第3期 事例集か わ さ き 健 け ん こ う ふ 幸 福 く 寿 じ ゅ プ ロ ジ ェ ク...

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寿 第3期 事例集

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Page 1: 第3期 事例集か わ さ き 健 け ん こ う ふ 幸 福 く 寿 じ ゅ プ ロ ジ ェ ク ト 「 自 分 ら し く 、 笑 顔 で 過 ご す 」 十人 色 の 介

かわさき健

け ん こ う ふ く幸福寿じ

プロジェクト「自分らし

く、笑顔で過ごす」十人十色の介護をサポートします。

第3期事例集

Page 2: 第3期 事例集か わ さ き 健 け ん こ う ふ 幸 福 く 寿 じ ゅ プ ロ ジ ェ ク ト 「 自 分 ら し く 、 笑 顔 で 過 ご す 」 十人 色 の 介

2 3

利用者・行政による組織意欲が高い事業所の発掘

利用者・行政によるサービスの質の評価

行政による成果を上げた事業所の公表

利用者・事業所の取組意欲の醸成

事業所が提供するサービスの質の向上

利用者の生活の質の向上

好循環

質の高いサービスを選ぶことができる!

 介護サービス事業所とともに、要介護状態の改善・維持に向けて取り組んでいただきます。 「こんな生活を送りたい」という目標を持っていただくことが、初めの一歩です。

 第3期(平成30年7月~令和元年6月)では、643名の介護サービス利用者、363の介護サービス事業所にご参加いただきました。このうち、期間中に要介護度が改善された方は96名(14.9%)、維持された方は291名(45.3%)でした。

 プロジェクトに参加した利用者・介護サービス事業所が、プロジェクトを通してどのように取り組まれたかについて、次のページより具体的にご紹介します。

 介護サービス事業所の「要介護状態の改善・維持に取り組もう」というモチベーション向上やスキルアップによるサービスの質の向上が期待できます。 介護サービス利用者が質の高いサービスを選び、前向きに要介護状態の改善・維持に取り組める好循環を生み出します。

 要介護度や日常生活動作(ADL)等の改善・維持につなげた介護サービス事業所のケアを評価し、インセンティブを贈呈します(インセンティブの内容はP14参照)。 また、要介護状態の改善・維持に積極的に取り組む介護サービス事業所の情報を、市民に向けて積極的に発信していきます。

■要介護度●平成30年7月1日時点と比べて、期間終了時点(令和元年6月30日)で改善した場合●その他、改善に至らなかった場合で、同一の要介護度を一定期間を超えて維持した場合

■日常生活動作(ADL)●日常生活動作とは、日常生活を送るうえで必要とされる身の回りのさまざまな動作のこと。食事、歩行、排泄、入浴 など18項目●平成30年7月1日時点と比べて、期間終了時点(令和元年6月30日)で改善した場合●項目ごとに、できる・できない等の選択肢があり、それぞれの項目の点数の合計(最大で55点、最小で18点)が小さくなれば、改善とみなされる

具体的には何をするの?どんな成果があったの?

どんな取組をしたの?

どんな効果があるの?

川崎市は何をするの?

成果指標について

いただくことが、初めの一歩です。

「自分らしい生活」に向けた好循環

※年齢はプロジェクト終了(令和元年6月30日)時点のものです。

参加者の要介護度の変化

● CASE1(P4~5) 伊波盛吉さん(79歳)  医療と介護、家族が連携しリハビリ効果が増大 ~在宅で複数のサービスを活用した取組①~

● CASE2(P6~7) 高木イサ子さん(91歳)  訪問介護と通所介護が一丸となり目標に向かう~在宅で複数のサービスを活用した取組②~

● CASE3(P8~9) 加藤富男さん(67歳)  成果が目に見えて、やりがいが生まれた ~認知症対応型共同生活介護(グループホーム)での取組~

● CASE4(P10~11) 今泉安弘さん(93歳)・今泉桂子さん(87歳)  医療と介護の連携で夫婦二人の心身を総合的に支援 ~在宅で複数のサービスを活用した取組③~

● CASE5(P12~13) 小泉チガ子さん(88歳)  傾聴と会話の共有で老いへの不安を解消 ~特定施設入居者生活介護(介護付有料老人ホーム)での取組~

一定期間維持45.3%

改善14.9%

改善・維持以外39.8%

「かわさき健幸福寿プロジェクト」ってなに? 第3期の結果について(平成30年7月~令和元年6月)

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●要介護4

•細菌性肺炎で入院、気胸も

併発

•退院と同時に訪問看護、介

護用ベッド、歩行器を導入

●プロジェクト参加

•歩行器が不要に。外出のた

め車いすを導入

•ご家族が留守の間、短期入

所生活介護(ショートステ

イ)を利用

•訪問看護が週1回に

●要介護1に改善

•介護用ベッド、車いすが不

要に

•草花の手入れができるよう

になる

•金の認証シール受賞

4 5

医療と介護、家族が連携しリハビリ効果が増大~在宅で複数のサービスを活用した取組①~

後列左から、宮城慶太さん、真謝清美さん、原和子さん前列は伊波盛吉さん(中央)とご家族

伊波さん

あさお診療所(訪問診療・居宅療養管理指導)

医師

ケア工房・真謝(訪問看護)管理者 真謝清美さん訪問看護師の皆さん

ケア工房・真謝(居宅介護支援)原和子さん

株式会社イノベイションオブメディカルサービス川崎営業所(福祉用具貸与)

宮城慶太さん

肺疾患で入院中に気胸を併発した伊波さんは、肺機能が低下し在宅酸素が必要になりました。起居動作に負担の少ない介護用ベッド、歩行練習のため歩行器をレンタルして自宅の生活環境を整え、3か月後に退院。退院直後はベッドから隣室のトイレまで行くのがやっとという状態で、伊波さん自身「もうダメだろう」と思っていたと言います。しかし、自宅で家族と過ごすうちに持ち前の前向きさを

取り戻し、「良くなりたい」という気持ちが芽生えたのです。この気持ちを原動力に、プロジェクトに参加。「みんなの居る所で生活したい」、「趣味の三

さんしん線や花壇の世話がし

たい」という希望を目標に、医療と介護の両面から支援しました。訪問看護師は入浴介助、体調管理のほか、呼吸リ

ハビリとして呼吸筋ストレッチや腹式呼吸のトレーニングを行いました。はじめは腹部に100グラムの砂糖を乗せて呼吸するのがやっとだったのが、伊波さんが毎日自主トレを行ったことが奏功し、水を入れた500mlのペットボトルが乗せられるようになり、ついには2ℓのペットボトルを2本も乗せることができるまでに。室内を歩行できるようになると、車いすを導入して外出する態勢を整えました。ご家族の協力もあり、酸素量を自己管理できるようになったので訪問看護は週1回に。筋力がつき、介護用ベッドと車いすからも卒業しました。三線を弾きながら沖縄民謡を歌うこともできるようになり、楽しみながらリハビリにつながっています。

CASE1 医師と訪問看護師が密に連携

在宅ならではのリハビリを工夫医療と介護の連携がうまくいったのは、同一事業所に介護支援専門員と看護師がいたことが大きな要因だと思います。さらに管理者は看護師で、福祉用具専門相談員でもあるので、伊波さんの体調管理について的確なアドバイスができ、また状況の改善に応じて福祉用具の変更もスムーズに進みました。訪問医とは定期的にカンファレンスを行い、その時々の状況を共有。伊波さんは体力の回復とともに酸素が必要だという認識が薄れ、無理をされることもあったため、看護師は医師からのアドバイスのもと、酸素の必要性を理解してもらうように努めました。また、ペットボトルを使った腹式呼吸トレーニングなど、身近なものでできるリハビリを工夫しました。目に見えて効果がわかるので、伊波さんも手ごたえを感じ、私たちも驚くほどの状況改善につながりました。 (介護支援専門員・原さん)

ご家族もチームの一員。前向きな気持ちに寄り添いチームがまとまった長い入院生活から自宅に戻る際、伊波さんには「家族に迷惑をかけたくない」という思いがありました。同時に自宅に帰れたという喜びも大きく、「ベッドから見える庭の花に力をもらいました」と言います。すると持ち前のポジティブ精神が戻り、「良くなりたい」という前向きな気持ちが生まれたのです。ご家族とチームは、伊波さんの気持ちを尊重し支えようという意識で統一。チーム力が大きく発揮されることになりました。チームの一員としてご家族の協力も見逃せません。ベッドの硬さや車いすの使い勝手などを随時フィードバックし、わからないことは積極的に質問しました。ご家族が沖縄に里帰りされる際は、短期入所生活介護を利用。「安心して出かけることができた」とご家族から、「家族に迷惑をかけずに済んだ」と伊波さんからも喜んでもらうことができました。

利用者情報 チームケア体制 利用者の状況やケアの変化

R1.8R1.7H31.4H31.2H30.11H30.7H30.5H30.2

伊波盛吉さん(79歳)

4▶1

30▶26

要介護度

日常生活動作(ADL)

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6 7

高木さん

アイスタッフ大師(訪問介護)訪問介護員 中島和子さん

ほか皆さん

アイスタッフガーデン十番地(通所介護)介護職員の皆さん

アイスタッフケアステーション大師(居宅介護支援)須山成美さん

利用者情報 チームケア体制 利用者の状況やケアの変化

R1.8R1.6H31.1H30.11H30.9H30.7H30.6H30.3

高木イサ子さん(91歳)

3▶1

29▶27

要介護度

日常生活動作(ADL)

後列左から、須山成美さん、アイスタッフ職員の皆さん前列は高木イサ子さん(中央)とご家族、姪御さん

CASE2 地域で協力し合える関係づくり

自宅での暮らしを支える

通所介護と訪問介護で心身をケア目標を可視化したのでブレない

ずっと一人で暮らしてきた高木さんは、心疾患や大腿骨骨折による入院生活で筋力が低下し、一人暮らしを続けられなくなるのではないかという不安がありました。姪御さんによると、高木さんは元来「人一倍がんばり屋」。プロジェクトに参加して、通所介護と訪問介護がチームとして連携し、高木さんが再び歩くことができるよう「がんばろう」と思ってもらいたいと考えました。高木さんの希望は「スーパーまで歩いて買い物に行けるよ

うになること」。これをチームの目標に設定し、支援を開始しました。通所介護では、リハビリの機械によって体の可動域を広げつつ、杖でトイレまで歩く練習をしました。訪問介護員は高木さんと一緒に調理をするとともに、買い物に同行。近

くの自動販売機から少しずつ歩行距離を伸ばしていきました。リハビリをするうえで障壁となったのが、足のだるさ。心疾患のためにむくみがあり、それを取り除くために水分制限をしていたのですが、主治医と話し合って利尿作用のある薬を服用するようにしたところ、体調が改善。これが契機となって、リハビリが一気に進んだのです。こうして、歩行距離が伸びるとともに気持ちも前向きに。配食サービスを利用していたのが「自分でつくるわ」「食事もちゃんと食べよう」と意欲が高まりました。そして金の認証シールを受賞したことが大きな自信になりました。高木さんの変化に刺激を受け、今年は4名の通所介護利用者が「私もやりたい」とプロジェクトに立候補。やる気の連鎖が起こっています。

私たちは地域とのかかわりを大切にしており、ボランティアで車いす体験教室を開いたり、授業の一環で小学生を受け入れたりしています。小学生に昔の話をしたり、遊んだりすると利用者様の目が生き生きと輝きます。効果はそれだけではありません。高木さんは薬を変えたことで体調が良くなった一方、トイレが近くなるという副作用が出たため、買い物をする店まで行けないのではないかと心配されていました。そこで外出時だけリハビリパンツを使用するとともに、あらかじめ外出先でトイレの場所を確認しておくことで高木さんの不安を解消しました。その際、商店街の方たちに「いざというときはトイレを貸してくださいね」とお願いしたのですが、これは普段からの関係づくりがあったからできたこと。近所の友達が買い物に同行してくださることもあり、高木さんの暮らしは地域に支えられています。 (主任介護支援専門員・須山さん)

高木さんの状況改善には、訪問介護と通所介護が「この店まで歩いて買い物に行けるようになる」という明確な目標を掲げ、そこに向かってチーム一丸となって支援したことが大きく寄与しました。同一事業所が二つのサービスを提供していたことも奏功し、アプローチは違っても目標がブレなかったのです。通所介護ではリハビリの機械と杖歩行によるリハビリ、訪問介護では家事支援を通したリハビリ、と役割分担。特に通所介護のリハビリの機械はアスリートも利用している本格的なもので、体を柔軟にして可動域を広げることで転んでも骨折しない体づくりに励みました。こうして通所介護でがんばる分、訪問介護では訪問介護員が高木さんの気持ちに共感して寄り添い、楽しみながらリハビリを継続できるような精神的ケアを担ったのです。

訪問介護と通所介護が一丸となり目標に向かう~在宅で複数のサービスを活用した取組②~

●要介護3

•通所介護で下肢筋力をつけ

る個別運動、訪問介護で自

宅内歩行の運動をする

•屋内は歩行器で歩行が可能に

●プロジェクト参加

•訪問介護で買い物同行。

200メートルほど先の店

舗を目標にする

•訪問介護、通所介護で杖歩

行訓練を始める

•買い物同行。店まで行って

買い物できるように。杖で

外出できるように

●要介護1に改善

•通所介護、訪問介護の利用

回数が減る

•簡単な調理ができるように

なる

•杖歩行で一人で外出できる

ように。配食サービスの利

用をやめる

•金の認証シール受賞

•一人で買い物に行けるように

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8 9

加藤さん

花物語みやまえ東(認知症対応型共同生活介護)

介護職員

花物語みやまえ東(認知症対応型共同生活介護)

介護支援専門員

花物語みやまえ東(認知症対応型共同生活介護)施設長 高橋文子さん

花物語みやまえ東(認知症対応型共同生活介護)

訪問医・施設看護師

利用者情報 チームケア体制 利用者の状況やケアの変化

加藤富男さん(67歳)

4▶1

33▶20

要介護度

日常生活動作(ADL)

後列左が高橋文子さん、右端が介護職員、前列右から3人目が加藤富男さん

CASE3 似たような状況の入居者の存在で

互いに刺激し合える良い関係に

意欲を持って取り組めることを探し自信がやりがいに、責任感も生まれた

加藤さんには脳梗塞による高次脳機能障害があります。グループホームに入居したときは、記憶障害やものごとを順序だてて行えない遂行機能障害などの症状が顕著で、職員は片時も目が離せなかったといいます。そこで加藤さんが意欲を持って取り組めることをつくり、楽しく生活してほしいと考え、プロジェクト参加を決めました。そのためにどんな取組が有効なのか、ご家族を交えて話し合いました。着目したのが、加藤さんに厨房での業務経験があったこ

と。本人からは「台所で働きたい」「外で体を動かしたい」という希望があり、台所と畑のお手伝いをお願いすることにしました。「やってくださいますか」と声をかけると笑顔が見られ、その表情が仕事を任されたうれしさを物語っていま

した。もちろん、すべてがスムーズに運んだわけではありません。何をやるのか忘れてしまったり、注意が散漫になったりして、途中で投げ出してしまうこともありました。しかし、畑の野菜が成長する様子が目に見えてわかると、畑仕事が楽しみになっていきました。すると、さまざまな活動も率先して行うようになり、他の入居者への気配りもできるようになったのです。この変化にはご家族も驚くほど。当初のケアプランは、職員が見守りながら「お手伝い」をしてもらうというものでしたが、できることが増えたのでケアプランを見直し、洗濯物畳みや配膳、食器洗いなどを「仕事」として組み込みました。今は職員と間違えられるほどきびきびと「仕事」をこなしています。

グループホームは少人数で家庭的な雰囲気のなかで過ごすため、入居者同士の人間関係は心身にダイレクトに影響します。そのため入居者一人ひとりの個性や心身状況、ほかの方との相性などを観察・把握して、その方へのケアがホーム全体に及ぼす効果まで考え合わせるよう意識しています。居室の配置においても、そのようなことを意識し慎重に行っています。加藤さんの場合は、今の役割が完成されているので居室の移動は行っていませんが、同じユニットの男性入居者の存在が心身の状態改善に大きく貢献しました。その方は加藤さんと年齢も近く、どちらかに声をかけると「俺もやる」というような良い意味でのライバル関係です。二人いっしょに何かをすることで気持ちが上向きになり、互いに刺激し合っています。 (施設長・高橋さん)

加藤さんは年齢が若く、体力もあることから「体を動かしたい」という希望がありました。この加藤さんの「やりたいこと」を起点に、職員は加藤さんが意欲を持って取り組めることは何かを考えました。散歩や室内卓球にも挑戦しましたが、足の痛みなどがあり続きません。そこで、以前の職歴を活かして台所のお手伝いと畑作業に取り組んでもらったところ、加藤さんにぴったりはまったのです。「加藤さん、やっていただけますか」とお願いされることが喜びに、できたことが自信につながりました。畑の野菜が目に見えて成長する、お茶を出すと 「おいしいね」と反応がかえってくる…それらがやりがいになり、意欲がさらに向上するという好循環が生まれたのです。そしてケアプランを「お手伝い」から「仕事」に変更すると責任感も芽生えています。

成果が目に見えて、やりがいが生まれた~認知症対応型共同生活介護(グループホーム)での取組~

H29.8

•脳梗塞で入院していた病院

から退院し、グループホー

ムに入居

H30.3

•ストレスからか体調定まら

ず(訪問医・外部受診連携)

H30.6

•畑作業や台所のお手伝いを

お願いする

H30.7

●プロジェクト参加

H30.7

•他の入居者へ気配りが

 できるようになる

H30.12

•介護士との意思疎通が良好

•できることが多くなる

H30.8

●要介護1に改善

•ケアプランの「お手伝い」を

 「仕事」に変更。毎日気分良

く作業ができるようになる

R1.8

•金の認証シール受賞

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10 11

桂子さん安弘さん

社会福祉法人セイワ幸風苑居宅介護支援センター(居宅介護支援)清水達郎さん

社会福祉法人セイワ幸風苑介護老人福祉施設(通所介護)長原あずささん

いきいきクリニック(訪問診療)訪問医

居宅介護支援ハートフルコスモライフケア

(福祉用具貸与)赤岩康寛さん、藤田駿介さん

居宅介護支援ハートフルコスモライフケア

(訪問介護)榎本多果さん

いきいきクリニック(訪問リハビリテーション)

横田直子さん

第二国道訪問看護ステーション(訪問看護)訪問看護師

利用者情報 チームケア体制 利用者の状況やケアの変化

今泉安弘さん(93歳)今泉桂子さん(87歳)

30▶29

2▶14▶1

34▶24

要介護度

日常生活動作(ADL)

CASE4 医療職を中心として頻回に情報交換

医療と介護の両面から総合的に支援

夫婦関係のバランスまで配慮して『心身のADL』を上げる

今泉さんご夫婦は二人暮らし。安弘さんは心臓の持病があったうえ、腹部大動脈瘤の手術により退院後は筋力が低下、栄養状態も悪化していました。桂子さんは認知症により意欲が低下し、家事もむずかしくなっていたのですが、安弘さんには桂子さんが認知症になる前のイメージしかなく、桂子さんに当たってしまうこともありました。プロジェクト参加にあたり、二人は同じ訪問診療、通所介護と訪問介護のサービスを利用していることから、チームはお二人が心身の健康を保つための基礎となる体調管理を最優先に、自宅で暮らし続けることができるよう包括的に支援するという思いでまとまったのです。安弘さんには新しいパソコンなどを買いに外出したいという希望があったので、転

倒しないことを目標に、桂子さんは意欲の向上を目標に設定。転倒を防ぐため歩行器と手すりで生活環境を整備しました。訪問介護員は家事援助を通して、全身状態を確認するとともに、室内温度や食事の促しなど細かいところまで気を配り、栄養状態改善にも貢献しました。訪問リハビリの理学療法士は生活リハビリを中心に、身体状況の確認や体調管理に留意しながら生活環境を整えることに注力。さらに通所介護でも安弘さんのリハビリが効果的に行えるよう、プログラムを提供しました。すると、安弘さんの歩行は次第に安定。1人では通所介護に行きたがらなかった桂子さんも、安弘さんと一緒に通うことで職員や他利用者との交流が生まれ、笑顔が増えるなど相乗効果が生まれています。

プロジェクト参加前から、同じクリニックに所属する訪問医と理学療法士の医療職を中心にチームがまとまっていました。加えて、チーム全員が集まる担当者会議のほかにもリハビリ会議を短いスパンで行い、お二人の状況について情報交換し、医療と介護の両面から総合的に支援したことが、チーム力を発揮できた要因だと思います。安弘さんはADLの向上とともに転倒リスクが高まりましたが、理学療法士と福祉用具専門相談員が連携して手すりの位置や歩行器をフィッティング。理学療法士はお二人の生活全体を見て、医療職ならではの気づきを活かして体調の変化をこまめに情報提供し、問題点があれば各専門職に注意喚起しました。さらに訪問リハビリの回数が限られていたので、通所介護にリハビリメニューを提供するなど、密な連携により支援効果を高めていきました。 (介護支援専門員・清水さん)

今泉さんご夫婦の状態改善のポイントは、各専門職がチームとしてお二人の心身状況や関係まで考慮しながら包括的にサポートしたこと。元ピアニストとバレリーナという仲の良いご夫婦ですが、退院後思うように動けなかったり、認知症で家事などできないことが増えたりすると、これまで支え合ってきた関係が崩れる場面も見られました。そこで在宅生活の基盤となる体調管理を徹底したうえで、「心身のADL」が向上するように支援。通所介護で安弘さんの撮った写真を飾ったり、じっくり話を聞くなど、お二人の思いを受けとめ、尊厳を高めるよう心がけました。すると、安弘さんが「がんばろう」と前向きに。桂子さんにも笑顔が増え、互いに良い影響を与え合っています。先日の通所介護では、安弘さんがピアノを弾く横で、桂子さんが誇らしそうにリズムをとる姿が見られたそうです。

医療と介護の連携で夫婦二人の心身を総合的に支援~在宅で複数のサービスを活用した取組③~

H28.9

•訪問介護(桂子さん)

H29.12

•安弘さん腹部大動脈瘤手術

●要介護4(安弘さん)

•通所介護(桂子さん)

H29.2

●要介護2(桂子さん)

H30.7

●プロジェクト参加

H30.3

•安弘さん退院

 福祉用具導入、訪問診療、

訪問リハビリ、訪問介護、

通所介護(安弘さん)

H30.8、9

•転倒防止のため環境整備等

実施

H30.11

●要介護1に改善(安弘さん)

H30.12

•訪問リハビリの回数を減らす

(安弘さん)

H31.1

●要介護1に改善(桂子さん)

R1.8

•金の認証シール受賞

後列左から、藤田駿介さん、赤岩康寛さん、清水達郎さん、長原あずささん前列左から、横田直子さん、今泉桂子さん、今泉安弘さん、榎本多果さん

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12 13

小泉さん

ニチイホームたまプラーザ(特定施設入居者生活介護)

看護師

ニチイホームたまプラーザ(特定施設入居者生活介護)

生活相談員

ニチイホームたまプラーザ(特定施設入居者生活介護)

介護職員の皆さん

ニチイホームたまプラーザ(特定施設入居者生活介護)

介護支援専門員

ニチイホームたまプラーザ(特定施設入居者生活介護)介護チーフ 深井裕介さん

利用者情報 チームケア体制 利用者の状況やケアの変化

H30.4

小泉チガ子さん(88歳)

2▶1

29▶25

要介護度

日常生活動作(ADL)

左から、ホーム職員のお二人、小泉チガ子さん、深井裕介さん

CASE5 やりたいことを実現できるよう

多様な選択肢と場を提供する

機会をとらえて対話する傾聴し、気持ちを受け止めた

小泉さんは、体調不良により入院され、その後、有料老人ホームへ入居しました。転倒リスクがあったうえ、有料老人ホームという初めての環境への戸惑いや不安は大きいものでした。さらに老いていくことへの不安も見られ、「できないことが多くなるのが怖い」という訴えが聞かれました。それは反面、アプローチによっては、「元気でいたい」「できることを増やしたい」という前向きな姿勢にもつながります。小泉さんができることを少しでも増やすことで、精神的に安定した生活を送ってほしい――それがプロジェクト参加のきっかけでした。入居して生活にも慣れたころ、自分からダイニングに出て

こられるようになりました。すると「もっと外に出たい」とい

う希望が出たのです。体を動かすことが好きな小泉さんのために、介護職員は小泉さんが参加できそうなものを探し、 「やってみませんか」と声をかけて誘いました。スーパーへの買い物や遠足イベント、そして昔通っていたデイサービスや近所の公園での体操へと活動の幅が広がっていったのです。さらに時間があると手すりを使って、デイサービスで教えてもらった体操をするほどに。今では他の入居者の方にも「歌を歌いましょう」などと声をかけ、リーダー的存在になっています。「職員さんに甘えず、自分のことは自分でやりたい」と意欲が出たことで、職員の声かけは不要になり、体はほぼ入院前のレベルに戻っています。この状態を長く維持できるよう支援を続けていきたいと考えています。

小泉さんをはじめ、入居者の方がやりたいことを実現できるよう、たくさんの選択肢を用意しています。アクティビティやサークル活動のほか、小泉さんが喜ばれた箱根への遠足イベント、お花見や夏祭りなど季節の行事など、趣向を凝らして多様な場を提供しています。また有料老人ホームならではの手厚い人員配置も強みです。小泉さんが、「以前通っていたデイサービスで体操をしたい」と希望されたときは、車で送迎し、昼食の時間をずらすなどきめ細かい対応をすることができました。近くの公園での体操にも参加されていますが、これも職員が付き添っています。このように一人ひとりのご希望にできる限りこたえられるのも、職員が臨機応変に動けるからです。これらが、小泉さんの活動の幅が広がる一助になったと考えています。 (介護福祉士・深井さん)

チームが重視しているのは、密なコミュニケーション。小泉さんの言葉を糸口に、意欲を持って取り組めることを探していきました。「体を動かしたい」「外に出たいの」などの言葉が出ると、 「こんなイベントがあります。やってみませんか」と声をかけて小泉さんの意思を確認。こうして買い物や外出イベント、さらにはデイサービス施設や公園での体操へと活動範囲が広がっていったのです。小泉さんの気持ちを汲み取るため、介護職員だけでなく看護師や介護支援専門員、生活相談員などが機会をとらえて小泉さんと向き合い、ささいな言葉も記録に残して、パソコン上で共有。ネガティブな発言があれば、その都度時間を取って話を傾聴し、小泉さんの気持ちに寄り添いました。そして、不安な気持ちを受け止めたうえで「大丈夫ですよ」などという言葉をかけて、前を向けるよう背中を押しました。

傾聴と会話の共有で老いへの不安を解消~特定施設入居者生活介護(介護付有料老人ホーム)での取組~

●要介護2

•介護付有料老人ホームに

 入居

H30.7

●プロジェクト参加

•毎週スーパーへ買い物に

H30.9

●要介護1に改善

•職員が声かけしなくても

 主体的に動けるように

H30.10

•周りの入居者に率先して歌

や体操の音頭を取る

H31.4

•公園での体操に参加

R1.5

•デイサービスで体操に参加

R1.8

•金の認証シール受賞