第2節 公共土木施設等の被害s39.6 新潟地震 *3,277 *10,966 *41,019 *10,661...

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第2章第2節(公共土木施設等の被害) 2-23 第2節 公共土木施設等の被害 1 被害の概要と特徴 (1) 人的・住家被害(数値は平成19年2月末日のもの) 平成 16 年は災害のあたり年であり、7月には三条市、見附市、中之島町など中越地方 に大きな被害をもたらした通称「7.13 水害」(新潟福島豪雨)が発生し、福井県や福島県 でも水害による大きな被害が出た。 また、日本に上陸した台風の数も10と異常に多く、台風 23 号が兵庫県などに大きな 被害をもたらした直後に、中越地震が発生した。 中越地震による被害は、新潟県内で死者67人、負傷者4,795人、避難者(ピーク 時)10万人余り、被害を受けた建物は住家が約12万棟、非住家が約4万棟の計16万 棟、上越新幹線が脱線、高速道路が不通になるなど甚大であった。 阪神・淡路大震災では、多くの人々が倒壊した家屋の下敷きになって死亡したが、中越 大震災では倒壊した住家は意外と少なかった。 地震発生当日から県内54市町村に災害救助法が適用され、自衛隊や消防など防災関係 機関による懸命の救助・救出活動が行われた。 なお、当県以外でも、長野県、群馬県、埼玉県で合わせて10人の負傷者が、群馬県、福 島県で合わせて1,056棟の住家の一部損壊被害が発生した。 ① 人的被害 表 2-2-1 自然災害に伴う県内の人的被害状況(平成 19 年 2 月 28 日現在) (単位:人) 発生年月 災害名 死者 行方不明 重傷 軽傷 合計 H16.10 新潟県中越大震災 67 0 635 4,160 4,846 S42.8 羽越水害 96 38 471 605 S36.9 第2室戸台風 36 0 2,310 2,346 S39.6 新潟地震 14 0 46 270 330 H16.7 7.13水害 15 0 2 80 97 【出典】「新潟県地域防災計画(資料編)(新潟県防災局HP)」 (参 考) 発生年月 災害名 死者 行方不明 重傷 軽傷 合計 H7.1 阪神・淡路大震災 6,433 3 10,683 33,109 43,792 H5.7 北海道南西沖地震 202 28 323 553 【出典】「阪神・淡路大震災について(第 106 報)(消防庁 平成 14 12 26 日)」 「平成 5 年北海道南西沖地震災害について(確定)(消防庁 平成 6 6 20 日)」

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Page 1: 第2節 公共土木施設等の被害S39.6 新潟地震 *3,277 *10,966 *41,019 *10,661 *65,923 S36.9 第2室戸台風 2,822 19,332 108,183 130,337 H16.7 7.13水害 71

第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-23

第2節 公共土木施設等の被害 1 被害の概要と特徴 (1) 人的・住家被害(数値は平成19年2月末日のもの) 平成 16 年は災害のあたり年であり、7月には三条市、見附市、中之島町など中越地方

に大きな被害をもたらした通称「7.13 水害」(新潟福島豪雨)が発生し、福井県や福島県

でも水害による大きな被害が出た。

また、日本に上陸した台風の数も10と異常に多く、台風 23 号が兵庫県などに大きな

被害をもたらした直後に、中越地震が発生した。 中越地震による被害は、新潟県内で死者67人、負傷者4,795人、避難者(ピーク

時)10万人余り、被害を受けた建物は住家が約12万棟、非住家が約4万棟の計16万

棟、上越新幹線が脱線、高速道路が不通になるなど甚大であった。 阪神・淡路大震災では、多くの人々が倒壊した家屋の下敷きになって死亡したが、中越

大震災では倒壊した住家は意外と少なかった。 地震発生当日から県内54市町村に災害救助法が適用され、自衛隊や消防など防災関係

機関による懸命の救助・救出活動が行われた。

なお、当県以外でも、長野県、群馬県、埼玉県で合わせて10人の負傷者が、群馬県、福

島県で合わせて1,056棟の住家の一部損壊被害が発生した。

① 人的被害

表2-2-1 自然災害に伴う県内の人的被害状況(平成19年2月28日現在)(単位:人)

発生年月 災害名 死者 行方不明 重傷 軽傷 合計

H16.10 新潟県中越大震災 67 0 635 4,160 4,846S42.8 羽越水害 96 38 471 605S36.9 第2室戸台風 36 0 2,310 2,346S39.6 新潟地震 14 0 46 270 330H16.7 7.13水害 15 0 2 80 97

【出典】「新潟県地域防災計画(資料編)(新潟県防災局HP)」 (参 考)

発生年月 災害名 死者 行方不明 重傷 軽傷 合計

H7.1 阪神・淡路大震災 6,433 3 10,683 33,109 43,792H5.7 北海道南西沖地震 202 28 323 553

【出典】「阪神・淡路大震災について(第 106 報)(消防庁 平成 14 年 12 月 26 日)」 「平成 5 年北海道南西沖地震災害について(確定)(消防庁

平成 6 年 6 月 20 日)」

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-24

② 住家被害 表2-2-2 自然災害に伴う県内の住家被害状況(平成19年2月28日現在)(単位:棟)

発生年月 災害名 全壊 半壊 一部損壊 床上浸水 合計

H16.10 新潟県中越大震災 3,185 13,725 103,500 120,410S42.8 羽越水害 1,080 2,067 339 16,422 19,908S39.6 新潟地震 *3,277 *10,966 *41,019 *10,661 *65,923S36.9 第2室戸台風 2,822 19,332 108,183 130,337H16.7 7.13水害 71 5,657 82 1,882 7,692

【出典】「新潟県地域防災計画(資料編(平成 15 年度修正))」 (注)新潟地震は、「世帯数」。 (参 考)

発生年月 災害名 全壊 半壊 一部損壊 床上浸水 合計

H7.1 阪神・淡路大震災 104,906 144,274 263,702 512,882 【出典】「新潟地震の記録(昭和 40 年6月、新潟県発行)」

(注)新潟地震は、「世帯数」。 市町村別の被害発生状況は図 2-2-1 のとおり。

図2-2-1 被害発生状況

(凡  例)

死亡者または住家の全半壊があった

市町村(30市町村)

負傷者または建物(住家・非住家)の

被害があった市町村(16市町村)

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-25

震源

図 4 雨量観測所位

本震及

図 3 地すべり

写真2-2-3 土砂崩れダム

(山古志村東竹沢)H16.11.5撮影

写真2-2-1 地すべりにより倒壊した

家屋(長岡市濁沢)

写真2-2-2 朝日川の埋塞による被害

(小千谷市浦柄)

(2) 被害の特徴

中越大震災においては、被災地の地理的要因(中山間地域、地すべり地帯、豪雪地帯)

及び社会的要因(農山村社会、過疎化、高齢化など)と地震そのものの特徴とが合わさっ

て、特有の被害状況が見られた。

① 多発した土砂災害

中山間地での大規模地震であったため、土

砂災害が多数発生した。国土交通省が空中写

真から解析した結果では、斜面崩壊の発生箇

所数は約3,800箇所となった。

土砂災害が多発した原因は、中越大震災が

発生した地域には多くの地すべり危険箇所が

存在することや、地震発生2日前に、台風2

3号による影響で大量の雨水が斜面に染み込

んでいたことによるものと考えられる。

★H16.10.20 0:00~10.21. 9:00 までの降水

量(アメダス) 栃尾95mm 小出105mm

河川に大量の土砂が流れ込んだ箇所も多

く発生しており、融雪出水時に河川氾濫や土

石流の発生する危険性があったので、保全対

象施設がある区域については緊急に土砂撤去

を行った。

また、道路の陥没や斜面崩壊の発生により

陸路が遮断され、61集落が孤立した。

② 河道閉塞の発生 中越大震災では、河道閉塞が多数発生した

ことも特筆される点である。その中で、特に

規模が大きく、対応が困難であったものが一

級河川芋川の寺野及び東竹沢地区にできた2

つの河道閉塞である。

2 箇所の河道閉塞の復旧には高度の技術が

必要であったことから、新潟県知事の要請に

基づき11月5日に直轄砂防災害関連緊急事業

として実施することが決定された。

その後、国土交通省北陸地方整備局は、応

急対策として越流による河道閉塞の決壊を防

ぐことを目的に、融雪時の出水にも対応可能

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-26

川口町

写真2-2-5 雪国仕様住宅

である排水路の整備を進め、寺野地区は12月17日に、東竹沢地区は12月28日に工事を

完了した。本格的な積雪期となる直前であった。

③ 雪国仕様住宅は地震に強かった

阪神・淡路大震災に比べ、中越大震災では地震

規模の割に、倒壊家屋が少なかった。それは、被

災地は冬になれば2~3mの積雪となる日本でも

有数の豪雪地帯であることから、それに対応する

家屋の構造であったことが被害を少なくしたので

はないかと考えられている。

◆雪国仕様住宅の特徴

(1) 柱が雪国でない地域と比較すると太い

(2) 屋根が軽い

(3) 壁面積が大きい

(4) 基礎が頑丈である

④ 降雪期が間近に迫っていた

地震発生から約1ヶ月半後には本格的な降雪期に入るということが住民や復旧に携わる

者にとっては大きな問題であった。

被災地での冬期の道路除雪は、社会・経済活動

を確保するためには欠かせない作業であり、損傷

した道路や消雪設備の応急復旧は時間との戦いで

あった。

また、道路損傷が著しいために今冬期の除雪は

どうなるのかという不安が被災地の住民の間に広

がっていたことから、県及び被災地の市町村では、

除雪計画を公表し、住民に安心情報を発信した。

⑤ 首都圏への大動脈が途絶 ~高速交通体系のマヒと影響~

川口町付近を震源とする今回の地震は、鉄道・道路網をこの地域で集中的に破壊し、川

口町を陸の孤島としただけでなく、当県の大部分の地域と首都圏及び長野県方面との交通

を遮断した。特に新幹線及び高速道路などの高速交通体系のマヒは、県内全域に長期にわ

たって深刻な影響を与えた。 ア 新幹線の脱線と上越線の不通

写真2-2-4 家屋倒壊状況(川口町)

写真2-2-5 積雪状況(長岡市)

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-27

長岡に向けて時速約200㎞で走行中の東京発新幹線「とき 325 号」が、長岡市村松町

付近で脱線し、約1.6㎞走行して停止した。営業中の列車の脱線は初めてのことだった。

対向列車が来なかったことなどが幸いし、乗客と乗務員等の154人にケガは無かった。

しかし、軌道、高架橋、トンネル、架線などの施設に大きな被害が発生し、運転が再開さ

れた 12 月 28 日まで、上下線とも長期間不通となった。

また、在来線の上越線も大きな被害を受け、長期間不通となった。

なお、新幹線の代替輸送機関として、10 月 24 日から平成 17 年1月4日まで、新潟空港

と羽田空港間に臨時便が運航された。

表2-2-3 主な鉄道の不通区間

路線名 不通区間 運転再開日

燕三条~新潟 10月30日

長岡~燕三条 11月 4日

上越新幹線

越後湯沢~長岡 12月28日

水上~六日町 11月 2日

六日町~小出 11月13日

上越線

小出町~宮内 12月27日

イ 高速道路・幹線道路の寸断

地震発生と同時に県内外の高速道路の多くの区間が安全確認のため通行止めとなった。

安全確認後順次通行止めが解除されたが、路盤崩

壊などの大きな被害が発生した北陸道及び関越

道は引き続き通行止めとなった。 高速道路の不通は被災地への救援活動にも支障

をきたすことから、緊急的に約19時間という

驚異的な時間の中で、緊急車両の交通を確保し

た。(通常の車両が全線で通れるようになった

のは、11 月5日。)

また関越自動車道が被災し一部区間が交通止

写真2-2-7 上越線の被害状況 写真2-2-8 上越新幹線脱線状況

写真2-2-9 関越自動車道被害状況

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-28

写真2-2-10 自衛隊による仮設住宅の

除雪状況

めになったため、その代替手段として磐越道及び上信越自動車道が利用された。日本道路

公団が行った調査では、前年10月の平日平均交通量と震災後の10月29日(金)の交通量

を比較したところ、磐越道津川IC~西会津IC間で1.6倍、上信越道妙高高原IC~信濃町

IC間で1.4倍との結果が得られた。

一般国道や県道も至る所で土砂崩れ等により交通が寸断されたが、同様に、早期の応急

復旧が図られた。不通となっていた幹線国道17号の和南津トンネルも 11 月2日から片側

交互通行となった。

表2-2-4 主な緊急輸送道路の不通区間等

道路名 不通区間等 復旧日時

長岡JCT~長岡IC 10月26日 22:00

小出町IC~群馬県境 10月29日 12:00 関越自動車道

長岡IC~小出IC 11月 5日 16:00

柏崎IC~柿崎IC 10月24日 13:50 北陸自動車道

三条燕IC~柿崎IC 10月26日 22:00

国道17号 和南津トンネル(川口町) 11月 2日 16:20

⑥ 複合災害 中越地方は、日本有数の豪雪地帯であり、

中越大震災は「山村豪雪地域における積雪期

直前の大規模地震」であった。2004 年から

2005 年の冬のこの地方の初雪は、山間部・平

野部の多くの場所で 12 月 21 日であり、震災

から2箇月目と平年に比べて1箇月前後遅か

ったが、降り出した雪は根雪となり、19年

ぶりの豪雪となった。 県内では、震災被災地である中越地方の山

間部に降雪が集中した。 200cm を越す積雪は地震被災家屋の屋

根雪荷重となり、倒壊や著しい損傷を各地に与え、倒壊被害の拡大に拍車をかけた。 厳しい気象・積雪状況のもと、1月から様々な雪氷災害が発生した。中越地震等で急斜

面が荒廃した影響と考えられるが、雪崩災害の発生場所は中越地方の山間部に集中した(図

2-2-2 参照)。 小千谷市西吉谷では、地震で痛んだ急斜面から発生した湿雪全層雪崩が斜面下の茶郷川

を堰き止め、隣接家屋が床上浸水の被害を受けた。 また、積雪期前には、河道閉塞箇所において土石流、洪水、雪泥流の発生と、荒廃斜面

の土砂崩れが融雪期の災害と懸念されていたが、積雪期前の復旧工事や応急対策が功を奏

し、大規模な災害は発生しなかった。

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-29

●県工事(単災) (単位:億円)

箇所数 金 額 箇所数 金 額

道   路 970 525.1 965 670.1

河   川 417 110.2 414 147.9

砂   防 74 31.0 73 40.4

公   園 3 0.5 3 0.9

下 水 道 21 16.0 21 17.7

計 1,485 682.8 1,476 877.1

※道路は親災 1 を含む。

被害報告工   種

決定

●市町村事業 (単位:億円)

箇所数 金 額 箇所数 金 額

道   路 1,723 263.3 1,722 344.5

河   川 28 3.5 28 5.2

公  園 34 6.3 34 8.2

下 水 道 269 166.9 269 193.9

計 2,054 440.0 2,053 551.8

工   種決定 被害報告

図2-2-2 市町村別の震度分布と豪雪対策本部設置状況

(3) 査定決定額と被害報告額

以下に、公共土木施設の査定決定額と被害報告額の一覧を示す。

震度分布図 豪雪対策本部設置状況

(凡  例)

最大震度5弱以上の地震

〔気象庁報道発表資料(暫定値)による〕

震度7の市町村

震度6強、6弱の市町村

震度5強、5弱の市町村

(凡  例)

豪雪対策本部設置市町村

 (14市町村)

豪雪警戒本部設置市町村

 (2市町 うち5区)

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-30

2 土木施設の被害状況 (1) 道路の被害

① 緊急輸送道路:高速道路の被害と影響等 地震発生直後、県内5路線・県外1路線(北陸道、関越道、日東道、上信越道、磐越道、

東北道)計580km の高速道路で通行止めとなり、被害状況の確認を待って、順次通行

規制は解除されたが、北陸自動車道では柿崎IC~三条・燕ICの上下線、関越自動車道

では上り線で水上IC~長岡JCT、下り線で月夜野IC~長岡JCTが通行止めのまま

となった。 北陸自動車道と関越自動車道では、いたる所で盛土法面の崩壊や路面の陥没、段差が発

生し、橋梁等についても支承部を中心に被害が発生した。

また、上越新幹線の脱線事故も重なり、首都圏との交通の動脈は寸断された。

北陸自動車道・関越自動車道は地震発生から 19 時間後の 24 日 13 時には緊急応急復旧

を完了し、緊急車両の通行が可能となった。地震発生から 76 時間後の 26 日には北陸自動

車道全線、関越道では上り線で六日町IC~長岡IC、下り線で月夜野IC~長岡IC間

を除き通行止めが解除された。13 日後の 11 月 5 日 16 時には 後まで残っていた関越自

動車道で、一般車両の片側1車線による通行が可能となった。

この間、新潟と首都圏を結ぶ道路交通は、長野経由の上信越自動車道、福島経由の磐越

自動車道の 2 本の高速道路が関越自動車道の代替を果し、首都圏との交通の動脈が確保さ

れた(図 2-2-3)。 なお、新幹線の復旧が遅れたため、約 145 時間後の 10 月 29 日 18 時 35 分から緊急通

行路を活用し、新潟~池袋、新潟~十日町、上越~池袋間で高速バスが運行された他、長

新潟

首都圏

磐 越 自 動 車 道

1.6倍

上信越自動車道 1.4

(関越自動車道被災状況)

(関越自動車道被災状況)

通行止め

図2-2-3 高速道路機能の分散

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-31

岡~湯沢間の新幹線代行バスも運行され、高速道路を利用して県民生活に必要な交通が確

保された。 11 月 5 日、関越自動車道の一般の通行が可能となって以降、支援物資輸送車両等の無料

通行要望、一般道の交通渋滞解消のための高速道路への自動車交通の転換の必要性が提起

され、新潟県ではそれらに対応するため、北陸地方整備局・日本道路公団北陸支社との調

整にあたった。 ② 県管理道路の被害 ア 道路被害の状況

表2-2-5 災害査定結果からみた道路被害 百万円 種 別 法面崩壊 道路欠壊 路面亀裂 橋梁損傷 合 計

箇所数 94 307 525 44 970

被災金額 決定額

16,949 20,864 12,283 2,699 52,795

割合 32% 40% 23% 5% 100%

※決定額は 7.13 水害の転属額(288 百万円)を含む

中越地震の特徴は、中山間地域において広範囲に地盤破壊が起こり、至るところで自然

斜面や盛土の大規模な崩壊が引き起こされたことである。 震源地の中越地方は、活褶曲地形の背斜部に流水等による浸食でできた谷に、沖積地層

が落ち込んで形成された地域で、国内でも有数な地すべり地帯である。加えて、地震の1

週間前の台風 23 号による大雨で土砂が大量の水を含み、土砂崩れの起きやすい状態にな

っていたことが、被害が拡大した大きな原因であるといわれている。 表 2-2-5 は、H16 年 11 月 29 日の第9次査定からH17 年1月 28 日の第 14 次査定の結

果であるが、新潟県中越地震による道路被害の特長をよく映している。道路欠壊の被害金

額がとりわけて大きく、盛土や自然斜面の大規模な崩壊が大部分であることが判る。

写真2-2-11 写真2-2-12

□一117号 (小千谷市 細島) ○主栃尾山古志線 (旧山古志村 池谷)

盛土崩壊による道路欠壊 地盤破壊による道路消失(流出)

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-32

イ 構造物緊急点検

表2-2-6 重要構造物の被害状況

種 別 対象数 被災数 被災率

橋梁 999 橋 62 橋 6%

トンネル 86 本 17 本 20%

洞門 124 箇所 11 箇所 9%

表 2-2-6 は被災直後に実施した重要構造物の緊急点検の結果だが、落橋などの重大な被

害は無いなど、総じて構造物への被害の拡大は限定的であった。 表2-2-7 被災事例

種 別 名称 路線名 地先 被災状況

山辺橋 L=222m

一般国道 117 号 小千谷市 山本

橋脚座屈、遊間異常 橋台背面沈下 1.0m

橋 梁 蘭木橋 L=83m

一般県道 小千谷川口大和線 小千谷市 南荷頃

沓座モルタル破損 遊間異常

木沢トンネル L=305m W=6m

一般県道 小千谷川口大和線 川口町 木沢

側壁はらみだし、圧壊 盤膨れ、覆工剥落

トンネル 羽黒トンネル L=504m W=5m

主要地方道 柏崎高浜堀之内線 旧山古志村 東竹沢

坑口部覆工の剥落 路面浮き上がり

表 2-2-7 は被災事例であるが、橋梁では支承部の損傷や部材の局所座屈、橋脚のひび割

れなどが生じている。一部の橋梁では橋台背後の盛土が陥没したため一時的に通行止めと

なったが、陥没を応急復旧した後、橋梁本体は大きな支障なく供用された。 またトンネルは、大半が亀裂幅の小さい円周亀裂などの軽微な被害だったが、地すべり

など地山の変動の影響を受けたトンネルでは、側壁のはらみだしや側壁・アーチの斜め亀

裂、大きなコンクリート剥落など重大な被害が見られたものもあった。木沢トンネルや羽

黒トンネルではアーチ部コンクリートの剥落が生じ、応急復旧ではトンネル内にコンクリ

ート落下等から通行者を保護するプロテクターや支保工等の設置が必要であった。

Page 11: 第2節 公共土木施設等の被害S39.6 新潟地震 *3,277 *10,966 *41,019 *10,661 *65,923 S36.9 第2室戸台風 2,822 19,332 108,183 130,337 H16.7 7.13水害 71

第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-33

写真2-2-13 写真2-2-14

□一117号 山辺橋 ○主小千谷川口大和線 木沢トンネル

(小千谷市 山本) (川口町 木沢)

橋台背後の盛土が崩壊、1mを越える 側壁のはらみ出しや、縦方向の大きな 段差が生じた。応急のすり付けを行い、 クラックが生じた。奥に見えるのは、応急 供用した。 復旧時のコンクリート壊落下に備えた プロテクター。 ウ 道路の被災延長(H16年12月7日被災報告による)

表2-2-8 被災延長と被災率

地域機関名 管内管理延長

(km) 被災延長

(km) 被災率

(%) 長岡 509 106 21

小千谷 231 92 40 長岡

与板 105 2.3 2

小出 475 36 8

十日町 385 20 5

柏崎 392 23 6

合計 2,097 279.3 13

表 2-2-8 は地域期間毎の亀裂や欠壊などの被災延長であるが、震源の川口町のある小千

谷維持管理事務所管内では、実に4割の道路で何らかの被害が生じている。 また、山古志村管内における県管理道路延長は51kmであるが、そのうち50kmが

被災を受けた。山古志村の被害の甚大さが窺える。

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-34

エ 特に甚大な被害 A 一般県道小千谷長岡線(長岡市妙見町)

写真2-2-15 一般県道小千谷長岡線(長岡市妙見町)

道路山側の斜面で延長250m、高さ30m、土砂量約50万立方メートルの土砂崩れ

が起こった 土砂崩れに車数台が巻き込まれ、その中の1台で母子3人が生き埋めとなり、当時2才

の男の子が地震後4日ぶりに救出された。東京消防庁のハイパーレスキューの出動による

救出の一部始終がマスコミにより全国ネットで報道され、まさに中越大震災を象徴する現

場となった。

B 主要地方道栃尾山古志線(旧山古志村 寺野)

写真2-2-16 主要地方道栃尾山古志線(寺野スノーシェッド)

旧山古志村内を貫流する芋川沿いの斜面の大規模な崩壊に巻き込まれた主要地方道栃

尾山古志線は、道路が完全に流出するなどの甚大な被害となった。 写真-6は同路線にあった寺野スノーシェッドだが、大規模な崩壊に巻き込まれ全壊し

た。手前の水面は土砂で堰き止められた芋川の水位増加によるもの。

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-35

C 一般国道351号(長岡市 宮内)

写真2-2-17 一般国道351号(長岡市宮内)

中越地域の中心都市である長岡市と旧栃尾市を結ぶ大動脈である一般国道 351 号では、

写真-7のような大規模な崩壊(地盤破壊)による甚大な欠壊が至るところで起こった。

D 主要地方道柏崎高浜堀之内線 羽黒トンネル(旧山古志村 桂谷)

写真2-2-18 主要地方道柏崎高浜堀之内線(羽黒トンネル)

大規模な地すべりによる地山の変状の影響を受け、円周方向の大きなクラックや覆工コ

ンクリートの剥落、路面の浮き上がりなどが生じた。

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-36

オ 拡大した通行止め

表2-2-9 地震直後からの通行止め箇所数の推移

直後10月23日 10月27日 10月30日 11月10日 11月30日 12月31日 道路種別

路線数 箇所数 路線数 箇所数 路線数 箇所数 路線数 箇所数 路線数 箇所数 路線数 箇所数

一般国道 10 39 11 45 8 36 5 21 5 18 4 10

主要県道 24 57 21 61 17 46 12 36 12 31 9 23

一般県道 42 56 44 64 45 61 33 37 33 37 19 19

合計 76 152 76 170 70 143 50 94 50 86 32 52

地震発生後まもなく夜のとばりが下りたことで、道路の被災情報収集は困難を極めた。

また、発生後に打ち続いた余震も情報収集を困難にさせた。 表 2-2-9 は道路管理課内の道路情報センターが受け付けた通行止め箇所の推移だが、通

行止め規制のピークは地震発生後4日後の 27 日となっている。これは、道路が至るとこ

ろで寸断し被害状況の確認に手間取ったことに加え、被災直後の混乱で情報伝達が困難と

なったことが原因である。通行止めののべ箇所数は、道路情報センターの集計で224箇

所にのぼったが、短時間で応急復旧された区間で通行止め情報が発しられなかった箇所や、

情報の混乱で把握されなかった箇所を加えれば更に多数となったと思われる。 このような危機発生時の情報収集力の強化が、大きな教訓となったと考えている。

③ 自宅に戻れない!!(孤立集落の発生)

切土・盛土が主体の中山間地の道路は、地盤破壊により、至るところで崩壊した。道路

機能の喪失は、道路以外に有効な交通手段を持たない中山間地の弱点を直撃し、多くの集

落で外部との陸路による連絡が遮断され「孤立」した。 旧山古志村の14集落はその全てが孤立し、ヘリコプターで救助されたことは鮮烈な記

憶として残っている。 地震直後61集落にのぼった「孤立集落」は、懸命の応急復旧の結果、1週間後の 10

月 30 日には27集落に半減した。しかしながら、被害の大きかった旧山古志村などでは、

全村避難による村内の防犯上の懸念なども理由に通行止めが解除できず、雪に閉ざされは

じめた 12 月 15 日時点でも旧山古志14集落、小千谷市1集落で陸路が遮断した状態が続

いた。 マスコミや国から注目を浴びた、この「孤立集落」状況の把握を道路管理課が担うこと

になりその中で「孤立」の定義をめぐり、“バイクは通れるのか”とか“自転車はどうか”、

“歩いて通れるか”などの情報確認に苦労した。 終的には“軽 4 輪が通れる”と勝手に

定義したが、この様に的確な情報コントロールの大切さを痛感した場面であった。 表 2-2-10 に集落孤立の状況を示す。

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-37

表2-2-10 H16.12.15時点の集落孤立の状況

集落名 世帯数 復旧状況 集落名 世帯数 復旧状況

種苧原 191 若栃 42 10/25(17:00 頃)復旧

池谷 35 山新田 12 10/25(17:00 頃)復旧

大久保 20 市之沢 27 10/25(17:00 頃)復旧

楢木 29 芹久保 6 10/25(20:00 頃)復旧

桂谷 39 孫四郎 1 10/26(12:00 頃)復旧

油夫 20 北山 13 10/25(20:00 頃)復旧

虫亀 145

小千谷市

山中 12 計 27 591 間内平 26 木沢 64 10/26(12:00 頃)復旧

竹沢 77 峠 11 12/19(9:00 頃)復旧

菖蒲 8

町 荒谷 16 10/25(18:00 頃)復旧

木篭 25 計 3 91 小松倉 25 蓬平 135 11/23(13:00)復旧

旧山古志村

梶金 29

復旧作業中

竹之高地町 16 11/23(13:00)復旧

計 14 681 鶴ヶ丘町 47 10/25 解消(18:00 頃)

冬井 24 10/27(10:00 頃)復旧 濁沢 97 11/23(13:00)復旧

戸屋 13 10/27(10:00 頃)復旧

大崩 26 10/27(10:00 頃)復旧 計 3 295 池ノ平 7 10/27(10:00 頃)復旧 栗山沢 33 10/24 10:25 復旧

塩谷 52 12/19(9:00)復旧 半蔵金 83 10/28(18:00 頃)復旧

桜町 2 10/28(18:00 頃) 田代 4 10/30(16:30 頃)復旧

十二平 11 復旧作業中

市 荷頃 43 10/26(12:00 頃)復旧 計 3 120 蘭木 34 10/26(12:00 頃)復旧 法末 53 10/25(19:00 頃)復旧

首沢 18 11/3(12:00)復旧

旧小

国町 1 53 浦柄 72 11/2(12:00)復旧 二子 20 10/24(18:00 頃)復旧

寺沢 25 11/2(12:00)復旧 漉野 22 10/24(18:00 頃)復旧

朝日 41 11/2(12:00)復旧 平 13 10/24(18:00 頃)復旧

小栗山 36 11/2(12:00)復旧 仙之山 17 10/24(18:00 頃)復旧

中山 14 11/2(12:00)復旧 慶地 3 10/25(18:00 頃)復旧

岩間木 39 11/3(12:00)復旧 願入 6 10/25(10:00 頃)復旧

岩山 16 10/26(12:00 頃)復旧 塩野 13 10/25(18:00 頃)復旧

池ノ又 4 10/25(18:00 頃)復旧 菅沼 1 10/26(17:00 頃)復旧

田代 2 10/25(18:00 頃)復旧 大池 2 10/26(17:00 頃)復旧

小土山 2 10/25(18:00 頃)復旧

外ノ沢 9 10/25(18:00 頃)復旧 計 9 97

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-38

(2) 河川・ダム・海岸の被害 ① 河川管理施設の被害 県管理の河川管理施設は、堤防天端やのり面の亀裂、護岸の亀裂や倒壊、河岸や斜面の

崩落による河川埋塞等の被害を受けた。 県管理河川の被災箇所と被害額は、公共土木施設災害復旧事業による採択箇所数は

417箇所、採択決定額は約110億円にのぼる。 表2-2-11 県管理河川の被災箇所数及び被害額

(公共土木施設災害復旧事業)

地域機関名 被災箇所数 被害額(千円) 三条土木事務所 3 54,763 長岡地域振興局 159 5,856,961

与板維持管理事務所 16 141,105 小千谷維持管理事務所 158 3,687,839

小出地域振興局 27 622,241 十日町地域振興局 34 292,970 六日町地域振興局 3 8,334 柏崎地域振興局 17 354,206

計 417 11,018,419 また、一般単独災害復旧事業(県単災害)の採択箇所数は10箇所、採択決定額は、約

9百万円であった。 表2-2-12 県管理河川の被災箇所数及び被害額

(県単災害) 地域機関名 被災箇所数 被害額(千円)

新潟土木事務所 1 1,134 与板維持管理事務所 5 4,070 小千谷維持管理事務所 2 2,070

小出地域振興局 2 1,658 計 10 8,932

県単独事業による対応箇所数は103箇所、被害額は約1.6億円の被害(予算要求ベ

ース)であった。

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-39

表2-2-13 県管理河川の被災箇所数及び被害額(予算要求ベース)

(県単独事業) 地域機関名 被災箇所数 被害額(千円)

三条土木事務所 1 3,000 長岡地域振興局 11 28,800

小千谷維持管理事務所 35 35,000 小出地域振興局 9 12,000 十日町地域振興局 39 77,600 六日町地域振興局 2 1,500 柏崎地域振興局 6 3,300

計 103 161,200 地震による県管理の河川管理施設に係る被災箇所の状況は、河岸や斜面の崩落に伴う河

川埋塞が35%、堤防や護岸の亀裂、倒壊等が65%であった。(平成 17 年2月 24 日時点)

図2-2-4 県管理河川に係る被災箇所の状況の分類

35%

65%

河川埋塞 堤防護岸等

町村管理河川の被災箇所数と被害額は、公共土木施設災害復旧事業による採択箇所数が

28箇所、被害総額約3.5億円であった。 表2-2-14 市町村管理河川の被災箇所数及び被害額

(公共土木施設災害復旧事業)

市町村名 被災箇所数 金額(千円) 長岡市 1 60,979

旧山古志村 1 4,845 旧越路町 1 12,236 小千谷市 19 188,599 川口町 4 51,413 旧川西町 2 29,531

計 28 348

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-40

直轄管理河川の被災箇所数は185箇所で、その内、公共土木施設災害復旧事業による

採択箇所数は46箇所、決定額は約75億円であった。 表2-2-15 直轄管理河川の被災箇所数

内、公共土木施設災害復旧事業分 河川事務所名 被災箇所数

採択箇所数 決定額(千円) 信濃川下流 1 信濃川 126 43 6,992,983 魚野川 58 3 450,504 計 185 46 7,443,487

提供:北陸地方整備局 地震による直轄管理河川に係る被災箇所の状況は、堤防の亀裂が79%、堤防沈下が

13%、堤防のり面崩壊が2%、水門等施設が6%であった。

図2-2-5 直轄河川に係る被災箇所の状況の分類

79%

13%2% 6%

亀裂 沈下 のり面崩壊 水門等施設

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-41

<主な被災箇所写真>

写真2-2-19 堤防亀裂(刈谷田川) 写真2-2-20 堤防亀裂(太田川)

(旧中之島町 中之島) (長岡市 村松)

写真2-2-21 河川埋塞(朝日川) 写真2-2-22 河川埋塞(茶郷川)

(小千谷市 浦柄) (小千谷市 二俣)

写真2-2-23 護岸倒壊(稲葉川)

(長岡市 西片貝) 写真2-2-24 護岸倒壊(湯殿川)

(小千谷市 船岡)

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-42

図2-2-6 主な河川施設の被災箇所位置図

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-43

② ダムの被害 ア ダム等の被害

地震発生後の臨時点検の結果、ほとんどのダムでは変状はなかったが、農業用の3ダム

と3調整池で変状が確認された。 土木部所管ダムでは、刈谷田川ダムの管理用通路や破間川ダムの通信中継局舎の被災が

見られたが、ダム本体の被害はなく安全であることを確認した。(図 2-2-6 参照) 国土交通省の管理する2ダムについても被害が無かった。

利水専用ダムでは、川西町に位置する農業用の川西ダム、長福寺ダム、坪山ダムの3ダ

ムにおいて比較的大きな変状が発生した。ダムの形式はいずれも中央遮水ゾーン型フィル

ダムで、地震時に貯水はほとんどなかった。被害の概要は、天端の亀裂や堤体のり面の沈

下等が確認された。(写真 2-2-25 参照) 河道外貯留施設(発電用の調整池)では、JR東日本が管理している浅河原調整池(十

日町市)、新山本調整池(小千谷市)、山本調整池(小千谷市)の3調整池において被害が

発生した。このため地震後に取水を停止し、緊急に貯水位を低下させる措置をとった。

図2-2-7 震源とダム等の位置

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-44

写真2-2-25川西ダム

堤体のり面の沈下 堤体天端での亀裂 イ 排水機場、堰、水門等大規模河川管理施設の被害 地震後の臨時点検の結果、県管理の排水機場、

堰、水門等大規模河川管理施設に被害はなく、

国土交通省が管理している信濃川の妙見堰(小

千谷市)において、堰柱(ピア)に水平亀裂や

コンクリートの破損被害が発生した。(写真

2-2-26)

写真2-2-26

妙見堰 堰柱の亀裂 ③ 海岸保全施設の被害 地震後及び震度4以上の余震後

に、臨時点検を実施したが、河川局

所管海岸保全施設について、復旧等

を要する被害は無かった。

写真2-2-27 郷本地区海岸(三島郡寺泊町) (10 日 24 日点検時)

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-45

地域機関 地すべり がけ崩れ 土石流等 合計 市町村数三条 2 2 1長岡 108 82 20 210 9(与板) (1) (2) (3) (2)(小千谷) (54) (40) (8) (102) (2)(旧)小出 7 7 1 15 4(旧)六日町 1 1 1十日町 4 20 24 3柏崎 3 3 6 2上越 8 1 9 7

合 計 131 115 21 267 27注 1 ( )は内数

  2 市町村数で長岡市、魚沼市、南魚沼市、十日町市、上越市は 旧町村の数

(単位:箇所)表2-2-16 土砂災害発生状況

(3) 砂防施設等の被害 ① 土砂災害発生状況 この地震により、長岡地域振興局、(旧)小出地域振興局、十日町地域振興局管内の地

域を中心に、県全体で267箇所の土砂災害が発生した(表 2-2-16)。

② 人的被害状況等 ア 人的被害 死者4名、負傷者1名 ・長岡市濁沢町 死者2名 ・長岡市妙見町 死者2名、負傷者1名 イ 人家損壊 93戸 ・全壊18戸、半壊27戸、一部損壊48戸 表2-2-17 人的被害状況等

③ 砂防施設の被害状況 ア 砂防設備の被害

大きな地震力がえん堤に直接作用したり、地すべりを誘発して土塊がえん堤を直撃し、

破損した事例がみられた。被災したえん堤は大半がえん堤の打ち継ぎ部を境にずれが生じ

たものである。また、えん堤にクラックが生じたり、えん堤等の埋没、袖部の破損、前庭

保護工の破損、取り付け護岸の破損、倒壊等が見られた。

死者 負傷者 全壊 半壊 一部損壊地すべり 2 18 23 31がけ崩れ 2 1 4 16土石流等 1合 計 4 1 18 27 48

人家損壊数人的被害災 害

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-46

イ 地すべり防止施設の被害 被災した施設は、主に水路工(暗渠含む)、横孔ボーリング工、土留工、床固工、

法枠工が多い。 表層崩壊や地震力により、施設の変形、埋没、がみ違い、押し出し、亀裂の発生

倒壊等が見られた。

ウ 急傾斜地崩壊防止施設の被害 被災した施設は、主に法枠工、擁壁工が多い。 表層崩壊や地震力により、施設の変形、がみ違い、座屈、破談、亀裂の発生等が

見られた。 エ 雪崩防止施設の被害

施設が位置する斜面上の落石や斜面そのものの崩壊に伴って生じたもの被害が主

であり、予防柵工の基礎露出、柵工本体の斜面下部への移動や落下、柵工上部から

落下してきた土石や樹木の堆積等が見られた。

表 2-2-18 砂防施設災害箇所一覧表

施 設 区 分 被 災 箇 所 数 等 砂防設備 油夫川(旧山古志村)など 計40箇所 地すべり防止施設 川口(川口町)など 計21箇所 急傾斜地崩壊防止施設 薭生(小千谷市)など 計13箇所 計 74箇所

④ 河道閉塞の発生状況 土砂災害に伴い土砂が河道を閉塞した現象(河道閉塞)が多数発生した。河道埋

塞箇所数は、国土交通省の土砂災害対策緊急支援チーム、国土地理院、県地域機関

の調査結果により、人家等の保全対象に影響を与えると考えられるものを抽出した

ところ、50箇所(平成 16 年 11 月末現在)が確認された。 その中でも特に長岡市(旧山古志村)東竹沢地区や寺野地区では芋川本川に大規

模な河道閉塞が発生した。両地区とも左岸側斜面で発生した大規模な地すべりが河

道を閉塞したもので、閉塞土塊の高さはいずれも30mを超える規模であった(表

2-2-19 参照)。 東竹沢地区では河道閉塞により芋川本川の流水がせき止められ、上流域の木籠集

落では人家14軒が水没、浸水するなどの被害が出た。 また、芋川 下流の魚沼市竜光地区は県施工の緊急水路完成後に避難勧告を解除

したが、直轄砂防事業によるえん堤工事等が概成するまで警戒避難体制を継続した。

(平成 18 年 10 月 23 日河道閉塞に伴う警戒避難体制解除)

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-47

表 2-2-19 芋川河道閉塞箇所の規模

箇所名 高さ

(m) 大長

(m) 大幅

(m) 堰き止め土砂量

(m3) 大湛水量

(m3) 東竹沢地区 31.5 320 168 655,940 2,560,500 寺野地区 31.1 260 123 303,340 387,500

また、震源付近の川口町相川川、小千谷市塩谷川などでも大規模地すべりにより

河道閉塞が発生し、下流の小高集落、十二平集落は長期避難ののち集団移転するこ

とになった。

表 2-2-20 相川川・塩谷川河道閉塞箇所の規模

箇所名 高さ

(m) 大長

(m) 大幅

(m) 堰き止め土砂量

(m3) 大湛水量

(m3) 相川川 25.0 260 100 216,667 887,600 塩谷川 13.5 220 130 314,500 241,500

(4) 下水道の被害 ① 管きょ施設の被災状況

信濃川下流流域下水道長岡処理区、魚野川流域下水道堀之内処理区の2流域にお

いて流域下水道の管路施設が被災を受け、被災した管きょ延長は0.5km、マンホ

ールは213箇所を数える。 被災内容は、管路埋設部の路面異常、人孔滞水、途中水没、管閉塞、本管破損、

本管浸入水が発生し、河川を横断している水管橋にも破損が見受けられた。 また、マンホール被害として、隆起、沈下、躯体のずれ、破損、鉄蓋のずれ、土

砂、汚泥の滞水、管接合部の破損が発生した。併せて、魚野川流域下水道堀之内処

理区の堀之内1号幹線において、一級河川芋川を横断する芋川水管橋が破損し汚水

が漏水した。 信濃川下流流域下水道長岡処理区では、川口町天納地内で一般国道17号が斜面

崩壊したことにより、長岡1号幹線(圧送管)が破断し、これにより川口町の汚水

送水機能に著しい被害を与えた。 新潟県中越大震災における管きょ施設被害の特徴として、数多く発生したマンホ

ールの浮上がりと埋戻し部の地盤沈下は、以下のように管路敷設埋戻し部での液状

化現象によるものと考えられる。 ア 今回観測された地震動は、平成7年兵庫県南部地震を含めた過去の記録を上

回るものである。また、地震発生直前にあった100mm 前後の日降雨量も影

響し、地下水位が高い状態にあった可能性が高い。この強い地震動が地下水で

飽和した地盤に作用して液状化を起こし、管路施設に被害をもたらしたものと

考えられる。

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-48

イ マンホールの浮上がりや地盤沈下が発生した箇所で調査したところ、粘性土

等による透水性の悪い原地盤でも、開削工法で布設して砂等で埋戻している箇

所では被災している状況がみられた。これは、十勝沖地震で被災した箇所でも

見られ、透水性の悪い地盤においても、埋戻しが砂で地下水位が高いと液状化

するものと考えられる。

写真 2-2-28 長岡処理区 長岡 1 号幹線の人孔隆起状況

② 処理場およびポンプ場の被災状況

魚野川流域下水道堀之内処理区において特に被害が大きく、堀之内浄化センター

をはじめ、竜光ポンプ場および宇賀地ポンプ場が被災している。 堀之内浄化センターにおいては、流入汚水管が抜け出し分配槽継ぎ手部が破損し

た。また、水処理施設では、 初沈殿池、エアレーションタンク、 終沈殿池が沈

下し、伸縮継手が破損、エアレーションタンク上部が開き止水板が切れ、管廊内に

汚水が流出したため、機器類が水没し故障を引き起こした。 併せて、汚泥掻き寄せ機、送風機にも被害が見られた。 汚泥処理施設では、送泥管継ぎ手部が破損し、汚泥が管廊内に流出したため、機

器類が水没し、故障が発生した。また、濃縮タンク、消化タンクが傾斜したことに

より機器使用が不能となり、汚泥脱水機にも故障がみられた。 宇賀地ポンプ場においては、ポンプ場ジョイントおよび汚水排水管が破損した。 竜光ポンプ場では、芋川水管橋ジョイント部の破損、変圧器およびロードセルの

故障が発生した。 信濃川下流流域下水道長岡処理区の長岡浄化センターでは、 初沈殿池汚泥掻き

寄せ機および 終沈殿池汚泥掻き寄せ機が故障した。 川口ポンプ場では、ポンプ場躯体壁に破損がみられた。

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-49

写真 2-2-29 魚野川流域下水道 堀之内浄化センター

水処理施設周辺の地盤沈下状況 h=50cm

(液状化特有の砂が噴出している状況を確認)

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-50

図 2-2-8 魚野川流域下水道堀之内処理区の施設配置概要

堀之内 2 号幹線

芋 川 水 管 橋 破 損 状 況

魚 野 川 流 域 下 水 道

堀 之 内 処 理 区 概 要 図堀之内 1 号幹線

宇賀地ポンプ場

竜光ポンプ場

芋川水管橋

←至 長岡 堀之内浄化センター管理棟入り口

破 損 状 況宇 賀 地 ポ ン プ 場 場 内 破 損 状 況

芋川

魚野川

堀之内浄化センター

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-51

流入管の着水井接続付近より漏水(水量多)

進入道路陥没(H=50cm程度)

場内道路陥没(H=30cm程度)

汚泥管廊横方向ひび割れ(B=3cm程度)

構造物傾斜 汚泥分配槽 ⊿h=6.7cm 汚泥濃縮タンク ⊿h=14.8cm配管に損傷及び抜出しが発生

水処理各EXP.Jの目開き ・Bmax =10cm ・⊿hmax= 8cm

汚泥管廊各EXP.Jの目開き ・Bmax = 3cm ・⊿hmax=10cm

構造物傾斜 汚泥消化タンク ⊿h=8.5cm  同 上 階段室 ⊿h=6.4cm配管に損傷及び抜出しが発生

放流渠護岸・階段のずれ(河川流下方向に30cm程度)

【堀之内浄化センターの主な被災状況】

・場内全域に20~30cmの不等沈下が確認される。・管廊等による地下構造物上部の道路は沈下していないため、道路上の凹凸が著しい。・着水井付近より大量の漏水が見られ、流入管が破損していると思われる。切回し管渠布設後、補修、復旧となる。・水処理施設のEXP.Jに上下左右の目開きが見られる。目視点検によりクラック等の発生も見られず、躯体は健全であると判断され、ジョイント部の補修を行う。・建屋の傾斜が、多数、確認される。汚泥濃縮タンク及び汚泥消化タンクは何らかの補修が必要と思われる。・汚泥管廊にひび割れが見られる。トップライト部であり、補強又は取壊し復旧が必要となる。・放流渠樋管に円周方向のクラック(幅10mm)が複数発生しており復旧が必要である。                                      以  上

放流渠樋管の円周方向クラックBmax=10mm 10本程度

越流板の損傷

汚泥掻寄機チェーンの外れ及びフライト板破損 送風機損傷2台

管理機械棟玄関地中梁2箇所に亀裂図 2-2-9 堀之内浄化センターの主な被災状況

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-52

ア 堀之内浄化センターの概要と被災状況(図 2-2-8 参照)

イ 被害状況写真

写真 2-2-30 管理棟入り口破損状況 写真 2-2-31 堀之内 1 号幹線

芋川水管橋台クラック状況

堀之内浄化センターの概要(平成15年度末現在)

所在地 処理水量 処理区域処理人口

約 23,OOO人魚沼市(旧堀之内町)新道島 魚沼市の旧堀之内、小出、 広神、湯之谷の4地区

約 9,000m3/日 平均

被災施設 対策

流入汚水管 ・  漏水の拡散防止のため  大型土のうの設置

被害状況

水処理施設

仮処理施設築造↓

エアレーションタンクの伸縮継ぎ手の補修

流入管の抜け出し、分配槽継ぎ手部が破損

最初沈殿池、エアレーションタンク、最終沈殿池が沈下し、伸縮継手が破損

エアレーションタンク上部が開き、止水板が切れ、管廊内に汚水が流出、機器類が水没し故障

堀之内浄化センターの被災内容

汚泥処理施設

送泥管継ぎ手部が破損、汚泥が管廊内に流出、機器類が水没し故障

濃縮タンク、消化タンクが傾斜、機器使用不能

簡易沈殿 消化槽内↓    ↓機械濃縮

↓ 移動脱水車

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

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写真 2-2-32 流入管からの漏水 写真 2-2-33 水処理施設のずれから

の漏水

写真 2-2-34 水処理施設のずれ 写真 2-2-35 汚泥濃縮タンクの傾斜

写真 2-2-36 汚泥消化タンク連絡通路 写真 2-2-37 汚泥消化タンク連絡通路

の破損状況 ① の破損状況 ②

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-54

(5) 都市公園等の被害 ① 街路事業の被害 震災後、直ちに該当する地域機関、市町村及びに土地区画整理組合から被害

状況について報告を求めたところ、県施工の施行中である都市計画道路一箇所

においてのみ被災が報告された。街路の被災については、街路事業・土地区画

整理事業・都市再開発事業等の都市事業で施工される都市計画道路の内、施工

完了後から供用開始前までに限られる。報告された箇所は施行中の盛土が沈下

したことから、当年度工事において対応することとなった。 ② 都市公園の被害

公園には、都市公園法に基づき県及び市町村が管理する都市公園とそれ以外

の市町村が管理する都市施設等(以下都市施設と略する)の2種類がある。地

震発生後、都市公園・都市施設の状況の把握は、市町村での状況把握の優先順

位が低いことから時間を要した。国土交通省と災害査定に関する事前協議を行

った結果、当初、降雪期を迎え現地査定が難しいこともあり年度内に災害査定

を完了させる予定であったが、災害査定完了時期を1月末までと定められた。

被災した各市町村では、都市災害以外の災害査定も受検する必要があるが、担

当職員の手が回らず定められた期限まででは災害査定を受けることが困難な状

況であった。このため、国土交通省と協議し、災害査定に関する事務手続きや

受検資料の簡素化を図ると共に、資料作成の応援要請があった小千谷市と川口

町に対し、都市整備課が窓口となって県及び市(新潟市、上越市)の公園担当

職員による応援を行い、査定設計書の作成の他、災害査定時に立会い、現場状

況の説明など助言を行った。 被災が確認された施設の内訳は、都市公園では県営公園3施設の3箇所・市

町村営公園36施設の48箇所、都市施設では市町村管理の27施設の35箇

所の併せて64施設の82箇所で被害が発生した。 このうち、被害規模が小さく維持管理と判断される被害箇所を除き、災害復

旧事業として災害申請を行った箇所は、都市公園では県3箇所・市町村37箇

所、都市施設では市町村22箇所である。災害申請を行った施設のうち特に被

害が大きかった箇所としては、中越地震の震央に も近い川口町蒼丘の杜公園

がある。同公園は、体育館、野球場、芝生広場など全ての施設が被災した。 災害申請を行った、都市公園および都市施設の箇所と被災概要の一覧を表

2-2-21 に示す。被災報告を受けた都市施設の中には、陸上競技場が被災し、3

cm 程度の不陸が生じた結果、公認競技場として利用できなくなる事例や、スキ

ー場のリフトや休憩場・テニスコートなど利用料を徴収する施設の被災事例、

平成 23 年に予定されている新潟国体後に廃止される可能性がある屋外プール

の配管が被災した事例等、災害申請が可能か判断に苦慮する事例が報告された。 国土交通省との事前協議の結果、下記のような条件を原則満たす施設を申請可

能と整理した。

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

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1 管理する地方自治体で管理条例や利用規則などを設けるとともに、施設

の管理台帳を備えている施設。 2 管理費を自治体の予算書に計上されているなど自治体の管理であること

が確認できる施設。 3 利用料、入場料等を徴収する施設では、電気代や人件費の一部などに限

られ、施設の原価消却や利益が含まれていない施設。 4 近隣住民以外の不特定多数が利用申し込むなど、利用できる施設。 5 復旧は、原形復旧を原則として、従前の機能が回復できる 低限の範囲

を申請する施設。 以上により、各種の公認競技場については公認が更新できるまで、利用料を徴

収する施設では、赤字を一般会計から補填している施設が申請可能となった。

また、国体関連の施設では、県内に現状では代替施設が無いことも考慮して原

形復旧でなくプールとして機能が回復できる新しい配管で申請することとなっ

た。 被災時の避難場所や救援物資の集積場所として利用される公園が被災したこ

とは、本震災では被災者の避難に影響が出ない程度の規模の被害であったこと

であるが、防災の観点から考える必要がある。 表 2-2-21 都市公園および都市施設の箇所と被災概要の一覧

平成 年 月No. 管内 施設区分 施設名 種別 市町村名 地名 被災状況

1 巻 都市公園 国上健康の森公園近隣公園 分水町 国上

浄化槽沈下、破損

2 長岡 都市公園 希望ヶ丘公園街区公園 長岡市 希望が丘3丁目

東屋一部破損

3 長岡 都市公園 ふれあい緑道 緑道 長岡市 永田1丁目ほか 園路沈下等、照明破損

4 長岡 都市公園 栖吉公園街区公園 長岡市 栖吉町

東屋傾斜

5 長岡 都市公園 悠久山公園総合公園 長岡市 悠久町ほか

公園内道路陥没L=200m、池護岸倒壊・破損 L=400m、東屋損傷8

6 長岡 都市公園 悠久山公園総合公園 長岡市 悠久町ほか

野球場スタンド、フェンス損傷プール(屋外・屋内)損傷

7 長岡 都市公園 長岡墓地公園 墓園 長岡市 鉢伏町園路・園地亀裂、法面崩壊

8 長岡 都市公園 長岡墓地公園 墓園 長岡市 柿町園路・園地亀裂、法面崩壊、給水管損傷

9 長岡 都市公園 長岡ニュータウン公園

総合公園 長岡市 青葉台1丁目

池ひび割れ・漏水、修景池土砂堆積、園路亀裂、石組み損傷

10 長岡 都市公園 見附運動公園運動公園 見附市 本町

多目的グラウンド亀裂等

11 長岡 都市公園 見附運動公園運動公園 見附市 本町

野球場損傷

12 長岡 都市公園 水道山公園地区公園 見附市 嶺崎2丁目

水道山の家(休養施設)損傷

13 長岡 都市公園 越路町河川公園都市緑地 越路町 浦

野球場フィールド等損傷

公共土木施設(公園)

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第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-56

No. 管内 施設区分 施設名 種別 市町村名 地名 被災状況

14 長岡 都市公園 越路町河川公園都市緑地 越路町 浦

テニスコート舗装、フェンス損傷

15 長岡 都市公園 越路町河川公園都市緑地 越路町 浦

池外周園路沈下・亀裂等

16 長岡 都市公園 白山運動公園運動公園 小千谷市 山谷

野球場、テニスコート、陸上競技場、多目的運動広場等損傷

17 長岡 都市公園片貝ふれあい公園けやき園

街区公園 小千谷市 片貝町

休養施設損傷 1棟

18 長岡 都市公園 江東公園街区公園 小千谷市 若葉

L型擁壁及び側溝変位L=40m

19 長岡 都市公園 両新田公園街区公園 小千谷市 若葉

擁壁変位 L=30m

20 長岡 都市公園 やすらぎ公園街区公園 小千谷市 土川

東屋破損1基

21 長岡 都市公園信濃川左岸河川公園

総合公園 小千谷市 高梨町

便所棟傾斜、便所棟周囲舗装・防護柵沈下、園路等沈下、亀裂

22 小出 都市公園

県営奥只見レクリェーション都市公園(道光・根小屋地域)

レク都市

魚沼市(旧 堀之内町) 根小屋

橋取付け部段差、園路等亀裂・陥没、法面崩壊、護岸亀裂

23 小出 都市公園

県営奥只見レクリェーション都市公園(小出地域)

レク都市

魚沼市(旧 小出町) 干溝

園路舗装損傷、便所一部沈下

24 小出 都市公園

県営奥只見レクリェーション都市公園(須原地域)

レク都市

魚沼市(旧 守門村) 須原

石積崩壊、園路(橋取付部)段差等、法面亀裂

25 小出 都市公園 小出公園総合公園

魚沼市(旧 小出町) 青島

球技場法面上部亀裂L=85m

26 小出 都市公園 小出公園総合公園

魚沼市(旧 小出町) 青島

野草園土砂崩壊 L=70m

27 小出 都市公園 小出公園総合公園

魚沼市(旧 小出町) 青島

ジャンプ台損傷 L=73m

28 十日町 都市公園 河内公園街区公園 十日町市 河内町

築山表面崩壊・クラック、築山内ヒューム管折れ

29 十日町 都市公園 宮本公園街区公園 十日町市 辰甲

ブロック積み傾斜、崩壊等

30 十日町 都市公園 あじさい公園都市緑地 十日町市 八箇戊

駐車場、園路クラック及び陥没

31 十日町 都市公園 十日町駅東口公園都市緑地 十日町市 丑

擁壁、フェンス損傷タイル舗装陥没・隆起

32 十日町 都市公園 明石公園街区公園 十日町市 川治

ブロック積み隆起、舗装等損傷

33 十日町 都市公園 十日町市緑道 緑道 十日町市 寅甲舗装陥没3箇所 L=30m街灯損傷2基

34 十日町 都市公園 十日町市緑道 緑道 十日町市 寅甲 舗装陥没1箇所 L=25m

35 十日町 都市公園 十日町市総合公園総合公園 十日町市 山本

野球場損傷、テニスコートクラック、ローラースキーコース損傷、歩道沈下、駐車場法面崩落

36 十日町 都市公園 十日町市総合公園総合公園 十日町市 辰乙

進入路陥没等

37 十日町 都市公園 松葉沢公園地区公園 川西町 坪山

園路クラック・法面崩壊、展望台支柱ずれ・破損5箇

公共土木施設(公園)

Page 35: 第2節 公共土木施設等の被害S39.6 新潟地震 *3,277 *10,966 *41,019 *10,661 *65,923 S36.9 第2室戸台風 2,822 19,332 108,183 130,337 H16.7 7.13水害 71

第2章第2節(公共土木施設等の被害)

2-57

平成 年 月No. 管内 施設区分 施設名 種別 市町村名 地名 被災状況

17 長岡 運動場 中之島町野球場 運動場

中之島町 中条 グランド亀裂、駐車場亀裂

18 小出 公園 須原スキー場 運動公園

魚沼市(旧:守門村)

須原 リフト支柱1基傾斜安全施設支柱1基移動リフト搬器落下 60台

19 小出 公園 須原スキー場 運動公園

魚沼市(旧:守門村)

須原 リフト支柱1基傾斜

20 十日町 公園 下条中央公園 公園 十日町市 下組 公園進入路  L=300m園路       L=200m水道管損傷  L=250m照明施設損壊 2基

21 十日町 公園 下条中央公園 公園 十日町市 下組  管理棟入口階段クラック 管理棟天井落下、基礎沈下

22 十日町 運動場 陸上競技場 運動場

十日町市 中条背戸 全天候舗装沈下トラック部    A=1500㎡インフィールト部   A=1000㎡

23 十日町 運動場 当間多目的グラウンド

運動場

十日町市 珠川 散水用配管損傷 L=2mピッチ部うねり A=500㎡

都市施設等