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コミュニケーション機器の 選び方、 使い方の基礎知識

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コミュニケーション機器の選び方、使い方の基礎知識

コミュニケーション機器編

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コミュニケーション機器編/コミュニケーション機器の選び方、使い方の基礎知識

1 コミュニケーションの大切さ

 障害のある人の自立とは、リハビリテーショ

ン訓練によって日常生活動作(ADL: Activities of

Daily Living)を身につけ自分で生活できるよう

になることだと考える人もまだ多いかもしれませ

ん。これは大切な考えであることに違いありませ

んが、訓練によって十分な生活機能が取り戻せな

い人はどうすればいいのでしょうか。訓練を続け

るか、優しく介護を受けながら生活するしかない

のでしょうか?

 1970 年代にアメリカで重度障害のある人たち

が自立生活を求める運動を始めました。その主張

の中に、「自分で選択して生きて行きたい」、「環

境を変えれば障害があっても自立して生活でき

る」というものがありました。ここから自己決定

し、意思を他人に伝える(コミュニケーションす

る)ことの重要性が認識されはじめます。我々の

日常生活を振り返ってみれば、障害の有無に関わ

らず、活動の結果よりも選択するプロセスが重要

であることがわかります。例えば、食べる動作よ

り何を食べるか決定することが、歩くことよりも

どこに行くかを決定することが私たちの生活にお

いて楽しく、また重要な部分であることが分かり

ます。自己決定やコミュニケーションが尊重され

れば、四肢麻痺で言語障害も合併するような重い

障害をもったとしても、精神的に自立した生活を

送ることができる可能性があるといえます。

 1980 年代に入り、コンピュータやメモリーな

どの電子技術が小型・高性能化してくると音声合

成など、技術によるコミュニケーションの代替が

可能になり、理念的であった自立観を現実面でも

支えられるようになってきました。

 さらに、インターネットの普及は、障害のある

人がコミュニケーションできないことへの疎外感

やストレスの低減にも大きな役割を果たしている

と考えられます。そのため、パソコンや携帯電話

を障害のある人も使えるように手段を確保するこ

と(アクセシビリティ)が重要な課題となってい

ます。

 このように、コミュニケーション機器の重要性

が増大してきています。

2 コミュニケーションの概念の広がり

 「コミュニケーションに困るときはどんなとき

ですか?」と尋ねると、「声が出ないとき」、「相

手のいっていることが聞こえないとき」といった

ような応えが返ってきます。このことからしても

言語障害や聴覚障害の人の抱えるコミュニケー

ション障害についての理解は比較的容易です。一

般的に、コミュニケーションは音声で行うもので

あり、声が出て(情報の発信)、声が聞こえれば

(情報の受信)、コミュニケーションは成立すると

考える人が多いようです。一方、先の問いに対し

て「みえないとき」と応える人はほとんどいませ

ん。視覚障害の人がコミュニケーションに障害を

有することを想像できる人は多くありません。以

下のエピソードは視覚障害のある人がコミュニ

ケーションにおける「情報の内容とその共有」に

大きな障害を抱えていることを示しています。

 ある会議の場で、全盲の人が「黄色いカバンが

なくなったので探して」といいました。

 同じ部屋にいた人たち全員で黄色いカバン探し

が始まりました。

 しかし、いくら探しても黄色いカバンは出てき

ません。彼女がここに来るまでに立ち寄った所に

コミュニケーション機器の役割の増大

29

コミュニケーション機器編/コミュニケーション機器の選び方、使い方の基礎知識

電話してもありません。

 そのとき、部屋の中で持ち主不明の生成り色の

カバンが見つかりました。

 全盲の人に「このカバンに心あたりはないです

か?」と触ってもらうと、突然彼女がいいました。

「あった! これ私の黄色いカバンです」。

 彼女はカバンを購入したとき、店員から黄色い

カバンと聞いたといいます。たしかに生成り色は

黄色っぽい白ですが、黄色ではありません。おそ

らく店員は「黄色がかった白」と伝えたのかもし

れません。これは、視覚障害による情報コンテン

ツ(内容)の共有のつまずきがコミュニケーショ

ン障害を生んだ典型的な例です。これをみれば、

話せて聞こえることがコミュニケーション成立の

十分条件には成りえないことが分かります。

 近年、コミュニケーションの概念が広がりつつ

あります。これまで音声で向かい合って会話する

ことが我々の一般的なコミュニケーションと考え

られていましたが、インターネットの普及により、

文字や映像などコンテンツの伝達もコミュニケー

ションの一部と多くの人が意識するようになって

きました。そう考えれば、視覚障害の人が情報伝

達に困難を抱える可能性が容易に想像できます。

 以下で紹介するコミュニケーション機器は、情

報の伝達を助ける機器ととらえていきます。

様々なコミュニケーション機器

1 コミュニケーションエイド   −声で会話が難しい場合−(1) 機器の目的と効果 音声でコミュニケーションすることが困難な人

の音声の代替をする道具をコミュニケーションエ

イドと呼びます。エイドを使ってみると確実に情

報が伝わるようになるため、ストレスのない楽し

いコミュニケーションも生まれてきます。

(2) 機器の種類 電子技術を使わない簡単な道具(ローテク・コ

ミュニケーションエイド)と電子技術を利用した

道具(ハイテク・コミュニケーションエイド)の

大きく2つに分類されます。

ローテク・コミュニケーションエイド

 文字盤や視線コミュニケーションボードが代表

的です。メモ帳も聴覚障害の人とのコミュニケー

ションに用いればローテク・コミュニケーション

エイドということができます。図 1 は介助者が

利用者の視線を読みとってコミュニケーションす

る様子を示しています。

[図 1]視線コミュニケーションボード

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コミュニケーション機器編/コミュニケーション機器の選び方、使い方の基礎知識

ハイテク・コミュニケーションエイド

 携帯用会話補助装置と重度障害者用意思伝達装

置をハイテク・コミュニケーションエイドと呼ぶ

ことができます。この2つは日本の福祉制度から

生まれたわが国独自の分類です。

 携帯用会話補助装置には、 図 2 に示したよう

なヴォカ(VOCA: Voice Output Communication

Aid)と呼ぶ、あらかじめ音声を録音しておきキー

を押して再生するタイプの会話補助装置と、図 3

に示したように、50 音キーボードを有しメッセー

ジを綴って発声させることのできる会話補助装置

が含まれます。

 重度障害者用意思伝達装置は、主として四肢麻

痺で言語障害も合併する人が、1 スイッチでメッ

セージを綴り意思を伝達できるようになってい

ます。パソコンをベースにした装置であり、図 4

に示したように画面に表示されたキーボードの上

をカーソルが自走(スキャン)し、打ちたい文字

の上でスイッチ操作をすればその文字が選択され

るようになっています。

[図 2]ヴォカと呼ばれる録音型会話補助装置

[図 3]50 音キーボードを有する会話補助装置

[図 4]重度障害者用意思伝達装置

 スイッチを押すと カーソルが動き出し、 もう一度スイッチを 押すとカーソル位置に ある文字が選択される

(3) 選び方のポイント

携帯用会話補助装置について

 ヴォカは、録音できるメッセージが1つから数

十に及ぶものまで様々なものがあります。録音で

きるメッセージが多くてもヴォカですべての会話

が自由にできるものではありません。あくまでも

限定された場面で音声が必要なときに活用する装

置です。知的障害・自閉症・言語障害を有し音声

での会話に困難がある人に利用されています。

 50 音キーボードを有する会話補助装置は、文字

理解のある人にとっては自由にメッセージを綴る

ことができるメリットがあります。しかし、メッ

セージを綴るのに時間を要する点、合成音声の質

がまだまだ肉声に及ばないなどの限界があります。

 いずれも機器によってキーの押しやすさ、重さ、

音質に差異があるので、実際に試してみることが

ポイントです。

重度障害者用意思伝達装置について

 この装置を用いる人は四肢麻痺で通常のキー

ボードが押せないため、スイッチをどのように操

作するかがポイントとなります。スイッチを操作

する部位、姿勢、適切なスイッチの選択、スキャ

ンするカーソルの速度の設定など専門的知識を要

しますので、作業療法士や言語聴覚士への相談を

お勧めします。

(4) 基本的な使い方 ヴォカはあらかじめ設定した場面で利用するス

クリプト(台詞)を想定して会話を楽しむ道具で

あり、その録音は家族や支援者が行う必要があり

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コミュニケーション機器編/コミュニケーション機器の選び方、使い方の基礎知識

入力代替装置

 標準のキーボードやマウスが使いにくい場合、

図 5 に示したような大型キーボード、小型キー

ボード、図 6 に示したような代替マウスを利用

します。

[図 5]代替キーボード

    大型キーボード      小型キーボード

[図 6]代替マウス

拡大反転ソフトウェア

 弱視のためパソコンの画面が見えにくい場合、

OSの中に画面を拡大・反転する機能が含まれて

います。図 7 に Windows に標準で含まれている

「拡大鏡」の画面を示します。さらに高機能なも

のが別製品として市販されています。

[図 7]拡大・反転ソフトの例

ます。そのため周囲の人の理解と協力が不可欠で

す。

 コミュニケーションエイドを使っても障害がな

い人が音声で会話するほどの速度を実現できるわ

けではありません。メッセージを発するのを待つ

など、周囲の理解があって初めて楽しいコミュニ

ケーションを実現できると考えて下さい。

(5) その他 日常生活用具給付制度の中に「携帯用会話補助

装置」、補装具費支給制度の中に「重度障害者用

意思伝達装置」という品目があります。給付対象

となるかどうかは各市区町村の福祉担当窓口にお

問い合わせ下さい。

2 パソコンアクセシビリティ機器    —パソコンの操作が難しい場合—(1) 機器の目的と効果 パソコンは福祉機器というよりは一般機器です

が、障害のある人のコミュニケーションの道具と

して大きな役割を果たしています。例えば、電子

メールは聴覚障害のある人のコミュニケーション

に、ホームページの閲覧は外出困難な肢体不自由

のある人や視覚障害の人の情報入手手段として不

可欠なツールになっています。

 パソコンのキーボードの押せない人や画面の見

えない人には操作を補助する機器(アクセシビリ

ティ機器)が必要になります。

(2) 機器の種類

入力補助ソフトウェア

 キーボード操作において2つのキーを同時に押

さえることができない、手が震えて誤ったキーに

触れてしまうなどの困難がある場合、パソコンの

OSの中にその問題を解決する機能が標準で含ま

れています。例えば、Windows には固定キー、フィ

ルタキーと呼ばれる機能が含まれており、それぞ

れ修飾キー(alt、shift、ctrl キーなど)をロック

できたり、入力が有効になる時間を遅らせて誤入

力を防ぐことができます。

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コミュニケーション機器編/コミュニケーション機器の選び方、使い方の基礎知識

スクリーンリーダ

 全盲の人も画面情報を音声で知ることができれ

ばパソコン操作が可能です。それを実現するのが

スクリーンリーダと呼ばれるソフトです。マウス

は使わずキーボードだけで操作できるようになっ

ています。

点字ディスプレイ

 図 8 に示したようなパソコン画面上に表示さ

れた文字情報を点字として表示してくれる装置で

す。点字の読める全盲の人に利用されています。

[図 8]点字ディスプレイ

点字プリンタ

 パソコン上の文字情報を点字で印刷する装置で

す。印刷する前には点訳という作業が必要であり、

通常のプリンタをつなぎ代えても動作しません。

 これまで点字プリンタは点字を打つときに大きな

音が出るものとされてきましたが、ピンで押し出す

タイプの低騒音タイプのものも開発されています。

(3) 選び方のポイントと基本的な使い方 Windows や MacOS などのOSの中にアクセ

シビリティ機能が標準で含まれています。余分な

コストがかかりませんので、基本的には、それら

の設定でどこまで使えるかを先に確認することが

ポイントです。それでも上手く操作ができない場

合には、専用のアクセシビリティ機器の導入を検

討するのがいいでしょう。たくさんの専用品が市

販されていますので、専門家に相談しながら選ん

で下さい。必ずしも高機能のものがよいわけでは

ありません。高機能になるとかえって複雑になり

分かりにくくなる場合もあります。使う人の用途

や機器に対する知識も考慮して導入するのがポイ

ントです。

 パソコンが苦手な障害のある人は、パソコンを

学んだ上に、アクセシビリティ機器の使い方も学

ばなければなりません。その点を考慮して少しず

つ学んでもらうことが大切です。

(4) その他 日常生活用具給付制度の品目の中に含まれてい

た「パソコン」は平成 18 年度から除外され、そ

の代わりに「情報・通信支援用具」が新しく加わ

り、アクセシビリティ機器やソフトが給付の対象

となりました。どのような機器が対象となるかど

うかは各市区町村の福祉担当窓口にお問い合わせ

下さい。また、盲ろう者には「点字ディスプレイ」

が給付されます。

3 補聴器   −声や音が聞こえにくい場合−(1) 機器の目的と効果 補聴器は難聴の人の聴力の改善に利用される機

器です。補聴器は医療機器であり適切な処方が行

われないと十分な効果を発揮できないばかりか、

聴力の低下を生む恐れもあることを認識しておく

ことが大切です。集音器や助聴器と呼ばれる比較

的安価で入手も容易な装置がありますが、あくま

でも補助的なものであり、その使用には注意が必

要です。

(2) 機器の種類

形状からの分類

 図 9 のように、ポケット型、耳かけ型、カナル型、

眼鏡型などがあります。従来はポケット型や耳か

け型が主流でしたが、最近では、小型でも高機能

化が可能になり、目立たないカナル型を選ぶ人が

増えています。眼鏡型は骨伝道を利用するもので、

伝音性難聴に有効です。

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コミュニケーション機器編/コミュニケーション機器の選び方、使い方の基礎知識

増幅方式からの分類

 アナログ補聴器とデジタル補聴器に分類できま

す。アナログ補聴器は従来からのアナログアンプ

を内蔵した補聴器で価格はデジタル補聴器と比

較して安価です。デジタル補聴器はマイクロコン

ピュータを搭載し、個人の状態に合わせて細かな

チューニングが可能です。

ワイヤレス補聴器

 会議室や教室などで離れた人の話を聞く場合、

音源の距離が遠くなることと、その間でノイズが

入ることもあり、補聴器での聞き取りが大きく低

下する場合があります。こういった場合、図 10

のように話者のマイクの音を直接補聴器に飛ばす

ワイヤレス補聴器が有効です。

(3) 選び方のポイントと基本的な使い方 先にも述べたように補聴器は医療機器であり素

人が勝手に選び調整することは避けるべきです。

耳鼻科医、言語聴覚士、認定補聴器技能者などの

専門家に相談し、適切な処方を受けることが必要

です。

[図 10]ワイヤレス補聴器

[図 9]補聴器の形状による分類

 ポケット型         耳かけ型        カナル型         眼鏡型

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コミュニケーション機器編/コミュニケーション機器の選び方、使い方の基礎知識

4 聴覚障害者用情報入手装置(1) 機器の目的と効果 聴覚障害の人が音声ではなく文字で情報を得ら

れるように保障することは重要です。ファックス

や電子メールはすでに聴覚障害の人のコミュニ

ケーションの必需品になっています。また、テレ

ビなどの情報を文字で入手するための字幕放送や

文字放送があります。その他、日常生活の中で重

要な音情報、例えば、アラーム、呼び出し音、子

どもの泣き声などを聴覚障害の人にも分かるよう

に光や振動に変換して知らせてくれる装置もあ

り、聴覚障害のある人たちの生活を支えています。

(2) 機器の種類

聴覚障害者用通信装置

 いわゆるファックスがこの装置に相当します。

近年では電子メールや携帯メールを使う聴覚障害

者も増えていますが、まだまだ重要なコミュニ

ケーション手段であることに違いはありません。

聴覚障害者用情報受信装置

 文字放送(文字配信専門の放送)や字幕放送(一

般の番組への字幕を付加した放送)を受信するた

めには専用のデコーダが必要です。そのための装

置を聴覚障害者用情報受信装置と呼んでいます。

 2011 年 7 月の地上デジタル放送移行後は、地

デジ対応テレビで文字放送や字幕放送を視聴でき

るようになりましたが、まだすべての番組に字幕

がついているわけではありません。聴覚障害者向

け字幕放送の受信にこの装置が必要です。

聴覚障害者用屋内信号装置

 図 11 のような生活に必要な音情報についてそ

れが何であるか、振動、光、文字などで知らせて

くれる装置です。ドアのノックや電話の呼び出し

音だけを知らせる単機能のものから、1 台で様々

な情報を知らせる複合機まであります。

(3) 選び方のポイントと使い方 情報技術の進展は、福祉機器としてではなく、

一般製品として聴覚障害のある人の生活を支える

ようになってきました。電子メールや携帯メール

の普及はその1つの例です。テレビ放送もアナロ

グからデジタルに移行し、文字情報の利用が容易

になりました。専用機器の開発や普及は一般製品

に比較して遅れがちです。新しい技術にいつも注

目しながら、利用できるものは積極的に活用して

いくことがポイントです。

(4) その他 日常生活用具給付制度の品目に「聴覚障害者用

通信装置」、「聴覚障害者用情報受信装置」、「聴覚

障害者用屋内信号装置」が含まれています。給付

対象となるかどうかは各市区町村の福祉担当窓口

にお問い合わせ下さい。

5 視覚障害用情報機器(1) 機器の目的と効果 視覚障害のある人は視覚情報を音声化、あるい

は触覚情報に変換することで情報を把握すること

ができるようになります。それを実現するのが視

覚障害用情報機器で、歩行誘導装置、音声情報装

置、点字電子手帳などが含まれます。

(2) 機器の種類

歩行誘導装置

 視覚障害者の歩行には白杖や点字ブロックが大

きな役割を果たしています。これを補助するもの

として、音声ガイド、 GPS システム、磁気誘導シ

ステムなど、現在地や障害物の有無などを音声や

振動で知らせてくれる装置が歩行誘導装置です

(図 12)。

音声情報装置

 図 13 に示したように、カラーセンサーを利用

[図 11]聴覚障害者用屋内信号装置

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コミュニケーション機器編/コミュニケーション機器の選び方、使い方の基礎知識

し物の色を音声で読み上げる装置、RFID タグ(情

報を記憶させた小さな IC チップ)を用いて製品

の値段や賞味期限、薬の服用方法などを読み上げ

る装置、文章を 2 次元コード化しそれを読み取っ

て音声化する装置(この装置は「視覚障害者用活

字文書読上げ装置」として日常生活用具給付制度

の品目に指定されています)などがあります。ま

た、時計、体温計、電卓などに音声機能を追加し

た製品もこの装置に含まれます。

[図 13]音声情報装置

SP コードとは文字などの情報をドット情報に変換したも

ので 18mm 平方の大きさに約 800 文字のデータを含むこ

とができます。

 全盲で点字の利用でき

る人は、図 14 のような

点字電子手帳を活用して

います。この装置はその

場でメモするための点字

キーボードと、保存してある情報を読み取るため

の点字ディスプレイから構成されます。情報を音

声化する機能をもつものもあります。

(3) 選び方のポイントと基本的な使い方 歩行誘導装置があれば白杖や点字ブロックは不

要に思う人もいますが、まだ精度は不十分で、検

出できる対象も限られています。また、設置され

ている場所も限定されています。

 音声情報装置については、RFID タグや 2 次元

コードの普及が進んでおらず、残念ながらどこで

も活用できる状況ではありません。

 そのためいずれの装置の利用においても、既存

の歩行手段や情報入手方法と併用しながら上手に

使い分けていくことがポイントです。

 点字電子手帳は点字の使える人にとって不可欠

な道具になりつつあります。メモの道具としてだ

けでなく、電車の中でダウンロードした新聞や小

説を読むなどさまざまな使い方ができます。使い

込んでいくと重さやメモリー容量が選択のポイン

トとなるようです。なお、点字の使えない全盲の

人は音声化ソフトを搭載した PDA や携帯電話を

活用することができます。

(4) その他 日常生活用具給付制度の品目の中に「視覚障害

者用活字文書読上げ装置」、「盲人用時計」が含ま

れています。給付対象となるかどうかは各市区町

村の福祉担当窓口にお問い合わせ下さい。

[図 12]歩行誘導装置天井埋込スピーカー

ボーン ここは○○市役所入り口です。

先端にマグネットがついています

AC100V

磁気センサー

SP コードとは

[図 14]点字電子手帳

点字電子手帳

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コミュニケーション機器編/コミュニケーション機器の選び方、使い方の基礎知識

6 福祉電話・緊急通報装置・見守り装置

(1) 機器の目的と効果 障害のある人にとって、電話はコミュニケー

ションの道具のみならず、遠く離れた人と自分を

結んでくれて安心感をもたらす道具としても、大

きな役割を担っています。緊急通報装置や見守り

装置はまさに安心を確保するための道具といえま

す。

(2) 機器の種類

福祉電話

 肢体不自由の人は自ら受話器を持ったり、ダイ

ヤルしたりということができないことがありま

す。そこで、図 15 のように、1つのスイッチ操

作でダイヤルし電話できる製品、ボタンを押せば

登録先に自動的に電話がかかる製品などが市販さ

れています。これらを総称して福祉電話と呼びま

す。

緊急通報装置

 一人で生活する人が、危険を感じたときにボタ

ンを押せば自動的に登録してある場所や人を呼び

出せるシステムを緊急通報装置と呼びます。一般

的には電話と別に市販されており、電話に接続し

て利用します。福祉電話の多くは緊急通報機能を

もっています。

[図 15]福祉電話

見守り装置

 見守り装置は、基本的に図 16 のようにセンサー

に連動する発信機と受信機からなります。認知症

など自分で危険な状況を判断できず呼び出しがで

きない人、あるいは一人暮らしの人で何らかの

理由で自分からの呼び出しができなくなる危険

性のある人の生活状況をセンサーが判断し、危

険な状況であれば受信機を持つ家族や介護者に

アラームを送ります。センサーにはベッドセン

サーや赤外線センサーで直接的に人の動きをモ

ニターするものと、ガスや水道の使用量からそ

の人の生活を確認するものまで様々です。

(3) 選び方のポイントと基本的な使い方 利用する人の判断能力や生活環境によって3

つの装置の選び方が決まってきます。「福祉電話」

は障害があり電話操作が困難だが、自ら電話を

かけて話すことのできる人にとって必要なもの

です。「緊急通報装置」は自ら危険を判断でき、

とにかく人を呼びたいが、その状況を説明でき

ない可能性のある場合、「見守り装置」は、自ら

危険を判断できない場合に導入されます。ただ、

見守り装置の導入は人を監視することにつなが

りますから、家族に対し、導入することの説明

と当事者のプライバシーへの配慮がポイントと

なります。

 病床でも携帯

電話を利用でき

る人が増えてお

り、携帯電話が

福祉専用に開発

された福祉電話

や緊急通報装置

に代わって、そ

の役割を果たし

ている場合もあ

ります。

7 読書器(1) 機器の目的と効果 本を読むことは情報を得るため、また、余暇の

1つとして大切な活動の1つです。読書器は文字が

見えない、ページをめくれない人など本を読むこと

に困難を抱える人に読書活動を提供しています。

[図 16]見守り装置

37

コミュニケーション機器編/コミュニケーション機器の選び方、使い方の基礎知識

(2) 機器の種類

拡大読書器

 弱視のために文字を読みにくい人のための装置

です。一般的には図 17 に示したような形状で、

カメラでとっ

た 本 を テ レ

ビ 上 に 大 き

く 写 し て く

れます。

音声読書器

 全盲の人が音声で本を読むための装置です。か

つては録音図書をテープレコーダで再生するのが

主流でしたが、DAISY という規格に基づいた電子

録音図書が作成されており、専用の再生機やパソ

コン上で再生可能です。DAISY 図書では、インデッ

クスが付けられているため、読みたい場所を検索

することも容易になっています。

ページめくり器

 肢体不自由があり、ページをめくれない人のた

めの装置です(図 18)。本や雑誌をページめくり

器にセットし、スイッチやジョイスティックで

ページをめくっていきます。

[図 18]ページめくり器

(3) 選び方のポイントと使い方

拡大読書器

 拡大倍率が十分であるか、画面のちらつきが気

にならないか、本を載せるテーブルの動きがス

ムーズか、場合によっては、一部の行だけを強調

するライン機能やマスク機能の有無も選択のポイ

ントになります。携帯して用いる場合には小型の

携帯用拡大読書器も市販されています。

音声読書器

 すべての本や雑誌が DAISY 化されて読めるわ

けではありません。一般向け電子書籍や新聞をパ

ソコンの音声読み上げソフトで読むなど、別の手

段も確保しておくといいでしょう。

ページめくり器

 本の大きさに比べると随分大型の装置になりま

すので、ベッドサイドなどでは設置場所に困るこ

とがあります。また、紙の質や大きさ、本の厚さ

によってはページをめくりにくい場合があるので

注意が必要です。

 本のセットは肢体不自由のある利用者ではでき

ませんので、実際の使用にあたっては周囲の人の

支えが不可欠です。

(4) その他 日常生活用具給付制度の品目の中に「視覚障害

者用拡大読書器」が含まれています。また、音声

読書器も「視覚障害者用ポータブルレコーダー」と

いう品目に相当します。給付対象となるかどうかは

各市区町村の福祉担当窓口にお問い合わせ下さい。

 電子書籍が急速に普及してきています。電子ブッ

クリーダは軽いタッチでページがめくれるうえ、音

声で読み上げてくれるものもあります。そのため紙

の書籍が読めなかった人でも本を読むことができる

ようになってきています。

[図 17]拡大読書器

38

コミュニケーション機器編/コミュニケーション機器の選び方、使い方の基礎知識

ような4つのメッセージを録音しておけば電話の

応対が可能です。

 ・「はい。田中です。言葉が不自由なので Yes/

  No で答えられるように聞いて下さい」

 ・「はい」

 ・「いいえ」

 ・「わかりません」

★筆記用具でメモをとれない人のための音声メモツールとして

 肢体不自由の人は筆記

用具を持てないために、知

的障害の人は字を知らな

いために、聴覚障害の人

は相手が何を話している

か聞こえないために、視覚障害の人は字が見えな

いためにメモや記録をとれないことがあります。

こんなとき、ボタン 1 つで音声メモをとれる IC

レコーダはペンと紙の代替手段となるでしょう。

幸いなことにいずれの障害を有していても1つの

ボタンを押すことはほとんどの場合可能です。

 メモをとる上で重要なことは「紙に書き留める」

行為ではなく、「約束を覚えておく」、「メッセー

ジを伝達する」ことです。書くことにこだわって

いたらメモをとることはできません。こんな発想

から一般向け製品の福祉目的での活用のためのア

イデアが生まれてきます。

★想い出すのが苦手な人のメモツールとして 忘れやすい人にメモすることを勧めるものの、

メモすることを億劫がる人も多く、メモをとって

もその紙を結局なくしてしまったという話を聞き

ます。しかし音声で録音することには抵抗のない

人もいます。いつも首からぶら下げた IC レコー

ダに録音メモをしておく習慣をつけたらどうで

しょうか?

 家電販売店で誰もが購入できる一般製品も使い

方によっては障害のある人や高齢者の生活上の

困難さの解消に役立ちます。以下、IC レコーダ、

デジタルカメラ、携帯電話、パソコン、ノイズキャ

ンセリングヘッドフォン活用のアイデアを紹介し

ます。

1 IC レコーダ IC レコーダは小型軽量なので首にかけること

も可能で、しかも録音時間も数十時間以上のもの

が一般的です。操作ボタンも少なく障害があって

も比較的容易に利用できるため、上手に活用すれ

ば以下のような場面で助けとなるでしょう。

[図 19]IC レコーダ

★音声でコミュニケーションが苦手な人のコミュニケーションエイドとして IC レコーダは授業や会議などを録音して聞く

のが一般的ですが、言語障害のある人にとっては

音声出力コミュニケーションエイド(VOCA)と

して利用することも可能です。あらかじめいくつ

かの音声を録音しておいてもらい、必要なときに

メッセージを選択して話すことになります。録音

した音声の順番を覚えておけば、早送りや巻き戻

しボタンを操作してメッセージを検索し会話に利

用できます。例えば、発声困難なために電話に出

られないと思っている人も IC レコーダに以下の

一般向け製品の福祉目的での活用

39

コミュニケーション機器編/コミュニケーション機器の選び方、使い方の基礎知識

たく反応がなかった知的障害の子どもが、デジカ

メで撮った便器の写真を見ただけでトイレに行く

こともあります。また、言葉で訴えられなくても

デジカメに入った写真をスクロールさせ、行きた

い場所の写真を見せて自分の意思を訴える子ども

もいます。コミュニケーションが難しい場合には

デジタルカメラを活用してみる価値はあります。

★電子マニュアルとして 障害のある人の中には作業の手順が理解しにく

かったり、複雑な手順になると覚えられなかった

りする人がいます。こんなときには、あらかじめ

写真を撮影しておき、手順を写真で見せながら説

明するのが効果的です。本来なら手順の理解が難

しい人が自らデジカメを操作して確認しながら作

業ができることが理想ですが、デジカメの操作そ

のものが当事者には難しいことがあります。そん

な場合は支援者がデジカメで手順を1つ1つ見せ

ながら説明すればいいでしょう。

★説明補助ツールとして 状況を言葉で説明するのが難しいときがあるは

ずです。そのときには写真や絵で説明することが

効果的です。ある知的障害をもつ人は掃除機の

フィルターや乾電池の買い物を頼まれたときはい

2 デジタルカメラ デジタルカメラ(デジカメ)は、誰もがコストを

気にせず大量に写真を撮ったり、またすぐに再生

して利用することを可能にしました。その特徴を

活かせば以下のような困難な場面に対応できます。

★想い出す手がかりとして 過去のことを手がかりなしに想い出して語るこ

とができなくても、何か手がかりを見れば想い出

すことができる人がいます。認知症など記憶障害

のある人のリハビリテーション法の1つとして

「回想法」という方法がありますが、そこでは写

真を見ながら、また音楽を聴きながら過去の記憶

を想い出し一緒に話しをしていきます。外出した

ときのスナップ、過去にとった写真をデジタル化

しカメラに転送したもの、ネット上で公開されて

いる昔の写真などを見ながら一緒に話すことで過

去の記憶を引きだしていきます。

 さまざまな写真を入れたデジタルフォトフレー

ムを置いておけば、自動的に表示されるいろいろ

な写真を眺めながら生活することができます。携

帯電話でとった写真をそのままメッセージととも

に送れるデジタルフォトフレームもあります。こ

れを使えば手紙を書けない人でも遠く離れて暮ら

す両親に新しい写真をすぐに送って近況を知らせ

ることもできるのです。

★コミュニケーションツールとして 言葉で理解できなくても写真をみれば理解でき

る人もいます。私たちは自分が言葉を理解できる

ため、誰に対しても言葉でコミュニケーションを

とろうとしますが、知的障害・自閉症・認知症と

いった障害のある人の中には言語理解が困難な人

もいます。「トイレに行こうか?」と誘ってもまっ

トイレに行こうか

公園のチューリップが咲きましたよきれいだねぇ

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コミュニケーション機器編/コミュニケーション機器の選び方、使い方の基礎知識

つもカメラでその箱や型番を撮影してお店に出か

けていきます。そうすることで間違いなく確実に

買い物ができるようになったといいます。

3 携帯電話 一昔前までは障害のある人が電話を自力でかけ

ることは容易ではありませんでした。特に、視覚

障害、肢体不自由の人にとって、外出先で公衆電

話にたどり着くことは非常に困難でした。また、

肢体不自由の人にとっては、ダイヤルすることや

受話器を保持することも困難でした。携帯電話の

出現により、電話は自由に持ち歩けるものとなり

移動のバリアが取り除かれたといえます。聴覚障

害や言語障害の人にとっては音声で電話すること

は困難でした。しかし携帯電話の電子メール機能

は、それまでファックスに頼っていた聴覚・言語

障害のある人たちがいつでもどこでも文字でコ

ミュニケーションすることを可能にしています。

 携帯電話は携帯してこそ意味があるものなので

携帯電話を忘れる人は少ないといえます。携帯電

話を常時持ち歩いているメリットを活かさない手

はありません。

★コミュニケーションの誤解を防ぐツールとして 発達障害や記憶障害のある人の中には音声で長

い会話をすることが苦手な人がいます。記憶する

ことが苦手だったり、多くのメッセージを聞いて

整理することが苦手だったりすると「いった」「い

わなかった」というような誤解に発展することさ

えあります。それを防ぐためにあえて重要な会話

はメールでやりとりすることで誤解やミスを防い

でいる人もいます。

★確認ツールとして 視覚障害の人の中には自分の行動が確認できず

不安に感じている人がいます。例えば化粧をして

洋服を着替えても、視覚障害のある人は果たして

きちんと化粧ができて服が上下合っているかを確

認できません。そこで自分の姿を確認するために

友人にテレビ電話をしてアドバイスをもらってい

る人がいます。また、道に迷ったときにこの機能

を利用する人もいます。

★メモツールとして 駐車場のどこに車を停めたか分からなくなって

しまった経験はありませんか?そんなときに携帯電

話を活用することも可能です。停めた場所の番号

を写真で記録しておく、あるいは、その階数や番

号を打ち込んで発信ボタンを押しておけば発信履

歴にその番号が残りあとで確認することができま

す。

★スケジュール管理のアラームとして 発達障害の人の中には忘れやすさが人とのトラ

ブルの原因になっている人がいます。ある人は予

定表を持っていてもそれを家に忘れてしまうので

役に立たないといいます。幸いこのような人でも

携帯電話を忘れることは少ないようです。また、

アラーム機能を設定して忘れることを防いでいる

人がいます。携帯電話の機種によっては、アラー

ムと連動してその意味を文字表示してくれる機種

があります。例えば、7 時に起床のアラームがな

ると「洗顔・歯磨き」という文字がディスプレイ

に同時に表示されるわけです。時間を忘れて仕事

に没頭してしまうため疲労困憊していた発達障害

の人が、定期的に「15 分休憩」とアラームがな

るように設定することで自分を管理しながら就労

できている事例もあります。

?!

どうかしら?大丈夫よ

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コミュニケーション機器編/コミュニケーション機器の選び方、使い方の基礎知識

* IC レコーダやカメラ機能がある携帯電話なら、

上述の「IC レコーダ」「デジタルカメラ」の項目

で紹介した活用が同じようにできます。

4 パソコン・タブレット PC 普段使っているパソコンと市販のアプリケー

ションソフトを組み合わせれば様々な活動の補助

ができます。

★音声読み上げの補助ツールとして 学習障害の中でも、読み書き障害のある子ども

のパソコンの活用は不可欠であると欧米では考え

られています。なぜなら音声読み上げソフトで

読み上げれば理解できるので、文字が読めなくて

も十分学習は可能だと考えるわけです。事実、欧

米では読み書き障害のある人が数多く大学に進学

しています。日本語では漢字の読みでつまづく子

どもが数多くいるとされています。その場合、漢

字にふりがなをつけるルビソフトの活用も有効で

す。

★筆記のためのツールとして 筆記用具で字を書くことが苦手な人にとって、

ワープロソフトの活用は書くことを代替すること

を意味します。単語予測ソフトを組み合わせれば

タイプ速度を向上させることもできるはずです。

パソコンを持ち歩くにはまだまだ大きいため、外

出時のコミュニケーションには電子手帳や携帯電

話が小型軽量な書字ツールとして利用されること

があります。

★思考補助ツールとして 大勢の人の参加する会議、学校の授業などを理

解するには、耳で聞いた多くの情報を頭に留め、

それをまとめていく必要があります。しかし、一

度に多くのことを保持できない人にとってその作

業は容易ではありません。考えを書き出してそれ

を視覚的に並べかえることは、聴覚記憶に依存し

ないのでこういった人の思考を助けてくれます。

 ビジネス用のソフトとして市販されているマッ

ピングソフトは、パソコン画面上にタイプした意

見や感想などを線で結んだり色をつけたりしなが

らダイナミックに関係性を示すことを可能にしま

す。

[図 20]マッピングソフト

5 ノイズキャンセリング  ヘッドフォン ノイズに逆移相の音を被せることでそれを打ち

消す機能(ノイズキャンセリング機能)を搭載し

たヘッドフォンが数多く市販されています。

★ノイズフィルターとして 発達障害の人の中には騒音の中に出かけること

で極度に疲れる人がいます。我慢しているとパ

ニックなどに結びつくこともあります。耳栓も有

効ですが必要な情報も遮断してしまうため、車の

接近に気づかないなどときには危険なこともあり

ます。ノイズキャンセリングヘッドフォンは常に

出ているノイズのみを消してくれますのでその点

では安全です。これがあるので通勤できる、ある

いは職場で長時間働けるという人も少なくありま

せん。

ピピピ

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コミュニケーション機器編/コミュニケーション機器の選び方、使い方の基礎知識

 コミュニケーションを支える多くの機器が開発

されています。しかし、コミュニケーション機器

は街の福祉ショップにもそれほど沢山の製品が置

かれているわけではありません。製品やサポート

情報の入手には以下のホームページが参考になる

と思います。

●(財)保健福祉広報協会福祉機器情報

(http://www.hcr.or.jp/search/index.html) 毎年開催される H.C.R.(国際福祉機器展)

に展示される機器が検索できます。

●(財)テクノエイド協会福祉用具情報システム

(http://www.techno-aids.or.jp/system/index.shtml) 福祉機器メーカから提供されたデータが福

祉用具分類コード95(CCTA95)にしたがっ

て分類されています。

●(財)日本障害者リハビリテーション協会障害者 IT 支援団体データベース

(http://www.normanet.ne.jp/~it-map/) パソコンアクセシビリティ機器の利用を支

援する全国各地の機関リストがあります。

●東京大学先端科学技術研究センター学際バリアフリー AT2ED プロジェクト

(http://at2ed.jp/)こころ Web(http://www.kokoroweb.org/) コミュニケーション関連機器を集めたデー

タベースです。

 その他にも ICT(情報通信技術)の進歩は、障

害のある人にも便利な一般製品を生み出していま

す。こういった、身近なテクノロジーを活用する

上で重要なのは、障害(Disability)という視点

で機器をみるよりも、困難(Difficulty)という視

点で機器を探してみることです。困難は障害の有

無を越えて、障害の種別を越えて存在します。例

えば、人の話をメモすることができないという事

態を想定してみましょう。以下のような共通項が

浮かんできます。

 

 肢体不自由の人:  筆記用具を持てないからメモできない

 視覚障害の人:  字が見えないからメモできない

 聴覚障害の人:  相手の言うことが分からないからメモできない

 知的障害の人:  字を知らないからメモできない

 障害のない人:  相手が早口で話せばメモできない

 ビジネスマンは、IC レコーダと呼ばれる録音

機器を音声情報のメモに用いていますが、これは

上のすべてのケースに適用できます。あなた自身

が困ったときにどんな道具を使うかをまず考えて

みましょう。困難な状況を思い浮かべてみると障

害を越え共通して使える道具がみえてきます。

●執筆者  

 中邑 賢龍 (東京大学先端科学技術研究センター教授)

コミュニケーション機器を探すときに