研究の進め方...研究を進めるための参考資料...

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★研究を進めるための参考資料★ 「改めて研究と向き合う教員のための ウォーミングアップ・ブック ~研究の進め方・学習指導案の書き方 入門編~」 島根県立浜田教育センター H20.3 上記参考資料は、こちらから見ることができます。 PC でも検索していただけますが、浜田教育センターの HP からは 検索できません。島根県の HP で検索していただくと見つかります が、こちらから見ることができます。 研究の進め方 ~何を明らかにしたいのかを明確に~

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Page 1: 研究の進め方...研究を進めるための参考資料 「改めて研究と向き合う教員のための ウォーミングアップ・ブック ~研究の進め方・学習指導案の書き方

★研究を進めるための参考資料★

「改めて研究と向き合う教員のための ウォーミングアップ・ブック

~研究の進め方・学習指導案の書き方 入門編~」

島根県立浜田教育センター H20.3

上記参考資料は、こちらから見ることができます。

PC でも検索していただけますが、浜田教育センターのHP からは

検索できません。島根県の HPで検索していただくと見つかります

が、こちらから見ることができます。

研究の進め方

~何を明らかにしたいのかを明確に~

Page 2: 研究の進め方...研究を進めるための参考資料 「改めて研究と向き合う教員のための ウォーミングアップ・ブック ~研究の進め方・学習指導案の書き方

1

まず、「自分が何を明らかにしようとしているのか」を決めて、最終的に、「何が

明らかになったのか」をまとめたものが研究となります。

この「何を明らかにしようとしているのか」を考えることが研究主題設定の理由

や研究の目的になっていきます。

【引用】

「改めて研究と向き合う教員のための ウォーミングアップ・ブック

~研究の進め方・学習指導案の書き方 入門編~」 島根県立浜田教育センター H20.3

なぜ、研究をするのか?

★教員は研究を行わなければならないことが、法律に

よって規定されている。

教育公務員特例法

(研修)

第 21条 教育公務員は、その職責を遂行するために、

絶えず研究と修養に努めなければならない。

研究とは何か?

研究とは、なんらかの事実や事象を、根拠を持って

明らかにしていく作業

「自分はこの研究で何を明らかにしようとしているのか」

「自分はこの研究で何を明らかにしたか」

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「どのような実践を行ったか」ということだけをまとめたものが「実践報告」です。

この「実践報告」に「子どもたちがどのように変わった」のかということを明らかに

したものが「実践研究」になります。

【引用】

「養護教諭ってなんだろう?-その魅力とこれからの養護教諭の専門性とはー」

(千葉大学教育学部 教授 岡田加奈子著 2015.9 少年写真新聞社)より

実践報告に評価(どのように変わったか)を行うことで実践研究となります。

評価研究ともよばれます。

普段、実践を行われる際には、かならず「これを行うことで(これをすることが)、

児童生徒にこういう良い影響を及ぼすだろう」と考えて実践をしたり考えたりして

おられると思いますので、それを評価(検証)することで、研究となります。

実践報告と実践研究の違いは?

実践報告 + 評価 = 実践研究

(評価研究)

どのように学ばせると身につくのか。

どのような支援を行うことでどのように変化したか。

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養護教諭の行う実践的研究は、児童生徒の健康課題の解決を目的に、問題を取り上

げて、自らの実践や学校としての取り組みの内容や方法をどう改善したらいいかを

探求して、今後の実践に役立てるために行うものになります。

【引用】

「学校保健の課題とその対応 −養護教諭の職務等に関する調査結果から−」

財団法人 日本学校保健会 H24.3

児童生徒の健康課題の解決を目的に、

学校保健活動や教育実践に関わる問題を取り上

げ、自らの実践や学校としての組織的な取組の

内容や方法について、どのように改善すべきか

探究し、実践をさらに高めるもの

養護教諭の行う実践的研究

実践的研究の進め方

① 実態把握・健康課題の明確化

② 先行研究の確認

③ 研究課題・目標の設定

④ 仮説の構築

⑤ 研究方法の選択・決定

⑥ 研究計画書の作成

⑦ データ収集及び分析

⑧ 結果の解釈・考察

⑨ 研究のまとめ

⑩ 研究成果を校内等で発表

ここが大切!

Page 5: 研究の進め方...研究を進めるための参考資料 「改めて研究と向き合う教員のための ウォーミングアップ・ブック ~研究の進め方・学習指導案の書き方

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実態

把握

研究の

背景

意義

研究

動機

研究計画書を作成しよう!

研究動機に必要なものは、実態把握です。

実態把握と研究の背景・意義を合わせたものが、研究動機になります。

①研究動機

実態把握をしよう!

研究の背景・意義を調べよう!

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課題・明らかにしたいこと

・目指す姿

研究

目的

②研究目的

実態把握

実態把握によって、見つけた課題から、「明らかにしたいこと」「目指す姿」を設定し

ます。それが研究目的になります。

実態から課題を考えよう!

研究の動機となる実態・課題と目的に因果関係がないといけませんので、研究の動機

と目的に因果関係があるかどうかを確認しましょう。

様式4「課題研究計画書」は

「研究主題」と研究主題設定

の理由(つまり、研究動機)

を作成して提出していただけ

れば良いですが、研究目的ま

で考えておくと、研究主題を

考えやすくなります。

Page 7: 研究の進め方...研究を進めるための参考資料 「改めて研究と向き合う教員のための ウォーミングアップ・ブック ~研究の進め方・学習指導案の書き方

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③研究仮説

課題 目的

仮説

研究仮説は、課題から目的を考える中で浮かんでくるものだと思います。

普段の実践でも、目的を持って行っておられると思います。「何をしたら、目的が達

成できるのか」が仮説になります。

例えば、掲示物を作成して掲示するときに、掲示物の掲示の目的は「児童生徒が自

身の健康に関心をもつこと」だとすると、どんなふうにすると、児童生徒が自身の健

康に関心をもてるだろうかと考えて、工夫をします。その工夫が仮説です。

普段は、その仮説が目的の達成に有効だったのか検証することはあまりないと思い

ますが、それを検証していくのが、研究です。

課題と目的から仮説を立てよう!

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④研究の方法

実践方法と検証方法の2つを立てよう!

実践方法:いつ、どこで、誰(何)に対して、

何を使って、どのような方策を行うか。

◆検証方法:研究仮説をどうやって確かめるか。

仮説に対しての、実践方法と検証方法を立てます。

研究主題を考えよう!

研究主題はその研究のキャッチコピー・看板

研究の目的・動機・仮説が総括してあらわされるもの

研究内容のおおよそがつかめるもの

読む人が興味・関心を持ちやすい表現

研究主題は、その研究の看板となるものなので、研究の目的・動機・仮説が総括して

表されるものです。

【引用】

「改めて研究と向き合う教員のための ウォーミングアップ・ブック

~研究の進め方・学習指導案の書き方 入門編~」 島根県立浜田教育センター H20.3

Page 9: 研究の進め方...研究を進めるための参考資料 「改めて研究と向き合う教員のための ウォーミングアップ・ブック ~研究の進め方・学習指導案の書き方

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課題・研究目的・仮説のイメージ

仮説・研究の方法の例

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資料1 (様式4)

課題研究計画書

学校名

氏 名

研究主題

(研究テーマ)

・研究のタイトル。

・自分が何の研究をするのかを一行程度の簡潔な文で書く。

1 研究動機 ・なぜこの研究をしようと思ったのか。

・なぜ、その必要があるのか。

2 研究目的 ・何を明らかにしたいのか。

・明らかにしたいこと、生み出したいことは何か。

3 研究の背景・意義 ・先行研究ではどのようなことが明らかにされているか

・どのようなことは明らかにされていないか

・自分が行う研究の意義

4 用語・概念の定義 ・鍵となる用語や概念の定義

(例:「不定愁訴を訴える子ども」を研究する場合、どのような症状

を調べるのかとその根拠など)

5 研究仮説 ・この研究の結果について、どのような予測が考えられるか。

・研究の目的についての指針、ビジョン。

(研究の目的と合わせて記述してもよい。)

6 研究の方法及び対象

・研究の目的の達成のために、いつ・どこで・誰(何)に対して・何を

使って・どのような方策を行うか。

・研究仮説の確認のために、成果をどうやって確かめるか。

*データを収集する場合、調査対象、必要な手続き、収集の時期等

*質問紙調査を行う場合、どんな質問紙を用いるか

*分析に必要なデータの種類と分析方法

7 研究の

タイムスケジュール

・いつ頃までに何をするのか

データ収集する時期、分析する時期、

結果をまとめる時期など

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資料2-1 課題研究計画書(記入例)

学校名 ○○〇立○○小学校

氏 名 ○○ ○○

研究主題

(研究テーマ)

「児童の睡眠習慣と心身の自覚症状の関連をふまえた効果的な健康相

談・保健教育の在り方」

1 研究動機 ・保健室来室児童で、倦怠感、眠い、横になりたい等の訴えが増加して

いる。

H26 35% → H27 42% → H28 51%

・生活リズム調査の結果、睡眠時間が短くなっている。

(2年生・5年生)

H26 H27 H28

小 2 8:25 8:12 8:01

小 5 7:58 7:47 7:30

・不定愁訴と睡眠習慣の関連をもとに、養護教諭として効果的な健康相

談、保健教育(集団・個別)の在り方を提案したい。

2 研究目的 ・生活リズム調査等を活用し、睡眠習慣や食習慣などの生活習慣と自覚

症状との関連を明らかにすること。

・睡眠習慣の改善に効果的な保健教育の在り方を明らかにすること。

3 研究の背景・意義 ・児童生徒を対象に、就寝時刻、起床時刻、睡眠時間、起きた時の気分

と自覚症状との関連が検討され、就寝時刻が遅いと心身の訴えが多い

こと。

・睡眠時間と朝食などの生活習慣に関連がみられること。

・健康管理だけでなく自己解決能力を育むために、健康相談・保健指導

は養護教諭の職務の中でも大きな役割を期待されていること。

4 用語・概念の定義 ・睡眠習慣(ここでは、就寝時刻、起床時刻の習慣のことを指す)

・生活リズム調査(睡眠習慣・食習慣・自覚症状についての調査)

5 研究仮説 ・自覚症状、食習慣、睡眠習慣について調査を行うことで、不定愁訴と

睡眠などの生活習慣の関連を明らかにすることができるであろう。

・睡眠習慣に関する保健教育、保健指導に取り組めば、児童の睡眠習慣

の改善につながるであろう。

6 研究の方法及び対象

①実践方法

・生活リズム調査(全校)

・保健教育(学級活動)(3・6年生)

・保健室来室者に対する保健指導

②検証方法

・生活リズム調査の変化

・学活のワークシート

・保健室来室者の変容(記録より)

7 研究の

タイムスケジュール

①生活リズム調査(7月)

②保健教育(学級活動)(9月)

③保健室来室者に対する健康相談・保健指導(4月~11月)

④生活リズム調査(11月)

⑤分析・集計(12月)

⑥レポート作成(1月)

⑦まとめ・校内発表(2月)

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資料2-2 課題研究計画書(記入例)

学校名 ○○〇立○○小学校

氏 名 ○○ ○○

研究主題

(研究テーマ)

家庭と連携した指導の在り方を考える。

~朝食摂取・内容の改善の取組をとおして~

1 研究動機 【実態】

H30年の食生活調査より、朝食摂取について「時々食べない」「食べ

ない」と答えた児童の割合が、4年生(現 5年生)が他の学年に比べて

多かった。

また、朝食の内容については、「主食+主菜+副菜」を摂取している

児童は、全校で28%しかいなかった。

【課題】

・朝食を摂取する重要性について理解していない児童がいる。

・バランスの良い食事の摂取について家庭の協力が必要である。

2 研究目的 朝食の摂取・内容の改善に向けて、家庭と連携した効果的な指導につ

いて明らかにしたい。

3 研究の背景・意義 中教審答申(H28.12.21)において、「食を取り巻く社会環境が変化

し、栄養摂取の偏りや朝食欠食といった食習慣の乱れ等に起因する肥満

や生活習慣病が見られる」と述べられており、生涯にわたって健康で安

全な生活や健全な食生活を送ることができるよう、栄養教諭は食に関す

る指導について、家庭と連携・調整において要としての役割を果たすこ

とも求められている。そのため、朝食の摂取・内容の改善に向けて、家

庭との連携の在り方を研究する。

4 用語・概念の定義 バランスの良い食事とは「主食+主菜+副菜」が摂取されていることを

指す。

5 研究仮説 ①朝食摂取が身体に及ぼす影響について TTで授業を実施し、事後活動

に家庭での課題を設定することで、家庭と連携が図れるであろう。

②親子料理教室や学校保健委員会などで、朝食の重要性及び栄養バラン

スについての内容を取り入れたりすることで、家庭と連携し、朝食の

栄養バランスを改善することができるであろう。

6 研究の方法及び対象

①食の指導(学級活動)(7月):5年生

事後活動(翌週)「毎日朝食を食べよう!」「バランス良く食べよう!」

【検証方法】学級活動の事後活動シート

②学校保健委員会(9月)

「バランスの良い食事の在り方について」

親子料理教室

「簡単で栄養満点の朝食づくり」

【検証方法】食生活調査、アンケート調査

7 研究の

タイムスケジュール

6月 食生活調査

7月 校内中間発表

7月 食の指導(学級活動)

9月 学校保健委員会、親子料理教室

10月~11月 アンケート等の分析・集計

12月~1月 レポート作成

2月 校内成果発表

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研究計画書を作成したら・・・

管理職、研究主任、保健主事等に見てもらおう!!

• 現状と課題

• 何を明らかにしたいのか

• どのような方法で進めるか などを説明しよう。

・正確に伝えられる!

・資料作成自体、自分の頭の中を

整理できる良い作業!

「統計分析のここが知りたい 保健・看護・心理・教育系研究のまとめ方」

(石井秀宗著 2005.7)を基に編集

研究のまとめ方

結果と考察は分けて記述。

結果と考察、まとめの内容を混同して記述すると、考察が充分で

はなくなり、実践報告になってしまう。

考察は結果をもたらした理由の分析。

仮説が有効だったのか、無効だったか、その理由はなぜか。

報告ではなく研究となりうるためには、実践の根拠ある振り返り

が重要。

実践をやりっぱなしにしないためには、考察を充分に行うことが

重要。

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考察の重要性 期待した結果が得られたか。

どうしてそのような結果になったのか。

結果をどのように利用できるのか。

これらについて、意味づ

けをして書きましょう。

また、可能な限り、根拠

(エビデンス)をふまえて

書きましょう。

【例】

・「△△の結果を予測していたが、実際には▲▲の結果となった。

その理由は××によるものと推測する。」

・「この結果から、□□に役立つ可能性が示唆された。」

・「■■に利用できることを考えると、今回の研究結果の意義は大きいと考える。」

課題に対して、仮説を立てて実践したけれど、成果が上がらない場合もあると思

います。その場合は、なぜ予想していた結果にならなかったのかを考察していくこ

とが大事になります。それが次につながっていき、研究として意味があるものにな

ります。

また、研究の「まとめ」は「研究の目的」が達成できたかについて記載します。結

果を考察したものから、「研究を通してどのようなことがわかったか、明らかになっ

たか」について、最後にまとめると良いでしょう。

「医療・福祉で役立つ『効果的な文章の書き方』入門講座」 園部俊晴著を基に作成

課題研究レポート作成上の留意点 1文はあまり長くならないようにする。

文体は「である」調で書く。

表記や用語を統一する。

事実と意見を区別する。

説明には図表を有効に活用する。

主語・述語などの文の関係、語句の係り受け乱れがないように

する。

必要な場所では接続詞を積極的に使い、論理を明示的にする。

章や節の中で、結論やまとめを先に書き、そのあとにその結論

やまとめを論証する記述を行うようにする。

【引用】

「改めて研究と向き合う教員のための ウォーミングアップ・ブック

~研究の進め方・学習指導案の書き方 入門編~」 島根県立浜田教育センター H20.3

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提出の際の留意点

個人情報のこと • 事例研究では特に対象者が特定されないように。

著作権のこと • 他者の研究成果は、引用を明記すること。

• 教科書等のコピーを添付しないように。

【参考文献記載例】

・朝倉 隆司『養護教諭のための調査研究法入門』少年写真新聞社、2013年

〇島根県教育センター(松江市内中原町 255-1)及び、浜田教育センター(浜田

市長沢町 1550-1)において、過年度の研究レポートが閲覧できます。

閲覧を希望する場合は、各教育センターに連絡をしてください。

〇研修や研究について、質問等がある場合は、担当者までご連絡ください。

【担当者】

島根県教育センター 企画・研修スタッフ 岩地い わ じ

千晶ち あ き

TEL(0852)22-5864 FAX(0852)22-5581

[email protected]