知的資産(見えざる資産)を活用して経営課題を解 …特 集...

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知的資産経営のすすめ 知的資産経営のすすめ 知的資産(見えざる資産)を活用して経営課題を解決! 知的資産(見えざる資産)を活用して経営課題を解決! ◆知的資産とは? 「知的資産」とは、特許やブランド、 ノウハウなどの 「知的財産」と同義ではなく、それらを一部に含み、さら に組織力、人材、技術、経営理念、顧客等とのネットワー クなど、 財務諸表には表れてこない目に見えにくい経 営資源の総称を指します。 「知的資産」は企業の本当の価値・強みであり、企業 競争力の源泉です。企業経営・活動は、知的資産の活 用なしには成り立たないものです。 ◆知的資産経営とは? そのようなそれぞれの会社の強み(知的資産)をしっ かりと把握し、活用することで業績の向上や、会社の価 値向上に結びつけることが「知的資産経営」です。 企業が勝ち残っていくためには、差別化による競争 優位の源泉を確保することが必要です。差別化を図る 手段は色々ありますが、 特に大きなコストをかけなく ても身の回りにある「知的資産(見えざる資産)」を活 用することによって、他社との差別化を継続的に実現 することができ、 ひいては経営の質や企業価値を高め ることができます。 ◆知的資産経営に取り組むステップは? 知的資産経営は、経営そのものであり、基本的なマ ネジメントのあり方である「PDCAサイクル」※ を実 践することが重要です。 基礎知識編 ~知的資産経営とは~ 『知的資産経営』とは、中小企業の競争力の源泉となる"かくれた強み"=『知的資産』(人材、 技術ノウハウ、経営理念、顧客ネットワークなど)を見直して整理し、経営に活用することで、業績 の向上や企業の価値向上に結びつける経営手法です。 近年、経済産業省[中小企業庁]や中小企業施策の総合的な実施機関である独立行政法人 中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」といいます。)が、中小企業に対してその取組を積極 的に推進しており、昨年は、大分県産業創造機構において、県内企業の皆様に『知的資産経 営』について知っていただくためのセミナーを開催しました。 今回の特集では、ますますその重要性が高まっている『知的資産経営』について紹介します。 『知的資産経営』とは、中小企業の競争力の源泉となる"かくれた強み"=『知的資産』(人材、 技術ノウハウ、経営理念、顧客ネットワークなど)を見直して整理し、経営に活用することで、業績 の向上や企業の価値向上に結びつける経営手法です。 近年、経済産業省[中小企業庁]や中小企業施策の総合的な実施機関である独立行政法人 中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」といいます。)が、中小企業に対してその取組を積極 的に推進しており、昨年は、大分県産業創造機構において、県内企業の皆様に『知的資産経 営』について知っていただくためのセミナーを開催しました。 今回の特集では、ますますその重要性が高まっている『知的資産経営』について紹介します。 【出典】経済産業省近畿経済産業局「知的資産経営のすすめ」 【出典】中小機構「事業価値を高める経営レポート作成マニュアル」 【出典】経済産業省近畿経済産業局「知的資産経営のすすめ」 知的資産のイメージ Part1  少子高齢化 グローバルな競争 知識社会への移行 国内経済規模 拡大は困難 無形資産の価値拡大 コスト競争では 新興国には勝てない 自らの固有の力を活かし、商品・サービスの差別化を通じて価 値・利益を創造・実現することが不可欠になってきています。 知的資産を活用した他者との差別化、 短期のみではなく、持続的な利益の実現を可能にする 「知的資産経営」が重要となります。 知的資産経営へのステップ 自社の強みをしっかりと認識する 自社の強みがどのように収益につながるかまとめる 経営方針を明確にし、管理指標を特定する 報告書としてまとめる 知的資産経営の実践 8 創造おおいた 2014.2

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特 集

知的資産経営のすすめ知的資産経営のすすめ知的資産(見えざる資産)を活用して経営課題を解決!知的資産(見えざる資産)を活用して経営課題を解決!

◆知的資産とは? 「知的資産」とは、特許やブランド、 ノウハウなどの「知的財産」と同義ではなく、それらを一部に含み、さらに組織力、人材、技術、経営理念、顧客等とのネットワークなど、 財務諸表には表れてこない目に見えにくい経営資源の総称を指します。 「知的資産」は企業の本当の価値・強みであり、企業競争力の源泉です。企業経営・活動は、知的資産の活用なしには成り立たないものです。

◆知的資産経営とは?  そのようなそれぞれの会社の強み(知的資産)をしっかりと把握し、活用することで業績の向上や、会社の価値向上に結びつけることが「知的資産経営」です。 企業が勝ち残っていくためには、差別化による競争優位の源泉を確保することが必要です。差別化を図る手段は色々ありますが、 特に大きなコストをかけなくても身の回りにある「知的資産(見えざる資産)」を活用することによって、他社との差別化を継続的に実現することができ、 ひいては経営の質や企業価値を高めることができます。

◆知的資産経営に取り組むステップは? 

 知的資産経営は、経営そのものであり、基本的なマネジメントのあり方である「PDCAサイクル」※ を実践することが重要です。

◆知的資産経営報告書とは?  「知的資産経営報告書」とは、企業が有する技術、ノウハウ、人材など重要な知的資産の認識・評価を行い、それらをどのように活用して企業の価値創造につなげていくかを示す報告書です。 過去から現在における企業の価値創造プロセスだけでなく、 将来の中期的な価値創造プロセスをも明らかにすることで、企業の価値創造の流れをより信頼性をもって説明するものです。 簡易版の「事業価値を高める経営レポート(知的資産経営報告書)」(下表)を使えば、 あなたの会社の強み(知的資産)を、A3の用紙1枚にまとめることができます。

◆知的資産経営報告書作成のメリットとは? ①事業内容が見える化されるため、取引先、顧客からの信用度が高まり、営業促進につながります。②会社の非財務情報が見える化されるため、金融機関などからの資金調達面で有利になることがあります。③社員一人ひとりの仕事がどのように企業価値につながるかが明確になり、従業員の士気向上につながり

ます。④経営者と後継者が一緒に作成することによって事業承継(経営そのものの承継)にも役立ちます。

◆国、中小機構及び産業創造機構の取組は?  経済産業省(中小企業庁)及び中小機構においては、企業における『知的資産経営』の取り組みを積極的に推進しています。 また、大分県産業創造機構では、中小機構の全面的な協力を得て、昨年7月、県内中小企業の経営者など24名の参加者を対象に、山口大学経済学部教授の内田恭彦氏を講師に迎え、「知的資産経営セミナー」を開催しました。 さらに、本セミナーで知的資産経営に関心を持たれた中小企業6社の参加を得て、GENコンサルティング事務所(福岡市)代表で中小企業診断士の西元知基氏を講師に迎え、昨年の8月から11月まで、4回シリーズの「知的資産経営報告書作成支援セミナー」を開催しました。そこでは、座学だけでなく、「事業価値を高める経営レポート」の作成作業も行っていただき、最終的にレポートを完成させました。参加企業の皆様からも「満足度の高い充実したセミナーであった」との評価をいただきました。 大分県産業創造機構では、今後も、中小機構や中小企業診断士などの専門家と連携しながら、県内中小企業の皆様に知的資産経営について知っていただくための取組を行っていく予定です。

基礎知識編 ~知的資産経営とは~

 『知的資産経営』とは、中小企業の競争力の源泉となる"かくれた強み"=『知的資産』(人材、技術ノウハウ、経営理念、顧客ネットワークなど)を見直して整理し、経営に活用することで、業績の向上や企業の価値向上に結びつける経営手法です。 近年、経済産業省[中小企業庁]や中小企業施策の総合的な実施機関である独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」といいます。)が、中小企業に対してその取組を積極的に推進しており、昨年は、大分県産業創造機構において、県内企業の皆様に『知的資産経営』について知っていただくためのセミナーを開催しました。 今回の特集では、ますますその重要性が高まっている『知的資産経営』について紹介します。

 『知的資産経営』とは、中小企業の競争力の源泉となる"かくれた強み"=『知的資産』(人材、技術ノウハウ、経営理念、顧客ネットワークなど)を見直して整理し、経営に活用することで、業績の向上や企業の価値向上に結びつける経営手法です。 近年、経済産業省[中小企業庁]や中小企業施策の総合的な実施機関である独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」といいます。)が、中小企業に対してその取組を積極的に推進しており、昨年は、大分県産業創造機構において、県内企業の皆様に『知的資産経営』について知っていただくためのセミナーを開催しました。 今回の特集では、ますますその重要性が高まっている『知的資産経営』について紹介します。

【出典】経済産業省近畿経済産業局「知的資産経営のすすめ」

【出典】中小機構「事業価値を高める経営レポート作成マニュアル」

【出典】経済産業省近畿経済産業局「知的資産経営のすすめ」

※PDCAサイクル(ピーディーシーエー - 、PDCA cycle、plan-do-check-act cycle)は、事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法の一つ。Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4 段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する

【出典】中小機構「事業価値を高める経営レポート作成マニュアル」

事業価値を高める経営レポート(知的資産経営報告書)

知的資産のイメージ

Part1 

少子高齢化 グローバルな競争 知識社会への移行国内経済規模拡大は困難 無形資産の価値拡大コスト競争では

新興国には勝てない

自らの固有の力を活かし、商品・サービスの差別化を通じて価値・利益を創造・実現することが不可欠になってきています。

知的資産を活用した他者との差別化、短期のみではなく、持続的な利益の実現を可能にする

「知的資産経営」が重要となります。

知的資産経営へのステップ

自社の強みをしっかりと認識する

自社の強みがどのように収益につながるかまとめる

経営方針を明確にし、管理指標を特定する

報告書としてまとめる 知的資産経営の実践

8 創造おおいた 2014.2

特 集

知的資産経営のすすめ知的資産経営のすすめ知的資産(見えざる資産)を活用して経営課題を解決!知的資産(見えざる資産)を活用して経営課題を解決!

◆知的資産とは? 「知的資産」とは、特許やブランド、 ノウハウなどの「知的財産」と同義ではなく、それらを一部に含み、さらに組織力、人材、技術、経営理念、顧客等とのネットワークなど、 財務諸表には表れてこない目に見えにくい経営資源の総称を指します。 「知的資産」は企業の本当の価値・強みであり、企業競争力の源泉です。企業経営・活動は、知的資産の活用なしには成り立たないものです。

◆知的資産経営とは?  そのようなそれぞれの会社の強み(知的資産)をしっかりと把握し、活用することで業績の向上や、会社の価値向上に結びつけることが「知的資産経営」です。 企業が勝ち残っていくためには、差別化による競争優位の源泉を確保することが必要です。差別化を図る手段は色々ありますが、 特に大きなコストをかけなくても身の回りにある「知的資産(見えざる資産)」を活用することによって、他社との差別化を継続的に実現することができ、 ひいては経営の質や企業価値を高めることができます。

◆知的資産経営に取り組むステップは? 

 知的資産経営は、経営そのものであり、基本的なマネジメントのあり方である「PDCAサイクル」※ を実践することが重要です。

◆知的資産経営報告書とは?  「知的資産経営報告書」とは、企業が有する技術、ノウハウ、人材など重要な知的資産の認識・評価を行い、それらをどのように活用して企業の価値創造につなげていくかを示す報告書です。 過去から現在における企業の価値創造プロセスだけでなく、 将来の中期的な価値創造プロセスをも明らかにすることで、企業の価値創造の流れをより信頼性をもって説明するものです。 簡易版の「事業価値を高める経営レポート(知的資産経営報告書)」(下表)を使えば、 あなたの会社の強み(知的資産)を、A3の用紙1枚にまとめることができます。

◆知的資産経営報告書作成のメリットとは? ①事業内容が見える化されるため、取引先、顧客からの信用度が高まり、営業促進につながります。②会社の非財務情報が見える化されるため、金融機関などからの資金調達面で有利になることがあります。③社員一人ひとりの仕事がどのように企業価値につながるかが明確になり、従業員の士気向上につながり

ます。④経営者と後継者が一緒に作成することによって事業承継(経営そのものの承継)にも役立ちます。

◆国、中小機構及び産業創造機構の取組は?  経済産業省(中小企業庁)及び中小機構においては、企業における『知的資産経営』の取り組みを積極的に推進しています。 また、大分県産業創造機構では、中小機構の全面的な協力を得て、昨年7月、県内中小企業の経営者など24名の参加者を対象に、山口大学経済学部教授の内田恭彦氏を講師に迎え、「知的資産経営セミナー」を開催しました。 さらに、本セミナーで知的資産経営に関心を持たれた中小企業6社の参加を得て、GENコンサルティング事務所(福岡市)代表で中小企業診断士の西元知基氏を講師に迎え、昨年の8月から11月まで、4回シリーズの「知的資産経営報告書作成支援セミナー」を開催しました。そこでは、座学だけでなく、「事業価値を高める経営レポート」の作成作業も行っていただき、最終的にレポートを完成させました。参加企業の皆様からも「満足度の高い充実したセミナーであった」との評価をいただきました。 大分県産業創造機構では、今後も、中小機構や中小企業診断士などの専門家と連携しながら、県内中小企業の皆様に知的資産経営について知っていただくための取組を行っていく予定です。

基礎知識編 ~知的資産経営とは~

 『知的資産経営』とは、中小企業の競争力の源泉となる"かくれた強み"=『知的資産』(人材、技術ノウハウ、経営理念、顧客ネットワークなど)を見直して整理し、経営に活用することで、業績の向上や企業の価値向上に結びつける経営手法です。 近年、経済産業省[中小企業庁]や中小企業施策の総合的な実施機関である独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」といいます。)が、中小企業に対してその取組を積極的に推進しており、昨年は、大分県産業創造機構において、県内企業の皆様に『知的資産経営』について知っていただくためのセミナーを開催しました。 今回の特集では、ますますその重要性が高まっている『知的資産経営』について紹介します。

 『知的資産経営』とは、中小企業の競争力の源泉となる"かくれた強み"=『知的資産』(人材、技術ノウハウ、経営理念、顧客ネットワークなど)を見直して整理し、経営に活用することで、業績の向上や企業の価値向上に結びつける経営手法です。 近年、経済産業省[中小企業庁]や中小企業施策の総合的な実施機関である独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」といいます。)が、中小企業に対してその取組を積極的に推進しており、昨年は、大分県産業創造機構において、県内企業の皆様に『知的資産経営』について知っていただくためのセミナーを開催しました。 今回の特集では、ますますその重要性が高まっている『知的資産経営』について紹介します。

【出典】経済産業省近畿経済産業局「知的資産経営のすすめ」

【出典】中小機構「事業価値を高める経営レポート作成マニュアル」

【出典】経済産業省近畿経済産業局「知的資産経営のすすめ」

※PDCAサイクル(ピーディーシーエー - 、PDCA cycle、plan-do-check-act cycle)は、事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法の一つ。Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4 段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する

【出典】中小機構「事業価値を高める経営レポート作成マニュアル」

事業価値を高める経営レポート(知的資産経営報告書)

知的資産のイメージ

Part1 

少子高齢化 グローバルな競争 知識社会への移行国内経済規模拡大は困難 無形資産の価値拡大コスト競争では

新興国には勝てない

自らの固有の力を活かし、商品・サービスの差別化を通じて価値・利益を創造・実現することが不可欠になってきています。

知的資産を活用した他者との差別化、短期のみではなく、持続的な利益の実現を可能にする

「知的資産経営」が重要となります。

知的資産経営へのステップ

自社の強みをしっかりと認識する

自社の強みがどのように収益につながるかまとめる

経営方針を明確にし、管理指標を特定する

報告書としてまとめる 知的資産経営の実践

創造おおいた 2014.2 9

Q.まず『知的資産経営』について分かりやすく教えていただけますでしょうか。A.前項にも解説が出ていますので、少し見方を変えて説明します。企業経営を進める上で経営資源を活かすことはとても重要な要素です。その経営資源は、形の見える物的な資産(物・金に関わるもの)と目に見えない無形の資産(人的な力・組織的な力・外部との関係力)に分けることができます。 知的資産経営は、後者の無形の資産に焦点を当て、これを有効活用することで、他社との差別化を図り、競争優位な経営を進め、経営力向上を図る経営の手法です。Q.現在、中小機構では、『知的資産経営』の普及・啓発に向け、どのような取組を行っていますか?A.先ずは、支援をする側の支援機関の職員や専門家向けに知的資産経営支援に関する研修を各地で行っています。その上で支援機関と連携して中小企業経営者向けの知的資産経営研修の開催を支援しています。中小機構九州本部ではその際、より分かりやすく、取り組みやすい研修を企画したり、独自の研修ツールを開発しています。Q.『知的資産経営』の取組を積極的に推進している理由について教えてください。A.中小企業経営者の皆さんに、目先の短期的な経営課題対応(対症療法型)のみでなく、経営全体の資産を洗い

出し、新たな価値を創造し、長期的で持続可能な強い体質の経営の仕組みを構築する(経営体質改善型)ことの重要性をお伝えしたいからです。 また、物的な資産が脆弱といわれる中小企業経営にとって、無形の資産を活かす知的資産経営の有効性が高いことを説き薦めていきたいと考えます。Q.全国的には『知的資産経営』に取り組む企業が増えているのでしょうか?A.これまで、特に近畿地区の行政機関や支援機関が支援に積極的であったため、同地区を中心に取り組みが進んでいるといわれていました。 しかしながら、他の地域においてもこの数年において一気に取り組みが進んできているものと思われます。 これは九州地区においても同様で、支援機関や専門家の支援体制の充実とともに、取り組み企業が増え、知的資産経営報告書作成実績も確実に増加しています。Q.中小企業が『知的資産経営』に取り組むことで、どのようなメリットがあるのでしょうか?また、具体的な企業事例などがありましたら教えてください。A.先ずお伝えしたいことは、経営者自身の経営戦略の取り纏め、社員との情報共有に有効なことです。中長期の戦略が決まらない、戦略が上手く伝えられないなどの悩みを解消できます。福岡県のA社では、社長と中核社員が一緒に取り組み経営戦略の共有化を図っています。 また、長崎県の事業承継期のB社では、後継者への事業の承継(経営そのものの承継)に役立てています。Q.最後に、大分県内の中小企業に対して一言メッセージをお願いします。 大分県産業創造機構とともに、大分県の中小企業の知的資産経営への取り組みを強力に支援していきます。大分県の経営者の皆さん、先の見える経営そして持続的な利益の実現を可能にする経営を目指し、是非、この機会に知的資産経営に取り組んでいきましょう。

 Part1でもご紹介したように、経済産業省(中小企業庁)及び中小機構では、企業における『知的資産経営』の取り組みを積極的に推進しています。なぜ、いま『知的資産経営』が必要なのか、『知的資産経営』について詳しい中小機構の専門家にお話を伺いました。

 Part1でも触れたとおり、大分県産業創造機構では、中小機構の全面的な協力を得て、昨年8月から11月までの間、4回シリーズの「知的資産経営報告書作成支援セミナー」を開催しました。 知的資産経営に関心を持たれた県内中小企業6社が参加し、実際に「事業価値を高める経営レポート」の作成に取り組みました。 今回は、参加企業のうち2社の皆様に知的資産経営やセミナーに参加しての感想を伺いました。

インタビュー編① ~県内参加企業に訊く~

まとめ ~知的資産経営への取り組み~

インタビュー編② ~中小機構の専門家に訊く~

そのだ やすひさ

 大分県産業創造機構では、今後も、中小機構や中小企業診断士などの専門家と連携しながら、県内中小企業の皆様に知的資産経営について知っていただくための取組を行っていく予定です。 「知的資産経営」について、「より詳しく知りたい」、「『事業価値を高める経営レポート』を作成してみたい」など、ご要望がありましたら、下記あてお問い合わせください。

●経済産業省「知的資産経営ポータル」 http://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/ ●中小企業基盤整備機構「知的資産経営支援HP」 http://www.smrj.go.jp/keiei/chitekishisan/【お問い合わせ先】 公益財団法人大分県産業創造機構 経営支援課TEL097-537-9111

(セミナー参加の理由) 弊社では以前から事業承継の準備に取り組んでいたところ、社長から「次期経営陣で本セミナーに参加してはどうか」と提案を受け、参加しました。ちょうど来期以降3年間の中期経営計画を立てる時期でもあり、良いタイミングとなりました。(セミナーの感想) 参加して良かったことは、3事業部の各部長間で弊社の今後の経営について話し合う貴重な機会となったことです。これまでは、事業部ごとにビジネスモデルが大きく異なるため、事業部長3名が集まり議論するような場がありませんでした。自らの事業部について、これまで当たり前と思っていたことや意識していなかった点などについて、新たな気付きを得たり、今後の事業展開に向けたヒントを得るなど、非常に創造的な議論を行うことができました。(今後の取組) 今回のセミナーで、弊社として今後変えていかなければいけないもの、逆に変えてはいけないもの、また、今後取り組まなければならないものについて認識することができました。弊社の経営理念である『人が真ん中:誠心誠意』を軸に、社員の日々の行動指針につながる明確なビジョンを設定し、社員のモチベーション向上や意識改革、組織の活性化につなげていきたいと思います。(県内企業の皆様へ) セミナーを通して、会社の有形無形の資産を具体化・顕在化しなければ将来へのストーリーは描けないことを実感しました。県内企業の皆様も、ぜひ知的資産経営に取り組んでいただき、自社の隠れた資産を見える化して、経営に活用しながら、企業価値の向上に役立てていただければと思います。

(セミナー参加の理由) この1年ほど、将来の事業承継を念頭に置き、弊社の強みや弱みなど経営資源や今後の方向性についてきちんと整理したいと常に考えていました。そのような中、本セミナーの開催を知り、今こそやるべきときだと感じて参加しました。(セミナーの感想) ただ単に講師から講義を聞くだけでなく、参加企業においていろいろと考えさせられる内容になっていたことが良かったです。各回のセミナーごとに宿題や検討課題をいただくので、持ち帰って弊社の専務や営業部長と話し合いを行いました。これまでも私なりに業界の今後について考え、新たな事業に取り組んだりしてきましたが、トップだけでなく社内一丸となって取り組まないと成功しませんし、いかに社内の人間を巻き込んでいくかが課題と考えていましたので、本セミナーを通じて社内でいろいろな議論を行うことができ、良い機会となりました。また、私の頭の中で漠然としていたものを文書化、見える化することができ、社内に伝えることができたことも良かったと思います。(今後の取組) セミナーで作成した『事業価値を高める経営レポート』の内容をいかに実行に移していくかが大切と考えています。今後のビジョンを達成するために、いつ、誰が、何を、どうやっていくのか、その実行計画の作成について検討しています。(県内企業の皆様へ) 自社の経営について問題意識を持っている経営者の方々が多くいらっしゃると思いますが、まず、頭の中にあるものをきちんと整理して見える化することが大切だと思います。県内企業の皆様も、ぜひ今回のようなセミナーに積極的に参加していただきたいと思います。

株式会社 久光大分取締役福祉事業部長

盛池 淳二 氏

株式会社 電子印刷センター代表取締役社長

杉本 恵子 氏せい け   じゅんじ すぎもと けいこ

Part3 Part2 

Part4 

薗田 恭久 氏(中小企業診断士)中小機構事業承継コーディネーター

【略歴】平成19年事業承継コーディネーター就任。以後、九州地区中小企業向けの事業承継支援ならびに知的資産経営の普及・啓発に従事。

所在地:別府市大字内竈1393番地事業内容:印刷、デザイン、HP制作

所在地:大分市下郡北3丁目25番2号事業内容:不動産建築事業、理化学機器事業、福祉事業

知的資産経営についてより詳しく知りたい方は

10 創造おおいた 2014.2

Q.まず『知的資産経営』について分かりやすく教えていただけますでしょうか。A.前項にも解説が出ていますので、少し見方を変えて説明します。企業経営を進める上で経営資源を活かすことはとても重要な要素です。その経営資源は、形の見える物的な資産(物・金に関わるもの)と目に見えない無形の資産(人的な力・組織的な力・外部との関係力)に分けることができます。 知的資産経営は、後者の無形の資産に焦点を当て、これを有効活用することで、他社との差別化を図り、競争優位な経営を進め、経営力向上を図る経営の手法です。Q.現在、中小機構では、『知的資産経営』の普及・啓発に向け、どのような取組を行っていますか?A.先ずは、支援をする側の支援機関の職員や専門家向けに知的資産経営支援に関する研修を各地で行っています。その上で支援機関と連携して中小企業経営者向けの知的資産経営研修の開催を支援しています。中小機構九州本部ではその際、より分かりやすく、取り組みやすい研修を企画したり、独自の研修ツールを開発しています。Q.『知的資産経営』の取組を積極的に推進している理由について教えてください。A.中小企業経営者の皆さんに、目先の短期的な経営課題対応(対症療法型)のみでなく、経営全体の資産を洗い

出し、新たな価値を創造し、長期的で持続可能な強い体質の経営の仕組みを構築する(経営体質改善型)ことの重要性をお伝えしたいからです。 また、物的な資産が脆弱といわれる中小企業経営にとって、無形の資産を活かす知的資産経営の有効性が高いことを説き薦めていきたいと考えます。Q.全国的には『知的資産経営』に取り組む企業が増えているのでしょうか?A.これまで、特に近畿地区の行政機関や支援機関が支援に積極的であったため、同地区を中心に取り組みが進んでいるといわれていました。 しかしながら、他の地域においてもこの数年において一気に取り組みが進んできているものと思われます。 これは九州地区においても同様で、支援機関や専門家の支援体制の充実とともに、取り組み企業が増え、知的資産経営報告書作成実績も確実に増加しています。Q.中小企業が『知的資産経営』に取り組むことで、どのようなメリットがあるのでしょうか?また、具体的な企業事例などがありましたら教えてください。A.先ずお伝えしたいことは、経営者自身の経営戦略の取り纏め、社員との情報共有に有効なことです。中長期の戦略が決まらない、戦略が上手く伝えられないなどの悩みを解消できます。福岡県のA社では、社長と中核社員が一緒に取り組み経営戦略の共有化を図っています。 また、長崎県の事業承継期のB社では、後継者への事業の承継(経営そのものの承継)に役立てています。Q.最後に、大分県内の中小企業に対して一言メッセージをお願いします。 大分県産業創造機構とともに、大分県の中小企業の知的資産経営への取り組みを強力に支援していきます。大分県の経営者の皆さん、先の見える経営そして持続的な利益の実現を可能にする経営を目指し、是非、この機会に知的資産経営に取り組んでいきましょう。

 Part1でもご紹介したように、経済産業省(中小企業庁)及び中小機構では、企業における『知的資産経営』の取り組みを積極的に推進しています。なぜ、いま『知的資産経営』が必要なのか、『知的資産経営』について詳しい中小機構の専門家にお話を伺いました。

 Part1でも触れたとおり、大分県産業創造機構では、中小機構の全面的な協力を得て、昨年8月から11月までの間、4回シリーズの「知的資産経営報告書作成支援セミナー」を開催しました。 知的資産経営に関心を持たれた県内中小企業6社が参加し、実際に「事業価値を高める経営レポート」の作成に取り組みました。 今回は、参加企業のうち2社の皆様に知的資産経営やセミナーに参加しての感想を伺いました。

インタビュー編① ~県内参加企業に訊く~

まとめ ~知的資産経営への取り組み~

インタビュー編② ~中小機構の専門家に訊く~

そのだ やすひさ

 大分県産業創造機構では、今後も、中小機構や中小企業診断士などの専門家と連携しながら、県内中小企業の皆様に知的資産経営について知っていただくための取組を行っていく予定です。 「知的資産経営」について、「より詳しく知りたい」、「『事業価値を高める経営レポート』を作成してみたい」など、ご要望がありましたら、下記あてお問い合わせください。

●経済産業省「知的資産経営ポータル」 http://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/ ●中小企業基盤整備機構「知的資産経営支援HP」 http://www.smrj.go.jp/keiei/chitekishisan/【お問い合わせ先】 公益財団法人大分県産業創造機構 経営支援課TEL097-537-9111

(セミナー参加の理由) 弊社では以前から事業承継の準備に取り組んでいたところ、社長から「次期経営陣で本セミナーに参加してはどうか」と提案を受け、参加しました。ちょうど来期以降3年間の中期経営計画を立てる時期でもあり、良いタイミングとなりました。(セミナーの感想) 参加して良かったことは、3事業部の各部長間で弊社の今後の経営について話し合う貴重な機会となったことです。これまでは、事業部ごとにビジネスモデルが大きく異なるため、事業部長3名が集まり議論するような場がありませんでした。自らの事業部について、これまで当たり前と思っていたことや意識していなかった点などについて、新たな気付きを得たり、今後の事業展開に向けたヒントを得るなど、非常に創造的な議論を行うことができました。(今後の取組) 今回のセミナーで、弊社として今後変えていかなければいけないもの、逆に変えてはいけないもの、また、今後取り組まなければならないものについて認識することができました。弊社の経営理念である『人が真ん中:誠心誠意』を軸に、社員の日々の行動指針につながる明確なビジョンを設定し、社員のモチベーション向上や意識改革、組織の活性化につなげていきたいと思います。(県内企業の皆様へ) セミナーを通して、会社の有形無形の資産を具体化・顕在化しなければ将来へのストーリーは描けないことを実感しました。県内企業の皆様も、ぜひ知的資産経営に取り組んでいただき、自社の隠れた資産を見える化して、経営に活用しながら、企業価値の向上に役立てていただければと思います。

(セミナー参加の理由) この1年ほど、将来の事業承継を念頭に置き、弊社の強みや弱みなど経営資源や今後の方向性についてきちんと整理したいと常に考えていました。そのような中、本セミナーの開催を知り、今こそやるべきときだと感じて参加しました。(セミナーの感想) ただ単に講師から講義を聞くだけでなく、参加企業においていろいろと考えさせられる内容になっていたことが良かったです。各回のセミナーごとに宿題や検討課題をいただくので、持ち帰って弊社の専務や営業部長と話し合いを行いました。これまでも私なりに業界の今後について考え、新たな事業に取り組んだりしてきましたが、トップだけでなく社内一丸となって取り組まないと成功しませんし、いかに社内の人間を巻き込んでいくかが課題と考えていましたので、本セミナーを通じて社内でいろいろな議論を行うことができ、良い機会となりました。また、私の頭の中で漠然としていたものを文書化、見える化することができ、社内に伝えることができたことも良かったと思います。(今後の取組) セミナーで作成した『事業価値を高める経営レポート』の内容をいかに実行に移していくかが大切と考えています。今後のビジョンを達成するために、いつ、誰が、何を、どうやっていくのか、その実行計画の作成について検討しています。(県内企業の皆様へ) 自社の経営について問題意識を持っている経営者の方々が多くいらっしゃると思いますが、まず、頭の中にあるものをきちんと整理して見える化することが大切だと思います。県内企業の皆様も、ぜひ今回のようなセミナーに積極的に参加していただきたいと思います。

株式会社 久光大分取締役福祉事業部長

盛池 淳二 氏

株式会社 電子印刷センター代表取締役社長

杉本 恵子 氏せい け   じゅんじ すぎもと けいこ

Part3 Part2 

Part4 

薗田 恭久 氏(中小企業診断士)中小機構事業承継コーディネーター

【略歴】平成19年事業承継コーディネーター就任。以後、九州地区中小企業向けの事業承継支援ならびに知的資産経営の普及・啓発に従事。

所在地:別府市大字内竈1393番地事業内容:印刷、デザイン、HP制作

所在地:大分市下郡北3丁目25番2号事業内容:不動産建築事業、理化学機器事業、福祉事業

知的資産経営についてより詳しく知りたい方は

創造おおいた 2014.2 11