森林生態系の炭素循環森林生態系の炭素循環 誌名 日本生態學會誌 issn...

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森林生態系の炭素循環 誌名 誌名 日本生態學會誌 ISSN ISSN 00215007 著者 著者 大塚, 俊之 巻/号 巻/号 62巻1号 掲載ページ 掲載ページ p. 31-44 発行年月 発行年月 2012年3月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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森林生態系の炭素循環

誌名誌名 日本生態學會誌

ISSNISSN 00215007

著者著者 大塚, 俊之

巻/号巻/号 62巻1号

掲載ページ掲載ページ p. 31-44

発行年月発行年月 2012年3月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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自本生態学会誌 62:31-44 (2012)

大島賞受賞者総説

森林生態系の炭素循環:

Takayarna F orestでの 10年間で、分かつたことと、分からなかったこと

大塚俊之

岐阜大学流域圏科学研究センター

Carbon cycling at Takayama Forest: results from intensive studies in the last decade,

and further studies for a next decade

Toshiyuki Ohtsuka

River Basin Research Center, Gifu University

要吉:I妓阜大学流域圏科学研究センター・高山試験地の落葉広葉樹ニ次林 (TakayamaForest) は、アジア地域では最も

吉く 1993年から微気象学的な渦相関法による CO2ブラックス観測が開始された。 1998年からは、方形区を用いた森林

動態と物質生産の研究を組み合わせることにより、生態学的なバイオメトリック法による炭素循環研究が開始された。

約 10年に渡るモニタリングの結果、フラックス観測とリンクして生態系純生産量 (NEP,Net ecosystem production)の変

動を研究する手法を確立し、森林のどこにどのように炭素が蓄積するかを明らかにした。独立栄養生物による正味の炭

素固定量としての CO2吸収量と、従属栄養生物の分解呼吸による CO2放出量の収支として求められた平均のバイオメ

トリック NEPは2.1tC ha-I yr・1で、渦相関法NEP(2.8 tC ha-I y{l) とおおよそ一致した。樹木の木部純一次生産量は 0.86

-1.96 tC ha.1 yr.1の範囲で大きく変動し、渦相関法NEPの変動と正の相関があった。この事は、樹木成長量の年々変動

がNEPの変動に大きく寄与していることを示している O しかし TakayamaForestでは、調査期間内の樹木の枯死量が多

いために、バイオマスには炭素があまり溜まらずに、土壌有機物のような非生物的プールに多くの炭素が溜まっていた。

一方で、、非生物的プールへの炭素蓄積の定量化とその機構の解明は残された諜題である。炭素循環研究における今後の

重要なテーマは、生態系内のプール(特に非生物的プーjレ)に、炭素がどれだけの量、どれだけの期間に渡って蓄積さ

れるのかという事である。このために、炭素プールへの分配とその滞留時間について、平衡状態の各植生帝における比

較生態学的研究と、非平衡状態の遷移プロセスを追ったモニタリング研究が必要で=ある。

キーワード:バイオメトリック法、渦相関法、生態系純生産量、純一次生産量、非生物的炭素プール

Abs仕act:The flux in CO2 has been measured in Takayama Forest, a secondary deciduous broad-leav巴dforest in the Asia FLUXNET,

using the eddy covariance method since 1993. To study biometric-based net ecosystem production (NEP) beneath the flux tower, we

set up a p巴江口anentl-ha plot in 1998, and have been measuring ground-based biometric parameters, such as net primary production

(NPP) and soil respiration. These intensive, long-term studies of carbon cycling have helped demonstrate the temporal variation in

NEP and where and how the forest stores carbon. The biometricゐasedNEP, which is the balance between NPP and heterotrophic

respiration, was 2.1 tC ha.1y{1 for the 5-year period, in good agreement with the eddy covariance-based NEP (2.8 tC ha.¥(I). The

NEP was partitioned into 0.3 tC to the biomass pool, 1.0 tC to the coarse woody debris (CWD) pool, and 0.8 tC to the soil organic

matter (SOM) pool. The woody tissue NPP varied markedly from 0.88 to 1.96 tC ha.1yr-1 during the 11ωyear period from 1999

through 2009, and was positively correlated with the eddy covariance-based NEP. These data suggest that the interannual variability

in ecosystem carbon exchange is directly responsible for much of the interannual variation in autotrophic production, and that there

2011 年8月23日受付、 20日年 12月26日受理

e-mail: [email protected]

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大塚俊之

is constant net accumulation of carbon in the nonliving detritus (CWD and SOM) pools in the Takayama Forest. Estimations of

the carbon sequestration rate and carbon accumulation processes in the detritus pools are not well represented in current sれldies.

Comparable studies in ecosystems from each vegetation zone need to be conducted in the next decade to determine 1) how much

accumulation there is, 2) how long carbon resides, especially in detritus pools, and 3) how successional dynamics affect carbon

cycling.

Keywords: biometric, eddy covariance, net巴cosystemproduction, net primary production, detritus carbon pool

はじめに

1990年の IPCC第一次報告書 (IPCC1990) において、

地球規模での炭素の収支がまとめられ、この中で化石燃

料の使用によって大気中に放出される CO2の約 3割が行

方不明とされた。このミッシング・シンクの開題によって、

科学的にも政治的にも陸上生態系の炭素吸収量について

大きな注話が集まった。その後、温室効果ガスの排出削

減自擦を決めた 1997年の京都会議以降、微気象学的な fタ

ワーフラックス観測」と生態学的な炭素循環研究によっ

て、龍上生態系の炭素収支に関する研究は大きな発展を

見せた。

IPCC第三次報告書(Ipcc2001) においては、地球規

摸での CO2収支を見ると、 1990年代は 1980年代に比べ

て人為的な CO2の排出量が 5.4PgC/yrから 6.3PgC/yrに

大幅に増加したにもかかわらず、大気中 CO2の増加量は

むしろ減少していることが示され、さらに陸上生態系の

炭素シンクとしての役割に大きな注自が集まることにな

った (Wofsy2001)。大気観測とインパースモデルから推

定すると、この大きな炭素シンクを担っているのは、主

に北米やユーラシア大l径の北緯 30度以北の地域であり、

熱帯地域は炭素のソースとなっていた (Schimelet al.

2001)。つまり、 20世紀末には、 j量帝地域の森林(ある

いは草原)や盟寒帯林の炭素吸収量が大きく、熱帯林の

破壊による CO2排出量を相殺していたのでは無いかと考

えられている。

謹上生態系の物質生産の研究は、 1960-70年代に毘|奈生

物学事業計画 UBP)の活動があり、多くのデータ蓄積が

ある O 百本でも森林生態系における現存量の推定や、積

み 上 げ 法 に よる純一次生産量 (NPP,net primary

production)の泌定方法に関して、この時代に非常に多く

の研究がなされ、宮本の研究が世界をリードした時代で

もあった (Shideiand Kira 1977)。一方で、従来の生態学

的手法では不可能であった、ほほリアルタイムでの CO2

吸収量の推定を可能とするタワ」フラックス観測の発展

は、生態学的な物質生産と炭素循環の研究の再考を促す

32

ことになった。

社会的要請に主導された、タワーフラックス観測の世

界的な発展やリモートセンシング技術の進歩などは、近

年の地球規模での陵上生態系の炭素吸収量についての理

解に大きく貢献した。一方で、このような 1990年以降の

タワーフラックス観測による研究は、単に生態系の炭素

吸収量の推定だけでなく、生態系の総一次生産量 (GPP,

gross primary production)の年々変動とエルニーニョ現象

との関係 (Morgenstemet al. 2004 ; Saigusa et al. 2005)、睦

上生態系への窒素沈着量の増加による炭素吸収量への影

響(祝agnaniet al. 2007)、森林の炭素吸収量に与える林齢

の影響の定量的評価 (Clarket al. 2004 ; Noormets巴tal.

2007) など、生態系内の炭素循環に関る生物的プロセス

に対して、次々と新たな生態学的問題を生み出している。

このような時代背景の中で、岐阜大学流域摺科学研究

センター・高山試験地の冷温帯性落葉広葉樹ニ次林

(Takayama Forest)では、アジアでは最も古くタワ…フラ

ックス観測が開始され、並行して生態学的な手法による

炭素循環研究が行われて、問者の長期的かっ詳細な比較

研究がなされてきた点で HarvardForest (Urbanski et al.

2007) と並ぶ重要なサイトである。生態学的手法と微気

象学的手法を併用した統合的な炭素循環研究は、生態系

内への炭素吸収量の正確な推定とその変動を調べ、生態

系内で炭素が「どこ」に「どのように」蓄積していくの

かについて明らかにするために重要な意味を持つ。本稿

では、 TakayamaForestでの微気象学的なタワーフラック

ス観棋と連携した生態学的な炭素循環研究において、私

が研究に関った 1998年から約 10年間の研究で分かった

ことについてレピューし、さらに分からなかったことを

整理して次の 10年のための鰐題提起をしていきたい。

森林生態系における生態系純生産量の測定

ホイッタカー (1974) の古典的教科書では、生態系全

体での有機物の増加量として、総一次生産量 (GPp) と

全群集の呼吸量(生態系呼吸量 Re) との差である、生態

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森林生態系の炭素循環

系純生産量 (NEP,net巴cosystemproduction)が定義されて

いる。しかし、その測定方法が難しい事もあり、生態学

において NEPが注目されることはあまり無かった。 IPCC

第一次報告書(Ipcc1990) において、ミッシング・シン

クの問題が指摘されてから、生態系の正味の炭素吸収量

を意味する NEPが、注目されるようになったと言っても

良いだろう。

さらに、タワーフラックス観測による生態系の炭素収

支の測定が森林生態系に適用されるようになって、この

分野の研究が促進されてきた。微気象学的なアプローチ

による一般的な大気一森林間の CO2ブラックス観測にお

いては、舌L流理論に基づいて空気の動きと COz濃度の変

動から CO2ブラックスを計算する渦相関法を用いて、渦

拡散により上空に輪送されるフラックスを定量し、これ

に渦相関法の観測高度よりも下の空間で7強こる CO2の貯

留量の変化と、移流により水平方向に輸送される COゥの

を加えた総和を正味の生態系交換量 (NEE,n巴t

ecosystem exchange) とする(大谷・溝口 2005)0DOC

(dissolved organic carbon) や VOC(volatile organic

cOl11pounds)のように、 COz以外で系外へ流出する有機物

もあるが、一殺的には炭素収支の中では光合成量や呼吸

と比較して無視出来る程度に小さい (Blacket al. 2005 ;

Curtis et a1. 2002)。このため、彼気象学の分野では上向き

のフラックスを正にとるので NEPキ-NEEと考えて良

い。微気象学的な NEEの推定方法やその問題点について

は本論文の対象としないので、 Baldocchi (2003)、Saigusa

et al. (2002)、大谷‘溝口 (2005) などを参照して欲しい。

森林生態系の NEEの推定を目的とした森林と大気の

COヲ交換の年間を通じた鏡獅は、 1990年に HarvardForest

で始まった (Wofsyet al. 1993)。この方法は森林の年間の

COラの正味の吸収量を直接的に測定できるだけでなく、

GPPとReという、その基礎となる生態学的なプロセス

に関する情報を提供できる。 HarvardForestではタワーフ

ラックス観測は現在でも継続しており (Urbanskiet al.

2007)、初期の報告では、 NEPは1.4- 2.8 tC ha.1 yどと大

きく変動すること (1991-1995)、GPPについては開業と

落葉のタイミングが、 Reについては冬の積雪量や夏の乾

燥が変動に関与する事が明らかとなっている (Gouldenet

al. 1996)。

Takayama Forestでは、アジア地域では最も早く 1993年

から微気象学的なタワーフラックス観測が開始され(た

だし当初は空気力学的傾度法)、産業技術総合研究所が中

心となって現在も観測が継続している (Yamamotoet al.

1999)。この森林は、薪炭林として利用されていたと考え

33

られ、シラカンパとダケカンパ、ミズナラが優占する落

葉広葉桜ニ次林である (Ohtsukaet al. 2005) 0また、冬期

は 1m以上の積雪があり、クマイザサが林床に高密度に

生育する。 TakayamaForestでの 1994年から 2002年の渦

相関法による平均 NEPは2.37土 0.92t C ha-1 yr-1で、年々

変動が大きく、春の開業が早い年には生育の初期に CO2

吸収が活発となり、年間の NEPが高くなる (Saigusaet

al. 2005)。また、夏期の水分ストレスがほとんど無いので、

GPPは気温と光合成有効放射 (PAR)の関数として示され、

このこつの環境要閣が NEPを制御している (Saigusaet

al. 2002)。

積み上げ法による NEPの測定

j品相際法を森林生態系に適用するにあたっては、地形

的な問題や、夜間の生態系呼吸の過小評価の問題など現

在でも完全には解決されていない、いくつかの手法特異

的な問題を抱えている (Aubinetet al. 2000 ; Black et al

1996 ; Grace et al. 1996) 0このためフラックスサイトでは、

掲棺関法とは独立な方法で NEPを推定して、まず手法を

検証する必要性ーがあった。これは土壌呼吸量やリター量、

樹木成長量など、生態系内の様々な炭素プール間のブラ

ックスを生態学的な方法で個別に測定して、 NEPを f積

み上げJる方法である O このような方法は渦相関法 (eddy

covariance based NEP) に対して、バイオメトリック法

(biometric based NEP) と呼ばれる (Cultiset a1. 2002)。

上述したように DOCやVOCのような系外への有機物

の流出量が無掲出来るとすれば、-NE巳=NEP '= GPP -

Rε で示される。森林生態系の呼吸量を積み上げ法により

推定する試みもあるが(例えばTanget al. 2008)、測定方

法やスケールアップは依然として難しい。このため、独

立栄養生物による正味の CO,吸収量を意味する純一次生

(NPP, net primarγproduction) と、従属栄養生物の分

解呼吸による CO2放出量 (Rh) の収支としてバイオメト

リック NEPは求められる。これは、独立栄養生物の呼吸

量を Raとすると、以下の式になる。

NEP=GPP Re口 (NPP+Ra)一(Ra十Rh)=NPP Rh

森林生態系で、は、土壌呼吸 (Rs) はReの大部分を占め

(Bond-lal11berty and Thol11son 2010)、Rhの推定にはそのフ

ラックスの測定が重要である。また、草原と比較すると、

森林は食様動物が少なく腐食連鎖が中心なので、 Rhの大

部分は土壌表面あるいは土壌中に存在する従属栄養生物

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大塚俊之

から発生する o Rsは、土壌微生物による分解呼吸と植物

の根呼吸 (Rr) に由来するので、バイオメトリック NEP

の推定には以下の式が用いられる場合が多い(大塚

2005)。

NEP=NPP一(Rs-Rr)

Takayama Forestは西向き斜面の譲雑地形であり、タワ

フラックス観測と並行して、バイオメトリック NEPの

推定のための NPPとRsの観測が 1998年頃から本格的に

始まった。

Takayama Forestでの NPPの測定

生態学的な NPPの推定方法としては大型開化箱を使っ

たり、 f悶葉レベルでの生理データからの推定など様々な

方法があるが、林分単位での NPPの推定のためには、現

在でも積み上げ法が最も良く使われる方法である(大塚

2008)。積み上げ法では、 fある特定の期間に新たに生産

された有機物の総量」として NPPを定義する (Clarket

al. 2001)。生産された全ての有機物の定量は難しいので、

実際の野外の森林生態系では、被食量が無視出来るレベ

ルであれば、ある一定期間のバイオマス増加量(L1B) と、

その期間の枯死・脱落量(L)の和 (NPP出L1B+ L)とし

て NPPを挽定する場合が多い(大塚 2005)。

一方で、、渦棉関法は、ほほ 1)アルタイムでの CO2吸収

量の推定を可能とし、 GPPや NEPの年々変動の測定と、

その要因の解析も盛んに行われている(例 え ば

Morgenstem et al. 2004 ; Saigusa et al. 2005)。従来の積み上

げ法は、過去の平均的な NPPを推定する事が主な目的で

あり、両者の時間スケールを合わせて相互検証が可能で

あるかどうか、また積み上げ法によっ の年々変

動の推定が可能であるかどうかなど、 IBPの時代にはな

かった新しい課題を検討する必要があった。

そこで、我々は、渦相関j去によるタワーフラックス観

測との連携を規野に入れて、まず TakayamaForestでの積

み上げ法による NPPの推定方法について検討した

(Ohtsuka et al. 2005) 0 NPPの推定において、枯死・脱落

はリタートラップ法によって測定が可能で、あるが、L1B

の測定にはいくつかの方法がある(木村(1976)に詳しい)0

林学的には、樹幹解析により成長量を推定し、試料水の

DBH一成長量アロメトリー式から森林全体の過去のL1B

を推定する方法が一般的である(樹幹解析法)。また試料

水の胸高での成長錐の解析から、過去の成長量を推定し

34

てDBH…成長量アロメトリー式を作成して、一閣の調査

から過去のL1Bを推定する方法もある(コアサンプリン

グ法)。一方で、向一地点で 2間以上の調査が可能であれ

ば、生きている木の成長量から寵接的にL1Bを推定する

事ができる(毎木調査法)。

Takayama Forestで 14本の試料木を伐採して、まず樹幹

解析法とコアサンプリングj去を比較した結果、前者の

DBH一成長量 (G) のアロメトリー (IogG = 1.683 log

DBH…1.941)よりも後者のアロメトリー(JogG = 1.336

log DBH -1.674) の傾きが小さく、樹幹解析法による

L1Bの推定値 (2.26tC ha-I yrつはコアサンプリング法(1.60

tC hピyr'l) の約1.51きとなった (Ohtsukaet al. 2005)。コ

アサンプリング法では、主幹がはっきりしない試料木に

おいて、 DBH-乾重アロメトリー式により推定したバイ

オマスが過小評価となり、結巣的に成長量も過小評価と

なることが一つの原悶であった(図1)。

このように、樹幹解析法は DBH一乾重アロメトリー式

を用いずに、林分構造の変化が投影された生長量を推定

できるので、過去の平均的なL1Bを推定するための強力

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樹幹解析法による推定した成長量 (kgyr-1)

図1. Takayama Forestで同じ試料水を用いて、樹幹解析法とコア

サンプリング法の二つの方法で推定した年間成長最の比較。

実線は 1:1ラインを示す。また、典型的な三つの試料木(SI-3)

の樹形を図中に示した。 SIとS2,立主幹のはっきりとしない

試料水で、 S3は主幹のはっきりとした試料水である。 S3は

ほぼ 1・1ラインに乗っているが、 SIとS2は樹幹解析法の方

が成長長の推定僚が大きくなっている点に注意。 Ohtsukaet

al. (2005)を改変。

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森林生態系の炭表循環

表1. Takayama Forestでの樹木NPPの年々変動のモニタリング(単位は tCha'l yザ)0 1999-2000年と 2004句2005年は、二年

間の王JZ均値を示す。

1999-2000 2001 2002 2003

木音JjNPP

地上部幹校 0.73 1.15 1.64 1.02

地下部太根 0.15 0.23 0.33 0.20

小言十 0.88 1.38 1.96 1.22

業 NPP 1.66 1.94 1.91 1.92

樹木NPP 2.54 3.31 3.87 3.14

なツールである。また渦相関法の観測データを積算する

によって樹幹解析法による推定値との相互検証は可能

だが、あくまで過去の平均的なLlBの推定であり、個体

の成長量の変動に基づいた NPPの年々変動を記述する

は出来ない。さらに、樹幹解析法では、自然の成熟林で

克られるような巨大木の枯死が起こるとLlBの推定に大

きな過小評価をもたらす。一方で、毎木調査法は、複数閣

の調査により樹木の生残を調べ、生きている個体と新規

に加入した偲体の成長量をそれぞれ推定する事が可能で

ある。 Clarket aI. (2001) は、この方法によって f生きて

いる樹木によってある期間の終わりに保持されている新

しい有機物の総量j として StandIncrement (バイオマス

純増加量)を以下のように定義した。

SI=I生存個体の成長量 +I新規加入個体の成長量

LlB = SI -I枯死個体のネクロマス +I新規加入個体の

バイオマス

Takayama Forestで毎木調査法によってLlBを推定した

結果、一年間の備であるが樹幹解析法による推定値と近

かった (2.38tC ha'l yr・1)。各幹の現存量の推定には、コ

アサンプリング法と同様に DBHー乾重アロメト 1)、一式を

用いているので、上述したように一部の個体について成

に過小評価がある。しかし毎木調査法は、コアサン

プリング法の様に試料木の DBH一成長量アロメトリー式

から森林全体のLlBを推定するのではなく、生きている

全幹について倒別に成長量を求めているので、森林全体

のLlBは大きく過小評価にはならないと考えられる O

Takayama Forestのような落葉広葉樹林では、リタートラ

ップによる葉の枯死脱落量は 100%当年生の生産量(葉

NPP) であり、さらに毎木調査法から推定した SIを樹木

の木部 NPP(地上部幹枝と地下部の太根の木部バイオマ

ス純増加量)とみなすことによって、樹木による年間の

NPP (表1)とバイオマス変動(図 2) のモニタリングが

2004-05 2006 2007 2008 2009 平均値 SD

1.10 1.23 0.82 0.95 0.96 1.07 :t 0.26

0.22 0.25 0.16 0.19 0.19 0.21土 0.05

1.32 1.47 0.97 1.14 1.15 1.28土 0.32

2.03 1.75 1.80 1.72 1.79 1.83土 0.12

3.35 3.22 2.77 2.86 2.94 3.11 土 0.39

35

可能となる。

いずれにしても、積み上げ法による NPPの推定のため

にはアロメトリーによる樹木の乾燥重量の正篠な推定が

最も重要なプロセスである。特に自然林では、樹形や比

重の異なる複数種の試料木が混じっていること、巨大*

を含まないアロメトリー式からの外挿が多い事などが問

題となり、近年になって様々な森林においてアロメトリ

ー式の再検討が行われつつある (Chaveet aI. 2005 ;

Keetrings et aI. 2001 ; Komiyama 2005)。特に小見山ほか

(20 II)は、樹種の比重を考慮して、巨大木も含んだ日本

の冷甑帯林樹木の僧体重を推定するための共通相対成長

式を作成した。今後このような式を用いる事によって、

積み上げ法による精度の高いLlBと樹木成長の年々変動

の推定が可能になる O

Takayama Forestでの土壌呼吸と分解呼吸の測定

土壌呼吸量の測定については、チャンパーを用いたア

ルカリ吸収法が従来の襟準的な方法であったが(摘出

1971)、赤外線ガス分析装龍(rRGA) の小型化などの技

術的な進歩もあって、野外での測定方法については、や

はりタワーフラックス観測の発展以降、再検討がなされ

てきた。土壌呼吸の測定手法やその鵠題点については本

論文では詳述しないので木部・鞠子 (2004)、莫・際)11(2005)

などを参照して欲しい。

Mo et aI. (2005) は、 TakayamaForestにおいて 1999年

から長期的な年々変動の推定のために、ブラックスタワ

ーの近くで IRGAを使った通気法 (Open-flowIRGA

method) を用いて定点で、のモニタリングを継続している

(現在は自動開閉式チャンパーを使用)0 1999年から 2002

年までの、 4年間の土壌呼吸の日変化及び季節変化のモ

ニタリングの結果から、深さ 1cmの土壌温度 (TJ に依

存した土壌呼吸量 (gCm'2 day'l) の経験式を作成した。

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大塚俊之

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関2. Takayama Forestでの勾木調査i去による森林の長期モニタリングo a は各バイオマスi!!IJ定期間で、の枯死偲体のネ

クロマスiitと、生きているillIT1本と車li規加l入俄体の成長長 (tCha守 yrぺ)を示している。ただし、 1999-2001年及び

2004-2006 iJ三の僚は 2iJ三郎の稼3主である (tCha'l 2 y{l) 0 bは、その結果としての森林バイオマス (tCha'l)の変

動を示す。 2001-2002年の問のように、生残f震体と新規加入個体の成長長よりも、枯死{閲体li1が多い;場合には森

林バイオマスは減少する。

Rs = ~ekTS (Ro =0.540, k口 0.133,r2 =0.84)

さらに、この式を用いてタワーの下での土壌視度の連続

測定から、年間の土壌l呼吸量を推定した結果、年々変動

は比較的小さく、 4年間の平均値は 8.54土 0.42tC ha'l yr‘!

と推定された (Moet al. 2005) 0 また、土壌呼吸量を空間

的にスケールアップするためには、定点での連続測定だ

けでなく、その空間的な変動を調べる必要がある。賀ほ

か (2003) は、永久方形区内のサブコドラート(10m X

10 m)ごとの 100点で、季館的に土壌呼吸速度を測定した。

この結果、土壌呼吸は地形に大きく依存しており、尾根

部では平均的に 15%程度土壊呼吸量が高く、谷部では低

い傾向が見られた。

バイオメトリック NEPの推定のためには、土壌中の従

属栄養生物の呼吸量と、独立栄養生物である植物の根の

呼吸量を分離する必要があり、様々な方法が知られてい

る (Hansonet al. 2000 ; Subke et al. 2006)。野外で生きた

まま根を掘り出し、インタクトな状態で根呼吸を測定す

る方法も開発されている (Dannouraet al. 2006 ; Bekku et

al. 2009)が、根バイオマスの季節変動や深さ方向を含め

た空間変動の問題から、根呼吸最の空間的なスケールア

ップは比較的難しいo Lee et al. (2003) は、 Takayama

Forestにおいて、根を除去したトレンチ処理霞を林内に

設霞する事によって両者の分離を試みた。トレンチ処理

区では根の枯死が多く発生するので、根のバイオマス

とroot-bag法による根の分解速度から、枯死した根の分

解によるブラックスを補正することにより、微生物呼吸

景を推定する事が司ー能となる O 生育期開において、土壌

呼吸に占める根の呼吸量の割合は 29-71%と季節的に変動

し、年間の土壌呼吸量に対する根呼吸量の割合を 45%と

推定した (Leeet a1. 2005)。

さらに、森林生態系では、樹木の枯死に伴って立ち枯

れ木や倒木のような比較的大きな木質リター (CWD,

coarse woody debris)が存在するのが特徴である (Hannon

et a1. 1986) 0 このような CWDは、菌類等により分解され

て CO2を発生しており、森林生態系の炭素収支の推定の

ために無視出来ない存在である (Jomuraet al. 2007 ; Liu

et a1. 2006) 0 しかし、 CWDは従来の土壌呼吸泌定用のチ

ャンパーに入らないこと、空間的に不均質に存在するこ

となどのため、バイオメトリック NEPの推定において現

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森林生態系の炭素循環

状では考慮されていない場合が多い。 TakayamaForestに

おいては、 CWDの分解呼吸最について大型チャンパーを

用いた野外での測定を進めており、倒木(立枯れ木を除く)

からの CWD分解呼吸量は約 0.2tC ha.1 y(lと推定され、

土壌からの微生物呼吸最に比べて比較的小さいブラック

スである事が分かつて来た(大塚ほか・未発表データ)0

しかし、 1998年の調査開始以降、 TakayamaForestでは枯

死木が多く発生して、 CWDの蓄積量は年々増加しており、

CWD分解プロセスの研究は今後の一つの大きな課題である。

Takayama Forestでのノfイオメトリック NEP

タワーフラックス観測との相互検証を考えると、 l}タ

ートラップ法と毎木調査法による樹木の当年生の有機物

生産量だけでは、生態系金体の NPPに対してだいぶ過小

評価となる。 TakayamaForestでの特に大きな

は、樹木綿根と林床ササ若手落の NPPである。地下部に貯

蔵器官を持つ、多年生草本の積み上げj去による生産量の

推定例は少ないが、西村ほか (2004) は 1993慣例年にか

けて、 TakayamaForestの林床クマイザサ群落の現存量の

変動と貯蔵器官の有機物動態について詳細な調査を行っ

た。この結果、地下部を含めたササ群落の NPPを 1.1tC

ha-1 y(lと推定し、森林生態系の炭素国定機能として無視

出来ない量である事を示した。また地下部の細根生産量

と枯死最について、 Satomuraet a1. (2006) は、ミニライ

ゾトロンを用いて、深度別および季節加の組根の動態を

詳細に調べ、樹木とササの細恨NPPを推定した。

Ohtsuka et a1. (2007) は、森林生態系のコンパートメン

トモデル (Kira1978:中根 1986) を用いて、これらの様々

な生態学的調査を韻み上げる事によりす'akayamaForestで

の5年間 (1999句 2003) の平均のバイオメトリック NEP

を推定した。綿根を含む樹木生産量 (NPPo) と林床ササ

群落 (NPPJ を合わせた全体の NPPは6.5tC ha.1 y(lと推

定されたが、現状では樹木の枯死量が大きくL1Bはわず

かに 0.3tC ha-I yr.1であった。地形的な補正をした全体の

土壌呼吸量は 7.1tC ha'1 yr-Iと推定され、根呼吸の割合か

ら土壌微生物呼吸量を推定すると 3.9tC ha'1 yr'lであった。

CWD呼吸については、 CWDブールを平衡状態とみなし

てCWD生産量 1 分解呼吸量 (0.5tC haぺyr・1)と仮定し、

この森林の NEPを2.1tC ha-1 yどと推定した(図 3)。

バイオメトリック NEPは、同じ 5年間の渦相関法NEP

(2.8 tC ha-1 yrつより小さい値となったが、比較的良い一

致を見た。一方で、 TakayamaForestの平均の木部 NPPは

1.28 tC ha-1 yrぺに過ぎず(表 1)、タワーフラックスで推

37

図 3. Takayama Forestでのコンノfートメントモデルと炭素循環。

矢印は王手間のブラックス (tCha-1 yrぺ)を示し、各プールrl1

の数値はフラ yクスの収支から言i針:したプールの年間変化fif(tC ha.1 yr'l)を示す。 Ohtsukaet al. (2007)を改変。

定した炭素吸収量の半分程度しか樹木に蓄積していない。

また、林床ササ群落はほぼ被度 100%であり、バイオマ

スが増加するとは考えにくい。つまり、樹木の地上部リ

ターだけで無く、ササ NPPや樹木の綿根の枯死量を土壊

有機物 (SOM,soi1 organic matter)へのインフ。ットとする

と、従属栄養生物呼吸とのバランスとして SOMに比較的

多くの炭素が蓄額する (0.8tC ha-I yど)事が示峻された。

バイオメトリック NEPの年々変動

このような、バイオメトリック法による土壌呼吸量と

樹木 NPPの長期モニタリングは、 i品相関法によるタワー

フラックス観測と連携して、 NEPの年々変動とその要閣

の解析を可能にした。 NPPの年々変動の測定は、現状では

縮根を除く樹木 NPP(表 1) についてだけであり、ササ

NPPのそニタリングは労力が多く継続されていなし、。そこ

で、樹木細根(1.8tC ha-1 y(l) とササ(1.1tC ha-1 yr'l)の

NPPを一定と仮定し、さらに地温のそニタリングから土

壌呼吸量を推定し、根呼吸の割合は変動がないものとし

て微生物呼吸量 (Rh) の年々変動を推定した。これらの

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O

大塚俊之

一0- Rh

.-1翻・ j両相関j去NEP

-e一葉NPP

-.-木部NPP

'99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09

図4.Takayama Forestでのバイオメトリック法による樹木NPPと微生物呼吸量(財)、及びi品格|お法NEPの

年々 変動。 1999-2000年と 2004-2005年の備は 2年間の平均値を用いている。 Ohtsukaet a1. (2009) に最

新のデータを迫力日して改変した。

4

qu

円/」

LKA--mtoH)門出之梢…腿嬰隆一

@

R2 = 0.69

0.5 1.5 2

木部NPP(tC ha-1 yr悶 1)

2.5

図5.Takayama Forestでのバイオメトリック法による木部NPPと、

渦粉|羽法による NEPの相tMj0 1999-2000年と 2004-2005年の

2年間の平均値データは除いて、それ以外の年の年i均値を比

絞している。 Ohtsukaet a1. (2009)に最新のデータを追加し

て改変した。

データを用いて、 i品相関法と比較出来るバイオメトリッ

ク法で定量可能な年間の炭素吸収量 (NEP*) を以下の様

に定義した。

NEP*=樹木NPP+(1.8十1.1)一回1

バイオメトリック NEP若者と渦桔関法の NEPのある年で

の差異は 55%から 105%まで変動したが、比較的良い一

致があった (Ohtsukaet al. 2009)。また樹木の木音[¥NPPは

0.88-1.96 tC ha.1 y(1と大きく変動を見せたが、業 NPPと

Rhは比較的に変動が小さかった(図的。結果的に、年間

の木部 NPPは渦相関法による NEPと有意な正の相関が

あった(図 5)0 この事から、 TakayamaForestでの NEP

の変動は、従属栄養生物の分解呼吸量の変動ではなく、

独立栄養生物の生産量の変動によって説明出来る事を、

野外のデータから初めて明らかにした。

一方で、木部 NPPとNEPがパラレルに変動して正の

相関を見せるにも|努らず、各年の樹木幹校への炭素蓄積

を意味する木部NPPはNEP(生態系金体の炭素蓄積量)

よりかなり小さい(図 5)。この事は、 TakayamaForestで

の渦相関法とバイオメトリック法による炭素循環の長期

モニタリングから、 CWDや SOMのような非公三物的炭素

プール (detritusプール)へのコンスタントな蓄積を示唆

するものである。特に、森林の SOMプールへの蓄額速度

についてのレビュー (Postand Kwon 2000)では、平均で 0.3

tC ha-I yr-I、最大でも 1tC ha-I yr-Iを超え無いことから、

Takayama Forestで推定された 0.8tC ha-I yr-I (図 3) は、

かなり大きな伎である。 SOMの蓄積速震が大きい点につ

いては、土壌呼吸の面的なスケールアップや地下部の枯

死量の推定など、手法的ないくつかの間題も残されてお

り、今後の重要な課題である O

さらに、年々の樹木の成長量は、種や個体サイズによ

っても異なり、*部NPPの大きな変動要因についても今

後の検討課題である O 例えばコスタリカの熱帯南林では、

木部 NPPの年々変動が長期に渡ってモニタリングされて

おり (Clarket al. 2003)、乾季の降水量や夜間の平均気温

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森林生態系の炭素循環

表2.Takayama ForestとHarvardFor巴stのNEPと災索循環の比較(単位は tCha-J yrつ。データは

Barford et al. (2001), Ohtsuka et al. (2007), Saigusa et al. (2005)から引用。表中の()内の

数字は、測定年を示す。

Forest

2.4 (19ヲ4-2002)

が NPPの変動を決定する事が明らかになっている (Clark のスケールアップのための強力なツールでもある(1to

eta1.2010)0 2008)0一方で、、より中・長期的な時間スケールでの変動

の理解のためには、炭素循環に関する生態学的なプロセ

ス調査が不可欠である O 例えば、 21世紀中に地球の温毘

は1.0~ 3.5t程度上昇すると予測されており(rPCC

2001)、50~ 100年程震の時間スケールでの温暖化に対

する陸上生態系の応答に注目が集まっている (Shaveret

aI. 2000)。特に土壌有機物 (SOM) は、地球上のバイオ

マスと大気中の CO2を合わせたよりもその量が多く

(Jobb勾yand Jackson 2000)、j昆媛化に対ーするフィードパ

ックが地球規模での炭素循環にどのような影響を与える

か注目されている(例えばDavidsonand Janssens 2006 ;

NEP

ノ、fイオメトリック NEP

生物的ブール

ムバイオマス

非生物的プール

ムCWD

ムSOM

十0.3

ハリ

06-21

11nU

一44

炭素循環研究の今後の方向性

1990年代に始まったタワーフラックス観測の爆発的な

発展は、 IPCCの指摘したミッシング・シンクの解明と、

京都議定書の約束期間の時間スケールにおける、陸上生

態系の炭素吸収量の科学的な評価がひとつの目的であっ

た (Wofsy2001)。微気象学的な渦柑関法は、バイオメト

リック法との比較検討 (Blacket al. 2005 ; Curtis et al.

2002 ; Ehman et al. 2002 ; Gough et al. 2008 ; Kominami et

al. 2008 ; Ohtsuka et al. 2007 ; Peichl et al. 2010) などを通

して検証が進み、生態学的な新たな研究手法として確立

してきた。もちろん、両手法共に手法特異的なエラーは

依然として存在しており (Peichlet al. 2010)、現段階で両

手法を比較して NEPの真値について議論する事はあまり

意味が無い。むしろ、ニつの独立の手法によって両者の

値の精度を検証しつつ、それぞれが得意とする生態学的

な現象の解明に向かうのが今後の方向と思われる O

炭素は生態系のどこにどのように蓄積するのか

NEPの短・中期スケールでの時間変動と空間的変動に

ついての理解は、微気象学的フラックス観測のネットワ

ーク (TheFLUXNET Project)の世界的発展により飛躍的

に進んだ。例えば、アジアフラックス (AsiaFlux,http://

asiaflux.net/、 2012年 I月20B確認)のデータを使ったメ

タ解析では、夏の水分ストレスがほとんど無い東アジア

の龍上生態系では、 PARと気j昆を変数として ReとGPP

の持問的・空間的変動が説明出来る (Hirataet al. 2008 ;

Kato and Tang 2008) 0また FLUXNETデータの蓄積は、モ

デルを介在することにより陸上生態系金体の炭素吸収量

Harvard F orest

2.0

十1.0

Fontaine et aI. 2007 ; Giardina and Ryan 2000 ; Melillo et al.

2002) 0

このように、生態系内での炭素の滞留時間とゆ・長期

的な環境変化に対するフィードパックは、炭素プールの

場所によって全く異なるので、単なる収支としての炭素

吸収量の評価ではなく、生態系の「どこ」に「どのように」

炭素が蓄積するのかをきちんと理解する事が不可欠であ

る。一般的に森林生態系では、材積成長の結果として樹

木個体に多くの炭素が蓄積すると考えられてきた。例え

ばHarvardForest での渦相~司法とバイオメトリック法によ

るNEPの比較の結果 (Barfordet al. 2001)、耕作放棄地で

あるこの森林のバイオマスは成熟林の 80%程度であり、

NEEの約 70%が樹木に蓄積されていた (Barfordet al

2001) 0

一方で、 TakayamaForestも薪炭林放棄後の二次選移途

上の森林で、バイオマスは成熟したブナ林の半分程度で

あるにもかかわらず、現状ではほとんど増加していない

(図 2)。このように、同じ冷温帯性の二次林である

Harvard ForestとTakayamaForest は、 NEEとしては問手皇

度であるにも関わらず、炭素が蓄穣する場所が大きく異

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大塚俊之

なっており(表 2)、今後の環境変動に対する生態系の反

応は全く異なったものになるであろう O このような、両

者の炭素循環の違いは、林床ササ群落の存在によって、

リター最が増加したり、ブナ林への遷移プロセスが盟害

されたりしていることが一つの要因かも知れない。

また、TakayamaForestでの高い SOM蓄積速度の検証は、

現在進行中の課題である。 AMS(Accelerator Mass

Spectrometry =加速器質量分析計)技術の進歩は、核実験

由来 14Cを用いて SOMの滞留時間を推定する新しい研究

手法をもたらし (Gaudinskiet al. 2000)、TakayamaForest

でも土壌の 14Cインベントリーを行っている (Kondoet al.

2010)。この結果、低比重画分であっても滞留時間が2000

年を超えるような古い有機物が蓄積しており、 14Cインベ

ントリーから推定された蓄積速度は 0.71tC ha" yr'lであ

った(内田ほか・未発表データ)。これは、我々の生態学

的な調査からの推定値とほぼ同等で、 HarvardForestで問

じ手法で推定された値 (0.2会 0.1tC ha" y{l, Gaudinski et

al. 2000) の三倍以上である。現状でも TakayamaForestの

SOMプールは、深度 1mで 300tC ha'lを超えている (Jia

and Akiyama 2005)。このような在大な SOMプールは日

本の黒ボク土の典型的な特性であり (Morisadaet al

2004)、腐槌を蓄積する能力が高いという土壌そのものの

持つ有機化学的特性 (Nanzyo2002)が、 TakayamaForest

の炭素蓄積速震に大きく影響している可能性もある。

このように、森林生態系内の生産物の分配と滞留時間

が仰によって決定されているかを明らかにする事は、今

後の炭素循環研究の重要なテーマであろう。各気候帝の

棺生での比較生態学的な研究が必要だが、気候と植生の

違いだけでなく、ササ型林床の有無や土壌タイプの違い

(例えば、褐色森林土か黒ボク土か)についても考慮する

必要がある O

遷移に伴う炭素循環の変化

もう一つ、今後の炭素循環訴究に必要な祝点は、選移

的な植生動態の影響である。 NEPに対する林齢の効巣

(age-巴ffect) に関する、タワーフラックス観測によるクロ

ノシーケンス研究は近年増加してきている (Clarket al.

2004 ; Litvak et al. 2003 ; Nooffilets et al. 2007)。一般的に

撹乱痕後の森林は大きな炭素の放出源となるが、植生の

発達に伴い NEPは自律的に増大する (Takagiet al. 2009 ;

Zha et al. 2009) 0 Magnani et al. (2007) は、このようなク

ロノシーケンスデータを用いて NEPへの林齢の影響の経

験式を作成し、様々な林分のこ閣の撹乱の陪の平均的な

NEPを算出した (NEPaJo この結果 NEPavは、 NEPのピ

40

ークのわずか 56%に過ぎなかった。現在では、過去の人

為的影響が大きい温帯林が、 20世紀末の炭素吸収源とし

て大きな機能を持っていた背景には、耕作放棄地や植林

後の森林の発達に伴う生産量の囲復が大きく寄与してい

ると考えられている (Goodaleet al. 2002) 0このように遷

移に伴う物質生産と NEPの変動研究は、地球規模での炭

素循環を考える上でも非常に重要である O

植生の発達に伴う NPPの変化については、単一種の問

齢林である人工林において IBPの時代から研究が行われ

てきた。一般的に NPPは林分の発達段階初期に急速に増

加し、林齢が 30-50年で葉面積が最大になるのと同時に

NPPも最大に達して、その後減少するという大きな変化

が見られる (Ryanet al. 1997 ; Smith and Long 2001) 0 NPP

の林齢に沿った減少は、成長した木部の維持呼吸量が大

きくなることがその原因と考えられてきた (Kiraand

Shidei 1967)0 しかし、近年の研究によって、林齢に伴う

林分の葉面稽の減少が樹木成長量の低下をもたらすこと、

偲々の樹木の老化による通導特性の変化や栄養塩利用効

率の低下により光合成能力が低下することなどがその原

因と f陸J高されている (Binkleyet al. 2002 ; Gower et al.

1996)。

一方で、植生選移と関連した NEPの時間的変動に関す

る生態学的な研究は、まだ始まったばかりである。只木

ほか(1988) のブナ林における炭素循環の先駆的な研究

では、老齢林では壮齢林によヒベて土壌呼吸量は大きかっ

たが、 NPPは小さくなる事を明らかにし、平衡状態に近

いと述べている。このように従来は、生態系の発達に伴

って NEPは減少し、やがて GPPと生態系呼吸はバラン

スして NEPがOとなるか、あるいは維持呼吸の増加によ

り、炭素の放出源になると考えられてきた (Goweret al.

1996 ; Ryan et al. 1997)。しかしながら、近年の研究では、

Old-growth forestが炭素の吸収源となっているという証

拠が増加しつつある (Luyssaertet al. 2008 ; Zhou巴tal.

2006)。

Takayama Forest周辺でも、林齢の異なる二次林でのモ

ニタ 1)ングを開始している O 例えば放棄後 18年生の森林

では、樹木の成長量が大きく枯死量が少なくてLlBが2.5

tC ha" yピ1と非常に大きかった。一方で玉、リター量に対し

て土壌呼吸量が相対的に大きいために TakayamaForestに

比べて NEPが小さくなった (0.9tC ha" yr'l, Ohtsuka et al.

2010)。しかし同じ地域でも、撹乱のタイプ(例えば耕作

放棄地か森林伐採地か)や地形的な位置によっても二次

遷移パターンは大きく異なる (Ohtsukaet al. 1993 ;大塚

1998)。この冷温帯性の 18年生林分は、 TakayamaForest

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森林生態系の炭素循環

之標高や地形は微妙に異なり、ササ型林床を持たなし

から、クロノシーケンスとして直義的に比較する事は難

しい。また、天然林の吏来Irのような研究に比べて、薪炭

林のような入手が加わった二次林の遷移に関する植生生

態学的な研究もまだ十分ではなく、遷移的動態と炭素循

環を長期的にモニタリングするようなサイトが必要であ

る。

日本の大部分の森林は、拡大造林政策による人工林化

と、化若燃料への燃料革命による薪炭林の放棄という大

きな出来事を 50-60年前に経験しており、現在の森林の

状況に大きな影響を与えている。森林生態系の NEPは、

気候変化に起困するだけでなく森林構造そのものの自律

的な変化に起因して変動する。見捨てられた人工林の衰

退と二次林の遷移は、今後数十年の時間スケールで炭素

循環に大きな変化をもたらすであろう。今後の気候変動

による陸上生態系への影響とそのフィードパックを理解

するためには、森林動態、に伴つ中長期的な炭素循環の変

動についてのモニタリングが不可欠で、ある。

このように、炭素循環研究における次のテーマは、「炭

素が、生態系内のブール(特に非生物的プール)にどれ

だけの量、どれだけの期開に渡って蓄積されるのか」と

いう点にある。このためには、1)平衡状態の各植生帝に

おいて、炭素プールの滞留時間がどの桂度異なるか、 2)

非平衡状態(撹乱や土地利用変化後)における遷移は、

プールへの分配と滞留時間にどのような影響を与えるの

か、という二つの規点からのアプローチが必要で、ある O

謝辞

Takayama Forestは、多くの生態学者の条約的研究と、

気象学や地球科学などの他分野との共同研究と言う点で、

初めて経験する非常に刺激的なサイトであり、夜、が研究

に関ってからあっという間に 10年が過ぎてしまった。ま

ず、この萌究グループに入るきっかけを頂き、長年にわ

たって叱陀激動を理いた早稲田大学の小泉博教授には、

特に深い感謝の意を表したい。このサイトは元岐阜大学

流域科学研究センターの西村格教授と、元産業技術総合

研究所の山本音樽士のおこ人により、徴気象学的研究と

生態学的所究が開始され、その後本稿で引用した研究以

外にも膨大な研究成果がある O 全ての関係者の名前を謝

辞としてあげる事は難しく、個人的には今回の大島賞は

高山グループに与えられたものと考えている。ただ、長

年に渡って(現在も)モニタリングを共にしてきた、国

立環境研究所・三枝信子博士と農業環境技術研究所・莫(岸

41

本)文紅博士の存在は、私の研究継続の大きな力となり

ました。また毎年!笠例の TakayamaForestでの毎木調査に

は、学生諸君など多くの人にお世話になりました。最後に、

岐主主大学・高・山試験地での快適な研究環境と長期モニタ

リングの継続は、技官さんの力無しには成し遂げられな

い。特に牽戸憲二氏と宮本保則氏の二人に感謝したい。

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