植物栽培用led“プラントフレック”照射下でのシロイヌナズナ...

9
植物栽培用LED“プラントフレック”照射下でのシロイヌナズナ およびタバコの生育および光合成特性 誌名 誌名 植物環境工学 ISSN ISSN 18802028 著者 著者 田茂井, 政宏 石田, 健太 江口, 雄巳 原田, 京一 雉鼻, 一郎 重岡, 成 巻/号 巻/号 29巻3号 掲載ページ 掲載ページ p. 96-103 発行年月 発行年月 2017年9月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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植物栽培用LED“プラントフレック”照射下でのシロイヌナズナおよびタバコの生育および光合成特性

誌名誌名 植物環境工学

ISSNISSN 18802028

著者著者

田茂井, 政宏石田, 健太江口, 雄巳原田, 京一雉鼻, 一郎重岡, 成

巻/号巻/号 29巻3号

掲載ページ掲載ページ p. 96-103

発行年月発行年月 2017年9月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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96 植物環境工学 (J.SHITA)29(3):96ー103.2017.

植物栽培用 LED"プラントフレッグ’照射下での

シロイヌナズナおよびタバコの生育および光合成特性

田茂井政宏 1* • 石田健太 1,2 • 江口雄巳 2.原田京一 2・雉鼻一郎 2.重岡 成 1

1近畿大学農学部バイオサイエンス学科

2株式会社日本医化器械製作所

Growth and Photosynthetic Characteristics of Arabidopsis and

Tobacco Plants Grown Under LED Lights "PLANT FLEC"

Masahiro TAMOI1*・Kenta ISHIDA 1・2・Masami EGUCHI2・

Kyoichi HARADA2・lchiro KIJIHANA2 and Shigeru SHIGEOKA1

1Department of Advanced Bioscience, Faculty of Agriculture, Kindai University 2Nippon Medical & Chemical Instruments Co., Ltd

Abstract

LED (light-emitting diodes) have been proposed as a potential alternative light source in plant factories because of their low power consumption and longevity. Although LED lights are gradually replacing fluorescent lights, not all types promote plant growth. In the present study, we compared the growth and photosynthetic characteristics of Arabi-dopsis and tobacco plants grown under PLANT FLEC LED and fluorescent lighting. Dur-ing the same cultivation period, growth and photosynthetic characteristics (including the CO2 assimilation rate and activities of Calvin cycle enzymes) were similar between PLANT FLEC and fluorescent lighting. On the other hand, power consumption in the growth chamber with PLANT FLEC lighting was approximately 50 % that with fluores-cent lighting. These results indicate that PLANT FLEC is an energy-saving LED ap-proach that is suitable for plant cultivation.

Keywords: Arabidopsis, fluorescent lamp, light emitting diodes, photosynthesis, tobacco

緒 戸

人工光源を用いた人工光型植物工場での栽培は,冷夏,

暖冬,台風などの悪天候や地球温暖化,環境汚染などの影

響を直接受けることがないため,安定的に栽培,収穫が可能

2017年 1月12日受付

2017年 4月21日受理

*Corresponding author: Masahiro Tamoi ([email protected])

である.植物工場ではまた,多段式の水耕栽培システムを用

いる事によって,狭い土地でも多くの野菜を生産できる.さら

に,人工光型植物工場では病原菌や害虫が侵入することが

少なく,露地栽培のように防除の手間を必要とせずに無農薬

野菜の栽培が可能である.この様な多くの利点がある一方

で,人工光型植物工場での栽培コストが高くなることの一つ

の要因として人工光源の使用に伴うコスト(初期投資,発熱

に伴う空調費など)があげられ,栽培する植物種が限られて

しまうのが現状である.一方,研究施設などでも遺伝子組換

え体を含めた植物の栽培にも人工光源が用いられているが,

近年のエネルギー需給の現状からも,省エネルギー化が望ま

-6-

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植物栽培用 LED"プラントフレック”照射下でのシロイヌナズナおよびタバコの生育および光合成特性 97

100%

white LED 80%

60%

40%

20%

0%

300 400 500 600 700 800

wavelength (nm)

100%

~-- PF 80%

60%

40%

20%

0%

300 400 500 600 700 800

wavelength (nm)

100%

~- FL 80%

60%

40%

20%

0%

300 400 500 600 700 800

wavelength (nm)

Fig. 1 Spectral photon distribution of white LED, PF and FL. Relative spectral photon flux of each lump was normalized to 100 % as maximum photon flux between 300-800 nm.

れていることは周知の事実である.

そこで近年,省エネ型植物栽培光源として Light—

Emitting Diodes (LED)の利用が進められている.LEDは

消費電力が少ないことや長寿命であることから,蛍光灯に代

わる省エネ型光源として様々な分野での利用が進む光源であ

る.現在,人工光型植物工場や植物栽培装置では,光源と

して高圧ナトリウムランプやメタルハライドランプ,蛍光灯が主

に利用されている ll_高圧ナトリウムランプやメタルハライドラン

プでは発光効率が尚いが,大量の赤外線を発生するために

植物に近接して照射できず多段栽培が行えないことや,栽培

植物に適した温度に保つために冷房負荷が増大し,空調コス

トが増加するなどの問題があるまた,高圧ナトリウムランプで

は主要ピークである 600nm付近の光と比較して,植物の生

育に必要と言われる 660nm付近の赤色光が少ないといった

欠点もある.蛍光灯は前者と比較すると発熱量は少なく,最も

一般的に用いられている光源であるが消費電力のわりに光

量が少ないことが欠点である一方, LEDは前出の光源と比

較して発する熱量が少ないため,蛍光灯以上に植物に近接

しての照射が可能であり,多段式の栽培を行う植物工場や

植物栽培装置にとって有用である 1.2)_ さらに, LEDの消費

電力は蛍光灯の 50%以下であり,さらには発熱量が少ない

ことから空調維持費を抑えることができる.しかし, LED光源

に含まれる波長は従来の光源と比較しても特徴的であり,現

時点では特定波長光の照射やパルス照射による含有成分へ

の影響などが検討されているが,従来の光源と同様に使用し

た際に生育特性に及ぼす影響は不明な点が多い 3-5)_

家庭用で使用されている LED光源は,主に青色 LEDを

使用しており,青色波長域の光に対して光合成に有効な 660

-7-

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98 田茂井• 石田• 江口• 原田・ 雉鼻・璽岡

nm付近の光の割合は非常に少ない (Fig.1). 青色波長を

主に照射して植物を栽培した場合,矮化や葉の展開異常,ア

ントシアニン蓄積など,植物の成長に悪影響を及ぽすことが一

般的に知られている 3,6-8)_ 一方で,青色光と赤色光の割合

(B/R比)を変化させることにより,生育速度に差が見られる

ことも明らかにされている 4,6,7)_ そのため,植物工場では青

色 LEDと赤色 LEDを組み合わせて用いられることが多

ぃ4,6,9), 植物栽培用に開発されたプラントフレック LED光源

(電球色)(日本医化器械製作所製)の分光分布は450nm

付近のピークに加え, 610nmをピークとする 500-770nmの

大きなピークからなり,光合成に用いられる 660nmの赤色光

が多く含まれている (Fig.1). そのため,赤色,青色の LED

を組み合わせる必要が無く,単独で植物栽培に適した光を照

射できると思われる.家庭用としても電球色 LEDが市販され

ているが,直管型では白色に比べて電球色の製品が少ない

こと,また青色 LEDを使用し,フィルター等により電球色に近

づけているものもある.プラントフレック LED光源(電球色)

は電球色の LED素子を使用していることから,植物栽培によ

り適しているのではないかと考えられる.

そこで本研究では,プラントフレック LED光源を用いてモデ

ル植物であるタバコおよびシロイヌナズナを栽培した際の,生

育.光合成機能に対する影響を解析し,蛍光灯に代わる人

工光源としての利用可能性について検討した.

ズナ: 2.5号)にJiffy-7Rごと定植し,さらに栽培を続けた.

定期的に地上部を収穫し,タンパク質定量,クロロフィル定

量各種酵素活性の測定に用いた.

2. クロロフィル含量およびタンパク質含量の測定

クロロフィル含量はArnon10>の方法に従って測定した.シロ

イヌナズナの葉 1枚もしくはタバコリーフデイスク (0.95cm2Xl

枚)の重量を測定した後に 1.5ml容のマイクロテストチュー

ブに入れ,液体窒素で凍結後,先を潰したチップにて粉砕し

た.100%アセトンを 0.4ml加えてさらに攪拌し,遠心分離

(12,000 xg, 10 min, 4℃)後上消を新しいマイクロテストチ

ューブに移した.沈殿に再度 100%アセトンを 0.4ml加えて

さらに攪拌し,遠心分離 (12,000xg, 10 min, 4℃)後上

清を先のチューブに加えた.総量 0.8mlになるように 100%

アセトンを加えた後に,滅菌水を200μ1加えて攪拌した.分

光光度計を用いて730nm, 663 nm, 645 nmにおける吸光度

を測定し, 20.2(ふ45-A730)+ 8.02(&ss-A130)=クロロフィル量

(μgm『80%アセトン)の式よりクロロフィル醤を算出した.タ

ンパク質の定量は,下記4で調製した粗抽出液を用いて

Bradford11>の方法に従ってクマシーブリリアントブルー

(CBB)溶液を用いて測定した.その際,牛血清アルブミン

(1 mgmi-1)を標準として用いて検量線を作製し,試料中に

含まれるタンパク質含量を算出した.CBB溶液と試料を混合

し, 10分間静置した後に 595nmにおける吸光度を測定した.

3. 総アントシアニン含量の測定

材料および方法 総アントシアニン含量は Leeら12)の方法に従って測定し

た.シロイヌナズナ葉約 0.5gを1.5ml容のマイクロテストチュ

1. 栽培方法 ーブに入れ,液体窒素で凍結後,先を潰したチップで破砕し

タバコ (Nicotianatabacum L. cv. Xanthi)およびシロイヌ た.1 % (v/v)塩酸メタノールを 500μ1加えて,暗所 (4

ナズナ (Arabidopsisthaliana L. ecotype Columbia-0)を ℃)で 12時間振とうした.遠心分離 (12,000xg, 2 min, 4

供試植物とした.人工気象器として,日本医化器械社製バイ ℃)後,上清を別のチューブに採取した.残漆に 1% (v/

オトロン (LH-350S)を使用した.タバコおよびシロイヌナズ v)塩酸メタノールを 500μ1加えて撹拌し,遠心分離 (12,000

ナ種子をピートモスを使用した播種用土のJiffy-7R(Jiffy) xg, 2 min, 4℃)後上清を先のチューブに加えた.分光光

に播種し,シロイヌナズナは4℃で2日間春化処理を行った. 度計により,サンプル溶液の 530nmにおける吸光度を測定し

その後昼白色蛍光灯 (NECライフルック N-HG3波長形昼 た.試料中に含まれるアントシアニン量をシアニジンー3ーグルコ

白色 FUOSEX-N-HG:側面 3本 X4面,上面 3本)(以 シド(分子質量 449.1084)換算で,そのモル吸光係数をお

下 FL)および植物栽培用 LED(プラントフレック電球色 よそ 18000M―1cm―1として,次式から総アントシアニン含醤を

PF40-S18WT8-D: 側面 4本 X4面,上面 4本)(以下 算出し,さらに葉の新鮮重当たりの数値に換算した.

PF) を光源とし, Jiffy—7®上面の光合成有効光量子束密度 (530 nmの吸光度 /18000)X449.1084X1000mg mr1

(PPFD) 120μmol m -z豆明期 (23℃)14時間,暗期 4. カルビン回路酵素活性の測定

(18℃) 10時間の条件下で栽培した.1日1回水道水で灌 植物組織 (1-2gwt)に5mlの 100mM Tris-HCI (pH

水し,施肥は週に 1回,ハイポネックス原液:N-P-K= 8.0), 10 mM MgCiz, 1 mM EDTA, 1 mM GSH, 2.5 mM

6-10-5 ((株)ハイポネックスジャパン)を 1000倍希釈して DTI, 1 % Triton X-100を加え,海砂,不溶性PVPを少量

与えた 2週間後土太郎(スミリン農産工業株式会社製) 加えた後に乳鉢,乳棒で破砕した.破砕液を遠沈管に移して

とバーミキュライト(ニッタイ株式会社)を 1:1の割合で混合し 12,000xg, 4℃で 10分間遠心分離後,上清を粗抽出液とし

た培養土を入れたビニールポット(タバコ:3.5号,シロイヌナ た.

-8-

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植物栽培用 LED"プラントフレック"照射下でのシロイヌナズナおよびタバコの生育および光合成特性 99

グリセルアルデヒドー3ーリン酸デヒドロゲナーゼ (NADP+_

GAPDH)活性の測定にはダプルビーム分光光度計を用い

て, 3-ホスホグリセリン酸キナーゼ (PGAkinase)とのカップリ

ング反応による NADPHの減少を,吸光度 340nmの吸光

度変化により測定した 13)_ フルクトースー1,6ービスホスファター

ゼ (FBPase)活性の測定は,グルコースー6ーリン酸デヒドロ

ゲナーゼ (G6PDH),ホスホグルコースイソメラーゼ (GPiso)

とのカップリング反応による NADPHの増加を,吸光度 340

nmの吸光度変化により測定した 14)_NADPHのモル吸光係

数は 6.2mM―1cm―Iとした.

5. 光合成 CO2固定能およびクロロフィル蛍光の測定

CO2固定速度は,携帯用光合成蒸散システム (Li-6400,

LI-COR社, USA)を用いて, 400μmolmo『CO2,25℃,

湿度 65%の条件下で,光強度を 1000,750,500,250,100

および 50,0μmo! photons m―2s―Iに変化させて測定したク

ロロフィル蛍光は MINI-PAM(WAI2社)を用いて測定し

た.

6 分光放射光量子比率および消費電力の測定

分光放射光徽子比率は,分光放射光厳子計

(S-2440model II: 日本医化器械製作所)を用いて測定し

た本実験で使用した人工気象器の消骰電力は,ワットチェッ

カー (MWC-02,大崎電気工業株式会社)を用い, 24時

間の平均消費電力として測定した.

7. 統計分析

本実験で得られた各条件間のデータに対して t検定を行

い,有意差を求めた.

4week

PF FL

結果および考察

1. シロイヌナズナの生育および光合成特性に及ぼす栽培光

条件の影轡

FL,PF各条件下で栽培した 4週齢のシロイヌナズナを

Fig.2に示す.PFで栽培したシロイヌナズナは FLで栽培し

た植物と比較してわずかに抽台の時期が遅れたが,開花時

期,最終的な植物体の大きさには視覚的に大きな差異は見ら

れなかった.以下, FL,PF各条件下で栽培した 4,5,6週齢

のシロイヌナズナをそれぞれ4株用いて,各パラメーターの測

定を行った

可溶性タンパク質濃度を比較した結果を Fig.3aに示し

たいずれの条件下においても,週齢が増すにつれて新鮮

重当たりのタンパク質麓が減少していたまた,いずれの週齢

においても FLと比較して PFで栽培したシロイヌナズナにおけ

るタンパク質磁が多い傾向が見られたが,有意差は認められ

なかった

クロロフィル最を測定した結果を Fig.3bに示した.週齢に

よるクロロフィル磁の変動は見られず,また,両栽培光条件下

でのクロロフィル巌に有意差は認められなかったシロイヌナズ

ナにおいても,光質を含め栽培環境の違いによってアントシア

ニンが蓄積することが明らかにされている 15)_そこで,アントシ

アニン掘を測定したところ,いずれの週齢においても両栽培

光条件下でのアントシアニン麓に有意差は認められなかった

(Fig. 3c).

4week

Fig. 2 Phenotypes of Arabidopsis plants grown under PF or FL light conditions.

-9-

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100 田茂井• 石133• 江口• 原田・雉恥• 重岡

(a) 25

(AJt,tlOtlOE)

ピguo u u1ai0Jd

(b)

(c)

20

15

10

5

0

8

6

4

2

0

8

6

4

2

0

5

1

1

1

1

1

0

0 c:i c:i c:i 0

妄片'g翌u)

iuaiuo u=> 4do;o14 u

Fig. 3

0.1

゜ 4week 5 week 6week

Contents of protein (a), chlorophyll (b), and anthocyanin (c) in 4, 5, and 6-week-old leaves of Arabidopsis grown under PF (gray bar) or FL (white bar) light conditions. Error bars indicate SE (n=4). There was no statistically significant difference between PF and FL (P > 0.05, by Student's t test).

光合成特性の指標としてカルビン回路の構成酵素である

NADP+-GAPDHおよびFBPaseの活性を比較した結果を

Fig.4に示す.PFで栽培したシロイヌナズナにおける 5週

齢 6週齢での NADP+-GAPDHおよびFBPase活性は,

FLで栽培したシロイヌナズナと比較して高い傾向が見られた

が,有意差は見られなかった.

また,クロロフィル蛍光測定により光合成電子伝達系の醤

子収率 (Fv/Fm)を比較した結果,いずれの栽培光条件

下,週齢においても 0.86-0.87(SE 0.004-0.06)であり有意

差はなく,光による電子伝達系への影評は認められなかった

(Fig. 5).

(a)

5

0

1

1

(-quI,8EI'U!U. ニowri)

A1l> !Pe HOd¥;19

(b)

20

5

1゚.4

2

0

8

6

4

2

1

1

0

0

0

0

(-qut,OJJE ,.u, E 10 E

ュ)

>1互peaseds "-

4

3

2

0

c:i

0

(MJt,33E)

#ug uo:i u1ue > :J04lU¥;f

Fig. 4

0.90

0.85

0.80

E ~0.75 a:

0.70

Fig. 5

0.0

4week 5 week 6week

Activities of NADP+-GAPDH (a) and FBPase (b) in 4, 5, and 6-week-old leaves of Arabidopsis grown under PF (gray bar) and FL (white bar) light conditions. Error bars indicate SE (n=4). There was no statistically significant difference between PF and FL (P > 0.05, by Student's t test).

5 week 6week

PSII activity (Fv /Fm) in 5 and 6-week-old leaves of Arabidopsis grown under PF (gray bar) and FL (white bar) light conditions. Error bars indicate SE (n=4). There was no statistically significant difference between PF and FL (P > 0.05, by Student's t test).

2. タバコの生育および光合成特性に及ぽす栽培光条件の

影密

FL,PF各条件下で栽培した 6,7,8週齢のタバコを Fig.6

-10-

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植物栽培用 LED"プラントフレック”照射下でのシロイヌナズナおよびタバコの生育および光合成特性 101

Fig. 6 Phenotypes of tobacco plants grown under PF or FL light conditions.

に示すいずれの週齢においても, FL,PF間で植物体の大き

さ,葉数葉色には視覚的に大きな差異は見られなかった

以下, FL,PF各条件下で栽培した 6,7,8週齢のタパコそれ

ぞれ4株を用いて,各パラメーターの測定を行った.

可溶性タンパク質濃度を比較した結果を Fig.7aに示し

たいずれの条件下においても,週齢が増すにつれて新鮮

重当たりのタンパク質濃度が減少していたまた,いずれの週

齢においても FLと比較して PFで栽培したタバコにおけるタ

ンパク質濃度が高い傾向が見られたが,有意差は認められな

かった.

クロロフィル巖を測定した結果を Fig.7bに示した.週齢に

よるクロロフィル厳の変動は見られず,また,両栽培光条件下

でのクロロフィル最に有意差は認められなかった.

NADP+-GAPDHおよびFBPaseの活性を比較した結果

をFig.8に示す.NADP+-GAPDHは両栽培光条件下で有

意差は認められず,また各週齢で大きな活性値の変動は認め

られなかった.一方, FBPase活性は週齢が増すにつれて活

性の上昇が見られたが,両栽培光条件下で有意差は認めら

れなかった

{a) 8.0

7.0 き"' 6.0 ~ 6o 5.0

~ 習~ 4.0

者C 3.0

2.0 0..

1.0

0.0

(b) 0.8

.き• 0.7

~ b.o 0.6

習, 9

0.5 , 0.4

0.3

0.2 6 0.1

0.0 6week 7week 8week

Fig. 7 Contents of protein (a) and chlorophyll (b) in 6, 7, and 8-week-old leaves of tobacco grown under PF (gray column) and FL (white column) light conditions. Error bars indicate SE (n=4). There was no statistically significant difference between PF and FL (P > 0.05, by Student's t test).

様々な光強度条件下での Cむ固定速度を測定した結果

をFig.9に示した週齢による CO2固定速度の変動はほとん

ど見られず,また,両栽培光条件下での CO2固定速度に有

意差は認められなかった.また, PF,FLいずれの植物におい

ても,500μmo! photons m―zs―1以上の光条件下で最大の

光合成活性を示した

さらにクロロフィル蛍光測定により光合成電子伝達系の掘

子収率 (Fv/Fm)を比較した結果,いずれの栽培光条件

下,週齢においても 0.79-0.81(SE 0.004-0.07)であり有意

差はなく,栽培光質による電子伝達系への影野は認められな

ヵ‘っtこ (Fig.10)

3 植物栽培光源としてのプラントフレックの有用性

今回用いたプラントフレック電球色と蛍光灯照射下の植物

体における光合成特性に有意な差は認められなかった蛍光

灯照射に比べて,赤色光と青色光を交互もしくは同時照射条

件下においてリーフレタスの生育が促進することが明らかにさ

れている 9)_一方シソおよびルッコラの新鮮重は,蛍光灯照

射下と比較して,赤色光と青色光照射下の植物体ではわず

かに減少する傾向が見られている 14)_ 青色光と赤色光の割合

(B/R比)と生育との関係を検討した多くの報告から.BIR

-11-

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102 田茂井• 石田 • 江口• 原田 ・ 雉恥• 重岡

(a)

(b)

181614121086420⑬

(-qut,gEt, LI! E 10 E

ュ)

A1l>nu e HOd¥f9

6

4

2

8

0

0

0

0

(一

qut,tlOEt,EE10 E

ュ)

>1l> !Pe aseds~

゜ 6 week 7 week

Fig. 8

8 week

Activities of NADP+-GAPDH (a) and FBPase (b) in 6, 7, and 8-week-old leaves of tobacco grown under PF (gray bar) and FL (white bar) light conditions. E汀 orbars indicate SE (n=4). There was no statistically significant difference between PF and FL (P > 0.05, by Student's t test).

比が0.1-0.3の場合に成長速度が最大になるとされてい

る6.7). 前述の通り,今回用いたプラントフレック電球色の分光

分布は 450nm付近青色光に対して, 610nmをピークとする

500-770 nmの大きなピークからなり,光合成に用いられる

660nm付近の赤色光が多く含まれており,前述の BIR比と

比べて青色光の割合が少ない (Fig.1). この点を改良すれ

ば,生育促進効果も期待できる.一方,今回用いた蛍光灯の

分光分布は主に約 430,550, 620 nmの3波長から構成され

ている (Fig.1). 500-600 nmの緑色光は植物にあまり吸収

されないことから, 430nmおよび620nmの割合がプラントフ

レック電球色と同程度であることが,両光照射下でのシロイヌ

ナズナおよびタバコの生育および光合成特性に差が見られな

かった原因ではないかと考えられる.

プラントフレックー本当たりの消費電力 18.0Wであるのに対

し,今回用いた蛍光灯は40Wである.本実験では,光量を

同じに設定するために PF条件ではプラントフレックを 20本,

FL条件では蛍光灯を 15本使用しているため,単純計算で

はFL条件の消費電力は 600Wであるのに対し, PF条件の

消費電力は FLの約 60%の360Wとなることから,約 40%

の省エネ効果があると考えられるまた,プラントフレックを使用

(t'Sz

,E 10 E

ュ)

a1e」

u01iel!E ,sse zo u

(t'Sz

,E 1owr1)

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Fig. 9

2

0

8

6

4

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合合

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6week

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2

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8

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1

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7 week

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6

6 ゜

8week

200 400 600 800 1000120014001600

light intensity (μmol photons m・2 s・1)

Photosynthetic CO2 assimilation rate in 6, 7,

and 8-week-old leaves of tobacco grown under PF (gray circle) and FL (white circle) light conditions. Error bars indicate SE (n=4). There was no statistically significant difference between PF and FL (P > 0.05, by Student's t test).

した場合は発熱景が少ないため,空調に必要な電力も少なく

て済む.実際に,各栽培条件で稼働中の人工気象器 1台当

たりの消費電力は,蛍光灯搭載機では 0.94kWhであるのに

対し,プラントフレック搭載機では 0.51kWh (いずれも環境

負荷が無い場合)であり,消費電力が約 40%削減されてい

ることが明らかとなった.以上の結果から,プラントフレックは

蛍光灯と比較して異なる波長特性を有しているものの,今回

用いた栽培条件下においてはシロイヌナズナおよびタパコの

生育や光合成能に大きな影態を及ぼすことがないことから,

蛍光灯に代わる省エネルギー人工光源として充分利用可能

-12-

Page 9: 植物栽培用LED“プラントフレック”照射下でのシロイヌナズナ ...植物栽培用LED“プラントフレック”照射下でのシロイヌナズナ およびタバコの生育および光合成特性

植物栽培用 LED"プラントフレック"照射下でのシロイヌナズナおよびタバコの生育および光合成特性 103

ELLl>LL

0.90

0.85

0.80

0.75

0.70

゜ 6week 7 week 8week

Fig. 10 PSII activity (Fv/Fm) in 6, 7, and 8-week-old leaves of tobacco grown under PF (gray bar) and FL (white bar) light conditions. Error bars indicate SE (n=4). There was no statistically significant difference between PF and FL (P > 0.05, by Student's t test).

であると考えられる.

摘 要

プラントフレック LED光源下で栽培したシロイヌナズナの生

育および光合成特性は,蛍光灯照射下で栽培した植物との

間に有意な差は見られなかった

プラントフレック LED光源下で栽培したタバコの生育および

光合成特性は,蛍光灯照射下で栽培した植物との間に有意

な差は見られなかった

プラントフレック LED光源の消骰電力は蛍光灯の約 60%

であった

プラントフレック LED光源は,蛍光灯に代わる省エネルギ

ー型人工光源としての利用が可能であることが示された

ヽ~ヽ~‘

,

/

1

2

3

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4)

5)

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