特定外来生物(ヒアリ、アカカミアリ、アルゼンチ …1...

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1 特定外来生物(ヒアリ、アカカミアリ、アルゼンチンアリ)の 防除に使用するベイト剤の実地効力試験について(中間報告) 1. 趣旨 ヒアリ等の侵入や定着を阻止するためには、バイオレジスタンス(在来のアリ等の 生物による自然が持つ外来生物に対する抵抗力・抑制力)を健全な状態に保つことが 重要である。 しかし、本市の港湾関連エリアの周辺地域では、外来種であるアルゼンチンアリ(特 定外来生物)が侵入・定着している区域があることから、この区域においては、まず、 アルゼンチンアリを駆除した後に、地域固有の在来種のアリ等を再定着させ、これに ヒアリ等の侵入・定着阻止の役割を持たせることが必要である。 また、ヒアリ、アカカミアリ、アルゼンチンアリに同時に効果があり、かつ毒性や 残留性が低いベイト剤(餌型の殺虫剤)の選定や、在来アリコロニーの移植等による 在来アリの再定着を促進する手法の確立が必要である。 このため、「実地でのアルゼンチンアリに対する効力試験の結果」、「製薬メーカーに おいて海外で実施しているヒアリ等に対する実地効力試験結果」、さらに、「在来種と 特定外来生物(アルゼンチンアリ等)の生息エリア」の確認のもと、健全なバイオレジ スタンスの構築に繋がるアルゼンチンアリの駆除とヒアリ等の侵入・定着阻止のため 詳細作業計画(対象エリア、段階的スケジュール、散布量、経費等)を検討し、今後 これを推進するための一助として、当該ベイト剤実地効力試験を実施するものである。 2.試験に供したベイト剤 以下の 5 種類のベイト剤を試験対象とする。 ベイト剤名 薬剤A 薬剤B 薬剤C 薬剤D 薬剤E 試験区 12 試験区 12 試験区 3 試験区 形態等 顆粒 顆粒 顆粒 顆粒 ペースト (ケース入) 有効成分の特性 (作用機作等) IGR (昆虫成長 制御) 神経伝達 阻害 (遅効性) エネルギー 代謝阻害 (遅効性) IGR (昆虫成長 制御) 神経伝達 阻害 (遅効性) 散布量 1 回目 10/26 2g/ 3×3 m 2 10/27 4g/ 1.8×2 m 2 11/3 10g/ 1×4 m 2 2 回目 10/31 2g/ 3×3 m 2 1 試験区 2 試験区 11/2 4g/ 1×1 m 2 11/7 5g/ 1×1 m 2 11/20 5g/ 1×1 m 2 3 回目 12/1 5g/ 1×1 m 2 12/6 5g/ 1×1 m 2 No.

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特定外来生物(ヒアリ、アカカミアリ、アルゼンチンアリ)の

防除に使用するベイト剤の実地効力試験について(中間報告)

1. 趣旨

ヒアリ等の侵入や定着を阻止するためには、バイオレジスタンス(在来のアリ等の

生物による自然が持つ外来生物に対する抵抗力・抑制力)を健全な状態に保つことが

重要である。

しかし、本市の港湾関連エリアの周辺地域では、外来種であるアルゼンチンアリ(特

定外来生物)が侵入・定着している区域があることから、この区域においては、まず、

アルゼンチンアリを駆除した後に、地域固有の在来種のアリ等を再定着させ、これに

ヒアリ等の侵入・定着阻止の役割を持たせることが必要である。

また、ヒアリ、アカカミアリ、アルゼンチンアリに同時に効果があり、かつ毒性や

残留性が低いベイト剤(餌型の殺虫剤)の選定や、在来アリコロニーの移植等による

在来アリの再定着を促進する手法の確立が必要である。

このため、「実地でのアルゼンチンアリに対する効力試験の結果」、「製薬メーカーに

おいて海外で実施しているヒアリ等に対する実地効力試験結果」、さらに、「在来種と

特定外来生物(アルゼンチンアリ等)の生息エリア」の確認のもと、健全なバイオレジ

スタンスの構築に繋がるアルゼンチンアリの駆除とヒアリ等の侵入・定着阻止のため

詳細作業計画(対象エリア、段階的スケジュール、散布量、経費等)を検討し、今後

これを推進するための一助として、当該ベイト剤実地効力試験を実施するものである。

2.試験に供したベイト剤

以下の 5種類のベイト剤を試験対象とする。

ベイト剤名 薬剤A 薬剤B 薬剤C 薬剤D 薬剤E

試験区 第 1・2試験区 第 1・2試験区 第 3試験区

形態等 顆粒 顆粒 顆粒 顆粒 ペースト

(ケース入)

有効成分の特性 (作用機作等)

IGR (昆虫成長 制御)

神経伝達 阻害

(遅効性)

エネルギー 代謝阻害 (遅効性)

IGR (昆虫成長 制御)

神経伝達 阻害

(遅効性)

散布量

1回目 10/26 約 2g/ 3×3 m2 10/27 約 4g/ 1.8×2 m2 11/3

10g/ 1×4 m2

2回目 10/31 約 2g/ 3×3 m2

第 1試験区 第 2試験区

11/2

約 4g/ 1×1 m2

11/7

約 5g/ 1×1 m2

11/20

約 5g/ 1×1 m2

3回目 12/1 約 5g/ 1×1 m2 12/6 約 5g/ 1×1 m2

資 料

No.

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3.試験処理区の配置 (第 1 試験区)

緩衝区

薬剤A処理区

緩衝区

緩衝区

薬剤B処理区

緩衝区

緩衝区

無処理区

緩衝区

緩衝区

薬剤C処理区

緩衝区

緩衝区

薬剤D処理区

緩衝地区

全面積:32m×165m=5280m2

1処理区当たり:32m×11m=352m2

(第 2 試験区)

全面積:13m×180m=2340m2

1処理区当たり:13m×12m=156m2

(第3試験区)

4m

8m 16m 16m 16m

全面積:4m×56m=224m2

緩衝区

薬剤D処理区

緩衝区

緩衝区

薬剤C処理区

緩衝区

緩衝区

無処理区

緩衝区

緩衝区

薬剤B処理区

緩衝区

緩衝区

薬剤A処理区

緩衝区

無処理区

緩衝区

薬剤 E 処理区

緩衝区

糖液シートによる生息状況のモニタリング箇所数

8点×30列=240点(1処理区あたり 8点×2列=16点)

糖液シートによる生息状況のモニタリング箇所数

2点×28列=56点

165m

11m

180m

12m

32m

13m

糖液シートによる生息状況のモニタリング箇所数

4点×30列=120点(1処理区あたり 4点×2列=8点)

56m

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4.実施スケジュール(予定含む)

モニタリング

(生息密度調査、ベイト摂

取量等)

薬剤散布 薬剤別スケジュール

統括 A B C D E

平成 29 年

10月

上旬

中旬

下旬

● 撒布前 10/26

11月

上旬

中旬

下旬

● 撒布約 1週後 11/2

● 撒布約 2週後 11/9

● 撒布約 2週後 11/15

12月

上旬

中旬

下旬

● 撒布約 4週後 11/24

● 撒布約 8週後

● ● ● ● ●

平成 30 年

1月

上旬

中旬

下旬

2月

上旬

中旬

下旬

● 撒布約 14週後

3月

上旬

中旬

下旬

● 春季撒布前

4月

上旬

中旬

下旬

● 春季撒布約 1週後

● 春季撒布約 2週後

5月

上旬

中旬

下旬

● 春季撒布約 4週後

○ ○ ○ ○ ○ ○

6月

上旬

中旬

下旬

● 春季撒布約 8週後

7月

上旬

中旬

下旬

● ○ ○ ○ ○ ○ ○

8月

上旬

中旬

下旬

● ○ ○ ○ ○ ○ ○

9月

上旬

中旬

下旬

10月

上旬

中旬

下旬

11月

上旬

中旬

下旬

● 初回撒布約1年後

(平成 30年 12月以降も、継続実施を予定)

春季撒布

(状況により追加撒布)

(状況により追加撒布)

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5.薬剤処理効果を確認するモニタリング方法

① 糖液シートは、約 10cm×10cmに厚みを持たせて折り畳んだ白いペーパータオルに、糖

液を染み込ませて作成し、約 5m×5mメッシュで地面に置く。地点番号は試験区ごとに

「1A」、「1B」等と表記する。なお、気温や日当たり等の条件により、糖蜜が乾燥し

た場合は適宜糖蜜シートに糖蜜を追加する。

糖液シート設置風景 糖液シート設置例

② 設置から一定時間(90分程度)経過後に、糖液シートを写真撮影する。

③ 糖液シートによる生息調査の評価には、

サブサンプリング法を用いる。すなわち

右図のとおり、糖液シート上で 9箇所の

枠の個体数をカウントし、各枠の個体数

及び 9箇所の合計数、また、それに基づ

く糖液シート 1枚あたりの推定個体数を

算定する。なお、サブサンプリング法の

場合、誘引されたアリが少ない場合、個

体数の推定の精度が下がることから、全

糖蜜シートでアリの誘引の有無について

も記録を行い、糖液シートに誘引されたアリが 20個体以下の場合は全数計数すること

とする。

④ 参照試験として、上記試験と同時期にポートアイランド内の北公園及び中公園の各 10

箇所の定点において、糖液シートによる誘引調査を実施する。

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(参考)糖液シートに集まったアルゼンチンアリ 生息密度調査 60分間放置後

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6.試験結果(中間報告)

(1)試験区における列ごとの個体数比較

① 薬剤A、薬剤B、薬剤C、薬剤D(第 1 試験区)

② 薬剤E(第 3 試験区)

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(2)薬剤A、薬剤B、薬剤C、薬剤Dの処理区におけるアリ個体数の経日変化

(3)まとめ

1.いずれの薬剤処理区も週が進むにつれて個体数密度が低下する傾向が認められる。

2.特に薬剤B及び薬剤Cで個体数密度の低下幅が大きいように見える。なお、薬剤A

及び薬剤Dの有効成分IGR(昆虫成長制御剤)は、次世代個体の発生を抑制する。

この為、従来型殺虫剤(薬剤B及び薬剤C)と比較して個体数低下に時間を要し、

継続的なモニタリングにより、個体数密度の増減を確認していく必要がある。

3.ただし、薬剤を撒布していない無処理区や比較区であっても週が進むにつれて個体

数密度が低下しており、気温低下に伴い不活発になっていることを示唆している。

第 1試験区

第2試験区

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参考資料 気象データとこれまでの試験作業スケジュール(H29/10/26 ~ H29/12/10)

:第

1・2試験区にお

ける薬剤散布実施日

:モニタリング実施日