第4章 自治体クラウドを活用した 市町村の広域連携 ·...

第4章 自治体クラウドを活用した 市町村の広域連携

Upload: others

Post on 15-Feb-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 第4章 自治体クラウドを活用した 市町村の広域連携 · 在した情報化推進関連の協議会や検討会、勉強会等がある。更に、既存の枠組みにとらわ

第4章 自治体クラウドを活用した    市町村の広域連携

83

Page 2: 第4章 自治体クラウドを活用した 市町村の広域連携 · 在した情報化推進関連の協議会や検討会、勉強会等がある。更に、既存の枠組みにとらわ

84

Page 3: 第4章 自治体クラウドを活用した 市町村の広域連携 · 在した情報化推進関連の協議会や検討会、勉強会等がある。更に、既存の枠組みにとらわ

74

第4章 自治体クラウドを活用した市町村の広域連携

1.自治体クラウドの導入パターンとその特徴

自治体クラウドを活用した市町村の広域連携について述べるにあたり、その前提となる

自治体クラウドの導入パターンとその特徴について整理した。

前提として、多摩・島しょ地域に限ったことではないが、法で定められた業務等、共通

化できるものについては共通化していくことが望まれる。

また、一部の自治体を除き、ICT 専門職を個別に雇用することは困難であるため、ICT

専門職を確保することのできる組織(協議会や一部事務組合等)を設立することも一つの

方策である。

なお、多摩・島しょ地域は、所有する情報システムも多く、地域の状況に応じた業務シ

ステムを既に構築しているため、クラウドに対する要求水準が高い状況にあり、その他、

全国の自治体とは状況が異なる場合がある。

そのため、個々の地域特性に応じた共同化のグルーピングは必須であり、地域全体を一

括りとする「一律でのグルーピング」は難しい。そのため、地域性を踏まえた上で、人口

規模(自治体規模)によるグルーピングを行うという選択肢が、実現性が高いと考えられ

る。

これらを踏まえ自治体クラウド導入のパターンは、全国の導入実績等を参考に、「人口

規模による導入」「特定の業務システムに特化した導入」「地域性による導入」の 3 つを想

定した。

85

Page 4: 第4章 自治体クラウドを活用した 市町村の広域連携 · 在した情報化推進関連の協議会や検討会、勉強会等がある。更に、既存の枠組みにとらわ

75

人口規模でのクラウド化の特徴1【自治体の人員・組織の状況の違い】・情報システム部門専任の職員の有無・各業務主管課における作業分担(一人何役もこなす必要があるか否か)

人口規模でのクラウド化の特徴2【情報システムに求められる機能の違い】・オンライン処理のみによる業務遂行範囲・バッチ処理(大量反復処理)等のオンライン処理以外の機能へのニーズ

【情報システム】

【人員・組織】

人口規模によるクラウド導入パターン

・業務システムに求められる機能

・業務主管課の規模(職員数等)

【共通点】

人口規模による導入

(1)人口規模による導入

情報システムが取扱うデータ量は、自治体規模(人口規模)に比例して増大する。デー

タ量が一定規模を超えると、オンライン処理だけでは対応が難しくなるため、情報システ

ムには、オンライン処理以外の機能(バッチ処理等)が必要となる等、情報システムに求

められる機能が変わる特徴がある。

また、自治体規模(人口規模)は、自治体の組織や職員数にも大きく影響する。規模の

小さな自治体では、情報システム部門専任の職員の確保が難しいことや、各業務主管課に

おいても分業体制ではなく、一人何役もこなす必要がある場合が多い。

そのため、システム処理においても複数の処理を並行して実施し易い「マルチウィンド

ウ処理等」が可能なオンライン処理で大半の事務処理が完了する必要がある。更に、情報

システムを提供するベンダーにおいても、オンライン処理を主体とした業務パッケージの

開発が先行して実施されている傾向が強く、結果として町村規模の自治体における共同型

クラウドの導入事例が多くなっていると考えられる。

一方で、事例数は少ないものの、全国では、大規模自治体同士(中核市同士)によるク

ラウド導入事例も存在する。

いずれの場合も、人口規模が近い自治体同士におけるクラウド導入事例であり、キーワ

ードは「業務システムに求められる機能や業務主管課の規模(職員数等)に共通点がある」

点であり、共同化にあたっての業務上・システム上の共通点を見出しやすい要素の一つが

「自治体規模(人口規模)」であると言える。

図表 4-1 人口規模によるクラウド化のポイント

86

Page 5: 第4章 自治体クラウドを活用した 市町村の広域連携 · 在した情報化推進関連の協議会や検討会、勉強会等がある。更に、既存の枠組みにとらわ

76

(2)特定の業務システムに特化した導入

自治体クラウドの対象とする業務システムは、基幹系システム(住基や税等の基礎自治

体の中核をなす業務システム)や内部系システム(財務会計や文書管理システム等)の大

半を共同運営化する導入事例が多く見受けられる。

システムの導入・運用経費や改修経費等の削減を主目的に据えている自治体が多く、こ

のような選択となっているが、そのための必須要件が「ノンカスタマイズによるシステム

導入」となる。そのため、人口規模が 20 万人を超えるような自治体(中・大規模自治体)

にとっては、ハードルが高くなってしまう。

中・大規模自治体はシステム保有数も多く、データ量に比例した組織形態(分業体制)

をとっているため、自治体固有のやり方、業務プロセスが存在し、ノンカスタマイズでは

対応が難しくなるといった懸念が業務主管課から示されるケースが多い。

一方、ベンダーにおいては、町村規模の自治体におけるパッケージ45の見直しが図られ、

パッケージの機能が進化・向上しつつあるが、中・大規模自治体向けのパッケージの完成

度は、未だ高いとは言えない状況にある。

パッケージの完成度がいまひとつ高くない状況下で、視点を変えることで共通化の道を

探り、特定の業務システムに絞り込んでのクラウド化(共同化)を進めている事例がある。

岡崎市・豊橋市のケースでは、特定の業務システム(国民健康保険及び国民年金システ

ム)の更改時期が同時期であったことから、次期システムの仕様を共同で検討し、結果と

して新たなシステムを共同化により導入することとなった。その後も、別の業務システム

(税務システム)において同様の取組みを行い、現段階で、3 つの業務群のシステムを共

同化により運用している。

また、山梨県市町村総合事務組合のケースでは、業務標準化の実現性が高く、将来的な

法制度改正が少ないとの理由により、財務会計システムの共同化を実現している。

いずれの場合も、特定の業務システムを限定した上でのクラウド導入事例であり、キー

ワードは「現行の業務システムの更改時期や業務標準化の実現性が高い点に共通点がある」

ことである。共同化にあたっての共通点を見出しやすい要素の一つが「特定の業務システ

ム」であると言える。

このように述べると、共同化にあたっての共通点を見出すことが難しいことのような印

象があるが、「とりあえずできるところから、試しで実施してみる」という視点、観点を持

つことによって、共同化を実現するといったアプローチも必要と考える。

45 特定の業務で汎用的に利用することのできる既製のソフトウェアのこと

87

Page 6: 第4章 自治体クラウドを活用した 市町村の広域連携 · 在した情報化推進関連の協議会や検討会、勉強会等がある。更に、既存の枠組みにとらわ

77

業務システム単位でのクラウド化の特徴1【自治体情報システムの状況の違い】・システムの更改時期等・ノンカスタマイズによる業務標準化の範囲・各主管課等の組織形態(分業体制等)に合わせたシステム運用

業務システム単位でのクラウド化の特徴2【クラウド化が及ぼす影響の違い】・クラウド化しやすいシステムの選択・クラウド化による全庁的な負担感・試験的運用が可能

【クラウド化が及ぼす影響】

【情報システムの状況】

業務システムごとのクラウド導入パターン

・業務標準化の実現性

・現行の業務システムの更改時期

【共通点】

特定の業務システム

に特化した導入

図表 4-2 業務システム単位によるクラウド化のポイント

(3)地域性による導入

地域性による共同型クラウドの導入の有利な点は、情報システムに限らず色々なジャン

ルでの広域連携事例が既に存在する可能性が高く、何らかの広域連携組織が設置されてい

る可能性が高いことにある。

連携の実績があれば、自治体間の相互交流や信頼関係の構築が進んでおり、自治体同士

が互いの状況や事情等を共有し易い環境にある。そのため、新たな連携項目を追加する際

にも、手続き等の流れがスムーズになる点が大きなメリットとなる。

自治体クラウドを導入する際に、地域性のある既存の広域連携組織がとりまとめ役を担

うことが多いのは、このような背景があるためと考えられる。 既存の広域連携組織を中心に、当該組織に加盟する自治体がメンバーとなり、組織に新

たな機能(役割)を設置することにより推進している事例もある。既存の広域連携組織と

しては、広域行政事務組合や定住自立圏から派生したもの、クラウド化以前から地域に存

在した情報化推進関連の協議会や検討会、勉強会等がある。更に、既存の枠組みにとらわ

れず、クラウド化のために新たに近隣自治体同士で協議会等を設置し、取組みを推進して

いる事例もある。 上記いずれの場合においても、「地域性」に由来する組織によりクラウド化を推進して

いる。 地域性による導入事例の中には、過去に合併の可能性が持ちあがったため、市町村合併

を念頭に、システムの共同アウトソーシングを検討していたケースもある。また、当初、

市町村だけで構成されていた推進組織に県等が加わったことで取組みが後押しされた事例

や、当初から県等が主導することで、取組みが進展した事例もあり、地域毎に様々である。

88

Page 7: 第4章 自治体クラウドを活用した 市町村の広域連携 · 在した情報化推進関連の協議会や検討会、勉強会等がある。更に、既存の枠組みにとらわ

78

地域性におけるクラウド化検討の特徴1【推進組織の候補】・広域行政事務組合等・地域に存在する情報化推進関連の協議会等・新たに設置した協議会等

地域性におけるクラウド化検討の特徴2【自治体同士の交流(コミュニケーション)】・過去からの自治体間の交流実績・地勢的環境や交通、文化的背景等・定期的な情報交換等の場

【自治体間交流】

【推進組織】

地域性にもとづくクラウド導入パターン

・広域連携組織

・自治体同士の交流

【共通点】

地域性による導入

これらは、個々の地域における広域連携組織を中心としたクラウド導入事例であり、キ

ーワードは「自治体同士に交流の実績があり、交流の場がある点に共通点がある」ことで

ある。共同化にあたってのグルーピングを立ち上げるための要素の一つが「地域性」であ

ると言える。

地域性と言っても、現行の都道府県内に限定される必要はなく、過去に実施された国に

よるモデル事業や実証実験等では、県域を越えた共同化の事例もあった。しかし、運用段

階にある現在では、県域を超える協議会ではなく、各県内での運用が基本的枠組みとなっ

ている。

地域性のポイントは、過去からの自治体間の交流実績があること及び地勢的環境や交通、

文化的背景等に共通点が見出し易い点もあるが、 も重要なのは、定期的な情報交換等の

場を通じて、共同化の可能性を話し合える「顔の見える」相手である点にある。

図表 4-3 地域性によるクラウド化のポイント

89

Page 8: 第4章 自治体クラウドを活用した 市町村の広域連携 · 在した情報化推進関連の協議会や検討会、勉強会等がある。更に、既存の枠組みにとらわ

79

2.自治体クラウド導入による新たな可能性

これまでの調査結果からも分かるとおり、多くの自治体では、情報システム経費の削減

を自治体クラウド導入の目的として挙げている。 しかし、自治体クラウドを導入することは、経費削減以外にもシステム共同化による住

民や職員の利便性向上、災害時の業務継続性の強化、削減経費による住民福祉の向上等の

可能性を秘めている。 そこで、ここでは「通常業務遂行における可能性」、「災害時における可能性」、「新たな

サービス提供の可能性」の 3 点を自治体クラウド導入による新たな可能性として整理した。 なお、以下にまとめた事例には、実際に実施されたもののほかに、今後の実現にむけて

検討段階のものも一部存在する。

(1)通常業務遂行における可能性

①窓口業務の共通化による広域連携

自治体クラウドを導入することで、事務協定等を締結する必要はあるが、様々な業務を

共同で実施することが可能となってくる。

例えば、窓口業務の共通化が可能となり、住民は構成自治体が設置している全ての窓口、

またコンビニ収納や自動交付機のサービスを利用することができ、住民のスタイルに合わ

せ利用する場所やシステムを選択することができるようになる。

また、共同での窓口業務の委託では、業務標準化を図り同一事業者に委託することで、

委託事業者は、構成自治体間で人員の融通を行うことが可能となり、スケールメリットを

活かしながらより効果的な人員配置を行うことが可能となってくる。

さらに、自動交付機やパソコン等の備品の共同調達や都市計画及び固定資産税業務にお

ける航空写真撮影の広域・共同での実施等も行える。これは、共同型クラウドを導入して

いない団体でも実施可能ではあるが、システムを共通化することで、より効率的・効果的

に実施することができる。

90

Page 9: 第4章 自治体クラウドを活用した 市町村の広域連携 · 在した情報化推進関連の協議会や検討会、勉強会等がある。更に、既存の枠組みにとらわ

80

図表 4-4 複数自治体窓口の広域的利用のイメージ

②共通システムによる連携

共通システムを導入することで、業務全般に係る課題やその解決方策等についても相互

に情報交換や情報共有を行うことができ、共同で業務効率化を図っていくことが可能とな

ってくる。

例えば、A市では、業務遂行上の課題となっている案件が、共同化しているB市では、

既に解決済み、または課題となっていない場合がある。このようなケースにおいては、自

治体Aは、自治体Bから、課題の解決・解消のための手法やアイデア等を学んだり、引用

したりすることができる。同じように、業務プロセスの見直しにおいても自治体間で、優

れた方法を相互に学ぶこともできる。

また、A市で補助的に用いている EUC ツール46(Access や Excel 等)を、B市において

活用することも可能であり、さらにはA市、B市間で役割分担を行い、EUC ツールを作成・

メンテナンスすることもできる。

上記のような考え方は、業務運用手順書等のドキュメントの作成やメンテナンス等にお

いても応用することが可能であり、各自治体における手間や時間の縮減に加え、多くの知

財が共有できる可能性がある。

46 エンドユーザが、自らシステムの構築や運用・管理を行うために利用するアプリケーションのこと

E町 自動交付機

D村 村役場窓口

C町 コンビニ収納

B市 自動交付機

A市 市役所窓口

D市

C町 B市

A市

近距離での

相互支援協定

締結

91

Page 10: 第4章 自治体クラウドを活用した 市町村の広域連携 · 在した情報化推進関連の協議会や検討会、勉強会等がある。更に、既存の枠組みにとらわ

81

(2)災害時における可能性 ①BCP の分野における広域連携

現在、自治体では、国(総務省)の「災害に強い電子自治体に関する研究会報告書」等

において ICT-BCP 普及の必要性が示される等、業務継続性の担保を図ることが求められて

いる。

一般的に、BCP は自治体全体の計画(地域防災計画等)として受け止められるケースが

多いが、東日本大震災では、情報システムや電子データ、紙媒体データの可用性確保が困

難な事態が生じたため、ICT-BCP 普及の必要性が再認識されている。

共同型クラウドでは、複数自治体が同一システムを使用し、システムやデータは堅牢な

データセンターに設置される場合がほとんどである。その利点を活かし、緊急時の職員の

相互応援において、システム操作等の説明が不要となり、より即時的、実効的な支援が可

能となる。 災害時における被災自治体は、多くの業務に忙殺されるため、他自治体からの応援職員

の活用は重要なテーマである。システムが違和感なく使える共同型クラウドは、災害時に

おける応援の新たな道を拓くものと期待される。 また、自治体間で相互支援協定等の締結を行うことで、証明書発行の代行を行うことが

可能となってくる。しかし、現段階の相互支援協定は、遠隔自治体との間での締結が多く、

比較的近い距離感にある自治体間では締結が少ない。これは、地震等で同時被災しない距

離感が重視されているためであるが、行政機能が失われる災害は地震だけに限らず、距離

感を考慮しつつ、より効果的な相互支援を検討していく必要がある。

図表 4-5 複合型相互支援協定のイメージ

E町 自動交付機

D村 村役場窓口

C町 コンビニ収納

B市 自動交付機

A市 市役所窓口

D市

C町 B市

A市

近距離での

相互支援協定

締結

92

Page 11: 第4章 自治体クラウドを活用した 市町村の広域連携 · 在した情報化推進関連の協議会や検討会、勉強会等がある。更に、既存の枠組みにとらわ

82

②被災者支援システムの共同運営

防災関連システム(被災者支援システム等)は、平常時には滅多に利用されることがな

く、その導入は、経費的観点等からも敬遠されがちである。しかし、共同型クラウド導入

をきっかけとして被災者支援システム等の共同化を図る団体もある。これは、単独では経

費面、運用面で導入が難しいが、共同型にすることで経費削減を図り、広域的に運用する

ことを目的として導入を目指している「いばらき自治体クラウド基幹業務運営協議会」や

「岐阜県電子自治体推進市町村・県連絡協議会」による支援事業47、徳島県による共同利

用環境整備に対する支援事業48等の事例がある。

また、被災者支援システムは、システムを本稼働する際に、利用開始段階における 新

の住民情報や家屋情報等が必要となる。その際には、 新のデータを被災者支援システム

に移設する必要が生じるが、クラウド導入団体では、システム移行時に、データを新シス

テムに移行しているため、その作業経験が、被災者支援システムへの 新データの移行の

際にも役立ち、スムーズな本稼働が可能となってくる。

47 被災者支援システム提供業務として、被災市町村に住民基本情報を格納した被災者支援システムの提

供が行えるよう耐衝撃性ノートパソコンの導入、各所への配備、データ連係システムの開発等を実施。 また、被災者支援システム環境構築支援業務として災害時に市町村職員が被災者支援システムを円滑に

利用できるよう延べ 31 団体に対し、被災者支援システム検証環境構築支援を実施。 http://www.gaic.or.jp/kohosi/back/no137/spe03.html 48 被災者支援システムを共同利用できる環境を整備するとともに、代替庁舎候補地選定やネットワーク

環境等の整備に向け、積極的に取り組む市町村に対し、一定額を上限に助成する事業を実施。 http://www.pref.tokushima.jp/seisaku/shinki/result/1/sheet/746/

93

Page 12: 第4章 自治体クラウドを活用した 市町村の広域連携 · 在した情報化推進関連の協議会や検討会、勉強会等がある。更に、既存の枠組みにとらわ

83

(3)新たなサービス提供の可能性

自治体クラウド導入により、情報システム経費の削減を図ることで、その削減経費を新

たなサービス提供に活用することができる可能性がある。

調査してきた事例の中には、削減経費を新たなシステムや機器等の購入に充てることで、

職員の利便性、業務効率性の向上を図ったり、情報システムとは全く関係のない新規事業

や既存事業に充当したりすることで住民サービスの向上を図ったりしていた。

また、削減経費を職員の創意工夫で効果的に活用するため、庁内職員が住民サービス向

上を図ることを目的に事業を立案し、そこに削減経費を充当するといった事例もあった。

さらに、「(1)①窓口業務の共通化による広域連携」でも述べたとおり、共通の窓口や

コンビニ収納、自動交付機を運用することで、住民は構成自治体が設置している全ての窓

口等を自身の生活スタイルに合わせ利用することができるようになる。

自治体クラウドの導入というと、どうしても情報システム経費削減や管理・運用業務の

負担軽減、業務効率化に主眼が置かれてしまうが、削減できた経費をどのように住民福祉

の向上に繋げるのか、この視点を忘れてはいけないのではないだろうか。

また、自治体クラウド導入が市町村合併への布石ではないかとの考えもあるが、本来の

自治体クラウド導入は、合併を進めるためのものではない。業務の共通化により、システ

ム連携の技術的効果や経費削減効果を活かし、連携する自治体での共通的なサービス提供

やそれぞれの地域特性に合った新規事業を実施することができる。それにより、地域のア

イデンティティを保ったまま、より住民満足度の高い効率的な行政運営を行うことが本来

の目的であると考える。

図表 4-6 経費削減による新たなサービス提供

情報システム経費

情報システム経費

経費削減

・新たな住民サービスの提供

・業務の負担軽減・効率化

自治体クラウド

導入

94