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塩沢由典『経済学を再建する―進化経済学と古典派価値論―』 3 章 価格と数量の二重調整過程 閑花の会 高木和人 2014 11 15 1. 機能する経済の基本前提 従来の進化経済学に欠けているものについても考えなければならない。そのうち、最大のものは、価値理論 ないし価格理論の欠如であろう。 ★貨幣とは何?どうしたらお金持ちになれる?宇野理論? 商品や技術、行動、制度など進化するものをどのようにとらえるにせよ、(中略)、それらの環境に一定の定 常性が前提される。 ★変化を起こす「進化」に、定常性が前提される逆説。 変幻きわまりない環境条件で、価格シグナルは機能しない 合理性の限界 最適化問題 生産費用について、一定の安定性が要求される 人間は、定型行動のレパートリーから経験的に適切な行動を取捨選択して行動している さまざまな財・サービスの相対価格が比較的安定 石油。20 世紀半ばは 12 米ドル/ガロン、現在は 100 米ドル/ガロンになるときも http://ecodb.net/pcp/imf_usd_poilwti.html 国立大学授業料。50 年で 50 倍以上値上げ 日本の消費者物価指数。1950 年を 1 とすると、2000 年代はだいたい 89 程度 卵。1970 年代から 2013 年の間に 40 %上昇 バナナ、歯ブラシ、石けんなど。1970 年代から 2013 年の間に 1 割程度の上昇 婦人ストッキング・電気掃除機など価格が下落しているものも 1

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Page 1: 塩沢由典『経済学を再建する―進化経済学と古典派価値論―』 · 技術のネットワーク、商品の利用の2 部グラフをずたずたに改変するものとなる。

塩沢由典『経済学を再建する―進化経済学と古典派価値論―』第 3章 価格と数量の二重調整過程

閑花の会 高木和人

2014年 11月 15日

1. 機能する経済の基本前提従来の進化経済学に欠けているものについても考えなければならない。そのうち、最大のものは、価値理論ないし価格理論の欠如であろう。

★貨幣とは何?どうしたらお金持ちになれる?宇野理論?

商品や技術、行動、制度など進化するものをどのようにとらえるにせよ、(中略)、それらの環境に一定の定常性が前提される。

★変化を起こす「進化」に、定常性が前提される逆説。

• 変幻きわまりない環境条件で、価格シグナルは機能しない• 合理性の限界• 最適化問題• 生産費用について、一定の安定性が要求される• 人間は、定型行動のレパートリーから経験的に適切な行動を取捨選択して行動している

さまざまな財・サービスの相対価格が比較的安定

• 石油。20世紀半ばは 1~2米ドル/ガロン、現在は 100米ドル/ガロンになるときもhttp://ecodb.net/pcp/imf_usd_poilwti.html

• 国立大学授業料。50年で 50倍以上値上げ• 日本の消費者物価指数。1950年を 1とすると、2000年代はだいたい 8~9程度• 卵。1970年代から 2013年の間に 40%上昇• バナナ、歯ブラシ、石けんなど。1970年代から 2013年の間に 1割程度の上昇• 婦人ストッキング・電気掃除機など価格が下落しているものも

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Page 2: 塩沢由典『経済学を再建する―進化経済学と古典派価値論―』 · 技術のネットワーク、商品の利用の2 部グラフをずたずたに改変するものとなる。

大きな(基幹商品の)価格変化が起こるとき、生産工程も大きく変わらざるを得ない。

技術のネットワーク、商品の利用の 2部グラフをずたずたに改変するものとなる。

経済は一定の(ゆらぎのある)定常性を前提として機能している。

★基幹商品と技術のネットワークの例

• シマノ社の、アルミの冷間鍛造。1960年代から• Apple社のアルミ一枚板切削加工のユニボディ。2000年代から(以前はプラスチックやチタニウム)

最新技術をセールスポイントにしている会社が、同じ技術を継続して使い続けている

★変動を求めている人々の存在をどう考えるか

「相場」。「先物市場」。リスクの取引

2. 進化のミクロ・マクロ・ループ経済行動は、if-then型指あるいは qSS’q’という 4つ組みからなる定型行動である。生物は、環境によって選択されるばかりの存在ではなく、自分たちの進化する環境をも変えてしまう存在である。

経済の全体状況と個々の経済主体の間には、一種の共進化過程がある。これを私はミクロ・マクロ・ループと呼んでいる。

マクロ

ミクロ

コルナイの圧力型経済と吸引型経済

★コルナイ

コルナイ・ヤーノシュ(1928年~)。ハンガリーの経済学者。http://synodos.jp/economy/6279/3

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★生物世界とミクロ・マクロ・ループ

ミクロ・マクロ・ループは、リチャード・ドーキンスが考えるような生物世界を抽象化して表したものと考えられる。

物理学的な、すなわち非生物学的な物体のふるまいは、単純だからこそ現在手持ちの数学的言語を使って記述できるのであり、そういうわけで物理学の本は数学で溢れているのだ。[2, PP.19-20]

ダーウィンが発見しいまや周知の自然淘汰は、盲目の、意識を持たない自動的過程であり、何の目的も持っていないのだ。自然淘汰には心もなければ心の内なる眼もありはしない。将来計画もなければ、視野も、見通しも、展望も何もない。もし自然淘汰が自然界の時計職人の役割を演じていると言ってよいならば、それは盲目の時計職人なのだ。[2, PP.24-25]

★ミクロ・マクロ・期待ループ

「ミクロ・マクロ・ループについて」で例としてあげられている「戦後日本の成長経済と日本的経営」「金融市場のミクロ・マクロ・ループ」は、むしろ期待と現実のループではないか?経済状況において、個々の経済主体は、不完全な将来計画と展望を持つ。経済状況の場合、ループにミクロとマクロに「期待」が加わり、「ミクロ・マクロ・期待ループ」が形成されるのではないか。この場合の期待は、将来計画や視野・見通し・展望のこと。ドーキンスの考える生物世界とは異なり、経済では期待が状況や共進化過程に影響する。

マクロ

ミクロ

期待

3. 進化経済学を補完する価値論ワルラス型の価格均衡理論は、(中略)、経済状況に応じて価格が変化することに人びとが対応できることを基本の前提としている。(中略)価格がつねに大きく変化する自体は、すくなくとも現代的な産業経済にとっ

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て最悪の事態である。

固定費―大きな固定費は、価格の変化への対応を困難にする

★減価償却費

• 市況商品 生産量の調整が困難• フルコスト原理• オックスフォード調査

上乗せ率がいかなる理由・原理によって決まってくるかという問題

「スラッファの原理」 設定された価格のもとで、企業は売れるだけ売り、生産する

「最小価格定理」(非代替原理)企業が複数の生産技術を持つ場合に、需要構成が変わっても、経済全体としては、ある一定の価格で供給できる―価格と数量とが基本的に独立であることを可能にする

フルコスト原理

スラッファの原理

最小価格定理

★サミュエルソン『経済学』

マークアップ価格付けが不完全競争市場における標準的事態であることは、つぎつぎと挙げうる事例によっても明らかなのだ。いかに現実的であるといっても、この分析は不完全である。それは、何故一つの産業では平均的マー

ジンアップが 40パーセントであるのにもう一つの産業では 5パーセントであるかについて、われわれにはじれったいと思われるくらい何も語ってくれないのである。(中略)マークアップ価格付けは経験法として、すなわち合理性の限界ゆえに使われるにいたった経営陣の道

具として見なされるべきである。(中略)企業は、マークアップ価格付けを使い、またそのマークアップを時どき調整することにより、彼らが欲している利潤極大化の帰結へ向けて一歩一歩進んでいくことができる。ちょうど野球の投手が一投ごとの方程式を解くなどということはしないのと同様に、優れた業績を狙っている経営者は、利潤の上昇を求めてマークアップを上下に調整するようなとき、限界費用と限界収入を常に念頭に置いているとは限らないのである。[1, P.609]

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★第 8章 「価格と数量の同時決定体型への転換」より

•「日本企業の価格設定行動―『企業の価格設定行動へのアンケート調査』結果と若干の分析―」の項目1. 利益重視2. 時々の需給3. シェア・将来の利益重視 ★売上最大化?4. 主導権は購入する側5. 監督機関や法律

•「コストベースの価格設定」「マーケットベースの価格設定」

★稲森和夫の価格論

値段というのは、高すぎても売れないし、安すぎれば利益がなくなってしまいます。ですから、お客様が喜んで買ってくださるいちばん高い値段で値決めをしなければならないのです。自分が満足する高い値段ではありません。お客様が喜んで買ってくださる最高の値段であり、それを超えてしまうと、お客様が逃げてしまうというぎりぎりの値段です。その値段を決めるために、たとえば値段を徐々に上げていって、この値段ではお客様が逃げてしまう

などという実験ができればいいのですが、逃げたお客様は二度と帰ってきませんから、それは不可能です。ですから、値決めは慎重さを要する経営の最も重要な要素であり、トップが心血を注いで決めるべきものです。[3]

★価格理論構想のメモ

• 新しい商品に対する、フルコスト原理以外の価格設定方法は?新古典派の「限界収入と限界費用を基礎にした価格決定」は現実的ではないとすると、ほかの方法はあるのか?あえて議論となる言い方をすれば、フルコスト原理は、原価をベースにする以外、「何の原理もない」価格決定の方法ともいえる。

• 新しい商品の価格は、原価(固定費 +変動費)を把握した上で、「理論」以外の方法(理念や勘なども含む。期待?)で決まる。ただし、売上と利益により、価格の範囲(下限と上限)は定められる。下限を超えた価格は利益をあげられず、上限を超えた価格は売上をあげられない。結果として、生き残れない。

•「価格を決めて営業する間に波動関数が収束し、経済状態が定まるので、価格を決めて営業するまでは需要量は分からない」(シュレーディンガーの猫状態?)

• いったん決まった価格の商品は、大きな影響力を持つ• すでに価格が決定している商品の市場に別の供給者が参入する場合、「マーケットベースの価格設定」が行われる

• 理想的な完全競争市場では、利潤は一定の値に収斂し、新古典派経済学のモデルが成り立つ。しかし、供給者は完全競争市場を避け製品の「特殊化」をつねに試みるので、理想的な完全競争市場が実現する機会は少ない

•『サミュエルソン経済学』でいえば、独占の分析がもっとも現実に近い。ただし、独占企業であっても

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多くの場合直面するのは、「収穫逓減の法則」ではなく「有効需要の不足」• 収穫逓減の法則に直面していそうな例もある。

– あえて売上やシェアを伸ばさない Apple 社(Windows 向け MacBook を作れば、ノート型コンピュータの売上はかんたんに伸びるはず。それをしないのは、収穫が一定または逓減だから?)

– トヨタ「伸びきった兵站線」(リーマンショック後の 2010年頃の状態。グローバルに拡大する会社に比べ、経営体制が追いついていなかった。売上を拡大しているうちに、収穫逓減に直面?)

• 売上を最大化する価格と、利益を最大化する価格は、一致するか?有効需要量まで、収穫逓増または収穫一定の場合は一致?

4. 生産量の調整と需要の変化現代的企業が容量いっぱいに生産する状況は、まれにしかない。

生産量の増大を制約しているのは、価格を引き下げるか、より多くの販売費用を費やすことなくしては、販売量を増大させることができない。それでも増大できない場合は、需要にあわせて数量を調整するしかない。…「スラッファの原理」

市況製品…需要変化に敏感な商品生産量の調整がむつかしい製品は、市況商品になりやすい

在庫管理。「在庫と生産の数学理論」

経営の深いところに、行動や技術の進化が組み込まれていること、それらの進化をうまく促すことがよい経営の一般的方針となる。

企業として製品原価を縮減させるには、工場内部の調整だけでは原価がある。市場に働きかけて需要を平準化させることも考えなければならない。

★社会技術と経済学

• 在庫管理と原価計算は、供給の現実を把握する「社会技術」• 需要を推測する技術はマーケティング。価格やそのほかの条件が変わったときに需要の現実を把握するのは困難

• 技術では、適用範囲と検証方法が定義されている• 経済学は、「社会技術」モジュールの組み合わせとして再構築できる?

5. ケインズとリカードを結びつける古典派価値論によってケインズの有効需要理論を再構成する

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リカード「4つの魔法の数字」

★「4つの魔法の数字」は、貿易だけではなく、より身近な経済状況にも適用できないか。たとえば、会社で働くときの仕事の割り振りや、外注の判断など。

参考文献[1] P.サミュエルソン. サミュエルソン経済学. 岩波書店, 1993.

[2] リチャード・ドーキンス. 盲目の時計職人. 早川書房, 2004.

[3] 稲盛和夫. 高収益企業のつくり方. 日本経済新聞出版, 2014.

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いわし専門の魚屋問題

とある、いわし専門の魚屋がある。この魚屋は、いわしを常に 1匹 80円で仕入れることができる。家賃や電気代などの固定費が 1月あたり 40万円かかり、変動費は仕入価格のみである。この魚屋を存続するには、1

月あたり 10万円の利益が必要である。いわしの販売単価は、1匹あたり 100円と決定した。[1, P.195]より。

問題 1

いわしの予測販売数量は 1月あたり 22,000匹である。このとき予測される利益または損失を求めよ。

問題 2

魚屋を存続させるために必要な販売数量を求めよ。

問題 3

魚屋を存続させるために、どのような対策が考えられるか。

参考文献[1] 内山力. 会社の数字を科学する. 株式会社 PHP研究所(PHPサイエンス・ワールド新書), 2010.

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いわし専門の魚屋問題 解答

とある、いわし専門の魚屋がある。この魚屋は、いわしを常に 1匹 80円で仕入れることができる。家賃や電気代などの固定費が 1月あたり 40万円かかり、変動費は仕入価格のみである。この魚屋を存続するには、1

月あたり 10万円の利益が必要である。いわしの販売単価は、1匹あたり 100円と決定した。[1, P.195]より。

問題 1

問題

いわしの予測販売数量は 1月あたり 22,000匹である。このとき予測される利益または損失を求めよ。

解答

売上 = 単価×販売数量 = 変動費+固定費+利益 より、利益を R0 とすると、

100× 22000 = 80× 22000 + 400000 +R0

R0 = 22000× (100− 80)− 400000

R0 = 40000

よって、利益は 40,000円。このときの販売数量と、売上および費用の関係は、図 1のグラフで表せる。

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0 5000 10000 15000 20000 25000 30000

0500000

10000001500000200000025000003000000

Q

P

固定費用 400,000円

総費用 2,160,000円

売上 2,200,000円

図 1 問題 1の場合の、販売数量と、売上および費用の関係

問題 2

問題

魚屋を存続させるために必要な販売数量を求めよ。

解答

魚屋を存続させるために必要な販売数量を Q0 とすると、

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100Q0 = 80Q0 + 400000 + 100000

(100− 80)Q0 = 500000

Q0 = 25000

よって、必要な販売数量は 25,000匹。このときの販売数量と、売上および費用の関係は、図 2のグラフで表せる。

0 5000 10000 15000 20000 25000 30000

0500000

10000001500000200000025000003000000

Q

P

固定費用 400,000円

総費用 2,400,000円

売上 2,500,000円

●●

図 2 問題 2の場合の、販売数量と、売上および費用の関係

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問題 3

問題

魚屋を存続させるために、どのような対策が考えられるか。

対策 1

「ガンバレ」と言って、販売数量の目標を 25,000匹とする。

コメントまさに経営者から与えられたノルマとなります。経営者が勝手に決めた数字でありこれを達成することに現場の責任があるとはいえません。[1, P.204]

対策 2

いわしの販売価格を値下げし、90円とする。このときの販売数量を Q1 とすると、

90Q1 = 80Q+ 400000 + 100000

10Q1 = 500000

Q1 = 50000

よって、販売数量が 50,000匹以上あれば魚屋は存続する。このときの販売数量と、売上および費用の関係は、図 3のグラフで表せる。

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0 10000 20000 30000 40000 50000 60000

0100000020000003000000400000050000006000000

Q

P

固定費用 400,000円

総費用 4,400,000円●

売上 4,500,000円

●●

図 3 問題 3対策 2の場合の、販売数量と、売上および費用の関係

問題 3

コメント[1, P.204]では、販売価格 90円のときの販売数量を 24,000匹と想定している。

対策 3

いわしの販売価格を値上げし、105円とする。このときの販売数量を Q2 とすると、

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105Q2 = 80Q2 + 400000 + 100000

25Q2 = 500000

Q2 = 20000

よって、販売数量が 20,000匹以上あれば魚屋は存続する。このときの販売数量と、売上および費用の関係は、図 4のグラフで表せる。

0 5000 10000 15000 20000 25000 30000

0500000

10000001500000200000025000003000000

Q

P

固定費用 400,000円

●総費用 2,000,000円●

売上 2,100,000円

●●

図 4 問題 3対策 3の場合の、販売数量と、売上および費用の関係

コメント[1, P.204]では、「販売価格を上げても利益は出ません」としている。

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対策 4

プロモーションに力を入れ、プロモーション費用 10万円を計上する。ここでの予測販売数量は、29,000匹。このとき予測される利益 R1 は、

100× 29000 = 80× 29000 + 400000 + 100000 +R1

R1 = (100− 80)× 29000− 500000

R1 = 80000

さらに、他の魚屋と共同仕入することで、仕入価格のコストダウンを 1匹あたり 1円図る。このとき予測される利益 R2 は、

100× 29000 = 79× 29000 + 400000 + 100000 +R2

R2 = (100− 79)× 29000− 500000

R2 = 109000

利益が 109,000円で、100,000円を超えているため、事業を存続できる。このときの販売数量と、売上および費用の関係は、図 5のグラフで表せる。

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0 5000 10000 15000 20000 25000 30000

0500000

10000001500000200000025000003000000

Q

P

●●

固定費用 500,000円

総費用 2,791,000円

●売上 2,900,000円

図 5 問題 3対策 4の場合の、販売数量と、売上および費用の関係

コメント[1, P.204-206]に記載された対策である。

参考文献[1] 内山力. 会社の数字を科学する. 株式会社 PHP研究所(PHPサイエンス・ワールド新書), 2010.

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