第6章 廃棄物処分合理化に関する検討 - jaea · 2019. 7. 2. ·...

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6-1 第 6 章 廃棄物処分合理化に関する検討 6.1 合理化に関する基本的考え方 TRU 廃棄物の処分に関するこれまでの検討において,第 1 次 TRU レポート(共同作業チーム, 2000)に続く「超ウラン核種を含む放射性廃棄物処理処分の基本的考え方について」(原子力委員 会原子力バックエンド対策専門部会,2000 年 3 月)(原子力委員会,2000)において,技術開発 課題として,「今後は,処分施設設計の合理化及び詳細化,並びに安全性の評価の信頼性の向上を 目指して,試験データの取得,特有な現象のより正確な把握と評価モデルの構築などを行うこと が重要である。」としており,処分施設の合理化については第 3 章に記したが,ここでは,さらに 処分方法の高度化についても検討した。 また,放射性廃棄物全般にわたる原則的な考え方として,原子力委員会あるいは原子力長期計 画策定会議などでは,発生者責任や減量・減容等の原則と並んで合理的な処理処分の原則が述べ られている。これは,発生者や発生源によらず,適切な処理を行った上で,浅地中処分や余裕深 度処分などの管理処分を行うか,又は将来の人間活動に影響しないよう生活環境から隔離する地 層処分を行うなど,安全性を確保した上で効率性や経済性に配慮しつつ,放射能濃度の高低や含 まれる放射性物質の種類等に基づく適切な区分ごとに合理的な処理・処分を実施することを指し ている。 放射性廃棄物の発生源が原子力発電・再処理を基軸とする核燃料サイクルであり,数桁に及ぶ 広範な濃度分布を有する TRU 廃棄物(図 2.3-1 参照)を適切に処分することがこの分野の検討に おいて期待されていること,狭小な国土であり,処分場立地は重要な課題の一つであることなど を考慮すると,既存の処分概念(クリアランス,浅地中処分,余裕深度処分,地層処分)を有効 に活用し,人間環境における安全性確保を基軸とした柔軟で合理的な処分の考え方を示していく 必要があると考えられる。 これらを踏まえて,本章では,第 2 章から第 5 章までで述べてきた廃棄物の物量や処分概念に 対して,いくつかの合理的な案を提示しその有効性等について検討する。 合理的な考え方としては,廃棄体から人工バリア,天然バリア及び生物圏までの公衆の被ばく に至るまでの各要素の合理化,高度化によるもの(たとえば,廃棄物物量,放射性物質量の低減, バリア性能の向上)のほか,安全確保を前提に,発生者や発生源によらず放射性廃棄物の性状に 応じて処理・処分し,調査工事や設備の共用化による効率化によるものなどがある。後者の場合 は,事業間を横断する設備や運用となることから柔軟な法整備あるいは法の運用が必要となる場 合があるため,必要に応じ政策・制度面での国の検討が必要である。 6.2 では,HLW と TRU 地層処分対象廃棄物の同一サイトでの処分,すなわち併置処分について 検討する。これは,地層処分という同一処分概念の対象物について処分場を共有化することによ り,主として立地選定での調査・一部施設の共用・管理要員の効率化の点で合理性が生じる考え 方であり,海外でも経済性だけでなく処分場の数を減ずることができるなどの理由から併置が施 設設計の前提となっているところが多い。併置処分についての経済的合理性は,すでに総合資源 エネルギー調査会電気事業分科会コスト等小委員会の電気事業連合会提出資料(電気事業連合会, 2003)に示されているため,本検討書では,HLW と TRU 地層処分対象廃棄物間の相互影響につい

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第 6章 廃棄物処分合理化に関する検討

6.1 合理化に関する基本的考え方

TRU 廃棄物の処分に関するこれまでの検討において,第 1次 TRU レポート(共同作業チーム,

2000)に続く「超ウラン核種を含む放射性廃棄物処理処分の基本的考え方について」(原子力委員

会原子力バックエンド対策専門部会,2000 年 3 月)(原子力委員会,2000)において,技術開発

課題として,「今後は,処分施設設計の合理化及び詳細化,並びに安全性の評価の信頼性の向上を

目指して,試験データの取得,特有な現象のより正確な把握と評価モデルの構築などを行うこと

が重要である。」としており,処分施設の合理化については第 3 章に記したが,ここでは,さらに

処分方法の高度化についても検討した。

また,放射性廃棄物全般にわたる原則的な考え方として,原子力委員会あるいは原子力長期計

画策定会議などでは,発生者責任や減量・減容等の原則と並んで合理的な処理処分の原則が述べ

られている。これは,発生者や発生源によらず,適切な処理を行った上で,浅地中処分や余裕深

度処分などの管理処分を行うか,又は将来の人間活動に影響しないよう生活環境から隔離する地

層処分を行うなど,安全性を確保した上で効率性や経済性に配慮しつつ,放射能濃度の高低や含

まれる放射性物質の種類等に基づく適切な区分ごとに合理的な処理・処分を実施することを指し

ている。

放射性廃棄物の発生源が原子力発電・再処理を基軸とする核燃料サイクルであり,数桁に及ぶ

広範な濃度分布を有する TRU 廃棄物(図 2.3-1 参照)を適切に処分することがこの分野の検討に

おいて期待されていること,狭小な国土であり,処分場立地は重要な課題の一つであることなど

を考慮すると,既存の処分概念(クリアランス,浅地中処分,余裕深度処分,地層処分)を有効

に活用し,人間環境における安全性確保を基軸とした柔軟で合理的な処分の考え方を示していく

必要があると考えられる。

これらを踏まえて,本章では,第 2 章から第 5章までで述べてきた廃棄物の物量や処分概念に

対して,いくつかの合理的な案を提示しその有効性等について検討する。

合理的な考え方としては,廃棄体から人工バリア,天然バリア及び生物圏までの公衆の被ばく

に至るまでの各要素の合理化,高度化によるもの(たとえば,廃棄物物量,放射性物質量の低減,

バリア性能の向上)のほか,安全確保を前提に,発生者や発生源によらず放射性廃棄物の性状に

応じて処理・処分し,調査工事や設備の共用化による効率化によるものなどがある。後者の場合

は,事業間を横断する設備や運用となることから柔軟な法整備あるいは法の運用が必要となる場

合があるため,必要に応じ政策・制度面での国の検討が必要である。

6.2 では,HLW と TRU 地層処分対象廃棄物の同一サイトでの処分,すなわち併置処分について

検討する。これは,地層処分という同一処分概念の対象物について処分場を共有化することによ

り,主として立地選定での調査・一部施設の共用・管理要員の効率化の点で合理性が生じる考え

方であり,海外でも経済性だけでなく処分場の数を減ずることができるなどの理由から併置が施

設設計の前提となっているところが多い。併置処分についての経済的合理性は,すでに総合資源

エネルギー調査会電気事業分科会コスト等小委員会の電気事業連合会提出資料(電気事業連合会,

2003)に示されているため,本検討書では,HLW と TRU 地層処分対象廃棄物間の相互影響につい

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て評価し併置処分の成立性を示す。

6.3 では,余裕深度処分対象廃棄物の濃度上限値及び目安値とされているα核種濃度区分値に

ついて検討する。これは,これらの基準値が変化することにより余裕深度処分及び地層処分対象

の廃棄物量が変動し,合理性が生じる考え方である。これらの基準値は,種々の考え方がありう

るが,ここではリスク論的考え方など 近の線量基準の考え方に基づき設定することを試み,各

処分概念ごとの廃棄物量の変化と安全評価への影響を検討する。

6.4 では,海外から返還が予定されている廃棄物の返還形態について,異なる選択肢を採用す

ることについて検討する。この概念は,廃棄物量が大幅に少なくなることによって,国際輸送,

貯蔵に対して効率化が図れるほか,処分にとっても処分施設レイアウト設計などにおいて柔軟性

が高くなるなど,合理性が生じる考え方である。本検討書では,この新たな返還形態を対象とし

て,各処分概念の廃棄物量の変化と,安全評価への影響を検討する。

6.2 高レベル放射性廃棄物との併置処分に関する検討

本書では,TRU 廃棄物と高レベル放射性廃棄物(HLW)の併置処分概念を具体化するために,諸

外国における併置処分の状況をまとめた上で,一般的な地質環境条件を前提とし,TRU 廃棄物処

分施設と HLW 処分施設の相互影響として熱,有機物,硝酸塩及び高 pH プルームを解析・評価し,

その結果に基づき離間距離及び工学的対策を検討して併置処分のレイアウトを提示し,今後の課

題を摘出・整理した。

6.2.1 諸外国における併置処分の状況

わが国の TRU 廃棄物に相当する放射性廃棄物について,地層処分を計画あるいは実施している

国としては,再処理施設を保有しているイギリス,フランス,アメリカ及び再処理を過去に実施

したあるいは海外に再処理を委託しているドイツ,スイス,ベルギー,オランダ及びスペイン等

が挙げられる。これらの国々のうち,スイス,フランス,ベルギー,ドイツ及びアメリカの概要

を表 6.2.1-1 にまとめて示す。

TRU 廃棄物と HLW の併置処分概念が示されている代表国としては,フランス及びスイスの 2 ヶ

国が挙げられる。フランスでは TRU 廃棄物,HLW 及び使用済燃料の処分施設はそれぞれ区分して

設置される。これは,両者の相互作用を回避するためであるとされているが,詳細な記述はほと

んどない(ANDRA,2001)。

スイスでは,長寿命・中レベル放射性廃棄物(ILW)の処分坑道は HLW・使用済燃料処分坑道か

ら数 100m 離れた場所に設置することが示されており,長寿命 ILW 処分坑道の高 pH プルームが

HLW・使用済燃料処分坑道に及ぼす影響の可能性を回避することができるとしている(Nagra,2002)。

(図 6.2.1-1 参照)

また,併置処分における相互影響を検討している事例として,スイス,スウェーデン,フラン

ス及び英国における検討項目及び状況は,以下に示すとおりである。

①各国における併置処分に関する検討項目は,以下の4項目である。但し,これらに関す

る詳細な結果は公表されていない。

-HLW又は使用済燃料の発熱

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-TRU廃棄物中の有機物

-TRU廃棄物中の劣化物

-高pHプルーム

②スイスでは,長寿命ILW処分坑道のセメント系埋め戻し材及び構造躯体から発生する高

pHプルームが母岩を変質させるとともに,HLW・使用済燃料処分坑道のベントナイトを

変質させる可能性があるとしている。そのため,結晶質岩サイトでは母岩の亀裂を利用

して長寿命ILW処分坑道とHLW・使用済燃料処分坑道を隔離し,堆積岩サイトでは母岩が

比較的均質であるため,数100mの離間距離を確保するとしている(NAGRA,1994;NAGRA,

2002)。

③スウェーデンでは,SFL2(使用済燃料処分施設)からの発熱,SFL3~5中の腐食生成物

及びSFL3の有機物が考慮されている。また,これらを踏まえてSFL2とSFL3~5は相互作

用を回避するため,1kmの離間距離を確保し,両施設間の連絡坑道は埋め戻しとプラグ

により隔離するとしている。さらに,SFL3~5は,支配的な地下水勾配の観点からSFL2

の下流に設置することを計画している(SKB,1999)。

④フランスでは,TRU廃棄物,HLW及び使用済燃料の相互影響を軽減するため,処分エリア

を分割し,数100mの離間距離を確保するとされているが,詳細は不明である(ANDRA,

2001)。

⑤英国では,中低レベル廃棄物とHLW・使用済燃料の相互影響として高pHプルームを考慮

しており,両施設の離間距離として500mを確保している(King and Poole,2002)。

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表6.2.1-1 諸外国における放射性廃棄物の処分概念

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オパリナス粘土層における地層処分場レイアウト

高レベル放射性廃棄物

TRU廃棄物

オパリナス粘土層における地層処分場レイアウト

高レベル放射性廃棄物

TRU廃棄物

高レベル放射性廃棄物

TRU廃棄物

オパリナス粘土層における地層処分施設断面図

高レベル放射性廃棄物 TRU廃棄物

図6.2.1-1 スイスにおけるHLW・使用済燃料とTRU廃棄物の併置処分概念図(Nagra, 2002)

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6.2.2 相互影響評価

6.2.2.1 影響因子の摘出・整理

TRU 廃棄物と HLW の両地層処分施設を同一のサイトに併置処分することを想定した場合に,閉

鎖後の安全性能に関して,両処分施設間で相互に影響を及ぼす可能性のある項目を摘出・整理し

た。

(1) 相互影響の基本機構及び整理

併置処分における相互影響機構のうち,その影響が大きいと考えられるものを潜在的に重要な

相互影響機構として抽出した。

①温度

影響の方向:HLW処分施設→TRU廃棄物処分施設

基本機構:地質環境の擾乱/エネルギー伝播

相互影響機構:母岩とは異なる熱物性を有する領域(HLW処分施設)による擾乱が存在す

る環境下でのTRU廃棄物処分場近傍での温度の時空間変化への影響

②水理

影響の方向:HLW処分施設⇔TRU廃棄物処分施設

基本機構:地質環境の擾乱

相互影響機構:母岩とは異なる水理学的物性を有する領域(HLW処分場及びTRU処分場)に

よる擾乱が存在する環境下でのHLW/TRU廃棄物処分場近傍あるいは広域で

の地下水流動への影響

③応力

影響の方向:HLW処分施設→TRU廃棄物処分施設

基本機構:地質環境の擾乱

相互影響機構:母岩とは異なる力学的物性を有する領域(HLW処分施設)による擾乱が存

在する環境下でのTRU廃棄物処分施設近傍での応力場への影響

④化学

影響の方向:HLW処分施設←TRU廃棄物処分施設

基本機構:地質環境の擾乱,物質移動

相互影響機構:母岩とは異なる化学的特性を有する領域(TRU廃棄物処分施設)による擾

乱が存在する環境下でのHLW処分施設近傍での地球化学的環境の時空変化

への影響であり,TRU廃棄物処分施設に由来する,高pH,有機物,硝酸塩,

セメントコロイド及びガス等が細目として挙げられる。

⑤放射線場

TRU廃棄物処分施設あるいはHLW処分施設の個別施設内においても,放射線場の影響が顕

在化することはないと考えられていることから,放射線場に関する相互影響は無視できる

ほど小さいと考えられる。

上記では,HLW処分施設とTRU廃棄物処分施設が同じサイトに建設されるとした場合に,シナリ

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オ解析上想定されうる相互影響機構を幅広く抽出した。しかしながら,相互影響機構の検討の目

的は,サイト条件,処分施設レイアウト,人工バリア仕様及び廃棄体仕様等の不確定要因が多く

残されている現状において,併置処分の成立性の意思決定に資する材料を整備することにあり,

前項で抽出されている潜在的な相互影響機構のすべてについて定量的に検討することは必ずしも

現実的ではない。そのため,前項で抽出した潜在的な影響機構をスクリーニングし,次項以降で

の定量的評価する項目を選定することとした。

地質環境の擾乱に関する影響機構は,サイトの地質環境条件(地質層序,断層の有無,異方性,

不均質性など)に強く依存する。これらは,併置処分を実施する段階では重要な検討事項となる

可能性があるが,サイトが特定されていない現状において,これらの影響を定量的に評価するこ

とは困難であること及び核種移行距離は保守的に100mに設定されていることから,除外すること

とした。

TRU廃棄物処分施設からのセメントコロイドの物質移行によるHLW処分施設への影響については,

TRU廃棄物処分においてもセメントコロイドの影響は小さいこと及び高pHプルーム等の解析結果

での離間距離が確保できれば,セメントコロイドの影響は十分緩和されると考えられることから

除外することとした。

ガスの物質移行の影響については,ガス発生源である金属量がTRU廃棄物処分施設よりも多い

HLW処分場においてもガス発生の人工バリア及び天然バリアに与える影響は小さいと判断されて

いることから,天然バリアでのHLW処分施設とTRU廃棄物処分施設間のガス移行は除外することと

した。

以上から,次節以降では,閉鎖後の安全性能の観点から TRU 廃棄物/HLW の併置処分の成立性を

判断する上で重要であると考えられる相互影響機構として下記 4 項目を取り上げ,定量的に検討

することとした。

①HLW処分施設からTRU廃棄物処分施設への熱の伝播

②TRU廃棄物処分施設からHLW処分施設への有機物の移行と影響

③TRU廃棄物処分施設からHLW処分施設への硝酸塩の移行と影響

④TRU廃棄物処分施設からHLW処分施設への高pHプルームの移行と影響

6.2.2.2 熱影響

(1) 廃棄体の発熱量

HLW(ガラス固化体)の発熱率は,図 6.2.2.2-1 に示すように TRU 廃棄物の中で発熱率が も高

いハル・エンドピースと比較して約 100 倍高い。また,TRU 廃棄物処分施設に処分されるハル・

エンドピースの廃棄体数は約29,000本であり,ガラス固化体約40,000本よりも少ないことから,

熱及び温度の影響は HLW 処分施設から TRU 廃棄物処分施設への方向が主であり,逆方向の影響を

考慮する必要はないと考えられる。

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図 6.2.2.2-1 ガラス固化体とハル・エンドピースの発熱率の経時変化

(2) 解析体系及びモデル

今回の熱解析では,HLW処分施設の処分形態及び母岩の熱特性の差異を把握するため,結晶質岩

系岩盤及び堆積系岩盤の2ケースについて実施した。

熱移動には,伝導伝熱,対流伝熱(境膜伝熱)と放射伝熱の3機構があるが,地層処分環境下に

おいては岩盤が存在し,かつ,地下水流速が十分小さいことから,HLWの発熱により岩盤中に発生

する温度勾配に基づく伝導伝熱が支配的であると考えられる。また,HLWの処分施設は2km四方と

広大であることから薄い平板で代表することとし,解析体系は2次元で取り扱うこととした。

したがって,今回の解析では図6.2.2.2-2に示すような体系を設定し,HLW処分施設からTRU廃棄

物処分施設への熱移動は,熱伝導解析コード「TRUMP」を使用することとした。

図6.2.2.2-2 熱伝導解析のモデル

また,境界条件は,上下方向にそれぞれ500m離れた地点を温度一定境界(地表面温度:15℃,

地下500m,温度:30℃,地温勾配:3℃/100m)とし,水平方向はHLW処分施設中心から2,000m離

れた地点を断熱境界とした。今回の熱解析に使用する人工バリア及び岩盤の熱的物性値を表6.2.

2.2-1に示す。

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表6.2.2.2-1 人工バリア及び岩盤の熱的物性値

対 象 物 熱伝導率 (W/m・K)

比 熱 (J/kg・K)

単位体積重量 (Mg/m3)

空隙率 (%)

ガラス固化体 1.2 960 2.8 ――

オーバーパック 53.0 460 7.8 ――

緩衝材 1.7 1,000 2.1 ――

埋め戻し材 2.4 1,400 1.85 ――

結晶質岩 2.8 1,000 2.7 2

堆積岩(SR-C) 2.2 1,400 2.7 30

(3) 解析結果

HLW 処分施設の発熱による岩盤の温度上昇と離間距離の関係を,図 6.2.2.2-3~6.2.2.2-4 に示

す。50 年間中間貯蔵した場合には,HLW 処分施設から 100m 離れた地点では,結晶質岩系岩盤及び

堆積岩系岩盤とも温度上昇は 5℃以下であり,300m 離れた地点では 1℃以下である。

(4) 廃棄物の発熱が人工バリア性能に与える影響

廃棄物の発熱により,人工バリア内の温度が上昇すると,溶解度,分配係数及び拡散係数等の

核種の収着挙動が変化するとともに,人工バリアの変質が促進される可能性がある。

HLW 処分施設では,緩衝材が長期に亘り顕著な変質を起こさないように, 高温度が 100℃未満

となるように定置間隔が設定されている。これは国内外の試験・評価及びナチュラルアナログに

基づき,100℃を超えない温度であれば,ベントナイトの主要構成鉱物であるスメクタイトの鉱物

学的変化は起こらないことに基づくものである(核燃料サイクル開発機構,1999b)。

TRU 廃棄物処分施設については,人工バリア材としてセメント系材料とベントナイト系材料を

使用しているため,第 1 次 TRU レポートではセメント系材料について放射性核種の吸着性が低下

しない(C-S-H ゲルが結晶化しない)上限温度として 80℃を設定し,廃棄体(ハル・エンドピー

ス)の処分坑道への定置密度及び処分坑道の離間距離が設定されている。

(5) 廃棄物の発熱が天然バリア性能へ与える影響

今回の熱解析に基づけば,HLW を 50 年中間貯蔵した場合,HLW 処分施設近傍の温度上昇は 20℃

以下(処分深度 500m における地質環境温度が 30℃の場合,50℃以下)であることから,岩盤中

の鉱物が変質することはないと考えられる。

(6) まとめ

HLW 処分施設の発熱による影響は,HLW 処分施設から 100m 離れた地点では結晶質岩系岩盤及び

堆積岩系岩盤とも温度上昇は 5℃以下であり,300m 離れた地点では 1℃以下であることから,TRU

廃棄物と HLW 処分施設の離間距離は数 100m 確保することにより,その影響を考慮する必要はない

と考えられる。

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図 6.2.2.2-3 結晶質岩系岩盤における温度変化と離間距離

図 6.2.2.2-4 堆積岩系岩盤における温度変化と離間距離

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6.2.2.3 有機物影響

(1) 廃棄物中の有機物の種類

第 2 章における廃棄体含有物質情報に基づけば,TRU 廃棄物には複数の有機物が含まれるが,

4.4.6 の有機物の影響において,アスファルト及び廃溶媒については核種の溶解度及び収着挙動

に与える影響は小さいという結論が得られていることから,本項では JNC のハル・エンドピースに

含まれるセルロース系有機物について検討することとする。

英国 AEA 及びスイス PSI の既往研究に基づけば,放射性核種の分配係数及び溶解度に影響を与

える物質としてはセルロースの分解生成物であるイソサッカリン酸(ISA:Iso Saccharinic Acid)

が錯生成の高い物質として指摘されており,英国,スイス及びスウェーデン等の諸外国の安全評

価においても取り上げられている(Bradbury et al.,1995)。セルロースは図 6.2.2.3-1 に示す

ように(C6H10O5)nの基本構造を有しており,ISA はその分解生成物である。

HO

HO

CH2OH

OH

O

O

HO

CH2OH

OH

O

OO

CH2OH

OH

OHHO

COOH

CH2

CH2OH

CH2OH

OHCH

CHO

セルロース

threo-ISA

COOH

CH2

CH2OH

HOCH2

OHCH

C OH

erythro-ISA

図 6.2.2.3-1 セルロース及び ISA の化学構造(Greenfield and Holtom,1995)

(2) 有機物プルームの評価

JNC ハル・エンドピースに含まれる有機物はすべてセルロース系有機物であるとし,その分解生

成物である ISA の収率は 100%と仮定する。TRU 廃棄物処分施設から漏洩した ISA プルームの母岩

中での挙動は,次の条件に依存する。

①ISA のインベントリー ②セメント系材料への ISA の収着分配係数

③母岩への ISA の収着分配係数 ④母岩での地下水流向と流速

有機物プルームの解析では母岩の水理特性の差異を把握するため,解析対象は結晶質岩系岩盤

及び堆積系岩盤の2ケースについて実施した。ISAは人工バリア及び天然バリアにその一部が吸着

すると予想されるが,定量的なデータが蓄積・整備されていないことから,今回の解析ではセメ

ント系材料には吸着されるが,母岩には吸着されず,地下水により希釈されると仮定する。また,

解析体系は処分施設及び周辺岩盤を2次元で取扱うため,2次元物質移行解析コード「AZURE」を使

用した。今回の解析に使用するモデルを図6.2.2.3-2に示す。また,解析に使用するパラメータ,

人工バリア及び岩盤の水理特性を表6.2.2.3-1に示す。

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図6.2.2.3-2 解析モデル図

表6.2.2.3-1 使用パラメータ及び物性値

パラメータ 単 位 結晶質岩 堆 積 岩

有機物量 ISA量 kg 540(=0.5kg×1,084体)

セメントの透水係数 m/s 4×10-6 透水係数

ベントナイトの透水係数 m/s 2×10-11

セメントでの実効拡散係数 m2/s 8×10-10

ベントナイトでの実効拡散係数 m2/s 3×10-10 拡散係数

母岩での実効拡散係数 m2/s 8×10-11 1.2×10-9

セメントでの収着分配係数 m3/kg 0.17

ベントナイトでの収着分配係数 m3/kg 0 分配係数

母岩での収着分配係数 m3/kg 0

対象処分施設 - 廃棄体グループ2 人工バリア

形 状 処分施設寸法 m 8.8φ 11.3φ

透水係数 m/s 1×10-8,1×10-9,1×10-10

間隙率 - 0.02 0.30

真密度 Mg/m3 2.7 2.7

動水勾配 m/m 0.01

天然バリア

分散長 - 移行距離の1/10

不透水境界

全水頭

固定

境界

(20m)

全水頭

固定

境界

(0m)

1,000m

1,000m

地下水流向

1,000m 1,000m

不透水境界

TRU 廃棄物 処分施設

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6-13

(3) 解析結果

有機物の 2 次元物質移行解析結果を図 6.2.2.3-3~図 6.2.2.3-4 に示す。結晶質岩系岩盤と堆

積岩系岩盤では空隙率と実効拡散係数が異なるため,有機物プルームの挙動は異なる。

結晶質岩系岩盤では 1×10-6mol/dm3のプルームは施設近傍に限定されており,1×10-7及び 1×

10-8mol/dm3 のプルームは処分施設の地下水上流側では 100m 以内であり,地下水下流側ではそれ

ぞれ 200 及び 300m 程度である。

一方,堆積岩系岩盤では空隙率が大きく,結晶質岩に比較して希釈水量が大きく,かつ,地下

水流速も小さいことから,1×10-6mol/dm3のプルームは処分施設内であり,1×10-7及び1×10-8mol

/dm3のプルームは処分施設の地下水上流側及び下流側ともそれぞれ50及び100m程度である。

(4) 有機物が人工/天然バリア性能へ与える影響

セルロース系有機物のアルカリ分解の結果生じる ISA は配位子として作用し,核種と相互作用

して(錯体の生成),間隙水中での存在形態を変化させる。その結果,溶解度の上昇及び分配係数

の低下等の影響をもたらし,人工/天然バリアの核種移行遅延性能を損なう可能性がある。ISA

の放射性核種の溶解度に与える試験データとしては,いくつか報告されている。Greenfield et al.

(1995)の報告に基づけば,Pu の溶解度は図 6.2.2.3-5 に示すように ISA 濃度が 1×10-6mol/dm3を

超えると上昇し始める。

また,Tits ら(2002)では,Eu(Ⅲ)と Th(Ⅳ)の方解石(Valanginian marl の主要成分)へ

の吸着について ISA の影響を試験・評価している。本レポートによれば,Eu(Ⅲ)と Th(Ⅳ)の

分配係数は,ISA 濃度がそれぞれ 1×10-5mol/dm3及び 2×10-5mol/dm3を超えると低下すると結論づ

けられている。(図 6.2.2.3-6 参照)

さらに,Bradbury and Sarott(1994)は,ISA 濃度が主要元素の溶解度に与える影響を表

6.2.2.3-2 に示すように設定しており,ISA 濃度の影響下限値は 1×10-6mol/dm3である。

(5) まとめ

諸外国の文献に基づけば,セルロース系有機物の分解生成物である ISA が核種の溶解度及び収

着挙動に影響を与える濃度は 1×10-6mol/dm3である。今回の解析結果に基づけば,1×10-6mol/dm3

のプルームの拡がりは処分施設の極近傍に限定されていることから,TRU 廃棄物と HLW 処分施設

との離間距離を 100m 確保すれば,その影響を考慮する必要はないと考えられる。

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6-14

図 6.2.2.3-3 結晶質岩系岩盤の有機物プルーム解析結果(透水係数:1×10-9m/s)

単位[mol/dm3]

単位[mol/dm3]

単位[mol/dm3]

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6-15

図 6.2.2.3-4 堆積岩系岩盤の有機物プルーム解析結果(透水係数:1×10-9m/s)

単位[mol/dm3]

単位[mol/dm3]

単位[mol/dm3]

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6-16

図 6.2.2.3-5 Pu 溶解度と ISA 濃度の関係(Greenfield et al.,1995)

図 6.2.2.3-6 Eu 及び Th の分配係数と ISA 濃度の関係(Tits et al.,2002)

表 6.2.2.3-2 ISA 濃度と主要元素の溶解度上昇率の関係

溶解度上昇率(Solubility enhancement factors) ISA濃度

(mol/dm3) Pu(Ⅳ) Am(Ⅲ) Th(Ⅳ) U(Ⅵ) Np(Ⅳ) Tc(Ⅳ)

1E-06 1 1 1 1 1 1

1E-05 20 20 20 1 1 1

1E-04 500 500 500 ~2 ~2 1

1E-03 2E+04 2E+04 2E+04 ~100 ~100 ~10

1E-02 1E+06 1E+06 1E+06 ~5E+03 ~5E+03 ~500

No ISA

//

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6-17

6.2.2.4 硝酸塩影響

TRU 廃棄物に含まれる硝酸塩含有廃棄物は主に再処理工程のプロセス廃液であり,4.4.9 に記述

されているように,地層処分対象となる硝酸塩含有廃棄物の硝酸塩の総量は NaNO3換算で約 3.25

×106kg と見積もられる。この場合の処分施設内の硝酸塩濃度は,硝酸塩が易溶性であることか

ら処分施設内に浸入した地下水により容易に溶解し,廃棄体物量と硝酸塩量から施設内間隙水濃

度を算出すれば 7.1mol/dm3となり*1,ほぼ硝酸塩の飽和溶解度(25℃で 7.7mol/dm3)に近い濃度

となる。

硝酸塩が HLW 処分システムのバリア性能に与える影響としては,

・ ベントナイト系材料と岩盤の鉱物学的な変質に対する影響

・ ベントナイト系材料の透水性に対する影響

・ 放射性核種の人工バリア・天然バリアへの収着性への影響

・ オーバーパックなどの腐食に対する影響

・ 地質環境の酸化還元状態の変化や硝酸イオンによる元素の酸化状態の変化

が考えられる。なお,酸化還元状態の変化や元素の酸化状態の変化については,4.4.9 において

もその可能性が指摘されており,定量的な判断を行う上での知見の拡充が研究課題とされている。

本項では,まず TRU 廃棄物処分施設において硝酸塩が間隙水中に溶解した結果生じる NO3-及び

塩を構成している陽イオンが周辺岩盤中に拡がる程度(以下,硝酸塩プルームとする)を評価す

る。硝酸塩が多量に共存することによるバリア性能への影響については 4.4.9 に記述されており,

ここでは硝酸塩プルームの評価を行いその結果を踏まえて硝酸塩影響について記述する。

(1) 硝酸塩プルームの評価

TRU 廃棄物処分施設から放出された硝酸塩の影響は,地下水中の硝酸塩濃度によって影響の度

合いが異なることから,TRU 廃棄物処分施設からの硝酸塩プルームを水理・物質移行解析により

評価した。

a. 解析条件

硝酸塩プルームは,以下の条件に影響される。

①処分施設内の硝酸塩濃度 ②廃棄物マトリクス部の性能

③セメント系材料への硝酸塩の収着分配係数 ④母岩への硝酸塩の収着分配係数

⑤母岩での地下水流向と流速 ⑥母岩中での微生物による分解

処分施設内の硝酸塩のうち,アスファルト固化体及びビチューメン固化体については,固化マ

トリクスからの硝酸塩の浸出を考慮し,浸出期間を 1,000 年と設定した。なお,4.4.7 に記述さ

れているように地質媒体中では硝酸塩を分解する微生物活動が考えられるが,微生物活動はサイ

ト条件に強く依存すると考えられるため,本検討においては考慮しないこととした。また,4.4.9

に記述されているように,硝酸塩が溶解することにより生じる NO3-は一部金属等との反応により

還元されその化学形態が変化する可能性が示されているが,本評価ではバリア材への収着性に乏

*1:硝酸塩の施設内間隙水濃度は,硝酸塩の総量 3.25×106kg/(硝酸塩含有廃棄物の体積 5,701m3

×セメント系材料の間隙率 0.19)×充てん率 0.2/NaNO3の分子量 8.5×10-2kg/mol で算出した。

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6-18

しいと考えられる NO3-を想定することとした。

NO3-のバリア材に対する収着分配係数については,同じ陰イオン形態である I-の収着分配係数

に着目した。JNC-SDB(澁谷ほか,1999,陶山ほか,2004)を使用し,I-の収着分配係数を整理し

た結果を図 6.2.2.4-1 に示す。液相の組成には NaCl 溶液,NaHCO3溶液,地下水,固相には,岩石

として花崗岩類,砂岩,角閃石,鉱物としては長石類,輝石類,黒雲母を選択した。図 6.2.2.4-1

中の Na+濃度は硝酸塩飽和濃度よりも低いが,I-の収着分配係数は Na+濃度が異なる溶液に対し

0.0001m3/kg よりも大きな値を示している。そこで,硝酸塩プルーム評価においてはバリア材へ

の収着分配係数として 0.0001m3/kg を設定した。

解析モデルは,図 6.2.2.4-2 に示すように廃棄物グループ 3 相当の TRU 廃棄物処分施設と処分

施設の上流側 300m,下流側 500m の周辺岩盤をモデル化した 2 次元垂直断面モデルである。解析

には公開解析コードである2次元水理・物質移行解析コード「Dtransu-2D・EL」(たとえば,菱谷

ほか,1999)を使用した。また,解析に使用したパラメータ,人工バリア及び岩盤の物性値を表

6.2.2.4-1 に示した。

b. 解析結果

岩盤の透水係数が1×10-9m/sの結晶質岩系岩盤と堆積岩系岩盤の解析ケースの硝酸塩濃度分布

の時間変化を図 6.2.2.4-3 と図 6.2.2.4-4 に示す。また,TRU 廃棄物処分施設から見て

① 地下水流向の上流側に向かう方向

② 地下水流向に垂直な方向

③ 地下水流向の下流側に向かう方向

について,TRU 廃棄物処分施設から 50m,100m,200m,300m 離れた地点(ただし③については 400m

離れた地点と 500m 離れた地点を追加)の 10 万年間における硝酸塩濃度が到達した濃度の 大値

をそれぞれ表 6.2.2.4-2~表 6.2.2.4-4 に示す。

地下水流向の上流側に向かう方向と地下水流向に垂直な方向への硝酸塩プルームは,TRU 廃棄

物処分施設から100m離れた地点では0.01mol/dm3のオーダーもしくはそれ以上に硝酸塩濃度が高

くなる解析ケースが存在するが,300m 離れた地点では 1×10-4mol/dm3オーダーよりも小さい濃度

までしか到達していない。

また,地下水流向の下流側に向かう方向への硝酸塩プルームについては,とくに間隙率が小さ

い結晶質岩系岩盤の場合には TRU 廃棄物処分施設から遠い地点まで高濃度の硝酸塩プルームが到

達する。TRU 廃棄物処分施設から 500m 離れた地点においても硝酸塩濃度は 0.01mol/dm3オーダー

の濃度に到達するが,その到達時間は 1×104年のオーダーである。

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6-19

1E-4

1E-3

1E-2

1E-1

1E+0

1E-7 1E-6 1E-5 1E-4 1E-3 1E-2

Na+(mol/dm

3)

I-の

収着

分配

係数

(m3/kg

)

図 6.2.2.4-1 I-の岩石への収着分配係数と液相中 Na+濃度との関係

500m300m300m

地下水流向(動水勾配1%)

(浸透流解析):不透水境界(物質移行解析):濃度フラックス0固定境界

(浸透

流解

析):

全水

頭固

定境

界(物

質移

行解

析):

濃度

勾配

0固

定境

界(浸

透流

解析

):全

水頭

値固

定境

界(全

水頭

値:300

m)

(物

質移

行解

析):濃

度勾

配0固

定境

(浸透流解析):不透水境界(物質移行解析):濃度勾配0固定境界

TRU廃棄物処分施設アスファルト固化体/ビチューメン固化体:浸出期間1,000年アスファルト固化体/ビチューメン固化体以外:瞬時放出,分配平衡

X

Z

図 6.2.2.4-2 解析モデル図

表 6.2.2.4-1 使用パラメータ及び物性値

パラメータ 単 位 結晶質岩 堆 積 岩

硝酸塩量 kg 3.25×106

透水係数 セメントの透水係数 m/s 4×10-6

セメントでの実効拡散係数 m2/s 8×10-10 拡散係数

母岩での実効拡散係数 m2/s 8×10-11 1.2×10-9

セメントでの収着分配係数 m3/kg 0.0001 収着分配

係数 母岩での収着分配係数 m3/kg 0.0001

対象処分施設 - 廃棄体グループ3

透水係数 m/s 1×10-8,1×10-9,1×10-10

間隙率 - 0.02 0.30

真密度 Mg/m3 2.7 2.7

動水勾配 m/m 0.01

天然バリア

分散長 - 移行距離の1/10

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6-20

(a) 1,000 年後

(b) 5,000 年後

(c) 10,000 年後

[単位:mol/dm3] 図 6.2.2.4-3 硝酸塩濃度分布の時間変化(結晶質岩:岩盤の透水係数 1×10-9m/s)

距離[m]

距離[m]

距離[m]

距離[m]

距離[m]

距離[m]

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6-21

(a) 1,000 年後

(b) 5,000 年後

(c) 10,000 年後

[単位:mol/dm3] 図 6.2.2.4-4 硝酸塩濃度分布の時間変化(堆積岩:岩盤の透水係数 1×10-9m/s)

距離[m]

距離[m]

距離[m]

距離[m]

距離[m]

距離[m]

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6-22

表 6.2.2.4-2 10 万年間での TRU 廃棄物処分施設から上流側に離れた

各地点における硝酸塩プルームの最大到達濃度

岩種:結晶質岩系岩盤 (単位:mol/dm3)

レファレンスケース

岩盤の透水係数1E-9m/s 岩盤の透水係数1E-8m/s 岩盤の透水係数1E-10m/s

50 5.1E-2 1.4E-2 1.4E-1

100 1.6E-3 9.7E-5 1.5E-2

200 3.0E-6 3.3E-8 7.7E-6

300 0.0E+0 0.0E+0 0.0E+0

岩種:堆積岩系岩盤 (単位:mol/dm3)

レファレンスケース

岩盤の透水係数1E-9m/s 岩盤の透水係数1E-8m/s 岩盤の透水係数1E-10m/s

50 5.9E-3 2.1E-3 6.8E-3

100 1.2E-3 1.3E-4 1.6E-3

200 1.7E-4 1.3E-6 3.4E-4

300 0.0E+0 0.0E+0 0.0E+0

感度解析ケース離間距離(m)

離間距離(m)感度解析ケース

表 6.2.2.4-3 10 万年間での TRU 廃棄物処分施設から地下水流向と垂直な方向に離れた

各地点における硝酸塩プルームの最大到達濃度

岩種:結晶質岩系岩盤 (単位:mol/dm3)

レファレンスケース

岩盤の透水係数1E-9m/s 岩盤の透水係数1E-8m/s 岩盤の透水係数1E-10m/s

50 6.3E-2 3.7E-3 1.3E-1

100 3.2E-3 4.0E-6 1.1E-2

200 2.7E-6 1.2E-11 4.3E-6

300 5.2E-11 1.2E-16 3.6E-11

岩種:堆積岩系岩盤 (単位:mol/dm3)

レファレンスケース

岩盤の透水係数1E-9m/s 岩盤の透水係数1E-8m/s 岩盤の透水係数1E-10m/s

50 6.0E-3 3.3E-3 6.1E-3

100 1.3E-3 2.7E-4 1.4E-3

200 3.1E-4 9.3E-6 3.5E-4

300 9.3E-5 8.6E-7 1.0E-4

離間距離(m)感度解析ケース

離間距離(m)感度解析ケース

表 6.2.2.4-4 10 万年間での TRU 廃棄物処分施設から下流側に離れた

各地点における硝酸塩プルームの最大到達濃度

岩種:結晶質岩系岩盤 (単位:mol/dm3)

レファレンスケース

岩盤の透水係数1E-9m/s 岩盤の透水係数1E-8m/s 岩盤の透水係数1E-10m/s

50 3.7E-1 7.7E-1 1.3E-1

100 1.9E-1 4.6E-1 2.0E-2

200 4.7E-2 2.5E-1 1.7E-5

300 1.5E-3 1.7E-1 2.5E-10

400 7.8E-6 1.2E-1 3.4E-16

500 1.5E-8 1.8E-2 0.0E+0

岩種:堆積岩系岩盤 (単位:mol/dm3)

レファレンスケース

岩盤の透水係数1E-9m/s 岩盤の透水係数1E-8m/s 岩盤の透水係数1E-10m/s

50 6.2E-3 1.7E-2 4.9E-3

100 2.1E-3 7.4E-3 1.4E-3

200 6.9E-4 3.2E-3 3.5E-4

300 1.8E-4 2.1E-3 5.5E-5

400 2.5E-5 1.5E-3 4.2E-6

500 3.2E-6 1.3E-3 3.2E-7

離間距離(m)感度解析ケース

離間距離(m)感度解析ケース

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6-23

(2) 既存の硝酸塩影響に関する知見の整理

硝酸塩による影響については,4.4.9 に廃棄体グループ 3 を対象としてセメント系材料の変質

挙動に対する影響,放射性核種の溶解度等の核種移行パラメータへの影響が記載されている。こ

こでは,HLW 処分施設への影響の観点から緩衝材や岩盤等を対象とした知見について整理した。

a. ベントナイト系材料と岩盤の鉱物学的な影響

ベントナイト系材料と岩盤の鉱物学的影響については,NaNO3飽和濃度とその 1/1,000 に相当す

る 0.01mol/dm3での 長 18 ヶ月間の確認試験が実施されている(中澤ほか,2004)。図 6.2.2.4-5

は変質試験前後のベントナイト試料の X 線回折結果であり,NaNO3共存下では出発試料からの顕著

な変化は確認されていない。ただし,ベントナイトのイオン交換反応については,NaNO3飽和濃度

ではセメント系材料に起因するアルカリ成分を考慮しているにも係らず Na 型が支配的であるが,

硝酸塩濃度が0.01mol/dm3と0mol/dm3ではCa型がほぼ同様に支配的であることが確認されている。

また,2 種類の堆積岩については,NaNO3の存在に係らず試料中に含まれる石英や斜長石等の初

期鉱物には顕著な変化が確認されていない。

図 6.2.2.4-5 変質試験前後におけるベントナイト試料の X 線回折結果(中澤ほか,2004)

b. ベントナイト系材料の透水性に対する影響

ベントナイト系材料の透水性に関しては,人工海水のように溶存イオンの濃度が高い場合には

ベントナイト粒子の凝集に起因する膨潤性能の低下により透水係数の増加が起こることが確認さ

れている(核燃料サイクル開発機構,2002)。実際に pH13 程度で 3mol/dm3の NaNO3を含む水溶液

を使用して実施した透水試験では,図 6.2.2.4-6 に示すように人工海水(SW)の場合と同様にベン

トナイト系試料の透水係数が増加する結果が得られている(三原ほか,2004)。しかし,この現象

は硝酸塩の存在に特化した現象ではなく,H12 レポート(核燃料サイクル開発機構,1999b)にお

ける地下水組成が海水系地下水であった場合の HLW 処分場の性能評価で同程度の影響が考慮され

ていると考えられる。

0 5 10 15 20

0

1k

2k

3k

4k

5k

〃 飽和

〃 0.01M

硝酸塩なし

未変質

Analcime

smectite

試験期間:18ヵ月

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6-24

c. 放射性核種の人工バリア・天然バリアへの収着性への影響

放射性核種のセメント系材料と岩盤への収着性への影響については,4.4.9 に記述されている。

三倉ら(2004)は,放射化金属から浸出した有機 C-14,Cl-36,Np-237 の健全なセメント(OPC

及びOPC/BFS=1/9)に対する収着分配係数と堆積岩に対する有機C-14の収着分配係数を評価した。

セメント系材料に対する有機 C-14,Cl-36 の収着性については,NaNO3飽和濃度の 1/1000 倍に相

当する 0.007mol/dm3 では有意な収着分配係数の低下は認められないものの,NaNO3 飽和濃度では

NaNO3が共存しない条件に比べて 1オーダー程度の収着分配係数の低下が認められた。また,セメ

ント系材料に対するNp-237の収着性についてはNaNO3飽和濃度においても有意な収着分配係数の

低下は認められていない。さらに,堆積岩に対する有機 C-14 の収着性については,セメント系材

料の場合と同様に 0.007mol/dm3 では有意な収着分配係数の低下は認められないものの,NaNO3 飽

和濃度では NaNO3 が共存しない条件に比べて1オーダー程度の収着分配係数の低下が認められて

いる。しかしながら,NaNO3濃度が 0.01mol/dm3程度から飽和濃度までの範囲のバリア材に対する

放射性核種の収着分配係数に関しては知見が得られていない。既往の知見で参考となるものとし

て JNC-SDB(澁谷ほか,1999,陶山ほか,2004)を使用し,HLW 処分において重要核種である Cs+

について,Na+濃度と分配係数の関係を図 6.2.2.4-7 に整理した。液相の組成は濃度が異なる NaCl,

Na2CO3,Na2SO4,NaHCO3溶液を選択し,固相は天然バリア中の岩盤に含まれると考えられる玄武岩,

花崗岩・花崗閃緑岩,頁岩,赤鉄鉱,微斜長石を対象とした。図 6.2.2.4-7 によれば Na+濃度が

0.1mol/dm3よりも濃い濃度で Cs+の分配係数が若干低下することが確認できる。

(a) 透水係数の通液の種類の依存性 (b) 透水係数の試料の処理方法の依存性

注)DW:脱気した脱イオン水,CW:pH12.5 の高アルカリ溶液,AW:pH13.2 の高アルカリ溶液,AWN:AW に NaNO3を 3mol/dm3の

割合で添加した溶液,SW:人工海水。

図 6.2.2.4-6 3mol/dm3の硝酸ナトリウムを含む溶液を使用した透水試験結果

(三原ほか,2004 を一部修正)

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6-25

1E-4

1E-3

1E-2

1E-1

1E+0

1E+1

1E+2

1E+3

1E-3 1E-2 1E-1 1E+0 1E+1

Na+(mol/dm

3)

Cs+

の収

着分

配係

数(m

3/kg

)

図 6.2.2.4-7 Cs+の岩石・鉱物への収着分配係数と液相中 Na+濃度との関係

d. 炭素鋼などの金属腐食に対する影響

HLW 処分施設において検討されている炭素鋼オーバーパックの腐食に対する影響としては,応

力腐食割れの原因物質になり得る可能性及び酸化性化学種として NO3-が局部腐食の駆動力となる

可能性が考えられる。

H12 レポートにおける前者の取り扱いについては,放射線分解により生成される窒素を含むイ

オン及びラジカルの濃度は 2×10-4mol/dm3程度と評価し,Beavers et al.(1987)の 0.001mol/dm3

の沸騰 KNO3水溶液中の低歪み速度試験では応力腐食割れが生じていないこと,炭酸塩や塩化物と

共存した場合には応力腐食割れが抑制されること(小岩,1983)などの知見を踏まえ,処分環境に

おける硝酸塩による応力腐食割れが生じる可能性は低いと評価している。

後者については,H12 レポート(核燃料サイクル開発機構, 1999a)の「放射線分解による腐食へ

の影響」に示された考え方が参考になる。この考え方とは,水溶液の放射性分解により生成する

酸化性化学種により供給されるカソード電流密度が,炭素鋼が不働態化した場合の不働態保持電

流密度を超えなければ,局部腐食の駆動力とはならないというものである。硝酸イオンについて

も同様の考え方をとることができる。NO3-が緩衝材中を拡散して,オーバーパック表面でアンモ

ニアに還元されることによりカソード電流を供給すると仮定して評価し,不働態保持電流密度相

当のカソード電流密度を供給する緩衝材外側のNO3-濃度を評価すると4.5×10-4mol/dm3となった。

したがって,NO3-の濃度がこの濃度を超えなければ局部腐食の駆動力とはならないと考えられる。

(3) まとめ

HLW 処分施設は TRU 廃棄物処分施設に対して,種々の影響を直接受けないように地下水流向の

上流側や横方向に距離をとって配置することが検討されている。このため,HLW 処分施設への硝

酸塩影響は TRU 廃棄物処分施設から見て地下水流向の上流側や地下水流向に対して横方向への拡

がりによる影響である。硝酸塩プルームを評価した結果では,たとえば TRU 廃棄物処分施設から

300m離れた地点では硝酸塩濃度は 大でも1×10-4mol/dm3程度の濃度まで低下すると考えられる。

このため,既存の硝酸塩影響に関する知見を踏まえると,HLW 処分施設におけるバリア材の鉱物

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6-26

学的な変質,ベントナイト系材料の透水係数,バリア材への収着分配係数及び炭素鋼オーバーパ

ックの腐食に対して有意な影響を生じることはないと考えられる。

なお,長期的な地形,地質構造の変化などの要因による地下水流向の変化により,TRU 廃棄物

処分施設と HLW 処分施設の地下水流向に対する位置関係が変化する可能性が考えられる。その場

合の も極端な例としてHLW処分施設がTRU廃棄物処分施設の下流に位置した場合を想定すると,

硝酸塩プルームを評価した結果から,岩種及び岩盤の透水係数の設定に依存するが,上流側や横

方向への拡がりにより生じる硝酸塩濃度よりも高い硝酸塩濃度が到達する可能性が生じる。検討

対象とした地質環境条件の幅の中では,岩盤の透水係数が 1×10-8m/s の結晶質岩系岩盤の解析ケ

ースが も硝酸塩プルームが下流側に到達する結果となった。ただし,このような場合を想定し

たとしても,仮に TRU 廃棄物処分施設を HLW 処分場から 500m 離れた地点に配置した場合では,硝

酸塩濃度が1×10-4mol/dm3以上となるのは約20,000年経過後であること及びここで想定したよう

な極端な地形等の変化は長期的な変化であると考えられることを踏まえると,HLW 処分施設にお

いて物理的な閉じ込め性をオーバーパックが確保している期間に対して有意な影響を生じる可能

性は小さいと考えられる。

以上のことから,8.3 に示す研究課題はあるが,TRU 廃棄物処分施設を HLW 処分施設よりも地下

水流向に対して数 100m 下流側や立体的に離して配置することにより,顕著な硝酸塩影響は回避で

きると考えられる。

6.2.2.5 高 pH 影響

TRU 廃棄物処分施設では多量のセメント系材料が使用され,4.4.2,4.4.3 に記述されているよ

うに処分施設の間隙水はセメント系材料の溶出により高 pH となっている。セメント系材料の間隙

水は初期には Na,K の溶出によって pH>12.5 となる。Na,K が天然バリアへ散逸するとポルトラ

ンダイト(Ca(OH)2)の溶解平衡により pH12.5 程度となり,間隙水は Ca が支配的となる。Ca(OH)2

が消失すると,pH はカルシウムケイ酸塩水和物(C-S-H ゲル)により支配され,Ca の選択的溶脱

により C-S-H ゲルの Ca/Si 比が徐々に低下するのに伴い間隙水の pH も徐々に低下する。

このようにセメント系材料中のアルカリ成分は地下水中へ溶解し,徐々に天然バリアへ移行す

る。これにより,天然バリア中の地下水の pH が高くなる領域(高 pH プルーム)が形成されると

考えられる。セメント系材料から移行する高 pH プルームがバリア性能に与える影響としては以下

のものが想定される。

・ベントナイト系材料の物質移行特性に与える影響

・モンモリロナイトの Ca 型化

・ベントナイト系材料への鉱物学的な影響

・オーバーパックに用いられる炭素鋼の腐食に与える影響

・天然バリア中への鉱物学的な影響

・天然バリアでの核種移行特性への影響

本項では,TRU 廃棄物処分施設から移行する高 pH プルームを評価し,評価結果をもとに高 pH

プルームによる影響について記述する。

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6-27

(1) 高 pH プルームの評価

TRU 廃棄物処分施設では,廃棄体の固型化材料,処分施設内の充填材,構造躯体,坑道支保,

プラグ及びグラウト等において多量のセメント系材料の使用が想定される。これらの部位に使用

されるセメント系材料は長期的には地下水との反応により変質を生じる。その結果,接触する間

隙水は高アルカリとなり周囲のベントナイト系材料及び天然バリアとの反応を生じる。これらの

高アルカリ成分の移行,および鉱物との反応による影響を検討するため 2 次元‐地球化学・水理・

物質輸送連成解析コード「PHREEQC-TRANS」を用いた。

a. 解析対象施設

本検討ではアルカリ成分の拡がりが緩衝材との反応により緩和されない廃棄体グループ 4の施

設(緩衝材を設けていない施設)を対象とすることとし,図 4.2.4-1 に示すφ12m の円形断面の

処分施設を等価な断面積の正方形と置き換えて体系を 1次元化した。高 pH プルームを評価するた

めに処分施設の上流側,下流側ともに 200m の岩盤を解析領域としてモデル化し,上流端と下流端

において地下水濃度及び水頭を固定して解析した。モデル化した解析領域図を図 6.2.2.5-1 に示

す。

処分施設(コンクリート)

200m

周辺岩盤

水頭固定(動水勾配:1%)

水頭固定0.0m

地下水濃度固定 地下水濃度固定

10m200m

周辺岩盤

処分施設(コンクリート)

200m

周辺岩盤

水頭固定(動水勾配:1%)

水頭固定0.0m

地下水濃度固定地下水濃度固定 地下水濃度固定地下水濃度固定

10m200m

周辺岩盤

図 6.2.2.5-1 解析領域図

b. 母岩における鉱物組成の設定

処分施設周囲の母岩領域においては,処分施設から移行するアルカリ成分と母岩の構成鉱物と

の間の反応が生じ,構成鉱物の溶解及び二次鉱物の生成や間隙水組成の変化が生じる。ただし,

母岩の構成鉱物はサイト条件により異なり,現状のサイトを特定しない評価においてはそれを明

確に定めることはできない。そのため,本検討においては,仮想的な岩盤を想定することとした。

本検討において想定する岩盤の構成鉱物は TRU 処分施設からのアルカリ成分との反応が容易に

想定されるシリカ鉱物を想定することとした。シリカ鉱物としては,その結晶性などによりクオ

ーツ,クリストバライト,カルセドニ,非晶質シリカなどの複数の存在形態がある(都城ほか,1972)。

ここではこれらの中より,結晶性の鉱物として降水系地下水の設定においても考慮されており,

かつ,ベントナイトの随伴鉱物として考えられているカルセドニを想定した。

また,地下水の流路となる亀裂中などにおける充填鉱物としては非晶性のシリカ鉱物(都城ほ

か,1972),粘土鉱物(核燃料サイクル開発機構,1999b)が考えられることから,これらについ

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6-28

ても考慮することとした。粘土鉱物としてモンモリロナイトを想定し,その熱力学データを用い

て検討した。なお,これらの存在量自体は微量であると想定されるため,その反応量は 0.1wt%と

設定した(表 6.2.2.5-1 参照)。なお,ここでアルカリ成分との反応を想定した以外の固相中の鉱

物については反応性が非常に低いものと考え,化学反応に寄与しないものとして取り扱った。

表 6.2.2.5-1 地球化学反応に寄与すると考慮する鉱物

組成 反応量(wt%)

カルセドニ SiO2 10

非晶質シリカ SiO2 0.1

カルサイト CaCO3 0.1

モンモリロナイト Na0.33Mg0.33Al1.67Si4H2O12 0.1

c. 処分施設におけるセメント水和鉱物の設定

本検討においては,すべてのセメント系材料をモルタルとして取り扱うこととした。モデルモ

ルタルの仕様としては付録 3B に示されている本検討書での各種評価において前提とする共通仕

様に基づき設定した。モデルモルタルの示方配合,鉱物組成,化学組成をそれぞれ表 6.2.2.5-2

~表 6.2.2.5-4 に示す。また,セメント中の遊離アルカリ成分である Na,K はコンクリートが一

定期間以上にわたって健全であることや C-S-H ゲルなどへの吸着が考えられることから,間隙水

中への放出が抑制されると考えられるが,ここでは全量瞬時放出とし,速やかに移行するものと

した。

表 6.2.2.5-2 セメントの化学組成 (wt%)

SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO MgO SO3 Na2O K2O

普通ポルトランドセメント 21.3 5.31 2.57 64.8 1.95 1.94 0.24 0.56

表 6.2.2.5-3 モデルモルタルの示方配合

単位量(kg/m3) 水セメント比 W/C(%) 水(W) OPC(C) 細骨材量

55 266 483 1,449

表 6.2.2.5-4 セメント鉱物組成 (mol/dm3-water)

エトリンガイト C3FH6 C3AH6 C-S-H ゲル ポルトランダイト Na2O K2O

モルタル 0.211 0.416 1.132 16.4 7.45 0.097 0.15

d. 地下水組成

TRU 廃棄物処分施設からの高 pH プルームは,周囲の地下水流動状況等に加え化学反応により影

響を受ける。地質環境条件の多様性を考えた場合,岩盤中の地下水組成としてはレファレンスと

して想定されている降水系地下水に加え海水系地下水も考慮する必要がある。そこで,本検討で

は降水系地下水と海水系地下水の 2 種類を考慮した。

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6-29

e. シリカ鉱物の反応モデル

本検討では,岩盤中のシリカ鉱物として,カルセドニ及び非晶質シリカを想定している。この

中で,カルセドニについては処分施設における化学環境及びバリア材の長期性能の評価計算等に

おいて緩衝材中の随伴鉱物として考慮した。緩衝材中での評価においては,緩衝材の低透水性に

より物質移行は拡散支配となることから鉱物の溶解速度に対して物質移行時間の方が十分に長く

なる。そのため,化学反応としては瞬時平衡として取り扱うことができると考えられる。一方,

岩盤を対象とした本検討においては,透水係数が非常に高い状況では化学平衡状態まで達する十

分な反応時間が維持されない場合が想定され,溶解速度が反応量を律速する状況も考えられる。

そこで,本検討においてはカルセドニの反応については溶解速度を考慮することとした。これ

に対し,非晶質シリカは反応性が高く,周辺岩盤の透水係数が高い状況においても瞬時平衡によ

る取り扱いが可能であると考えられるため,非晶質シリカの反応は瞬時平衡として取り扱うこと

とした。各バリア材料において考慮した鉱物種を表 6.2.2.5-5 に示す。

表 6.2.2.5-5 各バリア材料において考慮した鉱物

バリア材 初期鉱物 二次鉱物

セメント系材料

ポルトランダイト

C-S-H ゲル

C3AH6

エトリンガイト

ブルーサイト

C3ASH4

C2ASH8

C3AS3

カオリナイト

パイロフィライト

フリーデル氏塩

カルサイト

カルセドニ

アナルサイム

ローモンタイト

岩盤

カルセドニ

非晶質シリカ

カルサイト

モンモリロナイト

C-S-H ゲル

C3ASH4

C2ASH8

C3AS3

ブルーサイト

アナルサイム

ローモンタイト

クリノタイロライト

f. 解析ケース

本検討ではアルカリ成分の処分場周囲への拡がりに関して,母岩の水理特性の差異による影響

を把握することから,岩種として結晶質岩系岩盤及び堆積岩系岩盤の 2 ケース,更に透水係数に

関して 3 ケースを想定して実施した。また,周辺地下水組成の違いによる影響を把握することか

ら,地下水組成として降水系地下水及び海水系地下水の 2 ケースを想定した。なお,それぞれの

岩種の解析上の取り扱いとしては,両者とも多孔質媒体としてモデル化を行い,岩種の違いとし

ては間隙率の違いを考慮した。

解析に使用したパラメータ,人工バリア及び岩盤の水理特性を表 6.2.2.5-6 に示す。

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6-30

表 6.2.2.5-6 高 pH プルーム解析に使用するパラメータ及び物性値

パラメータ 単 位 結晶質岩 堆 積 岩

透水係数 セメントの透水係数 m/s 4×10-6

セメントでの実効拡散係数 m2/s 8×10-10 拡散係数

母岩での実効拡散係数 m2/s 8×10-11 1.2×10-9

形 状 対象処分施設 - 廃棄体グループ4

透水係数 m/s 1×10-8,1×10-9,1×10-10

間隙率 - 0.02 0.30

真密度 Mg/m3 2.7 2.7 天然バリア

動水勾配 m/m 0.01

g. 解析結果

結晶質岩系岩盤を対象とするケースのうち,透水係数が 1×10-9m/s のケースについて降水系地

下水,海水系地下水ともに 10,000 年後における施設近傍での液相濃度,固相体積割合の変化を図

6.2.2.5-2~図 6.2.2.5-5 に,pH の変化を図 6.2.2.5-6~図 6.2.2.5-7 に示す。また,岩盤中の

pH の変化として,領域と時間の関係を図 6.2.2.5-8 に示す。

岩盤中の鉱物の変質としては,セメント中の遊離アルカリ成分である Na,K が移行する際に粘

土鉱物が変質して二次鉱物としてクリノタイロライトが生成した。海水系地下水のケースでは遊

離アルカリ成分が散逸した後は地下水中の Na 濃度が高いために,処分施設近傍から徐々にクリノ

タイロライトが溶解してアナルサイムが生成した。

また,施設近傍からは非晶質シリカの溶解が続く領域では,Ca/Si 比の低い C-S-H ゲル

(Ca/Si=0.4)が生成した。非晶質シリカが消失した領域では徐々に Ca/Si 比が高くなり,カルセド

ニの溶解によって生成する C-S-H ゲル(Ca/Si=0.9)が沈殿した。

岩盤中の pH はセメント中の遊離アルカリ成分が移行して高くなるが,遊離アルカリ成分が移行

する際にクリノタイロライトが生成することにより,とくに K が多量に鉱物相へ固定化され,Na

と K の移行の進展フロントは時間的な差が生じ,遊離アルカリ成分による pH への影響は小さくな

る。遊離アルカリ成分が散逸した後は,非晶質シリカの溶解により生成する C-S-H ゲル

(Ca/Si=0.4)の平衡により pH10.0 となった。非晶質シリカが消失した領域ではカルセドニの溶解

により生成する C-S-H ゲル(Ca/Si=0.9)の平衡で pH10.8 となった。100,000 年後では処分施設か

ら 10m 程度の範囲で非晶質シリカが消失し,pH10.8 まで高くなった。

高 pH プルームは,天然バリア中の流速に大きく影響される結果となった。天然バリアの透水係

数が 1×10-8m/s のケースでは移流により処分施設中の高アルカリ成分は下流側へ移行し,HLW 処

分施設が設置される上流側への影響は限定的であった。また,結晶質岩系岩盤のケースでは実流

速が大きいために 1×10-9m/s のケースでも上流側への影響は小さい。天然バリア中の実流速が小

さいケースではアルカリ成分が拡散により上流側へ移行し,100~200m の範囲で地下水中の初期

の pH よりも高くなる結果となった。

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6-31

図 6.2.2.5-2 10,000 年後の液相濃度分布(降水系地下水,結晶質岩)

注 1:C-S-H ゲルの表記は CSH(Ca/Si 比)としている

図 6.2.2.5-3 10,000 年後の固相体積割合分布(降水系地下水,結晶質岩)

1.0E-05

1.0E-04

1.0E-03

1.0E-02

1.0E-01

1.0E+00

1.0E+01

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200

Distance [m]

Con

. [m

ol/dm

3-w

ater]

8

9

10

11

12

13

14

pH

Rock Rock

1.0E-05

1.0E-04

1.0E-03

1.0E-02

1.0E-01

1.0E+00

1.0E+01

-20 -10 0 10 20 30

Distance [m]

Con. [

mol/

dm3 -

wate

r]

8

9

10

11

12

13

14

pH

NaKCa

MgCS

Cl

Al

SipH

Rock RockCement

1.0E-05

1.0E-04

1.0E-03

1.0E-02

1.0E-01

1.0E+00

1.0E+01

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200

Distance [m]

Con

. [m

ol/dm

3-w

ater]

8

9

10

11

12

13

14

pH

Rock Rock

1.0E-05

1.0E-04

1.0E-03

1.0E-02

1.0E-01

1.0E+00

1.0E+01

-20 -10 0 10 20 30

Distance [m]

Con. [

mol/

dm3 -

wate

r]

8

9

10

11

12

13

14

pH

NaKCa

MgCS

Cl

Al

SipH

Rock RockCement

ポルトランダイトの 溶解による高 pH の領域

Na,K の移行により

クリノタイロライトが 生成する領域

1.E-04

1.E-03

1.E-02

1.E-01

1.E+00

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200

Distance [m]

Volu

me f

raction

[-]

Rock Rock

1.E-04

1.E-03

1.E-02

1.E-01

1.E+00

-20 -10 0 10 20 30

Distance [m]

Volu

me f

raction [

-]

ポルトランダイト

C-S-Hゲル

C3AH6

C3ASH4

C2ASH8

C3AS3

カオリナイト

パイロフィライト

エトリンガイト

フリーデル氏塩

カルサイト

ブルーサイト

アナルサイム

クリノタイロライト

ローモンタイト

非晶質シリカ

モンモリロナイト

カルセドニ

Rock RockCement

1.E-04

1.E-03

1.E-02

1.E-01

1.E+00

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200

Distance [m]

Volu

me f

raction

[-]

Rock Rock

1.E-04

1.E-03

1.E-02

1.E-01

1.E+00

-20 -10 0 10 20 30

Distance [m]

Volu

me f

raction [

-]

ポルトランダイト

C-S-Hゲル

C3AH6

C3ASH4

C2ASH8

C3AS3

カオリナイト

パイロフィライト

エトリンガイト

フリーデル氏塩

カルサイト

ブルーサイト

アナルサイム

クリノタイロライト

ローモンタイト

非晶質シリカ

モンモリロナイト

カルセドニ

Rock RockCement

カルセドニの溶解

ポルトランダイト

の溶解

CSH(0.9)の生成

非晶質シリカが 消失した領域

非晶質シリカの溶解

CSH(0.4)の生成

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6-32

図 6.2.2.5-4 10,000 年後の液相濃度分布(海水系地下水,結晶質岩)

注 1:C-S-H ゲルの表記は CSH(Ca/Si 比)としている

図 6.2.2.5-5 10,000 年後の固相体積割合分布(海水系地下水,結晶質岩)

1.0E-05

1.0E-04

1.0E-03

1.0E-02

1.0E-01

1.0E+00

1.0E+01

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150

Distance [m]

Con. [m

ol/

dm3-w

ate

r]

8

9

10

11

12

13

14

pH

Rock Rock

1.0E-05

1.0E-04

1.0E-03

1.0E-02

1.0E-01

1.0E+00

1.0E+01

-20 -10 0 10 20 30

Distance [m]

Con. [

mol/

dm3 -

wate

r]

8

9

10

11

12

13

14

pH

Na

KCa

MgCS

ClAl

SipH

Rock RockCement

1.0E-05

1.0E-04

1.0E-03

1.0E-02

1.0E-01

1.0E+00

1.0E+01

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150

Distance [m]

Con. [m

ol/

dm3-w

ate

r]

8

9

10

11

12

13

14

pH

Rock Rock

1.0E-05

1.0E-04

1.0E-03

1.0E-02

1.0E-01

1.0E+00

1.0E+01

-20 -10 0 10 20 30

Distance [m]

Con. [

mol/

dm3 -

wate

r]

8

9

10

11

12

13

14

pH

Na

KCa

MgCS

ClAl

SipH

Rock RockCement

ポルトランダイトの 溶解による高 pH の領域

1.E-04

1.E-03

1.E-02

1.E-01

1.E+00

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150

Distance [m]

Volu

me f

ract

ion [

-]

Rock Rock

1.E-04

1.E-03

1.E-02

1.E-01

1.E+00

-20 -10 0 10 20 30

Distance [m]

Volu

me f

raction [

-]

ポルトランダイト

C-S-Hゲル

C3AH6

C3ASH4

C2ASH8

C3AS3

カオリナイト

パイロフィライト

エトリンガイト

フリーデル氏塩

カルサイト

ブルーサイト

アナルサイム

クリノタイロライト

ローモンタイト

非晶質シリカ

モンモリロナイト

カルセドニRock RockCement

1.E-04

1.E-03

1.E-02

1.E-01

1.E+00

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150

Distance [m]

Volu

me f

ract

ion [

-]

Rock Rock

1.E-04

1.E-03

1.E-02

1.E-01

1.E+00

-20 -10 0 10 20 30

Distance [m]

Volu

me f

raction [

-]

ポルトランダイト

C-S-Hゲル

C3AH6

C3ASH4

C2ASH8

C3AS3

カオリナイト

パイロフィライト

エトリンガイト

フリーデル氏塩

カルサイト

ブルーサイト

アナルサイム

クリノタイロライト

ローモンタイト

非晶質シリカ

モンモリロナイト

カルセドニRock RockCement

ポルトランダイト

の溶解

フリーデル氏塩の生成

カルセドニの溶解

Ca/Si 比の高い CSH の生成 非晶質シリカの 溶解が進む点

非晶質シリカが消失した領域

CSH(0.9)の生成

クリノタイロライトが溶解し

アナルサイムが生成する

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6-33

図 6.2.2.5-6 pH の変遷(1×10-9m/s,降水系地下水,結晶質岩)

図 6.2.2.5-7 pH の変遷(1×10-9m/s,海水系地下水,結晶質岩)

遊離アルカリ 成分の移行

CSH(0.4)の生成で 決まる pH10.0 の領域

-200 -160 -120 -80 -40 0 40 80 120 160 200Distance [m]

102

103

104

105Ti

me

[y]

Rock Rock

100,000 年

10,000 年

1,000 年100 年

-200 -160 -120 -80 -40 0 40 80 120 160 200Distance [m]

102

103

104

105

Tim

e [y

]

Rock Rock

100,000 年

10,000 年1,000 年 100 年

8

9

10

11

12

13

14

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200Distance [m]

pH

Rock Rock

8

9

10

11

12

13

14

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200Distance [m]

pH

Rock Rock

遊離アルカリ 成分の移行

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6-34

1×10-9m/s,結晶質岩,降水系地下水 1×10-9m/s,結晶質岩,海水系地下水

1×10-9m/s,堆積岩,降水系地下水 1×10-9m/s,堆積岩,海水系地下水

図 6.2.2.5-8 pH の時間的・空間的分布

-200 -160 -120 -80 -40 0 40 80 120 160 200Distance [m]

102

103

104

105

Tim

e [y

]

Rock Rock

-200 -160 -120 -80 -40 0 40 80 120 160 200Distance [m]

102

103

104

105

Tim

e [y

]

Rock Rock

-200 -160 -120 -80 -40 0 40 80 120 160 200Distance [m]

102

103

104

105

Tim

e [y

]

Rock Rock

-200 -160 -120 -80 -40 0 40 80 120 160 200Distance [m]

102

103

104

105

Tim

e [y

]

Rock Rock

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6-35

(2) 既存のアルカリ成分の影響に関する知見のまとめ

a. アルカリ成分が人工バリア性能に与える影響

セメント系材料成分が地下水に溶出すれば,大量の Ca2+が溶出し,スメクタイトの層間陽イオ

ンの Na+が Ca2+と置換する Ca 型化が起こるとともに,高 pH 環境ではベントナイトの主成分である

スメクタイトが溶解し,二次鉱物として C-S-H ゲル及びゼオライトが生成することが室内試験に

おいて確認されており,ナチュラルアナログ研究においても支持されている。

Ca 型化したベントナイトは,Na 型ベントナイトに比較して膨潤性が低下する。図 6.2.2.5-9

に示すように,透水係数に関しては有効ベントナイト乾燥密度が 1.6~1.7Mg/m3以上であれば Na

型の値と同等であるが,それ以下の有効ベントナイト乾燥密度では Na 型の値を上回り,1.36Mg/m3

(乾燥密度 1.6Mg/m3の 30%砂配合のベントナイト混合土等)では,約 1 桁程度高くなる。一方,図

6.2.2.5-10 に示すように,実効拡散係数については乾燥密度(100%クニゲル V1 単体での試験結

果であり,上記有効ベントナイト乾燥密度と同等)が 1.2~1.8Mg/m3の範囲では Na 型のそれと同

程度である。

1.0E-15

1.0E-14

1.0E-13

1.0E-12

1.0E-11

1.0E-10

1.0E-09

1.0E-08

0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 1.60 1.80 2.00

有効ベントナイト乾燥密度 ρbe (g/cm3)

透水

係数

(m

/se

c)

前田らによるCa型化ベントナイトの経験式

前田らによるNa型化ベントナイトの経験式

■:Na型ベントナイト□:Ca型化ベントナイト

PNC TN8410 98-021(前田ら,1998)に基づき作図

図 6.2.2.5-9 ベントナイトの透水係数試験結果

図 6.2.2.5-10 ベントナイトの拡散係数(三原,2000)

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6-36

スメクタイトの変質には pH 及び温度依存性が認められており,黒木ら(2000)の報告に基づけ

ば,表 6.2.2.5-7 に示すように pH11 で温度が 100℃以下の条件では,スメクタイトの溶解速度も

遅く,2 年間の変質試験では二次鉱物の生成も認められていない。これは,粘土鉱物の安定限界

を pH11 として取り扱うこととした Bradbury and Baeyens(1997)の見解とも整合する。

スウェーデンにおいては,主に ECOCLAY プロジェクトにおける既存の知見より,緩衝材及び埋

め戻し材の安定性の観点から,地下水の pH が 11 以下であることを基準としている(SKB,2004a;

SKB,2004b)。

また,図 6.2.2.5-11 に示すようにスメクタイトの溶解速度についても pH 依存性が認められて

おり,Huertas et al.(2001)は-0.34 の傾きを,Sato et al.(2003)は-0.21~-0.25 を提示し

ている。この結果からは pH の低下に伴い溶解速度の低下が認められるが,スメクタイトの溶解速

度は pH 依存項のみではなく温度,表面積及び抑制項なども大きく影響することから,単に pH 依

存性のみから影響の生じない範囲を論じることはできない。

表 6.2.2.5-7 アルカリ溶液におけるベントナイトの変質(黒木ほか,2000)

浸漬液 Ca(OH)2

pH 10.5 11.5 12.5

鉱物 ベントナイト 生成鉱物 ベントナイト 生成鉱物 ベントナイト 生成鉱物

50℃

Ca 型化したが

720 日まで

ほぼ残存

720 日まで

認められない

Ca 型化したが

720 日まで

ほぼ残存

720 日まで

認められない

180 日でほぼ

消失

30~180 日 CAHと C-S-H 360 日で CAH 720 日 CASH も生成

80℃

Ca 型化したが

720 日まで

ほぼ残存

720 日まで

認められない

Ca 型化

720 日でやや

減少

180~360 日

混合層鉱物

720 日で C-S-H

と CASH

90 日でほぼ

消失

30 ~ 360 日

C-S-H と CASH

720 日で混合

鉱物層も生成

100℃ ―――

Ca 型化したが

14 日までほぼ

残存

14 日までは

認められない

7 日でほぼ

消失

7~30 日 C-S-H

と CASH

図 6.2.2.5-11 スメクタイトの溶解速度の pH 依存性(Sato et al.,2003)

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6-37

また,ガラス固化体のオーバーパックに使用される炭素鋼の腐食の観点からは,図 6.2.2.5-12

に示すようにベントナイト周囲の地下水 pH が 12.5 以下であるならば,不働態化せず,全面腐食

が起こるとされている(谷口ほか,2002)。

図 6.2.2.5-12 緩衝材中における炭素鋼の不働態化条件

b. アルカリ成分が天然バリア性能に与える影響

TRU 廃棄物処分施設に大量に使用されるセメント系材料は地下水中に徐々に溶出し,母岩中に

高アルカリ性溶液が拡大する。pH プルームは長期間(数 1,000~数 100,000 年)に亘り,12.5 以

上が維持されることから,高 pH の地下水が移行する母岩中の鉱物は溶解又は二次鉱物を生成して

沈殿し,地下水化学も変化する。その結果,岩盤の間隙構造,透水係数及び放射性核種の収着分

配係数・溶解度が変化することが予想される。

Bradbury and Baeyens(1997)によれば,生成する鉱物相として C-S-H,CASH 及びゼオライト

等が挙げられるが,そのシステムは非常に複雑であり,時間的・空間的に変化するとされている。

また,中澤ら(2004)によればアルカリ影響による岩盤変質試験の結果,岩石中の鉱物の中で結

晶性鉱物の溶解は認められておらず,対して非晶質性鉱物は溶解し,溶出した Si とセメントから

溶出する Ca との反応により,C-S-H ゲルが生成する可能性が示唆されている。

(3) まとめ

高 pH プルームによる天然バリアの地下水の pH の変化について,TRU 廃棄物処分施設から上流

側,下流側ともに 200m の領域を対象として 10 万年後まで評価した。その結果,高 pH プルームは

天然バリア中の実流速に大きく依存し,実流速が大きいケースではHLW処分施設が設置されるTRU

廃棄物処分施設の上流側への影響は限定的であることが示唆された。天然バリア中の実流速が小

さいケースでは拡散による移行が顕著となり,TRU 廃棄物処分施設の上流側において数 10m から

200m 程度までアルカリ成分が移行し,pH が初期の地下水水質のものに比べ高くなった。しかし,

広範囲に pH が高くなるケースでもその値は pH9~10 程度であり,HLW 処分施設の緩衝材に影響を

与えるような高 pH(pH11 以上)となる領域は処分施設近傍に限定される結果であり,数 10m 以上

離れた地点での影響は小さいと考えられる。

不働態化

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6-38

また,長期的な地質条件の変化により地下水流向が HLW 処分施設へ向かう方向へ変化したと仮

定したとしても,処分施設内に多量に存在するCaの移行により地下水が高pHとなる領域は数10m

以内となった。本検討で設定したケースの中では,セメント中の遊離アルカリ成分である Na,K

の移行により短期間高 pH となることも想定されるが,この影響については二次鉱物の設定など不

確実性が大きい。

以上の結果から,地下水流向の変化を考慮した場合においても TRU 廃棄物処分施設と HLW 処分

施設の離間距離を 100m 程度確保することにより高 pH プルームによる影響は有意に生じないと考

えられる。

6.2.3 併置処分概念に関する検討

本項では,前項までの評価結果に基づき,併置処分概念及びレイアウトの検討結果を示す。

(1) 相互影響の対応策

TRU廃棄物処分施設とHLW処分施設の相互影響として,今回は熱,有機物,硝酸塩及び高pHプル

ームの影響を評価した。諸外国の対応策を踏まえれば,上記影響に対する対策としては,下記の

ものが挙げられる。

①離間距離の確保

②施設レイアウト(地下水流向,母岩亀裂(破砕帯)の利用等)

③工学的対策(プラグの設置等)

①,②及び③を組合せることにより,廃棄体の発熱,廃棄体の含有物(有機物,硝酸塩)及び

人工バリア材として使用されるセメントアルカリ成分の影響は対応可能であると考えられる。前

項までの相互影響の解析結果に基づけば,TRU廃棄物処分施設とHLW処分施設は数100mの離間距離

を確保することにより,処分の安全性は基本的に確保できると考えられる。

なお,相互影響因子そのものの原因となる物質又は材料の影響を低減するという観点からは,

廃棄物の処理方法及び人工バリア材の仕様の変更(7.4及び7.5参照)も有効であると考えられる。

(2) 処分場概念及びレイアウトの検討

以上の検討結果を踏まえて,TRU廃棄物とHLWの併置処分の概念図を作成した。概念図作成にお

ける基本的な考え方は,以下に示すとおりである。

①今回の解析結果に基づけば,TRU廃棄物とHLW処分施設間の相互影響は一般的な地質環境を

想定した場合,300m程度の離間距離を確保することにより,その影響をほぼ回避すること

ができる見通しが得られた。海外では,HLWとTRU廃棄物の離間距離は数100~500m程度確

保しているケースが多い。

②上記を踏まえて,TRU廃棄物処分施設とHLW処分施設との離間距離は数100m確保することと

する。また,各処分施設の主要坑道及び連絡坑道にはプラグを設置し,各坑道が両施設の

支配経路にならないように工学的対策を施す。

③TRU廃棄物とHLW処分施設は建設,操業及び閉鎖期間が異なるとともに,それぞれの作業が

干渉しないように,両施設はアクセス坑道を中心と対象となるように配置する。

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6-39

④TRU廃棄物処分施設から溶出する有機物,硝酸塩及び高pHプルームがHLW処分施設に影響す

る可能性を低減するため,TRU廃棄物とHLW処分施設は地下水流向に対して平行に配置する

こととする。

⑤上記の検討結果に基づき,TRU廃棄物とHLWの併置処分概念を図6.2.3-1に例示した。同図

の右側はHLW処分施設とTRU廃棄物処分施設の併置処分のイメージ図であり,地下水流行に

対して両施設を平行に配置し,かつ,数100mの離間距離を確保することをイメージしたも

のである。また,同図の左側はTRU廃棄物処分場の平面図である。TRU廃棄物とHLWの併置

処分の鳥瞰図を図6.2.3-2に示す。本図は,地下水流向が画面奥から手前に流れ,同一深

度に配置する場合を想定したレイアウトである。離間距離の確保は具体的な地質環境条件

では上下方向を含む立体的な配置によることも可能であると考えられる。

また,今回の相互影響に関する解析は保守的な仮定も多く,かつ,亀裂性母岩に対する評価の

不確実性もあることから,今後は具体的な地質環境条件においてより詳細な解析を実施すれば,T

RU廃棄物処分施設とHLW処分施設はさらに近接して設置することも可能であると考えられる。

6.2.4 まとめ

TRU 廃棄物と HLW 処分施設の離間距離として数 100m を確保することにより,相互影響をほぼ回

避することができるという見通しが得られた。ただし,今回の相互影響に関する解析は保守的な

仮定も多く,かつ,亀裂性母岩に対する評価の不確実性もあることから,今後は具体的な地質環

境条件においてより詳細な解析を実施する必要があると考えられる。

6.2.5 今後の課題

①相互影響に関する検討

本検討書では,熱及び化学(有機物,硝酸塩及び高 pH プルーム)について評価したが,今後は

力学及び水理等を含めた検討が必要である。

②相互影響に関する評価・検討

本検討書では,海外文献等の既往の知見に基づき,相互影響範囲等について調査・検討を実施

した。個別の検討項目における課題としては,基本的には TRU 廃棄物処分施設を対象とした 4.4

における検討において記述された課題と同様である。それに加え,HLW 処分施設への影響を評価

する観点から,硝酸塩及び高 pH プルーム影響等に関しては,HLW 処分施設におけるバリア材への

影響の程度を判断するための知見を試験研究等により拡充することが必要である。また,検討対

象とする評価スケールが広範囲の岩盤領域を対象とすることから,場の不均質性を考慮した評価

検討も必要である。

③システム概念の 適化

各影響要因の時空間的変遷,地質環境及びデータの不確実性に伴う変動要因に関する詳細な評

価が必要である。また,これに基づき,離間距離,配置及び工学的措置等のシステム概念の 適

化を検討する必要がある。

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6-40

図6.2.3-1 TRU廃棄物-HLW併置処分の概念図例

TRU廃棄物処分施設

HLW処分施設

60.0m

46.2m

グループ3:200Lドラム

135.00m 5.70m

11.20m129.00m

グループ3:200Lドラム

BNFL容器

角型容器

39.6m

39.6m

39.6m

50.4m

286.1m

20.0m20.0m7.0m

39.6m

39.6m

50.4m

39.6m

(473.8m)

(352.8m)

50.0m

71.0m

28.60m

5.0m

98.0m

グループ1

クセス斜坑へ

立坑

39.6m 81.80m

グループ2:BNFL容器

グループ4:200Lドラム

43.70m80.00m

BNFL容器

グループ2:キャニスター

78.80m

グループ2:キャニスター

212.10m

182.20m

グループ2:キャニスター

182.20m

212.10m

グループ4:角型容器

グループ4:200Lドラム

地下水の流れ

地下水の流れ

アクセス斜坑へ

BNGS容器

BNGS容器

200Lドラム缶

200Lドラム缶 200Lドラム缶

200Lドラム缶

BNGS容器

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6-41

併置処分の全体レイアウトの例併置処分の全体レイアウトの例 TRU廃棄物処分区域付近TRU廃棄物処分区域付近

TRUTRU

TRUTRU

HLWHLW

HLWHLW

図6.2.3-2 TRU廃棄物-HLW併置処分の鳥瞰図

廃棄物

廃棄物

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6-42

6.3 余裕深度処分のα核種濃度区分値による影響

6.3.1 余裕深度処分の区分値検討の必要性と設定の考え方

すでに述べたように,TRU 廃棄物は多様な性状を有し,放射能濃度は非常に広範な範囲に分布

している(図 2.3-1 参照)。そのため,既存の処分概念(浅地中処分,余裕深度処分,地層処分)

を有効に活用し,それぞれに適切に区分して処分することが合理的である。これらの区分値とし

ては,濃度上限値とα核種濃度区分値が挙げられる。

濃度上限値については,「低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基準値につ

いて(第 3次中間報告)」(原子力安全委員会,2000)及び「核原料物質,核燃料物質及び原子炉

の規制に関する法律施行令(第 13 条の 9)」に原子炉施設からの放射性廃棄物を対象とした濃度

上限値が定められているが,再処理施設等から発生する TRU 廃棄物に対しては定められていない。

また,α核種濃度区分値についても,これまで「一応の目安区分値」として発電所廃棄物のコ

ンクリートピット処分の全α核種濃度上限値である 1GBq/t が使われてきており,第 2 章でも同じ

扱いとしているが,「超ウラン核種を含む放射性廃棄物処理処分の基本的考え方について」(原子

力委員会,2000)ではα核種濃度が一応の目安区分値(1GBq/t)を超えるものも余裕深度処分を適用

できる可能性があるとしている。

これらの区分値によって各処分概念に処分できる廃棄物量が変動することから,本検討書では

各処分概念を有効に活用し,合理的な処分体系を構築するために濃度上限値及びα核種濃度区分

値を試算した。また,α核種濃度区分値は余裕深度処分できる廃棄物物量に大きく影響すること

から,余裕深度処分の安全性等への影響についても検討した。

なお,α核種濃度区分値を試算するあたっては,長半減期α核種を含むことに配慮しつつ,そ

れぞれの処分概念に区分された廃棄体からの線量評価値が線量基準値以下であることで安全性を

示すことを基本的な考えとするが,リスク論的考え方に基づく線量基準や地層処分と余裕深度処

分される対象物の考え方など,種々の事項を考慮する必要があるため,今後,関連諸機関で引き

続き検討されるべきであると考えられる。

6.3.2 濃度上限値

TRU 核種を含めた濃度上限値については,すでに原子炉施設からの放射性廃棄物を対象として

定められており,濃度上限値の導出する手法としてはこれに準じ,ICRP Pub.72 の線量換算係数

と TRU 廃棄物の核種組成から,重要核種の濃度上限値を導出した。評価結果を表 6.3.2-1 に示す。

この表からわかるとおり,評価対象核種は発生施設の特徴が反映され,試算された濃度上限値

は原子炉施設の値と大きな差はなく,余裕深度処分については日本原子力研究所における試算と

も大きな差がない結果となった。

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6-43

表 6.3.2-1 TRU 廃棄物の濃度上限値の試算値

(単位:Bq/t) 余裕深度処分 コンクリートピット処分 トレンチ処分

核種 TRU廃棄物 (参考)*1

発電所廃棄物

(参考)*2

TRU廃棄物

(原研試算)

TRU廃棄物 (参考)*1

発電所廃棄物TRU廃棄物

(参考)*1

発電所廃棄物

H-3 - - - - - - 3.0×109

C-14 - 5.2×1014 5.2×1014 3.4×1010 3.7×1010 - 1.1×108

Cl-36 9.3×1010 1.0×1011 9.7×1010 - - - -

Co-60 - - - 4.1×1013 1.1×1013 6.9×109 8.1×109

Ni-63 - - - 8.9×1011 1.1×1012 7.2×109 7.2×109

Sr-90 - - - 6.5×1010 7.4×1010 6.0×106 4.7×106

Nb-94 - - - 1.1×1010 - - -

Tc-99 4.4×1011 8.2×1011 4.6×1011 - - - -

I-129 2.2×1010 - 2.3×1010 1.4×108 - - -

Cs-137 - - - 1.0×1012 1.1×1012 9.7×107 1.0×108

α核種

1.6×1014

(Pu-238)

1.8×1014

(Am-241)

1.3×1010

(Np-237)

2.6×1014

(Am-241)

2.5×109

(Am-241)

1.1×109

(Am-241)

7.2×107

(Am-241)

1.7×107

(Am-241)

*1:「低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基準値について(第 3 次中間報告)」(原子力安

全委員会,2000)

*2:「放射性廃棄物処分の長期的評価手法の調査-ウラン・TRU 廃棄物の基準整備に係る調査-(原子力安全・保安

院委託)」(日本原子力研究所,2005)

6.3.3 α核種濃度区分値

前述のとおり,専門部会報告書(原子力委員会,2000)では目安区分値(1GBq/t)を超える TRU

廃棄物について余裕深度処分を適用できる可能性が記述されているが,ここでは「放射性廃棄物

処分の安全規制における共通的な重要事項について」(原子力安全委員会,2004)におけるリスク

論的な考え方などを参考に以下の複数の考え方で試算した。

①管理期間終了以降において,余裕深度処分場への人間侵入(ボーリング)による線

量が,低頻度事象であることを考慮した線量基準値以下となるα核種濃度

②余裕深度処分場において,処分施設の地質が安定で社会的環境も大きな変化がない

とみなせる期間後に,廃棄物中のα核種濃度が浅地中コンクリートピット処分にお

ける全α濃度上限値(1GBq/t)まで減衰するα核種濃度

③長期の潜在的影響度(放射能量/年摂取限度)の時間的変化が,発電所廃棄物を主体

とする高βγ低レベル廃棄物の潜在的影響度の時間的変化と同等とみなせるα核種

濃度

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6-44

①のボーリングシナリオによる評価については,定量的な確率に基づくリスク論は現時点では

定まった方法がないため,概略的なリスク論的評価を試みた。

ボーリングデータベースによる 50m 以深の全地区ボーリング頻度約 2×10-8本/m2/年(日本原子

力研究所,2005)と余裕深度処分場廃棄体占有面積(300m×500m 程度)より得られる発生確率は

約 3×10-4/年程度,すなわち 10-3/年オーダーと評価することができる。一般的に起こりやすい事

象の確率を 100/年オーダーとすると,低頻度事象としての確率比は 10-3/100=10-3程度となる。

一般的に起こりやすい事象の線量基準 10μSv/y に対し,上述の確率比を考慮して 1000 倍する

と,低頻度事象における線量目安は 10mSv/y となる。

TRU 廃棄物処分場のボーリングシナリオに対して 10mSv/回を適用すると,α核種区分値は約

200GBq/t となる。

なお,ここで用いた低頻度事象における線量目安 10mSv/y は,ICRP Pub.81 のそれ以下では介

入が正当化できそうもない一般参考レベルとも符合する(本来,既汚染を対象に導入される介入

の考え方とは一致しないが,線量のオーダーとして比較した)。また,この値の大きさとしては,

公衆の線量限度(1mSv/y)と職業人の線量限度(50mSv/y,100mSv/5y)の中間的なものである。

②の一定期間後に廃棄物中のα核種濃度が浅地中コンクリートピット処分における全α濃度

上限値(1GBq/t)まで減衰することの評価については,処分施設の地質が安定で社会的環境も大

きな変化がないとみなせる期間として設定する年数に依存する。

一般的に,地質や人間環境に大きな変化がないと見通せる年数は数万年と言われていることか

ら,主要廃棄物のα核種濃度(図 6.3.3-1 参照)より平均的な濃度での減衰を評価すると,1 万

年後で約 1/20,5 万年後で約 1/100 となる。これらの期間後に 1GBq/t になる初期濃度は,それぞ

れ約 20GBq/t,約 100GBq/t となり,数十 GBq/t から 100GBq/t が,この考え方の場合のα核種濃

度区分値のオーダーとなる。

なお,この期間については,H12 レポートにおける地殻構造上大きな変化がないとされる期間

が 10 万年であること,仮に隆起事象を仮定し速度を保守的に 1mm/y とした場合,50~100m 深度

から浅地中まで隆起する年数は約 5~10 万年となり,ともに数万年の範囲を逸脱しない。

③の発電所廃棄物における潜在的影響度の時間的変化と同等となるようなα核種濃度につい

ては「低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基準値について(第 3 次中間報

告)」(原子力安全委員会,2000)に試算例が載せられており,この場合,α核種の 大濃度が約

20GBq/t と評価されている。

以上のように,種々の考え方にて余裕深度処分と地層処分を区分するα核種濃度を試算したと

ころ,約 20 GBq/t~約 200GBq/t となった。したがって,以降の検討に使用するα核種濃度区分

値は余裕深度処分の安全評価への影響を確認する観点から中間値の 100GBq/t とする。

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6-45

1E+7

1E+8

1E+9

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+0 1E+1 1E+2 1E+3 1E+4 1E+5 1E+6

経過時間[y]

α放射性物

質濃度[Bq/t]

民間操業ハル・エンドピース

民間操業不燃性廃棄物Ⅰ(高汚染部:溶融処理以外)

JNC再処理操業スラリ固化体(MA系酸)

JNCMOX操業不燃物(金属-溶融固化体)

図 6.3.3-1 主要廃棄物のα核種濃度

6.3.4 廃棄物の発生量

前項の考え方に基づき,余裕深度処分及び地層処分を区分した場合の廃棄体発生量を表

6.3.4-1 に,2.4.2 で整理した発生量との比較を表 6.3.4-2 に示す。また,放射性物質量の比較を

表 6.3.4-3 に示す。

α核種濃度区分値を100Gq/tとして区分した場合には,余裕深度処分対象が約14,000m3増加し,

地層処分対象が約 14,000m3減少する。放射性物質量に関しては,α核種濃度区分値の変更に伴い

余裕深度処分の核分裂生成物やアクチニド核種が約 1 桁上昇している。但し,地層処分の放射性

物質量についてはほとんど変化しない。

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6-46

表 6.3.4-1 処分区分ごとの廃棄体発生量(α核種濃度区分値:100GBq/t)

(単位:m3)

廃棄物分類 コンクリートピット処分

余裕深度処分 地層処分 計

民間再処理・MOX 操業廃棄物 24,667 20,540 6,165 51,372

民間再処理解体廃棄物 36,647 7,181 431 44,260

民間 MOX 解体廃棄物 491 1,338 175 2,004

JNC 再処理操業廃棄物 10,388 7,607 291 18,286

JNCMOX 操業廃棄物 0 400 907 1,307

JNC 再処理解体廃棄物 7,238 1,070 236 8,544

JNCMOX 解体廃棄物 0 1,159 886 2,045

返還低レベル廃棄物(COGEMA) 0 0 937 937

返還低レベル廃棄物(BNGS) 9,000 0 2,520 11,520

合計 88,431 39,295 12,548 140,274

表 6.3.4-2 処分区分ごとの廃棄体発生量の比較

(単位:m3)

余裕深度処分 地層処分 廃棄物分類

α:1GBq/t α:100GBq/t α:1GBq/t α:100GBq/t

民間再処理・MOX 操業廃棄物 13,276 20,540 13,429 6,165

民間再処理解体廃棄物 6,974 7,181 639 431

民間 MOX 解体廃棄物 1,250 1,338 263 175

JNC 再処理操業廃棄物 3,410 7,607 4,488 291

JNCMOX 操業廃棄物 14 400 1,293 907

JNC 再処理解体廃棄物 256 1,070 1,051 236

JNCMOX 解体廃棄物 25 1,159 2,020 886

返還低レベル廃棄物(COGEMA) 0 0 937 937

返還低レベル廃棄物(BNGS) 0 0 2,520 2,520

合計 25,205 39,295 26,640 12,548

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6-47

表 6.3.4-3 処分区分ごとの放射性物質量(Bq)

余裕深度処分 地層処分 核種

α:1GBq/t α:100GBq/t α:1GBq/t α:100GBq/t

H-3 4.5×1014 5.5×1014 7.1×1017 7.1×1017

C-14 3.4×1014 3.4×1014 5.7×1014 5.6×1014

Cl-36 5.6×1012 5.9×1012 8.8×1012 8.6×1012

Co-60 6.5×1017 6.5×1017 1.6×1018 1.6×1018

Ni-59 1.4×1015 1.4×1015 7.2×1015 7.2×1015

Ni-63 2.1×1017 2.1×1017 1.2×1018 1.2×1018

Se-79 8.6×1010 9.1×1010 2.7×1012 2.7×1012

Sr-90 2.2×1015 5.0×1015 5.9×1017 5.4×1017

Zr-93 1.5×1014 1.5×1014 3.1×1014 3.0×1014

Nb-94 1.2×1014 1.2×1014 2.6×1015 2.6×1015

Mo-93 4.5×1012 4.5×1012 5.2×1013 5.2×1013

Tc-99 8.0×1011 1.8×1013 6.6×1014 6.4×1014

Pd-107 3.3×109 4.2×109 5.5×1011 5.4×1011

Ag-108m 3.8×1012 3.8×1012 2.1×1012 2.1×1012

Sn-126 2.3×1010 1.0×1012 6.1×1012 5.0×1012

I-129 1.5×1011 1.0×1012 5.2×1013 5.1×1013

Cs-135 1.4×1010 3.2×1011 3.4×1012 3.1×1012

Cs-137 3.0×1015 7.0×1016 7.6×1017 7.0×1017

Pu-241 3.2×1015 1.2×1016 5.7×1017 5.6×1017

Am-242m 2.4×1011 2.0×1013 6.2×1013 4.2×1013

βγ合計 4.6×1018 4.8×1018 1.7×1019 1.7×1019

U-233 5.0×109 5.0×109 4.7×109 4.7×109

U-234 1.7×109 4.8×1010 1.7×1012 1.6×1012

U-235 6.9×107 1.6×1010 1.1×1011 1.1×1011

U-236 1.0×109 1.2×1010 1.2×1012 1.2×1012

U-238 9.2×108 1.2×1010 1.1×1012 1.1×1012

Np-237 1.3×109 5.7×1010 2.4×1012 2.3×1012

Pu-238 1.1×1013 1.7×1014 1.7×1016 1.7×1016

Pu-239 1.1×1012 3.2×1013 2.4×1015 2.4×1015

Pu-240 1.7×1012 4.0×1013 3.2×1015 3.2×1015

Pu-242 6.6×109 1.1×1011 1.1×1013 1.1×1013

Am-241 3.0×1012 1.1×1014 6.1×1015 6.1×1015

Am-243 6.7×1010 1.7×1012 2.1×1014 2.1×1014

Cm-244 7.8×1012 1.1×1014 9.4×1015 9.3×1015

Cm-245 8.7×108 2.6×1010 9.8×1011 9.5×1011

α合計 2.5×1013 4.8×1014 3.9×1016 3.9×1016

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6-48

6.3.5 余裕深度処分の安全評価

α核種濃度区分値の変更に伴い,余裕深度処分対象の廃棄体発生量及び放射能量が変動するこ

とから,6.3.5 項に示した放射能量及び 5.3.3 及び 5.3.4 に示した評価モデル及び評価パラメー

タに基づいて,余裕深度処分の線量を評価した。

α核種濃度区分値 100GBq/t での線量評価結果を表 6.3.5-1 及び図 6.3.5-1 に,線量評価結果の

区分値ごとの比較を表 6.3.5-2 に示す。

α核種濃度区分値の変更により,α核種及び核分裂生成物の放射能量が 1 桁から 2 桁程度大き

くなるが, も線量が大きい河川水利用経路のパラメータ変更ケースについては主要核種が C-14

であり,α核種及び核分裂生成物の寄与が小さいことから,線量への影響は小さい。

なお,河川岸建設経路及び河川岸居住経路については,α核種の子孫核種が主要核種となるた

め,α核種濃度区分値の変更により,1 桁程度線量が上昇しているが,河川水利用経路の線量に

比較して小さい。

表 6.3.5-1 余裕深度処分の線量評価結果(100GBq/t)

評価経路 線量

(μSv/y)

時間

(y) 主要核種

基本ケース 9.3×10-2 8.6×104 I-129,Tc-99 河川水利用経路

変更ケース 6.9 5.0×103 C-14

河川岸建設経路 基本ケース 1.9×10-3 1.1×106 Th-229

河川岸居住経路 基本ケース 4.0×10-3 1.1×106 Th-229,Ra-226

河川岸農耕経路 基本ケース 1.1×10-1 7.9×104 Cl-36

表 6.3.5-2 余裕深度処分の線量比較

線量(μSv/y) 評価経路

α:1GBq/t α:100GBq/t

基本ケース 2.3×10-2 9.3×10-2 河川水利用経路

変更ケース 6.8 6.9

河川岸建設経路 基本ケース 3.1×10-4 1.9×10-3

河川岸居住経路 基本ケース 5.0×10-4 4.0×10-3

河川岸農耕経路 基本ケース 6.3×10-2 1.1×10-1

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6-49

<河川水利用経路(変更ケース)> <河川岸建設経路(基本ケース)> <河川岸居住経路(基本ケース)> <河川岸農耕経路(基本ケース)>

図 6.3.5-1 余裕深度処分の線量評価結果(100GBq/t)

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6-50

6.3.6 地層処分の安全評価

α核種濃度区分値が 100GBq/t になると,6.3.4 に示したように地層処分対象廃棄体量は減少す

るが,長期的な線量に寄与する主要核種である I-129 及び C-14 の放射能量の変化が小さいため,

線量は第 4章の評価結果とほとんど変わらない。

6.3.7 まとめ

余裕深度処分のα核種濃度区分値が 100GBq/t となり,対象廃棄物が増加した場合においても,

線量評価結果はコンクリートピット処分における一般事象の目安線量である 10µSv/y を下回るこ

とから,安全に処分できる見通しが得られた。

地層処分については,対象廃棄物量は減少するが,主要核種の放射能量の変化が小さいため,

線量は第 4章の評価結果とほとんど変わらない。

6.4 海外返還廃棄物の返還方法による影響

6.4.1 返還廃棄物の概要

6.4.1.1 廃棄物の概要

電気事業者は,一部の使用済燃料の再処理を BNGS 及び COGEMA に委託している。海外再処理の

結果発生する放射性廃棄物は,原則として輸送及び貯蔵に適した形態の廃棄体(以下,「返還廃棄

物」という。)として,電気事業者が持ち込んだ量に相当する廃棄体量が返還されることとなって

いる。

返還廃棄物は,英仏から日本への長期に亘る国際間の海上輸送が必要であり,輸送回数の低減,

貯蔵管理施設の減容の観点から,返還廃棄物の量を低減することによる合理的な返還方法につい

て検討が進められている。

返還廃棄物の種類は,英国及び仏国それぞれの国の放射性廃棄物管理政策に従い,以下のとお

りとなっている。

・英国:廃棄物をすべて高レベルガラス固化体という単一の形態で返還する方法(単一返還)を

選択肢の一つとして承認

・仏国:廃棄物のカテゴリーごと(高レベル廃棄物,低レベル廃棄物[ハル・エンドピース,

低レベル廃液,雑固体廃棄物])に返還

現在,廃棄物の返還時期,返還形態及び返還量について,事業者間で調整が行われているとこ

ろである。

(1) BNGS からの返還廃棄物

BNGS から返還される予定の多種多様な廃棄物については,それを放射線影響的に等価とみなさ

れる量のガラス固化体に代替し,すべて高レベルガラス固化体の形態での返還(単一返還による

返還)が提案されている。ここで提案されている放射線影響的な等価性は,核種組成と量の異な

るもの同士を比較する方法として,核種移行を経た人の経口摂取への影響を指標化し,一定期間

にわたり累積した値が交換されるものの間で等価となるようにしている(小佐古,2004)。

なお,単一返還により返還されるガラス固化体は,もともと BNGS より返還されるガラス固化

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6-51

体と同じ仕様であり,安全に貯蔵・処分することができる。

また,BNGS から返還予定の廃棄物は,すべて同じ仕様のガラス固化体となり,同じ容器に収納

され,廃棄物量が約 10,500 本から約 150 本に大幅に減少するので,取り扱い・輸送・貯蔵の観点か

ら合理的である。

(2) COGEMA からの返還廃棄物

使用済燃料の再処理に伴い発生する廃液は,使用済燃料を溶解した溶液から,U,Pu を分離し

た後に残る核分裂生成物廃液を主成分とする高レベル廃液と,それ以外の再処理施設の操業や作

業によって発生する低レベル廃液に分けられる。

その低レベル廃液の廃棄体として当初ビチューメン固化体約 1,100 本での返還が計画されてい

たが, 近,ビチューメン固化体に代えて「低レベル廃液固化体」と称される廃棄体約 28 本によ

る返還が提案されたことから,この返還方法も選択肢の一つとして計画している。

低レベル廃液固化体は,低レベル廃液のうち再処理施設の洗浄作業の際に発生する洗浄廃液を

ガラス固化し,ガラス固化体と同じ容器(キャニスタ)に収納したものであり,COGEMA は現在稼動

中の UP2 再処理工場のうち,すでに操業を中止した一部の施設の洗浄廃液を用いて低レベル廃液

固化体を製造する予定であり,現在,技術開発が行われている。

低レベル廃液固化体の特性,放射性物質量及び安全評価への影響を次項以降で述べる。

この返還方法により COGEMA から返還予定の廃棄物は,すべてガラス固化体と同じ容器に収納

されることになり,廃棄物の内,ビチューメン固化体分 1,100 本が低レベル廃液固化体 28 本に大

幅に減少するので,取り扱い・輸送・貯蔵の観点から合理的である。

6.4.1.2 廃棄物の処理及び廃棄体

提案された返還方法実施時の返還廃棄物の処理方法,固型化方法及び容器の比較結果を,表

6.4.1.2-1 に示す。

6.4.1.3 廃棄体発生量

返還予定廃棄体数量を想定し,発生量を試算した結果を表 6.4.1.3-1 に示す。

これら廃棄物を減容,固型化した場合の廃棄体の累積発生量は,表 6.4.1.3-2 に示すように総

計で約 140,000m3から約 130,000m3となる。なお,本検討で算出した発生量は,前提条件及び施設

の操業状況等により,変動する可能性がある。

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6-52

表 6.4.1.2-1 想定する廃棄物処理と廃棄体容器(返還廃棄物)

現時点で予定されている返還方法 提案された返還方法実施時

廃棄体種類 処理方法 容 器 固型化方法 処理方法 容 器

固型化

方法

雑固体(BNGS) 圧縮処理 1500L

コンテナ

セメント

固化 - - -

MEB クラッド+

炭酸バリウムスラリー

セメント固化体(BNGS)

- 500L

ドラム缶

セメント

固化 - - -

セメント固化体

(ハル・エンドピース)

(BNGS)

- 500L

ドラム缶

セメント

固化 - - -

マグノックス

セメント固化体(BNGS) -

500L

ドラム缶

セメント

固化 - - -

遠心分離ケーキ

セメント固化体(BNGS) -

500L

ドラム缶

セメント

固化 - - -

固型物収納体

(COGEMA) 圧縮 キャニスタ - 圧縮 キャニスタ -

ビチューメン固化体

(COGEMA) 化学処理

230L

ドラム缶

ビチューメン

固化 - - -

TRU廃棄物

低レベル廃液固化体

(COGEMA) - - - - キャニスタ ガラス固化

ガラス固化体

(BNGS) 蒸発濃縮 キャニスタ ガラス固化 蒸発濃縮 キャニスタ ガラス固化高レベル

放射性

廃棄物 ガラス固化体

(COGEMA) 蒸発濃縮 キャニスタ ガラス固化 蒸発濃縮 キャニスタ ガラス固化

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6-53

表 6.4.1.3-1 廃棄体推定発生量(返還廃棄物:高レベル廃棄物を含む)

総発生量

現時点で予定

されている返還方法

提案された

返還方法実施時 廃棄体種類

(本) (m3) (本) (m3)

雑固体(BNGS) 3,300 4,950 - -

マグノックス雑固体(BNGS) 2,700 4,050 - -

MEB クラッド+炭酸バリウム

スラリーセメント固化体(BNGS) 250 130 - -

セメント固化体

(ハル・エンドピース:PWR)(BNGS) 1,035 580 - -

セメント固化体

(ハル・エンドピース:BWR)(BNGS) 1,035 580 - -

マグノックスセメント固化体

(BNGS) 900 504 - -

遠心分離ケーキセメント固化体 PWR

(BNGS) 630 353 - -

遠心分離ケーキセメント固化体 BWR

(BNGS) 650 364 - -

固型物収納体(COGEMA) 3,600 684 3,600 684

ビチューメン固化体(COGEMA) 1,100 253 - -

低レベル廃液固化体(COGEMA) - - 28 5

TRU廃棄物

小 計 15,200 12,457 3,628 689

高レベルガラス固化体(BNGS) 850 160 1,000 190

高レベルガラス固化体(COGEMA) 1,350 260 1,350 260

高レベル

放射性

廃棄物 小 計 2,200 420 2,350 450

合 計 17,400 12,877 5,978 1,139

表 6.4.1.3-2 TRU 廃棄体推定発生量の比較

総発生量(m3)

廃棄物分類 現時点で予定されている

返還方法

提案された

返還方法実施時

民間再処理操業廃棄物 50,450 50,450

民間 MOX 操業廃棄物 922 922

民間再処理解体廃棄物 44,259 44,259

民間 MOX 解体廃棄物 2,004

97,635

2,004

97,635

JNC 再処理操業廃棄物 18,286 18,286

JNCMOX 操業廃棄物 1,307 1,307

JNC 再処理解体廃棄物 8,544 8,544

JNCMOX 解体廃棄物 2,045

30,182

2,045

30,182

返還低レベル廃棄物(BNGS) 11,520 0

返還低レベル廃棄物(COGEMA) 93712,457

689 689

合 計 140,274 140,274 128,506 128,506

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6-54

6.4.1.4 廃棄体の特性

(1) 廃棄体の放射性物質濃度

提案された返還方法実施時の廃棄体の放射性物質濃度については,返還される廃棄体の放射性

物質量が等しいとして算定した。廃棄体ごとの放射性物質濃度を表 6.4.1.4-1 に示す。

表 6.4.1.4-1 廃棄体ごとの放射性物質濃度(返還廃棄物)(1/2)

(単位:Bq/t)

現時点で予定されている返還方法

BNGS

核種 マグノック

ス雑固体

マグノック

スセメント

固化体

MEBクラッド+

炭酸バリウムス

ラリーセメント固

化体

遠心分離ケー

キスラリーセメント

固化体PWR

遠心分離ケー

キスラリーセメント

固化体BWR

セメント

固化体

(ハル・エン

ドピース:

PWR)

セメント

固化体

(ハル・エン

ドピース:

BWR)

雑固体

H-3 - - 2.0×108 3.8×109 2.4×109 4.4×1012 2.8×1012 6.3×106

C-14 - - 8.8×1010 3.3×106 2.1×106 1.4×1010 6.7×109 3.1×104

Cl-36 - - 1.3×102 3.6×104 2.3×104 6.8×104 4.5×104 -

Co-60 - 2.3×1012 1.7×1011 - - 2.5×1013 6.1×1012 1.3×106

Ni-59 - - - - - 1.3×1011 1.8×1010 -

Ni-63 - - - - - 1.7×1013 2.3×1012 -

Sr-90 - 3.8×1012 3.0×109 8.4×1011 5.4×1011 1.1×1012 7.2×1011 -

Zr-93 - - - - - 5.5×109 4.3×109 -

Nb-94 - - - - - 5.8×1010 1.1×109 -

Tc-99 - - 8.5×105 2.1×108 1.3×108 2.7×108 1.7×108 -

I-129 - - 3.2×108 3.9×105 2.4×105 4.7×105 3.0×105 3.1×104

Cs-135 - - 1.9×104 5.3×106 3.4×106 3.6×107 2.7×107 -

Cs-137 - 5.8×1012 4.3×109 7.2×1012 6.8×1012 7.7×1012 5.8×1012 -

Pu-241 - 6.3×1012 4.2×109 7.6×1012 5.4×1012 1.3×1012 7.1×1011 -

βγ合計 3.0×108 6.2×1013 2.8×1011 3.5×1013 3.1×1013 9.7×1013 4.1×1013 1.0×108

U-234 - - 6.2×104 2.0×107 1.4×107 4.6×107 3.4×107 -

U-235 - - 1.0×103 2.9×105 2.6×105 1.2×106 9.9×105 -

U-236 - - 1.4×104 3.9×106 2.5×106 5.7×106 3.7×106 -

U-238 - - 1.7×104 4.6×106 4.5×106 1.0×107 1.0×107 -

Np-237 - - 1.4×104 3.8×106 1.9×106 4.3×106 2.2×106 -

Pu-238 - 3.5×1010 1.2×108 2.1×1011 9.8×1010 3.0×1010 1.2×1010 -

Pu-239 - 5.0×1010 1.8×107 3.1×1010 3.0×1010 8.4×109 6.4×109 -

Pu-240 - 7.4×1010 2.8×107 4.9×1010 4.7×1010 9.0×109 6.8×109 -

Pu-242 - - - 1.6×108 1.0×108 - - -

Am-241 - 3.5×1010 9.5×107 2.6×1010 1.5×1010 2.8×1010 1.6×1010 -

Am-243 - - 7.8×105 2.2×108 7.7×107 1.9×108 7.2×107 -

Cm-244 - 5.5×109 5.9×107 1.7×1010 4.2×109 1.4×1010 3.8×109 -

α合計 1.1×107 2.6×1011 3.2×108 3.3×1011 2.0×1011 9.1×1010 4.5×1010 3.8×106

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6-55

表 6.4.1.4-1 廃棄体ごとの放射性物質濃度(返還廃棄物)(2/2) (単位:Bq/t)

現時点で予定されている返還方法 提案された返還方法実施時

COGEMA 核種

固型物収納体 ビチューメン

固化体 固型物収納体

低レベル廃液 固化体

H-3 2.1×1013 1.8×1010 2.1×1013 3.2×1011

C-14 2.0×1010 - 2.0×1010 -

Cl-36 - - - -

Co-60 1.1×1014 1.8×1011 1.1×1014 3.2×1012

Ni-59 - - - -

Ni-63 3.9×1013 - 3.9×1013 -

Se-79 7.9×107 - 7.9×107 -

Sr-90 2.0×1013 1.2×1012 2.0×1013 2.1×1013

Zr-93 1.2×1010 - 1.2×1010 -

Nb-94 - - - -

Mo-93 - - - -

Tc-99 3.3×109 1.8×108 3.3×109 3.2×109

I-129 7.6×106 1.8×108 7.6×106 3.2×109

Cs-135 1.0×108 - 1.0×108 -

Cs-137 2.1×1013 2.4×1012 2.1×1013 4.3×1013

Pu-241 1.4×1013 - 1.4×1013 -

Am-242m - - - -

βγ合計 3.6×1014 2.1×1013 3.6×1014 3.7×1014

U-234 - - - -

U-235 - 2.6×106 - 4.6×107

U-236 - - - -

U-238 - 2.6×107 - 4.6×108

Np-237 1.0×107 - 1.0×107 -

Pu-238 6.7×1013 1.3×1011 6.7×1013 2.3×1012

Pu-239 4.3×1012 1.5×1010 4.3×1012 2.6×1011

Pu-240 7.4×1012 2.0×1010 7.4×1012 3.6×1011

Pu-242 4.1×1010 - 4.1×1010 -

Am-241 2.5×1010 3.4×1011 2.5×1010 6.1×1012

Am-243 2.5×1010 - 2.5×1010 -

Cm-244 1.4×1011 1.6×1010 1.4×1011 2.9×1011

α合計 9.7×1011 5.2×1011 9.7×1011 9.3×1012

(2) 廃棄体の内容物

ここでは,BNGS の提案する返還方法による TRU 廃棄物内容物の減少及び COGEMA の提案する返

還方法によりビチューメン固化体から低レベル廃液固化体に代わることによる TRU 廃棄物内容物

の増減について整理する。

低レベル廃液固化体に含まれる内容物は,6.4.1.1 で示したように施設の洗浄廃液である。ま

た,廃棄物の固型化材料はガラスである。ここでは,廃棄体に含まれるこれら成分の量を廃棄物

の処理方法と充填率等を考慮して算出した。硝酸塩及び有機物の廃棄体あたりの含有量の変化を

表 6.4.1.4-2 及び表 6.4.1.4-3 に示す。提案された返還方法では,硝酸塩及び有機物を含む廃棄

体が存在しないことになる。

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6-56

表 6.4.1.4-2 廃棄体に含まれる硝酸塩の量(返還廃棄物)

現時点で予定 されている返還方法

提案された 返還方法実施時

内容物量 内容物量 廃棄体種類

処分

区分 発生量

(本) (kg/本) (t)

発生量

(本) (kg/本) (t)

MEB クラッド+炭酸バリウム

スラリーセメント固化体(BNGS) 250 3 1 - - -

ビチューメン固化体(COGEMA) 1,100 40 44 - - -

低レベル廃液固化体(COGEMA)

地層

処分

- - - 28 0 0

合 計 1,350 - 45 28 0 0

表 6.4.1.4-3 廃棄体に含まれる有機物の量(返還廃棄物)

現時点で予定 されている返還方法

提案された 返還方法実施時

内容物量 内容物量 廃棄体種類

処分

区分

有機物

種類 発生量

(本) (kg/本) (t)

発生量

(本) (kg/本) (t)

ビチューメン固化体

(COGEMA)

アスフ

ァルト1,100 140 154 - - -

低レベル廃液固化体

(COGEMA)

地層

処分 - - - - 0 0 0

合 計 - 1,100 140 154 0 0 0

(3) 廃棄体の発熱率

COGEMA の提案する返還方法では,廃棄体あたりの放射性物質濃度は低レベル廃液固化体の方が

ビチューメン固化体より大きくなる。廃棄体の発熱率は,廃棄体に含まれる放射性物質の量に依

存するため,(1)で示した放射性物質濃度から算定した。廃棄体ごとの発熱率を表 6.4.1.4-4 に示

す。

表 6.4.1.4-4 廃棄体の発熱率(返還廃棄物) (単位:W/本)

廃棄物種類 現時点で予定されている 返還方法

提案された返還方法 実施時

ビチューメン固化体(COGEMA) 0.3 -

低レベル廃液固化体(COGEMA) * - ≦90

*:契約上,これ以下であることを保証する値であるため,実際より高めに設定されている。

6.4.1.5 廃棄体区分

2.5.1 に示した考え方に基づき,提案された返還方法実施時の廃棄体をそれぞれコンクリート

ピット処分,余裕深度処分及び地層処分に区分した。

その結果,表 6.4.1.5-1,6.4.1.5-2 に示すように,コンクリートピット処分相当の廃棄体が約

9,000m3減少し約 80,000m3となる。また,地層処分相当の廃棄体が約 12,000m3減少し,α核種濃

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6-57

度区分値 1GBq/t のケースで約 24,000m3,100GBq/t のケースで約 10,000m3となる。返還低レベル

廃棄物には余裕深度処分に区分されるものがないため,余裕深度処分相当の廃棄体発生量には変

更はない。

また,提案された返還方法実施時の処分区分ごとの放射性物質量を表 6.4.1.5-3 に示す。発生

量は減るものの,放射性物質量は他の廃棄体の寄与が大きく,双方でほとんど変わらない結果と

なっている。 表 6.4.1.5-1 処分区分ごとの TRU 廃棄体推定発生量(α核種濃度区分値:1GBq/t)

総発生量(m3)

現時点で予定されている返還方法 提案された返還方法実施時 廃棄物分類

コンクリートピット 処分

余裕深度処分

地層 処分

計 コンクリートピット処分

余裕深度処分

地層 処分

民間再処理・MOX 操業 24,667 13,276 13,429 51,372 24,667 13,276 13,429 51,372

民間再処理・MOX 解体 37,138 8,224 902 46,264 37,138 8,224 902 46,264

JNC 再処理・MOX 操業 10,388 3,424 5,781 19,593 10,388 3,424 5,781 19,593

JNC 再処理・MOX 解体 7,238 281 3,071 10,589 7,238 281 3,071 10,589

返還低レベル(BNGS) 9,000 0 2,520 11,520 0 0 0 0

返還低レベル(COGEMA) 0 0 937 937 0 0 689 689

合 計 88,431 25,205 26,640 140,274 79,431 25,205 23,872 128,506

表 6.4.1.5-2 処分区分ごとの TRU 廃棄体推定発生量(α核種濃度区分値:100GBq/t)

総発生量(m3)

現時点で予定されている返還方法 提案された返還方法実施時 廃棄物分類

コンクリートピット 処分

余裕深度処分

地層 処分

計 コンクリートピット処分

余裕深度処分

地層 処分

民間再処理・MOX 操業 24,667 20,540 6,165 51,372 24,667 20,540 6,165 51,372

民間再処理・MOX 解体 37,138 8,519 606 46,264 37,138 8,519 606 46,264

JNC 再処理・MOX 操業 10,388 8,007 1,198 19,593 10,388 8,007 1,198 19,593

JNC 再処理・MOX 解体 7,238 2,229 1,122 10,589 7,238 2,229 1,122 10,589

返還低レベル(BNGS) 9,000 0 2,520 11,520 0 0 0 0

返還低レベル(COGEMA) 0 0 937 937 0 0 689 689

合 計 88,431 39,295 12,548 140,274 79,431 39,295 9,780 128,506

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6-58

表 6.4.1.5-3 処分区分ごとの放射性物質量(Bq)

現時点で予定されている返還方法 提案された返還方法実施時

地層処分 地層処分 核種 コンクリートピット処分 α:1GBq/t α:100GBq/t

コンクリートピット処分 α:1GBq/t α:100GBq/t

H-3 7.4×1013 7.1×1017 7.1×1017 7.4×1013 7.0×1017 7.0×1017

C-14 1.3×1012 5.7×1014 5.6×1014 1.3×1012 5.1×1014 5.0×1014

Cl-36 7.5×108 8.8×1012 8.6×1012 7.5×108 8.8×1012 8.6×1012

Co-60 5.9×1012 1.6×1018 1.6×1018 5.9×1012 1.5×1018 1.5×1018

Ni-59 1.8×1010 7.2×1015 7.2×1015 1.8×1010 7.0×1015 7.0×1015

Ni-63 1.6×1012 1.2×1018 1.2×1018 1.6×1012 1.2×1018 1.2×1018

Se-79 1.1×109 2.7×1012 2.7×1012 1.1×109 2.7×1012 2.7×1012

Sr-90 6.8×1014 5.9×1017 5.4×1017 6.8×1014 5.8×1017 5.3×1017

Zr-93 3.2×1010 3.1×1014 3.0×1014 3.2×1010 2.9×1014 2.9×1014

Nb-94 4.0×108 2.6×1015 2.6×1015 4.0×108 2.5×1015 2.5×1015

Mo-93 7.5×107 5.2×1013 5.2×1013 7.5×107 5.2×1013 5.2×1013

Tc-99 2.2×1011 6.6×1014 6.4×1014 2.2×1011 6.6×1014 6.4×1014

Pd-107 2.8×108 5.5×1011 5.4×1011 2.8×108 5.5×1011 5.4×1011

Ag-108m 1.7×108 2.1×1012 2.1×1012 1.7×108 2.1×1012 2.1×1012

Sn-126 1.3×1010 6.1×1012 5.0×1012 1.3×1010 6.1×1012 5.0×1012

I-129 6.7×109 5.2×1013 5.1×1013 6.7×109 5.2×1013 5.1×1013

Cs-135 4.3×109 3.4×1012 3.1×1012 4.3×109 3.3×1012 3.0×1012

Cs-137 9.5×1014 7.6×1017 7.0×1017 9.5×1014 7.3×1017 6.6×1017

Pu-241 2.9×1014 5.7×1017 5.6×1017 2.9×1014 5.5×1017 5.4×1017

Am-242m 2.1×1011 6.2×1013 4.2×1013 2.1×1011 6.1×1013 4.1×1013

βγ合計 5.0×1015 1.7×1019 1.7×1019 5.0×1015 1.6×1019 1.6×1019

U-233 2.6×104 4.7×109 4.7×109 2.6×104 4.7×109 4.7×109

U-234 4.9×108 1.7×1012 1.6×1012 4.9×108 1.5×1012 1.5×1012

U-235 4.3×107 1.1×1011 1.1×1011 4.3×107 1.1×1011 1.1×1011

U-236 7.5×108 1.2×1012 1.2×1012 7.5×108 1.1×1012 1.1×1012

U-238 6.2×108 1.1×1012 1.1×1012 6.2×108 1.0×1012 1.0×1012

Np-237 5.3×109 2.4×1012 2.3×1012 5.3×109 2.4×1012 2.3×1012

Pu-238 7.1×1012 1.7×1016 1.7×1016 7.1×1012 1.7×1016 1.7×1016

Pu-239 6.3×1011 2.4×1015 2.4×1015 6.3×1011 2.3×1015 2.2×1015

Pu-240 9.9×1011 3.2×1015 3.2×1015 9.9×1011 3.1×1015 3.0×1015

Pu-242 4.1×109 1.1×1013 1.1×1013 4.1×109 1.1×1013 1.0×1013

Am-241 2.4×1012 6.1×1015 6.1×1015 2.4×1012 6.0×1015 5.8×1015

Am-243 5.6×1010 2.1×1014 2.1×1014 5.6×1010 2.0×1014 2.0×1014

Cm-244 5.7×1012 9.4×1015 9.3×1015 5.7×1012 9.4×1015 9.3×1015

Cm-245 7.4×108 9.8×1011 9.5×1011 7.4×108 9.8×1011 9.5×1011

α合計 1.7×1013 3.9×1016 3.9×1016 1.7×1013 3.8×1016 3.7×1016

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6-59

6.4.2 処分方法

低レベル廃液固化体の特徴としては,ガラス固化体であること,硝酸塩を含まないこと及び廃

棄体量が 5m3と非常に少ないことが挙げられる。また,表 6.4.1.4-4 に示されている発熱率は比

較的高いが,これは保証値であることから,実際にはかなり低いと予想される。さらに,I-129

はガラス固化する過程において揮発することが期待される。

上述のように,低レベル廃液固化体がガラス固化体であることを踏まえると,廃棄体の長期的

な閉じ込め性能を発揮させるためには,HLW ガラス固化体の処分施設と同様に高 pH 環境を避け,

廃棄体の周囲を低透水場に維持し,岩盤等からの物理的な影響を緩和するために,廃棄体の周囲

にベントナイトを敷設することが望ましいと考えられる。

このような条件を満足する処分施設については,廃棄体数が 28 本であり,廃棄体パッケージに

収納すれば,わずか 7体になることから,設計上の観点からも種々の選択肢があり,処分サイト

条件及び実廃棄体の放射性物質濃度と発熱率等が明らかになれば,他の TRU 廃棄物及び HLW 処分

技術を適用することで適切に処分することができると考えられる。

6.4.3 コンクリートピット処分の安全評価

提案された返還を行った場合,コンクリートピット処分対象の BNGS の雑固体廃棄物 9,000m3が

減少,放射性物質量も減少する。しかしながら,この廃棄体の放射性物質量の全体に占める割合

が小さく,表 6.4.1.5-3 に示したように放射性物質量はほとんど減少しないため,コンクリート

ピット処分の線量は,第 5 章の評価結果とほとんど変わらない。 6.4.4 地層処分の安全評価

提案された返還を行った場合,COGEMA のビチューメン固化体 253m3 が低レベル廃液固化体 5m3

となり,廃棄体量が減少する。しかしながら,評価上の放射性物質量はほぼ同じであるので,地

層処分の線量は,第 4章の評価結果とほとんど変わらない。

また,単一返還により,TRU 廃棄物地層処分対象としては,BNGS の MEB クラッド+炭酸バリウ

ムスラリーセメント固化体,セメント固化体(ハル・エンドピース),マグノックスセメント固化

体及び遠心分離ケーキセメント固化体 2,520m3 が減少する。しかしながら,放射性物質量の減少

はわずかであるので,地層処分の線量は,第 4 章の評価結果とほとんど変わらない。

なお,HLW の地層処分に対しては、安全評価において 6.4.3 の TRU 廃棄物の減少分に代えて HLW

が増加するが,現状の約 4 万本に対し約 150 本(約 0.4%)の増加であるため,線量への影響はほと

んどない。

6.4.5 まとめ

海外からの返還廃棄物について英国及び仏国の事業者から提案されている返還方法を選択した

場合,図 6.4.5-1 に示すとおり国際間輸送や貯蔵において負担が減少するだけでなく,廃棄体量

が減少することにより設計上の制約が排除できる利点もあり,合理的である。また,処分の安全

性も確保できる見通しが得られた。

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6-60

図 6.4.5-1 返還方法の選択による合理性

6.4.6 今後の課題

本検討書では,現在の知見に基づき,BNGS 及び COGEMA から提案された返還方法実施時におけ

る合理性,処分の安全性を評価した。

COGEMA から提案されている低レベル廃液固化体については,基本的には,6.4.2 で述べた処分

方法により適切に処分できると考えられるが,今後,COGEMA の技術開発の進捗に応じて,実際に

製造される低レベル廃液固化体の発熱率,放射性核種、高 pH 環境の影響等を考慮して,処分方法

の 適化を検討する必要がある。

【処分区分ごとの廃棄体量】

1.E+12

1.E+13

1.E+14

1.E+15

1.E+16

1.E+17

1.E+18

1.E+19

1.E+20

現在 処理/交換

放射

性物

質量

(Bq)

地層(α)

地層(βγ)

余裕深度(α)

余裕深度(βγ)

コンクリートピット(α)

コンクリートピット(βγ)

【処分区分ごとの放射性物質量】

0

20

40

60

現状 処理/交換

輸送

回数

(回

BNGSセメント・雑固体

BNGSガラス固化体

COGEMA低レベル廃液固化体

COGEMAビチューメン固化体

COGEMA固型物収納体

COGEMAガラス固化体

【国際海上輸送回数】

26.6 23.9

25.2 25.2

88.479.4

0

20

40

60

80

100

120

140

現状

廃棄

体量

(千

m3)

コンクリートピット処分

余裕深度処分

地層処分(注)輸送回数等は電気事業分科会コスト等検討小委員会電気事業者説明資料を基に物量で按分したもの

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