012.513.013.514.014.515.015.516.016.517.017.518.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

伏木の年平均気温

トレンド=1.0 (℃/100年)

1400

1600

1800

2000

2200

2400

2600

2800

3000

3200

3400

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010

降水

量(m

m)

伏木の年降水量

長期変化傾向:+1.0(℃/100 年)

平年値:2226.0mm

平年値:3.8℃

平年値:23.9℃

長期変化傾向:+0.9(℃/100 年)

長期変化傾向:+1.4(℃/100 年) 長期変化傾向:+0.9(℃/100 年)

図 2.3.13 伏木特別地域気象観測所の季節ごとの平均気温の経年変化

長期変化傾向:+0.8(℃/100 年)

図 2.3.12 伏木特別地域気象観測所の年平均気温の経年変化

春(3~5 月)

秋(9~11 月) 冬(12~2 月)

夏(6~8 月)

図 2.3.14 伏木特別地域気象観測所の年降水量の経年変化 平年値:13.9℃

平年値:16.6℃

平年値:11.4℃

84

Page 18: 第2節 北陸地方と各県の気候変化 北陸地方の年、季 …...1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(

グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

③ 伏木特別地域気象観測所(高岡市)の

真夏日、熱帯夜、冬日の日数の長期変化

伏木特別地域気象観測所で観測された真夏日、

熱帯夜、冬日の年間日数の経年変化を、図 2.3.15~図 2.3.17 に示す(統計期間:1888~2018 年)。

真夏日と熱帯夜の日数には増加傾向が現れて

おり、冬日日数には減少傾向が現れている。

④ 伏木特別地域気象観測所(高岡市)の

降雪量と最深積雪の長期変化

伏木特別地域気象観測所で観測された年降雪

量と年最深積雪の経年変化を、図 2.3.18 と図

2.3.19 に示す(統計期間:降雪量 1954~2018 年、

最深積雪 1962~2018 年)。降雪量は 1998 年に観

測方法を変更しており、長期変化傾向は算出して

いない。なお、平年値は観測方法変更後の値とな

るように補正を行っている。 観測方法変更前までの年降雪量には減少傾向

が現れていた。年最深積雪には変化傾向は確認で

きない。

50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

降雪

の深

さ(cm

伏木の年降雪量

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

220

240

1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

積雪

深(cm

伏木の年最深積雪

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

伏木の年間冬日日数

トレンド-1.5 日/10年

0

5

10

15

20

25

30

35

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

伏木の年間熱帯夜日数

トレンド0.9 日/10年

5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

伏木の年間真夏日日数

トレンド0.8 日/10年

平年値:36.0 日

平年値:8.1 日

平年値:341cm

平年値:59cm

長期変化傾向:+8(日/100 年)

長期変化傾向:+9(日/100 年)

長期変化傾向:-15(日/100 年)

図 2.3.15 伏木特別地域気象観測所の真夏日日数の経年変化

図 2.3.17 伏木特別地域気象観測所の冬日日数の経年変化

図 2.3.16 伏木特別地域気象観測所の熱帯夜日数の経年変化

平年値:42.2 日

図 2.3.19 伏木特別地域気象観測所の年最深積雪の経年変化

図 2.3.18 伏木特別地域気象観測所の年降雪量の経年変化

85

Page 19: 第2節 北陸地方と各県の気候変化 北陸地方の年、季 …...1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(

グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

2.3.4 富山県の気候変化の将来の見通し

富山県内平均による平均気温、日最高気温、日

最低気温の現在気候(1980~1999 年)と将来気候

(2076~2095 年)の差の予測を、図 2.3.20~図

2.3.22 に示す。平均気温は約 5℃上昇すると予測

され、季節別には冬に上昇幅が大きい傾向がみら

れる。日最高気温は冬に、日最低気温は秋と冬に

上昇幅が大きい傾向がみられる。 富山市における階級別日数の将来変化量の予

測を図 2.3.23 に示す。現在ほとんどみられていな

い猛暑日が年間約 40 日増加すし、真夏日、夏日、

熱帯夜も増加、冬日は減少すると予測されている。

富山県内平均における 1 時間降水量 50mm 以上

の発生回数と無降水日数の将来気候における変

化の予測を、図 2.3.24 と図 2.3.25 に示す。どち

らも年間の回数や日数は、将来気候において増加

すると予測されている。

図 2.3.20 富山県の平均気温の将来気候における変化

図 2.3.22 富山県の日最低気温の将来気候における変化

図 2.3.21 富山県の日最高気温の将来気候における変化

図 2.3.25 富山県の無降水日数の将来気候における変化

図 2.3.24 富山県の 1時間降水量 50mm以上回数の将来気候における変化

図 2.3.23 富山市の階級別日数の将来気候における変化

86

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

2.4 石川県

2.4.1 石川県の地勢

石川県は、東は宝達ほうだつ

丘陵により富山県に、南は

白山、大日山の両白りょうはく

山地が岐阜及び福井県と接し、

北部は能登半島が日本海側に大きく突き出して

おり、低標高の小起伏山地と丘陵地とで形成され

ている。県の面積は 4,186km2(全国第 35 位)で、

森林は 69%、農地は 12%を占めている。 地形的特徴は、東西の延長距離が 99.9km、南北

の延長距離は 198.5km もあり、北東から南西方向

に細長く、海岸線の総延長は 581.5km に及んでい

る。 能登地方は、おおむね標高 300m 以下の低山地

と丘陵地が大部分を占めている。日本海に面した

海岸は外浦そとうら

と呼ばれる。外浦は各所に海岸段丘が

発達し、波浪浸食が著しい。もう一方の富山湾に

面した海岸は内浦うちうら

と呼ばれる。内浦は沈降性の入

り組んだなだらかな海岸線が続き、外浦とは対照

的な海岸地形が現れている。 加賀地方は、白山(標高 2,702m)を最高峰とする

山岳地帯と山地帯が発達し、そこから流れ出る河

川の浸食、堆積によって成立した沖積平野が広が

っている。手取て ど り

川や犀さい

川、浅野川流域には典型的

な河岸段丘も現れている。海岸部は南部を除いて、

単調な砂丘海岸が連なり、その規模は日本有数の

ものとなっている。加えて白山を初め、主として

新しい地質時代の火山活動の影響を受け、山系は

一層複雑なものとなっている。 2.4.2 石川県の気候

石川県は、冬季に晴れる日が少なくて降水量が

多い、日本海岸気候区に属する。大陸からの冷た

い季節風の影響を受けて気温が低く経過し、暖か

い日本海から熱と大量の水蒸気を補給されて生

じる雪雲が流れ込むことで雪の降る日が多くな

る。 能登地方と加賀地方の平野部、山沿い山間部で

気候の違いが比較的明瞭で、能登地方では日本海

に大きく突き出していることから,寒暖の季節風

の影響を受けやすく、季節の移り変わりが比較的

はっきりしている。 加賀地方の平野部は比較的温和な気候である

が、冬季は北陸地方特有のしぐれ現象で天気はぐ

ずつく日が多い。ただ、他の北陸地方の都市と比

べると降雪量はやや少ない。 加賀地方の山沿いや山間部は海上から流れ込

む雪雲が白山山地にぶつかって多くの雪を降ら

せる。降雪量は平野部の 2~4 倍にもなり、白峰

では最深積雪 480cm の記録が残っている。 冬季は暖かい日本海と冷たい季節風の影響で

大気の状態が不安定となり、雷は冬季に多い。

87

Page 21: 第2節 北陸地方と各県の気候変化 北陸地方の年、季 …...1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(

グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

2.4.3 石川県の長期変化

(1) 金沢市

① 金沢地方気象台(金沢市)の

平均気温の長期変化

金沢地方気象台で観測された年平均気温の経

年変化を図 2.4.1 に、季節ごとの平均気温の経年

変化を図 2.4.2 に示す(統計期間:1886~2018 年)。

金沢地方気象台は 1991 年 10 月に観測場所を移

転しており、図中の移転前の値と平年値は補正を

行っている。

年、季節ごとの平均気温の経年変化にはいずれ

も上昇傾向が現れており、春の上昇幅が他の季節

に比べて大きい。

② 金沢地方気象台(金沢市)の

降水量の長期変化

金沢地方気象台で観測された年降水量の経年

変化を図 2.4.3 に示す(統計期間:1883~2018 年)。

年降水量には変化傾向は確認できない。

10.010.511.011.512.012.513.013.514.014.515.015.516.016.517.017.518.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

金沢の年平均気温

トレンド=1.6 (℃/100年)

0.00.51.01.52.02.53.03.54.04.55.05.56.06.57.07.58.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

金沢の冬平均気温

トレンド=1.3 (℃/100年)

12.012.513.013.514.014.515.015.516.016.517.017.518.018.519.019.520.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

金沢の秋平均気温

トレンド=1.6 (℃/100年)

20.020.521.021.522.022.523.023.524.024.525.025.526.026.527.027.528.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

金沢の夏平均気温

トレンド=1.7 (℃/100年)

7.07.58.08.59.09.5

10.010.511.011.512.012.513.013.514.014.515.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

金沢の春平均気温

トレンド=2.0 (℃/100年)

長期変化傾向:+1.6(℃/100 年)

長期変化傾向:+2.0(℃/100 年) 長期変化傾向:+1.7(℃/100 年)

平年値:24.5℃

長期変化傾向:+1.6(℃/100 年) 長期変化傾向:+1.3(℃/100 年)

1400

1600

1800

2000

2200

2400

2600

2800

3000

3200

3400

3600

3800

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

降水

量(m

m)

金沢の年降水量

平年値:14.6℃

図 2.4.2 金沢地方気象台の季節ごとの平均気温の経年変化

図 2.4.3 金沢地方気象台の年降水量の経年変化 図 2.4.1 金沢地方気象台の年平均気温の経年変化

春(3~5 月) 夏(6~8 月)

秋(9~11 月) 冬(12~2 月)

平年値:2398.9mm

平年値:12.2℃

平年値:17.1℃ 平年値:4.8℃

88

Page 22: 第2節 北陸地方と各県の気候変化 北陸地方の年、季 …...1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(

グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

10

15

20

25

30

35

40

45

50

55

60

65

70

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数(日)

金沢の年間真夏日日数

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

金沢の年間熱帯夜日数

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数(日)

金沢の年間冬日日数

③ 金沢地方気象台(金沢市)の

真夏日、熱帯夜、冬日の日数の長期変化

金沢地方気象台で観測された真夏日、熱帯夜、

冬日の年間日数の経年変化を、図 2.4.4~図 2.4.6に示す(統計期間:1882~2018 年)。1991 年に観

測場所を移転したため、長期変化傾向は算出して

いない。 1991 年 10 月の移転前までの真夏日と熱帯夜の

日数には増加傾向が、冬日日数には減少傾向が現

れていた。

④ 金沢地方気象台(金沢市)の

降雪量と最深積雪の長期変化

金沢地方気象台で観測された年降雪量と年最

深積雪の経年変化を、図 2.4.7 と図 2.4.8 に示す

(統計期間:降雪量 1954~2018 年、最深積雪 1962~2018 年)。降雪量は 2005 年に観測方法を変更

しており、長期変化傾向は算出していない。なお、

平年値は観測方法変更後の値となるように補正

を行っている。

観測方法変更前までの年降雪量には減少傾向

が現れていた。年最深積雪にも減少傾向が現れて

いる。

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

220

1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

積雪深(cm)

金沢の年最深積雪

トレ-9

0 50

100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700

1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

降雪の深さ(cm)

金沢の年降雪量

平年値:41.1 日

平年値:13.5 日

平年値:26.2 日

平年値:281cm

長期変化傾向:-46(cm/50 年)

平年値:44cm

図 2.4.4 金沢地方気象台の真夏日日数の経年変化

図 2.4.5 金沢地方気象台の熱帯夜日数の経年変化

図 2.4.6 金沢地方気象台の冬日日数の経年変化

図 2.4.7 金沢地方気象台の年降雪量の経年変化

図 2.4.8 金沢地方気象台の年最深積雪の経年変化

89

Page 23: 第2節 北陸地方と各県の気候変化 北陸地方の年、季 …...1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(

グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75

1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日)

金沢の年間雷日数

トレンド4.0 日/10年

⑤ 金沢地方気象台(金沢市)の

さくらの開花日とかえでの紅葉日の長期変化

金沢地方気象台の観測によるさくらの開花日

とかえでの紅葉日の経年変化を、図 2.4.9 と図

2.4.10 に示す(統計期間:1953~2018 年)。

さくらの開花は早まる傾向が現れており、50 年あたり約 3 日早くなっている。かえでの紅葉は

遅れる傾向が現れており、50 年あたり約 17日遅

なっている。

⑥ 金沢地方気象台(金沢市)の

雷日数の長期変化

金沢地方気象台で観測された年間の雷の観測

日数の経年変化を図 2.4.11 に示す(統計期間:

1931~2018 年)。

年間の雷日数には増加傾向が現れており、50 年

あたり約 20 日増加している。なお、金沢地方気

象台では雷の年間観測日数の約 5割を冬季に観測

している。

図 2.4.9 金沢地方気象台のさくらの開花日の経年変化

平年値:4 月 4 日

平年値:11 月 21 日

図 2.4.10 金沢地方気象台のかえでの紅葉日の経年変化

図 2.4.11 金沢地方気象台の年間雷観測日数の経年変化

長期変化傾向:-3(日/50 年)

長期変化傾向:+17(日/50 年)

長期変化傾向:+20(日/50 年)

90

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

(2) 輪島市

① 輪島特別地域気象観測所(輪島市)の

平均気温の長期変化

輪島特別地域気象観測所で観測された年平均

気温の経年変化を図 2.4.12 に、季節ごとの平均気

温の経年変化を図 2.4.13 に示す(統計期間:1930~2018 年)。

年、季節ごとの平均気温の経年変化にはいずれ

も上昇傾向が現れており、春の上昇幅が他の季節

に比べて大きい。

② 輪島特別地域気象観測所(輪島市)の

降水量の長期変化

輪島特別地域気象観測所で観測された年降水

量の経年変化を図 2.4.14 に示す(統計期間:1930~2018 年)。

年降水量には変化傾向は確認できない。

1400

1600

1800

2000

2200

2400

2600

2800

3000

3200

3400

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

降水

量(m

m)

輪島の年降水量

0.00.51.01.52.02.53.03.54.04.55.05.56.06.57.07.58.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

輪島の冬平均気温

トレンド=1.2 (℃/100年)

12.012.513.013.514.014.515.015.516.016.517.017.518.018.519.019.520.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

輪島の秋平均気温

トレンド=1.6 (℃/100年)

19.019.520.020.521.021.522.022.523.023.524.024.525.025.526.026.527.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

輪島の夏平均気温

トレンド=1.3 (℃/100年)

7.07.58.08.59.09.5

10.010.511.011.512.012.513.013.514.014.515.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

輪島の春平均気温

トレンド=2.0 (℃/100年)

9.09.5

10.010.511.011.512.012.513.013.514.014.515.015.516.016.517.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

輪島の年平均気温

トレンド=1.6 (℃/100年)長期変化傾向:+1.6(℃/100 年)

平年値:2100.4mm

平年値:4.0℃ 平年値:16.0℃

平年値:23.1℃

長期変化傾向:+1.6(℃/100 年)

長期変化傾向:+2.0(℃/100 年) 長期変化傾向:+1.3(℃/100 年)

長期変化傾向:+1.2(℃/100 年)

図 2.4.13 輪島特別地域気象観測所の季節ごとの平均気温の経年変化

図 2.4.12 輪島特別地域気象観測所の年平均気温の経年変化

春(3~5 月)

秋(9~11 月) 冬(12~2 月)

夏(6~8 月)

図 2.4.14 輪島特別地域気象観測所の年降水量の経年変化 平年値:13.5℃

平年値:10.8℃

91

Page 25: 第2節 北陸地方と各県の気候変化 北陸地方の年、季 …...1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(

グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

③ 輪島特別地域気象観測所(輪島市)の

真夏日、熱帯夜、冬日の日数の長期変化

輪島特別地域気象観測所で観測された真夏日、

熱帯夜、冬日の年間日数の経年変化を、図 2.4.15~図 2.4.17 に示す(統計期間:1930~2018 年)。

真夏日日数には変化傾向は確認できないが、熱

帯夜日数には増加傾向が、冬日日数には減少傾向

が現れている。

④ 輪島特別地域気象観測所(輪島市)の

降雪量と最深積雪の長期変化

輪島特別地域気象観測所で観測された年降雪

量と年最深積雪の経年変化を、図 2.4.18 と図

2.4.19 に示す(統計期間:降雪量 1954~2018 年、

最深積雪 1962~2018 年)。降雪量は 2005 年に観

測方法を変更しており、長期変化傾向は算出して

いない。なお、平年値は観測方法変更後の値とな

るように補正を行っている。 観測方法変更前までの年降雪量には変化傾向

は確認できなかった。年最深積雪にも変化傾向は

確認できない。

25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95

100

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

輪島の年間冬日日数

トレンド-3.0 日/10年

図 2.4.17 輪島特別地域気象観測所の冬日日数の経年変化

0 5

10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80

1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

積雪

深(cm

輪島の年最深積雪

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

55

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

輪島の年間真夏日日数

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

降雪

の深

さ(cm

輪島の年降雪量

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

輪島の年間熱帯夜日数

トレンド0.5 日/10年

平年値:27.3 日

平年値:47.1 日

平年値:2.4 日

平年値:201cm

平年値:32cm

長期変化傾向:+5(日/100 年)

図2.4.15 輪島特別地域気象観測所の真夏日日数の経年変化

図2.4.16 輪島特別地域気象観測所の熱帯夜日数の経年変化 図 2.4.19 輪島特別地域気象観測所の年最深積雪の経年変化

図 2.4.18 輪島特別地域気象観測所の年降雪量の経年変化

長期変化傾向:-30(日/100 年)

92

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

2.4.4 石川県の気候変化の将来の見通し

石川県内平均による平均気温、日最高気温、日

最低気温の現在気候(1980~1999 年)と将来気候

(2076~2095 年)の差の予測を、図 2.4.20~図

2.4.22 に示す。平均気温は約 4℃上昇すると予測

され、季節別には冬に上昇幅が大きい傾向がみら

れる。日最高気温は冬に、日最低気温は秋と冬に

上昇幅が大きい傾向がみられる。

石川県内平均の階級別日数の将来変化量の予

測を図 2.4.23 に示す(ただし平年値は金沢)。現

在ほとんどみられていない猛暑日が年間約 20 日

増加し、真夏日、夏日、熱帯夜も増加、冬日は減

少すると予測されている。石川県内平均における

1 時間降水量 50mm 以上の発生回数と無降水日数

の将来気候における変化の予測を、図 2.4.24 と図

2.4.25 に示す。どちらも年間の回数や日数は、将

来気候において増加すると予測されている。

図 2.4.20 石川県の平均気温の将来気候における変化

図 2.4.22 石川県の日最低気温の将来気候における変化

図 2.4.21 石川県の日最高気温の将来気候における変化

図 2.4.25 石川県の無降水日数の将来気候における変化

図 2.4.24 石川県の 1時間降水量 50mm以上回数の将来気候における変化

図 2.4.23 石川県の階級別日数の将来気候における変化

93

Page 27: 第2節 北陸地方と各県の気候変化 北陸地方の年、季 …...1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(

グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

2.5 福井県

2.5.1 福井県の地勢

福井県は日本海に面しており、海岸線の長さは

北東から南西にかけて328kmに達している。また、

北は石川県、東から南にかけては岐阜県、滋賀県、

京都府に接し、総面積は 4,191km2(全国第 34 位)

である。

県中央部にある木の芽峠き の め と う げ

(標高 628m)及び山中

峠(標高 389m)の約 10kmにわたる山領を境として

嶺北地方と嶺南地方に分かれる。 嶺北地方は、九頭

く ず

竜りゅう

川、日野川、足羽あ す わ

川からの

堆積平野として発達した福井平野(三方を山で囲

まれる盆地状で湿田が多い)と、大野・勝山盆地、

及び九頭竜川中流河谷や丹生に う

山地、越前中央山地、

岐阜県境並びに石川県に連なる両白りょうはく

山地、加越か え つ

地等から成る。このうち両白山地が最も高峻で、

1,500m~2,000m 級の火山岳が並び、谷も深い。 嶺南地方は、変化に富むリアス式海岸が続き、

沈水から免れた山地と沈水してしまった入り江・

湾が交互に並ぶ形状を示し、各湾や入り江の奥に

は、沈水地を埋積した狭い堆積地が、敦賀、美方、

小浜の小平野を形づくっている。山地も 700~800m の定高性を形成している。海岸線は長いが嶺

南地方の地域面積は嶺北地方の約 3分の 1 と少な

い。

2.5.2 福井県の気候

福井県は、冬季に日照が少なく、降水量が多い

特徴を持つ日本海岸気候区に属する。冬季、大陸

から吹き出す冷たく乾燥した季節風が暖かい日

本海を渡る際、海面から熱と水蒸気を大量に補給

されてつぎつぎと雪雲が発生し、流入するためで

ある。特に嶺北地方の奥越では気温は低く、冬季

の降雪が多い特徴がある。 気象衛星画像で、朝鮮半島の東海上から若狭湾

付近にかけて、帯状に連なった背の高い雪雲をみ

ることがある。この雪雲が県内にかかると強い雪

を降らせ、平野部でも大雪となることがある。 嶺北地方の福井市(北緯 36 度 03.3 分)と、ほぼ

同じ緯度の太平洋側の東京(大手町(北緯 35 度

41.4 分))を比較すると、冬の違いが顕著で、1月

では平均気温で 2℃低く、日照時間は 35%と少な

く、降水量は約 5 倍と多い。一方、対馬暖流の影

響で海岸沿いは温暖で、真冬に咲く越前海岸の水

仙は全国的に有名で、房総半島、淡路島とともに

三大群生地に数えられる。 嶺南地方は、嶺北地方と比べると、雪雲の影響

を受けにくく、冬の降水量は少なめで、比較的温

暖な気候となっている。

94

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

10.010.511.011.512.012.513.013.514.014.515.015.516.016.517.017.518.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

福井の年平均気温

トレンド=1.5 (℃/100年)

8.08.59.09.5

10.010.511.011.512.012.513.013.514.014.515.015.516.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

福井の春平均気温

トレンド=1.6 (℃/100年)

20.020.521.021.522.022.523.023.524.024.525.025.526.026.527.027.528.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

福井の夏平均気温

トレンド=1.6 (℃/100年)

12.012.513.013.514.014.515.015.516.016.517.017.518.018.519.019.520.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

福井の秋平均気温

トレンド=1.8 (℃/100年)

-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.03.54.04.55.05.56.06.57.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

福井の冬平均気温

トレンド=1.0 (℃/100年)

1400

1600

1800

2000

2200

2400

2600

2800

3000

3200

3400

3600

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

降水

量(m

m)

福井の年降水量

2.5.3 福井県の長期変化

(1) 福井市

① 福井地方気象台(福井市)の

平均気温の長期変化

福井地方気象台で観測された年平均気温の経

年変化を図 2.5.1 に、季節ごとの平均気温の経年

変化を図 2.5.2 に示す(統計期間:1897~2018 年※

)。福井地方気象台は 1948 年 1 月に観測場所を移

転しており、図中の移転前の値は補正を行ってい

る。

年、季節ごとの平均気温の経年変化にはいずれ

も上昇傾向が現れており、秋の上昇幅が他の季節

に比べて大きい。

② 福井地方気象台(福井市)の

降水量の長期変化

福井地方気象台で観測された年降水量の経年

変化を、図 2.5.3 に示す(統計期間:1897~2018年※)。

年降水量には変化傾向は確認できない。

長期変化傾向:+1.5(℃/100 年)

長期変化傾向:+1.6(℃/100 年) 長期変化傾向:+1.6(℃/100 年)

平年値:24.8℃

長期変化傾向:+1.8(℃/100 年) 長期変化傾向:+1.0(℃/100 年)

平年値:14.5℃

図 2.5.2 福井地方気象台の季節ごとの平均気温の経年変化

図 2.5.3 福井地方気象台の年降水量の経年変化 図 2.5.1 福井地方気象台の年平均気温の経年変化

春(3~5 月) 夏(6~8 月)

秋(9~11 月) 冬(12~2 月)

平年値:2237.6mm

平年値:12.4℃

平年値:16.8℃ 平年値:4.1℃

※原簿消失により 1945 年に欠測となっている観測値がある。

95

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

福井の年間真夏日日数

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

550

600

650

1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

降雪

の深

さ(cm

福井の年降雪量

0

5

10

15

20

25

30

35

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

福井の年間熱帯夜日数

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

220

240

1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

積雪

深(cm

福井の年最深積雪

トレンド-6.6 cm/10年

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

福井の年間冬日日数

③ 福井地方気象台(福井市)の

真夏日、熱帯夜、冬日の日数の長期変化

福井地方気象台で観測された真夏日、熱帯夜、

冬日の年間日数の経年変化を、図 2.5.4~図 2.5.6に示す(統計期間:1897~2018 年※)。

1948 年 1 月の移転後については、真夏日と熱

帯夜の日数には増加傾向が、冬日日数には減少傾

向が現れている。

④ 福井地方気象台(福井市)の

降雪量と最深積雪の長期変化

福井地方気象台で観測された年降雪量と年最

深積雪の経年変化を、図 2.5.7 と図 2.5.8 に示す

(統計期間:降雪量 1954~2018 年、最深積雪 1962~2018 年)。降雪量は 2005 年に観測方法を変更

しており、長期変化傾向は算出していない。なお、

平年値は観測方法変更後の値となるように補正

を行っている。

観測方法変更前までの年降雪量には減少傾向

が現れていた。年最深積雪にも減少傾向が現れて

いる。

平年値:49.4 日

平年値:9.7 日

平年値:37.2 日

平年値:286cm

平年値:55cm

図 2.5.4 福井地方気象台の真夏日日数の経年変化

図 2.5.5 福井地方気象台の熱帯夜日数の経年変化

図 2.5.6 福井地方気象台の冬日日数の経年変化

図 2.5.7 福井地方気象台の年降雪量の経年変化

長期変化傾向:-33(cm/50 年)

※ 観測場所を移転したため、長期変化傾向は算出していない。

図 2.5.8 福井地方気象台の年最深積雪の経年変化

96

Page 30: 第2節 北陸地方と各県の気候変化 北陸地方の年、季 …...1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(

グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

0 5

10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70

1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日)

福井の年間雷日数

トレンド3.2 日/10年

⑤ 福井地方気象台(福井市)の

さくらの開花日とかえでの紅葉日の長期変化

福井地方気象台の観測によるさくらの開花日

とかえでの紅葉日の経年変化を、図 2.5.9 と図

2.5.10 に示す(統計期間:1953~2018 年)。

さくらの開花は早まる傾向が現れており、50 年

あたり約 5 日早くなっている。かえでの紅葉には

遅れる傾向が現れており、50 年あたり約 28 日遅

くなっている。

⑥ 福井地方気象台(福井市)の

雷日数の長期変化

福井地方気象台で観測された年間の雷の観測

日数の経年変化を図 2.5.11 に示す(統計期間:

1932~2018 年)。

年間の雷日数には増加傾向が現れており、50 年

あたり約 16 日増加している。なお、福井地方気

象台では雷の年間観測日数の約 4割を冬季に観測

している。

図 2.5.9 福井地方気象台のさくらの開花日の経年変化

平年値:11 月 22 日

図 2.5.10 福井地方気象台のかえでの紅葉日の経年変化

図 2.5.11 福井地方気象台の年間雷観測日数の経年変化

平年値:4 月 3 日

長期変化傾向:+28(日/50 年)

長期変化傾向:-5(日/50 年) 長期変化傾向:+16(日/50 年)

97

Page 31: 第2節 北陸地方と各県の気候変化 北陸地方の年、季 …...1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(

グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

11.011.512.012.513.013.514.014.515.015.516.016.517.017.518.018.519.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

敦賀の年平均気温

トレンド=1.6 (℃/100年)

1400

1600

1800

2000

2200

2400

2600

2800

3000

3200

3400

3600

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

降水

量(m

m)

敦賀の年降水量

8.08.59.09.5

10.010.511.011.512.012.513.013.514.014.515.015.516.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

敦賀の春平均気温

トレンド=1.9 (℃/100年)

20.020.521.021.522.022.523.023.524.024.525.025.526.026.527.027.528.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

敦賀の夏平均気温

トレンド=1.8 (℃/100年)

13.013.514.014.515.015.516.016.517.017.518.018.519.019.520.020.521.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

敦賀の秋平均気温

トレンド=1.7 (℃/100年)

1.01.52.02.53.03.54.04.55.05.56.06.57.07.58.08.59.0

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

気温

(℃

敦賀の冬平均気温

トレンド=1.0 (℃/100年)

(2) 敦賀市

① 敦賀特別地域気象観測所(敦賀市)の

平均気温の長期変化

敦賀特別地域気象観測所で観測された年平均

気温の経年変化を図 2.5.12 に、季節ごとの平均気

温の経年変化を図 2.5.13 に示す(統計期間:1898~2018 年)。

年、季節ごとの平均気温の経年変化にはいずれ

も上昇傾向が現れており、冬の上昇幅が他の季節

に比べて小さい。

② 敦賀特別地域気象観測所(敦賀市)の

降水量の長期変化

敦賀特別地域気象観測所で観測された年降水

量の経年変化を図 2.5.14 に示す(統計期間:1898~2018 年)。

年降水量には変化傾向は確認できない。

長期変化傾向:+1.6(℃/100 年)

平年値:2136.4mm 平年値:15.3℃

平年値:5.5℃ 平年値:17.8℃

平年値:25.0℃

長期変化傾向:+1.7(℃/100 年)

長期変化傾向:+1.8(℃/100 年)

長期変化傾向:+1.0(℃/100 年)

図 2.5.13 敦賀特別地域気象観測所の季節ごとの平均気温の経年変化

図 2.5.12 敦賀特別地域気象観測所の年平均気温の経年変化

春(3~5 月)

秋(9~11 月) 冬(12~2 月)

夏(6~8 月)

図2.5.14 敦賀特別地域気象観測所の年降水量の経年変化

平年値:12.9℃

長期変化傾向:+1.9(℃/100 年)

98

Page 32: 第2節 北陸地方と各県の気候変化 北陸地方の年、季 …...1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 1981-2010年平均からの差(

グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

敦賀の年間真夏日日数

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

敦賀の年間熱帯夜日数

ト2

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

220

240

1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

積雪

深(cm)

敦賀の年最深積雪

ト-8

0

10

20

30

40

50

60

70

80

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

日数

(日

敦賀の年間冬日日数

ト-

0 50

100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650

1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

降雪の深さ(cm)

敦賀の年降雪量

③ 敦賀特別地域気象観測所(敦賀市)の

真夏日、熱帯夜、冬日の日数の長期変化

敦賀特別地域気象観測所で観測された真夏日、

熱帯夜、冬日の年間日数の経年変化を、図 2.5.15~図 2.5.17 に示す(統計期間:1898~2018 年)。

真夏日日数には変化傾向は確認できないが、熱

帯夜日数には増加傾向が、冬日日数には減少傾向

が現れている。

④ 敦賀特別地域気象観測所(敦賀市)の

降雪量と最深積雪の長期変化

敦賀特別地域気象観測所で観測された年降雪

量と年最深積雪の経年変化を、図 2.5.18 と図

2.5.19 に示す(統計期間:降雪量 1954~2018 年

※、最深積雪 1962~2018 年※)。降雪量は 2005 年

に観測方法を変更しており、長期変化傾向は算出

していない。平年値は観測方法変更後の値となる

ように補正を行っている。 観測方法変更前までの年降雪量には減少傾向

が現れていた。年最深積雪にも減少傾向が現れて

いる。

平年値:45.6 日

平年値:16.8 日

平年値:20.9 日

平年値:224cm

平年値:50cm

長期変化傾向:+20(日/100 年)

長期変化傾向:-23(日/100 年)

図2.5.15 敦賀特別地域気象観測所の真夏日日数の経年変化

図 2.5.17 敦賀特別地域気象観測所の冬日日数の経年変化

図2.5.16 敦賀特別地域気象観測所の熱帯夜日数の経年変化 図 2.5.19 敦賀特別地域気象観測所の年最深積雪の経年変化

図 2.5.18 敦賀特別地域気象観測所の年降雪量の経年変化

※ 機器障害で欠測した 2007 年の観測値は除外した。

長期変化傾向:-41(cm/50 年)

99

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グラフの表記や用語の解説は本章序節と付録に記載した。

2.5.4 福井県の気候変化の将来の見通し

福井県内平均による平均気温、日最高気温、日

最低気温の現在気候(1980~1999 年)と将来気候

(2076~2095 年)の差の予測を、図 2.5.20~図

2.5.22 に示す。平均気温は約 4℃上昇すると予測

され、季節別には冬に上昇幅が大きい傾向がみら

れる。日最高気温は冬に、日最低気温は秋と冬に

上昇幅が大きい傾向がみられる。

福井市における階級別日数の将来変化量の予

測を図 2.5.23 に示す。現在ほとんどみられていな

い猛暑日が年間約 40 日増加し、真夏日、夏日、熱

帯夜も増加、冬日は減少すると予測されている。

福井県内平均による 1 時間降水量 50mm 以上の発

生回数と無降水日数の将来気候における変化の

予測を、図 2.5.24 と図 2.5.25 に示す。どちらも

年間の回数や日数は、将来気候において増加する

と予測されている。

図 2.5.20 福井県の平均気温の将来気候における変化

図 2.5.22 福井県の日最低気温の将来気候における変化

図 2.5.21 福井県の日最高気温の将来気候における変化

図 2.5.25 福井県の無降水日数の将来気候における変化

図 2.5.24 福井県の 1時間降水量 50mm以上回数の将来気候における変化

図 2.5.23 福井市の階級別日数の将来気候における変化

℃ 回

℃ 日

100

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【コラム】気象変動に対応した品種構成のための水稲晩生新品種「新之助」の開発

新潟県農業総合研究所作物研究センター

1.「コシヒカリ」作付集中によるリスク

新潟県は稲作に適した気候ですが、夏場にフェ

ーン現象等による過度の高温に見舞われること

が多くなってきました。稲はもともと東南アジア

由来の作物なので高温には比較的強いですが、開

花期(出穂期)から種子の成熟期に過度の高温に

遭遇すると、玄米の品質に大きなダメージを受け

ます。平成 22 年には 7~8 月に記録的な高温に見

舞われ、全国的に史上最低の 1 等米比率に落ち込

むなど、高温による悪影響が顕著に表れています。 「コシヒカリ」は高温にやや弱く、新潟県が最

も暑くなる 8 月上旬に出穂期を迎えるため、年に

より過度な高温による品質低下が生じます。しか

し、新潟県産「コシヒカリ」は市場評価が高いた

め、作付比率は約 70%と高く、作付集中による気

象災害のリスクが高いことが問題になっていま

す。 新潟県では高温登熟に対応するため、ほ場全体

を外気温より 2℃程度高温に保つことができる温

水かけ流しほ場(図 1)や人工気象室(図 2)を利

用して、高温耐性に優れた品種を積極的に選抜し

ています。また、早生から晩生までの幅広い熟期

の品種を開発し、バランスよく栽培してもらうこ

とで、作付集中による気象災害のリスクを分散す

ることを目指しています。

こうした選抜により、平成 12 年には「コシヒ

カリ」より早く収穫できる早生品種の「こしいぶ

き」を開発しました。「こしいぶき」は現在、新潟

県の作付面積の 2 割を担うほどになり、作期分散

に大きな成果をもたらしています。

2.高温耐性に優れる晩生新品種「新之助」の開発

さらに、新潟県では「コシヒカリ」より遅い時

期に収穫できる品種の開発を平成 20 年から本格

的に開始しました。約 20 万株の新品種候補をご

飯の食味と高温耐性で選抜し、「コシヒカリ」とは

異なる美味しさを持つ候補を絞り込んでいきま

した。こうして最終的に選ばれた候補が「新之助」

(図 3)と命名され、平成 29 年から本格的な生産

が開始されました。 「新之助」は開発途中の平成 22 年の猛暑でも

品質を落とすことがなく、優れた高温耐性を持つ

ことが確認されました。また、「コシヒカリ」に比

べ出穂期や成熟期が 1 週間程度遅いことから「コ

シヒカリ」との作期分散を図ることができ、一品

種への作付集中によるリスクを低減させること

が可能です。

3.今後の取り組み

「新之助」の開発により、新潟県では早生の「こ

しいぶき」、中生の「コシヒカリ」、晩生の「新之

助」の 3 品種が揃いました。今後もより高度な気

象変動に対応できる、高品質で良食味な品種の開

発に取り組んでいきます。

図 1 温水かけ流しほ場 図 2 人工気象室

図 3 「新之助」の標本と生育状況

101

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【コラム】佐渡真野湾における海水温と藻場の変動

新潟県水産海洋研究所

水深が浅く大気の影響を受けやすい浅海域は、

地球温暖化の影響を受けやすい場所と考えられ

ています。浅海域にはサンゴ礁や藻場などの水産

生物にとって重要な生息場所が多く分布してお

り、温暖化による悪影響が懸念されています。し

かしながら、このような温暖化による浅海域への

影響を明らかにするには長期的に蓄積されたデ

ータの活用が必要です。当研究所では漁業指導船

による海洋観測のほかに、試験用に汲み上げた海

水の温度を長期にわたり記録しています。例えば、

佐渡水産技術センターでは昭和 51 年から記録し

ており、現在 42 年分の真野湾浅海域における水

温データが蓄積されています。これらのデータは

浅海域における数少ない長期データとして重要

視されています。 図 1は真野湾における年平均海水温の変動を示

しています。海水温には変動がありますが、1985年から 2005 年にかけての緩やかな上昇と 2005年以降の急激な上昇が見て取れます。このような

海水温の変動は藻場にとってどのような影響を

与えているのでしょうか?

藻場の盛衰には様々な要因が影響しています

が、海藻を食べる植食者の活動が主な要因の一つ

として考えられています。主な植食者としてはウ

ニ類や(アイゴやイスズミなどの)魚類、巻貝類

が挙げられます。佐渡島ではウニ類も多少生息し

ていますが、現存量の多い巻貝類が一般的な植食

者です。巻貝類は変温動物であるため、水温が高

いほど活発に海藻類を食べると予想されます。そ

のため、温暖化による海水温の上昇は彼らの摂食

活動を活発化させ、藻場を減少させると考えられ

ます。図 2は真野湾の背せな

合ごう

地先における藻場面積

の推移を示しています。2001 年までと 2005 年以

降では調査手法が異なるので単純な比較は難し

いのですが、海水温が緩やかに上昇し始めた 1980

年代後半から 2000 年初頭にかけて大きく藻場面

積が減少しています。この減少には海水温の上昇

による植食者の活性化が部分的に影響している

と考えられます。

一方で、このような植食者の影響から藻場を守

るために該当海域では 2005 年から様々な取組を

行いました。残存している藻場を防除網で囲うこ

とで植食者に食べられないようにしたり、潜水に

よって直接植食者を取り除いたりしました。その

結果、海水温の上昇は続いていますが、徐々に藻

場の面積は広がり、現在では 40 年前の約半分に

まで回復しています。藻場回復の原因については

高水温による植食者の斃死などの影響も考えら

れていますが、当研究所による取組みも回復の要

因の一つであろうと考えられます。

もちろん、このまま海水温が上昇すれば、海藻

自体にも悪い影響が出る可能性もありますし、南

方系のアイゴやイスズミ等の植食魚が北上して

本県沿岸まで分布域を拡大し定着する可能性が

あります。人為的に海水温の上昇を制御すること

は不可能です。しかし、当研究所としては植食者

の影響を減らす技術開発や藻場自体の変化に対

応した操業方法を考え、漁業者のみなさんが安定

した海藻・貝類等の水揚げを確保できるようにし

たいと考えています。

図 1 真野湾における年平均水温の推移

ピンク色の矢印は水温の長期的な傾向を示す。

図 2 背せな

合ごう

地先における藻場面積の推移

破線は植食者対策を開始した年を示す。

データ出典

1978年~1995年:環境省基礎自然環境保全基礎調査 2001年:魚の森づくり事業

2005年以降:磯焼け前線調査

102