第4章 地盤反力 · 2013. 5. 27. · q 1 q 2 q 1 土砂 v b v q b (a) 土砂地盤 (b)...

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124 4 章 地盤反力 第4章 地盤反力 4.1 概 説 地盤反力を算定する目的は 2 つある。1 つは,部材の安全性の照査である。地盤 反力とその分布が決まらないと部材の応力度を求めることはできない。 もう 1 つは,安定性の照査である。地盤の支持力や変位に対する照査を行うに は,擁壁底面に発生する地盤反力度を明らかにしなければならない。 図 4.1 地盤係数法による基礎の地盤反力の計算 V H M V H M V H M 直接基礎 ケーソン基礎 長杭基礎 荷重と変位 解析モデル 地盤反力 剛体 EI=弾性体 EI 剛体 EI=k S k V k H k S k V k H k V k V k S k S 基礎型式 125 4 章 地盤反力 地盤反力を合理的に決定する簡便な手法に地盤係数法がある。地盤係数法は, 地盤をフックの法則に従う弾性ばねと見なし,地盤反力度があらゆる点で構造物 の変位に比例すると仮定するものである。この仮定は,ウインクラー(E.Winkler1867 )によって考案されたことから,ウインクラーばねモデルとも呼ばれている。 ウインクラーばねモデルは,一つひとつのばねが独立して作動するような離散 型のばねからなる弾性体で,あるばねに力を加えるとそのばねだけが力に比例し て縮むが,他のばねは全くその影響を受けないというばねモデルである。実際に は,地盤の連続性が考慮されないこのような単純な仮定は成立しないが,計算が 著しく簡便なため設計の実務では杭基礎,ケーソン基礎,直接基礎の地盤反力計 算法として多用されている。 地盤係数法によって地盤反力を計算する場合,長い杭などでは基礎を無限長の 弾性体,短い杭では有限長の弾性体,ケーソンや直接基礎では有限長の剛体と仮 定している。 4.2 地盤係数法の基本 最も単純な例として幅 B で奥行き 1 の剛な直接基礎の中央に集中荷重 V が作用 している問題を考えてみる。図 4.2(a)は地盤が均質な土砂であり, (b)は基礎の中央 b 2 の範囲が岩盤でその両側が土砂になっている場合である。 (a)の場合は,地盤が均質であるため,地盤反力度 q は等分布するであろうこと は容易に想定される。したがって,鉛直方向の力のつり合いより V=qB の関係式 がたてられ,地盤反力度は q=V/B と簡単に求めることができる。 次に(b)の場合を考えてみよう。荷重,地盤とも左右対称であるので,土砂部の 地盤反力度を q 1 ,岩盤部の地盤反力度を q 2 とすると,力のつり合い条件より式(4.1) がたてられる。 2 2 1 1 2 b q b q V + = ··········································································· ( 4.1) ところが,未知量が q 1 q 2 2 個であるのに対し,つり合い式は鉛直力の和に 関する 1 個しかたてられない。力のつり合い条件だけでは q 1 q 2 を求めることが できない。 力のつり合い条件より未知量が多い問題を不静定問題と呼ぶが,不静定問題に 対しては地盤係数法が威力を発揮する。

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  • 124

    第 4 章 地盤反力

    第4章 地盤反力

    4.1 概 説

    地盤反力を算定する目的は 2 つある。1 つは,部材の安全性の照査である。地盤

    反力とその分布が決まらないと部材の応力度を求めることはできない。

    もう 1 つは,安定性の照査である。地盤の支持力や変位に対する照査を行うに

    は,擁壁底面に発生する地盤反力度を明らかにしなければならない。

    図 4.1 地盤係数法による基礎の地盤反力の計算

    V

    HM

    V

    HM

    V

    HM

    直接基礎

    ケーソン基礎

    長杭基礎

    荷重と変位 解析モデル 地盤反力

    剛体EI=∞

    弾性体 EI

    剛体EI=∞

    kS

    kV

    kH

    kS

    kV

    kH

    kVkV

    kS

    kS

    基礎型式

    125

    第 4 章 地盤反力

    地盤反力を合理的に決定する簡便な手法に地盤係数法がある。地盤係数法は,

    地盤をフックの法則に従う弾性ばねと見なし,地盤反力度があらゆる点で構造物

    の変位に比例すると仮定するものである。この仮定は,ウインクラー(E.Winkler,

    1867年)によって考案されたことから,ウインクラーばねモデルとも呼ばれている。

    ウインクラーばねモデルは,一つひとつのばねが独立して作動するような離散

    型のばねからなる弾性体で,あるばねに力を加えるとそのばねだけが力に比例し

    て縮むが,他のばねは全くその影響を受けないというばねモデルである。実際に

    は,地盤の連続性が考慮されないこのような単純な仮定は成立しないが,計算が

    著しく簡便なため設計の実務では杭基礎,ケーソン基礎,直接基礎の地盤反力計

    算法として多用されている。

    地盤係数法によって地盤反力を計算する場合,長い杭などでは基礎を無限長の

    弾性体,短い杭では有限長の弾性体,ケーソンや直接基礎では有限長の剛体と仮

    定している。

    4.2 地盤係数法の基本

    最も単純な例として幅 B で奥行き 1 の剛な直接基礎の中央に集中荷重 V が作用

    している問題を考えてみる。図 4.2(a)は地盤が均質な土砂であり,(b)は基礎の中央

    の b2の範囲が岩盤でその両側が土砂になっている場合である。

    (a)の場合は,地盤が均質であるため,地盤反力度 q は等分布するであろうこと

    は容易に想定される。したがって,鉛直方向の力のつり合いより V=q・B の関係式

    がたてられ,地盤反力度は q=V/B と簡単に求めることができる。

    次に(b)の場合を考えてみよう。荷重,地盤とも左右対称であるので,土砂部の

    地盤反力度を q1,岩盤部の地盤反力度を q2とすると,力のつり合い条件より式(4.1)

    がたてられる。 22112 bqbqV ⋅+⋅= ··········································································· ( 4.1)

    ところが,未知量が q1,q2 と 2 個であるのに対し,つり合い式は鉛直力の和に

    関する 1 個しかたてられない。力のつり合い条件だけでは q1,q2 を求めることが

    できない。

    力のつり合い条件より未知量が多い問題を不静定問題と呼ぶが,不静定問題に

    対しては地盤係数法が威力を発揮する。

  • 126

    第 4 章 地盤反力

    図 4.2 直接基礎の剛体的変位

    図 4.3 地盤反力度と変位の関係

    荷重,地盤が左右対称で,基礎が剛体であるので,鉛直方向の変位は底面のど

    の位置でも一定と考えることができる。地盤反力度は変位に比例するものと仮定

    すると,地盤反力度 q と変位 δの関係は図 4.3 のように表される。比例定数(地盤

    反力係数またはばね定数という)は土砂部が kv1,岩盤部が kv2で既知とすると,式

    (4.2),式(4.3)がたてられる。

    岩盤土砂 土砂

    b2b1 b1B=2b1+b2

    V

    kV1 kV1kV2

    b2b1 b1B=2b1+b2

    V

    q1q2

    q1

    土砂

    V

    B

    V

    q

    B

    (a) 土砂地盤 (b) 土砂と岩盤の互層

    q1

    q2 1.0

    1.0kv1

    kv2土砂 q1=kv1δ

    岩盤 q2=kv2δ

    地盤反力度

    q

    0 変位δδ

    127

    第 4 章 地盤反力

    δ⋅= 11 vkq ····················································································· ( 4.2) δ⋅= 22 vkq ······················································································ ( 4.3)

    δが未知量として加わったため未知量は 3 個になったが,方程式も 3 個たてられ

    るので,式(4.1),(4.2),(4.3)を連立させて解くことによって q1,q2,δの未知量を

    決定することができる。式(4.1)に式(4.2),(4.3)を代入して整理すると式(4.4)が得ら

    れ,変位δを求めることができる。

    22112 bkbk

    V

    vv +=δ ············································································ ( 4.4)

    式(4.4)を式(4.2),(4.3)に代入すれば地盤反力度 q1,q2が式(4.5)のように決定され

    る。

    Vbkbk

    kqVbkbk

    kqvv

    v

    vv

    v

    2211

    22

    2211

    11 22 ⋅+

    =⋅+

    = ,  ·································· ( 4.5)

    ここで,

    nkk

    v

    v =1

    2 ························································································· ( 4.6)

    とおけば,式(4.5)は式(4.7)のように書き改められる。

    Vbnb

    nqVbnb

    q21

    221

    1 221

    ⋅+=

    ⋅+= ,  ··············································· ( 4.7)

    以上の説明から理解されるように,地盤を弾性ばねと仮定した地盤係数法を適

    用することにより,構造物の変位と地盤反力度を簡単に求めることができるので

    ある。

    4.3 地盤反力係数の求め方

    4.3.1 変形係数と地盤反力係数

    弾性体の応力度と変位の関係は,弾性係数(ヤング係数)あるいはばね定数を

    用いて次のように表すことができる。

    l

    EE δεσ ⋅=⋅= ·············································································· ( 4.8)

    δσ ⋅= k ························································································· ( 4.9)

    ここに,σは応力度,E は弾性係数,εは歪み,δは変位量,k はばね定数,l は

    部材長である。

  • 128

    第 4 章 地盤反力

    式(4.8)と式(4.9)より,弾性係数とばね定数には式(4.10)の関係があることがわか

    る。

    lEk = ··························································································· ( 4.10)

    理想弾性体の変形は弾性変形のみであるが,地盤の変形は一部が弾性的で,大

    部分は残留的性格のものである。こうしたことから,地盤では弾性的変形も残留

    的変形も含めた全変形を特徴づける意味で弾性係数を変形係数と呼んでいる。ま

    た,ばね定数は地盤反力係数とも呼ばれる。

    地盤の変形係数は平板載荷試験,ボーリング孔内横方向載荷試験,一軸圧縮試

    験,三軸圧縮試験,標準貫入試験の N 値などから推定することができるが,地盤

    は完全な弾性体でないため得られる変形係数の値は試験方法によって異なる。試

    験方法によって得られる変形係数には,次のような相互関係があることが吉中 3)

    によって明らかにされている。

    NEEE cp 800,2440 === ································································ ( 4.11)

    ここに,

    E0:平板載荷試験から求まる変形係数 (kN/m2)

    Ep:ボウリング孔内載荷試験から求まる変形係数 (kN/m2)

    Ec:一軸または三軸圧縮試験から求まる変形係数 (kN/m2)

    N:標準貫入試験による N 値

    道路橋示方書 4)では,表 4.1 のように吉中の研究を基に,変形係数の求め方に応

    じて補正係数αを決めている。地震時の補正係数αが常時の 2倍になっているのは,

    載荷速度の影響を考慮したものである。

    表 4.1 変形係数の補正係数 4)

    下記の試験方法によって求められた変形係数 E0(kN/m2) 補正係数α

    常 時 地震時 直径 30cm の剛体円板による平板載荷試験の繰り返し曲線から求めた変形係数の 1/2

    1 2

    ボーリング孔内で測定した変形係数 4 8 供試体の一軸または三軸圧縮試験から求めた変形係数 4 8 標準貫入試験の N 値より E0=2,800N で推定した変形係数 1 2

    129

    第 4 章 地盤反力

    4.3.2 地盤反力係数の推定式

    柱部材などのばね定数は式(4.10)のように簡単な式で表すことができるが,地盤

    においては,

    ①基礎からの荷重は地盤内で分散し,地盤内応力は深度方向に変化する。

    ②地盤の応力・ひずみ関係は,非線形性状を示すため,変形係数は一定でなく

    応力によっても変化する。

    など複雑であり,理論的に求めることは困難である。

    道路橋示方書では,ブーシネスク J.Boussinesq の弾性理論解を実験データで経験

    的に修正した式(4.12),式(4.13)で地盤反力係数を求めることにしている。

    43

    0 0.3'

    0.31 −

    ⎟⎠⎞

    ⎜⎝⎛⋅==

    BEkk HV α ····························································· ( 4.12)

    VS kk ⎟⎠⎞

    ⎜⎝⎛=

    41

    31~ ·············································································· ( 4.13)

    式(4.12)において E0=2,800N とおけば,N 値を用いた推定式が得られる。

    ( )

    ⎪⎭

    ⎪⎬

    ⎟⎠⎞

    ⎜⎝⎛=

    ⋅⋅== −

    VS

    HV

    kk

    LBNkk

    41

    31

    783,3 375.0

    α ······················································ ( 4.14)

    ここに,

    kV:鉛直方向の地盤反力係数 (kN/m3)

    kH:水平方向の地盤反力係数 (kN/m3)

    kS:せん断地盤反力係数 (kN/m3)

    E0:地盤の変形係数 (kN/m2)

    B’:基礎の換算載荷幅 (m) AB ='

    A:基礎の載荷面積 (m2) A=B・L

    α:変形係数の求め方に対する補正係数で,常時 1,地震時 2

    B:基礎幅 (m)

    L:基礎長 (m)

  • 130

    第 4 章 地盤反力

    4.4 直接基礎の地盤反力算定式

    4.4.1 つり合い条件式からの誘導 5)

    底面がフラットな直接基礎の中央に荷重 V0,H0,M0が作用している場合の地盤

    反力は,図 4.4 に示すようになる.地盤反力度は直線分布するものとすれば,未知

    量は鉛直方向の地盤反力 QV,水平方向の地盤反力 QH,QV の作用位置 e(または d)

    の 3 個である。したがって,この場合は地盤係数法を適用しなくても,つり合い

    条件だけで地盤とその分布を決定することができる。

    0

    00

    0

    0

    0

    00

    VMeMeQM

    VQVHQH

    V

    V

    H

    =∴=⋅=Σ

    ==Σ==Σ

      より  

    より  

    より  

    次に,Qv が鉛直地盤反力度の合力であり,台形の図心に一致していることを考

    慮すれば qV1,qV2に関する次の 2 つの連立方程式をたてることができる。

    図 4.4 直接基礎の地盤反力

    ( )

    21

    21

    210

    232

    2

    VV

    VV

    VVV

    qqqqBeBd

    qqBVQ

    ++

    ⋅=−=

    +==

    これを解けば, qV1,qV2が式(4.15)のように求まる。

    M0

    V0

    H0

    B

    deB/2QV

    QH

    qV1

    qV2

    M0

    V0

    H0

    B

    deQV

    QH

    qV1

    3d

    (a) e≦B/6 (b) e>B/6

    131

    第 4 章 地盤反力

    ⎟⎠⎞

    ⎜⎝⎛ −=⎟

    ⎠⎞

    ⎜⎝⎛ +=

    Be

    BVq

    Be

    BVq VV

    6161 0201 ,    ······································ ( 4.15)

    式(4.15)から明らかなように,e>B/6 となれば qV2は負の値をとる。地盤と基礎下

    面の引張強度(付着強度)は期待することができないので,図 4.4(b)のように引張

    領域を無視した上で力のつり合い条件を満たすように地盤反力を決定する必要が

    ある。

    この場合は,地盤反力が三角形分布になるので qV1 の決定は極めて容易になる。

    すなわち,QVは三角形の図心と一致するから地盤反力の分布幅は 3d となる。そし

    て,∑V=0 の条件から三角形の面積が V0に等しくなるので, qV1は式(4.16)となる。

    ⎟⎠⎞

    ⎜⎝⎛ >=

    6

    32 0

    1Be

    dVqV Q ········································································ ( 4.16)

    4.4.2 地盤係数法からの誘導 5)

    次に,地盤係数法を適用して地盤反力度を決定する方法を述べる。解析モデル

    は図 4.5(a)に示すように基礎底面を鉛直方向の分布ばねで,水平方向にせん断ばね

    で支持されているものとする。

    基礎の中央に,荷重 V0,H0,M0が作用すれば,基礎は鉛直力によって鉛直変位

    を,水平力によって水平変位を,モーメントによって回転変位を生じる。この様

    子を図 4.5(b)に示してある。

    図 4.5 直接基礎の地盤反力の計算

    kV

    M0

    V0

    H0kS

    剛体EI=∞

    α

    δy

    δx

    x

    y

    0

    xm

    m’

    B

    u0

    0’

    v0

    B

    (a) 解析モデル (b) 基礎の変位

  • 132

    第 4 章 地盤反力

    基礎中心に x-y 座標系の原点 0 をとり,座標原点での水平変位を u0,鉛直変位を

    vo,回転角をαとする。そうすれば,原点から x だけ離れた任意点 m の変位δx,

    δy は幾何学的に式(4.17)で表される。ただし,回転角αは微小であり,cosα≒1,

    sinα≒0 と見なせるものとする。

    δ δ αx yu v x= = + ⋅0 0,     ······················································· ( 4.17)

    鉛直方向の地盤反力係数を kV,せん断地盤反力係数を kSとすれば,m 点の地盤

    反力度は式(4.18)で表される。

    ( )⎭⎬⎫

    ⋅+=⋅=⋅=⋅=

    xvkkqukkq

    VyVy

    SxSx

    αδδ

    0

    0 ···························································· ( 4.18)

    次に,座標原点におけるつり合い条件を考慮すれば,

    ( )

    ( ) ⎪⎪⎪

    ⎪⎪⎪

    ⋅⋅=⋅+=⋅==Σ

    ⋅⋅=⋅+===Σ

    ⋅⋅====Σ

    ∫∫

    ∫∫

    ∫∫

    −−

    −−

    −−

    αα

    α

    32/

    2/2

    0

    2/

    2/0

    0

    2/

    2/ 0

    2/

    2/0

    0

    2/

    2/ 0

    2/

    2/0

    1210

    0

    0

    BkdxxxvkxdxqMM

    vBkdxxvkdxqVV

    uBkdxukdxqHH

    V

    B

    BV

    B

    B y

    V

    B

    BV

    B

    B y

    S

    B

    BS

    B

    B x

    より 

    より 

    より 

    ···································· ( 4.19)

    式(4.19)より,座標原点の変位が次のように求められる。

    300

    00

    012

    BkM

    BkVv

    BkHu

    VVS ⋅=

    ⋅=

    ⋅= α,   ,    ························· ( 4.20)

    式(4.18)と式(4.20)より,地盤反力度は次のように求められる。

    xBM

    BVq

    BHq yx

    3

    000 12+== ,   ····················································· ( 4.21)

    式(4.21)から明らかなように,水平方向のせん断力度 qx は一様分布となるが,鉛

    直地盤反力度 qyは直線的に変化する。x=B/2 点の鉛直地盤反力度 qV1,x=-B/2 点の

    鉛直地盤反力度 qV2を求め M0=V0・e とおけば式(4.15)と一致する。

    4.5 根入れ地盤の抵抗を考慮した場合の地盤反力

    根入れ地盤の水平抵抗を考慮した地盤反力度は,図 4.6 に示すように根入れ部前

    面が水平方向に三角形分布した離散型ばねで支持されているものとして算定する

    133

    ことがで

    基礎底

    量δx,

    とができ

    δ

    地盤反

    次に,

    M

    V

    H

    できる。根入れ地盤

    底面上の任意点 m,

    δy,δs は,根入れ

    きる。

    uu yx ⋅+== αδδ 00,

    反力度は,

    ( )

    +−=

    ⋅+=⋅=

    )(( 0

    0

    0

    ushh

    kq

    xukqukq

    Hs

    Vy

    Sx

    α

    α

    座標原点での力の

    +=

    ==

    +=

    ∫∫

    ∫∫

    0

    2/

    2/0

    0

    2/

    2/0

    0

    2/

    2/0

    qxdxqM

    BvkdxqV

    dqdxqH

    hB

    B y

    V

    B

    B y

    h

    s

    B

    B x

    第 4 章 地盤

    4.6 根入れ地盤の抵抗

    盤を三角形ばねとす

    および根入れ部前

    れ地盤の抵抗を考慮

    sux s ⋅+= αδ 0 , ···

    ⎪⎪⎪

    ⎪⎪⎪

    ⋅ )sα

    ··················

    のつり合いを考える

    +=

    ⎟⎠⎞

    ⎜⎝⎛ +=

    02

    0

    0

    121

    61

    21

    uhksdsq

    uhkBkd

    Hs

    HSs

    盤反力

    抗を考慮した基礎

    る理由は後述する。

    面の仮想鉛直面上の

    慮しない場合と同様の

    ·····························

    ·····························

    と,

    ( )⎪⎪⎪

    ⎪⎪⎪

    +

    +

    α

    α

    33

    2

    61

    Bkhk

    hk

    VH

    H

    ···

    の任意点 n の変位

    の方法で求めるこ

    ··············· ( 4.22)

    ··············· ( 4.23)

    ··············· ( 4.24)

  • 134

    第 4 章 地盤反力

    式(4.24)の三元連立方程式を解くと,式(4.25)が求まる。

    ⎪⎪⎪⎪

    ⎪⎪⎪⎪

    −−

    =

    −−

    =

    ⋅=

    2231

    2010

    2231

    20300

    00

    KKKKHKM

    KKKKMKHu

    BkVvV

    α

    ········································································ ( 4.25)

    ここに,

    ( )⎪⎪⎪

    ⎪⎪⎪

    +=

    =

    +=

    333

    22

    1

    1216121

    BkhkK

    hkK

    BkhkK

    VH

    H

    sH

    ····································································· ( 4.26)

    基礎底面及び根入れ部前面の地盤反力は,式(4.23)に式(4.25)を代入すれば求める

    ことができる。

    地盤反力の分布は図 4.6(c)のようになる。

    以上の説明は,根入れ部前面地盤を三角形分布ばねにモデル化したが,等分布

    ばね(kH=const.)とすると,根入れ部の地盤反力は, )( 0 sukq Hs ⋅+= α ············································································ ( 4.27)

    として与えられ,分布形は図 4.7(a)のようになる。前面土の許容支持力度は,地盤

    を粘着力のない砂質土とすると次式で与えられる。

    pHs

    a KzFq ⋅⋅= γ1 ············································································· ( 4.28)

    ここに,

    qa:前面土の許容支持力度(kN/m2)

    Fs:安全率

    γ:前面土の単位体積重量(kN/m3)

    z:地表面からの深さ(m)

    KpH:受働土圧係数の水平成分

    kH=const.として計算すると,図 4.7(a)のように地盤反力度が許容支持力度を超え

    る区間が発生することになり,不合理である。この不合理を解消する手法として,

    135

    qs≦qaと

    もあるが

    放物線と

    きる。三

    ともある

    4.6 段切

    4.6.1 地

    図 4.8

    量(QVi対してつ

    で(3n-3

    合い条件

    地盤係

    るものと

    という塑性化の条件

    が,計算が複雑にな

    となるので弾性解析

    三角形分布ばねとし

    る。その場合には kH

    切り基礎の地盤反

    地盤係数法による誘導

    8 に段切り基礎の地

    i,QHi,di)が現れる

    つり合い条件式がた

    3)次の不静定にな

    件のみで地盤反力を

    係数法では,各段切

    と仮定する。解析モ

    第 4 章 地盤

    4.7 水平ばねの分布形

    件を考慮して地盤反力

    なる。これに対して

    析であっても地盤の

    して計算しても,地

    kHの値を適当に低減

    反力算定式

    導 5),6)

    地盤反力を示す。段切

    るため,n 段あれば未

    たてられるのは 3 個

    る。底面がフラット

    を決定することはでき

    切り面がそれぞれ鉛

    モデルを図 4.9 に示す

    盤反力

    形と地盤反力分布

    力度を図 4.7(b)のよ

    て三角形分布ばねとす

    塑性化を解析に反映

    地盤反力度が許容支持

    減すればよい。

    切り基礎の場合は,各

    未知量の総数は 3n 個

    (∑V=0,∑H=0,

    トな直接基礎の場合の

    きない。

    鉛直ばねとせん断ばね

    す。基礎の斜めの面に

    うに設定する方法

    すれば地盤反力は

    映させることがで

    持力度を超えるこ

    各段に 3 個の未知

    個となる。これに

    ∑M=0)であるの

    のように力のつり

    ねで支持されてい

    にばねを設けてい

  • 136

    第 4 章 地盤反力

    ないのは,図 4.8 のような荷重を受け段切り基礎が剛体的に変位した場合,図 4.10

    に示すように斜めの面は地盤から離れるような変位を生じるためである。

    直接基礎の場合と同様,座標原点における水平方向の変位を u0,鉛直方向の変

    位を v0,回転角をαとする。また,原点から x だけ離れた任意点 m の水平変位を

    δx,鉛直変位をδyとする。

    図 4.8 段切り基礎の地盤反力分布 6)

    図 4.9 段切り基礎の解析モデル 6)

    QH1

    QH2

    QH3

    QV1

    QV2

    QV3

    d1d2

    d3

    V0

    M0

    H0

    kV1

    kV2

    kV3kS2

    kS3

    kS1

    0

    y

    x

    137

    第 4 章 地盤反力

    図 4.10 段切り基礎の剛体的変位 6)

    段切り基礎が図 4.10 のように剛体的変位を生じたものとすれば,m 点の変位は

    幾何学的に式(4.29)で表される。

    αδαδ ⋅+=⋅+= xvyu yx 00 ,    ··············································· ( 4.29)

    i 段目の段切り面のせん断地盤反力係数を kSi,鉛直地盤反力係数を kViとすると,

    m 点の水平方向地盤反力度 qHi,鉛直方向の地盤反力度 qVi は式(4.30)となる。

    ( ) ( )αδαδ ⋅+=⋅=⋅+=⋅= xvkkqyukkq iVyViViiSxSiHi 00 ,  ·············· ( 4.30)

    i 段目の段切り面の前端の座標を(x1i,yi),後端の座標を(x2i,yi)とすると,この

    面に作用する地盤反力の合力 QVi,QHi およびこれらの地盤反力による座標原点に

    関するモーメント Mi は式(4.31)のようになる。

    ( )( )

    ( ) ( )

    ( )( ) ( ) ( ) ⎪⎪⎪⎪

    ⎪⎪⎪⎪

    ⎭⎬⎫

    ⎩⎨⎧ −+−+−⋅+=

    ⋅⋅=

    ⎭⎬⎫

    ⎩⎨⎧ −+−==

    −⋅+==

    ∫∫

    αα

    α

    α

    31

    320

    21

    22120

    21

    22012

    120

    31

    21

    21

    2

    1

    2

    1

    2

    1

    2

    1

    iiiiViiiiiSi

    x

    x iVi

    x

    x iHii

    iiiiVi

    x

    x ViVi

    iiiSi

    x

    x HiHi

    xxvxxkyxxyuk

    dxxqdxyqM

    xxvxxkdxqQ

    xxyukdxqQ

    i

    i

    i

    i

    i

    i

    i

    i

    ··· ( 4.31)

    0

    x

    yδy

    δx

    m

    m’

    α

    u0

    v0

    0’

    x

    y

    y’

    x’

  • 138

    第 4 章 地盤反力

    座標原点でのつり合い条件は,

    ∑∑∑===

    ===n

    ii

    n

    iVi

    n

    iHi MMQVQH

    10

    10

    10 ,,  ·········································· ( 4.32)

    であるので,式(4.31),式(4.32)は次の剛性方程式として表すことができる。

    ⎪⎭

    ⎪⎬

    ⎪⎩

    ⎪⎨

    ⎧⋅

    ⎥⎥⎥

    ⎢⎢⎢

    ⎡=

    ⎪⎭

    ⎪⎬

    ⎪⎩

    ⎪⎨

    ∑= α

    0

    0

    1333231

    232221

    131211

    0

    0

    0

    vu

    AAAAAAAAA

    MVH

    n

    i ····················································· ( 4.33)

    ここに,

    ( )

    ( )( )

    ( )( ) ( )

    31

    21

    0

    31

    321233

    21

    223223

    1222

    123113

    2112

    1211

    2

    ⎪⎪⎪⎪⎪

    ⎪⎪⎪⎪⎪

    −+−=

    −==

    −=−==

    ==−=

    iiViiiiSi

    iiVi

    iiVi

    iiiSi

    iiSi

    xxkyxxkA

    xxkAA

    xxkAyxxkAA

    AAxxkA

    ··········································· ( 4.34)

    式(4.33)の剛性方程式を解いて座標原点の変位 u0,v0,αを求め,これを式(4.30)

    に代入すれば段切り面の任意点の地盤反力度を求めることができる。

    図 4.11 i 段目の地盤反力度 6)

    荷重の偏心量が大きいと,フラットな直接基礎と同様に最上段の段切り面の後

    方に負の地盤反力が発生する。負の地盤反力が発生する区間のばねを除去し(段

    切り面の幅を狭くしてもよい),負の反力が発生しなくなるまで繰り返し計算す

    m2(x2i,yi)

    1(x1i,yi)

    yi

    xi

    y

    x0

    qHi

    qViqV1i

    qV2i

    139

    第 4 章 地盤反力

    る必要がある。

    また,i 段目(通常は最上段)の水平方向の地盤反力度が式(4.28)を満足しない場

    合は,この面で滑動するという不合理を生じるため,式(4.35)でせん断地盤反力係

    数の塑性化を考慮し,再度計算する必要がある。

    ( )s

    iViVHi Fqqq μ212

    1+≤ ··································································· ( 4.35)

    si

    iViVSi Fyu

    qqk μα

    ⋅⋅+

    +⋅=

    0

    21

    21

    ·································································· ( 4.36)

    ここに,μは基礎底面と支持地盤との摩擦係数,Fs は滑動に対する安全率であ

    る。

    地盤係数法は,地盤反力係数が定かである場合に限って使用できる方法と思わ

    れている人が多い。地盤反力係数の値は,基礎の変位量,各段切り面の荷重分担

    率に影響を及ぼす。しかしながら,段切り基礎は岩盤上に施工されるため,変位

    量が問題になることはない。もしも,各段の支持岩盤の変形係数と段切り幅が同

    じなら,各段切りの地盤反力係数は同じ値となるため,荷重分担率に関与しなく

    なる。すなわち,地盤反力係数が各段で一定ならば,地盤反力度は地盤反力係数

    の値と無関係になるため,解析の信頼性を議論する必要はない。

    4.6.2 日本道路公団の方法

    NEXCO の設計要領 7)では,段切り基礎を段差フーチング型式と置き換え基礎に

    区分した上で,それぞれについて簡便な地盤反力計算法を示している。

    (1)段差フーチング型式 7)

    段差フーチング型式の地盤反力度は,図 4.12 に示すように基礎の最下段面に水

    平の仮想底面を設け,便宜的に仮想底面に地盤反力が発生するものと見なす。こ

    の際,仮想底面とフーチング底面間の地盤の重量は無視するものとする。

    転倒および支持力を照査するための地盤反力度は,図 4.12(b)に示すようにフー

    チングを仮想底面に投影した長さ B を基礎幅として,通常の底面がフラットな直

    接基礎と同様の方法で地盤反力度を計算する。

    滑動を照査するための水平地盤反力 QH は,フーチングに作用する全水平力 H0とするが,鉛直地盤反力 QV’については,すべり面の影響を考慮して低減した基礎

    幅 B’の範囲に作用する鉛直地盤反力度から求める。

  • 140

    第 4 章 地盤反力

    図 4.12 段差フーチング型式の地盤反力度 7)

    (2)置き換え基礎 7)

    置き換え基礎とは,フーチング部と置き換えコンクリート部が構造的に分離し

    た基礎型式である。こうしたことから,置き換え基礎の地盤反力度は図 4.13 の要

    領で求めている。

    最初に,フーチング底面で地盤反力分布を求める。求められた鉛直地盤反力の

    内,置き換え基礎の上部の地盤反力 QV1が置き換え基礎に伝達され,残りの地盤反

    力 QV2(=V0-QV1)はフーチング底面に接する地盤で直接支持されるものと見なす。

    フーチングに作用する水平力 H0の内,式(4.37)で求まる水平力 QH1は置き換え基礎

    に伝達され,残りの QH2(=H0-QH1)はフーチング底面に接する地盤に伝達される

    ものと見なす。

    Q HV

    QH V1 00

    1= ·················································································· ( 4.37)

    置き換え基礎には自重 W,地震慣性力 kH・W,フーチング基礎からの荷重(QV1,

    M0 H0

    B

    QV=V0

    QH=H0

    q1q2

    q3

    仮想基礎底面

    ωφ

    = + − −452

    1 0

    0

    ゚ tan HV

    V0

    q1q3

    ee M

    Vqq

    VB

    eB

    q q q qB

    B

    =

    = ±⎛⎝⎜

    ⎞⎠⎟

    = −−

    0

    0

    1

    2

    0

    3 11 2

    1 6

    '

    ω

    ( )Q B q qV ''

    = +2 1 3

    h

    B B h' cot= − ω

    (a)基礎に作用する荷重

    (b)転倒と支持力照査用  地盤反力度

    (c)滑動照査用地盤反力度F Q

    HssV=

    '

    0

    μ

    141

    第 4 章 地盤反力

    QHI)が作用するものとして,通常のフラット基礎と同様の方法で底面の地盤反力

    度を算定することができる。

    置き換え基礎の計算法を図 4.14(a)に示すような多段の段切り基礎に適用してい

    る例があるが,置き換え基礎の地盤反力計算は図 4.14(b)のようにフーチングと基

    礎が分離して変位することを前提としているので,多段の段切り基礎には適用で

    きない。

    図 4.13 置き換え基礎の地盤反力度

    図 4.14 段切基礎と置き換え基礎

    4.7 もたれ式擁壁の地盤反力算定式

    4.7.1 地盤係数法による誘導 8)~10)

    重力式擁壁などでは,自重と主働土圧が作用するものとして安定計算を行って

    いる。同様な方法でもたれ式擁壁の安定計算を行うと,図 4.15(a)のように荷重の

    合力が擁壁底面のミドルサード,あるいは底面そのものから後方へ外れ,地盤反

    B

    V0

    H0

    QV1

    QV2

    q1

    q2

    q3

    QH2

    QH1

    B1 B2

    QH1

    QV’

    QV1

    QH’

    B1 B2

    q1’q2’

    q1’

    V0

    H0

    QV2

    q2q3

    B1 B2B

    QH’

    q2’QV’

    (a) 擁壁底面の地盤反力度 (b)置換え基礎に作用する外力 (c) 基礎全体の地盤反力度

    B

    kH・WW

    q3q1

    QH2kH・W

    W

    (a)多段の段切り基礎 (b)置き換え基礎の変位モード

  • 142

    第 4 章 地盤反力

    力を算定できないことが生じる。これは,壁面の地盤反力を考慮に入れていない

    ためである。

    もたれ式擁壁は,壁が後方へ傾斜しているため主働土圧によるモーメントに比

    べて自重によるモーメントが卓越する。このため擁壁は図 4.15(b)のような変位を

    生じる。すなわち,壁の下部は前方へ変位するが上部は裏込め土を押しつけるよ

    うになる。この結果,壁面の上部には図 4.15( c)のように地盤反力が発生する。

    この場合の地盤反力は,図 4.15(d)のように底面と壁面がばねで支持されている

    ものと仮定して地盤係数法によって算定することができる。なお,背面のばねは

    壁が地盤を押しつける l2 の区間のみに設ける。 l2 の求め方は後述する。また,背

    面のばねは壁面に垂直なばねのみとし,せん断ばねは設けない。これは,せん断

    ばねによる解析結果への影響はわずかであり,せん断ばねを無視することで解析

    が著しく簡便化されるためである。

    図 4.16 のように x-y 座標軸と s-t 座標軸をとり,x-y 座標の原点 0 に H0,V0,M0の荷重が作用するものとする。そして,x-y 座標の原点における水平方変位を u0,

    鉛直変位を v0,回転角をαとする。

    原点から x だけ離れた任意点 m の水平変位をδx,鉛直変位をδyとすると,これ

    らの変位は式(4.38)で表される。

    δ δ αx yu v x= = + ⋅0 0,  ········································································ ( 4.38)

    s-t 座標の原点 01の変位は式(4.39)で表される。

    図 4.15 変位法による地盤反力度の算出法

    QH

    H

    θ

    B

    δ

    QV

    d

    Wc PA

    yA

    q

    1:n

    主働土圧

    V0θ l

    l2

    l1M0

    H0

    B

    1:n

    kv

    ks

    kt

    l

    l2

    l1

    B

    1:n

    (b)変位モード (d)解析モデル

    QV

    QH

    V0θ

    l

    l2

    l1

    Qt

    M0H0

    B

    1:n

    (c)地盤反力(a)従来法の解析

    143

    第 4 章 地盤反力

    図 4.16 変位の幾何学的関係 9)

    δ δ α δ δ θ δ θx y t x yu v B1 0 1 0 1 1 1= = + ⋅ = +, , cos sin ······························ ( 4.39)

    また,任意点 n の壁面に垂直方向の変位δt は式(4.40)で表される。

    ( ) ⎪⎭

    ⎪⎬⎫

    +++

    ⋅++=⋅+=

    αθθθ

    αθδθδαδδ

    sBvu

    ss yxttsinsincos=

    sincos

    00

    111 ····································· ( 4.40)

    底面のせん断地盤反力係数を kS,鉛直地盤反力係数を kV,壁面の垂直地盤反力

    係数を kt とすると,m 点の水平方向地盤反力度 qH,鉛直方向の地盤反力度 qV,n

    点の垂直地盤反力度 qt は式(4.41)となる。

    ( )( ){ }⎪⎭

    ⎪⎬

    +++=⋅=

    ⋅+=⋅=⋅=⋅=

    αθθθδ

    αδδ

    sBvukkq

    xvkkqukkq

    tttt

    VyVV

    SxSH

    sinsincos 00

    0

    0

    ································ ( 4.41)

    これらの地盤反力と x-y 座標の原点に作用する荷重 H0,V0,M0のつり合いを考

    慮すれば,式(4.42)で表される剛性方程式が得られる。

    ⎪⎭

    ⎪⎬

    ⎪⎩

    ⎪⎨

    ⎧⋅

    ⎥⎥⎥

    ⎢⎢⎢

    ⎡=

    ⎪⎭

    ⎪⎬

    ⎪⎩

    ⎪⎨

    α0

    0

    333231

    232221

    131211

    0

    0

    0

    vu

    AAAAAAAAA

    MVH

    ························································ ( 4.42)

    s

    x

    t

    B

    Bx

    01

    0

    V0

    M0

    H0

    y

    θ

    αu0

    v0

    m

    m’

    n

    n’

    δy1

    δs

    δt

    s’

    s

    δx1δx

    δy

    δt1

  • 144

    第 4 章 地盤反力

    ここに,

    ( )( )

    { }⎪⎪⎪⎪

    ⎪⎪⎪⎪

    +⋅++++⋅+⋅=

    ++⋅+⋅==

    ++⋅==⋅+⋅=

    ⋅==⋅+⋅=

    3/)2sin(sin3/1

    2/sinsin2/12/sincos

    sincossin

    cos

    2221

    21212

    333

    2122

    3223

    2123113

    2222

    22112

    2211

    llllllBBlkBkA

    llBlkBkAAllBlkAA

    lkBkAlkAA

    lkBkA

    tv

    tv

    t

    tv

    t

    ts

    θθ

    θθ

    θθθ

    θθθ

    ······· ( 4.43)

    剛性方程式を解いて座標原点の変位 u0,v0,αを求め,これを式(4.41)に代入す

    れば任意点の地盤反力度を求めることができる。なお,壁面が前方(地盤から離

    れる方向)へ変位する領域は,式(4.44)の条件を満たすように試行錯誤的に決定す

    る必要がある。 ( ) 0 sincos 100 =⋅+⋅++ αθαθ lBvu ···················································· ( 4.44)

    4.7.2簡便法

    地盤係数法を適用すれば,もたれ式擁壁の底面および壁面の地盤反力度を合理

    的に算出することができるが,計算が複雑であり実用的とは言い難い。そこで,

    簡便な計算法について説明する。

    地盤係数法によってもたれ式擁壁の地盤反力を算出すると図 4.17 のようになる。

    図 4.17 記号の説明

    QV

    QH

    V0θ l

    l2=ηl

    l1

    Qt

    M0

    H0

    B

    q V1

    q V2

    1:n

    d=ξB

    qt1

    H

    145

    第 4 章 地盤反力

    底面の鉛直地盤反力の合力からつま先までの距離 d と底面幅 B の比をξ(=d/B),

    壁面の地盤反力発生区間長 l2 と壁面長 l の比をη(=l2/l)とすれば,地盤反力は式

    (4.45)~(4.48)のように表され,ξとηが明らかになれば,地盤反力を簡単に計算す

    ることが可能になる 11),12)。

    ( )Q M B V

    B lt =

    − ⋅ ⋅

    − + −⎛⎝⎜

    ⎞⎠⎟

    0 0

    1 13

    ξ

    θ ξ ηsin ····························································· ( 4.45)

    Q V Q Q H QV t H t= − = +0 0sin , cosθ θ  ············································· ( 4.46)

    B

    QqB

    Qq VVVV)13(2)32(2

    21−

    =−

    =ξξ

    ,  ············································ ( 4.47)

    l

    Qtqt ⋅=

    η2

    ························································································ ( 4.48)

    ξ,ηは,底面と壁面の支持地盤のばね定数比,底面幅と壁面長の比,壁面の

    傾斜角θの影響を受ける。

    擁壁工指針 13)では,様々な形状及び規模のもたれ式擁壁について地盤係数法に

    より試算を行い,表 4.2 に示すη,ξを使用してもよいとしている。

    表 4.2 「簡便法」に用いる係数 η,ξ 自重のみの場合 荷重組合せに土圧や地震時慣性力などを考慮する場合 背面勾配 - 1:0.3 1:0.4 1:0.5 η=l2/l 1.00 0.50 0.60 0.70 ξ=d/B 0.58 0.56

    また,擁壁工指針では,通常のブロック積擁壁の基礎コンクリート底面の鉛直

    地盤反力度は,次式によって算定してもよいとしている 13)。

    BVqV 02

    1.2= ···················································································· ( 4.49)

    ここに,

    qV2:基礎コンクリート底面の後方に発生する鉛直地盤反力度(kN/m2)

    V0:基礎コンクリート底面における全鉛直荷重(kN/m)

    B:基礎コンクリート幅(m)

  • 146

    第 4 章 地盤反力

    4.8 U 型擁壁の地盤反力度

    U 型擁壁の底面の地盤反力度を算定する方法には,重力式擁壁や片持ばり式擁壁

    のように計算する方法と弾性床上の梁として計算する方法がある。両者とも地盤

    は離散型のバネにモデル化するが,前者は底版を剛体,後者は弾性体と見なすこ

    とに相違点がある。

    底版に作用する荷重 w が等分布荷重であれば,地盤反力 q は底版の曲げ剛性に

    関係なく q=w で等分布となる。このため,底版に曲げモーメントは発生しない。

    しかし,荷重が集中荷重や部分載荷荷重等であれば,地盤反力や曲げモーメント

    は底版の曲げ剛性によって違ってくる。

    長さ l=10m の弾性床上の梁の両端に,P0=10kN の鉛直集中荷重を作用させた場

    合と,M0=10kN・m のモーメントを作用させた場合について,地盤反力図と曲げモ

    ーメント図を描くと,図 4.18,図 4.19 のようになる。

    図 4.18 両端に集中荷重を受ける弾性床上の梁

    0

    βl=3.0

    βl=1.5βl=2.5

    123456

    -25-20-15-10

    -50

    曲げ

    モー

    メン

    トM

    (kN

    -m)

    地盤

    反力

    q(kN

    /m)

    βl=1.5βl=2.5

    βl=3.0

    l=10m

    P=10kN P=10kN

    k

    EI

    剛体

    剛体

    147

    第 4 章 地盤反力

    図 4.19 両端にモーメントを受ける弾性床上の梁

    図中のβは特性値と呼ばれるもので,式(4.50)で算定することができる 4)。

    44EI

    k=β ····················································································· ( 4.50)

    ここに,

    β:梁の特性値(m-1)

    k:地盤のバネ定数(kN/m2)

    E:梁のヤング係数(kN/m2)

    I:梁の断面2次モーメント(m4)

    βl は,梁と地盤の相対剛性を評価する指標 3)である。梁の曲げ剛性 EI が小さい

    ほど,地盤のバネ定数 k が大きいほどβl は大きくなる。剛体(EI=∞)はβl=0 であ

    るが,βl<1.0 であれば剛体と見なせるとされている 3)。

    梁の両端に集中荷重が作用したときの地盤反力は,梁が剛体であれば等分布す

    -2-1.5

    -1-0.5

    00.5

    1

    l=10m

    M=10kN-m

    k

    EIM=10kN-m

    曲げ

    モー

    メン

    トM

    (kN

    -m)

    地盤

    反力

    q(kN

    /m)

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    βl=3.0

    βl=1.5剛体

    βl=2.5

    βl=1.5

    βl=2.5

    βl=3.0

    剛体

  • 148

    第 4 章 地盤反力

    るが,弾性体の場合には一定にならない。βl 値が大きいほど地盤反力は梁の中央

    が小さく,端部が大きくなるように分布する。その結果,梁の中央に発生する曲

    げモーメントは,βl 値が大きいほど小さくなる。

    梁の両端にモーメントが作用したときは,梁が剛体であれば地盤反力は発生し

    ない。このため,発生する曲げモーメントは,梁の全長にわたって一定となる。

    梁が弾性体のときは,端部に負,中央に正の地盤反力が発生する。梁中央の曲げ

    モーメントは,βl 値が大きいほど小さくなる。

    底版を弾性体と見なすと,複雑な弾性床上の梁の公式 4)を使って計算しなければ

    ならないが,剛体とみなせば計算は簡単になる。しかも,曲げモーメントを大き

    く算定するので安全側の設計となる。適正なバネ定数を推定することが困難な場

    合には,剛体として計算すべきである。

    擁壁工指針には,「U 型擁壁の底版は,他の形式の擁壁に比べて一般に底版幅が

    広いので弾性床上の梁として設計するのがよい」13)と説明している。U 型擁壁の底

    版幅が広い場合に,剛体として計算すると不経済になりすぎる。このことに配慮

    した記述と思われる。

    4.9 細長い基礎の地盤反力度と断面力

    衝突荷重が1本のガードレール支柱から基礎に伝達されると仮定すれば,弾性

    床上の有限長梁に集中荷重が作用するものとして解析することができる。

    長さ L の梁の端から a の位置に集中荷重 P が作用するとき,梁の端から x(≦a)

    の位置の曲げモーメント Mx は式(4.51)で,せん断力 Sxは式(4.52)で表される 14)。

    [

    ] ⎪⎭

    ⎪⎬

    −+−

    =

    )sinhcoscosh(sin

    sinhsin2)sin(sinh2

    2

    122

    xxxxF

    xxFLL

    PM x

    ββββ

    βββββ ······················ ( 4.51)

    [

    ] ⎪⎭

    ⎪⎬

    ++−

    =

    )sinhcoscosh(sin

    sinhsinsinsinh

    1

    222

    xxxxF

    xxFLL

    PSx

    ββββ

    ββββ ···································· ( 4.52)

    149

    第 4 章 地盤反力

    図 4.20 弾性床上の梁

    ただし,

    coshcossincoshcossinh1 abLbaLF ββββββ −= ····························· ( 4.53)

    ( )( )⎭

    ⎬⎫

    −+−=

    abbaLbabaLF

    ββββββββββ

    coshsinsinhcossin sinhcoscoshsinsinh2 ··························· ( 4.54)

    aLb −= ····················································································· ( 4.55)

    44EI

    Bks=β ················································································ ( 4.56)

    vs kk )1/43/1( ~= ····································································· ( 4.57)

    375.0)(873,3 −= BLNkv α ································································· ( 4.58)

    ここに, E は基礎のヤング係数, I は基礎の断面2次モーメント,B は基礎の

    底面幅,ks は水平方向せん断地盤反力係数,kv は鉛直方向地盤反力係数, N は標

    P

    L

    a b=L-a

    x

    Mmax

    Mmin

    Ks=ksB

    EI

    ( − )

    ( + )

    ( + )

    ( − )

    曲げモーメント図

    せん断力図

  • 150

    第 4 章 地盤反力

    準貫入試験の N 値,αは地盤反力係数の推定法に関する係数で 2 である。式(4.58)

    は,道路橋示方書 4)の式を変形して求めたものである。

    図 4.21 ガードレール基礎

    図 4.22 衝突荷重の載荷位置と曲げモーメント

    図 4.21 は,防護柵標準仕様 15)の中の計算例で使われているガードレール基礎で

    ある。この基礎に,衝突荷重 P=30kN が作用したときに発生する曲げモーメント

    を求めると図 4.22 のようになる。曲げモーメントの絶対値が最大になるのは,P

    が基礎の中央(a=5m)に作用したときである。したがって,衝突荷重は基礎の中央

    に作用するとして設計すればよい。

    P が基礎の中央に作用するときの最大モーメント Mm と最大せん断力 Sm は次式

    で求めることができる。

    P=30kN

    B=0.85m L=10m

    h=0.50m

    Ks=ksB砂質土N値 10

    a=0.5m

    a=1.25m

    a=2.5m

    a=3.75m

    a=5.0m

    曲げ

    モーメント

    M(k

    N・

    m)

    -30

    -20

    -10

    0

    10

    20

    30

    40

    0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

    151

    第 4 章 地盤反力

    ( )LLLL

    PM m βββββcoscosh

    )sin(sinh4−

    += ···································· ( 4.59)

    2PSm = ······················································································· ( 4.60)

    基礎が剛体であれば,曲げモーメント Mmは式(4.61)で求められる。せん断力 Smは式(4.60)と変わらない。

    8

    PLM m = ··················································································· ( 4.61)

    図 4.21 の基礎について,地盤の N 値とβL と最大曲げモーメント Mmの関係を求

    めると図 4.23 のようになる。

    βL は地盤と基礎の相対剛性を表している。基礎を剛体と見なせば計算は簡単に

    なるが, 曲げモーメントを過大に見積もることになる。

    図 4.23 N 値とβL と Mm の関係

    βL0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    30

    35

    40

    60

    弾性床上の梁

    剛体

    N値

    0 10 20 30 40 50

    最大曲げ

    モー

    メン

    トM

    m(k

    Nm

    )

    ( )LLLL

    PM m βββββcoscosh

    )sin(sinh4−

    +=

    8PLM m =

    P=30kNEI=563,000kNm2L=10m

  • 152

    第 4 章 地盤反力

    参考文献

    [第 4 章]

    1) 大草重康訳:フローリンの土質力学,森北出版株式会社,第 1 巻 pp207-208,1969.

    2) 横山幸満:くい構造物の計算法と計算例,山海堂,pp19-20,1977.

    3) 吉中竜之進:横方向地盤反力係数,土木技術資料,Vol.10,No.1,1968.

    4) 日本道路協会:道路橋示方書Ⅳ下部構造編,2012.

    5) 右城猛:擁壁の設計法と計算例,理工図書,1989.

    6) 右城猛:擁壁設計Q&A,理工図書,1995.

    7) 日本道路公団:設計要領第二集,1991.

    8) 右城猛,矢野光明,図師直史:もたれ式擁壁の壁面土圧の簡便算定法,第 27 回

    土質工学研究発表会講演概要集,土質工学会,pp1817-1818,1992.

    9) 右城猛,矢野光明,津野正道,前田史男,上田正:ブロック積み擁壁の壁面土

    圧評価法に関する研究,第 29 回土質工学研究発表会講演概要集,土質工学会,

    pp1771-1780,1994.

    10) 右城猛:もたれ式擁壁の安定計算法について,土と基礎,Vol.43,No.10,pp53-54,1994.

    11) 右城猛:続・擁壁の設計法と計算例,理工図書,1998.

    12)土木学会四国支部:大型ブロック積擁壁擁壁設計・施工マニュアル(第 2 回改訂

    版),2004.

    13) 日本道路協会:道路土工-擁壁工指針,2012.

    14)土木学会:構造力学公式集,1986.

    15)日本道路協会:車両用防護柵標準仕様・同解説,2004.