特別支援教育支援員 - 茨城県教育委員会 · 2018. 11. 21. · 1...

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特別支援教育支援員 茨城県教育委員会 のための サポートマニュアル

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  • 特別支援教育支援員

    茨城県教育委員会

    のための

    サポートマニュアル

  • 目次 1 特別支援教育とは 1

    2 特別支援教育支援員の役割 2

    3 特別支援教育支援員の心構え 4

    4 主な障害の特性の理解と対応 5

    5 発達の段階を踏まえた配慮 10

    6 こんなとき,どうする?

    -さ らに児童生徒を伸ばすための支援 - 12

    7 校 内及び他の関係機関との連携 16

    ⑴校 内で の連 携

    ⑵特 別支 援学 校と の連 携

    ⑶関 係機 関と の連 携

    8 さらに詳しく知るために 19

  • 1

    特別支援教育とは

    特別⽀援教育は,障害のある幼児児童⽣徒の⾃⽴や社会参加に向け,⼀

    人一人の教育的ニーズを把握し,そのもてる⼒を⾼め,生活や学習上の困

    難を改善又は克服するため適切な指導及び必要な⽀援を⾏うものです。

    特別支援教育を推進するため平成 18 年6⽉に学校教育法等が改正され,

    平成 19 年4⽉から施⾏されています。

    この改正により,特別支援学校や小・中学校の特別支援学級だけでなく,

    通常の学級においても,発達障害を含め,特別な教育的支援を必要とする

    幼児児童⽣徒に対して適切な教育を⾏うことが明確に位置付けられました。

    このような状況を踏まえ,障害のある幼児児童生徒に対し,食事,排泄,

    教室の移動補助等学校における⽇常⽣活動作の介助を⾏ったり,発達障害

    の幼児児童⽣徒に対し学習活動上のサポートを⾏ったりする特別⽀援教育

    支援員※の役割が一層重要となっています。

    ※ 特別支援教育支援員は,市町村によって名称が異なります。

  • 2

    特別支援教育支援員の役割

    特別支援教育支援員は,小・中学校 (幼稚園も含む )において校⻑(園⻑),

    副校⻑(副園⻑)・教頭,特別支援教育コーディネーター,学級担任,教

    科担任等 (以下「担任等」という。) と連携しながら教育現場の様々な場面

    において⼀⼈⼀⼈の教育的ニーズに応じた適切な⽀援が求められていま

    す。特に,担任等の目や手が届きにくい部分を支援しながら,児童生徒 (幼

    児も含む )への支援を充実させていくという役割を担うものです。特別支援

    教育支援員は,次のような役割が期待されます。

    本的⽣活習慣確⽴のための⽇常⽣活上の介助

    ・自分で食べることが難しい児童生徒の食事の介助をする。また,必要に応じて身

    支度の手伝い,食べこぼしの始末をする。

    ・衣服の着脱の介助を行う。一人でできる部分は見守り,できないところも一部の

    介助でできるだけ自分の力で行えるよう励ます。

    ・授業場所を離れられない担任等の代わりに排泄の介助を行う。排泄を失敗した場

    合,児童生徒の気持ちを考慮しながら後始末をする。

    達障害の児童生徒に対する学習支援

    ・教室を飛び出す児童生徒に対し,安全確保や居場所の確認を行う。

    ・読むことに困難を示す児童生徒に対して,教科書や課題文,板書等の読み上げを

    行う。

    ・書くことに困難を示す児童生徒に対して,テストの代筆等を行う。

    ・聞くことに困難を示す児童生徒に対して,担任等の指示や話を個別に繰り返して

    聞かせる。

    ・学用品など自分の持ち物の把握が困難な児童生徒に対して,整理場所を教える等

    の介助を行う。

    習活動,教室移動等における介助

    ・車いすの児童生徒が,学習の場所を移動する際に,必要に応じて介助をする。

    ・特別教室,体育館,校庭等への移動が難しい場合には,対象児童生徒の様子を把

    握し適切な支援を行う。

    ・担任等の指導補助として,制作,調理,自由遊びなどの補助を行う。

  • 3

    童生徒の健康・安全確保

    ・体育の授業や理科,図工,家庭科など実技を伴う授業場面(カッターナイフや包

    丁,火などを扱う場面)で介助に入り,安全面の確保を行う。

    ・学習活動や休み時間等において,発作等がある児童生徒を担当,養護教諭等と見

    守り把握する。

    ・他者への攻撃や自傷等の危険な行動を防止し,児童生徒の安全に配慮する。

    動会,学習発表会,修学旅⾏等の学校⾏事における介助

    ・不安感が強く参加が難しい児童生徒が,集団から距離を取って参加したり,一部

    の活動に参加したりする際に付き添う。

    ・活動の見通しをもたせるための説明を丁寧に行う。

    ・修学旅行や宿泊学習,遠足や校外学習等の慣れていない場所での移動や乗り物へ

    の乗降を介助する。

    ※学校行事における支援員の参加については,校長及び市町村教育委員会の判断に

    よる。

    囲の児童⽣徒への障害の理解促進

    ・支援を必要とする児童生徒に対する,友達としてできる支援や適切な接し方を,

    担任と協力しながら周囲の児童生徒に伝える。

    ・支援を必要とする児童生徒の得意なことや苦手なこと,理解しにくい行動をとっ

    てしまう理由等を,周囲の児童生徒が理解しやすいように伝える。

    特別支援教育支援員が配置される場合は,特定の児童生徒の支援を目的

    とすることが多いようですが,障害の状態が多様化している場合や人数が

    多い場合に,複数の児童生徒への支援にあたることもあります。(各自治

    体によって配置先や業務内容は異なります。)

    特別支援教育支援員は「教員」としてではなく,担任等の指導の補助を

    することが基本的な役割になります。学級や学校の教育方針を担う一人と

    して,担任等と連携をしながら,児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じ

    た適切な⽀援を⾏うことが⼤切です。

  • 4

    特別支援教育支援員の心構え

    支援員として⼤切にしてほしいことは,「どのようなサポートをすれば

    児童⽣徒が⾃らの⼒で成⻑していけるようになるか」を常に考えながら関

    わる姿勢です。「何でも不⾃由なくやってあげる」のではありません。児

    童⽣徒の様⼦を⾒守る中で「ここはサポートが必要」と⾒取ったとき,さ

    りげなく⼿を差しのべられるような対応が⼤切です。また,教育現場に勤

    務するということでは「教員」と同様の責任もあります。

    童生徒に寄り添うための心構え

    ・「~できるようにしなければ」という強い責任感から,指示や注意が多くなるこ

    とがあります。児童生徒自身が自ら学ぼうとする環境を整えることが大切です。

    ・児童生徒の不適応な行動の背景には,「そうする理由があるのでは?」と探るこ

    とが児童生徒の理解へつながります。

    ・できないことの辛さを共感し,本人の努力を認め励ますことで,信頼関係を築く

    ことができます。

    ・支援が必要な児童生徒は,失敗体験や叱られる場面が積み重さなることで,自己

    肯定感が低下している場合が多いものです。ちょっとした努力やよい行動を認め

    励ますことを意識的に行うことが,自己肯定感を高めることになります。

    ・周囲に迷惑をかけたり,わがままを通そうとしたりする場合があります。そのよ

    うな時は叱るのではなく,「ダメなことはダメ!」と譲らない姿勢を通すことも

    大切です。

    校職員の一員としての心構え

    ・職場の人間関係は非常に大切です。特に,学級担任やサポートチームの職員とは,

    何でも話し合える関係を築きたいものです。

    ・担当の児童生徒への対応で,うまくいかない場面も出てきます。一人で解決しよ

    うと悩んだり,頑張りすぎたりせずに担任等に相談することが大切です。

    ・学校では,児童生徒に関すること,家庭環境など多くの個人情報があります。守

    秘義務に努めてください。

    ・すべての児童生徒にとって支援員は「大人のモデルの一人」になります。そのこ

    とを常に意識してください。

    ・保護者との信頼関係を築くことは大切です。ただ,注意することとして,保護者

    との直接的な約束などは避け,必ず担任を通した連携を心がけてください。

  • 5

    主な障害の特性の理解と対応

    ここでは,主な障害の特性等について説明します。

    まず始めに発達障害について説明します。発達障害は,学習障害( LD),

    注意欠陥多動性障害(ADHD),広汎性発達障害(高機能自閉症やアスペル

    ガー症候群を含む)をいい,脳の中枢神経系に何らかの要因による機能不

    全があると推定されています。

    習障害(LD)

    LDとは,「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推測する」のうち,

    1領域以上に困難を示す状態です。脳の中枢神経系に何らかの要因による機能不全

    があると推定されていますが,視覚障害・聴覚障害・知的障害・情緒障害などの障

    害や環境的な要因が直接の原因となるものではないと言われています。

    意欠陥多動性障害(ADHD)

    ADHDとは,年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力(不注意)・衝動性・多動

    性を特徴とする行動の障害で,社会的な活動や学校生活を営む中で,著しい困難を

    示す状態が見られます。通常7歳以前に現れ,その状態が継続するものであると推

    定されています。

    :気が散りやすく,注意を集中させ続けることが困難で

    あったり,必要な事項を忘れやすかったりする。

    :話を最後まで聞いて答えることや順番を守ることが困難

    であったり,他⼈の⾏動をさえぎったりしてしまう。

    :じっとしていることができず,落ち着いて活動や課題に

    取り組むことが困難であることから,過度に⼿を動かし

    たり,話したりする。

    衝動性

    多動性

    不注意

  • 6

    汎性発達障害(高機能自閉症やアスペルガー症候群を含む)

    広汎性発達障害とは,自閉症スペクトラムとも言われ,3つの特徴があると言わ

    れています。

    他人との社会的関係の形成の困難さ(対人関係の困難さ)

    ⾔葉の発達の遅れ(⾔葉やコミュニケーションの困難さ)

    興味や関心が狭く特定のものへのこだわり(特徴的なこだわり)

    その他にも,常識的な判断が難しいことや感覚の異常・鈍感さ等が見られ,全身

    運動(走る・投げる・跳ぶ)がぎこちなかったり,手先が同年齢の児童生徒に比べ

    て非常に不器用な面が見られたりします。

    ・できたことをほめる。できないことを叱らない。

    ・視覚的な情報を提示して説明する。

    ・説明や指⽰は短い⽂で順を追って,具体的に⾏う。

    ・安心できる環境を整える。

    ・善悪やルールをはっきりと教える。

    ・温かく⾒守る。

    ※その他,具体的な対応については,P12「こんなとき,どうする?-さらに児童生徒

    を伸ばすための支援-(Q&A)」を参照してください。

    ※自閉症とは,3歳くらいまでに現れ,①他者との社会的関係の困難さ,②言葉の発

    達の遅れ,③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特長とする行動の障害

    であり,中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定されるものです。

    ※高機能自閉症とは,3歳くらいまでに現れ,①他者との社会的関係の困難さ,②言

    葉の発達の遅れ,③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特長とする行動

    の障害である自閉症のうち,知的発達の遅れを伴わないものをいいます。

    ※アスペルガー症候群とは,知的発達の遅れを伴わず,かつ自閉症の特長のうち言葉

    の発達の遅れを伴わないものをいいます。

    支援のポイント

  • 7

    的障害

    知的障害とは,発達期(18 歳くらいまで)に起こり,知的機能の発達に明らかな遅

    れがあり,適応行動の困難性を伴う状態を言います。

    また,次のような特徴があると言えます。

    ⾔葉を覚えることが難しい。

    分かりやすい⾔葉で話しかけて,いろいろな経験ができる

    ように工夫する。

    物事を記憶しておくことが苦手である。

    一つずつ,具体的に分かりやすく伝える。

    一つのことを繰り返し教える。

    ⼀度にたくさんのことを教えない。

    動きがぎこちなく,細かい作業が苦手である。

    児童生徒の興味に働きかけて,自然に体を動かすようにし

    たり,障害を補うような⽤具を利⽤したりする。

    覚障害

    視覚障害とは,視力や視野などの視機能が十分でないために,全く見えなかった

    り,見えにくかったりする状態を言います。弱視の児童生徒は,視力が弱いだけで

    なく,全体的な視機能に障害がある場合があり,物と物との関係や比較を視覚的に

    確認することが難しいので,物を認識する力が身に付きにくい傾向があります。

    また,見ることに大きなエネルギーを使うため,疲れやすい傾向があります。話

    す時には,「あれ」「そこ」などの指示代名詞は避け,「右前」などと具体的に話

    すことが大切です。

  • 8

    覚障害

    聴覚障害とは,聴力が低下し,音や声が聞こえなかったり,聞こえにくかったり

    する状態を言います。聴覚障害のある児童生徒は,言葉を聞き取ったり,伝えたり

    することが難しいため,学習場面や友だちとのコミュニケーション場面においてつ

    まずいてしまうことがあります。話し手の口元を見て,話していることを理解する

    ので,特に口元がはっきり見えるようにします。補聴器で聞き取りやすいように,

    適切な声の大きさで話すようにします。また,目で見て分かるように,視覚的な手

    がかりを示すことも効果的です。

    体不⾃由

    肢体不自由とは,手足または身体に運動機能障害のある状態を言います。日常の

    生活動作等に制約があるため,発達に必要な経験に偏りがあり,経験量も少ないこ

    とがあります。体を十分に動かす機会が少なく,限られた体の使い方をしているこ

    とから疲れやすいこともあります。経験不足を補うために体験的な活動を設定し,

    「楽しかった」「またやりたい」という気持ちを引き出します。

    また,一人でできることを増やし,自信をもつことができるように補助具や教材

    等を工夫する必要があります。

    弱虚弱

    病弱虚弱とは,病弱や身体虚弱により継続して医師からの治療を受ける必要があ

    り,安全及び生活面への配慮の程度が高く,日常生活に著しい制限を受ける状態を

    言います。病気の特性や治療に伴い,心身の発達や身体の状況に大きな影響を受け

    ていることもあります。

    また,活動に制限がある場合は,様々な経験が不足していることから,芸術鑑賞

    や創作活動に参加したり,趣味や特技を生かしたりして,生きがいや楽しさを一緒

    に味わうことも大切です。

  • 9

    緒障害

    情緒障害とは,情緒の現れ方が偏っていたり,その現れ方が激しかったりする状

    態を自分の意志ではコントロールできないことが継続し,そのため,学校生活や社

    会生活において学びにくさや生活のしにくさが生じる状態を言います。心理的な要

    因による情緒障害には,選択性かん黙(場面かん黙),不登校があります。

    選択性かん黙(場面かん黙)は,特定の社会状況(学校など)で話すことができず,学

    校生活や学習等に支障がある状態を言います。話さないからと責めたり,話すこと

    を強制したりすることはよくありません。不安を減らし,リラックスできる環境を

    作るとともに,できることをほめて自信を育てるようにします。

    不登校の要因は様々ですが,心理的・情緒的理由により,登校できず家に閉じこ

    もっていたり,家を出ても登校できなかったりすることがあります。まずは,生活

    リズムの安定を図り,自ら取り組めることを見つけることなどの支援が必要です。

    語障害

    言語障害とは,言葉を話す・言葉を聴いて理解することに困難さがある状態を言

    います。

    話し言葉において,「さかな」を「たかな」,「たいこ」を「たいと」などのよ

    うに,一定の音をほぼ習慣的に誤って発音します。周りの大人は,児童生徒の話を

    最後まで聞き,児童生徒が伝えたいと思っている内容を汲み取ることが大切です。

    発音の誤りについては誤りを指摘したり,言い直しを強要したりするのではなく,

    大人がその言葉を正しい発音で聞かせることが言葉の改善につながっていきます。

    話し言葉の流ちょう性にかかわる障害の一つに,吃音(きつおん)があります。吃

    音とは,自分で話したい内容は明確であるにもかかわらず,話そうとするときに,

    同じ音の繰り返しや引き伸ばし,声が出ないなどの話し方をする状態を言います。

    まずは,児童生徒の話し方に注目するのではなく,話す内容に耳を傾けてあげるこ

    とが必要です。また,児童生徒が吃音のあることに悩んでいたり,困っていたりす

    るときには,児童生徒とゆっくりと時間をかけて話合い,気持ちを理解することが

    大切です。

    それぞれの障害は,決して区分しきれるものではありません。障害が

    重複することもあります。

    また,たとえ同じ障害名であっても児童生徒一人一人への関わり方は

    違います。あくまでも児童生徒をよりよく理解し,適切な⽀援に結び付

    けるための⼿がかりとして役⽴ててください。

  • 10

    発達の段階を踏まえた配慮

    適切な指導及び必要な⽀援を⾏うためには,児童⽣徒の発達段階を踏

    まえて指導する必要があります。

    小学校 学年(1 年⽣・2年⽣)

    小学生として集団のルールを学ぶ時期です。

    小学校は,幼稚園や保育所とは環境が大きく異なるため,1年生の間は「小1プ

    ロブレム」という様々な問題(落ち着きのなさや登校しぶり)に対する配慮も必要

    です。

    2年生になると,少しずつ落ち着いてきますが,発達障害のある児童は,周りの

    児童の落ち着きに比べて,不適切な状態が目立ってきます。

    そこで,担任と連携し,実態に応じた具体的な支援方法を確認するとともに,保

    護者とも連携して,学校と家庭との共通理解のもとに支援することが大切です。

    小学校 学年(3年⽣・4年⽣)

    いわゆる「ギャングエイジ」と呼ばれる時期です。

    仲間同士の結束を大切にしながら,対人関係を学びはじめます。抽象的な思考が

    可能になる一方,教科学習の内容も難しくなり「9歳の壁」と言われるハードルを

    乗り越えなければならなくなります。

    この時期には,いじめがあった場合,その内容が担任や保護者から見えにくくな

    ることもあります。発達障害の児童は,からかいなど,いじめの対象になりやすい

    ので,注意が必要です。

    もし,いじめがあった場合は担任や保護者との共通理解のもと,他の児童との関

    係等に留意し,集団の中でどのような配慮をするのか具体的に想定して支援するこ

    とが大切です。いじめが疑われる場合や見つけた場合は,すぐに担任等に知らせて

    ください。

    小学校 学年(5・6年⽣)

    思春期に入る時期です。

    自我に目覚め,様々な不安や葛藤も生じます。孤立への不安が強く,友達への同

    調傾向が強まります。よい面も悪い面も友達の影響を強く受ける時期です。

  • 11

    また,発達障害がある場合は,そのことに起因する多動性や衝動性は少しずつ落

    ち着いてきますが,学校生活全般や友人関係への適応に悩み,不登校等を含む二次

    的な障害が見られるようになる時期でもあります。自分自身の存在価値への疑問も

    生じてくることがあるので,自信をもたせ,自己肯定感を高めることが必要です。

    そのためには,保護者との良好な関係を維持するとともに,中学校へ的確かつ具

    体的な引継ぎができるように,担任と連携を深めることも大切です。

    学校

    1年ごとに環境や立場が大きく変わる時期です。

    この時期は,心身が大きく成長するだけでなく,学年ごとに学校生活が変化し,

    短い時間の中で義務教育終了後の進路についても考えなければなりません。

    また,教科担任制になるなど,教育環境も大きく変わり,担任等との連携に難し

    さが生じることがあります。成長に伴う,人間関係の難しさから生徒との距離の置

    き方も難しくなる傾向があります。

    さらに,授業やテストなどが高度で抽象的になり生徒の悩みが増すことも考えら

    れます。

    この時期には,他の生徒との関係づくりへの支援や不登校や非行のきっかけとな

    る些細な変化,いじめなどにも配慮するとともに,卒業後の進路について,担任や

    保護者と共通理解を図り,本人の不安を解消するような関わりを心がけることが大

    切です。

  • 12

    こんなとき,どうする?

    -さらに児童生徒を伸ばすための支援-

    支援員としていろいろと勉強し,「一人一人の児童生徒に応じた支援を…」

    と思っていても,なかなか思うようにはいかないことがあります。具体的

    な場⾯を想定し,対応を考えておくことが⼤切です。ここでは,「学習や⽣

    活の場面での具体的な支援」「学習や生活の場面で,さらに児童生徒を伸ば

    すための支援」という,2つのステップで,Q(こんなとき),A(どうす

    る)について考えていきます。

    「学習や生活の場面での具体的な支援」

    Q1 子どもが教室を飛び出した!

    A1まず,安全確保と危険回避を考えましょう。

    ・危険性を感じたときは大きな声で他の先生を呼びましょう。

    ・事前に対応の仕⽅を確認しておくことも⼤切です。

    次に,飛び出しの意味を探りましょう。

    ・いつ?どこで?誰といるときかな?何をしているときかな?

    その⾏動の背景を考えることで,次の⽀援につながります。

    Q2 子どもが席につかない!

    A2無理に「席に着かせよう」としないことが⼤切です。

    ・席に着いているのはどんな時か。どのように支援すると「席に着くの

    か」を考えることが有効です。

    ・担任,⼦ども,⽀援員等で,離席するときの約束(例えば,問題を5

    問解いたら合図をするなど)を決め,子どもに約束事項を確認するこ

    とで,⾃分勝⼿な離席を減らすようにすることも⼤切です。

    ・着席できる時間を少しずつ延ばすことで,離席を減らすようにします。

  • 13

    Q3 子どもがよくしゃべる!

    A3話す時の約束や合図をあらかじめ決めておくことが有効です。

    ・話し始める前に,話してもよい場所や時間,内容を伝えておきましょ

    う。

    ・話がしたくなった時には,約束を確認できるようなカードやサイン等

    を示してあげましょう。

    ・話がそれたり止まらなくなったりしたときは,肩や机を軽く触れるな

    どの合図を⼦どもと決めておき,話が⻑くなっていることに気付かせ

    てあげましょう。

    ・話の約束や合図が守れたときは,認めてあげましょう。

    Q4 子どもが興奮しやすい!

    A4まず,落ち着かせることが⼤切です。

    ・落ち着くまで寄り添い待ちましょう。具体的には,⼦どもが落ち着け

    る場所まで付き添い,⾒守るようにしましょう。

    ・落ち着いたら,⼦どもの話を⼗分に聞きましょう。その上で,どうす

    ればよかったのか⼀緒に考え,⾃分をコントロールする⼒を⾼めるこ

    とが⼤切です。

    ・困ったら,周りに助けを求めてもよいことを伝えましょう。そのため

    に,自分の感情の変化に気付いたり,自分から合図を求めたりするな

    どの適切な⾏動を⾝に付けたりすることが⼤切です。

    ・どのように対処すればよいのかを,実際に練習することも必要です。

    そして,望ましい⾏動が取れたときは,その⾏動を具体的に認めまし

    ょう!

    ※人前での特別扱いを嫌う子どももいるので,信頼関係を築いた上で,

    より効果的な称賛をするように心がけましょう。

  • 14

    Q5 ものごとをすぐに忘れてしまう,忘れ物が多い!

    A5なぜ忘れ物をしたのかを問うのではなく,忘れ物をしないための

    方法 (⼿⽴て )を考えることが⼤切です。

    ・メモを取らせたりチェックリストを用意したりしましょう。

    ・視覚に残るもので確認する習慣を付けることも⼤切です。

    ・メモやチェックリストなどは目に触れるところに配置することが有効

    です。

    「学習や生活の場面で,さらに児童生徒を伸ばすための支援」

    Q6 話すことが苦手な子には?

    A6要因としては,聞き取りが苦手な場合や語彙が少なかったり,文

    で話すことが苦手だったりする場合が考えられます。

    ・まず,間違いを指摘せずに自由に話せる雰囲気をつくりましょう。

    ・次に,⼦どもが話したい内容の話に⽀援員が⾔葉を付け加えることも

    ⼤切です。絵や具体物などを使って相⼿に伝えることも有効です。

    ・また,話す内容や順序をカードに書いて相手に示すことも考えられま

    す。

    Q7 指示や話を注意して聞くことが苦手な子には?

    A7周囲のいろいろな物や⾳に反応したり,⾃分への指⽰という認識

    が弱かったり,何を話されているか⾔葉の意味が分からない ・・・

    等の理由が考えられます。

    ・まず,話し手に注目するような声をかけましょう。

    ・また,⼦どもの聞くことに対する意識を⾼めるために⾒る,聞く,触

    る等の理解しやすい⼿⽴てを利⽤することも有効です。

    ・さらに,指示は「短く」「シンプルに」出しましょう。

  • 15

    Q8 読み書きが苦手な子には?

    A8読むことが苦手な子には…

    ・⽂を短く切って⽰すことが⼤切です。

    ・読んでいる文字を指さししながら読むことも有効です。

    ・読むところだけが⾒えるようにするために,1⾏分の⽳の開いた紙を

    活用するのも効果的です。

    ・教材文を拡大したり,読みにくい漢字に読みがなを付けたりすること

    も有効です。

    書くことが苦手な子には…

    ・蛍光ペンで手本を書き,上からなぞらせましょう。

    ・⼿本を⿊板ではなく,⼿元に置くことも有効です。

    ・「書く文字」を声に出しながら書くことも効果的です。

    Q9 計算や文章問題が苦手な子には?

    A9計算が苦手な子には…

    ・マス目の入ったノートや問題数を少なくしたプリントを使うことも有

    効です。

    ・計算の仕⽅を⾔葉で確認しながら計算することも必要です。

    ・赤ペンなどを使って確認しながら計算することも有効です。

    文章問題が苦手な子には…

    ・問題を繰り返し読ませ,⼤切な⾔葉に線を引かせましょう。

    ・⽂章問題に沿って具体物を操作するように⾔葉をかけ,問題⽂の内容

    を確認しましょう。

    ・問題⽂を図や絵で表したり,⾃分の⾔葉で説明したりさせましょう。

    Q10 ⽀援をする上で,⼤切なことは?

    A10肯定的に関わることです。

    ・⼦どもの⽴場に沿って考え,どのようなことで本⼈が困っているかを

    理解し,褒め認めることです。⼦どもたちは,⼀番⾝近にいる⽀援員

    の方々を頼りにしています。

  • 16

    校内及び他の関係機関との連携

    児童生徒への効果的な支援をするためには,担任や保護者はもとより特

    別⽀援教育コーディネーター,管理職 (校⻑,副校⻑,教頭 )などを含めた

    校内の関係者と連携協⼒することが極めて重要です。また,特別⽀援学校

    や病院など関係機関から受ける助言や指導も有効です。

    ⑴校内での連携

    級担任との連携

    学級担任の学級経営の方針や特別な支援が必要な児童生徒の授業及び生活指導な

    どにおけるねらいを的確に理解し,対応に当たることが大切です。そのために,「個

    別の指導計画」などを見ながら,指導目標,指導内容,支援方法などについて,担

    任から説明を聞き,対応方法を決めておくことは重要です。

    また,支援には,児童生徒が一人でできる,学習に向かうための支援(直接的な

    支援)と,周りの児童生徒や担任などとの関係をつくる支援(間接的な支援)があ

    ります。児童生徒自身から周りに支援を求められるようになることで,将来的には

    直接的な支援が少なくなります。そのためにも,意図的に友だちや担任と「繋ぐ」

    機会をつくったり,日常生活の場面を利用したりして周りと関わっていく力を養っ

    ていくことが大切です。

    さらに,担任や支援員の接し方は,常に周りの児童生徒の見本となります。周り

    の児童生徒が見ていることを意識して,児童生徒の成長とともに自尊感情を傷付け

    ない対応をする必要があります。場合によっては周りの児童生徒の前で毅然とした

    態度で接することが必要な場面も考えられます。

  • 17

    別支援教育コーディネーターとの連携

    校内の関係者や関係機関との連絡・調整及び保護者に対する学校の窓口になるの

    が,特別支援教育コーディネーターです。保護者から相談を受けた時や,関係機関

    で受けている支援の方法を知りたい時などには,特別支援教育コーディネーターに

    相談するようにしましょう。

    また,特別支援教育コーディネーターが企画する校内支援委員会へ参加する機会

    を設定してもらうことも大切です。校内支援委員会では,児童生徒の現在の発達課

    題に応じた支援の在り方について,関係者が集まって相談をするため,有効な支援

    の手立てが明確になり,その後の実際の支援に大いに役立つことになります。

    理職との連携

    管理職は,特別な支援が必要な児童生徒への対応について,学校経営上の課題と

    して,随時,その状況を評価し改善することが求められています。そこで,機会を

    みて,支援対象の児童生徒の状況を管理職に話したり,説明したりすることは大切

    なことになります。

    また,担任の考えや思いについて分からない点などがある場合には,管理職に相

    談して,話し合う機会をつくってもらうことなども大切です。学校において支援員

    は少数であるため,心細い時や不安な時があるかもしれません。悩んだ時には,管

    理職に遠慮せずに相談するようにしましょう。研修会へ参加したい場合なども相談

    するとよいでしょう。

    護者との連携

    児童生徒及び保護者の教育的ニーズに応じた支援のためには,保護者と連携協力

    できる関係づくりは重要です。

    保護者の方と関わる機会が多い支援員は,児童生徒の学習や生活のことで相談を

    受ける機会も数多くあります。相談を受けた場合は自分だけの考えで対応するので

    はなく,必ず担任に相談してから対応するようにします。

    また,時折,担任や学校の支援体制などについて保護者から要望や意見を聞くこ

    とがあります。そうした場合も,自分だけでその要望や意見について対応するので

    はなく,特別支援教育コーディネーターや管理職へ伝え,早期に保護者と相談を進

    めてもらうことが重要になります。保護者と学校が共に,児童生徒のよりよい支援

    の在り方について考えられる関係づくりを担うことを心がけましょう。

  • 18

    ⑵ 特別支援学校との連携

    ンター的機能の活用

    特別支援学校では,地域の小・中学校を積極的に支援していくセンター的機能と

    して,特別支援教育に関する相談を受けたり,情報提供をしたりするとともに,小・

    中学校等の教員などに対する研修協力などを行うことができます。個々の児童生徒

    の指導に関する助言・相談ができることから,支援員の対応の在り方についても相

    談することができます。

    学校を通して,特別支援学校の特別支援教育コーディネーター等が巡回教育相談

    に来校する際に,相談の機会を設定してもらうようにすると良いでしょう。

    ⑶ 関係機関との連携

    校と関係機関との連携による支援の充実

    学校が特別支援教育の体制の整備や児童生徒に適切な指導及び 必要な支援を行

    うために,必要に応じて関係機関と連携することが大切になります。

    また,関係機関と連携することで,児童生徒の課題の本質が共通理解されること

    もあります。

    関係機関との連携で,共通理解を図った支援方法を担任から聞き,その後の支援

    に役立てることも有効です。

    小 ・ 中 学 校 等

    担任への支援

    保護者との相談

    関係機関との連携

    校内委員会

    共通理解,支援方法の検討

    「個別の教育支援計画」

    「個別の指導計画」の作成

    教員研修

    障害の理解

    適切な支援

    学年会など

    学級担任

    教科担任

    関 係 機 関

    特別支援学校

    県教育研修センター支

    助児童相談所

    地域の支援

    センター等

    病 院 等

    特別支援教育コーディネーター

    保護者の

    気付きや

    心配ごと

    学 級 担 任 の

    気付きや

    心配ごと

    校 内 の 支 援 体 制 と 関 係 機 関 と の 連 携

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    さらに詳しく知るために

    特別支援教育に関する情報については,Web や書籍,県発⾏の資料など

    で得ることができます。本サポートマニュアルを作成する上で参考にした

    Web や資料,書籍等をまとめました。

    特別支援教育に関する Web

    ○ 文 部 科 学 省

    h t t p : / / w w w. m e x t . g o . j p / a _ m e n u / 0 1 _ m . h tm

    ○ 茨 城 県 教 育 委 員 会

    h t t p : / / w w w. e d u . p r e f . i b a r a k i . j p / b o a r d / g a k ko u / i nd e x . h t m l# t o ku b e t s u s h i e n

    ○ 茨 城 県 教 育 研 修 セ ン タ ー

    h t t p : / / w w w. c e n t e r . i b k . e d . j p / c o n t e n t s / k e n s h uu s h i r y o u / t o k u b e t s u s h i e n / t o k u b e t s u s h i e n . h t m

    ○ 国 立 特 別 支 援 教 育 総 合 研 究 所

    h t t p : / / w w w. n i s e . g o . j p / c m s /

    ○ 秋 田 県 総 合 教 育 セ ン タ ー

    h t t p : / / w w w. a k i t a - c . e d . j p / ~ c t o k /

    ○ 政 府 広 報 オ ン ラ イ ン

    h t t p : / / w w w. g o v - o n l i n e . g o . j p / f e a t u r e d / 2 0 11 0 4 /

    特 別 支 援 教 育 に 関 す る 資 料 や 書 籍

    ○ 特 別 支 援 教 育 支 援 員 を 活 用 す る た め に

    ( 文 部 科 学 省 平 成 19 年 6 月 )

    ○ LD,ADHD,高 機 能 自 閉 症 等 の 児 童 生 徒 へ の 支 援 の 手 引 き 「 一 人 で 悩 ま な い で 」

    ( 茨 城 県 教 育 委 員 会 平 成 17 年 3 月 )

    ○ 【 改 訂 版 】 特 別 な 配 慮 を 要 す る 子 ど も の 理 解 と 対 応 Q & A

    ( 茨 城 県 教 育 研 修 セ ン タ ー 平 成 17 年 3 月 )

    ○ 学 級 担 任 と 特 別 支 援 教 育 支 援 員 の 応 援 サ ポ ー ト ブ ッ ク [ 改 訂 版 ]

    ( 秋 田 県 総 合 教 育 セ ン タ ー 平 成 23 年 3 月 )

    ○ 特 別 支 援 教 育 支 援 員 ハ ン ド ブ ッ ク

    ( 庭 野 賀 津 子 編 日 本 文 化 科 学 社 平 成 22 年 7 月 )

    ○ 平 成 22 年 度 就 学 指 導 の 手 引 き

    ( 茨 城 県 教 育 委 員 会 平 成 22 年 3 月 )

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    特別支援教育支援員のためのサポートマニュアル作成委員

    東海村教育委員会指導室指導主事 菊地 義光

    大子町教育委員会学校教育課指導主事 清水 洋太郎

    茨城県鹿行教育事務所学校教育課指導主事 大川 行彦

    茨城県教育研修センター特別支援教育課指導主事 藤森 幸子

    茨城県立伊奈特別支援学校教諭 細田 敦子

    特別支援教育支援員のためのサポートマニュアル作成事務局

    茨城県教育庁特別支援教育課長 石﨑 千惠子

    茨城県教育庁特別支援教育課課長補佐(総括) 鈴木 忠男

    茨城県教育庁特別支援教育課指導担当課長補佐 岡部 しのぶ

    茨城県教育庁特別支援教育課指導担当主任指導主事 宮山 敬子

    茨城県教育庁特別支援教育課指導担当指導主事 廣木 恒夫

    茨城県教育庁特別支援教育課指導担当指導主事 渡部 史惠

    同 鏑木 治

    同 友部 道夫

    同 森 正貴

    同 田辺 宏行

    特 別 支 援 教 育 支 援 員 の た め の

    サ ポ ー ト マ ニ ュ ア ル

    平成24年10月 初版発行

    平成26年12月 第2版発行

    発 行 者 茨 城 県 教 育 委 員 会

    住 所 〒 310-8588

    水 戸 市 笠 原 町 978 番 6

    電 話 029-301-5280

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