産業の発生と発展産業の発生と発展:: マレーシア...

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©Ken Togo Musashi University Working Paper No.8 (J-4) マレーシア マレーシア マレーシア マレーシア・プラスチック ケース ・プラスチック ケース ・プラスチック ケース ・プラスチック ケース 2003 5 28 蔵大学) * ローカル って したマレーシア・プラスチック から るま するこ における および メカニズムについて1つ するこ する。 、マレーシア・ プラスチック ある「 益」を した あり、 じた spill over が、 レーシア ある ころ 割を たした らかにした。 する される が、 パフォーマンスに して えてい いこ した。 によるフィールド・リサーチ をベースにしてい る。 * C(1)「アジア :アジア づく 」、( ) 「アジア における 」、および 大学 によって われた。フィールド・リサーチ して Malaysian Industrial Development Authority Mr. Lim Hock GuanMalaysia Plastic Manufacturers Association Ms. Giam および Ms. Kok から 援を いた。また、フィールド・リサーチ および について (FASID)アドバイスを いた。また,大学 セミ ナーにおける 々、 (一 大学)、 (一 大学)、 大学) から コメントを いた。 せて、ここに して感 します。 するコメント、 わせ e-mail: [email protected]せられたい。

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©Ken Togo

Musashi University Working Paper

No.8 (J-4)

産業の発生と発展産業の発生と発展産業の発生と発展産業の発生と発展::::マレーシアマレーシアマレーシアマレーシア・プラスチック射出成形産業のケース・プラスチック射出成形産業のケース・プラスチック射出成形産業のケース・プラスチック射出成形産業のケース

2003年 5月 28日

東郷 賢(武蔵大学)*

<要約>

 当研究はローカル企業が中心となって発展したマレーシア・プラスチック射出成形産業

の発生から現在に至るまでの過程を分析することで、途上国における新産業の発生および

発展のメカニズムについて1つの事実を提供することを目的とする。本稿は、マレーシア・

プラスチック射出成形産業の発生は途上国である「後発性の利益」を享受したものであり、

発展の初期段階では人の移動を通じた技術の spill over が、発展の2段階目では今日のマ

レーシアの代表的産業であるところの電気機器産業の「後方連鎖」効果が重要な役割を果

たした事を明らかにした。更には、近年の経済成長に関する研究で重要性を指摘される教

育年数や立地が、当該産業の企業パフォーマンスに関しては有意な影響を与えていないこ

とも統計的に示した。当研究は筆者によるフィールド・リサーチの結果をベースにしてい

る。

* 当研究の一部は文部科学省基盤研究(C)(1)「アジア諸国の産業・貿易構造と経済成長:アジア長期経済統計に基づく実証研究」、(財)日本経済研究所「アジア諸国における経済発展と産業・貿易構造」、および武蔵大学総合研究所の研究助成金によって賄われた。フィールド・リサーチの実施に関してはMalaysianIndustrial Development Authority のMr. Lim Hock Guan、Malaysia Plastic ManufacturersAssociation のMs. GiamおよびMs. Kokから絶大なる支援を頂いた。また、フィールド・リサーチの実施および当論文の内容については園部哲史氏(FASID)に有益なアドバイスを頂いた。また,一橋大学のセミナーにおける参加者の方々、特に深尾京司氏(一橋大学)、黒崎卓氏(一橋大学)、澤田康幸氏(東京大学)から有益なコメントを頂いた。併せて、ここに記して感謝致します。本稿に関するコメント、問い合わせは e-mail: [email protected]まで寄せられたい。

1

1.1.1.1. はじめにはじめにはじめにはじめに

 多くの途上国において、製造業の育成は重要な課題である。相対的に生産性の高い製造

業を拡大し、国全体の生産性を高めることで、生活水準を上昇させることは多くの国で目

標とされる。しかしながら、製造業の発生および発展がどのようなプロセスで行われるか

は、最近まで殆ど明らかになっていない。産業の発展メカニズムについて先駆的な研究を

行った Schumpeter(1912)は、新しい財の生産や新しい生産方法の採用など、彼が「新結

合」(new connection)と呼んだものが非連続的に現れるときに発展に特有の現象が成立

すると言っているが(塩野谷・中山・東畑 邦訳 1977, pp.182-83)、その新結合が誰によ

ってどのようなプロセスで生じるかについては具体的に明らかにしていない。その後今日

までこの分野での研究の蓄積はごく僅かである。

 その理由は、産業の発生時および発展の初期段階についてはサンプルとなる企業数が少

なく、公開されるデータも殆どないからである。従って、産業の発生・発展の初期につい

てはフィールド・リサーチをベースとした質的な分析が中心とならざるを得ない。フィー

ルド・リサーチの重要性は最近になって漸く認識されてきたが(e.g., Helper 2000)、時間

やコストがかかることなどから現在でもフィールド・リサーチは少なく、台湾と韓国の製

靴業について分析した Levy(1991)、韓国と台湾の情報産業について分析した Levy and Kuo

(1991)、あるいは台湾の工作機械について分析した Sonobe, Kawakami and Otsuka(2002)、

戦争直後の日本や最近の中国における縫製業の集積形成に関する事例研究(Yamamura,

Sonobe, and Otsuka, 2003; Sonobe, Hu, and Otsuka, 2002)などが僅かにある限りであ

る。

 本稿では、途上国における製造業の発展メカニズムを解明するために、マレーシアのプ

ラスチック射出成形企業を対象とした独自のフィールド・リサーチにもとづいて質的およ

び計量的な分析を行う。1980年代以降、日米欧の資本の導入を軸として急速な工業化を遂

げたマレーシアでは、近年になって外国系企業の退出が始まっている。その傾向は主力産

業である電気電子産業において特に著しいと言われている。その原因は、1980年代後半か

ら 90 年代後半のアジア通貨危機にいたるまでの高度成長によって賃金が高騰したこと、

賃金の低い中国やベトナムなどで日米欧の企業が立地するための条件が整備されてきたこ

と、それに対抗するだけの好条件をマレーシアが提示できないことにある。マレーシアで

は道路や港湾など物的な産業基盤こそ整備されているが、電気電子産業のための部品加工

などを担う基盤産業あるいは裾野産業と呼ばれる部門は発達していない。そのため、日系

企業で行った聞き取りによれば、賃金だけでなく部品調達コストもマレーシアの方が中国

の沿岸部よりも高いと目されている。

 しかし、プラスチック射出成形産業は、例外的に地場の企業が中心となって発展を遂げ、

とくに電気電子産業向けのプラスチック部品を外資系企業に供給している地場企業の中に

は急速な成長を遂げているものもある。外国資本に大きく依存しながら途上国が工業化を

遂げるケースは、マレーシア経済だけに限ったことではない。そうした経済において、地

2

場の基盤産業がどのようにして育ち得るのかは、これまでほとんど研究されてこなかった。

本稿はこの点に焦点を当てた数少ない研究の一つである。

本稿の分析は、マレーシアの工業発展を独自のフィールド・リサーチによって収集した

1次資料に基づいていることに加えて、次のような特色を持つ。第1は、マレーシア・プ

ラスチック射出成形産業における新結合は、それまでの家庭用品の生産から電気機器部品

の生産への転換が相当すると思われるが、この新結合が誰によって行われ、その後どうい

うプロセスを経たのか具体的に明らかにしたこと。第2は、近年の経済成長の研究におい

て度々指摘される教育や立地の重要性について、具体的な事例をもとに統計的な分析を行

ない検証していることである。

 以下、次節においてマレーシアのプラスチック産業の発展を概観し、3 節では我々のフ

ィールド・リサーチをベースに射出成形産業の発生及び発展メカニズムについて分析する。

最後に本研究のまとめを行い、今後の研究課題について触れることとする。

2.2.2.2. マレーシアマレーシアマレーシアマレーシア・プラスチック産業・プラスチック産業・プラスチック産業・プラスチック産業

2.1.2.1.2.1.2.1.  プラスチック産業発展の概観  プラスチック産業発展の概観  プラスチック産業発展の概観  プラスチック産業発展の概観

 我々の調査によれば、マレーシア・プラスチック産業の発生は 1950 年前後と考えられ

る。マレーシア・プラスチック産業のパイオニアの一人である Mr. Yong Kam Fook が会

社を設立したのは 1950年である。Yong Kam Fook社の企業プロフィール冊子によれば、

Mr. Yongは自らMonky machineと呼ばれる手動式の射出成形機を考案し、プラスチック

家庭用品の成形を始めたとされる。当時は射出成形に使う原料も入手が困難であったため、

Mr. Yong はプラスチックの櫛を溶かし原料にしたと言われている。Othman and Yeoh

(1986)は 1950 年代の始めのマレーシアにおけるプラスチック産業は、ごく僅かな生産

者がそれこそ自分の家の裏庭で生産するような小規模な産業であったと報告している。

 我々のヒアリングによれば、1970年代の初めでもある程度の規模を持つプラスチック製

造企業数は限られたもので、前述の Yong Kam Fookの他はUnited Plastics, Tiong Seng,

Lam Sengなど数社のみであったとされる。

 マレーシアにおける工業センサスは 1959年、1963年、1968年、1973年、1981年、1993

年について行われており、以下ではセンサスのデータをもとにプラスチック産業の発展を

概観することとする。なお、参考のために製造業全体と今日ではマレーシアの代表的産業

となった電気機器産業についても併せてデータを紹介することとする1。

 1959年のセンサスでは、プラスチック製造は All Other Industriesに分類され、まだ個

別のデータは存在しない。このことから見ても 1950 年代ではまだプラスチック産業がご

1 センサスにおいて 1993年の雇用者数が無給の家庭内労働者なども含むのに対し、それ以前は給与支給者のみが対象であったり、電気機器産業の分類が 1973年以降とそれ以前で異なっていたりなど、厳密な比較は困難であることをあらかじめ了承されたい。

3

く限られた生産活動しか行っていないことが伺える。

 1963 年のセンサスでは、プラスチック製造業は Miscellaneous Manufacturing

Industries (Industrial code 49)に分類されているが、この分類に属するのはプラスチック

産業だけであるために個別のデータが利用可能となっている2。1963 年におけるプラスチ

ック産業の企業数(number of establishments)は 27 社である。マレーシア全体で製造

業企業数が 8,546社であったことから全体の 0.3%にも満たない。雇用者(パートタイム含

む)は 657人であった。これもマレーシア製造業全体の雇用者の 0.84%でしかない。

表 1: マレーシア製造業におけるプラスチック産業と電気機器産業

1963 1968 1973 1981 1993Number of

Establishments

Manufacture of Plastic

Products27 76 299 658 1,111

Manufacture of Electrical

Machineryn.a. 37 109 281 787

Malaysia Total 8,546 9,013 11,060 20,429 23,462Number of Employees Manufacture of Plastic

Products657 1,949 8,702 17,700 59,942

Manufacture of Electrical

Machineryn.a. 1,454 25,317 79,607 338,772

Malaysia Total 77,853 130,257 278,935 556,414 1,266,727

(出所) Census of Manufacturing Industries, various years

(注)産業分類の構成及び従業員数の定義は年によって異なるため、厳密な比較は出来ない。

 1968 年になると、プラスチック産業の企業数は 76 社、雇用者数は 1,949 人へと増加す

る。この年から電気機器産業のデータも利用可能となるが、この時点ではまだ企業数、雇

用者数においてもプラスチック産業を下回っている。

 1973年のセンサスに拠れば、プラスチック産業に従事する企業は 299社、雇用者数(パ

ートタイム含む)は 8,702人で製造業全体の 3%の雇用者を占めるまでに成長した。5年間

で、企業数で見ると 4 倍近く、雇用者数で見ると 4 倍を越える成長である。当時最も売上

の多い製品はポリエチレン袋(polythene bags)で 361 万リンギ、2 番目がプラスチック

家庭製品(plastic household wares)で 110万リンギであった。プラスチック全体の売上

は 1,327万リンギである(Census 1973, p.286)。

 1973年のセンサスでは、フルタイム雇用者数で分類した企業数データも利用可能である

が、フルタイム雇用者数が 20 人未満という企業は 299 社中 221 社と 74%を占め、1970

年代初めにおいてもまだプラスチック産業の多くの企業が小規模なものであったという上

記我々のインタビュー結果の確認が出来る。

  1973 年の電気機器産業企業数は 109 社とプラスチック産業よりも小さいものの、雇

用者数は 25,317 人とプラスチック産業を大きく上回っている。マレーシアの電気機器産

4

業で主要な生産者である日系電機メーカーのマレーシア進出(操業開始)年が、Matsushita

Electric(電気器具の製造)が 1965 年、Hitachi Semiconductor(半導体の製造販売)が 1972

年であることから(東洋経済新報社 2001)、この時期から日系電機メーカーのマレーシ

ア進出が多くなってきたと考えられる。

 1981年になると、プラスチック企業は 658社に増加し、雇用者数も 17,700人へと 1973

年に比べれば 2 倍以上増加した。その後もプラスチック産業は引き続き成長し、1993 年

には企業数が 1,111 社に達し、雇用者数(無給の家庭内労働者なども含む)も 59,942 人へと

増加した。雇用者数の製造業全体に占めるシェアは 4.7%にまで増加している。

 一方、電気機器産業は 1981 年から 1993 年にかけて急速に成長し、企業数は 3 倍近く

の 787社、雇用者数は 4倍を越え 338,772人となった。雇用者数は実に製造業全体の 26.7%

に達している。

 1993 年以降のセンサス・データは発表になっていないが、Malaysia Plastic

Manufacturers Association (MPMA)の資料によれば、2001 年のプラスチック企業数は

1,300社に達している(Giam 2002)。

 上記からマレーシア・プラスチック産業は 1950 年以降着実な成長を遂げてきていること

が分かる。また、現在マレーシア製造業の中心となっている電気機器産業は 1960 年代後

半から発生し、特に 1981年以降の成長が著しいことも分かった。

 また最近では、サーベイ・データを基にマレーシア製造業の Total Factor Productivity

(TFP)の計測も行われており、1988 年‐92 年のプラスチック産業(国内企業)の TFP 成

長率は年率 0.75%(Menon 1998, p.271)、1992年‐96年のプラスチック産業(国内企業)

の TFP成長率は年率-1.7%(Oguchi et al. 2002, p.222)と報告されている。TFPの計

測はあくまで残差(residual)を計算しているという意味で、資本ストックの稼働率など

が大きく影響するなど、その結果は注意して利用する必要がある。更に、上記 2 研究が使

用している Survey データは、1994 年以前はある一定の雇用者数を持つ企業のみをカバー

したものであり、1995年以降はサンプル調査となっている点にも留意する必要がある。し

かし、上記 2 研究の結果が示しているように、もしマレーシア・プラスチック産業の生産

性が低下しているのが現実だとすれば、それは生産性の低い企業が数多く参入してきたた

めという可能性がある。プラスチック産業は、我々が訪問した企業だけでも従業員数 20

人以下の小企業から 1400 人を超える大企業までが混在していた。同じような電気電子部

品向けプラスチックを生産していながら、フル稼働で生産している企業がある一方で、そ

うでない企業もあった。プラスチック企業の成功例を見て、当該産業への新規参入企業の

数が増えれば増えるほど、産業全体の生産性が低くなっていた可能性はある。

2.2.2.2.2.2.2.2. マレーシアマレーシアマレーシアマレーシア・プラスチック・プラスチック・プラスチック・プラスチック産業の特色産業の特色産業の特色産業の特色

2 プラスチック産業個別の産業コードは 4940。

5

(1)(1)(1)(1) 自国民が主体の産業自国民が主体の産業自国民が主体の産業自国民が主体の産業

 我々のインタビューでは、マレーシアのプラスチック産業は地場の企業が中心となって

発展しているとの意見を良く聞いたが、その主張を裏付けるデータとして 1973 年のセン

サスが利用可能である。1973年のセンサスでは所有者国籍別のデータが公表されている。

 マレーシアのプラスチック企業 299社のうちマレーシア人が所有の企業は 279社(全体

の 93%)である。付加価値額で見てもプラスチック産業全体の生産額 4 千 4 百万リンギ

のうち、マ-レシア人所有企業の付加価値額は 3千 6百万リンギと全体の 81%に及ぶ。

一方、電気機器産業では企業数 109 社のうちマレーシア人による企業数は 69 社と全体

の 63%に及ぶものの、付加価値額で見ると電気機器産業全体の生産が 1 億 8 千 8 百万

リンギであるのに対し、マレーシア人所有の企業の生産額は 2 千 3 百万リンギと 12%

に満たないことがわかる(Census 1973, p.284 及び p.395)。

 それ以降のセンサスでは所有者国籍別の企業数データが公表されていないため、そ

の後の状況はわからないが、少なくとも 1973 年というプラスチック生産の発展初期段

階においてマレーシア人が中心となっていたこと、および電気機器生産は 1973 年とい

う初期の段階から外国人所有企業の生産活動が中心となっていたことがわかる。

(2)(2)(2)(2) 電気産業との関連が強い電気産業との関連が強い電気産業との関連が強い電気産業との関連が強い

    後で触れるようにプラスチック産業は電気機器産業との関係を深めることによって大き

く発展してきた。上述のとおり 1973 年の段階ではポリエチレン袋や皿やバケツなどの家

庭用品が生産品の殆どであったが、その後は電気機器部品の生産が増えている。Malaysian

Industrial Development Authority(MIDA)に拠れば、1989 年以降電気電子産業の投資増

加によりプラスチック産業への需要は急激に上昇し、1992 年時点では 20%が電気電子部

品(electrical and electronic parts)の生産になったと報告されている(MIDA 1993, p.14)、

現在では電気電子部品の生産はプラスチック生産全体の 3 分の1近くまで増加していると

言われている(MIDA東京事務所でのヒアリングより)。

2.3.2.3.2.3.2.3. プラスチック産業の種類プラスチック産業の種類プラスチック産業の種類プラスチック産業の種類

 次に我々のテーマである射出成形産業の特徴について理解するために、プラスチック産

業の生産方法別分類について簡潔に紹介することとしたい。これは一口にプラスチック産

業といっても、生産方法によって必要資本量、技術水準、製品の種類が大きく異なるため

である。プラスチック生産方法の代表的なものとしては、射出成形(Injection Moulding)、

押出成形(Extrusion)、ブロー成形(Blow Moulding)の3つがある(中村・佐藤 1995)。

 射出成形はプラスチック成形技術で最も広く用いられているもので、テレビのキャビネ

ットやバケツなどを成形する。生産方法は加熱して流動状態にしたプラスチック樹脂を閉

じた金型の空洞部に注入し成形品を作るものである。この方法の長所は同じ品質の成形品

を短時間で大量に生産できることや精密な成形品を作れることであるが、短所は金型が高

6

いことである。従って、大量生産にあった成形技術と言える。

 押出成形はビニル樹脂の水道管や電線管などが代表的な成形品で、材料を金型から押出

して成形する。磁気テープなどを生産するフィルム成形(Film Extrusion)、ゴミ袋(ポ

リエチレン袋)などを生産するインフレーション成形(Inflation Moulding)も押出成形

の 1 種である。この生産方法の長所は設備生産性が高いことである。我々が訪問した企業

の中にも 1970 年から使っている小さな機械でポリエチレン袋を生産しつづけている企業

があった。

 ブロー成形はシャンプーの容器やポリタンクなどが代表的成形品で、溶けたプラスチッ

クをチューブ状にし、2 つ割りの金型で挟み、そこへ空気を送り込み材料を押し広げて成

形品を作る。この生産方法の長所は金型が安いことであるが、短所は寸法精度が劣ること

である。

 プラスチック生産は外から見ると技術を要する産業のように思えるが、精密でない部品

を作るのであれば、機械と原料さえ買ってくれば次ぎの日から生産が開始できる単純な産

業である。この点については我々の訪問企業からも確認を得ている。

 1つの企業で複数の生産形態(例えば射出成形とブロー成形)を採用する企業があるた

め、厳密な分類は不可能だが、MPMA による調査によればマレーシアにおいては射出成

形を主な生産方法とする企業が一番多い。

   表 2 2001年マレーシア・プラスチック企業生産形態別シェア

Main Production Process Share

Injection Moulding 40%

Film Extrusion 30%

Blow Moulding 8%

Pipes and Profile Extrusion 7%

Foam Moulding 5%

Composite Fabrication 5%

Others 5%

        (出所)Giam 2002

3.3.3.3. 射出成形産業の発生と発展射出成形産業の発生と発展射出成形産業の発生と発展射出成形産業の発生と発展

3.1.3.1.3.1.3.1. フィールド・リサーチによる分析フィールド・リサーチによる分析フィールド・リサーチによる分析フィールド・リサーチによる分析

 次に、我々のフィールド・リサーチによって得られた情報をもとにマレーシアにおける

プラスチック射出成形産業の発生と発展の過程について分析を行なうこととする。訪問企

業へのアポイントはMalaysia Plastic Manufacturers Associationを通じ取得し、ヒアリ

ングは英語で行われた。訪問を申し込んだ企業はランダムに選択されているが、受け入れ

てくれた企業は英語を充分に理解する企業のみという可能性があることをはじめに断って

おきたい。訪問した射出成形企業は 40 社であったが、当分析に利用できる情報を供与し

7

てくれた企業は 37社であったため、37社がサンプルとなる。

(1)企業タイプ別創業時の特徴(1)企業タイプ別創業時の特徴(1)企業タイプ別創業時の特徴(1)企業タイプ別創業時の特徴

 我々はプラスチック射出成形企業を、創業時期を基準として Pioneers、Followers、New

Pioneer、Late Comers の4つに分類した(表 3 参照)。Pioneers とはマレーシア・プラス

チック産業発展の初期(1950 年から 1970 年)にプラスチック生産を始めた人々のことで、

我々の訪問企業の中では3社がそれに該当する。Followers は Pioneers の成功を見て 1971

年以降から 1982 年までに参入してきた企業を指す。New Pioneer は新製品(電気部品)に

特化し 1982 年に創業した企業 1 社を指す。Late Comers は 1982 年以降に参入した企業を

指す。

 New Pioneer と Followers, Late Comers との関係についてもう少し解説を加えたい。マ

レーシアのプラスチック射出成形産業は、初期には家庭用品の皿やバケツなどを作成して

いたが、多国籍電気機器メーカーが組立て生産工場をマレーシアに建設して以来電気機器

のプラスチック部品生産の受注を受けるようになる。New Pioneer はこのような背景の中

で電気機器部品の生産に特化した初めての企業であり、我々はこの New Pioneer の出現は

マレーシアのプラスチック射出成形産業における 1 つの転換点(あるいは新結合)だとみ

なし、それ以前と以降の射出成形産業への参入者を Followers と Late Comers に分けるこ

ととした。

表 3: 企業タイプ別創業時の特徴PioneersPioneersPioneersPioneers FollowersFollowersFollowersFollowers New PioneerNew PioneerNew PioneerNew Pioneer Late ComersLate ComersLate ComersLate Comers

企業数 3社 8社 1社 26社

創業年 1950年~1970年 1971年~1982年 1982年 1982年~1997年

創業地 Kuala Lumpur  3社 Kuala Lumpur 2社 Kedah     1社 Selangor 12社

Johor 3社 Johor 5社

Selangor    1社 Perak 3社

Penang 1社 Kuala Lumpur 2社

Malacca 1社 Penang 2社

Malacca 1社

Kedah 1社

創業者教育年数 平均 6.3 11.0 14.0 13.2

創業者前職 プラスチック製造業 0 2 1 11

プラスチック販売業 0 2 0 1

その他製造業 2 2 0 5

その他販売業 0 0 0 1

その他サービス業など 0 2 0 5

無効回答 1 0 0 3

生産比率 電気電子部品 0.00 3.75 100.00 66.60

(創業時平均) 四輪部品 0.00 7.50 0.00 4.00

(%) 家庭用製品 100.00 45.00 0.00 17.80

先端分野 0.00 0.00 0.00 7.40

その他 0.00 43.75 0.00 5.00

8

(出所) 筆者インタビューによる

(注) Pioneers:マレーシアにおいてプラスチック生産を始めた人々、Followers:Pioneers の成功を見

て 1982 年までに参入してきた企業、New Pioneer:電気部品に特化し創業した人、Late Comers:1982 年

以降に参入した企業

 第 3 表は、上記グループ分けに従い各グループの特徴を示したものである。この表から

分かることは以下のとおりである。第 1は、創業地は時期が遅くなるにつれて Kuala Lumpur

(以下、KL と略す)から拡散していること。このことは産業の地理的発展パターンと言うも

のが、経済の中心地から発生し、産業規模が大きくなるに連れて地理的拡散を遂げる可能

性を示唆している。第 2 は、教育年数に関して Pioneers 以外顕著な年数の違いは認めら

れないこと。経済が発展するにつれ、産業の発展を担う起業家の教育的バックグラウンド

は高度化すると考えがちであるが、そうでないというこの事実は大変興味深い。第 3 は、

Late Comers ではプラスチック製造業の経験者が 40%を占めること。第 4 は、創業時の生

産物に関して Followers は家庭用品およびその他(車のナンバー・プレートやパイプ)の

生産が多いのに対し、Late comers は電気電子部品の生産が多いことである。第 3 と第 4

の事実を併せると、Late comersの多くがプラスチック生産の既存企業を spin outして、

電気電子部品向け生産を中心に起業した企業であることがわかる。上記事実に我々がイン

タビューで得られた質的情報を加え、マレーシア・プラスチック射出成形産業の発生及

び発展のメカニズムについて分析することとしたい。

(2)(2)(2)(2) 射出成形産業の発生 射出成形産業の発生 射出成形産業の発生 射出成形産業の発生

 製造業の発生の際に、どのような起業家がどのような動機を持って事業を起こしたか、

そして生産に必要な技術をどのようにして入手したかは、経済学的にも興味深い情報であ

るが、製造業の育成を必要とする各国にとっても大変重要な情報となる。我々が Pioneers

企業として定義した 3社の創業の動機と技術習得方法は以下の表4のとおりである。

 A 社は前述の Yong Kam Fook 社であるが、創業動機の情報は得られなかったが、生産

方法は企業冊子に書いてあるとおりに自ら考案したとの情報を得た。B 社はプラスチック

企業を起こす前は、食料品の生産販売を行っていたが、海外旅行でプラスチック産業の将

来性を知り、当時既に射出成形技術を持っていた台湾から機械を購入し、技術者も呼んで

生産を開始した。C 社は、創業時は鑑賞魚の販売を主な経済活動としていたが、当時鑑賞

魚販売のためのプラスチック容器は輸入品で供給も不足していたことから、自らこれを生

産する必要性を認識し、日本から機械を購入し、購入したメーカーから技術も教えてもら

ったとのことある。彼らはいずれもマレーシア国内の他のプラスチック製造業者の成功を

見て、当該産業に参入してきたわけではなく、自らプラスチック産業の将来性について認

識し起業したという意味でパイオニアと呼ぶにふさわしい企業である。

9

 表 4:Pioneers企業の創業動機と技術の習得方法創業の動機創業の動機創業の動機創業の動機 技術の習得方法技術の習得方法技術の習得方法技術の習得方法

A社 n.a. 成形機械を自ら考案。B社 台湾、香港を旅行して成長産業であること

を確認して。台湾から機械を購入し、技術者を台湾から呼ぶ。

C社 鑑賞魚販売(創業当時の職業)のためのプラスチック容器が不足して。

日本から機械を購入し、メーカーに技術を教えてもらう。

 (出所) 筆者インタビューによる

 創業の動機は創業時の自らの経済活動と全く関係なく生ずることもあるし、自らの経済

活動に関連して生ずることもあるようであるが、技術の習得に関しては自ら機械を考案し

た A社以外はいわゆる「後発性の利益」(Gerschenkron 1962)を活かして相対的に進んだ

国から技術を導入していることが分かる。このように、マレーシア・プラスチック射出成

形産業は「後発性の利益」を利用し、外国から技術を導入した企業が中心になって発生した

とみなすことが出来よう。

(3)(3)(3)(3) 射出成形産業の発展 射出成形産業の発展 射出成形産業の発展 射出成形産業の発展

 次に、如何にしてこの射出成形産業の芽が育っていったかを分析することにする。

Followers は創業者 8 人のうち 2 人がプラスチック製造業経験者である。彼らは自分の所

属企業において射出成形の技術を習得し、またプラスチック製品販売先もある程度把握し

た後に独立している。プラスチック製品販売を行っていた企業 2 社も充分にプラスチック

市場の情報(顧客、収益性)について把握したのち、プラスチック射出成形産業に参入し

た。他の職業からの参入者もプラスチック市場の収益性については漠然とした知識しかな

かったようであるが、生産技術については 4 社のうち 2 社は他のプラスチック企業の技術

者を雇い入れて創業している。このように Followers の創業した 1971 年~1982 年は、マ

レーシアにおいても射出成形産業の技術習得が行われると同時に儲かりそうだとの情報も

行き渡り始め、spin-outあるいは技術者を引き抜く形での創業が活発してきたといえよう。

これは人の移動による技術のスピル・オーバーと言える。センサスではこの時期に企業数

が急増した事実が示されているが、発展の初期の段階における企業数急増の裏には上記の

ようなメカニズムが働いていたと考えられる。

 射出成形産業は 1950年ごろから皿やバケツなどの家庭用品の生産を行っていたが、我々

のインタビューによると 1980 年前後になるとマレーシアに進出してきた日系電機メーカ

ーから電気部品の生産可能性について打診をうけるようになったという。初めは扇風機の

ファンや冷蔵庫のトレイなど簡単なものが多かったそうである。日系メーカーは数社に打

診し、その中から技術力のある射出成形企業を選択して、電気部品の下請を開始していっ

た。日系電気メーカーにもインタビューを行ったが、彼らは進出した直接投資先で必ず下

請企業になれそうな企業を探すという。それは日本から部品を持って来るより、現地で生

産させることでコストが大幅に低下するからである。射出成形は金型さえしっかりしてい

10

れば、比較的簡単に生産できることから、日系メーカーは金型を現地射出成形企業に貸し

だしたり、技術指導を行いながら部品生産を行わせた。このようにして、技術力や経営能

力のある射出成形企業が選択され、従来の家庭用品に加え電気部品の生産も開始していく

こととなる。

 そのような中、電気部品生産に特化して創業した企業が発生した。その企業を我々は New

Pioneer と呼ぶことにする。なぜ彼を New Pioneer と呼ぶのか?それは、この起業家はリ

スクを犯し、マレーシア射出成形企業の新たな経営戦略を示したからである。

 この企業の創業者は、自ら家庭用品と電気部品双方を作っていた現地の射出成形企業に

勤めており、そこで経験を積んで独立した。我々のインタビューした企業では、彼の企業

が初めて電気部品生産に特化した企業である。他の起業家のうち電気部品生産に特化して

いない経営者が、特化しない理由として挙げるのは以下の 2 つである。第 1 は、電気部品

の注文は変動が激しいこと。第 2 は、電気部品は品質管理が難しいこと。しかしながら、

1980年頃は既に多くの電機メーカーがマレーシアに進出しており、彼らのほうから現地の

プラスチック企業の下請を探していた。彼らから多くの注文を取れれば、大きな利益にな

ることは明白であったのである。それまでの企業は電気部品生産のメリットを理解しつつ

も受注変動のリスクを回避するために、家庭用品と電気部品という二つの製品を生産しつ

づけていた。しかし、彼は電気部品生産に特化し、企業を拡大することで(創業後僅か 20

年弱で従業員数は 1400人にまで拡大)、射出成形企業の新たな成功例を示した。

 New Pioneer 以降に創業した Late Comers の電気部品生産比率は明らかに高くなって

いる(平均の生産比率 66.6%)。具体的には Late Comers 26社中電気部品生産に特化して

創業した企業は 11 社に及ぶ。この背景には New Pioneer の成功の情報が波及し彼を真似

て創業した企業が増加した、或いは New Pioneerと同じ考えを持つ起業家が増えてきたも

のと考えられる。

 このように技術のスピル・オーバーを通じ、既に家庭用品を中心に生産拡大を遂げてい

たマレーシア・プラスチック射出成形産業は、外資系電機メーカーからの部品生産依頼が

入ることで「後方連鎖」効果を受け、更なる発展を遂げたことがわかる。以上が我々のイ

ンタビューをもとに把握したマレーシア・プラスチック射出成形産業の発展の概観である。

(4)(4)(4)(4) 企業タイプ別パフォーマンス企業タイプ別パフォーマンス企業タイプ別パフォーマンス企業タイプ別パフォーマンス

 射出成形産業の発展メカニズムを更に詳しく知るために、上で分類した企業別のパフォ

ーマンスを比較することとする。表 5 は 1995 年と 2001 年の企業パフォーマンス(売上及

び雇用数)について比較を行ったものである。この表から分かる第 1のことは、New Pioneer

のパフォーマンスの良さである。第 2 に観察されることは、Pioneers のパフォーマンスは

Followers や Late Comers より上である点である。これは Pioneers が市場で確立したブ

ランド力(実際 Pioneers 企業 3 社とも家庭用品のブランド名を持っている)や、長年この市

場で活動を続けてきた経験を反映している可能性がある。

11

表 5:企業タイプ別パフォーマンス        PioneersPioneersPioneersPioneers         FollowersFollowersFollowersFollowers New PioneerNew PioneerNew PioneerNew Pioneer Late ComersLate ComersLate ComersLate Comers1995年 2001年 1995年 2001年 1995年 2001年 1995年 2001年

売上 平均 50.5 67.5 14.3 18.7 50.0 100.0 10.0 20.8

(百万リンギ) 変動係数(%) 10.9 33.3 78.8 69.5 0.0 0.0 106.7 123.7

雇用数 平均 402 447 253 331 800 1,400 133 225

(人) 変動係数(%) 4.7 11.2 95.5 108.9 0.0 0.0 137.3 119.8

(出所) 筆者インタビューによる

 また、Followers、Late Comersのパフォーマンス(売上、雇用数)の平均値はあまり差が

無いようにも見受けられるが、各変数の変動係数は大きく、グループ内でのパフォーマン

スの差が激しいことが分かる。Followers、Late Comers のグループ内でのパフォーマン

スの差について詳しく知るために、次に Followers 及び Late Comers の企業規模別特徴に

ついて見ることとする。

(5)(5)(5)(5)FollowersFollowersFollowersFollowers 及び及び及び及び Late ComersLate ComersLate ComersLate Comers の企業規模別特徴の企業規模別特徴の企業規模別特徴の企業規模別特徴

 表 6は 2001年時点で雇用者数が 500人を超える企業を「大企業」、雇用数が 500人以下

の企業を「小企業」として、その特徴を表したものである。

表 6:Followers 及び Late Comers の企業規模別特徴 Followers Followers Followers Followers Late Comers Late Comers Late Comers Late Comers

大企業大企業大企業大企業 小企業小企業小企業小企業 大企業大企業大企業大企業 小企業小企業小企業小企業

企業数 2社 6社 5社 21社

創業年 平均 1980.5 1976.5 1991.6 1992.0

標準偏差 1.5 4.3 1.5 3.4

売上 平均(2001年) 30.0 15.0 71.7 10.6

(百万リンギ) 変動係数(2001年) % 20.0 83.8 34.0 67.6

成長率(1995年~2001年)% 60.0 4.7 176.9 75.9

雇用数 平均(2001年) 850 159 684 116

(人) 変動係数(2001年) % 41.2 71.6 43.2 72.2

成長率(1995年~2001年)% 39.3 18.1 85.6 63.3

創業者教育年数 平均 13 10 12 13

検査機械CMM 所有企業数 2社 0社 5社 8社

生産比率 電気電子部品 100.0 16.7 86.2 62.8

(2001年平均) 四輪部品 0.0 20.2 6.8 10.2

家庭用製品 0.0 50.8 0.0 16.0

先端分野 0.0 0.0 4.8 4.3

その他 0.0 9.0 2.2 6.9

(出所) 筆者インタビューによる

 表 6から確認できる点は以下のとおりである。第 1は、Late Comersは大企業、小企業

とも成長率が Followers に比べて高いこと。第 2 は、創業者の教育年数は企業のパフォー

12

マンスに影響がなさそうに見えること。第 3 は、Followers、Late Comers 双方で大企業

は全て3次元測定機(Coordinate Measuring Machine, 以下 CMM と略す)を持ってい

ること。CMM はより複雑で精密な形成品の精度を測る機械である。これはマレーシアに

おいてより精密な製品を作ることが受注を拡大させる必要条件になっている可能性を示唆

する。Late Comers の小企業でも 40%が CMM を持っており、Late Comers の創業年が

最近であることを考えると、Late Comers の「小企業」グループにはまだ創業間も無いため

企業規模が小さい企業も含まれている可能性がある。第 4 は、Followers の大企業は 2001

年の電気電子部品生産比率が 100%。Late Comers でも大企業の電気電子部品生産比率は

86%となっていること。このことは電気電子部品の生産比率が高いことが企業のパフォー

マンスに大きな影響を与える可能性を示している。ここでも Late Comersの小企業の電気

電子部品生産比率は 63%と高く、創業間も無いため企業規模が小さい企業がこのグループ

に含まれている可能性を示唆している。

 以上より、射出成形企業のパフォーマンスには、電気部品生産比率、創業年数、より精

密な成形品を作るかどうか、など様々な要因が影響している可能性があることがわかった。

次節では、これらの要因を統計的に検証することとしたい。

3.2.3.2.3.2.3.2. 計量的分析計量的分析計量的分析計量的分析

((((1111)企業パフォーマンスの決定要因の分析)企業パフォーマンスの決定要因の分析)企業パフォーマンスの決定要因の分析)企業パフォーマンスの決定要因の分析

 今までの分析により、マレーシア・プラスチック射出成形企業のパフォーマンスの決定

要因に関し、いくつかの仮説が導かれた。この仮説をインタビューにより収集したデータ

から統計的に検証することとしたい。回帰式の推計方法はデータ・サンプルが少ないこと

もあり、最小二乗法を採用した。

 検証仮説は以下の 6 つである。仮説 1、2、3は上記分析で可能性が指摘されたもので

ある。仮説4は上記分析では社長の教育年数は企業パフォーマンスに影響が無いように思

えたものであるが、これを統計的に検証するための仮説である。仮説5、6は上記分析で

は特に取り上げていないが、近年の経済分析において重視されている集積効果および立地

選択の影響を検証するため設定した仮説である。

仮説 1:電気部品生産比率が高いほどパフォーマンスが良い

仮説 2:CMMを持っている企業ほど企業パフォーマンスが良い

仮説 3:創業年が新しい企業ほど企業パフォーマンスが悪い

仮説4:社長の教育年数が高いほどパフォーマンスが良い

13

仮説5:集積度の高い地域ほど企業パフォーマンスが良い

仮説6: 顧客に近い企業ほどパフォーマンスが良い

被説明変数:2001年雇用者数(変数名:EMP01)

 まず企業パフォーマンスの指標として我々は 2001年の雇用者を採用した。その理由は、

訪問企業が売上額よりも雇用者数の方でより正確な情報を伝えてくれたことによる。我々

が訪問した企業の中には株式を上場していない企業もあり、売上額について質問しても答

えてくれなかったり、非常に大まかな数字しか教えてくれない企業もあったが、雇用者数

については率直に答えてくれた。

説明変数

(a) 電気部品生産比率(変数名:ELESH95)

 1995年時点の各企業の電気部品生産比率を採用した。

(b) 創業年(変数名:OPERAT)

(c) CMMダミー(変数名:CMM)

2001年時点で CMMを持つ企業のダミー変数を作成した。

(d) 現社長の教育年数(変数名:EDUMD)

(e) 集積地ダミー(変数名:SPJ95)

 Selangor 州、Penang 州、Johor 州は電気産業の集積が進んでいることから、これらの

州に 1995 年時点で立地している企業のダミー変数を作成した。これは電気産業の集積地

に近いほうが受注が多くなるのではないかとの判断による。

(f) 顧客への距離(変数名:DISCU95)

 インタビューでは顧客への距離(時間)についてもヒアリングを行ったので、1995 年時点

での顧客までの平均距離(分数)を採用した。これは顧客に近ければ近いほど受注が多くな

るのではないかとの判断による。

(g) パイオニア・ダミー(変数名:PDUM)

 この変数は上記仮説とは関係無いが、パイオニア企業は自らのブランドを持ち、市場で

の認知度も高いため、その影響を除外するために説明変数として採用した。

14

 推計結果は表7のとおりである。推計式は(1)式から(3)式まである。これは統計的

に有意でないと確認された変数を除いていった結果である。この推計結果から、仮説1か

ら仮説3までが統計的に支持されたことがわかる。

 即ち、企業パフォーマンスに対し、電気部品生産比率及び CMM ダミーは有意に正の効

果を与え、創業年は有意に負の影響を与えていることが統計的に確認された。創業年が負

の影響を与えていると言うことは、新しい企業ほど企業パフォーマンスが悪いということ

である。一方、経営者の教育年数や立地条件(電気産業集積地に立地しているかどうか)、

顧客への距離、パイオニア・ダミーなどは企業パフォーマンスへ有意な効果を与えていな

いことが判明した。

 

   表7:企業パフォーマンス推計結果推計式番号 1 2 3被説明変数 EMP01 EMP01 EMP01

推計方法 OLS OLS OLS

修正済決定係数 0.37 0.40 0.41サンプル数 28 28 28定数項 40803.10* 41975.00* 43164.80*

(1.96) (2.51) (2.64)ELESH95 3.44* 3.45* 3.38*

(1.96) (2.01) (2.01)EDUMD 28.59 28.42 27.82

(1.37) (1.40) (1.39)CMM 389.97** 392.79** 410.39**

(2.96) (3.12) (3.42)SPJ95 -180.61 -176.90 -154.54

(-1.37) (-1.43) (-1.34)OPERAT -20.70* -21.29* -21.9**

(-1.96) (2.50) (-2.64)DISCU95 -0.47 -0.46

(-0.56) (-0.57)PDUM 28.99

(0.10)*は5%、**は1%の有意水準を表す。

((((2222)電気部品生産比率の決定要因分析)電気部品生産比率の決定要因分析)電気部品生産比率の決定要因分析)電気部品生産比率の決定要因分析

 次に、上記で企業パフォーマンスに影響があるとされた電気部品生産比率であるが、こ

れが何によって決定されているのか統計的に分析を行なった。ここでの仮説は以下の仮説

7である。

15

仮説 7:現社長の前職でのプラスチック製造経験が長いほど電気部品生産が高い

 この仮説は、我々がヒアリングで得た印象を確認するためのものである。ヒアリングで

は、電気部品生産比率が高く、企業パフォーマンスも良い企業の多くが、現社長が他社で

プラスチック生産技術を習得し、プラスチック市場に関する情報も得た後に創業している

との印象を持った。

 推計方法は、これもサンプルが少ないため最小二乗法を用いている。被説明変数は先ほ

どの電気部品生産比率(変数名:ELESH95)を用い、説明変数は現社長の前職でのプラ

スチック製造経験年数(変数名:PPEM)を用いている。企業パフォーマンスの推計式の

変数と電気部品生産比率の相関も確認するため、先ほどの推計式(1)式の説明変数も入

れて推計を行った。推計式は(4)式から(6)式までの 3 式である。結果は表 8 のとおり

である。

   表 8:電気部品生産比率推計結果推計式番号 4 5 6被説明変数 ELESH95 ELESH95 ELESH95

推計方法 OLS OLS OLS

修正済決定係数 0.11 0.18 0.18サンプル数 28 28 32定数項 -3077.99 -2711.73 -1742.13

(-1.25) (-1.36) (-1.06)PPEM 1.61 1.64* 1.97*

(1.63) (1.73) (2.28)OPERAT 1.59 1.40 0.91

(1.27) (1.38) (1.09)SPJ95 -12.22 -11.04 -10.27

(-0.77) (-0.81) (-0.82)EDUMD -0.98 -1.04

(-0.39) (-0.43)DISCU95 0.00003

(0.0003)PDUM 9.63

(0.28)*は5%の有意水準を表す。

 この推計の結果、仮説 7 は支持され、現社長の前職でのプラスチック生産年数が電機部

品生産比率に正の影響を与えていることが統計的に確認された。また、電気部品生産比率

と企業パフォーマンスの推計式で用いた他の説明変数との相関は否定されている。

16

((((3333))))CMMCMMCMMCMM所有の決定要因分析所有の決定要因分析所有の決定要因分析所有の決定要因分析

 企業パフォーマンスの決定要因として統計的に有意であると判明されたCMMについて、

その CMM を所有するのはどのような企業であるか統計的に分析した。ここでの仮説は以

下の仮説 8である。

仮説 8:新しい企業ほど CMMをもつ確率が高い

 この仮説は、表 7において Late Comers企業では、企業パフォーマンスが良くない企業

でも CMM を持つ企業が多かったことより導かれる。推計方法はプロビットを用いた。被

説明変数は CMMダミー(変数名:CMM)を用い、説明変数は創業年(変数名:OPERAT)

及び企業パフォーマンスの推計式(1)式で用いた他の変数である。他の変数を入れた理

由は、電気部品生産比率と同様、CMM ダミーと企業パフォーマンスの推計式における他

の変数の相関を確認するためである。結果は表9のとおりである。

  表9:CMM所有の推計結果推計式番号 7 8 9被説明変数 CMM CMM CMM

推計方法 Probit Probit Probit

決定係数 0.22 0.22 0.21サンプル数 30 30 30定数項 -155.56 -157.58 -167.04

(-1.70) (-1.73) (-2.01)OPERAT 0.08 0.08* 0.08*

(1.69) (1.72) (2.00)DISCU95 -0.0007 -0.0007 -0.0007

(-1.28) (-1.38) (-1.38)PDUM 1.33 1.39 1.43

(1.01) (1.10) (1.15)EDUMD 0.06 0.06 0.05

(0.64) (0.62) (0.59)PPEM 0.0008 0.0009

(0.22) (0.24)SPJ95B 0.09

(0.16)*は5%の有意水準を表す。

 推計結果より仮説 8 は支持され、新しい企業ほど CMM を持つことが統計的に確認され

た。また、CMMダミーと他の説明変数との相関も否定されている。

17

 上記 3 つの計量分析の結果を要約すると以下のとおりとなる。雇用者数で測った企業パ

フォーマンスに影響を与えるのは、電気部品生産比率、CMM を持っているか否か、操業

年数の 3 つの変数である。社長の教育年数や立地条件などは企業のパフォーマンスに影響

は与えない。電気部品生産比率の高い企業は、他の会社でプラスチック生産経験年数が長

い社長によって運営されている。また、CMMを持つ企業は新しい企業である。

 操業年数が企業パフォーマンスに与える影響については大変興味深い結果が出た。操業

年数が短いほど企業パフォーマンス(雇用者数)は低いが、その一方で操業年数の短い企

業ほど CMM を持つ傾向が高くなり、CMM を持つことは企業パフォーマンスを高める。

このことは、Late Comers 等の新しい企業が、今後操業年数を増やすにつれて企業パフォ

ーマンスを高めることを示唆している。

 上記推計結果についてインタビューで得られた事実を基に解釈を行うと、以下のとおり

である。電気部品生産比率、CMMダミーの企業パフォーマンスへのポジティブな効果は、

我々が企業訪問を通じて持った印象と整合的な結果である。インタビューを通じて、電気

部品生産比率が高い企業、CMM 所有企業は、規模も大きくかつ拡大しているとの印象を

持った。

 一方、経営者の教育年数はインタビューを通じても企業パフォーマンスに影響を与えて

いるとは感じられなかった。我々は、教育年数 10 年(マレーシアでは中等教育修了レベル)

程度で従業員 500 人を超える企業を経営している経営者に何人も会っている。射出成形の

技術や販売先との交渉などは、実際の生産活動やビジネスを通じて学習している印象であ

ったし、それが出来なければいくら教育年数が高くても企業パフォーマンスは悪くなるの

は当然である。現社長の前職でのプラスチック製造経験年数も、長ければ良いというもの

ではないといえよう。

立地条件や、顧客への距離が統計的に有意な影響を与えなかったことは大変興味深い。

これはマレーシアに特有な地理的要因が影響している可能性がある。マレーシアは北部の

Penang州から南部のJohor州まで高速道路で11時間程度、マレーシア半島中心のSelangor

州から Penang州へは 5時間程度で到達できるなど製品の輸送時間が短い。実際 Selangor

州に立地して Penang州の電機メーカーに納品している企業もあった。

4.4.4.4. まとめまとめまとめまとめ

 以上、マレーシア・プラスチック射出成形産業の発生および発展のメカニズムについて

分析を行なった。本稿の結論は以下のとおりである。

 射出成形産業は、当該産業が既に発達していた台湾や日本などから技術輸入を行った

Pioneer 企業が中心になって発生した。この意味でマレーシアにおける射出成形産業の発

生は「後発性の利益」を享受したものである。

18

 その後、プラスチック産業に参入してきた Follower 企業は、プラスチック製造業或い

はプラスチック販売業の経験者が創業したか、プラスチック生産経験者を雇って創業した

比率が高い。このことは産業の発生の後に、人の移動を通じた技術の spill over が生じ、

射出成形産業が拡大していったことを示している。

 射出成形産業は、当初は皿やバケツなどの家庭用品の生産を行っていたが、マレーシア

に外資系電気機器メーカーが直接投資を行い、部品供給を依頼したことで、電気部品の生

産も手がけるようになる。その中で電気部品生産に特化した New Pioneer企業が現れ、生

産を拡大していく。電気部品生産は受注変動が激しいことや、より精密な成形品を要求さ

れるなど射出成形企業にとってリスクも高いが、受注量は大きく、電気部品生産比率の高

い企業は企業パフォーマンスが高い。実際、1982年以降に参入した Late Comer企業は電

気部品生産に特化し創業したものが多い。この意味で、当該産業の発展はマレーシアへの

電気機器メーカーの直接投資による「後方連鎖(backward linkage)」効果を享受したもの

と言える。またこの時忘れてならないのが、この後方連鎖効果が発生するための必要条件

として、プラスチック家庭用品の生産が既にマレーシアで行われていたという事実である。

 プラスチック射出成形産業は発展の初期段階からマレーシア人によって行われたという

意味で、途上国が自国民によって産業を発生させ、発展させた貴重なケースでもある。

 また、本稿では企業単位のデータで統計的分析を行なった結果、経済成長に関する研究

(e.g., Mankiw, Romer and Weil 1992)でその重要性を指摘されている教育年数について

は有意性が認められなかった。これは教育の与える効果が修学年数に比例するものではな

い可能性を示している。我々が訪問した企業のうち、企業パフォーマンスの良い企業の創

業者(或いは経営者)のなかには教育年数 10 年程度の人が少なくなかった。教育が経済成長

に与える影響は、その国の発展段階に依存する可能性がある。マレーシアのプラスチック

射出成形産業が教育年数 6 年程度の人々によって始められたことを考えると(表 3 の

Pioneers の教育年数を参照)、ハイテク産業でない一般的な産業に関しては、産業の発生

に関しても基礎教育で充分な可能性がある。

 同じく近年注目されている立地の重要性について、本稿の計量分析の結果は有意性を認

めていない。前節ではこの結果について、マレーシアの高速道路のインフラが整備されて

おり、輸送時間が短い点が原因である可能性を指摘した。しかし、マレーシアの電気産業

の立地選択要因分析を行なった Togo and Arikawa(2002)の結論では産業集積効果が立地

選択に有意に大きな影響を与えると結論づけられている。この違いは電気産業とプラスチ

ック射出成形産業の違いかもしれないし、産業集積が立地選択と企業パフォーマンスに与

える影響の違いかもしれない。

 次にマレーシア・プラスチック射出成形産業の今後について考察することとする。現在、

マレーシアの電気機器産業は重大な局面を迎えている。中国が多国籍電気メーカーの組立

て生産拠点になってきているためである。今のところ、まだマレーシアから中国へ組立て

工場を移動させる大規模な動きにはなっていないが、やがてそのような動きが活発化する

19

のは避けられないことである。その際、電気機器産業の「後方連鎖」効果を享受してきたプ

ラスチック射出形成産業は、大きな痛手を受けるであろう。

 我々が訪問した企業の中でも、既にその対策として射出成形に加え組立て生産を開始し

ている企業や、組立て生産を拡充し多国籍電機メーカーの OEM(Original Equipment

Manufacturer)になろうとしている企業や、商品の開発から、設計、部品調達、生産まで

をトータルに請け負う EMS(Electronic Manufacturing Service)を目指す企業もあった。

中国に比べ人件費が高い中で、単純な組立てや OEM であれば、マレーシアより中国の方

がコスト安となるのは当然であり、組立て生産あるいは OEM への進出は良い結果を生ま

ないであろう。EMS は設計や部品調達まで行うという意味で高付加価値生産であり、マ

レーシアのように人件費が高くなった国にとっては将来性がある産業と言えるが、技術者

の質の向上や部品調達のノウハウ習得など企業の技術レベルを上昇させる必要がある。恐

らく既存のプラスチック射出成形企業のうち、これを成し遂げられるのはごく 1 部の企業

であろう。

 最後に今後の課題として以下の点を挙げることとしたい。本稿ではマレーシアの射出成

形産業の発生と発展のメカニズムについて分析した。第 1 章の「はじめに」で述べたとお

り、途上国のフィールド・リサーチをベースに製造業の発生・発展について分析した研究

は少なく、まだ普遍的なモデルを導出するまでのケースは蓄積されていない。あくまで限

られた国および産業についての分析がある段階である。しかしながら、途上国における製

造業の発生・発展のメカニズムを知ることは、彼らの所得向上のために不可欠な作業であ

る。政策インプリケーションを導出可能なモデルの作成を行うために、今後より一層ケー

スを蓄積して行く必要がある。

20

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