第6章 新たなエネルギー社会の実現 · 2019-02-13 ·...
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第6章 �新たなエネルギー社会の実現
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第3部 2013(平成25)年度においてエネルギーの需給に関して講じた施策の概況
第6章
第1節次世代エネルギー・社会システムの構築東日本大震災を契機として、電力供給の制約が顕在化し、需要側においても地域単位で節電やピークカットに取り組むことの重要性が高まっています。また、大規模集中型のエネルギーシステムの脆弱性が明らかになり、災害にも強い分散型のエネルギーシステムが求められています。さらには再生可能エネルギーの大幅拡大に伴う出力変動をシステム全体で吸収することの必要性も今後高まっていきます。こうした中、様々な需要家が参加する一定規模のコミュニティの中で、再生可能エネルギーやコージェネレーション等の分散型エネルギーを用いつつ、ITや蓄電池等の技術を活用したエネルギーマネジメントシステムを通じて、分散型エネルギーシステムにおけるエネルギー需給を総合的に管理し、エネルギーの利活用を最適化するとともに、電力利用データを利活用した様々なエネルギー・生活サービスも取り込んだ新たな社会システムであるスマートコミュニティの構築に向け、2013年度においては、実証事業やスマートメーターの普及に向けた検討を行いました。スマートコミュニティの構築が進めば、ディマンドリスポンス等によりエネルギー供給の効率化が図られます。また、需要に応じて多様なエネルギー源を組み合わせて供給することによって、コミュニティ内全体では、平常時には、大幅な省エネルギーを実現するとともに、非常時には、エネルギーの供給を確保することが可能となり、生活インフラを支え、企業等の事業継続性も強化する効果が期待され、こうした取組を国内・海外双方に普及させることが重要です。
<具体的な主要施策>
1.スマートコミュニティの構築に向けた取組
①次世代エネルギー・社会システム実証事業【2013年度当初:86.0億円】2010年度に選定した4地域 (横浜市、豊田市、けいはんな学研都市(京都府)、北九州市)において、住民構成やエネルギー供給構造などの地域毎の特性に応じた実証を行いました。具体的には、電力料金の変動やポイントの与奪による電力のピークカット効果を検証する電気料金型ディマンドリスポンス実証、電力会社とアグリゲーターとの間でネガワット(節電量)を取引するインセンティブ型ディマンドリスポンス実証、蓄電池やエネルギー管理システム等に関しての標準化に資する調査・研究・実証、本実証で構築したシステムの普及の際に必要な認証制度の構築等を行いました。
②次世代エネルギー技術実証事業【2013年度当初:21.8億円】地域のエネルギー事情等に応じた先進的なスマートコミュニティの確立を目指して、建物間の電力融通や車両・船舶を活用した給電システム構築等の技術的・制度的課題を解決するため、地域の特性に応じた実証事業を複数の地域で行いました。
③スマートコミュニティ構想普及支援事業【2013年度当初:2.7億円】地域の実情に応じたスマートコミュニティの構築に向けて、ディマンドリスポンスの実施や、地域に応じた再生可能エネルギーの導入に関する事業化可能性調査、事業計画の策定に対する支援を行いました。
④スマートコミュニティ導入促進等事業【23年度3次補正:80.6億円】東日本大震災の被害を受けた東北被災3県(福島、
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第2節 �“水素社会”の実現
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宮城、岩手)において、スマートコミュニティの構築に向けて策定されたマスタープランに基づき導入される再生可能エネルギー設備やエネルギーマネジメントシステム等に対して支援を行いました。
⑤スマートエネルギーシステム導入促進事業【23年度3次補正:43.5億円】東日本大震災の被害を受けた東北被災3県(福島、宮城、岩手)において、災害時に地域の防災拠点となり得る避難所、病院等の重要施設に対して自立・分散型電源である再生可能エネルギーや蓄電池等を導入する場合に支援を行いました。
2.スマートメーターの導入に向けた取組【制度】
スマートメーターは、電力使用量の見える化や、より柔軟な電気料金メニューの導入・多様化を可能とするための基盤となるものです。2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」においても、「2020年代早期に全世帯・全工場にスマートメーターを導入する。」とされており、導入の加速化に向けて官民挙げて取り組んでいるところです。経済産業省においては、2010年5月より「スマートメーター制度検討会」を開催し、スマートメーターの基本要件、導入に向けた課題及び今後の取組等について議論を行っています。2013年度の検討会において、電力各社から、スマートメーターの導入計画が公表され、従来の導入計画を前倒し、日本全体で2024年度末までに全世帯・全事業所に導入を完了する計画となっています(東京:2020年度末、関西・中部:2022年度末、沖縄を除く6電力は2023年度末)。さらに、2016年4月までに、スマートメーターで取得できるデータの提供を開始できるよう、対応を進めていくことなども表明されました。また、導入コスト低減の観点から、スマートメーター本体の調達に際して一般競争入札を実施するとともに、通信方式の決定やシステムの調達にあたっても、提案公募を実施することなどが電力各社から表明されました。これらの方針を踏まえ、電力各社において、スマートメーターの本格導入に向けた調達手続きが進められています。スマートメーターの導入・活用に関する環境整備の観点からは、スマートメーターから利用者のHEMSに直接データを送る「Bルート」から提供さ
れる情報の取扱いについて、官民による「スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会」において、低圧部門におけるインターフェースの標準化や運用ガイドラインの策定を2013年5月に完了したほか、高圧部門についても、2014年3月に検討の中間とりまとめを行いました。さらに、導入コスト低減に資するため、経済産業省において、メーターの検定手数料の更なる見直し等に関する検討を開始しています。
3.HEMS等に係る標準化に関する取組【制度】民生部門のエネルギーマネジメント等を普及拡大していくためには、発電所から家電機器までが一つのITネットワークで繋がり、相互に通信可能な環境が整うことが必要です。そのため、2012年 2月には、「スマートハウス標準化検討会」において、HEMSと家電機器等の通信方法の標準化の検討を官民で実施し、通信プロトコル「ECHONETLite」を標準規格として推奨することを決定しました。また、2012年6月には「スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会」を開催し、2013年12月までに重点機器の下位層(伝送メディア)の整備、HEMSと重点機器との接続に関するルール作り、相互接続のために認証支援センターの整備、ディマンドリスポンス手法の標準化などを実施しました。さらに、エネルギーマネジメントのより一層の普及に向け、HEMSを通じて取得されるデータの利活用を促進するため、HEMS情報基盤システムの標準化及びプライバシーに関するルール作りの検討を開始しました。
第2節“水素社会”の実現水素は、無尽蔵に存在する水や多様な一次エネルギー源から様々な方法で製造することができるエネルギー源で、エネルギー源の多様化に資するとともに、利用段階においてはCO2を排出せず、使い方によっては高いエネルギー効率を誇るなど環境負荷の低減にもつながるなど、将来の二次エネルギーの中心的役割を担うことが期待されます。こうした水素は、工業プロセス等には長く利用されてきていますが、更に新たなエネルギー源として利活用の幅を大きく拡大しようとしています。具体的には、都市ガスやLPガスから取り出した水素を活用し
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第3部 2013(平成25)年度においてエネルギーの需給に関して講じた施策の概況
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て発電や熱供給を行う家庭用燃料電池コージェネレーションシステム(エネファーム)が2009年に世界に先駆けて市販開始されました。また、水素を燃料として走行し、利用時にはCO2を排出しない燃料電池自動車も2015年に市場投入が予定されています。2013年度からは、燃料電池自動車の市場投入に向けた水素ステーションの先行整備も開始されました。このように、水素の導入に向けて、様々な要素技術の研究開発や実証事業が多くの主体によって取り組まれてきていますが、未だ技術面、コスト面、制度面、インフラ面で未だ多くの課題が存在しています。このため、多様な技術開発や低コスト化を推進し、実現可能性の高い技術から社会に実装していくため、戦略的に制度やインフラの整備を進めていくことで、水素を日常の生活や産業活動で利活用する“水素社会”の実現を目指します。この第一歩として、水素の製造から輸送・貯蔵、利用に関わる様々な要素を包含している全体を俯瞰したロードマップを策定すべく、2013年12月に産学官からなる「水素・燃料電池戦略協議会」を設置しました。
<具体的な主要施策>
1.燃料電池/水素エネルギー利用技術開発等
①固体高分子形燃料電池実用化推進技術開発事業【2013年度当初:31.9億円】燃料電池自動車やエネファーム等に利用される固体高分子形燃料電池(PEFC)の実用化推進と更なる普及拡大に向けて、電解質膜や電極触媒を中心とした性能向上・低コスト化に資する基礎的技術開発及び実用化技術開発を行いました。
②固体酸化物形燃料電池等実用化推進技術開発事業【2013年度当初:12.4億円】今後、業務用や事業用の定置用燃料電池としての利用が期待される固体酸化物形燃料電池(SOFC)の普及拡大に向けて、耐久性・信頼性を向上させるための基盤技術開発や技術実証、高効率火力発電システムにSOFCを組み込んだ超高効率火力発電システム(トリプルコンバインドサイクル発電システム)の要素技術開発等を行いました。
③水素利用技術研究開発事業【2013年度当初:20.0億円】水素ステーション整備、水素輸送、燃料電池車製造等のコスト低減に向け、鋼鉄の代わりに炭素繊維を用いた水素タンクの開発や、低コスト鋼材の使用の前提となる性能や安全性に関する評価・検査手法の開発などを行いました。
④地域水素供給インフラ技術・社会実証【2013年度当初:7.5億円】2015年の燃料電池自動車市場投入に向け、国内3か所に整備した商用実証水素ステーション等を活用し、実使用条件に近い状態で燃料電池自動車への水素充填を実施し、機器やシステムの稼働に係る実証試験を行いました。
⑤高効率水素製造等技術開発(再掲 第2章第2節1.(6) 参照)
⑥新エネルギーベンチャー技術革新事業【2013年度当初:9.7億円】太陽光発電、風力発電、バイオマス、燃料電池・蓄電池等における中小・ベンチャー企業が有する潜在的技術シーズを発掘し、その開発及び実用化を支援しました。
2.水素ステーションの整備○水素供給設備整備事業費補助金【2013年度当初:45.9億円】2015年から商業販売が始まる燃料電池自動車の導入を推進するため、四大都市圏を中心とした地域に燃料電池自動車の燃料となる水素を供給する水素ステーションを整備すべく、民間事業者等の水素ステーション整備費用に対する補助を行いました。
3.高圧ガス保安等の規制への対応○燃料電池自動車の普及開始・拡大に係る規制見直し【規制】水素の安全性について検討を行った上で、燃料電池自動車用の70MPaで水素を充填する容器の技術基準を2013年5月に制定し、当該容器の再検査期間の延長や表示の見直しの省令等の改正を2014年3月に行いました。