社会福祉施設におけるリスクマネジメント ガイドライン · 1 はじめに 1...

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Page 1: 社会福祉施設におけるリスクマネジメント ガイドライン · 1 はじめに 1 ガイドライン作成の背景とねらい この「社会福祉施設におけるリスクマネジメントガイドライン」(以下

社会福祉施設におけるリスクマネジメント

ガイドライン

平成21年3月

東京都福祉保健局

Page 2: 社会福祉施設におけるリスクマネジメント ガイドライン · 1 はじめに 1 ガイドライン作成の背景とねらい この「社会福祉施設におけるリスクマネジメントガイドライン」(以下

目 次

はじめに .................................................................................................................................... 1 1 ガイドライン作成の背景とねらい................................................................................. 1 2 ガイドラインの対象範囲................................................................................................ 1 3 ガイドラインの活用方法................................................................................................ 2 4 ガイドライン作成の経緯................................................................................................ 3 (1)経営者・チームリーダー層等マネジメント促進事業の概要.................................. 3 (2)モデル事業の概要 ................................................................................................... 5

第1章 社会福祉施設におけるリスクマネジメントとは ....................................................... 6 1 リスクマネジメントの基本的な考え方.......................................................................... 6 (1)社会福祉施設におけるリスクマネジメントの考え方 ............................................ 6 (2)社会福祉施設の運営におけるリスクマネジメントの位置づけ .............................. 7 2 リスクマネジメントの枠組み........................................................................................ 8 3 組織の成熟度とリスクマネジメント ............................................................................. 9

第2章 リスクマネジメントの仕組みの構築と活性化 【運用編】....................................11 1 組織全体のリスクマネジメントプロセス .................................................................... 12 2 報告制度....................................................................................................................... 13 3 委員会の運営................................................................................................................ 17 4 業務手順書の整備........................................................................................................ 21 5 研修.............................................................................................................................. 25 6 家族とのパートナーシップ .......................................................................................... 29 7 介護記録の作成・活用................................................................................................. 33

第3章 リスクマネジメントの取組のポイント【事故予防編】 .......................................... 37 1 事故原因の分析と対応策の考え方............................................................................... 37 2 転倒・転落に対する予防策の例................................................................................... 38

第4章 リスクマネジメントの取組チェックリスト............................................................. 41

経営者・チームリーダー層等マネジメント促進事業実施要綱.............................................. 49

Page 3: 社会福祉施設におけるリスクマネジメント ガイドライン · 1 はじめに 1 ガイドライン作成の背景とねらい この「社会福祉施設におけるリスクマネジメントガイドライン」(以下

1

はじめに

1 ガイドライン作成の背景とねらい

この「社会福祉施設におけるリスクマネジメントガイドライン」(以下「ガイドライン」と

いう。)は、社会福祉施設においてリスクマネジメントの取組を進めるためのポイントをまと

めたものですが、主に介護老人福祉施設を念頭においてまとめています。しかし、リスクマ

ネジメントの仕組みづくり、活性化について特に述べたものですので、他の種別の施設・事

業者でも参考にしていただけるものとなっています。

社会福祉施設において、防げるはずの介護事故を予防することは、利用者サービスの質の

確保という観点からも大変重要です。しかしながら、施設におけるリスクマネジメントの取

組のノウハウはいまだ十分に共有・蓄積されていないとの指摘があります。

社会福祉施設でリスクマネジメントの取組を進めていくには、サービス提供等の業務の中

で想定される介護事故等のリスクを洗い出し、それがどのような場面で起きやすいのか、こ

れまでに同様の事故等がどれだけの頻度で発生しているのか、どのような結果を引き起こし

たのかなどを正しく分析・評価することが必要となります。その上で、リスクの発生や影響

を最小限のものにするために、介護マニュアルを作成して、業務の手順や事故が発生した場

合の適切な処理手段を、あらかじめ計画し、準備しておくことが求められます。また、これ

らの取組を進める組織として、リスクマネジメント委員会などを設置することも必要です。

しかし、そういった体制やしくみを構築していたとしても、運用上うまくいっていないと

かうまく機能していないというのが現場の社会福祉施設での課題のようです。

そこで本ガイドラインは、具体的なリスクマネジメントの取組方策や運用上の留意点を明

らかにすることで、現場の改善に役立つよう配慮しました。また、施設の取り組みを「成熟

度」という考え方を用いて評価し、次のステップへ向上していくための取り組みが分かるよ

う配慮しました。

本ガイドラインを通じてリスクマネジメントの取組が進展し、利用者へのサービスの質向

上につながるとともに、職員が安心して勤務を続けられる環境づくりに資することにつなが

れば幸いです。

2 ガイドラインの対象範囲 本ガイドラインは、社会福祉施設(特に介護老人福祉施設)におけるリスクマネジメント

活動について記載しています。

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2

3 ガイドラインの活用方法

第1章 社会福祉施設におけるリスクマネジメン

トとは

第2章 リスクマネジメントの仕組みの構築と活

性化

第3章 リスクマネジメントの取組のポイント

第4章 リスクマネジメントの取組チェックリス

施設におけるリスクマネジメントの基本的考え方を知りたい方

リスクマネジメントのしくみや運用上のヒントを知りたい方

事故予防の具体的方法論を知りたい方

【本書の構成と利用方法】

取り組みに当たり理解して

おくべき基本的考え方につ

いて整理しています。

チェックリストを用いて

施設の成熟度を評価する

ことができます。

1.組織全体のリスクマネジメントプロセス

2.報告制度

3.委員会の運営

4.業務手順書の整備

5.研修

6.家族とのパートナーシップ

7.介護記録の作成・活用

組織全体のリスクマネジメントに取り組みたい方

報告制度の活用・改善に取り組みたい方

委員会の活用・改善に取り組みたい方

業務手順書の活用・改善に取り組みたい方

研修の活用・改善に取り組みたい方

家族とのパートナーシップの改善に取り組みたい方

介護記録の改善に取り組みたい方

自分の施設の成熟度を確認したい方

分野別の具体的な運用方法

や成熟度に応じた改善のヒ

ントを記載しています。

P.6

P.11

P.12

P.13

P.17

P.21

P.25

P.29

P.33

P.37

P.41

事故予防のための具体的

方策・手順の例を記載し

ています。

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3

4 ガイドライン作成の経緯

(1)経営者・チームリーダー層等マネジメント促進事業の概要

【事業の目的】

本事業は、社会福祉事業の分野では、リスクマネジメントや人事管理、サービス向上に向

けた取組などのノウハウが十分に蓄積されていないことから、その取組方策を明らかにし、

社会福祉事業分野全体の経営の健全化及び運営の適正化を図ることで、利用者へのサービス

提供体制が確立され、従事者が継続して勤務できる環境づくりに資することを目的として実

施しました。

【事業の内容】

本事業の目的を達成するための取組として、次の事業を行いました。

(1) 社会福祉事業における利用者サービスの向上に向けた運営体制を明らかにするために、

都内の社会福祉事業者においてモデル事業を実施する。

(2) モデル事業において明らかにされた取組方策について、他の社会福祉事業者が取り組め

るよう、ガイドラインを作成の上、配布する。

【検討委員会の設置・開催】

本事業の実施に当たっては、社会福祉事業者が実施するモデル事業を検証し、都内の社会

福祉事業者全体の取組を普及促進するため、「経営者・チームリーダー層等マネジメント促進

事業検討委員会」を設置しました。検討委員会の開催状況は以下のとおりです。

回 開催日 議題

第 1回 平成 20年 6月 24日

1 検討委員会における審議事項の取扱いについて 2 経営者・チームリーダー層等マネジメント促進事業の実施概要 3 特別養護老人ホームにおけるリスクマネジメントの取組状況、課

題(意見交換) 4 参加施設におけるリスクマネジメントの取組状況のヒアリング

第 2回 平成 20年 11月 5日

1 調査研究の実施計画(案)について 2 事故報告データの集計結果について 3 モデル施設へのヒアリングについて 4 リスクマネジメント取組ガイドラインの素案について 5 その他

第 3回 平成 21年 3月 3日

1 モデル事業の実施結果報告 2 「社会福祉施設におけるリスクマネジメントガイドライン(案)」

について 3 その他

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【委員名簿】

検討委員会の委員は以下のとおりです。委員の任期は平成20年6月1日から平成21年

3月31日までとしました。

(順不同 敬称略)

氏名 所属・役職等

委 員 長 佐藤 彰俊 日本社会事業大学大学院 非常勤講師

委員長代理 赤沼 康弘 赤沼法律事務所 弁護士

委 員 羽生 隆司 社会福祉法人賛育会 墨田区特別養護老人ホームたちばな 施設長

委 員 水野 敬生 社会福祉法人光照園 江戸川光照苑 施設長

委 員 吉上 恵子 社会福祉法人至誠学舎立川 至誠特別養護老人ホーム 施設長

委 員 西岡 修 社会福祉法人白十字会 白十字ホーム 施設長

委 員 高原 敏夫 社会福祉法人マザアス マザアス東久留米 施設長

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(2)モデル事業の概要

本書の作成にあたり、以下の施設に参加していただいてモデル事業を実施しました。

モデル事業では、各施設がリスクマネジメントの成熟度や取組の課題を自己評価し、対応

策を検討した上で、改善・質向上のための活動に取り組んでいただきました。

このモデル事業の実施結果も参考に、本書の内容を検討しました。

図表 1 モデル事業参加施設(順不同)

社会福祉法人賛育会 墨田区特別養護老人ホームたちばな(墨田区)

社会福祉法人光照園 江戸川光照苑(江戸川区)

社会福祉法人至誠学舎立川 至誠特別養護老人ホーム(立川市)

社会福祉法人白十字会 白十字ホーム(東村山市)

社会福祉法人マザアス マザアス東久留米(東久留米市)

図表 2 モデル事業の流れ

事前研修

モデル実施

実践

事後評価

報告会

活動計画

・考え方・進め方の理解・成熟度と課題の把握・リスクの分析と対策検討

ガイドライン(素案)

分析レポート

・実施プロセス、効果、今後の課題等の評価・評価シートの記入

・モデル実施の報告・ディスカッション

12月~1月

2月上旬

2月中旬

課題評価シート課題分析シート計画シート

課題評価シート課題分析シート計画シート

実施記録

モデル事業評価シート

・課題・対策の再検討・活動計画の立案

・対策の実践・記録 三菱総合研究所

情報提供、助言等

【モデル事業】

調査

ガイドライン(案)の作成

提出

ガイドライン(素案)へのご意見等

提出

反映

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第1章 社会福祉施設におけるリスクマネジメントとは

1 リスクマネジメントの基本的な考え方 (1)社会福祉施設におけるリスクマネジメントの考え方

(ア)社会福祉施設の特性

介護老人福祉施設は、介護を必要とする高齢者が1日1日を自分らしく過ごす「生活の場」

であると言われます。

例えば、高齢者の多くは身体的機能および認知的機能の低下により、転倒等のリスクが高

くなります。高齢者の生活そのものにこのようなリスクがあり、転倒防止のために自由な歩

行を制限するといった対策は、自立した尊厳ある生活を送るという施設ケアの趣旨とは相容

れないものです。転倒させないための拘束ではなく、転倒しても怪我をしない被害の最小化

が重要なのです。このように、社会福祉施設においては全ての事故をゼロにすることは現実

的ではありません。

一方、職員によるケアの提供過程で発生する介護事故は発生させてはならない事故です。

これらに対しては、施設・設備面の改善、手順の見直し、ケア技術の向上といった方策によ

り、根絶を目指すことが必要です。

その他にも施設の特性としては、高い離職率など職員の不足、認知症など重度者の増加、

個別ケアの重視、シフトワークのため教育研修などの集まりが困難といった点が挙げられま

す。こういった施設の実態や事故の特性を踏まえた上で具体的な取組みを考えていく必要が

あります。

(イ)「利用者視点」で考えるリスクマネジメント

一般的に、組織においてリスクマネジメントを行う目的は「自分の組織を守る」「社会や顧

客等への被害を与えない」の2つですが、「ケア」を提供する社会福祉施設において最も求め

られるのは「利用者またはその家族に被害を与えない」ということです。

したがって本ガイドラインにおいては、社会福祉施設におけるリスクマネジメントを介護

事故予防のためのマネジメントとして捉えます。そのことが、結果的には職員を守り(腰痛

予防など職員の健康を守ることを含む)、施設を守ることにもつながると考えることができま

す。

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(2)社会福祉施設の運営におけるリスクマネジメントの位置づけ

施設におけるリスクマネジメントとは、新しい取組を求めるものではありません。従来か

ら各施設で行われている介護事故予防のための個々の取組に基づいて、リスク(利用者また

はその家族に被害を与えてしまう事象)を捉え、これをマネジメントしていくための活動と

位置づけることができます1。これを以下の図に示します。

事故予防のためには、事故報告の仕組みづくりや安全管理委員会の開催といった事故予防

に直接関連する体制づくりばかりでなく、体系的な職員教育、人事査定・評価、労務管理、

設備投資などといった各種の組織におけるマネジメント活動とも関わりを持ちます。リスク

マネジメント活動を進めていくためには、組織全体の取組を認識した上で、リスクマネジメ

ントの位置づけを明確にすることが重要です。

個々の職員や組織がリスクを意識した活動を持続的かつ発展的に行うことによって、施設

として利用者・家族へのより質の高いサービスを提供することを可能とするのです。

図表 3 施設における介護事故予防の考え方

出典)「特別養護老人ホームにおける介護事故予防ガイドライン-特別養護老人ホームにおける施設サービスの質

確保に関する検討報告書-別冊(平成18年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金)」(2007年3月、株

式会社三菱総合研究所)から一部改変

1 一般的にリスクマネジメントといった場合、危機管理を含めることもあります。ここでは「危機が顕在化するまでの間に、想定したリスクに対して事前に対処する一連の活動」と位置づけて

います。

・・・・

・・・・

施設ケアの基本理念:

自立した生活の実現への支援 個人の尊厳の尊重 自己決定の尊重

基本理念の実現に向けた取組み

~より質の高いケアを目指して

施設においては、よりよいケア

の提供に向けて、さまざまな観

点からの取り組みを行ってお

り、介護事故予防はその一部を

構成します。他の各要素とは互

いに関連しあっています。

施設 設備

職員 教育

ケア 技術

個々の介護事故予防の取組みをマネジメントする活動

=リスクマネジメント活動

利用者・家族への質の

高いサービス提供

利用者・家族の意思決定・

意見の尊重

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2 リスクマネジメントの枠組み 図は、リスクマネジメント活動の4 つのステップと、一般的に施設内で行われている事故予防のための主な関連活動との関係を示したものです。 まず施設におけるリスク(利用者またはその家族に被害を与えてしまう事象)を特定しま

す。これは一般的にヒヤリハット報告制度や事故事例報告制度を通じて明らかにされる具体

的な内容から特定されます。

次にリスクアセスメントを行い、リスクの具体的な内容(要因やシナリオ)やその大きさ

の評価を行います。ここで注意しなければならないことは「リスクとは発生していない事象」

も明らかにしていることです。たとえヒヤリハットであっても(もしくはヒヤリハットすら

起こっていない場合でも)発生してしまうと重大な被害を及ぼすことが懸念される事象は対

象となります。この活動は施設内に設置される安全管理等のための委員会が役割を担います。

さらにリスク対応を検討します。リスクへの対応手段と具体的な方法を明確にします。こ

の活動も、一般には施設内に設置される安全管理等のための委員会が役割を担います。 最後にリスクコントロールを行います。リスク対応で決定した手段を実行します。施設に

おいては業務手順書の整備、研修、家族との関係構築として取り組んでいます。

図表 4 リスクマネジメントの枠組み

リスク特定(発見・把握)

リスクアセスメント

リスク対応

リスクコントロール

<リスクマネジメント活動> <事故予防のための主な関連活動>

・ ヒヤリハット報告制度・ 事故事例報告

・ 安全管理のための委員会

・ 業務手順書の整備・ 研修・ 家族との関係構築

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3 組織の成熟度とリスクマネジメント リスクマネジメントを社会福祉施設の運営方法全般に関連させて促進するためには、組織

全体でPDCAのサイクルが自律的に回っていくことが必要です。事故報告、利用者・家族から

のクレーム、職員からの改善提案などは全て組織が成長するための「材料」であり、統合的

に収集され分析される必要があります。組織全体が質の向上を指向し、自ら課題を発見して

解決策を見つけ出す、スパイラルアップのプロセスを各施設に定着させることが最終的な目

標であると言えます。

また、施設全体のPDCAサイクルだけでなく、利用者ごとにもPDCAで質の向上に取り組み、

その両者を相互に関連させながら進める必要があります。

図表 5 施設レベルのPDCAサイクルと利用者レベルのPDCAサイクル

施設ケアの基本理念:

自立した生活の実現への支援 個人の尊厳の尊重 自己決定の尊重

基本理念の実現に向けた取組み 利用者一人ひとりのPDCA

Act 再アセスメントして 課題と対応策を検討する

Plan アセスメントに基づいてケアプランを策定する

Do ケアプランに沿った ケアを提供する

Check モニタリングする

Act 評価に基づき改善する (例:研修方法の見直し)

Plan 計画を定める (例:研修計画の立案)

Do 計画を実行する (例:職員研修の実施)

Check 結果を評価する (例:アンケート等による研修成果の測定)

施設全体のPDCA

個別ケアへ の適用

個別事例か

ら全体の問

題に一般化

出典)「特別養護老人ホームにおける介護事故予防ガイドライン-特別養護老人ホームにおける施設サービスの質

確保に関する検討報告書-別冊(平成18年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金)」(2007年3月、株

式会社三菱総合研究所)

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しかし、リスクマネジメントに限らず、組織におけるマネジメント活動の確立には時間が

かかります。そのため自組織の状況を把握したり他組織と比較したりすることが難しく、場

合によってはマネジメントの定着に失敗したり、形骸化してしまったりする可能性がありま

す。

この際、組織の自律的向上を支援する手段として成熟度という考え方が有効です。そこで、

本ガイドラインではこの成熟度の考え方にしたがって、組織活動の取組レベルを評価するこ

ととします。成熟度は、基本的に以下の図表に示す 5 段階で定義します。個々の活動におい

ては、取組自体がなされていない可能性もあることから、未導入の状態をレベル 1 と設定し

ています。

図表 6 本ガイドラインにおける成熟度レベルの定義

成熟度

レベル レベル名称 説明

1 未導入レベルまたは

初期導入レベル

組織活動や取組が導入されていない。もしくは活動や取

組が個人に依存し、場当たり的な対応となっている。

2 導入レベル 組織活動や取組がなんらか始まっているが、組織的に管

理はなされていない。組織内で、人によりばらつきがあ

る。

3 定義されたレベル 組織活動や取組の手順や方法が標準化、マニュアル化さ

れている。

4 組織的に管理された

レベル

組織活動や取組が標準化された手順や方法に従っている

かを常にモニタリングし、管理できるような体制が確立

されている。

5 組織的改善レベル 組織活動や取組の質を向上させるために、前向きな目標

を設定し、適切な評価尺度や外部からの情報を積極的に

活用している。組織活動や取組の手順や方法が常に組織

にとって最善のものとなるよう、継続的に改善されてい

る。

出典)「Safety Culture Maturity Modelに基づく職場の安全文化醸成のためのセルフアセスメントツールの提案、

竹村・小松原、ヒューマンファクターズ、Vol12,No.2、2008」を元に三菱総合研究所作成

Page 13: 社会福祉施設におけるリスクマネジメント ガイドライン · 1 はじめに 1 ガイドライン作成の背景とねらい この「社会福祉施設におけるリスクマネジメントガイドライン」(以下

11

P.6~

P.41~

P.11~

第2章 リスクマネジメントの仕組みの構築と活性化 【運用編】

◆◆第第22章章のの使使いい方方

・ この章は、リスクマネジメントの仕組みとして、「報告制度」「委員会」「手順書」

「研修」「家族とのパートナーシップ」「介護記録」という6つの取組におけるヒ

ントを示したものです。

・ 6つの取り組みについて、それぞれ取り組みのポイント、考え方を示すとともに、

成熟度レベルを向上させるための「次の一歩」となる方策についてまとめました。

・ まず、自分の施設の成熟度を確認して、次のステップへと進むためにどのような取

り組みを行うべきかを検討する際に活用します。具体的には、次の手順で進めます。

(1) 第1章に示した、高齢者介護施設におけるリスクマネジメントの考え方や成熟

度の考え方を理解します。

(2) 第4章に示した取り組みのチェックリストを使って、施設におけるそれぞれの

取組のレベルを自己診断により把握します。

(3) 把握した施設の成熟度レベルに基づき、それぞれの取り組みについて、第2章

に示した「次のレベルへと進むための方策」を参考として、施設における具体

的な活動内容を検討します。

※ 6つの取組のすべてについて同時に実施する必要はありません。第4章の自己

診断結果に基づいて、重点的に実施すべき取り組みについて優先順位を検討し

て計画的に進めます。

ステップ1 高齢者介護施設におけるリスクマネジメントの考え方や成熟度の考え方の理解(第1章)

ステップ2 自施設における取組レベルの自己診断(第4章)

ステップ3 “次のレベル”に進むための具体的な活動内容の検討 (第2章)

2.報告制度

3.委員会の運営

4.業務手順書の整備

5.研修

6.家族とのパートナーシップ

7.介護記録の作成・活用

項目ごとの成熟度に応じて個別

に取組検討

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11 組組織織全全体体ののリリススククママネネジジメメンントトププロロセセスス

取り組みのポイント

組織全体のリスクの発生を防止するための各種の活動について、取組状況や実績を客観的

に把握して、常に最適な活動が行われるようにマネジメントします。また、こうした活動を

行うための資源(人員・物品・予算)の配分について、経営層が合理的に意思決定します。 <組織全体のリスクマネジメントシステムの成熟度>

以下のような条件を満たすことが成熟度の判断基準となります。

・ 職員からの改善提案を受け付け、改善につなげる方法が明確化されている。

・ 事故、ヒヤリハットなどリスクに関する情報を日常的に監視する仕組みがあり、改善につなげる

ための方法が明確化されている。

・ 組織の課題が経営者レベルで明確化されており、資源(人員・物品・予算)の配分の意思決定

は合理的で、課題解決にむけた姿勢を持っている(「これまでと同じでよい」のではなく、一歩前

に進むための積極的な姿勢がある)。

・ 都の第三者評価を活用するなど、組織のマネジメントに活かしている。利用者満足度、職員満

足度を把握するための仕組みがあり、経営の評価や意思決定において重視されている。

・ 職員一人ひとりが問題意識をもち、サービス、ケアの質向上を目指している。そのための教育・

研修が充実している。

・ 利用者や家族からの意見、要望を受付け、改善につなげるための方法が明確化されている。

・ 経営層の方針が明確であり、職員一人ひとりに周知され施設全体に浸透している。

・ 経営に外部の視点を取り入れる努力がなされている。

・ 利用者またはその家族に被害を与える事故の発生を防止します。具体的には本章の2か

ら7に示される各種の取組や日常の活動を通じてリスクに関するPDCAサイクルを回します。

・ リスクマネジメントプロセスにより施設全体のサービスの質を向上させ、利用者や家族への

質の高いサービスの提供を目指します。

解 説

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13

22 報報告告制制度度

取り組みのポイント

事故やヒヤリハットの事例を迅速に報告し、情報を施設の中で共有し、有効に活用するこ

とにより、組織全体において安全やケアの質向上に対する関心が高まります。職員一人ひと

りの意識が高まることにより、施設内に潜在するリスクを発見することができ、事故を未然

防止する対策へとつなげることができます。

そのためには、なぜ事故やヒヤリハットの情報が重要なのか、迅速に報告することが大切

なのか、報告された情報はどのように活用されるのか(職員自身、施設、利用者や家族にと

ってどのように役に立つのか)など、基本的なところをきちんと説明します。

報告制度を効果的に運用していくためには、特に次の点が重要といえます。

・ 決して報告者(当事者)を責めないこと、報告することが不利にならないことを繰り返

し伝えます。

・ 報告された貴重な情報を有効に活用するための仕組みをつくり、報告したことによる効

果を職員が実感できるようにすることが、形式的でない有益な報告を促します。

・ 介護事故やヒヤリハットの情報は、施設におけるサービスやケアの質向上につながる

貴重な教訓であり、施設全体で共有すべきであるという共通理解を浸透させます。

・ 責任の追及が目的ではないという基本原則を周知徹底し、報告者の不利益につながら

ないことを保証して、嘘をつかず、推測を交えずに、客観的な事実を正確に報告する

ことを促します。

・ 忙しい業務の中での報告のしやすさにも配慮して、それぞれの施設の特性や考え方に

沿った仕組みづくりを心がけます。また、仕組みを随時見直して改善していくことも

必要です。

・ 報告された事例を分析することにより本質的な原因や問題点を見出し、再発防止のた

めの効果的な対策につなげます。また、対策の実施状況や効果を評価して、必要に応

じて見直しをします。

解 説

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取組の状態 説 明

1 報告制度が整備されていない

(実質的に機能していない)

・ 報告制度が整備されていない

・ 報告制度が認識されていない

・ 報告事例がない

2 報告制度が整備されている

・ 報告制度の書式及び手順が整備されて

いる

・ 重大な事例は報告される(軽微なものは

報告されない)

・ 報告内容の質は低い、またはばらつき

がある

3 適切な報告が行われている

・ 軽微なものも含め、組織で起こりうる多

様な事例が報告されている

・ 事実がわかりやすく記載されている

・ 事例情報を施設内で共有する仕組みが

整備されている

4 報告に基づいて効果的な分析

が行われている

・ 報告に基づいて体系的・多面的に分析

が行われている

・ 対策が必要な事例については、「注意喚

起」「見守り強化」にとどまらない、仕組

みを改善する効果的な対策が立案され

ている

5 報告制度が、フロアや部署ごと

に自律的に運用されている

・ 報告制度がそれぞれの現場で自律的に

運用されている

・ 自発的に事例から学ぶ姿勢がある

・ 報告制度をより実践的・効果的に運用す

るための工夫がなされている

報告制度の導入と定着

報告の活性化と質の向上

効果的な分析と対策立案

見直しと改善

報告制度の成熟度

さらなる向上にむけて

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【報告制度の導入と定着の方策】

●事故やヒヤリハットの報告制度は、事例に関与した職員個人を責めるものではなく、その原因を

見極めて有効な対策を立て、今後の事故防止やサービス、ケアの向上につなげることを目的とし

たものであることを、説明会や研修などを開催して、すべての職員にわかりやすく伝えます。

・ 絶対に報告者の不利にならないことを保証します。

・ わかりやすいサンプル事例とそれに基づく改善例などを具体的に示して、報告制度の効果を

印象づけます。

・ 医療分野や航空分野など、人の命を預かる業界ですでに実践され、効果をあげていることを

紹介します。

●報告の様式、手順と担当者の役割などを定め「報告制度」を整備します。

・ 事故・ヒヤリハットを発見した場合の報告書の作成や提出の手順、方法

・ 提出された報告書の取り扱い(管理や回覧、共有の要領と担当者)

・ 分析と対策検討の場と施設全体へのフィードバックの仕組み

【報告の活性化の方策】

●報告を奨励する文化

管理者やリーダーは事故やヒヤリハットの報告を奨励し、内容を問わず報告したこと自体を評価

する姿勢を示します。

●報告を奨励する制度

たとえば、「ヒヤリハット大賞」を創設して報告件数の多い職員を表彰します。報告件数が多いこ

とを人事考課の評価項目に含めている施設もあります。報告された事故やヒヤリハットの情報を

契機に、施設内における改善や組織全体としての弱点の共有、克服など施設の安全の向上につ

ながった場合、これを広く組織内に周知して、施設全体の職員の関心を高めます。

●報告の負担の軽減

多忙な日常のケアや業務に配慮して、少しでも報告の負担を軽減するために、報告書の書式は

必要最低限の簡易なものにします。

【報告内容の質の向上のための方策】

●報告書式の工夫

報告しやすさに配慮するとともに、客観的な事実の把握、関連情報の確認が容易で分析がしや

すくなるように書式の記入項目、選択肢の設定、記入欄の大きさ、レイアウトなどを工夫します。

記入例をつけて、どのような内容をどの程度の詳細度で記載すればよいのかわかるようにしまし

ょう。

●改善例や模範例の提示

より質の高い報告を促すためには、よくない報告例と模範的な報告例を対比させながら、事実が

きちんと整理されて分析しやすく活用しやすい報告の書き方を示します。

レベル向上の方策(レベル1→2)

レベル向上の方策(レベル2→3)

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16

【効果的な分析・対策立案の方策】

●分析手法の習得

分析の手法には、次のようなものがあります。

①当事者の責任に帰着させるのではなく、システム(建物の要因、設備・備品の要因、規則・手順

書の要因)などの視点から分析する

②「なぜそうなったか」という問いを繰り返して真の理由まで掘り下げる(根本原因分析〔例〕38ペ

ージの分析例を参考にしてください。)

それぞれの手法の考え方や手順を学習した上で、実際に分析を繰り返しながら、施設にあった言

葉づかいや手順にアレンジします。

●効果的な対策立案の考え方

要因の分類方法は多様ですが、3章に示したように概ね「環境面の要因」「職員の要因」「利用者

の要因」等に分類されます。「これからは気を付ける」や「見守りを強化する」では本質的な対策に

はなりません。人間にあったシステムを作るという発想で仕組みや設備を見直し確実に効果のあ

る対策を検討します。また複数の職種が参画し、専門的見地から多面的な対策を協議することも

有効です。

環境面の要因 → 施設改修、備品の見直し等

職員の要因 → ケア手順の見直し、用具や機器の利用、体制やルールの見直し等

利用者の要因 → 気づきのトレーニング、アセスメント

【報告制度の見直し、継続的改善のための方策】

●対策の効果の評価

対策の実践から、1ヶ月、3か月後など定期的にその実施状況や効果を確認して、より実効性を

高めるよう修正します。

●現場への権限委譲

事故報告制度が浸透し、効果的な報告、分析、対策立案の習慣が身についてきたら、フロアごと

など現場に権限を委譲し、各部門で自律的に分析が行われ必要な対策が講じられる仕組みへと

移行します。

【さらなる向上のための方策】

●リスクマネジメントの取組に終わりはありません。現在、自律的な改善の仕組みが整っていても、

その運用が固定化してしまったら継続的な改善にはつながりません。現場の職員一人ひとりが、

現状に満足せず、常にさらなる向上を目指す姿勢を持ちましょう。このような雰囲気をつくるた

め、施設長や現場のリーダーは常に気を配り、働きかけを続けることが大切です。

●事故・ヒヤリハットの報告の数、内容の変化、検討され実践された対策の効果のみならず、職員

の意識や現場の自律的な活動についても、気を配りモチベーションの維持、向上に努めます。

レベル向上の方策(レベル3→4)

レベル向上の方策(レベル4→5)

レベル維持・向上の方策(レベル5)

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17

33 委委員員会会のの運運営営

安全管理のための委員会(リスク管理委員会等と呼ばれることもあります)は、施設にお

ける事故防止や安全の確保を担う重要な意思決定機関です。部門、職種、職位のバランスの

よいメンバーで構成することにより、偏りががなく現場の実態に即した実効性のある対策の

議論や実効性のある活動へとつなげることが重要です。

また、委員会、委員の役割を明確にすることにより、委員の自覚を促し活動へのモチベー

ションを高めるとともに、委員以外の一人ひとりの職員も、委員会や委員の活動を理解し、

関心が高まって、それぞれの現場において委員を核とした取り組みを推進することができま

す。

このとき、委員会および委員がそれぞれの活動に必要な権限を持つことが重要です。権限

を持たないと、実効力が発揮できなかったり、意思決定して実現されるまでに時間がかかっ

たりして、適切なタイミングで適切な活動を進めることができません。円滑な活動を進める

ために、責任と権限の範囲を定めておきましょう。

委員会において検討された対策の実施は現場が主導で行いますが、その状況を把握し効果

を確認し必要に応じてよりよい対策への見直しをすることは委員会の役目です。活動の主体

は現場であり、委員会は施設全体の知恵を結集してその取組を支援します。

取 り 組 みのポイント

・ 安全管理のための委員会では、報告制度を通じて収集された事故やヒヤリハットの事

例を分析し、対策の検討、施設内への周知、実施状況の把握、定期的な効果の評価を

行います。

・ 委員会の目的と役割、構成メンバー、開催頻度などを定めて文書化し施設内の全職員

に明示します。そのことにより、委員会の構成メンバーなど関係者のみならず、施設

全体の職員一人ひとりの委員会の意義に対する理解が高まり、委員会への協力や委員

会が主導する活動を促進することができます。

・ 委員会の役割および構成する各委員の個々の役割を明確にし、委員としての役割を果

たし活動を円滑に遂行するために必要となる権限を与えます。

・ 事例の分析や対策検討は、安全管理担当者のみが行うのではなく、委員会に参加して

いる現場各部門の代表、専門性の異なる多職種、機関決定の権限を有する管理者層が

参加することが重要です。

・ 委員会において検討した対策の実施状況や効果を定期的に把握し、必要に応じて見直

しをします。

解 説

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18

取組の状態 説 明

1 委員会が設置されていない

(実質的に機能していない)

・ 施設の安全管理に関する委員会が設

置されていない

・ 委員会の意義と目的が明確でない

・ 委員会が実質的に開催されていない

2 委員会が設置され開催されて

いる

・ 委員会が設置され、定期的に開催され

ている

・ 委員会の役割、委員構成、開催頻度、権

限などを規定した文書がある

3 委員会の構成メンバーおよび

権限が適切である。

・ 組織的な活動を行うために適切なメンバ

ーにより構成されている

・ 委員会および委員に対して、活動推進に

必要な権限が与えられている

4 委員会が適切に運用されてい

・ 事務局が有効に機能し、委員会が適切

に運用されている

・ 委員会に安全管理に必要な情報が集約

され、対策検討が行われている

・ 対策実施方法が具体的に検討される

5 質の向上に向けて有益で建設

的な議論が行われている

・ 部門、職種、職位によらず参加者から偏

りなく発言があり、実効性のある議論が

行われている

・ 職種や部門の壁がなく情報共有・意見交

換がなされている

・ 検討された対策の効果の検証が行われ

ている

・ 自発的な問題提起と解決のための建設

的な議論が行われる

委員会運営の成熟度

委員会の 設置と開催

メンバー構成と権限移譲

委員会の 運営・運用

効果の検証と見直し

さらなる向上にむけて

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19

【委員会の設置と開催のための方策】

●施設における安全管理を担う委員会を設置します。できるだけ、他の委員会と兼ねるのではな

く、独立した個別の委員会として設置しましょう。ただし、他の委員会とメンバーの重複が考えら

れますので、同じ日に連続して開催するなど、出席しやすくなるよう工夫します。

●委員会は施設の重要な意思決定機関です。委員会の名称、役割と権限、主な活動内容、構成メ

ンバー、開催の頻度などを記した文書を作成し、施設内に周知しましょう。

●委員会を確実に開催するためには、たとえば、毎月「第2水曜日の13時から」というように定めて

おくと、出席者の予定が立てやすく、出席率が向上します。

【適切なメンバー構成と権限委譲のための方策】

●メンバー構成

実効性のある委員会活動のために、例えば次のような幅広い職種が参加することが望ましいで

しょう。

施設長 施設全体の管理責任を担う

事務長 事務関連、会計関連を担当

生活相談員・

介護支援専門員

施設全体の状況のとりまとめや対策実践体制の検討を担当

事故発生時は、家族や外部との窓口を担当

介護職員 フロアやユニット、各サービス部門の代表。検討に際して現場

の視点を提供するとともに、委員会検討事項を現場に伝達

看護師 医療・看護面から対策立案、ケアプラン検討に参画

リハ専門職(PT・OTな

ど)

専門的見地から要因分析、対策立案に参画

※上記は一例であり、施設の体制によって参加する職種や各職種の役割は異なります。

重要なのは、「現場から管理者まで幅の広い職種から構成されていること」と「それぞれの役割が

明確になっていること」です。

●委員会への適切な権限委譲

・ すべての委員会メンバーが安全の確保やケアの質の改善に関与する権限と責任を持つこと

を明文化し、発言や提案を奨励します。

・ 議論の対象となる問題についての専門性を持つ参加者がその問題についての決定権を持つ

ことに合意します。このように、決定権を固定せず柔軟性を持たせることが重要です。

・ 施設長や部門のリーダーなど決定権を持つメンバーが委員会に参加することで、委員会の

場で効率的に決済が行われ、決定事項を迅速に周知、実施することができます。

・ 委員会では構成メンバーや委員長が決定の主体となり、施設長は決定事項を承認し責任を

負う役割を果たします。

レベル向上の方策(レベル1→2)

レベル向上の方策(レベル2→3)

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【委員会の運営・運用のための方策】

●事務局(委員長)の機能

専任の安全管理担当者を定め、事務局とします。安全管理担当者には、事故やヒヤリハット等の

リスク情報を把握し、専門家の立場から分析し、現実的な対応策を検討する能力や、利用者・家

族に対して専門家として状況を的確に伝達する能力が求められます。

●議題の設定と事前の周知

委員会の議事の基本構成を定めておき、原則としてそれに沿って進行します。現場からの報告を

求める場合には、事前に準備をして提出してもらいます。委員会資料を事前に出席者に配布して

目を通しておくようにすると、委員会での議論の的が絞られ発言が活性化する効果が期待されま

す。

<主な議題の例>

事故等の報告と分析 対策の評価 その他

・事故・ヒヤリハットの概況報告

・事例に基づく分析

・対策の検討と決定

・利用者・家族の意見、職員提

案等の確認と分析

・前回決定事項の実施状況

・効果の評価

・対策見直しの検討

・施設(管理者)からの伝達事項

・現場からの話題提供

・事故の中期的傾向分析結果

・施設外(行政、他施設)から提供

された情報の共有

・外部研修の伝達など

【対策の効果の評価と見直しのための方策】

●委員会で検討した対策実施の一定期間経過後(1ヶ月後、3ヶ月後など対策内容による)に、講じ

た対策が現場で有効に機能しているかを評価します。事故報告書や対策計画書の書式に、評価

欄を設けておくと経過を一元的に管理できます。

●評価の軸は利用者本位で設定します。事故やヒヤリハットの再発の有無だけを見るのではなく、

利用者の状態像や生活の変化を重視して効果を確認しましょう。

●効果が見られない場合や、計画したとおりに現場で対策の実施が徹底されていない場合には、

その理由も含めて再度分析し、より適切かつ実効性の高い対策を検討します。

【さらなる向上のための方策】

●現在、委員会で建設的な議論が行われ、委員会の活動が実効性をもっていても、現状に満足せ

ず、今後も有効に機能し続けるための長期的な配慮が必要です。若手の職員を委員会に参画さ

せて一定の役割を任せることにより、経験を蓄積して行動力や考察力を高め、今後の中核となる

リーダーとして育成しましょう。

レベル向上の方策(レベル3→4)

レベル向上の方策(レベル4→5)

レベル維持・向上の方策(レベル5)

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44 業業務務手手順順書書のの整整備備

取り組みのポイント

施設におけるケアの基本的な部分は、誰が担当しても同じ方法、同じ内容で行われ、ケア

の目的が確実に達成されなければなりません。手順書によりケアが標準化され質が担保され

ることは、利用者本位のサービスにおいて重要です。また職員にとっては、適切なケア手順

が示されることにより業務に自信を持つことができます。万一、事故が発生した場合にも、

ケアを実施した職員の行為を保証し、施設として職員を守ることにもつながります。

ケアの標準化は、画一的なケアを押しつけることではありません。利用者一人ひとりのそ

の人らしい生活を支える視点で、個別に配慮をすることが前提です。利用者個別の配慮とし

て、関係者が共有すべきことは、ケアプランや個別ケア計画書の中に明記します。標準的な

ケア手順と個々の利用者に寄り添った配慮事項を共有することで、質の高いケアが実現しま

す。

また、「生きた手順書」として現場で活用されるためには、現場で使いやすく、役に立つも

のである必要があります。内容が固定化せず、絶えず実態や最新のケアの知見、技術にあわ

せて見直しを続けることが重要です。

・ 手順書には、原則として必ず実施するべきこと、職員全員が守らなければいけないこ

とを、明瞭に記載します。

・ 個別ケースごとに必要となる留意事項はすべて統一することはできず、標準化になじ

まない面があります。共通的な標準化された手順を基本とした上で、利用者ごとに必

要となる留意事項は個別のケアプランに反映し、ケアにあたる職員間で共有します。

・ 手順書に記載された内容が、確実に適切なケアの実践に結びつくよう、周知し研修を

実施します。

・ 現場の環境や業務・ケアの実態と手順書の内容が整合するものでなければ手順書は活

用されません。実際に手順書に沿った業務を行い、必要に応じて見直すための仕組み

を整える必要があります。

・ ケアの質の向上を目指す意識が職員一人ひとりに浸透し、絶えず実態に応じて現場に

よる自発的なカスタマイズや改善が行われること、また、その活動が組織的に展開さ

れることを理想とします。

解 説

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22

取組の状態 説 明

1 業務手順書が整備されていな

・ 業務手順書が整備されていない

・ 施設の実態に即した手順書になってい

ない(汎用テキストをそのまま使うなど)

・ 手順書の存在が周知されていない

2 業務手順書が整備されている

・ 施設の実態に即した具体的な手順書が

整備されている

・ 手順書の内容が周知されている

・ 手順書が誰でも必要なときに参照できる

ように備えられている

3 業務手順書が確実に周知さ

れ、活用されている

・ 手順書に基づく教育・研修が実施されて

いる

・ 日常のケアや業務の中で手順書が活用

され、実践されている

4 手順書見直しの仕組みがある

・ 手順書を見直すための手順が明確化さ

れている

・ 定期的に現場におけるケアの実態を反

映した見直しが行われている

・ 手順書の記載内容の妥当性の確認や効

果の評価がおこなわれている

5 現場による自発的な手順書の

改善がなされている

・ 現場から、随時、自発的な手順の改善

提案がある

・ 現場の改善提案を組織として取り込み、

共有する仕組みがある

・ 積極的に情報収集し、新たな知見を手

順書に反映している

業務手順書の成熟度

施設の手順書の作成

手順書に基づく研修

手順書の見直しの仕組み

現場の自発的改善

さらなる向上にむけて

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23

【施設における手順書作成のための方策】

●手順書は、ケアの基本的な部分について、誰でも同じ方法で同じ内容のケアを提供できるよう、

標準的なやり方を定めてわかりやすく示したものです。内容には以下のようなものが含まれま

す。

<手順書に含まれる内容の例>

各種のケアの手順 事故発生時の対応 事故防止の考え方と体制

・ 移動・移乗介助、食事

介助、排泄介助、入浴

介助等各種のケアの

手順

・救急救命、認知症への

対応など

・発生時の対応フロー

・利用者本人への対応

・家族への対応

・外部への対応 など

・委員会の設置

・事故報告制度

・事故報告の書き方

・事例分析の手法 など

●手順書は、次のような点を工夫して作成します。

・ 一般のテキストやマニュアルなどを参考にしながら、施設の実態や特性に即した施設独自

の手順書を作成しましょう。

・ 基本的な知識や事故時の対応、各種のケアの実践方法まで手順書のテーマは多岐にわた

ります。手順書全体の体系を整理し、知りたいことがいつでも容易に確認できるようにするこ

とが大切です。全体体系を示すために業務フロー図を用いて、その中で個別の手順書の番

号を対応づけて管理している施設もあります。

・ 安全管理の担当者が全体構成を統括し、例えば、嚥下については看護師、車いすのシーテ

ィングや移乗の手順書はリハビリテーションの専門職が作成するなど、専門性を活かした役

割分担をしている施設もあります。

・ 読みやすさ、わかりやすさに配慮して、図や写真なども活用しましょう。また現場での使いや

すさに配慮して、分量や大きさも工夫しましょう。

【手順書に基づく教育・研修のための方策】

●手順書を周知し、手順書に沿ったケアを徹底するためには、作成して配布するだけでなく、効果

的な研修を行う必要があります。開催時間や回数等を工夫し、参加しやすい配慮をする必要が

あります。

●入職時研修のテキストとして活用するほか、定期的に、あるいは手順書改訂のタイミングにあわ

せて職員全体を対象とした研修会を開催するという方法もあります。

●手順書に示された内容は単に知識として覚えるものではなく、日常のケアで実践的に活用する

ことが重要であることを明確に伝えます。また、座学だけではなく、必要に応じて実技を交え、よ

り確実に習得できるように工夫します。

レベル向上の方策(レベル1→2)

レベル向上の方策(レベル2→3)

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24

【手順書の見直しの仕組みづくりのための方策】

●手順書に書かれた内容が確実に現場で実践されるためには、手順書が施設や利用者の実態、

現場の環境に即した実行可能な内容になっているかを常に確認する必要があります。

●また、記載内容が正しく遵守されているかどうかを業務の中でチェックするとともに、定期的な機

会を設けて自己確認、相互確認をするとよいでしょう。

●実態に合わない部分、実行不可能な部分があれば、実態を前提としたものに改訂する必要が

あります。そのためには、手順書の実践においてやりにくさを感じた場面や、実行できない場面

があった場合には、その都度、報告、提案をするか、記録しておき一定期間ごとにまとめて見直

しを行います。

●事故やヒヤリハットの報告があった場合には、その発生の原因として、ケアの手順に問題はな

かったか、手順書に不足がないかを検証しましょう。

●手順書の見直しは定期的に行われることが多いのですが、見直しの提案はいつでも誰からでも

できるような仕組みが必要です。例えば、手順書のページにメモ欄を設け、気づいたことを記入

できるようにしておき、定期的に回収して検討することも有効です。

【現場による自発的な改善のための方策】

●手順書は現場で活用するものです。手順書に対する現場からの自発的な提案を積極的に取り

入れる仕組みをつくることが重要です。記載された内容の過不足のみではなく、説明のわかり

やすさ、ケア場面での活用しやすさ、関係者間での共有のしやすさなど、現場の工夫を取り入

れて、施設内に周知します。

●施設の外にも目を向けましょう。研修参加や積極的な情報収集により、ケアや技術に関する新

たな知見を取り入れる努力も重要です。

【さらなる向上のための方策】

●使いやすくわかりやすい優れた手順書が整備され、見直しの仕組みが機能していても、現状に

満足せず、さらなる向上のための努力を続けましょう。現場で蓄積された知見やノウハウの詰ま

った手順書は施設の財産です。職員一人ひとりが、「与えられたもの」ではなく、「自分たちの手で

作り上げたもの」「実践を蓄積して磨き上げていくもの」として手順書を身近に感じ、愛着と誇りを

持てるものとなるように、施設として働きかけを続けることが重要です。

レベル向上の方策(レベル3→4)

レベル向上の方策(レベル4→5)

レベル維持・向上の方策(レベル5)

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55 研研修修

取り組みのポイント

報告制度を効果的に運用するためにも、ケアの手順を適切かつ確実に実施し、サービス提

供に伴う事故を防ぎ質の高いケアを提供するためにも、研修によって、個々の職員がその背

景となる考え方を理解し、必要な知識やスキルを正しく確実に習得することが前提となりま

す。報告制度や手順書整備、記録の作成等、施設における他の取組も含めて、施設が目標と

する姿を明確にし、実現に向けた研修計画を立てましょう。

研修の方法としては、外部の研修への参加(その内容を組織内に伝達する研修を含めて)、

外部の講師の招聘、内部の講師による研修などがあります。また、基本的な知識の伝達から、

事例をもとにしたグループワーク、ケアの実技の実習など様々な形式があります。研修のね

らいや期待する効果などに応じて、多くの職員が参加しやすく受講の効果の高い、適切な方

法、形式を組み合わせて実施しましょう。

また、研修を実施したら、その効果や課題を把握して、次の研修の計画の参考とします。

・ 組織全体として、事故の防止や安全の確保、ケアの質向上に必要となる知識、技術、

考え方などについて、職員として習得するべき内容を整理します。その上で、研修の

テーマとねらい、受講対象、実施時期、スケジュール、講師、会場、テキストなどを

具体的な研修計画を立てます。

・ 業務時間に配慮し、極力利用者や職員に負担が小さく、多くの職員が参加しやすいス

ケジュールを設定します。

・ 基本知識を学ぶ段階から、意識を変革し、自律的に研鑽に取り組む段階を目指します。

・ 組織全体としての研修体系に加えて、部署ごとに重点的に取り組む課題を見出し、自

発的な勉強会が開催されることが理想です。

解 説

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取組の状態 説 明

1 事故予防の観点からの全体研

修が行われていない

・ 事故予防をテーマとした研修が行われ

ていない

・ ケア手順・技術の研修時に、事故予防

の視点が示されていない

2 事故予防の観点からの全体研

修が行われている

・ 事故予防をテーマとした研修が行われて

いる

・ ケア手順・技術の研修時に、事故予防の

視点が示されている

3 研修への参加率が十分高い

・ 研修に参加しやすくするための工夫がな

されている

・ 職員に対して、研修への参加への動機

づけがなされている

・ 外部の研修受講を奨励している

4

研修効果が把握され、プログラ

ムの充実、見直しが行われて

いる

・ 研修効果が把握されている

・ 研修効果を踏まえて、プログラムの見直

し、改善が行われている

・ 施設の特性や事例に基づく独自のプロ

グラムがある

5

全体研修および部門別の自律

的な研修が継続的に行われて

いる

・ 全体研修に加えて、部門別に随時自発

的な勉強会が企画され、開催されている

・ どの部門にも積極的に学ぶ姿勢がある

・ 組織は、部門単位の活動を尊重し、支援

している

研修の成熟度

事故予防の研修の実施s

研修への参加の促進

効果の把握と見直し

自発的な学習姿勢

さらなる向上にむけて

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【事故予防の研修実施の基本的な考え方】

●はじめに、事故の防止や安全の確保、ケアの質向上に必要となる知識、技術、考え方など

について、職員として習得するべき内容を整理します。さらにそれぞれの内容について研

修のねらいを明確にしたうえで、施設全体としての研修計画を立案します。研修のねらいをわか

りやすく示すことは、受講者の動機づけのためにも必要です。

●安全や事故防止に関する施設全体の研修カリキュラムは、安全管理委員会などにおいて検討さ

れます。また、安全以外の他のテーマも含め、組織全体のカリキュラムに基づいて、年度の初め

に年間の研修計画を立てます。

●研修のテーマと目標、対象者、実施時期、内容、形式、テキスト、講師などを具体的に検討しま

す。あれもこれもと理想を追求しても、実現できなければ意味がありません。重点を置くべきテー

マを絞り込み、実現可能性を考慮した無理のない計画を立てます。

●外部研修の受講や外部講師の活用も考えましょう。外部研修の受講は外部とのネットワークの

構築に役立ちます。外部講師を招くことは客観的な視点で施設を見直すきっかけにもなります。

【研修への参加促進の工夫】

●研修への参加率を向上させ、効果を高めるためには、「参加しやすさへの配慮」と、「受講者の参

加意欲の向上」が不可欠となります。

<参加しやすさへの配慮>

たとえば勤務時間帯を考慮し、複数回開催するなど、無理なく参加できるようにするなど

の工夫が考えられます。そのほか、動機づけのための工夫としては、夜の開催であれば

軽食の用意をしている施設もあります。

<参加意欲の向上>

まず研修のねらいを理解してもらうことが重要です。具体的には、なぜその研修が必要な

のか、研修の内容が自分自身の業務にどのように役立つか、習得することで自分自身、

利用者、施設にどのような効果があるかを明示します。また、受講ポイント制の導入など

をしている施設もあります。意欲と明確な目的をもって研修に臨むことは受講の効果を高

めます。

●階層別研修などにおいて、職員ごとの能力開発目標を設定し、研修を連動させて動機づけをして

いる施設もあります。

レベル向上の方策(レベル1→2)

レベル向上の方策(レベル2→3)

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【研修効果の把握と見直し】

●研修効果の把握について

・ 受講生の主観評価(アンケート)、研修後のケアや業務における手順書(研修内容)の実践状

況、利用者の満足度などにより研修の効果を把握し、必要に応じて研修プログラムを見直す

ことが必要です。

●プログラムの充実のための工夫

・ 一般論を学ぶだけではなく、演習やグループワークなどにより施設内の事例に基づく検討を

通して改善につなげるための手順を習得し、介護事故の予防やケアの質改善に向けた意識

を確実に根付かせることを目指します。

・ 基本事項を習得する全体研修のほかに、事故やヒヤリハットの発生状況に基づいて重点的

に取り組むテーマを設定することも効果的です。また、個別具体的なテーマについて(例えば

シーティング、クッションのあて方、移乗のしかた、嚥下の仕組みを踏まえた食事介助の仕方

など)専門家から正しい知識を直接学ぶ機会を設けることも有効です。

【自発的な学習姿勢の促進】

●職員に安全への意識、基本的なスキルや手順が定着してきたら、部署内の事例のみならず、他

のフロアの事故報告などからも有効な情報を見出し、自発的にテーマを定めて勉強会を開催し、

自律的に継続的改善が進められる組織づくりを目標にします。

●はじめは管理者側が主導して、部署ごとに、担当する利用者の特性や状態にあわせて、目標や

勉強会テーマを設定する仕組みをつくり、部署単位の活動を促します。成果を発表する場を設

け、部門ごとの取り組みの状況を施設全体で共有し、意見を交換したり、他の部署のよいところ

を取り入れられる工夫も有効です。

●当初は委員会や専門職が部署ごとの目標やテーマ設定に助言をして、適切に方向付けをするこ

とが必要です。部署単位の活動の定着にともなって介入する度合いを小さくし、各部署が自ら課

題を発見し、必要な情報を収集、共有し、ケアの改善へと反映する自発的な活動へと導きます。

【さらなる向上のための方策】

●部門別に自発的な勉強会が開催され、定着した段階では、その内容や効果についても各部門で

自発的に評価を行って、さらなる向上を目指すことが求められます。また、組織全体の視点から

も適宜評価を行い、必要に応じて方向づけを行いましょう。

レベル向上の方策(レベル3→4)

レベル向上の方策(レベル4→5)

レベル維持・向上の方策(レベル5)

Page 31: 社会福祉施設におけるリスクマネジメント ガイドライン · 1 はじめに 1 ガイドライン作成の背景とねらい この「社会福祉施設におけるリスクマネジメントガイドライン」(以下

29

66 家家族族ととののパパーートトナナーーシシッッププ

取り組みのポイント

日ごろから家族とのコミュニケーションを円滑にしてしっかりとした信頼関係を構築する

ことが何よりも重要です。家族には、利用者の生活を支えるためのケアのパートナーとなっ

ていただくことを目指して、リスクに関する情報を正確に説明してあらかじめ共有し、ケア

方針の意思決定に参画してもらいましょう。

直接的なコミュニケーションを密にしたり、参画の場を用意することだけではなく、家族

から施設に対して直接的に言い出しにくい意見や要望をうまく引き出すための工夫も必要と

なります。家族会は利用者の家族が連携しながら施設と向き合ってよりよいケアを目指すた

めの組織ですが、現状としては施設が運営しており個別の家族と施設との関係になっている

ところが多いようです。一方で、自律的に運営を行い、家族の集合体として組織的に施設と

向き合って、建設的な意見を発信している家族会もあります。

利用者を中心として個々の家族とパートナーシップを組むことと、家族会という組織をと

おして施設の全体な運営やサービス・ケアの方針に関わる利用者・家族の意向や改善が望ま

れる事項を把握し、協力や理解を求めながら解決策を見出していくことの2つの側面を持つ

ことで、家族と力をあわせて利用者の生活を支えることが可能となります。

・ 入所時・契約時には、施設での生活やケアの内容について利用者や家族が十分にイメ

ージできるよう、情報提供します。また、まず利用者・家族が望む生活を理解した上

で、施設における生活やケアの方針について、利用者・家族と施設担当者が一緒に考

えて決めましょう。

・ 日ごろから、利用者・家族との関係を良好に保つためにはオープンなコミュニケーシ

ョンが必要です。施設側からも積極的に利用者の状況を伝えるとともに、家族からの

意見や要望、苦情も歓迎する姿勢を示します。

・ 利用者・家族から言い出しにくい意見を引き出すためにも家族会の設置は有効です。

また、形式ばらずに間接的に意見を収集できる場を設けることも有効です。

・ 利用者だけでなく家族にもケアの選択・判断に参画してもらいましょう。

・ 利用者・家族との信頼関係・協力関係を構築、維持、さらなる向上を目指しましょう。

解 説

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30

取組の状態 説 明

1

利用者・家族と施設との間で、

必要最低限のコミュニケーショ

ンがなされていない

・ 利用者の生活におけるリスクについて、

入所時やケアプランの変更時に家族に

十分に説明していない

・ 利用者・家族の声を取り上げる仕組み

がない

2

利用者・家族と施設との間で、

一定のコミュニケーションがな

されている

・ 利用者の生活におけるリスクについて

家族に説明している

・ 利用者・家族の声を取り上げる仕組み

がある(窓口や意見箱の設置など受動

的なもの)

3

利用者・家族と施設との間で、

意思疎通の仕組みと共通認識

があり、家族がケアの方針決

定に参加している。

・ 利用者・家族の声を取り上げる仕組み

がある(家族会設置、意見交換会開催

やアンケート調査など能動的なもの)

・ 利用者の生活におけるリスクについて

施設と家族に共通認識がある

4 利用者・家族の声を反映してケ

アの改善がなされている

・ 利用者・家族の声をケアの改善に活か

す仕組みがある

・ 利用者や家族から建設的な意見や要望

が出されている

5

家族との信頼関係が構築さ

れ、パートナーシップが実現し

ている

・ 家族が施設に対して十分に満足し、施

設との間に信頼関係が構築されている

・ 家族と施設とが利用者の生活の支援に

向けてケアのパートナーとして、相互に

協力しあう姿勢がある

報告制度の成熟度

生活におけるリスクの説明

家族の理解の促進

家族の声に基づく改善

信頼関係の構築

さらなる向上にむけて

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31

【ケア内容の説明とリスクの公開】

●説明と情報提供

・ 施設として入所者の生活を支えていくためのケアの理念、具体的なケアの内容について、正

しくわかりやすく説明します。

・ 特に、介護サービスの提供にあたっては、生活におけるリスクの有無や程度を、利用者ごと

に把握して措置を講じておくことが必要です。予想されるリスクについては利用者や家族に隠

さず正しく伝える必要があります。

・ 施設の側からの一方的な説明ではなく、利用者や家族が、自己判断・選択するのに必要な情

報を理解しやすい形でわかりやすい言葉で示し、正しい理解と納得を得られるように努めまし

ょう。

●利用者・家族からの意見の把握

・ コミュニケーションは双方向でなければ成立しません。情報提供するのと同時に、利用者・家

族の意見や要望、苦情などを受け入れる仕組みをつくります。相談窓口、意見箱を設置する

など、いつでも誰でも自由に意見を寄せられるように工夫します。

【理解の促進と家族会の設置】

●相互理解の促進

・ これまでの利用者の生活や、今後利用者や家族が望む生活について十分に話を聞いて、理

解します。

・ その上で、今後、施設の中で利用者自身はどのように過ごしたいか、家族としてはどのように

過ごしてもらいたいか、について関係者が集まって一緒に考えて、決めましょう。

・ 利用者の生活に伴うリスクとそれを踏まえたケアの方針について、家族の理解を得ることが

必要です。

●能動的な意見収集の仕組みづくり(家族会の設置)

・ 利用者・家族が個人では言い出しにくい意見を引き出すために、家族会の設置は有効です。

・ 利用者のよりよい生活を実現するために、家族と施設が協働する体制として、家族会を設置

します。

・ 施設が一方的に家族会を招集するのではなく、利用者家族間の自主的な活動を、施設として

支援するという姿勢が重要です。個々の家族と施設との関係だけではなく、家族間の連携の

促進を重視し、家族会の組織力が高まるよう、施設としても支援や働きかけをしましょう。

●ケアにおける意思決定への関与

・ 利用者や家族にケアの内容についての判断・決定の内容について、説明する仕組みを設け

ましょう。

レベル向上の方策(レベル1→2)

レベル向上の方策(レベル2→3)

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32

【家族の声に基づく改善の仕組みづくり】

●家族の志向に応じたコミュニケーションの充実

・ 普段から家族と連絡を取り合い、コミュニケーションをとるよう心がけましょう。

・ 職員からは、特に問題がなくても施設の状況や利用者の状況について、情報を提供すること

が、家族にとっての安心感、施設に対する信頼につながります。

・ 家族からの意見、要望、苦情はいつでも歓迎するという姿勢を示して、意見や要望を積極的

に引き出します。

・ ただし、家族によっては、施設とのやりとりを負担と感じる場合もあります。事前に意思疎通を

図り、望ましいコミュニケーションのあり方についてよく話し合いましょう。

●利用者・家族の意見を反映するための仕組みづくり

・ 利用者や家族の意見、要望、苦情はケア改善のための貴重な情報として位置づけます。

・ 安全管理の委員会などの場を活用して、施設全体で共有します。

・ 意見、要望、苦情は、よく分析して対応の方針を検討します。利用者・家族の意向をくみ取

り、利用者生活を守るためにケア手順やケアプランの見直しの必要性があれば、積極的に検

討しましょう。

【家族との信頼関係の構築】

●家族とのコミュニケーションを維持し、よりよい信頼関係を構築しましょう。利用者の家族と、利用

者の状況やケアの提供の状況について、日頃から十分な情報を相互に提供しあい、共有するこ

とが重要です。それだけではなく、利用者の生活を尊重したケアの目標を常に共有することによ

り、家族をケアのパートナーと位置づけて相互に協力し合う関係を目指しましょう。

【さらなる向上のための方策】

●信頼関係やパートナーシップを築くことができても、それを維持し続けるためには絶えず努力が

必要です。家族と信頼関係が深まっても、なれあいになったり、甘えたりすることなく、日ごろから

情報提供や意向の確認を怠らず、よりよい関係の構築を目指しましょう。

レベル向上の方策(レベル3→4)

レベル向上の方策(レベル4→5)

レベル維持・向上の方策(レベル5)

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33

77 介介護護記記録録のの作作成成・・活活用用

取り組みのポイント

ケアの記録を適切に作成してその内容を時間の流れに沿って確認することにより、一人ひ

とりの利用者について、目標に対する経過の把握や、利用者の状態変化に応じた対応が可能

となります。

また、正確で適切な記録を通じて、関係する介護サービスの担当者の間で随時利用者に関

する情報や日々の配慮事項などについて共有するほか、利用者や家族とも利用者の状態やケ

ア内容に関する情報を共有することができ、信頼関係を確立することにもつながります。

万一、事故が発生した場合にも、適切な記録が作成されていれば、それを開示することに

より提供したサービス内容が適切であったことを示すことができます。

・ 個々の利用者にたいして提供したケア内容を正しく確実に記録することの意味や目

的を改めて確認し、記載すべき項目を整理します。

・ 介護記録には、日々の利用者の状態、観察結果や提供するケアの内容、実施状況、そ

の他の特記事項や申し送り事項等を漏れなく記録します。

・ 記録者の記入、入力の負担を軽減するとともに、関係者の間で状況把握がしやすい書

式やツールを活用します。

・ ケアプランに沿った具体的なケア項目についてひとつひとつ実施状況や利用者の変

化を記録することにより、利用者の目標の達成状況を把握し、必要に応じてケアプラ

ンの見直しをします。

解 説

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34

取組の状態 説 明

1

介護記録が作成・管理されて

いない

(実質的に機能していない)

・ 施設に適した介護記録の書式が定めら

れていない

・ 介護記録が確実に作成されていない

・ 作成された介護記録が管理されていな

2 介護記録が作成・管理されて

いる

・ 施設に適した記録の書式が整備されて

いる

・ 介護記録が毎日作成され、もれなく記録

されている

・ 記録内容の質は十分とはいえない(第三

者が見て分かるような客観的記載がされ

ていない)、またはばらつきがある

・ 記録が適切に管理され、共有されている

3

適切な記録がなされている

(ケアプランと対応づけられ、

記録を通じて、ケアの目標が

管理されている)

・ 第三者が見て分かるよう、正確にわかり

やすく記載されている

・ 記録を通じて情報を施設内で共有する

仕組みが整備されている

・ ケアプランに沿って日常のケア業務が記

録され、実践の有無や目標の達成が把

握できる

・ 必要に応じてケアプランの変更と、変更

後の計画に沿った記録が可能である

4

記録内容のチェックや記録方

法の見直しをする仕組みがあ

・ 記録の内容や質をチェックする仕組みが

ある

・ 記録の質を維持するための方策がとら

れている

・ 必要に応じて記録の方法や書式の見直

しをする仕組みがある

5

よりよいケアにつながる記録の

あり方を継続的に追求する組

織体制が整っている

・ 事実の記録のみならず、ケアの質向上

に向けた取組として介護サービス記録が

位置づけられ、施設全体で共通認識さ

れている

・ よりよい介護サービス記録のあり方につ

いて現場からの提案がある。また、組織

としてそのことを奨励、支援している

介護記録の作成・活用の成熟度

記録の目的周知と様式作成

さらなる向上にむけて

サービス記録の見直し

介護記録のあり方の追求

目的に沿ったサービス記録

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35

【介護サービス記録の目的の周知と記録様式の作成】

●介護サービス記録の目的を周知して、記録作成の徹底を図ります。また、目的に沿って、記録す

べき項目を整理した上で、記録の様式を定めます。

目的 記録すべき項目(例)

・利用者の状況把握、適切なケア

提供

・引き継ぎ、チームケア

・利用者・家族との信頼関係の構

・事故・トラブル発生時に施設にお

けるケアの適切さを示す

・ 利用者の健康状態・体調(時間的変化)

・ ケアプランに沿ったケア内容、実施状況と根拠

・ 利用者の生活の流れ、様子、反応、変化など

・ 特記事項、特に留意すべきことなど申し送り事項

・ コミュニケーションの状況、利用者の意向、要望

・ 記録者、確認者

【目的に沿った介護サービス記録の徹底】

●適切な記録

・ 目的に沿ってわかりやすく正確な記録を作成します。記録に記入することができない場合に

は、簡単なメモをとっておくことも有効です。

・ 適切なケアを提供しその人らしい生活の支援、充実につながっているか振り返りの材料とな

るよう、実施したケアの内容や、健康状態等の記録のみならず、利用者の様子、反応、変化

なども記録します。

・ 一貫したケアが提供できるよう、目標と関連付けながら、ケア実施状況と利用者の状態、意

向などを具体的に書きとります。また、重要な情報や申し送り事項が見落とされないよう工夫

します。

・ 利用者やご家族が読まれることも想定し、視点や表現に配慮します。文章を省略せず、利用

者に寄り添う視点で丁寧に一日の生活を記録します。また、誤記を修正する場合には、万一

トラブルとなった場合にも記録の改ざんとみなされることがないよう、見え消しとするとよいで

しょう。

●施設内における記録の有効活用の仕組みづくり

・ 記録の作成および確認の方法、担当を定め、効果的な共有・活用のための運用手順を検討

し、いつ、誰がどのように作成・記入するのか、どのように共有、確認、チェックをするのかを

明確にします。

・ 関係者に確実に伝達され、効果的に活用されるよう保管場所や伝達のルートなどを工夫しま

す。

・ 利用者の変化に応じてケアプランの見直しにつなげることができるよう、ケアプランと対応づ

けた記録様式とします。変更した場合には新しい計画に沿って記録できるように工夫します。

レベル向上の方策(レベル1→2)

レベル向上の方策(レベル2→3)

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36

【介護サービス記録のあり方の見直し】

●記録とその活用における問題点の抽出と改善策の検討

・ 記録の内容と運用状況をチェックし、記録の意義や書き方はすべての職員に共有され記録

する目的が果たされているか、運用に無理がないかなどを確認します。問題があれば、様式

や手順に無駄がないか、必要事項が記入しやすくなっているか、負荷を軽減するための工夫

ができないかを検討します。

・ チェックのタイミングは、事故やヒヤリハット事例が発生したときなどをきっかけとしたり、定期

的にリーダーによるチェックや職員間の相互チェックなどを行うとよいでしょう。

●記録による効果の確認

・ 問題点だけではなく、記録することによる効果についても確認しましょう。たとえば、記録を活

用することで、職員の意識やケアのレベルの向上、利用者の生活の充実、満足感の向上に

役立っているかなどを確認します。

・ 作成された介護記録の中で、特に役立った情報や効果的な伝達方法、わかりやすい表現方

法などは施設全体で共有し、標準の記録様式や運用の手順に取り入れて、さらなる改善の

材料として活用しましょう。

【よりよいケアにつながる介護記録のあり方の追求】

●現場における運用実態や経験を踏まえて、自発的な介護記録の改善提案を促すよう、組織が支

援します。優れた改善提案があれば、試行や検証のうえで施設全体で共有し、新たな仕組みとし

て定着させるとともに、さらなる記録の質の向上を促します。

●介護記録は、ケアの質向上のために非常に有効なツールであるとともに、施設における公式の

文書でもあります。管理者は積極的に関与して記録の質の向上を目指しましょう。

【さらなる向上のための方策】

●介護記録への記入は日々の業務の中で必要不可欠なものであり、毎日繰り返され、記録が蓄積

されています。現場職員の一人一人が、記入の効率化や効果的な活用に向けた書式や運用方

法を意識し続けることが重要です。

●さらなる改善に向けて、外部の視点を取り入れることも有効です。他の施設と情報交換することも

有効です。

レベル向上の方策(レベル3→4)

レベル向上の方策(レベル4→5)

レベル維持・向上の方策(レベル5)

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37

第3章 リスクマネジメントの取組のポイント【事故予防編】

1 事故原因の分析と対応策の考え方 事故は予防することが重要ですが、起こってしまった場合にはこの原因を分析し、再発防止や

類似事故の発生防止のために役立てることが重要です。「事故から学ぶ」ことにより、当事者以外

の多くの職員はリスク感性を高めることができ、施設は組織の仕組みに内在する脆弱な部分に対

処することが出来ます。

図表 7は事故原因の分析と対応策の考え方を示しています。社会福祉施設における事故の主な

要因は「職員の対応によるもの(職員要因:職員の知識、技術、状況等を要因とするもの)」「利

用者の行動(本人要因:利用者の ADLや嚥下力等を要因とするもの)」「設備等(環境要因:設備・備品や職員配置等を要因とするもの)」の 3つに大別することが出来ます。要因によって対応の考え方も異なりますので対応方針を共有しておくと、組織として適切で効率的な対応がしやすくな

ります。 職員要因は手順書への反映を検討し、運用の周知徹底を図るのがよいでしょう。利用者の行動

による本人要因は手順化することが出来ませんが、個々の職員に発生の背景や状況をわかりやす

く周知することで気づきのトレーニングとなります。同じく環境要因も手順化はできませんが、

経営判断により設備を改善する、制度を改正するなどによる対応を取ることができます。 感染症についてもその他の介護事故と同様に、原因分析や再発防止策を行っていく必要があり

ます。 図表 7 事故原因の分析と対応策の考え方

事故

職員の対応(職員要因)

設備、他(環境要因)

利用者の行動(本人要因)

手順化できる

手順化 できない

適切な手順書

不適切な手順書

知らない 教育

出来ない 訓練

手順書の改善

手順化 できない

気づきのトレーニング

経営判断・制度改正

要因分析 再発防止

出来ない

事故

職員の対応(職員要因)

設備、他(環境要因)

利用者の行動(本人要因)

手順化できる

手順化 できない

適切な手順書

不適切な手順書

知らない 教育

出来ない 訓練

手順書の改善

手順化 できない

気づきのトレーニング

経営判断・制度改正

要因分析 再発防止

出来ない

出所:社会福祉法人依田窪福祉会常務理事・本部事務局長 村岡裕氏

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38

2 転倒・転落に対する予防策の例 社会福祉施設における事故の中でも転倒・転落は常に発生事故の上位として報告される種類の

一つです。図表 8はある転倒事故を「なぜなぜ分析」によって分析した結果です。事象に対する

「なぜ」を追求することで要因が具体的となり、対策を立案しやすくなることに特徴があります。

この事例では「職員要因」「本人要因」「環境要因」のすべてが抽出されましたが、このうち「職

員要因」に対策を施すことで再発防止をはかっています。 事故事例はその日、その場で要因分析と対応策の立案をしてフィードバックすることによって

職員の気づきを高め、実効性の高い再発防止策へとつなげることが出来るのです。 これまでの事例から、転倒・転落には本人要因が多いことも分かっています。次ページに示し

たような転倒・転落のアセスメントシートを活用することで事故防止につなげることが考えられ

ます。入所時、一定期間後、ADLの変化や入所生活に変化があったときなどにしっかりとアセスメントをしておくことで潜在的な転倒リスクの大きさを把握し、職員の適切な対応を促します。

図表 8 施設における転倒事故の分析例

Aさんが居室のトイレで右側臥位で倒れて

いた

近くに職員がいなかった

その場に職員がいないと危険性が高いので、トイレ誘導した際はその場を離れない

普段から5分~7分は座っており、今回の件以外でもトイレで立ち上がっていることがあった

お通じがありそうな時には長めに座ってもらっていた

これまで車いす座位は安定して保てていた

Aさんから離れても大丈夫だと思っていた

Aさん以外にも誘導する人がいた

なぜ?

なぜ?

なぜ?

なぜ?なぜ?

なぜ?

環境要因

本人要因職員要因本人要因

対策案(手順化)

発生した事象

発生した事象

最終の「なぜ」(要因の源)

立案した対策

凡例

出所:社会福祉法人依田窪福祉会常務理事・本部事務局長 村岡裕氏資料を元に作成

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39

図表 9 転倒・転落アセスメントシート

9月1日 / /

2

4

5     ○

5 ○

2 ○

4

4 ○

1 ○

3 ○

4 ○

3 ○

1

5

5 ○

4 ○

1 ○

6 ○

3

1

1

1

5 ○

3 ○

1

3

4 ○

1

1

2

2

2 ○

1

1 ○

2 ○

1

1 ○

5 ○

合計 66

危険度Ⅰ

危険度Ⅱ

危険度Ⅲ

91歳

転倒・転落アセスメントシート

50点~100点 転倒・転落をよく起こす。

氏名 U . H 男 ・ 女 生年月日

・該当する項目に○をつけて下さい。(評価スコアーに)

□ 車椅子移動しているが、移乗は自分で行う

M・T・S 3 年 2 月 5 日

危険度

 《危険度と評価スコアの合計》

20点~30点 転倒・転落を起こす可能性がある。

31点~49点 転倒・転落を起こしやすい。

分類 特  徴 配点評価年月日

□ 環境の変化になれていない、慣れにくい

□ 周りに左右されやすい

□ コールを押さないで行動しがちである

□ コールを認識できない・理解できない(寝たきりの方はノーチェック)

□ 何事も自分でやろうとする

利用サービス■ 特別養護老人ホーム入所 入所年月日 平成 16  年  3 月  17 日

□ 短期入所生活介護事業所 要介護度 要支援 ・ 1 ・ 2 ・ ③ ・ 4 ・ 5

□ 足の裏がついている感じがしない(意思疎通が困難な場合はノーチェック)

□ 足腰及び下肢の筋力低下がある(寝たきりの方はノーチェック)

□ 上・下肢に痛みやしびれ感がある(寝たきりの方はノーチェック)

□ 過去に転倒・転落したことがある(寝たきりの方はノーチェック)

□ 脳原生・神経原生に疾患がある(寝たきりの方はノーチェック)

□ 視力障害ある(寝たきりの方はノーチェック)

□ 聴力障害がある(寝たきりの方はノーチェック)

□ 認知症の症状は見られない

□ 睡眠安定剤を使用している

□ 利尿剤を使用している

□ 骨・関節異常がある(拘縮・変形)(寝たきりの方はノーチェック)

□ 歩行時、前傾姿勢、ふらつきや傾きやこきざみ歩行、歩行時つまづくがある

□ 端座位及び背もたれがあっても座位がとれない

□ 歩行に杖や歩行器が必要である

□ 常に車椅子を使用しており、立位や立ち上がりは、一人で行う

□ 不穏・興奮等がある

□ 幻視・幻聴がある

□ 頑固である

□ 認知症の症状が多少みられる

□ 認知症の状がかなりみられる(寝たきりの方はノーチェック)

□ 判断力・理解力・記憶力の低下がみられる

□ 夜間の不眠や不穏がある為、昼夜逆転がちである

□ 物を取られたなどの被害的になることがあり、探し回る

□ 能力の過信や危険性の認識不良がある

□ 目的もなく動き回る(徘徊やベッド上などで多動)

認知症状

既往歴

感覚

運動機能

行動障害

□ 麻痺がみられる(寝たきりの方はノーチェック)

プレーゲ本埜・ともしび共同開発 最新版050901

薬剤

排泄状況

活動領域

□ 排泄に介助が必要である(寝たきりの方はノーチェック)

□ 下剤を使用している

□ 尿・便失禁がある(寝たきりの方はノーチェック)

□ 頻尿である(寝たきりの方はノーチェック)

□ ポータブルトイレを使用している

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40

 排泄に関し、何らかの介助を必要とする方

転倒・転落アセスメントチェックに関わる定義

□ 目的もなく動き回る(徘徊やベッド上などで多動)  歩き回る、床やベッドの上で這い回るなど目的もなく動きまわる方

 睡眠剤・精神安定剤・抗不安薬等を服用している方

 尿意・便意等あり、自立及び介助を必要な方で昼間のみ、夜間のみ、昼夜問わずポータブルトイレを使用している方

定  義

 内服・座薬などで下剤を使用し便をコントロールしている方

 尿意・便意等がない方。(オムツ使用している方も含む)

 ほぼ毎日、日中10回以上トイレに行く方。夜間に関しても、細めにトイレに行く方。

 歩行時、常に杖(1点杖、4点杖)、歩行器、シルバーカー等の歩行補助機を使用したり、手すりや家具などをつたって歩く方

 移乗は、『ベッドから車椅子』『車椅子から椅子』『ベッドからポータブル』等、乗り移れる方

 降圧利尿剤を服用している方

 一人での立位やつかまり立ちは可能だが移乗は一人では困難な方

 歩行時の動揺が大きい、突然ふらつく、すり足である、つまづくことがあるなどの方(これらの印象があればチェックを行う)こきざみ歩行は、歩行時と同じ扱いで追加しました。

 背もたれのある椅子上でも大きく体が傾いてしまう、ずり座位になってしまうなど見守りが必要な方

 立ち上がりに介助が必要、歩行に支持物が必要、歩行時上下の動揺が大きい方

 上肢・下肢・腰などに痛みやしびれ感がある方

 脳血管障害による片麻痺や頚部・腰部疾患などに痛みや麻痺がある方

 関節の変形や肩が90度まで上がらない、肘・膝がまっすぐ伸びない、90度以上曲がらない、足の裏が床に着かないなどがある方

 脳の疾患や神経障害等の疾患がある方(脳梗塞・パーキンソン・脊柱小脳変性症など)

 1m程度前の指の本数がわからない、物が何重かに見える、視野の狭小欠損がある方

 耳元で大きな声を出さなければ聞こえない、左右の耳の聞こえの差が激しい方

 床に足の裏がついている感じが弱い。もしくはついている感じがしない方

 認知症の症状があり、コール自体やそれを使用するということが認識できない方

 認知症の症状の有無に関わらず、介助等に対する遠慮やプライドから自ら行ってしまう方

 施設生活に順応できない方や集団生活になかなか慣れない方・慣れようとしない方

 自宅での生活、施設での生活に関わらず、転倒や転落の経験がある方

 夜間不眠の状況が続いたり、明らかに昼夜逆転するなどし、日常生活に支障を生じている方

 突然、喜怒哀楽の感情が不安定になることがある、わずかな刺激で興奮したり攻撃的になることがある方

 実際にないものが見えたり、聞こえたりすることがある方

 物に対し執着を持ち、実際には盗られていないものを盗られたといってみたり、ないもの探したりする等、被害的なことがある方

□ 幻視・幻聴がある

 周囲からの提案などに対してほとんど(2/3以上)受け入れない方

 周囲の人の行動に同調しやすく、周囲に人がいなくなると落ち着きがなくなる方

 コールに対し理解・認識等ができるが、自分でできると思いコールを使用しない方

身体の状況が把握できず、自分は、何でもできると思い込み行動してしてしまう方

□ 睡眠安定剤を使用している

□ 利尿剤を使用している

 記憶障害、日時や季節の観念に障害が見られ、多少会話が成り立たない

 会話がなりたたなく、問題行動も目立ち明らかに認知症の症状が重度と見られる方

 適切な判断、声掛け・促しに対しての理解、短期記憶等が低下してきている方

□ 環境の変化になれていない、慣れにくい

□ 周りに左右されやすい

□ コールを押さないで行動しがちである

□ コールを認識できない・理解できない(寝たきりの方はノーチェック)

□ 何事も自分でやろうとする

□ 排泄に介助が必要である(寝たきりの方はノーチェック)

□ 下剤を使用している

□ 尿・便失禁がある(寝たきりの方はノーチェック)

□ 頻尿である(寝たきりの方はノーチェック)

□ ポータブルトイレを使用している

□ 歩行に杖や歩行器が必要である

□ 能力の過信や危険性の認識不良がある

□ 車椅子移動しているが、移乗は自分で行う

□ 麻痺がみられる(寝たきりの方はノーチェック)

特  徴

既往歴

感覚

□ 頑固である

□ 認知症の症状が多少みられる

□ 認知症の症状がかなりみられる(寝たきりの方はノーチェック)

□ 判断力・理解力・記憶力の低下がみられる

□ 夜間の不眠や不穏がある為、昼夜逆転がちである

□ 物を取られたなどの被害的になることがあり、探し回る問題行動

□ 認知症の症状は見られない

活動領域

薬剤

排泄状況

□ 上・下肢に痛みやしびれ感がある(寝たきりの方はノーチェック)

□ 不穏・興奮等がある

□ 常に車椅子を使用しており、立位や立ち上がりは、一人で行う

□ 骨・関節異常がある(拘縮・変形)(寝たきりの方はノーチェック)

□ 歩行時、前傾姿勢、ふらつきや傾きやこきざみ歩行、歩行時つまづくがある

□ 端座位及び背もたれがあっても座位がとれない

分類

認知症状

 認知症の症状がない方も、判断力や理解力の低下は見られる為追加しました。

運動機能

□ 過去に転倒・転落したことがある(寝たきりの方はノーチェック)

□ 脳原生・神経原生に疾患がある(寝たきりの方はノーチェック)

□ 視力障害ある(寝たきりの方はノーチェック)

□ 聴力障害がある(寝たきりの方はノーチェック)

□ 足の裏がついている感じがしない(意思疎通が困難な場合はノーチェック)

□ 足腰及び下肢の筋力低下がある(寝たきりの方はノーチェック)

出所:社会福祉法人依田窪福祉会常務理事・本部事務局長 村岡裕氏

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第4章 リスクマネジメントの取組チェックリスト

◆ チェックリストの利用手順

自施設やフロアにおけるリスクマネジメント活動の状況をチェックリストに沿って自己評価し

ます。

1. それぞれの項目について、具体的な活動や取り組みをコメントします。 2. 各レベルのチェック項目をすべて満たした場合、当該レベルを達成したことになります。(次ページの例では“レベル4”の項目で満たせないものがあるため、評価は“レベル3”

となります。)

3. 評価をした上での総括を「総合所見」に、次のレベルにステップアップするための方策を「レベルアップに向けた方策」に記入します。

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図表 10 チェックリストによる自己評価例

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◆ 報告制度(ガイドライン13ページ)

施設名 評価実施者 評価実施日

カテ

ゴリ レベル診断チェック項目

自己評価コメント

(具体的な活動や取り組み)

□ 報告制度が整備され、認識されている □ 重大事例が制度を通じて報告されている

□ 事例は報告書式にしたがい、不足なく記載されている □ 軽微なものも含め、組織で起こりうる多様な事例が十分報告されている □ 客観的な事実が誰にでもわかるように記載されている

□ 事例情報を施設内にフィードバックする仕組みが整備されている □ 報告に基づいて特定の手法による分析が行われている □ 事例は、必要に応じて対策立案まで実施されている

□ 組織の「仕組み」や「システム」を見直す観点から対策立案されている

□ 報告制度がそれぞれの現場で自律的に運用されている

□ 職員が報告事例から学ぶことのできる機会を提供している

□ 「ヒヤリハット大賞」を設けて職員を表彰するなど、実効的な運用のた

めの工夫を行っている

成熟度レベル (1・2・3・4・5) ※レベル 2のチェック項目を満たすことができない場合には、レベル 1と評価 総合所見:

レベルアップに向けた方策:

レベル 2 制度の 整備

レベル4 報告に基づく効果的な分析

レベル3 適切な 報告

レベル5

自律的な運用

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◆ 委員会の運営(ガイドライン17ページ)

施設名 評価実施者 評価実施日

カテ

ゴリ レベル診断チェック項目

自己評価コメント

(具体的な活動や取り組み)

□ 施設の安全管理に関する委員会が設置されている □ 委員会の意義と目的が明確化されている □ 委員会が定期的に開催されている

□ 委員会の役割、委員構成、開催頻度、権限などを規定した文書がある □ 適切なメンバーにより構成されている

□ 委員会および委員に対して、活動推進に必要な権限が与えられている □ 事務局が機能し、委員会が適切に運用されている □ 委員会に安全管理に必要な情報が集約され対策検討が行われている

□ 対策実施方法が具体的に検討される

□ 参加者から偏りなく発言があり、実効性のある議論が行われている

□ 検討された対策の効果の検証が行われている

□ 自発的な問題提起と解決のための建設的な議論が行われる

成熟度レベル (1・2・3・4・5) ※レベル 2のチェック項目を満たすことができない場合には、レベル 1と評価 総合所見:

レベルアップに向けた方策:

レベル 2

委員会 設置

レベル3 メンバー と権限

レベル4 適切な運用

レベル5 建設的な実施

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◆ 業務手順書の整備(ガイドライン21ページ)

施設名 評価実施者 評価実施日

カテ

ゴリ レベル診断チェック項目

自己評価コメント

(具体的な活動や取り組み)

□ 自施設用にカスタマイズされた手順書が整備されている □ 手順書の存在が周知されている

□ 必要なときに参照できるよう手順書が整備されている

□ 手順書に基づく教育・研修が実施されている

□ 手順書が日常のケアや業務に活用され、実践されている □ 手順書見直しの手順が明確化されている □ 定期的に、ケアの実態を反映した見直しが行われている

□ 手順書の妥当性の確認や効果測定がおこなわれている

□ 現場から、随時、自発的な手順の改善提案がある

□ 現場の改善提案を組織として取り込み、共有する仕組みがある

□ 積極的な情報収集により、新たな知見を手順書に反映している

成熟度レベル (1・2・3・4・5) ※レベル 2のチェック項目を満たすことができない場合には、レベル 1と評価 総合所見:

レベルアップに向けた方策:

レベル 2 手 順 書整備

レベル3

周知と活用

レベル4 見直しの 仕組み

レベル5

自発的な改善

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◆ 研修(ガイドライン25ページ)

施設名 評価実施者 評価実施日

カテ

ゴリ レベル診断チェック項目

自己評価コメント

(具体的な活動や取り組み)

□ 事故予防をテーマとした全体研修が行われている

□ ケア手順・技術の研修時に、事故予防の視点が示されている □ 研修に参加しやすくするため時間帯、開催回数などに工夫がされている □ 職員に研修参加への動機づけをしている

□ 外部研修の奨励や外部講師の活用を行っている □ アンケート等によって研修効果が把握されている □ 研修プログラムの見直し、改善が行われている。

□ 施設の特性や事例に基づく独自のプログラムがある

□ 部門別の自発的な勉強会が企画、開催されている

□ どの部門にも積極的に学ぶ姿勢がある

□ 施設として部門単位の活動を尊重、支援している

成熟度レベル (1・2・3・4・5) ※レベル 2のチェック項目を満たすことができない場合には、レベル 1と評価 総合所見:

レベルアップに向けた方策:

レベル 2 全体 研修

レベル3 全員参加

レベル4 研修 プログラム

レベル5 自律的な実施

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◆ 家族とのパートナーシップ(ガイドライン29ページ)

施設名 評価実施者 評価実施日

カテ

ゴリ レベル診断チェック項目

自己評価コメント

(具体的な活動や取り組み)

□ 利用者の生活におけるリスクについて、入所時やケアプランの変更時に家族に説明し

ている

□ 利用者・家族の声を取り上げる仕組み(窓口や意見箱の設置など受動的なもの)があ

□ 利用者・家族の声を取り上げる仕組み(家族会設置、意見交換会開催やアンケー

ト調査など能動的なもの)がある

□ 施設の状況や利用者の状況を報告して、利用者の生活におけるリスクについて施

設と家族に共通認識がある

□ 利用者や家族の意見、要望、苦情を通じて、ケアの改善に活かす仕組みがあ

□ 利用者や家族からケアの改善に関する建設的な意見や要望が出されている

□ 利用者の生活を尊重したケアの目標を共有している

□ 利用者や家族にカンファレンスに同席を求めたり、ケアの内容について

の判断・決定の場面で意向を確認することのできる仕組みとなっている

成熟度レベル (1・2・3・4・5) ※レベル 2のチェック項目を満たすことができない場合には、レベル 1と評価 総合所見:

レベルアップに向けた方策:

レベル 2 コミュニケーション

レベル3 意思疎通

レベル4 声を反映したケアの改善

レベル5 家族の参加

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◆ 介護記録の作成・活用(ガイドライン33ページ)

施設名 評価実施者 評価実施日

カテ

ゴリ レベル診断チェック項目

自己評価コメント

(具体的な活動や取り組み)

□ 介護記録が確実にされている

□ 介護記録が適切に管理され、共有されている

□ ケアプランに沿った記録が分かりやすく記載されている

□ ケアプランと連動した運用がされている □ 記録の内容や質をチェックする仕組みがある

□ 必要に応じて記録の方法や書式の見直しをする仕組みがある

□ 記録を通してケアの質向上に向けた取り組みや工夫が実践されている

成熟度レベル (1・2・3・4・5) ※レベル 2のチェック項目を満たすことができない場合には、レベル 1と評価 総合所見:

レベルアップに向けた方策:

レベル 2 記 録 の作成

レベル3 適切な記録

レベル4 チェックや見直しの仕組み

レベル5 自律的な改善

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経営者・チームリーダー層等マネジメント促進事業実施要綱

制定 20福保生地第356号

平成20年6月1日

(目的)

第1条 経営者・チームリーダー層等マネジメント促進事業(以下「マネジメント促進

事業」という。)は、社会福祉事業の分野では、リスクマネジメントや人事管理、サ

ービス向上に向けた取組などのノウハウが十分に蓄積されていないことから、その取

組方策を明らかにし、社会福祉事業分野全体の経営の健全化及び運営の適正化を図る

ことで、利用者へのサービス提供体制が確立され、従事者が継続して勤務できる環境

づくりに資することを目的とする。

(実施主体)

第2条 マネジメント促進事業の実施主体は、東京都とする。

(事業期間)

第3条 マネジメント促進事業実施期間は、平成20年6月1日から平成21年3月3

1日までとする。

(事業内容)

第4条 マネジメント促進事業の目的を達成するための取組として、次の事業を行う。

(1) 社会福祉事業における利用者サービスの向上に向けた運営体制を明らかにする

ために、都内の社会福祉事業者においてモデル事業を実施する。

(2) モデル事業において明らかにされた取組方策を、他の社会福祉事業者が取り組

めるよう、ガイドラインを作成し、配布する。

(検討委員会)

第5条 東京都は、社会福祉事業者が実施するモデル事業を検証し、都内の社会福祉事

業者全体の取組を普及促進するため、検討委員会を設置する。

2 検討委員会の構成等設置に関する規定については別に定める。

(業務の委託)

第6条 東京都は、検討委員会において行う取組の一部を調査研究事業者に委託するこ

とができる。

(その他)

第7条 この要綱に定めるもののほか、この事業の実施に関し必要な事項については別

に定める。

附 則

この要綱は、平成20年6月1日から施行する。