沖縄県立総合教育センター 後期長期研修員 第47集 研究収録 2009...

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- 111 - 沖縄県立総合教育センター 前期長期研修員 50 研究集録 2011 年9月 〈外国語〉 英文法力を高めるコミュニケーション活動の工夫 - 協同学習を取り入れたインプットアクティビティを通して - 沖縄県立具志川商業高等学校教諭 テーマ設定の理由 平成 21 年3月に改訂された高等学校学習指導要領では,外国語科の目標として「外国語を通じて,言語 や文化に対する理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,情報や考え などを明確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を養う。」と掲げられ,「聞くこと」, 「話すこと」,「読むこと」,「書くこと」の4技能を総合的に育成するための指導を行い,生徒のコミュニ ケーション能力を更に伸ばすことが求められている。必履修科目として創設された「コミュニケーション 英語Ⅰ」において,科目の改訂の要点では,「文法事項については言語活動と効果的に関連付けながら,す べての事項を本科目において適切に取り扱うもの」と明確に書かれており,英文法学習も‘English as a Global Language’としてコミュニケーションを支えるもの,それを図るための手段とし,文法指導と言語 活動とを一体的に行い,文法力を育成すべきであるとしている。 英語の授業に関して,昨年度9月に本校2学年を対象に行ったアンケート調査結果によると,多くの英 語学習分野の中から多くの生徒が,「文法が最も苦手」であると答えており,その理由に「理解が難しい」 「説明を聞くと眠くなる」等を挙げており,また,実際の定期考査においても,他の問題に比べ文法問題 の正答率がとても低く,日本語訳問題では 35%,また並べ替え問題においては 23%しかなく,無記入の解 答も多く見られた。このような文法学習への苦手意識は,英語の教科そのものに対するものに加え,一方 的な説明重視,受け身型の授業も要因の一つだと考えられ,今後は教師主体の授業でなく,生徒自らが参 加体験し,習得していく生徒主体の学習が必要となってくる。 そこで,これらの問題を改善する手立てとして,英文法の学習時にペアやグループで行う協同学習をう まく活用できないかと考えた。ペアやグループでのコミュニケーション活動において,生徒同士が主体的 に行動し,そして対話することでそれぞれが役割や責任を持ちながら協力し合い,ゲームやクイズ等の課 題を解決する。また,これまでの説明重視で教師主体の導入に始まり,教師による言語習得(インプット) からコミュニケーション活動へという流れとは逆に,導入として新しい英文法に関連した生徒主体のイン プットを目的としたコミュニケーション活動『インプットアクティビティ』を行い,その後,教師の説明 を聞くことで更にコミュニケーション活動と英文法学習とが一体化され,その学習がより深く習得される のではないかと期待される。 よって本研究では,ペアやグループでの協同学習の活用で,生徒同士が協力し合い相互に成長し,イン プットアクティビティを英文法学習に導入することによって,参加体験型の主体的な学びとなり,文法学 習に対する関心意欲の向上を促し,コミュニケーション力の育成と共に,文法力の向上へとつながってい くと考え,本テーマを設定した。 〈研究仮説〉 コミュニケーション活動と英文法学習を一体的に行う学習で,協同学習とインプットアクティビティを 活用することによって,協同的かつ主体的に学習する態度が養われ,コミュニケーション力が高まり,文 法力も向上するであろう。 研究内容 コミュニケーション活動と文法力 (1) 英文法指導を効果的に行うコミュニケーション活動 コミュニケーション活動を高島英幸(1995)は「主に,聞くこと,話すことを指し,原則として 相手がいることを前提とする。」とし,英文法指導を効果的に行うためのコミュニケーション活動に おける5つの特徴を次のように挙げている(表1)。また,インプットがより効果的になされるコミ ュニケーション活動とは,「目標言語を用いて学習者同士での相互作用をより多くすることが必要」

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沖縄県立総合教育センター 前期長期研修員 第 50集 研究集録 2011年9月

〈外国語〉

英文法力を高めるコミュニケーション活動の工夫 - 協同学習を取り入れたインプットアクティビティを通して -

沖縄県立具志川商業高等学校教諭 仲 松 智 江

Ⅰ テーマ設定の理由 平成 21年3月に改訂された高等学校学習指導要領では,外国語科の目標として「外国語を通じて,言語

や文化に対する理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,情報や考え

などを明確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を養う。」と掲げられ,「聞くこと」,

「話すこと」,「読むこと」,「書くこと」の4技能を総合的に育成するための指導を行い,生徒のコミュニ

ケーション能力を更に伸ばすことが求められている。必履修科目として創設された「コミュニケーション

英語Ⅰ」において,科目の改訂の要点では,「文法事項については言語活動と効果的に関連付けながら,す

べての事項を本科目において適切に取り扱うもの」と明確に書かれており,英文法学習も‘English as a

Global Language’としてコミュニケーションを支えるもの,それを図るための手段とし,文法指導と言語

活動とを一体的に行い,文法力を育成すべきであるとしている。 英語の授業に関して,昨年度9月に本校2学年を対象に行ったアンケート調査結果によると,多くの英

語学習分野の中から多くの生徒が,「文法が最も苦手」であると答えており,その理由に「理解が難しい」

「説明を聞くと眠くなる」等を挙げており,また,実際の定期考査においても,他の問題に比べ文法問題

の正答率がとても低く,日本語訳問題では 35%,また並べ替え問題においては 23%しかなく,無記入の解

答も多く見られた。このような文法学習への苦手意識は,英語の教科そのものに対するものに加え,一方

的な説明重視,受け身型の授業も要因の一つだと考えられ,今後は教師主体の授業でなく,生徒自らが参

加体験し,習得していく生徒主体の学習が必要となってくる。

そこで,これらの問題を改善する手立てとして,英文法の学習時にペアやグループで行う協同学習をう

まく活用できないかと考えた。ペアやグループでのコミュニケーション活動において,生徒同士が主体的

に行動し,そして対話することでそれぞれが役割や責任を持ちながら協力し合い,ゲームやクイズ等の課

題を解決する。また,これまでの説明重視で教師主体の導入に始まり,教師による言語習得(インプット)

からコミュニケーション活動へという流れとは逆に,導入として新しい英文法に関連した生徒主体のイン

プットを目的としたコミュニケーション活動『インプットアクティビティ』を行い,その後,教師の説明

を聞くことで更にコミュニケーション活動と英文法学習とが一体化され,その学習がより深く習得される

のではないかと期待される。

よって本研究では,ペアやグループでの協同学習の活用で,生徒同士が協力し合い相互に成長し,イン

プットアクティビティを英文法学習に導入することによって,参加体験型の主体的な学びとなり,文法学

習に対する関心意欲の向上を促し,コミュニケーション力の育成と共に,文法力の向上へとつながってい

くと考え,本テーマを設定した。

〈研究仮説〉

コミュニケーション活動と英文法学習を一体的に行う学習で,協同学習とインプットアクティビティを

活用することによって,協同的かつ主体的に学習する態度が養われ,コミュニケーション力が高まり,文

法力も向上するであろう。

Ⅱ 研究内容

1 コミュニケーション活動と文法力

(1) 英文法指導を効果的に行うコミュニケーション活動

コミュニケーション活動を高島英幸(1995)は「主に,聞くこと,話すことを指し,原則として

相手がいることを前提とする。」とし,英文法指導を効果的に行うためのコミュニケーション活動に

おける5つの特徴を次のように挙げている(表1)。また,インプットがより効果的になされるコミ

ュニケーション活動とは,「目標言語を用いて学習者同士での相互作用をより多くすることが必要」

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であるとし,このよう

な生徒同士でのコミュ

ニケーション活動によ

り学習効率が上がり,

学習に効果をもたらす

としている。

大下邦幸(1996)は,

「語句・文・題材などの言語材料をコミュニカティブに導入し,練習を行い,活用へと発展させ,

目標とする文法事項を使用し,活用しながら文法事項を定着させる」方法を,効果的英文法指導に

おけるコミュニケーション活動であるとしている。文法指導を自分の言いたいことや伝えたいこと,

また自己表現活動に置き換え,学習者同士で伝え合い表現し合うこと(アウトプット)で,文法指

導とコミュニケーション活動を効果的に,適切に結びつけることが可能となるのである。

(2) コミュニケーション能力とは

大下は,コミュニケーション能力を「言語を正

確に,適切に,しかも流暢に操れる能力」と定義

し,主に①言語を正確に操れる能力(文法能力)

②言語を適切に操れる能力(社会言語的能力・談

話能力)③言語を流暢に操れる能力(方略的能力)

(図1)の3つの能力に分類している。ここで大

下の述べる「流暢に」とは,コミュニケーション

の過程で起こる障害に対処することであり,「聞き

返し」や「言い換え」を意味している。さらに,

コミュニケーション能力の育成には言語を正確に

操れる能力,すなわち文法能力も重要な要素とな

っており,相互関係にあるコミュニケーション活動と文法学習とは一体化して学習されるべきであ

ると述べている。今日求められている生徒のコミュニケーション能力の育成には,文法的に正しい

文を作り出す力を基盤とし,それを状況に応じて適切に使用し,会話の中で意味的なつながりを考

えながら操ることが必要である。

2 主体的な言語習得におけるインプット,アウトプット

(1) インプット,アウトプットとは

小池生夫(1994)によると,第二言語学習において「インプット」とは,「学習者に対して発せら

れた言語である」とし,文法や単語など学習者が目標言語を読んだり,聞いたりした時の言語入力

全てを指し,また知識を身に付けることを意味しており,言語習得において欠かせない大切な過程

の一つである。反対に「アウトプット」とは,「学習者の発話や覚えた英語の知識を実際に使って

みる実践的な学習」などの言語出力を差し,主にスピーキングやライティングで,学習した目標言

語を表現することを意味している。

(2) 言語指導における効果的なインプットの方法

言語指導時における効果的なインプットとは「学習者主体の認知行為,気付くことが重要」で,

「言語に接している(インプット)だけでは必ずし

も習得されるとは限らず,そのインプットを自分の

ものと(内在化)するのは,最終的には学習者自身」

であり,教師側からの働きかけや説明だけでなく,

生徒自身の主体的なインプットが必要不可欠となっ

てくる。また,「大量のインプットが重要であるが,

量に関わらずインプットそのものだけでは習得,言

語の内在化は起こらず,尐量でも良いので同時期に

アウトプットを行うことが,言語習得には最も効果

的な方法」であるとし,「聞き手と話し手による意味

のやりとりが大切である。同時に学習者自身が発話

① 言葉についての学習だけでなく,相手に意思を伝える伝達が目的であること。

② 言葉の形態ではなく,伝達の内容に焦点が置かれていること。

③ 聞き手と話し手の間に情報の差(インフォメーション・ギャップ)があること。

④ タスクに意味のやりとりをする機会があること。

⑤ 伝達者がタスクに必要とされる言語材料を自分で選択して使用すること。

表1 英文法指導を効果的に行うコミュニケーション活動の特徴

図1 コミュニケーション能力の構想要素

図2 効果的なインプット

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(アウトプット)する事も重要であり,積極的に発話させるような環境」が必要だと述べている。

つまり,言語学習において,ペアに対するアウトプットが学習者自身のより深いインプットになり

うるのである(図2)。よって,言語学習導入時において,新出事項を生徒自身が主体的なインプッ

トで習得し,同時に積極的なアウトプットで内在化が行えるような活動が言語指導において効果的

であると考えられる。

そこで,これまでの説明重視で教師主体の導入に始まり,その後コミュニケーション活動を行う

という流れとは逆に,導入として新しい英文法に関連した生徒主体のインプットを目的としたコミ

ュニケーション活動,『インプットアクティビティ』をまず始めに行う。相手に対して何かを「伝

えたい」,そして「答えを見つけたい」という目的の伴った学習は,生徒の関心意欲を高め,自らの

考えや気持ちを言葉にすることによって内在化され,生徒自身によるインプットへとつながってい

く。その後,教師の説明を聞くことで更により深くその学習が習得され,コミュニケーション活動

と英文法学習とが一体化される。高島は,「定型表現を指導し使わせることによって,コミュニケー

ション活動をさらに意味のあるものに出来る。つまり,“Learn now, speak later.”から“Speak now,

learn later.”」だと主張しており,新出事項の指導に関して,コミュニケーション活動を導入時に

取り入れ,生徒体験型の言語習得活動,すなわち『インプットアクティビティ』を行うことが学習

習得に効果的に作用するものだと期待される。

3 協同学習とインプットアクティビティの活用について

(1) 協同学習とは

D.W.ジョンソン(2010)は,学習形態を「競争」,「個

別」,「協同」の3つの事態に分類し(図3),その中でも「『協

同』とは共有された目標を達成するために一緒に取り組むこ

とである。『協同学習』とは生徒達がともに課題に取り組むこ

とによって,自分の学びとお互いの学びを最大限に高めよう

とする,小グループを活用した指導法である。」としている。

これまでの,教師が教え生徒が学ぶという概念を覆し,生徒

同士が学び合い,教え合うという考えが協同学習である。

さらに,「協同学習の究極の目的は,メンバー一人一人を自

立した強い個人として育て,彼らが成長することにある。」と

述べ,個人ではなくペアやグループなどの協同的な学習活動で,生徒間での足りない部分は補い合

い,知り得る知識は分け与え合うことができるとしている。それらの相互作用によって,ペア同士

のインプット,アウトプットが同時に行われ,より効果的に内在化されるコミュニケーション活動

となり言語習得が深まることが予測される。

(2) 協同学習とインプットアクティビティの授業への活用

協同学習グループを効果的にする基本要素(表2)

を土台とし,文法事項の導入時にペアやグループワ

ークで言語習得を目的としたインプットアクティビ

ティを行い,新しい文法事項に触れ,同時にアウト

プットも行い,より学習を深める。授業では,競う

ことなく協力し,課題を解決していく過程において,

協同学習で重要な,互いに助け合う①「肯定的相互

依存関係」が築ける環境を作り,次にそれぞれに異なる情報,インフォメーションギャップを与え

る事で②「個人の役割責任」を自覚させる。さらに,生徒らの興味関心に応じた身近な話題を取り

上げ,全員がクリア可能なレベルの課題を与えることで③「促進的な相互作用」を促すことができ

る。また,主体的なインプットで学習習得した後,教師から細かな説明を聞き,学習内容の総括と

して,英文法に関するワークシートに協同で取り組み,互いに意見を交換し,加えて新出事項の文

法を使用して自分自身に関連する英文を作成するという自己表現を通して④「社会的スキル」を養

い,互いに学習内容を振り返りながら⑤「グループによる改善手続き」をすることで次の学習へと

つながり,授業への効果的な作用が期待できる。本研究では,単元内で新しく学習する3つの文法

事項,「I don’t think that ~」「最上級」「関係代名詞」に関した4つのインプットアクティビテ

ィを行う(表3)。

①肯定的相互依存関係(互恵的な協力関係)

②個人の役割責任

③促進的な相互作用(活発な相互交流)

④社会的スキル(社会的な技能の訓練)

⑤グループによる改善手続き

表2 協同学習グループを効果的にする基本要素

図3 3つの学習事態

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表3 授業で行うペアワークでのインプットアクティビティ

文法項目 インプット

アクティビティ

活 動 内 容

Teacher’s Students’

最上級

インタビュー

ゲーム

・例題でゲームの内容,質問方法の

説明 読み練習

・教師側でペア指定

・使用可能な英単語を黒板に表示

・数名のエピソードを選択し,生徒

が発表

・「今まで一番~だったこと」というお題で,「the

most」の最上級を使用してペアで互いにインタビ

ューし合い,発表し合う。発表内容を用紙に記入

する。

・記入した中から数名が発表し,そのエピソードは

誰のものかを全員で当てる。

関係代名詞

フルーツ

バスケット

・簡単な導入で,関係代名詞 thatの

使い方,語順を学習

・ゲームの説明,読み練習

・教師側でペア指定

・ゲームで使用する関係代名詞 thatを使った文を

グループで作成する。

・作成した文はゲーム内でペアが使用する

・イスで円を作り,それぞれ作成した文を読み通常

のフルーツバスケットを行う。

Find the

Criminal

・例題を用いてルール説明

・生徒A,Bそれぞれに犯人に関す

る異なるヒントを配布

・「ウォーリーを探せ」の絵を配布

・互いに情報を共有しながら協力して犯人を捜す。

※ヒントを互いに見せてはならない。

I don’t

think that

ダウトを

探せ!

・ペアを指定し,ルール説明

・用紙を配布 読み練習

・ペアで「I don’t think that」のフレーズ交互

に使用しながら,正答を削除していき,最後に一

つある間違いを探し当てる。

Ⅲ 指導の実際 1 単元名:Lesson2 Riding Boards Lesson3 How to Cure a Cold Lesson4 A Student from Korea

2 事前準備:アンケート調査,演習ワークシート,豆テスト

3 評価資料:演習ワークシート,豆テスト,振り返りシート

4 単元の評価規準

学習事項 a.関心・意欲・態度 b.表現の能力 c.理解の能力 d.知識・理解

関係代名詞 ペアで協力し,問題を解

決しようと努め,活動に

積極的に参加している。

ペアや相手に伝えようと

表現し,コミュニケーシ

ョンを図ることが出来る

英文を読み,またペアの

英文を聞き,内容を理解

することが出来る。

新出事項の内容や,意

味を理解することが出

来る。

最上級

I don’t

think that

5 指導計画と評価計画(50分×6時間)

時間

学習目標 学習内容 授業形態

評価の観点と

評価資料

a b c d

1

・ペアで協力し合い,新出

定型表現を使用し,間違

いを探すことが出来る。

I don’t think that ~

「ダウトを探せ」

アクティビティ,PPでの説明

ペア学習,演習問題

・「ダウトを探せ」で,ペアと協力

し仲間はずれを当てる。説明後,

演習問題を解く。

○ ○

ワークシート

振り返りシート

2

・最上級を使用し,インタ

ビューを行うことが出来

る。

最上級①

「インタビューゲーム」

豆テスト,アクティビティ

・ペアへのインタビューを発表し,

誰のエピソードかを当てる。

○ ○

ワークシート

3

・文法事項に関する説明を

聞き,ペアで問題を解く

ことが出来る。

最上級②

PPを使っての説明,最終豆テスト

ペア学習,演習問題

・最上級に関する説明を PP を使用

して行い,ペアで互いに協力し,

演習問題を解く。

ワークシート

振り返りシート

4

・新出文法で,皆とゲーム

を行うことが出来る。

関係代名詞① Stand Up!ゲーム

「フルーツバスケット」

豆テスト,アクティビティ

・関係代名詞を用いた文を作成し,

「フルーツバスケット」を行う。

○ ○

ワークシート

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5

・ペアで協力し,互いに異

なるヒントを共有し,犯

人を捜し当てることが出

来る。

関係代名詞②

「Find the Criminal」

アクティビティ

PPを使っての説明 ペア学習

・「Find the Criminal」英文で書

かれたヒントを頼りに,ペアで

犯人を捜し当てる。

○ ○

ワークシート

振り返りシート

6

・文法事項に関する説明を

聞き,ペアと協同で問題

を解くことが出来る。

関係代名詞③

演習問題,最終豆テスト

アンケート

・関係代名詞に関する説明を PPを

使用して行い,ペアで互いに協力

し,演習問題を解く。

ワークシート

アンケート

6 本時の指導(5/6時間)

(1) 本時の単元名 Lesson2 “ Riding Boards ”Lingua-Land English Course Ⅱ(教育出版)

(2) 本時の目標

① 関係代名詞“ that ”の使用法と意味を理解できる。

② 関係代名詞“ that ”の英文を理解し,ペアに伝えることが出来る。

③ ペアの英文を聞き取り、意味を理解し,課題に取り組むことができる。

(3) 授業の仮説

Lesson2の文法事項学習の際,インプットアクティビティを行い,協同学習を用いたペアワーク

でコミュニケーションを図ることによって,協同的かつ主体的に学習する態度が養われ,コミュニ

ケーション力が高まり,文法力も向上するであろう。

(4) 本時の評価規準

学習活動 具体的な評価規準

(評価の観点)

具体の評価規準 評価資料

A B C

Lesson2

インプット

アクティビ

ティ

まとめ問題

関係代名詞

“ that ”の英文

を正しく理解し,

うまくペアに伝

え,課題を解決す

ることが出来る。

関係代名詞

“ that ”文を正

しく理解し、ペア

に伝えることが

出来る。積極的に

課題に取り組ん

でいる。

関係代名詞

“ that ”文

をどうにかペ

アに伝えるこ

とが出来る。

課題に取り組

んでいる。

関係代名詞

“ that ”の英

文をペアに伝え

ることが出来

ず,意欲的に課

題に取り組もう

としない。

態度・意欲

ワークシート

振り返り

シート

(5) 本時の展開

配 分 学 習 活 動 指導上の留意点 評価資料

1.導入

① あいさつ

出席確認

② 復習 (2分)

③ 今回の目標

評価 (2分)

“Good afternoon, class.”

“Let me call the role.”

・PPにて前回の復習

“Let’s check today’s goal.”

・PPにて今日の学習内容の確認

・明るく挨拶し,出席を確認する。

・前回の内容を復習し,今回の目標,

評価規準を確認させる。

態度

2.インプット

アクティビティ

① ペア・活動内容

確認 (5分)

② 活動実施

(10分)

③ 答え合わせ

(5分)

「Find the Criminal」

“Please look at the screen.”

・用紙配布前に,PPにて活動内

容を確認,指示。ペアを確認。

“Now, let’s play the game.”

・机を向かい合わせ,用紙を配布。

活動開始。

“Where is the criminal?”

・PPにて生徒の意見を聞きなが

ら,答え合わせをする。

・生徒の頑張りを褒め活動終了

・ペアを確認し机を向かい合わせ,活

動内容をしっかり把握させ,説明後

に用紙を配布する。

・ペアと協力しながらしっかりと活動

に取り組めるよう声かけをしながら

机間指導を行い,質問に答え,読み

の間違いがあれば訂正する。

・生徒の発言を促すよう,解答の際ス

クリーン上の工夫を施す。

・生徒の頑張りをきちんと褒める。

・クラスルームイングリッシュは生徒

がきちんと聞き取れるよう適度な

速さ,ボリュームで2度繰り返す。

態度

発表

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3.ワークシート

① 文法説明

② ワークシート

“Please look at the screen and

we learn the new grammar.”

・PPで関係代名詞についての文

法説明を行う。

・ペアと協力し演習ワークシート

を解く

・生徒の身近な人物を例文で取り上げ

る等,興味関心をひくよう工夫を凝

らし,また理解しやすいようなアニ

メーション等を使用する。

・説明後,演習ワークシートを配布し,

文法に関する問題をペアと質問し合

いながら解く。

態度

演習

ワーク

シート

4.まとめ

① 振り返り

シート

② 次回の予告

③ あいさつ

・振り返りシート記入,自己評価

し,回収する。

・次回の授業の予告をする。

“We will check the answers

together in the next class.”

・終わりのあいさつ

“Thank you for your hard work.

See you tomorrow.”

・自己評価,ペア評価にて今回の授業

を振り返り,学習内容を復習させ

る。

・次回の学習内容を伝える。

・生徒の頑張りを褒め,きちんとあい

さつし,授業を終える。

振り返

りシート

7 仮説の検証

研究仮説に基づく授業実践を通して,インプットアクティビティと協同学習を活用したペアワーク

を組み入れることで,協同的,主体的に学習する態度が養われ,コミュニケーション能力が高まり,

文法力が向上することが出来たか,授業の実際や行動の観察(ビデオ撮影),ワークシート,毎時間後

の振り返りシート,豆テスト,検証の事前,事後のアンケート結果等から検証する。

(1) インプットアクティビティを取り入れた授業の検証

① インプットアクティビティの実際

本研究では,新出事項である“I don’t

think that”,関係代名詞“that”,そして最

上級の3つの文法に関するインプットアクテ

ィビティ「ダウトを探せ」「Find the Criminal」

「インタビューゲーム」「フルーツバスケッ

ト」を 10分程度で全員がクリア出来るよう作

成し,右図(表4)のような流れに沿って,

ペアでのコミュニケーション活動を授業の始

めに導入した。

ア 「ダウトを探せ」

“I don’t think that~”の構文を学習するこの活

動は,ペアで「ダウトを探せ」の用紙(図4)を使っ

て,仲間はずれを探し出すアクティビティであるが,

今回のワークシートでは 13の身近な言葉の中から“I

don’t think that~”の英文を使い,元々日本語では

なかったと思われる外来語を徐々に省いていき,日本

人が作った一単語を残し当てていく(写真1)。タイマ

ーでの時間表示とともに,制限時間を設けることで,

さらにゲームを盛り上げ,時間内にクリアしようとい

導入 あいさつ,出席,今回の目標提示

展開

①インプットアクティビティ

②PPにて新出事項の文法説明

③ペアで演習ワークシートを解く

④解答(時間不足の際は次回)

まとめ 本時のまとめ,振り返りシート記入

次回の予告

表4 授業の流れ

図4 「ダウトを探せ」ワークシート

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う生徒らの集中力を高めることが出来た。他にも美女

の中から,一人の男性を探すなど,生徒らが楽しんで

行え,また興味関心を得られる内容の課題にしたこと

で,共に相談しあいながら答えを導き出したいと意欲

が高まった様子が窺え,ペア同士の活発な活動が見ら

れた。その後答え合わせの際には教師,生徒間の言語

活動が図れるよう,スクリーンを活用し,豆知識等を

交えながら解答を行った。「ダウトを探せ」は,誰でも

簡単に行うことが出来,10分程度で実施することが出

来るので,他にも作成し文法学習時以外の時間でもウ

ォーミングアップとして取り入れていきたい。

イ 「フルーツバスケット」

関係代名詞“that”を使用したアクティビティ「フ

ルーツバスケット」はまず活動前に,簡単なウォーミ

ングアップ“Stand Upゲーム”にて,読み上げる英文

に該当する生徒に立ってもらい,“the boys”“the

17-year-old boys”“the boys that live in Gushikawa”

と段階的に修飾方法を変え,“that”が“the boys”を

修飾しているという概念を与える。その例題を参考に,

ペアで協力し“that”を使った3つの英文を書き上げ,

ペアとその用紙を交代し,その英文を使って通常のフ

ルーツバスケットを行う(写真2)。制限時間を設け,

最後に残った生徒には芸等を披露してもらい,和やか

なムードで終了することが出来,また,体を使った男

女隔たり無くクラスメイトと触れ合える活動となり,

授業終了後「皆で出来て一番楽しかった」等の意見も

聞かれた。間違ったままの文を用いて発表するペアも

見られたが(図5),生徒自らが見つけたその疑問をそ

の後,教師からの詳しい説明へとつなぐことが出来,

より意義あるインプットを行う事が出来たと考える。

ウ 「Find the Criminal」

「フルーツバスケット」で関係代名詞“that”を一

通り学習した後に,次の前置詞を伴う“ that ”の学習へとつなげていくこの活動は,“that”

の使用法を復習すると同時に,新しい語順に慣れ親しむことも目的としており,主に生徒間で

のスピーキングとリスニングで行われる。その内容は,ペアに配布したA・Bそれぞれ異なる

関係代名詞が使われた英文のヒント(図6)を頼りに,お互いに見せ合うことなく伝え合い,

協力して制限時間内に一人の犯人を絵の中から探し当てるというものである。生徒全員が課題

をクリア出来るような難易度を設定する事で,意欲的に活動でき,また英文をなかなか読めな

い2つのペアが協力するなど,アクティビティの中でも特に真剣で,かつ積極的な取組が図れ

(写真3),誇らしげに課題達成を報告しあう様子も見

られた。他の文法でも活用可能で,応用が利く活動と

なった。

検証授業初日,生徒らはこれまでの学習形態と異な

り,さらには指定されたペアで活動を行うとあって

尐々とまどいも見られ,時間もかかったが,活動終了

後には教室内が明るく,和やかな雰囲気に包まれ,ス

ムーズに文法説明に入ることが出来た。その日の振り

返りシートにも,ほぼ全員の生徒が「理解できた」「意

欲的に参加できた」等の感想と共に,自らの授業態度

に関してもAやBの高い評価を下している。また,イ図6 「Find the Criminal」ヒント

図5 生徒のワークシート

写真2 「フルーツバスケット」の様子

写真1 「ダウトを探せ」の様子

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ンプットアクティビティ中は,生徒の表情がとて

も生き生きと輝き,苦手な教科においても活動に

参加し,課題を解決出来たことで達成感を得るこ

とが出来,活動を通してペアに英語を使い,自ら

の考えや情報を伝えることで自信へとつながった

ようだ。

② インプットアクティビティの効果性

検証後のアンケート結果によると,第一に「モチ

ベーションが上がった」の意見があるように,授業

始めのインプットアクティビティで英語学習への興

味関心や意欲が高まったと9割の生徒が答えており

(図7),授業開始時に行う活動を通して,今回の学

習内容や目的,そして最終的な目標となる活用方法

が明らかとなり,ゴールがきちんと見えること,ま

たほぼ全員の生徒が課題をクリアできたことから得

られた達成感も加わり学習意欲の向上が図れた。次

に,「コツが分かれば,意外に簡単だった」等の感想

のように(表5),教師の説明主体で受け身的な授業

から,能動的,主体的な活動を通して学習すること

で,文法学習に対するこれまでの難しいイメージや,

苦手意識が減り,文法学習が分かりやすかったと約

9割の生徒が肯定的な意見を述べている(図8)。さ

らに,文法説明から始まる授業と比べ,インプット

アクティビティは,活動を授業始めに行うことで,

アクティビティの最中にいくつかの疑問が生じるこ

とでより効果的なインプットが可能となる。例えば

最上級を使った「インタビューゲーム」中に,なぜ

「est」ではなく「most」を使うのか等, 生徒自らが

見つけた疑問や質問に対し,その後,教師からの詳

しい説明を通して即座に納得,解決ができることで,

生徒がより深く理解し習得する手助けとなった。加

えて,インプットアクティビティ最大のメリットと

して授業始めに,クラス全体に「明るく楽しい雰囲

気が出来る」ことであり,学習に最適な環境のまま,

授業を続けることが可能となり「クラス全員が積極

的に活動に参加できた」と感想に書いた生徒もいた。

また実際に検証授業を通して,新たに発見した効果

性もあった。関係代名詞を使用する「フルーツバス

ケット」では,“that” を用いた英文を書き,それ

を利用してアクティビティをするのだが,ペアの作

成した英文を互いに読みあった後,ゲーム内で指示

として全員に読み上げ,他の生徒はそれを聞き行動

することで,このアクティビティを通して,言語活動「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能全

てを教師,生徒間ではなく,生徒同士で行うことが出来るのである。主体的に生徒が活動に参加

し,さらに楽しみながら課題を解いていく過程で,生徒同士で全ての言語活動を行う『体験・参

加型の主体的な授業』が可能となる。よって,インプットアクティビティを文法学習の導入時に

使用することは,生徒間での言語活動の場を増やし,楽しく明るい学習環境の中で主体的な学習

から文法事項への興味関心と学習へのモチベーションも高まり,文法事項に対する理解力,文法

力の向上に有効だったと考えることが出来る。

(2) 協同学習でのペアワークを取り入れた学習の検証

N=38

写真3 「Find the Criminal」の様子

・授業の最初に使い方とか理解してやっていく

のが良い。

・モチベーションが上がった。

・その文法に興味が湧いた。

・文法もコツをつかめば意外と簡単に使えた!

・授業始めに,楽しく明るい雰囲気が出来る。

・全員が参加して出来た。

表5 インプットアクティビティへの生徒の感想

図7 インプットアクティビティ文法学習での

興味・関心・意欲の高まり

N=38

図8 インプットアクティビティは文法学習に効果的

であったか

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本研究6時間の検証授業では,生徒の実態や短時

間の活動であること,また役割責任から逃れてしま

う生徒の回避を考慮し,ペアに限定した活動を行っ

た。また,インプットアクティビティと演習問題ワ

ークシートを解く時間共に,ペア同士互いに競うこ

となく協力して行うよう促した。検証授業前のアン

ケートでは,約半数の生徒がペアやグループワーク

が好きではない,苦手であると答えていたように,

男女のペアや普段あまり接触のない者同士のペアに

関しては,当初不安げな表情も見られた。しかし,

ペアワークに関する授業後の感想では,「ペアとコミ

ュニケーション出来て,尐し仲良くなれた」等の肯

定的な感想もあり(表6),「ペアワークを楽しめた

か」の問いに「楽しめた」「まあまあ楽しめた」と答

えた生徒が約8割にも増加した(図9)。また,クラ

スメイトとのコミュニケーションの場を設けること

で,クラス内に「いつでも相談できる雰囲気」が出

来,互いの協力がなければ取り組めない課題を与えることで,課題を解けずに1人で悶々と考え込

んだり,また学習意欲に乏しく,ボーッとする生徒が減った。さらには検証授業を重ねるにつれ,

異なるペア同士が教え合う場面なども見られるようになり,38名の生徒に対して1人しかいない教

師よりも,いつも隣に寄り添うペアになら「いつでも質問できる」という感想も見られた。ペアワ

ークを取り入れたことにより,学習指導要領外国語科の目標に大きく掲げられている「コミュニケ

ーション能力」を養う機会が増え,生徒一人一人が互いに助け合いながら豊かな人間関係を育ん

でいく能力を培うと同時に,生徒間の相互作用も図ることが出来,また協力的,かつ主体的に学

習しようという態度の育成に効果的だった。

しかし,短期間での検証であったこともあり,協同学習においては検証授業前に研究していた協

同学習グループを効果的にする基本要素(表2)の全てを,完全に上手く活用することは出来なか

った。ペア同士が相談し合い,助け合いながら共に学習することは出来たが,数学の公式同様,既

存の形にあてはめて活用するという今回の文法事項学習のような,特殊な場面での教科指導におい

ては,そこから新たな考えや意見で互いを高め合い,成長しあえる言語の深まりに関してはまだま

だ浅く,肯定的相互依存関係(互恵的な協力関係)を上手く作りだすことは困難であった。また,

社会的スキル(社会的な技能の訓練),グループによる改善手続きにおいては,インタビューゲーム

を通して,その文法を活用しての意見交換を試みたが,即座にうまく英文を作ることが困難で,簡

単な意見を述べたり,フレーズの言い合い止まりで,意見交換や高度な自己表現までには達するこ

とが出来なかった。またペア同士,互いの細かな間違いを訂正することが出来ず,そのままの英文

で発表するペアも見られ,机間指導をしていたにもかかわらず,きちんとしたサポートが行き届か

なかったことが悔やまれた。協同学習の活用は,単元における内容理解の場面やオーラルコミュニ

ケーション,異文化理解の授業等で有効的であろうと考え,今後の活用方法を検討したい。

(3) 検証授業前後の生徒の文法力と意識の変化

検証授業以前の生徒の実態として,6月のアンケ

ートを分析すると,「英語が話せるといいな」と思っ

てはいるものの,英語学習に対して好意的な生徒は

尐なく,さらに文法学習に関しては「好き」「まあま

あ好き」の意見を合わせてもほんの1割にも満たず,

多くの生徒が英語や文法学習を苦手としており,中

には「英語を勉強しても,今の生活や将来に役立た

ない」と考える生徒もいた。しかし,検証授業後の

アンケートでは,英語学習を「好き」「まあまあ好き」

とする生徒が半数を越え,文法学習においても同様

の答えが5割に増加した(図 10)。また,検証授業

・ペアとコミュニケーションが出来て,尐し仲

良くなれた。

・いつでも質問,相談しあえる。

・ペアとお互いに頑張れる。

・友だちと教えあえるから,頭に入りやすい。

表6 ペア学習への生徒の感想

図 10 文法学習は好きですか

N=38

図9 ペアワークを楽しめたか

N=38

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前後に行った豆テストの結果においても,最上級,関係代名詞共に平均点が上昇し(図 11),関係

代名詞に関しては 10点満点のテストにおいて約3点も増加している。アクティビティ中に,何度も

英文を口にし,またペアの話す英文を耳にすることで,語順等がより深く習得できたのか,特に並

べ替えの問題においては顕著な伸びが見られる等,ペアワークでのインプットアクティビティで生

徒の文法力が高まったと考えられる。しかし,インプットアクティビティを活用しての文法学習,

ペアワークに関して「苦手である,好きではない」と答える生徒もまだおり,「嫌いなものは嫌い」

「友だち同士でペアを組まないとムリ」等の意見もあり,さらには「おしゃべりが増えてざわざわ

した」や「楽しいことは授業の終わりにしたい」等,今後の課題として参考になる感想もあった(表

7)。6日間という短い検証期間ではあったが,授業初日には笑顔も見られず,眠そうにしていた男

生徒が,インプットアクティビティ中懸命に取り組み,「先生,出来たよ!」と誇らしげに声を張り

上げる姿に触れ,特に英語に対して苦手意識を持っている生徒らに対しては,尐しでも英語が身近

に感じられるような課題を与え,それをクリアすることで得られる達成感から,「英語もやれば出来

るのでは」という意欲,そして自信へと尐しでもつなげていく事こそが,彼らの苦手意識を克服す

る大きな一歩になるのではないかと考える。これらの貴重な体験を通して得られた,生徒の正直な

意見や反応,変化等もきちんと受け入れ,研究後も続けて授業改善ができるよう努めていきたい。

Ⅳ 成果と課題 本研究では,「英文法力を高めるコミュニケーション活動の工夫」をテーマとして,協同学習に取り入れ

たペアワークにてインプットアクティビティを実践し,研究を進めてきた。その成果と課題をまとめる。

1 成果

(1) 英語の授業において,インプットアクティビティを取り入れた英文法学習は,生徒の意欲関心を

高め,主体的に授業に参加し深い習得を得られることができ,英文法力向上に有効であった。

(2) 協同学習を活用したペアワークで,協力的に学習できる雰囲気が出来,生徒同士のコミュニケー

ション活動の場も増え, コミュニケーション能力の育成に役立った。

2 課題

(1) インプットアクティビティを全員がクリアできるよう更に工夫,改善することが必要であり,ま

た英作文作成の際に,全ての生徒に対して指導が行き届かない事もあり,より細やかな指導が要求

される。

(2) 協同学習の活用法の検討に加え,ペア作りにおいて,異性間等でのアクティビティには尐々抵抗

を示す生徒も見られたので,ペア作成の工夫やクラス内での仲間意識を高めるなど,グループワー

クへの移行も見据えた長期的な指導が必要である。

〈主な参考文献〉

D.W.ジョンソン 2010 『学習の輪―学び合いの協同教育入門―』 二瓶社

大下邦幸 1996 『コミュニケーション能力を高める英語授業』 東京書籍

高島英幸 1995 『コミュニケーションにつながる文法指導』 大修館

・文法を尐しは好きになれたし理解できるよう

になれた。

・プリントの問題,前より解けた。

・どれも印象深い授業だった。

・友達でペアを組みたい。

・楽しいことは授業の終わりが良い

・文法も分かれば,簡単だった。

表7 検証授業全体を通しての生徒の感想

図 11 実施前後の豆テスト平均点