第3章 国レベルの窒素循環モデル...4770 2339-489 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 米 飲用牛乳...

18
219 1.国レベルの物質循環モデル さまざまな有機性副産物・残さをバイオマスとし て利活用する試みは,個々の地域ごとに,具体的な バイオマスの種類と地域の状況にあわせて検討すべ き問題である。また,活用・成功事例を同種の廃棄 物処理で苦慮している地域に応用することは,わが 国全体に係わる環境問題を解消する鍵になるものと して期待される。これらに加え,地域の総体である 日本全体における副産物・残さの発生,処理状況を 明らかにすることも必要である。 日本全体を対象とした物質循環に関するこれまで の研究成果として,岩元・三輪 26) ,袴田 27) による, 「全国版養分収支算定システム」(以下,算定システ ム)を用いた,1960年・1982年・1987年・1992年の 経年的な窒素(N)収支の算定がある。これらの算 定結果からは,わが国における食飼料システムの問 題点である輸入依存と,環境への窒素負荷増大の傾 向が明らかにされている。しかし,「算定システム」 では,副産物・残さの移行先である農地・大気・水 系を一括して「環境」としており,リサイクル・廃 棄物処理の観点からみると,この部分をより実態に 則したモデルとして展開し,フローを算定する必要 がある。 本章では,上記の「算定システム」を基盤として, 市町村規模程度の地域を対象とする有機性廃棄物の 農地還元シナリオにおいて提案された,「農地まわ りモデル」 28) と結合した。そして,副産物・残さ由来 の堆肥が農地へ投入され,作物の生産を通して窒素 (N)が循環するという食飼料由来の窒素循環モデル を構築し,日本全体における窒素フローの実態把握 を試みた。以下,本モデルを,「国レベルの窒素循 環モデル」と呼ぶ。 リサイクル・廃棄物処理に関するフローの算定 は,既存の統計資料・文献などから収集した,副産 物・残さの発生,利用状況に関するデータを用いて 行った。食品加工関連の副産物などに関するデータ は,取得が困難であったため,総体としては一部に 未確定なフローが残った。しかし,家畜ふん尿・生 活排水などの主要部分については,かなり高い精度 で,実態を反映した算定ができたと考えられる。実 際の算定は,1996年当時を事例とした。その主な理 由は,既存の文献などから算定精度の検証用として 利用可能なデータが入手できたことによる。フロー に関する読者の判断を容易にするため,いくつかの 点で算定精度の検証も行っている。 2.国レベルの窒素循環モデルの概要 国レベルの窒素循環モデルにおける食飼料と主要 な副産物・残さの物流を,図Ⅴ-18に示す。 図Ⅴ-18のなかの①は,「算定システム」に相当す る。また,食料消費の結果として発生する副産物・ 残さを,②の有機性副産物資源に示した。これら の副産物資源のうち,家畜ふん尿や食品加工副産物 の一部は,堆肥や液肥として利活用されることから, 【3-1】窒素循環モデルの概要 現在,わが国は世界で屈指の食飼料輸入国となっている。輸入および国産の食飼料か らは,加工や消費・処理の過程でさまざまな副産物・残さが発生するが,それらは必 ずしも十分に利活用されていない。また,農地等から流出した窒素などの養分が,湖 沼や内海などの閉鎖性水域における富栄養化などの原因となり,その対策が課題とな っている。本章では,国レベルの食飼料由来の窒素循環モデルを構築し,わが国にお ける副産物・残さの発生・処理状況を明らかにするとともに,日本全体の窒素フロー の実態について述べる。 国レベルの窒素循環モデル 第3章

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Page 1: 第3章 国レベルの窒素循環モデル...4770 2339-489 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 米 飲用牛乳 乳製品向け牛乳 魚介類 精糖(加工) ナタネ(加工用) 大豆油(加工)

219

第Ⅰ部

第Ⅱ部

第Ⅲ部

第Ⅳ部

第Ⅴ部

付属資料

1.国レベルの物質循環モデル

さまざまな有機性副産物・残さをバイオマスとし

て利活用する試みは,個々の地域ごとに,具体的な

バイオマスの種類と地域の状況にあわせて検討すべ

き問題である。また,活用・成功事例を同種の廃棄

物処理で苦慮している地域に応用することは,わが

国全体に係わる環境問題を解消する鍵になるものと

して期待される。これらに加え,地域の総体である

日本全体における副産物・残さの発生,処理状況を

明らかにすることも必要である。

日本全体を対象とした物質循環に関するこれまで

の研究成果として,岩元・三輪26),袴田27)による,

「全国版養分収支算定システム」(以下,算定システ

ム)を用いた,1960年・1982年・1987年・1992年の

経年的な窒素(N)収支の算定がある。これらの算

定結果からは,わが国における食飼料システムの問

題点である輸入依存と,環境への窒素負荷増大の傾

向が明らかにされている。しかし,「算定システム」

では,副産物・残さの移行先である農地・大気・水

系を一括して「環境」としており,リサイクル・廃

棄物処理の観点からみると,この部分をより実態に

則したモデルとして展開し,フローを算定する必要

がある。

本章では,上記の「算定システム」を基盤として,

市町村規模程度の地域を対象とする有機性廃棄物の

農地還元シナリオにおいて提案された,「農地まわ

りモデル」28)と結合した。そして,副産物・残さ由来

の堆肥が農地へ投入され,作物の生産を通して窒素

(N)が循環するという食飼料由来の窒素循環モデル

を構築し,日本全体における窒素フローの実態把握

を試みた。以下,本モデルを,「国レベルの窒素循

環モデル」と呼ぶ。

リサイクル・廃棄物処理に関するフローの算定

は,既存の統計資料・文献などから収集した,副産

物・残さの発生,利用状況に関するデータを用いて

行った。食品加工関連の副産物などに関するデータ

は,取得が困難であったため,総体としては一部に

未確定なフローが残った。しかし,家畜ふん尿・生

活排水などの主要部分については,かなり高い精度

で,実態を反映した算定ができたと考えられる。実

際の算定は,1996年当時を事例とした。その主な理

由は,既存の文献などから算定精度の検証用として

利用可能なデータが入手できたことによる。フロー

に関する読者の判断を容易にするため,いくつかの

点で算定精度の検証も行っている。

2.国レベルの窒素循環モデルの概要

国レベルの窒素循環モデルにおける食飼料と主要

な副産物・残さの物流を,図Ⅴ-18に示す。

図Ⅴ-18のなかの①は,「算定システム」に相当す

る。また,食料消費の結果として発生する副産物・

残さを,②の有機性副産物資源に示した。これら

の副産物資源のうち,家畜ふん尿や食品加工副産物

の一部は,堆肥や液肥として利活用されることから,

【3-1】窒素循環モデルの概要

現在,わが国は世界で屈指の食飼料輸入国となっている。輸入および国産の食飼料からは,加工や消費・処理の過程でさまざまな副産物・残さが発生するが,それらは必ずしも十分に利活用されていない。また,農地等から流出した窒素などの養分が,湖沼や内海などの閉鎖性水域における富栄養化などの原因となり,その対策が課題となっている。本章では,国レベルの食飼料由来の窒素循環モデルを構築し,わが国における副産物・残さの発生・処理状況を明らかにするとともに,日本全体の窒素フローの実態について述べる。

国レベルの窒素循環モデル第3章

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1.「算定システム」における窒素フローの算定

(1)フロー算定用の食飼料の需給データ

わが国の食飼料システムを対象として窒素(N)

フローを算定する場合,輸入の影響が極めて大きい

ことから,国内生産と輸入とを明確に区別できる形

で算定を行う必要がある。図Ⅴ-18で①に示した「算

定システム」では,食料品目については,国内生産

および輸出入の産出入量と用途別供給量(飼料用・加

工用・食用)が物量ベースで記載された食料需給表29)

のデータを,また,輸入量の多い家畜飼料は,流通

飼料便覧30)などの年単位の統計資料データを用いた。

「算定システム」は,岩元・三輪による原版の開

発以降,現在も(独)農業環境技術研究所において

整備・拡充が続けられている。現時点で対象として

堆肥化利用分へのフローとして示した。これら以外

の多くは,未利用あるいは廃棄物として処理されて

いるものとし,図右下の大気(環境)と水系(環

境)へのフローとして示した。畜産系(家畜ふん

尿),食品系(加工残さ),生活系(生ごみ・生活排

水)の各副産物に関する利活用と処理・廃棄のフロ

ーは,③・④・⑤で示した。

⑥の部分は,「農地まわりモデル」に相当する。

農地へは,利活用分としての堆肥などの他に,窒素

固定・灌漑・降雨・化学肥料・脱窒などによる窒素

の出入りがある。農地に入った窒素の一部は,米や

野菜等の主産物に形を変えて,①の「算定システム」

における農産物(含飼料)の国内生産につながる。

これは,農地を副産物・残さの活用先とする,現況

に近い形態での循環モデルになっている。

220

第Ⅴ部/畜産系バイオマスに係わるモデルと国レベルの窒素循環モデル

農水畜産物需給状況

水産物 畜産物 農産物(含飼料)

輸出 輸入 国内生産

有機性副産物資源 (畜産系・食品系・生活系)

工芸・工業用

2

農産物 (主産物・ 副産物)

6

農地 (水田・畑・樹園地・牧草地)

大気(環境)

水系(環境)

家畜ふん尿 3 堆肥化利用分

林産物 (堆肥用資材)

食品系由来肥料 4

生ごみ 5

生活排水 5

食生活

ふん尿等

副産物

主産物

稲わら等

堆肥敷料

窒素固定 化学肥料

飼料

飼料

堆肥等

降雨

灌漑

食品 加工業

稲わら もみがらなど

食品加工 残さ

バーク おがくず

脱窒 焼却(稲わら)

堆肥化過程の ロス

畜産業

【図Ⅴー18】国レベルの窒素循環モデルにおける物流

【3-2】窒素フローの算定手順

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いる約70の食飼料品目のうち,主要な品目の産出入

量と用途別供給量を,表Ⅴ-13に示す。

多くの穀類や植物油脂類の食料品目については,

最終的に食料として消費されるまでの過程で副産物

が発生し,その大半は飼料として利用されている。

たとえば,米ぬかの発生量は,食料需給表に記載さ

れた「歩留り」を利用して求めた。「歩留り」とは,

粗食料(食料需給表における各食料品目の物量を計

上する際の形態の総称)に対する純食料(可食部)

の割合のことをいう。また,大豆から油を搾油する

際に発生する,大豆油粕のような加工時の副産物発

生量は,食品産業統計年報31)から求めた。つぎに示

す物流モデルは,これら国内で発生する副産物の物

流も含めて構築したものである。

(2)物流モデル

「算定システム」における主要な品目の物流モデ

ルを,図Ⅴ-19に示す。物流モデルは,産出入部門と

して,国内生産食飼料・輸入食飼料・輸出の三つ,

用途部門として,穀類保管・食品加工業・畜産業

の三つ,さらに,人間による食料の消費を表す食生

活と,すべての副産物・残さの移行先としての環境

(農地を含む)を加えた,合計八つの要素からなる

モデルである。

国  内 飼料用 在庫増減 粗食料 歩留り 加工用 純食料

生産量 輸入量 輸出量 品  目

小麦

トウモロコシ

コウリャン

デンプン

カンショ

バレイショ

しょうゆ

大豆

野菜類

果実類

牛肉

豚肉

鶏肉

鶏卵

478

10344

0

0

2764

1109

3086

1153

148

14621

3900

547

1264

1236

33

2564

5188

3351

6743

2366

1

673

31470

5368

0

0

0

0

0

0

0

560

5907

634

16258

2538

126

3

721

0

4870

2466

4384

873

964

634

168

110

0

3418

5921

2

1922

1

0

0

254

670

679

408

207

739

229

0

0

6

0

0

0

0

5

10

0

1

15

0

0

3

0

0

0

6

342

8

0

1

0

0

0

-

0

0

0

0

0

0

-16

783

335

171

-48

0

0

2

51

0

-15

5

95

11

0

0

0

-2

660

-31

0

8

0

0

0

-

0

0

0

0

0

0

478

9

12037

2367

0

54

28

0

110

0

0

0

0

0

0

0

0

0

2894

2

0

0

31470

5368

254

670

679

408

207

739

229

560

416

578

3760

0

930

305

1075

0

4407

0

20

0

0

0

0

0

0

6562

0

31

1923

27

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

5328

9345

120

0

2008

660

2252

1138

310

15322

6888

1387

2090

1819

201

2549

5136

0

8768

2339

0

634

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0.78

0.91

0.62

0.76

1.00

0.90

0.90

1.00

1.00

0.86

0.71

0.70

0.70

0.77

1.00

0.87

1.00

1.00

0.54

1.00

-

0.77

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

4156

8467

74

0

2008

594

2027

1138

310

13134

4874

971

1463

1401

201

2218

5136

0

4770

2339

-

489

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

飲用牛乳

乳製品向け牛乳

魚介類

精糖(加工)

ナタネ(加工用)

大豆油(加工)

牧草

青刈トウモロコシ

アルファルファミール,ペレット

飼料用乾草キューブ

輸入ビ-トパルプ

魚粉

肉骨粉

大豆油粕

輸入わら

コールグルテンフィード

チ-ズ

単位:千t【表Ⅴー13】主要な食飼料品目の産出入量と用途別供給量(1996年)

第Ⅰ部

第Ⅱ部

第Ⅲ部

第Ⅳ部

第Ⅴ部

付属資料

221

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ち16%を窒素含有率とする)を乗じて窒素量に換算

し,これらを集計して求めた。なお,国内生産食飼

料および輸入食飼料から直接環境(農地を含む)

へいたるフローは,主として,海面養殖と内水面養

殖による養魚用魚粉の消費や,各食飼料品目の減耗

量によるものである。

図Ⅴ-20に,「算定システム」を用いて算定した

1996年の窒素のフロー図を示した。輸入と国内生産

食飼料の合計(1,706千t)から養殖魚生産の消費等

を除いた 1,635千tの窒素が,総消費量としてさま

ざまな形態をとりながら,穀類保管・畜産業・食

品加工業の各要素を経由している。その間,これら

の要素からの輸出や在庫増減があり,最終的に食生

活の人間による食料消費にいたるまでに,穀類保管

から減耗量として3千t,畜産業から家畜ふん尿と

畜産関連の副産物として785千t,食品加工業から

152千t,食生活から食品廃棄物(生ごみ),し尿,

これらの要素をストック・フローの面からみる

と,つぎのようになる。

国内生産食飼料・輸入食飼料の二つの要素は,

食飼料品目ごとの年間消費量を,国産と輸入の区分

でまとめたものであり,これらの物量は,用途によ

って,穀類保管・食品加工業・畜産業・食生活の

四つの要素へのフローとして分配される。これらの

要素のうち前三者には,穀類保管における米の備蓄

量のようにストック(在庫)が存在し,年間収支の

結果として,ストックへの繰り込みや持ち出し(在

庫増減)が発生する。

輸出・環境(農地を含む)の二つの要素は,各

要素からの物量の移行量(排出量)を合算してまと

めたものである。物流モデルにおける経路ごとの窒

素(N)フローの値は,個々の食飼料品目経路ごと

の移行量に,日本食品標準成分表32)・日本標準飼料

成分表33)へ記載された品目別蛋白質含有率(このう

222

第Ⅴ部/畜産系バイオマスに係わるモデルと国レベルの窒素循環モデル

輸出

環境(農地を含む)

輸入食飼料

穀類保管

缶詰 しょう油

とうもろこし 小麦粉

とうもろこし こうりゃん ふすま 米ぬか

大豆油かす なたね油かす 魚粉魚粕

コーングルデン類

魚介類 大豆など豆類 バター・チーズ

飼料用乾草 ビートパルプ 肉骨粉

大豆油かす

輸入 畜産物

肉類 牛乳

穀類

畜産物

家畜ふん尿 副産物

品廃棄物 し尿

生活雑排水

牛乳

加工食品

養魚用魚粉

野菜・果実 生鮮魚介類

国内生産食飼料

魚介類 いも類 粗糖

いも類 野菜・果実 生鮮魚介類

穀類

生鮮魚介類

養魚用魚粉

牧草 青刈り牧草

米 麦類

とうもろこし こうりゃん

畜産業

肉・卵・牛乳等の 畜産物

食生活

食品加工業

魚介類加工品 みそ・しょう油 でんぷん

バター・チーズ 油脂類

小麦粉製品 砂糖類

【図Ⅴー19】「算定システム」における主要な品目の物流モデル

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ては「生物系廃棄物リサイクル研究会」の資料34)か

ら求めた。

作物残さのうち,物量の多い稲わら・麦わら・も

みがらと,林産系の副産物・残さについては,発生

量・含水率・用途別利用量を,羽賀35)から求めた。

林産系の副産物・残さについては,畜舎の敷料や堆

肥化の副資材に用いるおがくず等の食料生産に関連

するもののみを対象とし,建築・製紙などの用途に

使用された廃材・紙類などは,対象に含めていない。

食品加工系については,大豆油粕から魚粉魚粕まで

は,「算定システム」の推計値を用いた。コーング

ルテンフィード以下は,飼料月報36)・各種資料31)37)~39)

から求めた。

(2)畜産系の窒素量に関する検証

「算定システム」を用いて推計した環境への排出

量のうち,畜産系(畜産業から排出される家畜ふん

尿と畜産副産物)の窒素(N)量と,表Ⅴ-14におけ

生活雑排水(台所・風呂・洗濯などの排水)として

659千t,合計1,599千tの窒素が,副産物・残さと

して発生し,環境へ排出される。なお,本量と環境

(農地を含む)(1,670千t)との差である 71千tは,

前述の養魚用魚粉の消費などによるものである。

2.有機性副産物資源の発生量とその検証

(1)副産物・残さの発生量データ

以上のように,「算定システム」を用いて,畜産

業・食品加工業・食生活から発生する副産物・残さ

に含有される窒素(N)量を推計した(図Ⅴ-18の②

に示される有機性副産物資源に相当する)が,推計

値の算定精度を検証するために,また,副産物・残

さのフロー算定用データとして用いるために,既存

の文献・資料類から副産物・残さの発生量などのデ

ータを収集し,これを表Ⅴ-14にまとめた。

表Ⅴ-14のデータのうち,畜産系と食生活系につい

223

第Ⅰ部

第Ⅱ部

第Ⅲ部

第Ⅳ部

第Ⅴ部

付属資料

輸出

環境(農地を含む)

輸入食飼料

輸入畜産物

穀類保管

1194

6

1670

単位:千t

390132

119

65

153

39

4

441

154

83

32

3 152

785 659

299

159

98

33

304230

184

国内生産食飼料

512

畜産業

国産畜産物

食生活

食品加工業

94 183

【図Ⅴー20】わが国の食飼料システムにおける窒素収支(1996年)

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産副産物の窒素量に相当すると考えられる。家畜ふ

ん尿の算定精度については,1999年における飼養家

畜一日一頭羽当たりのふん尿中の窒素原単位を用い

た原田40)による見積もり量の721千tとほぼ同等であ

った。また,表Ⅴ-14の発生量ともほぼ同量であるこ

とが確認できた。

(3)食生活系の窒素量に関する検証

「算定システム」を用いて推計した環境への排出

量のうち,食生活系の窒素(N)量と表Ⅴ-14の副産

物発生量との整合性を検討した。

「算定システム」によると,食生活から排出され

る窒素量は,659千tであった。この内容は,食品廃棄

る副産物発生量との整合性を検討した。

「算定システム」の推計では,畜産業からの窒素

総排出量は,785千tであった。この一部が家畜ふ

ん尿に対応するが,「算定システム」では直接家畜

ふん尿の発生量を推計できないことから,以下の方

法で推計した。すなわち,牛・豚・鶏の飼養家畜全

体に供給された飼料の総窒素量(915千t)から,

屠畜体(119千t)および生産物(鶏卵・牛乳の合

計94千t)に含まれる窒素量を差し引き,屠畜の際

に発生する副産物(肉骨粉・フェザーミール)の飼

料利用分(22千t)を加えて,家畜ふん尿の窒素量

を724千tと推計した。この量と総窒素排出量との

差の 61千tは,屠畜時や精肉化の際に発生する,畜

224

第Ⅴ部/畜産系バイオマスに係わるモデルと国レベルの窒素循環モデル

データ (年次)

発生量 (千t/年)

窒素 含有率 農地 その他 廃棄 食用 飼料 肥料 不明 合計 食用 飼料 肥料

利用状況(%) 利用状況に対する窒素量(千tN)

農地 その他 廃棄 副産物種類

家畜ふん尿

畜産物残さ

し尿

浄化槽汚泥

農業集落排水汚泥

下水汚泥

稲わら

麦わら

もみがら

合 計

おがくず

1995

1997

1670

9430

1995

1995

1995

1995

1996

1996

1996

1996

1996

1996

1996

1996

1996

1996

1996

1996

1996

83.7

749.0

119.7

14.0

0.33

88.6

67.8

2.8

10.4

81.1

194.8

64.3

59.5

17.8

27.3

10.0

4.5

8.0

6.3

3.1

5.01%

0.60%

5.18%

5.18%

5.18%

0.62%

0.36%

0.45%

0.15%

0.53%

7.38%

5.94%

1.84%

3.17%

10.26%

1.10%

5.30%

2.83%

0.86%

12.7

4.5

0.3

17.4 304.4 30.0 1.2 0.0

3.62%

11.2

1.0

4.5

2.4

2.7

5.1

0.8

0.8

1.2 1.5

18.7

8.8

1.0

7.9

7.9 16.7

44.4

1.1

1.8

47.3

40.8 395.5

3.1

0.8

2.8

0.4

20.5

20.9

0.3

1.2

1.5 28.3

6.3

9.7

23.0

0.1

1.1

0.6

6.7

1.1

1.3

2.5

173.1

35.9

27.7

17.7

26.2

10.0

7.4

4.4

2.0

1.8

0.6

1.1

99.5

96.0

100.0

92.8

0.5

4.0

7.3

70.0 16.0

64.0

19950

13500

320

85500

10942 11.7

780

2320

2600

4600

3.9

24.4

16.6

34.6

43.0

65.5

37.5

17.2

62.0

1.7

12.8

21.0

11.0

4.6

27.9

27.0

10.0

84.0

563

266

904

84

732

100.0

282

4.0

87

<畜産系>

<食生活系>

<作物残さ>

<食品加工系>

<林産系>

合 計

大豆油粕

菜種油粕

魚粉魚粕

コーンク ル゙テンフィード

コーングルテンミール

ビール粕

清酒粕

米ぬか油粕

おから

しょう油粕

合 計

バーク

利用状況のうち,「肥料」は堆肥用の資材と敷料を含み,「農地」は鋤込み・暗渠資材・マルチの合計,「その他」は工業用・工芸用等を含み,「廃棄」は焼却・燃料等と廃棄の合計である。 「し尿」から「下水汚泥」までの年間発生量の単位は千k褄である。また,「浄化槽汚泥」から「下水汚泥」までの副産物の窒素含有率は,乾燥固形物に対する含有率である。乾燥固形物への換算係数は 0.02 である。 「ビール粕」はすべて飼料用とした。「米ぬか油粕」の利用状況は推計値である。

注1: 注2: 注3:

【表Ⅴー14】食料と飼料の生産・加工・消費に係わる有機性副産物の発生量と利用状況

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示した。副産物・残さの合計値(窒素量)である

396千tのうち,食用・飼料・肥料での利用が,そ

れぞれ17千t・304千t・30千tで,これら以外で

の利用が,44千tであった。図Ⅴ-20では,環境中に

排出される窒素量は152千tとなっており,食用・

飼料用以外の利用量(肥料用30千tと残り四つの用

途の合計量44千t)を差し引くと,78千tになる。

この差し引き量の内容は,未対象の加工食品や副産

物,または,加工食品の生産で多く使用される水処

理の際に発生する汚泥などが考えられる。しかし,

これらの品目に関する発生量や窒素含有率の取得が

困難であったことから,フローの確定はできなかっ

た。したがって,ここでは,食品加工業から環境中

に排出される窒素量152千tのうち,肥料として利

用されている30千tのみを,4項で検討する副産

物・残さの廃棄フローの対象とした。

以上のように,畜産系・食生活系に関する「算定

システム」の推計値を既存のデータと比較した結果

と,後述のし尿の「汲み取り式」に関する検証結果

とをあわせて考えると,畜産業と食生活から環境へ

排出される窒素量に関する「算定システム」の推計

値は,ほぼ妥当な精度を保っていたといえる。

3.家畜ふん尿の堆肥化と廃棄のフロー

図Ⅴ-18の③に示した家畜ふん尿の利活用(堆肥化)

と,廃棄フローに関する算定手順について,詳細に

説明する。

図Ⅴ-21に,家畜ふん尿の堆肥化に係わる窒素(N)

フローの推計手順と算定値を示した。生の家畜ふん

尿は,その一部が野積み・素掘りされ,これらを除

いた残りは,堆肥化の原料になるものとした。また,

堆肥化の過程でアンモニア(NH3)の揮散があり,

残りの窒素は堆肥中にとどまり農地に投入されると

いう考え方で算定した。現実の家畜ふん尿の堆肥化

は,稲わら・おがくず等の畜舎の敷料を含んだ混合

物に対して行われる。これは,図Ⅴ-18における,稲

わらや林産物の堆肥化利用分へのフローに対応して

いる。なお,ここで用いた堆肥化過程でのアンモニ

ア揮散に関するデータは,家畜ふん尿の畜種別・堆

肥化処理方式別区分に該当するものである。敷料に

ついては,この区分に対応したデータが取得できな

かったことから,現在の算定方法では,敷料の含有

する窒素分は,生産された堆肥中にそのまま残るも

のとしている。家畜ふん尿のフロー算定方法は,つ

物(生ごみ)と生活排水(し尿と生活雑排水)であ

るとみなせる。食品廃棄物の発生量に関する既存デ

ータには,厨芥(ちゅうかい)類などに関するもの

はあるが,これらは大くくりにし過ぎていることか

ら,ここでは,生物系廃棄物リサイクル研究会34)が

「家庭や外食産業からの生ごみ」排出量の算定で提

示した方法を参考にして推計した(表Ⅴ-15)。「算定

システム」における食生活への入量を,可食部(純

食料)と非可食部に分割し,可食部の供給量に,品

目別の食べ残し・未利用食品の割合41)を乗じた量と,

非可食部との合計から,食品廃棄物の窒素量を42千t

と推計したものである。総入量から食品廃棄物の分

を差し引いた残りを生活排水分とみなすと,617千t

となる。この値は,國松ら42)が,生活下水の基本原

単位から計算した543千t(=12,600万人×365日×

11.8)とは,13.5%の違いであった。なお,ここでの

比較は生活排水の総量に関するものであるが,後述

の5項では,この一部である,し尿(523千t)の

約23%に相当する「汲み取り式」の窒素量について,

生物系廃棄物リサイクル研究会から示された値との

比較を行っている。

(4)食品加工系の窒素量に関する検証

食品加工業から排出される窒素(N)は,食品加

工の際の副産物・残さによるものである。その一部

について,発生量と利用状況等を,表Ⅴ-14の下部に

225

第Ⅰ部

第Ⅱ部

第Ⅲ部

第Ⅳ部

第Ⅴ部

付属資料

食品 廃棄率

供給量 可食部

廃棄量 供給量 非可食部

合計

170.3

7.3

66.3

37.9

穀類

いも類

豆類

野菜類

果実類

肉類

鶏卵

牛乳・乳製品

魚介類

海藻類

砂糖類

植物油脂

国産粗飼料

輸入粗飼料

合 計

5.0

114.0

43.7

48.6

140.9

3.4

0.0

0.1

0.0

12.7

650.0

3.2

0.9

2.7

3.9

0.6

5.1

1.0

0.6

14.8

0.1

0.0

0.0

0.0

0.8

33.7

0.00

0.81

0.45

5.75

1.45

0.00

0.00

0.00

0.00

0.00

0.00

0.00

0.00

0.00

8.46

3.24

1.66

3.10

9.62

2.10

5.13

1.05

0.58

14.79

0.14

0.00

0.00

0.00

0.77

42.17

1.9%

' 11.7%

4.0%

10.2%

13.0%

4.5%

2.4%

1.2%

10.5%

4.0%

2.2%

6.1%

単位:千tN

食品廃棄率は,文献41)から,「食べ残し」と「未利用食品の廃棄」の両割合の合計とした。 「輸入粗飼料」の食用用途は,「大豆油粕」のしょう油と大豆たんぱく食品への利用である。廃棄率は,上記調査の調理加工品の値で代替した。

注1: 注2:

注1)

注2)

【表Ⅴー15】食生活における食品廃棄物(生ごみ)の窒素量

Page 8: 第3章 国レベルの窒素循環モデル...4770 2339-489 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 米 飲用牛乳 乳製品向け牛乳 魚介類 精糖(加工) ナタネ(加工用) 大豆油(加工)

226

第Ⅴ部/畜産系バイオマスに係わるモデルと国レベルの窒素循環モデル

ぎの通りである。

まず,家畜ふん尿の発生量(1996年,724千t)

を,1999年の牛・豚・鶏の畜種別ふん尿発生量40)を

もとに,家畜の飼養頭羽数などで調整して,畜種別

のふんと尿の発生量に区分した。

つぎに,「野積み・素掘り貯留を行っている農家

戸数の割合」40)を用いて,畜種別の野積み・素掘り

量を求め,これは,63.1千tと推計された。

そして,残りの 660.6千tを堆厩肥に利用される

ふん尿とみなし,畜種別の「ふん尿処理方式別の農

家数割合」43)と「ふん尿処理方式別の処理過程にお

ける窒素の揮散割合」43)のデータを利用して,畜種

別・ふん尿処理方式別の畜舎・堆肥化・散布時にお

けるアンモニアの揮散量を推計した。

以上の推計結果を,図Ⅴ-21の「窒素の揮散量と農

地投入量」でみると,総窒素量の660.6千tのうち,

畜舎で61.2千t,ふん尿処理時(堆肥化過程)で

207.4千t,散布時で3.4千t,合計271.9千tがアンモ

ニアとして揮散している。そして,総窒素量からこ

の量を差し引くと,生産された堆肥内にとどまる窒

素量は,388.7千tとなった。なお,野積み・素掘り

におけるアンモニアの揮散量は,堆肥化過程の畜舎

における揮散率(9.3%)を採用して5.8千tとし,残

りの57.3千tは水系へ流出するとした。これは,大

雨などの際に,堆積している野積みの表面が崩れた

り,素掘りの貯留分があふれたりした結果,周辺水

系へ流出する部分が大半を占めるのではないかと想

像したことによる。また,野積み・素掘りにおける

家畜ふん尿(生)の窒素量(1996年,723.7千tN)

家畜ふん尿の畜種別・ふん尿別の窒素量

窒素の揮散量と農地投入量(千tN) 野積み・素掘りのふん尿に含まれる窒素量(千tN)

野積み・素掘り貯留の農家戸数の割合

家畜排せつ物および窒素の年間発生量(1999年)

ふん尿処理方式別の農家数の割合 ふん尿処理方式別の処理過程における窒素の揮散割合

土壌へのフローは 0 とし,大気以外へのフローは, すべて水系へのフローとした。

飼養頭羽数 (千頭羽) 畜 種

排せつ物(千t)

ふん 尿 合計 ふん 尿 合計

窒素排せつ量(千t)

乳牛種 1927

肉用種 2901

豚 9900

採卵鶏 181221

ブロイラー 118134

合 計

23858

19023

7789

7721

5438

63829

31858

26842

22934

7958

5605

95198

7049

7018

14460

28526

79.1

66.8

30.0

187.8

109.6

473.3

157.6

142.8

125.9

187.8

109.6

723.7

78.5

76.0

95.9

250.4

処理方式 畜 種 ふん尿の 窒素量

ふん尿 処理時

ふん尿 散布時

農地 投入量 畜舎 合計

(大気) (農地)

乳 牛

肉 牛

混合・堆肥化

混合・スラリー

分離(ふん)

分離(尿)

24.7

25.2

30.3

44.6

1.1

2.6

3.1

4.6

3.4

2.7

0.6

4.9

0.0

3.4

0.0

0.0

4.5

8.7

3.7

9.5

20.2

16.5

26.6

35.1

混合・堆肥化

混合・スラリー

分離(ふん)

分離(尿)

121.7

0.0

3.8

5.3

7.8

0.0

0.2

0.3

16.7

0.0

0.1

0.6

0.0

0.0

0.0

0.0

24.5

0.0

0.3

0.9

97.3

0.0

3.5

4.4

豚 混合・堆肥化

混合・スラリー

分離(ふん)

分離(尿)

21.4

12.6

19.2

60.3

3.4

1.9

2.8

8.9

5.2

3.1

3.8

16.3

0.0

0.0

0.0

0.0

8.6

5.0

6.6

25.1

12.9

7.6

ブロイラー

合  計

堆肥化

「鶏」で代替

181.8

109.6

15.3

9.2

93.6

56.5

0.0

0.0

108.9

65.7

→大気

→水系

合計 72.9

44.0

660.6 61.2

9.3%

207.4

31.4%

3.4

0.5%

271.9

41.2%

388.7

58.8%

12.6

35.1

畜 種 素掘り 野積み 調査対象農家

乳牛種 36.1%

肉用種 17.8%

豚 8.9%

採卵鶏 3.2%

ブロイラー -

資料:「環境保全型農業調査(畜産部門)」H9から推計

5.4%

0.0%

10.2%

0.0%

- -

成畜50頭以上 8250戸

成畜100頭以上 5490戸

肥育豚500頭以上 4280戸

成鶏1万羽以上 2650戸

畜 種 尿 ふん 合 計

窒素排せつ量(千t)

乳牛種 28.5

肉用種 11.9

豚 2.7

5.8

57.3

( 9.3%)(畜舎における揮散率)

( 90.7%)

63.1

→大気

→水系

合計

271.9

388.7

660.6

採卵鶏 6.0

ー ー

ー ブロイラー

4.2

0.0

9.8

32.8

11.9

12.5

合 計 49.1 14.0 63.1

6.0

【図Ⅴー21】家畜ふん尿の堆肥化に関連する窒素フローの推計手順

Page 9: 第3章 国レベルの窒素循環モデル...4770 2339-489 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 米 飲用牛乳 乳製品向け牛乳 魚介類 精糖(加工) ナタネ(加工用) 大豆油(加工)

窒素の土壌中への移行量については,関連データが

取得できなかったことから0とし,すべて水系へ移

行するものとした。以上のフローをまとめると,家

畜ふん尿のうち,実際に堆肥中にとどまり,農地へ

投入される窒素量は,堆肥化への利用量のうち59%

で,残りは野積み・素掘りと堆肥化の際のアンモニ

アとして揮散しているとみなされ,かなりの割合が

大気へ移行しているということになった。

4.食品加工業からの排出物に関するフロー

図Ⅴ-18において④で示した食品加工業で発生する

副産物・残さのうち,菜種油粕などの30千tが,肥

料として農地に投入されている(表Ⅴ-19)。これら

は,堆肥化利用分へのフローとした。

第Ⅰ部

第Ⅱ部

第Ⅲ部

第Ⅳ部

第Ⅴ部

付属資料

227

下水道整備区域

下水道整備区域外

合流式

合併浄化槽

単独浄化槽

汲み取り式

下水道 下水処理場

し尿処理場

「食生活」コンパートメントからの環境への窒素の排出量(1996年,659.4千tN,人口:12600万人)

食品廃棄物の発生および処理状況

「食生活」から排出されるし尿と生活雑排水の原単位

余剰は水系(量は不明,0 とする)

工場,事業所(学校・官庁・病院・駅・オフィス・公共施設など) からの排水・雨水・融雪水など

44)

42)

→農地

→水系

→水系

畜 種 焼却 埋め立て

発生量 (千t)

再生利用

肥料化 飼料化 その他 合計

一般廃棄物 16000

うち事業系 6000

うち家庭系 10000

資料:平8厚生省資料等から推計

注:合流式と分流式は区別できないことから,一括して扱う。

15950

99.7%

50

0.3%

50

0.3%

し尿

生活雑排水

合 計

10.0

1.8

11.8

g/人・日

g/人・日

g/人・日

入量

317.1

→ 水系

84.7%

15.3%

100%

153.1

し尿処理施設

下水道投入

農地還元

海洋投入

その他

自家処理量

合  計

85.2%

4.8%

0.5%

9.0%

0.4%

0.2%

100.0%

119.1

し尿処理施設

下水道投入

農地還元

海洋投入

その他

自家処理量

合  計

87.2%

4.5%

0.3%

4.2%

0.4%

3.5%

100.0%

し尿

生活雑排水

523.1

94.2

入量

234.3

人口割合

し尿

49.3%

257.9

生活雑排水 46.4

食品廃棄物 42.2

下水道投入 12.7

し尿処理 234.3

農地還元 1.0

海洋投入 18.7

その他 5.5

42.0 → 大気

0.1 → 農地

659.4

617.3

人口割合

し尿

7.5%

39.2

生活雑排水 7.1

人口割合

し尿

20.4%

106.9

生活雑排水 19.2

→ 水系

人口割合

し尿

22.8%

119.1

生活雑排水 21.4

【図Ⅴー22】食品廃棄物およびし尿・生活雑廃水のフローの推計手順

Page 10: 第3章 国レベルの窒素循環モデル...4770 2339-489 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 米 飲用牛乳 乳製品向け牛乳 魚介類 精糖(加工) ナタネ(加工用) 大豆油(加工)

(N)は焼却によりガス化するものとみなして,排

出先を大気とした。したがって,大気への排出量と

農地への投入量は,それぞれ42千t,0.1千tと推計

された。

(2)し尿と生活雑排水の発生量の推計

総量(659.4千t)から,食品廃棄物による窒素

(N)量を差し引いた残りは,し尿と生活雑排水由

来の窒素に相当する。し尿などに関する現実の処理

には,いくつかのタイプがある。都市部を中心に下

水道の敷設が進み,1996年時点では,人口の49%が

居住する区域で公共下水道が敷設されているが,初

期に敷設された札幌・東京・名古屋などの大都市で

は,雨水と汚水を一本の管に流す「合流式下水道」

で整備されている。この方式では,大雨などで流量

が増加した際に,下水があふれるのを防止するため,

5.食生活系からの排出物に関するフロー

食生活からの排出物については,1996年推計値に

おける総量(659千t)のうち,食品廃棄物(生ごみ)

の量(42千t)を差し引いた617千tをし尿・生活

雑排水として,以降のフローを算定した。図Ⅴ-22に,

食品廃棄物のフロー,およびし尿・生活雑廃水の処

理施設までのフローに関する推計手順と算定値を示

す。また,図Ⅴ-23に,処理施設における処理以降の

フローに関する推計手順と算定値を示す。

(1)食品廃棄物からの窒素排出量の推計

図Ⅴ-22の「食品廃棄物の発生および処理状況」44)

の表から,食品廃棄物42千tのうち,「焼却・埋め

立て」が99.7%,「肥料化」が0.3%であることが分か

る。「焼却・埋め立て」では,食品廃棄物中の窒素

228

第Ⅴ部/畜産系バイオマスに係わるモデルと国レベルの窒素循環モデル

下水処理場

し尿処理場

57.0

生活排水処理施設から水系への放出量

生活排水処理施設で発生する汚泥量

下水汚泥の処理および有効利用の状況

排出 窒素率

処理量 (t/人/年)

対象人口 (千人)

窒素量 (千t)

合併浄化槽 87.60

単独浄化槽 23.36

し尿処理 23.36

87.60 公共下水

0.0038%

0.0030%

0.0104%

0.0038%

9421

25708

28647

62019

31.3

18.1

69.6

205.7

窒素率 発生量 (t/人/年)

対象人口 (千人)

窒素量 (千t)

合併浄化槽 0.09

単独浄化槽 0.05

し尿処理 0.14

公共下水 0.55

0.15%

0.15%

0.15%

0.14%

9421

25708

28647

62019

1.3

1.9

6.0

47.8

緑農地 埋め立て 建設資材 その他 最終安定化状態

割 合

計 割合 最終安定化先

243

消化・濃縮汚泥

脱水ケーキ

0

乾燥汚泥 14

コンポスト

焼却灰

溶融スラグ

0

80

0

19

120

4

0

0

0

24

18

8

0

780

0

1037

60.6%

14

0

233

13.6%

252

78

334

19.5%

56

0

106

6.2%

351

18

41

120

20.5%

1.1%

2.4%

7.0%

1102

78

1710

100.0%

64.4%

4.6%

100.0%

(1996年度,千tDS/年),DS:乾燥固形物重量 出典:文献47)

入量

317.1

入量

234.3

汚泥発生量

水系への放出量

47.8

205.7

窒素ガス 63.6

汚泥発生量

水系への放出量

9.2

118.9

窒素ガス 106.1

埋め立て

緑農地

建設資材

34.5

7.8

11.1

その他 3.5

→ 大気

→ 大気

→ 農地

→ 農地

【図Ⅴー23】生活排水関連の処理施設以降の窒素フロー推計手順

Page 11: 第3章 国レベルの窒素循環モデル...4770 2339-489 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 米 飲用牛乳 乳製品向け牛乳 魚介類 精糖(加工) ナタネ(加工用) 大豆油(加工)

別の算定方法によるものである。

(4)窒素の移行先別フロー

合併浄化槽におけるし尿と生活雑排水,単独浄化

槽と汲み取り式におけるし尿については,全部がし

尿処理場に持ち込まれるわけではなく,一部は農地

(還元)・海洋(投棄)・下水処理場に持ち込まれて

おり,処理されているのは約85%である。これらを

集約すると,し尿処理場・下水処理場・水系・農

地へ,それぞれ234.3千t・12.7千t・24.2千t・1.0

千tの窒素(N)が移行していることになる。また,

下水道経由のフローでは,し尿と生活雑排水とをあ

わせて,合計 317.1千tの窒素が,下水処理場へ移

行するものとした。

図Ⅴ-23に,下水処理場とし尿処理場における処

理と,その後のフローについて示した。

(5)汚泥の発生

下水処理場・し尿処理場に持ち込まれたし尿な

どによる窒素(N)(それぞれ317.1千t・234.3千t)

は,「ばっ気処理」によって一部が汚泥となり,除

去しきれないものは河川へ放流される。図Ⅴ-23に示

した処理タイプ別の「生活排水処理施設で発生する

汚泥量」と「生活排水処理施設から水系への放流量」

のデータを用いて,処理場で発生する汚泥の量と水

系への放流量を推計した。そして,これに含まれな

い残り分を,処理過程で発生する窒素ガス(N2)の

量とした。一人当たりの年間窒素排出量の原単位

(“バイオマス資源循環利用診断モデル”の共通基礎

データベースを引用)に,図Ⅴ-22の処理タイプ別人

口割合(下水道・浄化槽・汲み取り式)を用いて計

算した処理人口を乗じて,発生量を推計した。下水

処理場とし尿処理場の処理結果をあわせると,汚

泥・水系・大気への移行量は,それぞれ57千t・324.6

千t・169.7千tであった。

(6)汚泥の利用状況

下水処理場とし尿処理場で発生する汚泥の利用状

況については(し尿処理場の場合は,対応するデー

タが入手できなかったことから,下水汚泥の利用状

況と同じであるとみなした),図Ⅴ-23の「下水汚泥の

処理および有効利用の状況」に示した。総量57千t

の窒素(N)は,埋め立て・緑農地・建設資材など

に,それぞれ 60.6%・13.6%・19.5%の割合で利用

されている。埋め立ての場合は,75%が焼却後のも

幹線の途中に設置した雨水吐きやポンプ場から,直

接河川に下水を排水している。したがって,合流式

では,雨が強くなると,汚水の一部が処理されてい

ないことになる。一方,後発の敷設区域では,雨水

管と汚水管とを別にした分流式下水道になってお

り,この場合は,雨水は雨水管を通って河川に流れ

ることから,上記のような問題は発生しない。また,

下水道にはし尿・生活雑排水以外に,雨水・工場排

水などが流入するが,これらの諸量については特定

できないことから0とした。また,下水処理場の処

理方式の諸元について,合流式と分流式を区別した

形式のデータが取得できなかったため,現在の算定

方式では合流式と分流式を区別せず,一括して算定

している。一方,下水道未整備の地域で,浄化槽処

理(単独浄化槽),または,汲み取り式で処理され

ている場合には,し尿のみしか処理されない。そこ

で,タイプ別に算定するために,國松ら42)の「食生

活から排出されるし尿と生活雑排水の原単位」を用

いて,総量の617千tをその割合(84.7%および

15.3%)によって按分し,し尿が523.1千t,生活雑

排水が94.2千tと推計した。

(3)し尿と生活雑排水からの窒素排出量の推計

上記で推計したし尿と生活雑排水からの窒素(N)

排出量を,1996年の下水処理・浄化槽処理(合併浄

化槽と単独浄化槽)・汲み取り式の人口によって分

配した。処理形態別の人口は「し尿処理形態別人口

の推移」45)から求めた。たとえば,合併浄化槽により

処理される人口の割合は7.5%であることから,し

尿・生活雑排水からの窒素排出量は,それぞれ39.2

千t・7.1千tとなる。なお「単独浄化槽」と「汲み

取り式」については,し尿はバキュームカーで吸い

取られた後,処理場などで処理されるが,生活雑排

水は収集されないことから,結果的には各家庭の排

水溝から近隣の小川などを経由して,水系へ移行し

ていると考えられる。したがって,これらに該当す

る窒素量は,直接水系へ流出するとした。

なお,図Ⅴ-22に示すように,「汲み取り式」から

の「し尿」は119.1千tとなっているが,この量は,

表Ⅴ-14の「生物系廃棄物リサイクル研究会」による

「し尿」に関する推計値の 119.7千tとほぼ同量の値

である。リサイクル研究会による推計では,し尿の

発生量は,「し尿処理形態別人口の推移」45)のし尿の

年間処理量を,窒素含有率は,ポケット肥料要覧46)

の「下肥(新鮮物)」の値を用いており,本章とは

229

第Ⅰ部

第Ⅱ部

第Ⅲ部

第Ⅳ部

第Ⅴ部

付属資料

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6.農地まわりの窒素入出量の算定

農地まわりの窒素(N)入出量の算定は,農作物

副産物の還元・化学肥料施用・堆肥施用・窒素固

定・水田の灌漑・降雨による入量と,作物吸収・脱

窒による出量を算定することにより求められる。な

お,農地へ入る窒素量から,出る窒素量を差し引い

た量が,農地における余剰窒素量となる。

のであることから,窒素はすべてガス化されている

とみなされ,移行先を大気とした。また,建設資材

も,ほぼ全量が焼却後のものであることから,窒素

の移行先は大気とした。その他については,用途と

具体的な処理内容が不明なため,便宜的に移行先を

水系とした。これらの結果をまとめると,総量 57千

tの汚泥の移行先は,大気・水系・農地へ,それぞ

れ45.6千t・ 3.5千t・7.8千tとなった。

230

第Ⅴ部/畜産系バイオマスに係わるモデルと国レベルの窒素循環モデル

施用基準 (kg/ha) 作付面積 (千ha)P2O5N K2O N

作物ごとの供給量 (千tN)

P2O5 K2O引用 文献 作物

陸稲

水稲

小麦

六条大麦

二条大麦

裸麦 注2)

蕎麦

甘藷

大豆

小豆

青刈りトウモロコシ

ソルゴー

まめ科牧草

いね科牧草

混播牧草

80

70

111

60

70

65

41

55

20

40

165

210

0

168

47

97

166

97

150

300

176

250

240

232

120

268

199

563

350

248

180

313

96

91

65

166

115

115

115

95

90

160

190

160

155

93

95

84

130

138

130

200

250

181

220

160

200

88

265

302

422

306

306

200

226

133

87

75

96

95

95

95

44

170

100

87

160

195

195

193

134

89

163

89

200

270

177

250

230

230

128

218

196

451

244

244

200

306

133

1,967

9

159

7

46

4

27

48

82

49

105

27

7

225

594

52

7

24

13

5

22

9

25

39

27

25

27

14

14

17

16

4

7

157.4

0.7

17.6

0.4

3.2

0.3

1.1

2.6

1.6

1.9

17.3

5.6

0.0

37.8

27.9

5.0

1.1

2.4

2.0

1.6

3.9

2.2

6.0

9.0

3.2

6.6

5.4

8.1

4.8

4.2

2.9

1.3

0.6

179.0

0.6

26.3

0.8

5.3

0.5

2.5

4.3

13.1

9.3

16.7

4.2

0.7

21.4

49.9

6.7

0.9

3.2

2.6

1.3

4.0

1.9

4.0

7.8

2.3

6.6

8.2

6.0

4.2

5.2

3.2

1.0

0.9

171.1

0.7

15.2

0.7

4.4

0.4

1.2

8.1

8.2

4.2

16.7

5.2

1.4

43.4

79.6

4.6

1.1

2.2

2.6

1.4

3.9

2.2

5.8

8.9

3.4

5.4

5.3

6.4

3.4

4.1

3.2

1.3

0.9

48)

50)51)

48)

50)

50)

49)

48)

48)

58)

50)~53)

50)~53)

48)

48)

48)

48)

50)~52)

48)

48)

52)

49)

50)~52)

48)

48)

48)

49)

48)

49)

48)

48)

50)~52)

50)~52)

50)~52)

かぶ

にんじん

ごぼう

れんこん

さといも

やまいも

ハクサイ

キャベツ

ほうれん草

ねぎ

タマネギ

なす

トマト

きゅうり

かぼちゃ

ピーマン

えんどう

大根

施用基準 (kg/ha) 作付面積 (千ha)P2O5N K2O N

作物ごとの供給量 (千tN)

P2O5 K2O引用 文献 作物

枝豆

さやいんげん

未成熟トウモロコシ

いちご

すいか

露地メロン

温室メロン

レタス

セルリー

カリフラワー

ブロッコリー

馬鈴薯(春植え)

みかん

なつみかん 注3)

はっさく

いよかん 注3)

ネーブル 注4)

リンゴ

ぶどう

日本なし

西洋なし 注5)

もも

すもも

桜桃

うめ

びわ

かき

くり

キウイ

パインアップル

葉タバコ

75

96

350

230

130

96

118

213

605

250

210

81

250

250

250

250

250

125

86

232

232

143

159

100

166

250

157

136

136

120

543

100

285

126

132

350

256

199

183

165

202

575

250

175

188

195

180

180

180

195

51

99

173

173

114

138

100

188

210

142

97

130

30

219

210

130

98

127

350

209

122

128

153

182

505

250

210

134

200

180

180

180

200

84

108

202

202

151

155

110

159

155

166

118

145

100

256

250

135

13

10

31

8

19

15

1

22

1

2

8

103

68

5

4

10

2

50

23

19

2

12

4

4

19

3

28

31

4

1

53

26

19

4,321

1.0

0.9

10.8

1.9

2.5

1.4

0.2

4.7

0.4

0.5

1.7

8.3

17.0

1.4

1.0

2.6

0.5

6.2

2.0

4.4

0.4

1.7

0.6

0.4

3.2

0.6

4.3

4.2

0.5

0.1

28.6

2.6

5.5

468

1.6

1.3

10.8

2.1

3.8

2.7

0.2

4.5

0.4

0.5

1.4

19.4

13.3

1.0

0.8

1.9

0.4

2.5

2.3

3.3

0.3

1.4

0.5

0.4

3.6

0.5

3.9

3.0

0.5

0.0

11.5

5.5

2.5

512

1.3

1.2

10.8

1.7

2.3

1.9

0.2

4.0

0.4

0.5

1.7

13.8

13.6

1.0

0.8

1.9

0.4

4.2

2.5

3.8

0.3

1.8

0.6

0.4

3.0

0.4

4.6

3.7

0.6

0.1

13.5

6.5

2.6

533

50)~52)

50)~52)

48)

49)

49)

48)

49)

50)

50)

50)

50)52)

48)

51)52)

52)

50)~52)

50)~52)

50)~52)

50)~52)

50)~52)

54)

50)~52)

55)

50)~52)

50)~52)

50)~52)

56)

49)

50)

50)51)

合 計

注1:作付面積は文献57)より引用。茶および桑は栽培面積,葉タバコは収穫面積。

注2:六条と二条の平均。

注3:はっさくと同じ。

注4:みかんと同じ。

注5:日本なしと同じ。

【表Ⅴー16】化学肥料施用による養分供給量

Page 13: 第3章 国レベルの窒素循環モデル...4770 2339-489 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 米 飲用牛乳 乳製品向け牛乳 魚介類 精糖(加工) ナタネ(加工用) 大豆油(加工)

れらの作物の作付面積は,文献57)から求めた。この

結果,日本全体の窒素固定による年間の窒素供給量

は,64千tと算出された。

(6)灌漑による窒素供給量

灌漑による窒素(N)供給量については,水稲栽

培での灌漑による窒素供給量を求め,これに水稲作

付面積を乗じて,日本全体の灌漑による窒素供給量

を求めた(表Ⅴ-18)。水稲栽培での灌漑による窒素

供給量は,平成9年度から平成11年度にかけて行わ

れた,農業環境収支適正化確立事業の関係資料集64)~

66)に掲載されている,水稲栽培での流入水による窒

素供給量の平均値から求めた。対象とした値は,6

府県(茨城県・長野県・富山県・滋賀県・大阪府・

香川県)の36データである。地域にややかたよりが

みられる点が課題として残るが,このような貴重な

データは他にもあると考えられ,データベースへの

蓄積が期待される。水稲の作付面積は,文献57)から

求めた。この結果,日本全体における灌漑による年

間の窒素供給量は,35千tと算出された。

(7)降雨による窒素供給量

降雨による窒素(N)供給量については,日本の

平均降雨量と雨水の窒素含有率の平均値,作物の総

作付面積を乗じて,日本全体での農地への供給量を

求めた(表Ⅴ-19)。日本の平均降雨量は,アメダス

155箇所のデータベースによる,1961年から1990年の

30年間(増設されたアメダスがあり,一部のアメダ

スは30年に満たない)の平均値である。雨水の窒素

含有率は,平成9年度から平成11年度にかけて行わ

れた農業環境収支適正化確立事業の関係資料集64)~66)

(1)作物吸収窒素量

作物吸収窒素(N)量は,図Ⅴ-20の「算定システ

ム」で求めた国内生産食飼料のうち,農地で生産さ

れる農産物の生産窒素量(農作物主産物量)と,農作

物副産物の窒素量との合計から求められる。

(2)農作物副産物の農地還元窒素量

農作物副産物の還元窒素(N)量は,「農作物副

産物量/農作物主産物量」の比率28)を,農作物主産物

量に乗じることで求めた。これらは農地に還元され

ることとした。なお,稲わら・麦わら・もみがらの

発生量と農地還元量は,表Ⅴ-14に示した窒素量を用

いた。

(3)堆肥施用窒素量

堆肥施用量は,表Ⅴ-14の「肥料」として利用され

る作物残さ,林産系・食品加工系の窒素(N)量,

図Ⅴ-21の家畜ふん尿から農地に投入される窒素量,

図Ⅴ-22の食品廃棄物から農地に投入される窒素量,

「し尿」による農地還元窒素量,図Ⅴ-22の下水汚泥

から緑農地投入窒素量を合計することで求められる。

(4)化学肥料施用による窒素施用量

化学肥料による窒素(N)供給量については,農

林水産統計に記載された作物ごとに化学肥料の施用

基準を求め,これにそれぞれの作付面積を乗じて,

作物ごとの化学肥料による窒素供給量を算出した。

これを積算することにより,日本全体の化学肥料に

よる窒素供給量が求められる(表Ⅴ-16)。作物ごと

の化学肥料の施用基準は,尾和48)・生雲49),および各都

道府県の施用基準50)~56)から求めた。作物ごとの作付

面積は,第73次農林水産統計表(平成8年~9年)57)

より引用した。この結果,日本全体における化学肥料

による年間の窒素供給量は,468千tと算出された。

(5)窒素固定による窒素供給量

窒素(N)固定による窒素供給量については,水

稲・大豆・小豆・まめ科牧草・混播牧草ごとに,窒

素固定量を設定し,これにそれぞれの作付面積を乗

じて,日本の全体量を求めた(表Ⅴ-17)。水稲・小

豆・まめ科牧草の窒素固定量は,それぞれ文献値58)~60)

によるものである。大豆の窒素固定量は,中山61)と

鈴木ら62)より引用した。混播牧草の窒素固定量は,

混播採草地におけるまめ科牧草の構成比率が10%で

あることから63),これを引用して,10%とした。こ

231

第Ⅰ部

第Ⅱ部

第Ⅲ部

第Ⅳ部

第Ⅴ部

付属資料

作付面積

(千ha)

作物別 窒素固定量 (kgN/ha)

日本全体の 窒素固定量 (千tN)

水 稲

大 豆

小 豆

まめ科牧草

混播牧草

合 計

1,967

82

49

7

594

39

10

2

1

11

64

20

120

50

180

18

【表Ⅴー17】窒素固定による窒素供給量の算出

水稲栽培における用水灌漑による窒素供給量大豆

水稲作付面積

用水灌漑による窒素供給量

17.7

1,967.0

34.8

kgN/ha

千ha

千tN

【表Ⅴー18】灌漑による窒素供給量の算出

Page 14: 第3章 国レベルの窒素循環モデル...4770 2339-489 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 米 飲用牛乳 乳製品向け牛乳 魚介類 精糖(加工) ナタネ(加工用) 大豆油(加工)

【3-3】窒素フローの解析事例

1.国レベルでの窒素フローの実態

3-2においてモデルの部分ごとに求めたフロー

の推計値を結合して作成した,1996年当時での国レ

ベルの窒素循環モデルを図Ⅴ-24に示す。

(1)副産物・残さの発生

1996年当時の窒素(N)フローを概括すると,つ

ぎの通りである。

まず,輸入・国内生産の食飼料から1,612千t(=

246+666+692+7.9)の窒素が,畜産業・食品加工

業を経由して人間に消費された結果,畜産業から

785千t(そのうち家畜ふん尿は724千t) ,食品加

工業から152千t(そのうち肥料用途に30千t),食

生活から659千t(食品廃棄物が42千t,生活排水

が617千t),合計1,596千tの副産物・残さが発生し

ている。

また,家畜ふん尿(724千t)のうち,661千tが

稲わら・おがくずなどの副資材とともに堆肥化さ

れ,この過程で272千tがアンモニア(NH3)として

揮散し,389千tが堆肥中にとどまる。食生活から

の食品廃棄物(生ごみ)と生活排水は,廃棄物とし

ての処理が中心であるため,緑農地への投入は9千t

となった。農業利用の観点からみると,家畜生ふん

尿は91%(=661/724)が堆肥化されたが,食生活か

ら排出された窒素のうち緑農地への投入はわずかに

1.4%(=8.9/659)であった。なお,家畜ふん尿の堆肥

化によるアンモニアの揮散量はかなり大量であり,

野積み・素掘りでの未利用量はあるとしても,農地

への投入量は予想した以上に少ない結果となった。

(2)入出量の差にみる窒素の流れ

農地まわりの収支をみると,入量は,堆肥など

(449千t=389+16.7+5.1+30+0.1+8.8)・化学肥料

(468千t)・窒素固定(64千t)などで,合計1,250

千tであった。一方,出量は,農作物主産物 (348

千t)・脱窒(102千t)などで,合計669千tであ

った。入量に対して,主産物と稲わらなどの利用に

よる合計375千t(=348+212-185)の回収分は,

30%(=375/1,250)であった。農地内の蓄積量(保

持される量)に変化がないと仮定すると,入出量の

差し引き,すなわち,581千tもの窒素が,水系な

どの環境へ流出すると推計される。

における雨水の窒素含有率の平均値から求めた。デ

ータは,12府県(秋田県・山形県・茨城県・千葉

県・新潟県・富山県・滋賀県・大阪府・香川県・徳

島県・福岡県・鹿児島県)からの65データを得るこ

とができ,地域のかたよりはないものと思われる。

作物の総作付面積は,文献57)から求めた。この結果,

日本全体での降雨による農地への年間の窒素供給量

は,49千tと算出された。

(8)脱窒による窒素除去量

脱窒量については,水稲を作付した農地における

年間の脱窒量を40kgN/ha,水稲以外を作付した農

地における年間の脱窒量を10kgN/haとし,これに

各作付面積を乗じて,日本全体での脱窒量を求めた

(表Ⅴ-20)。水稲を作付した農地からの脱窒量は,水

田における脱窒量の報告58)67)~71)をもとにした。そし

て,水稲以外を作付した農地における脱窒量は,畑

における脱窒量の報告70)~73)をもとに,水稲とそれ以

外の作物の作付面積は,文献57)から求めた。この結

果,日本全体での脱窒による年間の窒素(N)除去

量は,102千tと算出された。

なお,農地まわりの窒素収支に係わる各項目の推

計値の精度について,他種の情報から比較検証する

ことは困難であるが,化学肥料の投入量については,

ポケット肥料要覧46)の「Ⅶ 世界における生産及び消

費」に日本の年間消費量が記載されており,1996年

は512千t とされている。本計算結果の468千tとは

44千t(9%)の違いがあるが,この差は,花き類,

公園・街路樹,道路の「のり面」に土砂流出防止用

として植栽した芝への施肥など,食飼料の生産以外

に用いられた量に相当するものではないかと考えら

れる。

232

第Ⅴ部/畜産系バイオマスに係わるモデルと国レベルの窒素循環モデル

日本の降水量

雨水の窒素含有率

総作付面積

降雨による窒素供給量

1,737

0.656

4,321

49

mm

mgN/ℓ

ha

千tN

【表Ⅴー19】降雨による窒素供給量の算出

作付面積

(千ha)作 物

作物別 脱窒量 (kgN/ha)

日本全体の 脱窒量 (千tN)

水 稲

その他

全 体

1,967

2,354

79

24

102

40

10

【表Ⅴー20】脱窒による窒素除去量の算出

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なる。温暖化ガスなどでの窒素の排出形態に関する

問題を別にすれば,窒素収支は,つぎの水系(環境)

に比べて,問題が少ないといえる。

水系(環境)の収支をみると,入量は,農地から

の排出量・下水やし尿などを処理場で処理しきれず

に水系へ流出した量などから,合計1,031千tと推計

された。一方,出量は,灌漑による35千tであり,

入出量の差は996千tとなる。

(3)総体としての窒素フロー

窒素(N)フローの全体をみると,有機性副産物

さらに,大気(環境)での収支をみると,家畜ふ

ん尿を堆肥化する際に発生するアンモニア(NH3)

の揮散,下水やし尿などを処理場で処理する際に発

生する窒素ガス(N2)の揮散,および脱窒などで,

合計644千tが入量として推計された。一方,出量

は,窒素固定と降雨で113千tとなった。また,大

気中の窒素を固定したものという観点から化学肥料

を出量に加えると,出量は581千tとなり,入出量

の差は63千tで,収支は拮抗する。もちろん,前述

の通り,ここでの化学肥料は食飼料の生産用のみを

考えているので,実際の入出量の差はさらに小さく

233

第Ⅰ部

第Ⅱ部

第Ⅲ部

第Ⅳ部

第Ⅴ部

付属資料

水産物 畜産物 農産物(含飼料)

輸出 輸入 国内生産

6 11 156

24

213

659

152

58

661

30

0.1

8.8

393 450

42

215

263

17

666

184

33

692

0.3 976 348

0.1 94 9(加工品)

有機性副産物資源  畜産系: ふん尿  食品系: 肥料  生活系: 食品廃棄物

724 30 42

61(中) 122(中) 617(中)

その他  その他  生活排水

工芸・工業用 2.5

農産物

農地(水田・畑・樹園地・牧草地)  入量  1250(中)  出量  669(中)

大気(環境) 入量 644(中) 出量 581(中)

入量  1031(中) 出量   35(中)

水系(環境)

家畜ふん尿 堆肥化利用分 721

林産物 (堆肥用資材)

食品系由来肥料

生ごみ

生活排水

食生活

ふん尿等 785

副産物 185

主産物

稲わら等 24.6

堆肥敷料 16.7

窒素固定 64(中)

化学肥料 468

飼料 304

飼料 7.9

堆肥等 449

降雨 49(低)

灌漑 35

581(中)

食品 加工業

総入量 659

総入量 699

稲わら もみがら

食品加工 残さ

総入量 474 バーク

おがくず 5.1

脱窒 102(中)

焼却(稲わら) 6.7

堆肥化過程の ロス 2.2

畜産業

総入量 1005国産畜産物 183

注1:フロ-の量などに付した中・低 のただし書きは,推計値の信頼度を意味し,他のフローとの関連も考慮して作成者が判断したものである。 注2:「畜産業」 と「[食品加工業」 の (入量-出量) の 収支は,在庫の増減があるため,必ずしも0とはならない。

単位:千tN

主産物 348副産物 212

【図Ⅴー24】国レベルの窒素循環モデル(1996年当時)

Page 16: 第3章 国レベルの窒素循環モデル...4770 2339-489 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 米 飲用牛乳 乳製品向け牛乳 魚介類 精糖(加工) ナタネ(加工用) 大豆油(加工)

量の70%は,海外からの輸入によるものである。こ

の状況を世界貿易における位置づけとしてみたもの

が,図Ⅴ-25である。図Ⅴ-25は,小麦・とうもろこ

し・大豆・大麦の4品目に関する,1995~1997年の

世界各国における輸出入量を,窒素量に換算した年

平均値である。日本の輸入量は,この間世界最大と

なっており,世界の貿易量の約12%に達している。

世界の総人口を60億人とすると,約2%の人口であ

る日本において,一人当たり平均値の6倍の窒素を

輸入していることになる。また,同じことを農地面

積で表したものが,図Ⅴ-26である。主要穀物だけで

国内の総農地面積の約2.4倍,1,200万haにもおよぶ作

付面積を,海外に依存していることが分かる。いず

れも1990年代の数値だが,この状況は現在でもそれ

ほど変化はしていないだろう。

これほどの輸入量が真に必要であるかといえば,

表Ⅴ-15で示した食生活からの食品廃棄物量をみても

分かるように,食べ残しと未利用廃棄物からの窒素

量で,年間消費量の約2%を占めている。これらの

無駄をはぶくためには,当事者である消費者を含め

た,意識改革への取り組みが必要であろう。

(2)副産物・残さの利活用

家畜排せつ物法により,2004年までに堆肥盤など

の施設整備が義務づけられた。これによって,家畜

ふん尿のうち,野積み・素掘りの発生分が,そのま

ま環境へ排出されることはなくなると考えられる。

今後は,貯留されるふん尿の適切な利用用途を決め

ることが必要である。また,畜産物については,製

品を輸入すれば国内での家畜の飼養頭羽数を減らす

ことができ,家畜ふん尿の発生量が減少することか

ら,国内での環境負荷も軽減されるという考え方も

あるかもしれない。しかし,畜産物の消費量自体が

減少しない限りは,畜産物の生産を海外に移行した

資源の1,413千t(=1,596-183,183千tは畜産系と

食品系の未算定量との合計)は,堆肥化における副

資材の21.8千t(=16.7+5.1)とともに約半分が農

業利用にまわるが,農産物として375千tがリサイ

クルされた他は,大気(環境)へ63千t,水系

(環境)へ996千tが移行し,特に,水系(環境)

への大きな負荷となっている。

2. 残された問題点と今後の検討方向

環境負荷の低減について国レベルでみると,①食

飼料の総消費量が多いこと,②消費の結果発生する

家畜ふん尿やし尿などの副産物・残さの利活用の割

合が少ないことの二点が問題である。

(1)食飼料の消費量

図Ⅴ-20から分かるように,膨大な窒素(N)消費

234

第Ⅴ部/畜産系バイオマスに係わるモデルと国レベルの窒素循環モデル

文献74)より,世界各国の小麦・とうもろこし・大豆・大麦の1995年~1997年の輸出入量について,3年間の平均値をとり,各作物の窒素含有率を乗じて積算し,輸出入窒素量を算出した。

注:

輸入国総計 5648

輸出国総計 5738

12%

49%

9%

7%

6%

6%

5%

2%2%2%1%

11%

10%

6%

5%

5%

4%

4%

4%3%3%

44%

日本 中国 オランダ 韓国 メキシコ スペイン

ドイツ ブラジル イタリア ベネルックス その他

アメリカ合衆国 フランス カナダ アルゼンチン オーストラリア ブラジル

ドイツ イギリス パラグアイ カザフスタン その他

単位:千tN

【図Ⅴー25】窒素貿易量の上位10箇国

国内農地面積 495

小麦 242

トウモロコシ 215

大豆 199

その他作物 294

飼料穀物 250

0 200 400 600 800 1000 1200万ha

海外での作付面積

【図Ⅴー26】日本の主な輸入農産物の生産に必要とされる海外の作付面積(1996年,農林水産省試算)

Page 17: 第3章 国レベルの窒素循環モデル...4770 2339-489 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 米 飲用牛乳 乳製品向け牛乳 魚介類 精糖(加工) ナタネ(加工用) 大豆油(加工)

研究調査室小論集第1号,農業技術研究機構,1-18,200344)食品廃棄物の発生及び処理状況,http://www.maff.go.jp/work/saisei-

sanko-1.pdf(2005年8月10日最終確認)45)日本の廃棄物処理 平成11年度版,http://www.jeces.or.jp/j/docu-

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および97,農林統計協会,200047)日本エネルギー学会:バイオマスハンドブック,72,オーム社,

200248)尾和尚人:わが国の農作物の養分収支.環保農研連ニュース33,428-

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2000年度センサスデータ-.農業技術58(10),469-474,200350)栃木県:農作物施肥基準,2002,http://www.pref.tochigi.jp/giju-

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54)農林水産省:主要作物の施肥基準について-山梨県-,土壌保全事業成績検討会資料,1989

55)千葉県:ビワ生育情報,平成15年12月号,200356)農林水産省:主要作物の施肥基準について-沖縄県-,土壌保全事業成

績検討会資料,198957)農林水産省統計情報部編:第73次農林水産統計表(平成8年~9年),

農林統計協会,199858)関矢信一郎:主要農耕地における養分動態と養分収支-水田-,農業技

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59)沢口正利:アズキ根粒の働き,農業技術大系,作物編,6ダイズ・アズキ・ラッカセイ,アズキ,基本技術編,技13-技15,農山漁村文化協会,1987

60)金森哲夫:根粒菌の利用,農業技術大系,土壌施肥編,7各種肥料・資材の特性と利用,資材の特性と利用,資材95-資材99,農山漁村文化協会,1987

61)中山則和:相対ウレイド法から推定した大豆の窒素固定寄与率について,独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構作物研究所研究成果.くろっぷニュース11(2003.11),2003

62)鈴木一男・桑原真人・中野寛・浅生秀孝:温暖地における大豆の窒素同化と窒素固定能の推移.千葉県農試研報28,109-117,1987

63)松本武彦・木曽誠二・松中照夫・能代昌雄・寳示戸雅之:チモシーを基幹とする採草地に対する施肥改善効果,日本土壌肥料学雑誌68(4),448-452,1997

64)日本農業研究所:平成9年度農業環境収支適正化確立事業関係資料集(実績編),1998

65)日本農業研究所:平成10年度農業環境収支適正化確立事業関係資料集(実績編),1999

66)日本農業研究所:平成11年度農業環境収支適正化確立事業関係資料集(実績編),2000

67)小菅伸郎・飯村康二:水田土壌における脱窒量の測定について.日本土壌肥料学雑誌43,388-389,1972

68)伊藤滋吉・飯村康二:GC-MASによる施肥窒素および土壌窒素からの脱窒の測定,日本土壌肥料学雑誌54,235-240,1983

69)長谷川清善:水田における窒素の動態と環境への影響評価に関する研究,滋賀農試特別研報17,164,1992

70)西尾隆:耕地土壌の脱窒過程,日本土壌肥料学雑誌65(4),463-471,1994

71)小林ひとみ・太田健・村上章:低湿重粘土転換畑における施肥窒素の動態と収支,日本土壌肥料学雑誌74(5),685-689,2003

72)大橋哲郎・俣野修身:黒ボク土野菜畑における牛ふんおがくず堆肥および被服肥料由来窒素の溶脱,日本土壌肥料学雑誌74(5),631-635,2003

73)竹内誠:農業域における窒素浄化機能と特定流域における評価例,岐阜大学流域環境研究センターシンポジウム第3回シンポジウム「流域の水質管理と環境評価」(1996/12/16),http://www.green.gifu-u.ac.jp/old_WWW/old_WWW/s3-3.html(2005年12月16日最終確認)

74)FAO:FAO Trade Yearbook,51,1997

にすぎない。たしかに国内で発生する負荷は軽減さ

れるが,根本的な解決のためには,副産物・残さの

利活用によって,負荷軽減に導くべきである。また,

し尿についても,現在の処理方式は衛生学的な立場

による廃棄物処理の面が強く,副産物の利活用とい

う観点からの方策としては不十分である。

これらの未利用窒素(N)の用途については,家

畜ふん尿堆肥等を,未利用水田における飼料米の生

産で利用することが有効であるといわれている。し

かし,膨大な窒素の輸入と廃棄という状況がありな

がら,一方で,減反等により未利用水田が増加して

おり,循環利用の観点から妥当と考えられる農業利

用のみでは,解消が困難になってきている。

バイオマスのエネルギー資材としての利用は,堆

肥化などの農業利用と同様に,環境負荷軽減のため

に有効な方策の一つであることには違いない。特に,

畜産の盛んな地域に偏在して発生する家畜ふん尿に

は,運搬の問題もある。現状では,農地を経由させ

て環境負荷の軽減をはかるという方式のみでは処理

しきれない面も出てきており,今後は,農業利用・

エネルギー資材としての利用の両方を,地域の状況

にあった形で実現していくことが重要になる。

引用文献26)岩元明久・三輪睿太郎:わが国の有機物動態と地力,圃場と土壌,

196・197合併号,148-157,198527)袴田共之:農業における資源管理そして環境,季刊環境研究100,

120-126,199628)松本成夫:地域における窒素フローの推定方法の確立とこれによる環境

負荷の評価,農業環境技術研究所報告18,81-152,200029)農林水産大臣官房調査課編:平成7年度 食料需給表,農林統計協会,

199530)農林水産省流通飼料課監修:流通飼料便覧-1997-,農林統計協会,

199831)食品産業センター編:平成14年度版 食品産業統計年報,食品産業セン

ター,200232)科学技術庁資源調査会編:四訂日本食品標準成分表,198233)農林水産省農林水産技術会議事務局編:日本標準飼料成分表(1995年

版),中央畜産会,199534)生物系廃棄物リサイクル研究会:生物系棄物のリサイクルの現状と課

題-循環型経済社会へのナビゲーターとして-,199935)羽賀清典:農業関連有機性廃棄物のリサイクル,都市清掃, l52(231),

199936)農林水産省畜産局畜産物飼料課編:飼料月報(平成9年6月),18-22,

42-45,配合飼料供給安定機構,199737)有機質資源化推進会議編:有機廃棄物資源化大事典,農山漁村文化協会,

189および199,199738)阿部亮・吉田宣夫・今井明夫・山本英雄:未利用有機物資源の飼料利用

ハンドブック,106,サイエンスフォーラム,200039)農政調査委員会編:体系農業百科事典 第Ⅳ巻,445および566,農政

調査委員会,196640)原田靖生:家畜排泄物の堆肥化と堆肥センターの組織化による流通利用

促進方策,土づくり特集第14号,日本土壌協会,28-34,200141)平成13年度食品ロス統計調査の概要,

http://www.maff.go.jp/toukei/sokuhou/data/13-305-84.pdf(2005年8月10日確認)

42)國松孝夫・村岡浩爾:河川汚濁のモデル解析,12,技報堂出版,1989

43)池口厚男・島田和宏・寳示戸雅之・荻野暁史・賀来康一・神山和則・三島慎一郎:圃場の窒素収支のマクロ評価による飼養可能頭羽数の試算,

235

第Ⅰ部

第Ⅱ部

第Ⅲ部

第Ⅳ部

第Ⅴ部

付属資料

Page 18: 第3章 国レベルの窒素循環モデル...4770 2339-489 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 米 飲用牛乳 乳製品向け牛乳 魚介類 精糖(加工) ナタネ(加工用) 大豆油(加工)

236

第Ⅴ部/畜産系バイオマスに係わるモデルと国レベルの窒素循環モデル

これで本編は終わりです。 バイオマス利活用システムに関する理解は深まりましたでしょうか?

この後,付属資料として,

を掲載しています。 みなさんの業務推進にお役だて頂けましたら幸いです。

1 バイオマス成分データベース 2 輸入飼料の地域別ライフサイクル・エネルギー消費量   およびGHG排出量データベース 3 参考文献