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【特集】 Kawasaki モーターサイクルの象徴であるライムグリーン。 登場から半世紀を経て今、ビジュアル・アイデンティティの世界統一を 推進することで新たなバイタリティを発揮しようとしている。 否、ライムグリーンは、新たな革新を私たちに促しているのだ。 Vitality of Lime Green ~世界に広がる走りの夢~ K a w a s a k i K a w a s a k i P T D U T A I N T I K A K a w a s a k i K a w a s a k i N i n j a 姿10 Special Feature 04 05 V I 50 N i n j a N i n j a K a w a s a k i K a w a s a k i K a w a s a k i Kawasaki News 187 Kawasaki News 187 ロンボク島のランドマークとして地元住民に 愛されているPT.DUTA INTIKAの店舗

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  • 【特集】

    Kawasakiモーターサイクルの象徴であるライムグリーン。登場から半世紀を経て今、ビジュアル・アイデンティティの世界統一を推進することで新たなバイタリティを発揮しようとしている。否、ライムグリーンは、新たな革新を私たちに促しているのだ。

    Vitality ofLime Green~世界に広がる走りの夢~

     

    インドネシア・バリ島に隣接するロ

    ンボク島。約300万人が暮らすが、

    「今、島で一番クールな建物」と評判なの

    が、州都マタラムにあるKawasaki

    のモーターサイクル専売店DUTA

    INTIKA社の店舗だ。

     

    建物正面の上半分は黒一色で、下側

    に3本のライムグリーンの線が走り、

    右上には白抜きで「Kawasaki」の

    ロゴ、そして左下には「PT・DUTA

    INTIKA」の社名が配されている。

    陽が落ち、辺りが薄暗くなると、線やロ

    ゴが浮かび上がり、正面入口からはぬ

    くもりのある照明が漏れてくる。

     

    この店舗も、Kawasakiモー

    ターサイクル事業が推進する世界統一

    のビジュアル・アイデンティティ(以

    下、VI)に基づいてつくられた。

     

    オーナーは、「デザインが評判で

    島の人たちがわざわざ見に来る。

    販売店でKawasakiブランドの

    Ninja250などに触れ、誰もが

    『こんなバイクに乗りたい』と思う。島

    民の所得はまだまだ少なく、ライムグ

    リーンのバイクにまたがる姿を夢見る

    だけかもしれないが、それが明日から

    のエネルギーにもなる」と語る。

     

    インドネシアでは過去10年で、1人

    当たり名目GDPが約3倍になっ

    た。しかし平均月給は日本円でまだ

    SpecialFeature

    0405

    世界統一のVI導入で

    ライムグリーンに新たな力を

    3万円程度。販売価格が約50万円の

    Ninja250は〝高嶺の花〞だ。それ

    でも年間3万台の販売実績があり、地

    元ではニュースにもなった。

     

    インドネシアで2010年から5

    年間、販売店支援やVI浸透を担っ

    てきたモーターサイクル&エンジン

    カンパニーの嶋田雄介主事は、「現地

    では若者向けのトレンディドラマの

    キーになっているのがNinja250

    で、流行に敏感なトレンドリーダー層

    の開拓に成功しています」と言う。

     

    インドネシアは、インド、中国に次ぐ

    〝モーターサイクル王国〞だが、価格

    が安い小型市場が中心のなかで、

    Kawasakiモーターサイクルは、

    市場シェアを伸ばすのではなく、他社

    とは違う独自の価値の提供を目指し

    ている。

     

    嶋田主事は「実際、『ライムグリーン

    のKawasaki』と言えば高品質・

    高性能のスポーツモデルであると認

    知され、資産としての満足度も高い。

    ライムグリーンに対する信頼が、新興

    国でも着実に醸成されてきているの

    を実感しています」とも語る。

     

    市場の成熟化やリーマンショック後

    の苦境を跳ね返し、モーターサイクル

    のKawasakiブランドへの信頼を

    さらに高めていくVIの世界統一への

    挑戦が進んでいる。ライムグリーンは

    今、新たなバイタリティを発揮しよう

    としているのである。

    Kawasaki News 187Kawasaki News 187

    ロンボク島のランドマークとして地元住民に愛されているPT.DUTA INTIKAの店舗

  •  

    ロンボク島から遠く離れた欧州では、

    一足早く世界統一のVI導入や新たな販

    売促進に向けた取り組みが始まってい

    た。ちなみに黒字に3本のライムグリー

    ンの線とKawasakiのロゴの組み合わ

    せは、Kawasakiファクトリーレーシ

    ングチームのグラフィックデザインを

    ベースに、欧州統合販社のマーケティング

    部門が考えたものだった。

    「日本メーカーのモーターサイクルのな

    かで、一番スポーティーで最も優れた性能

    なのはKawasakiだ」

    と評価する販売店は多い

    が、リーマンショックを

    乗り越えるには、新たな

    ライムグリーンの魅力を

    訴求する必要性が共有さ

    れていた。

     

    欧州の販売現地法人

    のフランス支店にいた

    後藤啓介課長は、「店内

    の展示法やカタログの

    刷新など、さまざまな

    テーマに取り組みまし

    たが、正直に言えばあま

    り苦労はありませんで

    した。なぜならVIのデ

    ザインが格好良く、かつ

    ライムグリーンへの圧

    倒的な信頼感があった

    からです」と語る。

     

    外装デザインや個別看

    板の差し替えには販売店に費用負担が生

    じる。しかし、どの販売店も改善に前のめ

    りだったという。結果的にフランス国内で

    は、2年間で180店の外装更新や看板の

    付け替えが完了した。

    1968年に初めてライムグリーンの色を採用したレース仕様の「A1R」(上)。以来、量販車でも採用されるようになった。左は、Ninjaシリーズの最高峰モデルである「Ninja H2R」。

    「究極の走り」を追究するレースから、明日の技術革新がもたらされる。 Kawasakiの公式ファンクラブ「KAZE」は活発な活動を続けている。 世界統一のVIでデザインされた販売店(タイ)。Kawasakiの専売店はトレンドリーダーとしての夢の発信地でもある。

    フランス・リール近郊にあるKawasakiの専売店。ここでも3本のライムグリーンが映える。 「とにかく楽しい」。ツーリングは人とモーターサイクルの共同劇場だ。

     

    後藤課長は、「一連の取り組みで感動

    したことがある」と打ち明ける。改装で

    お店の品質を上げようとすると、ハード

    面だけでなくソフト面でも課題が分

    かってきて、「それも変えよう」と、よい

    意味での欲が出てきたのだ。

    「私たちも、当初は改装を勧めるだけのア

    プローチだったのですが、マネジメント

    トレーニングやレイアウトコンサルティ

    ングなどにより、店舗経営や接客スキル

    の向上をサポートするようになりまし

    た。為替の動向などに負けずに売りたい、

    と人を動かす製品。それがライムグリー

    ンの絶対的な魅力なのだと改めて気づか

    されました」。

     

    世界統一のVI導入を推進する桐野

    英子マーケティング部副部長は、「私た

    ちは単に製品を売っているのではあり

    ません。優れた製品を楽しみ、そこで新

    たな人生の夢を描ける。先進国でも新興

    国でも、お届けしたいのは、Fun to

    Rideがもたらす幸福感そのもので

    あり、ライムグリーンを喜びの色と実感

    できる人を増やしたいのです」と語る。

     

    ライムグリーンの誕生は1968年に

    まで遡る。アメリカの販売現地法人が、製

    品の知名度を上げるために、契約してい

    たカラーリストにイメージカラーの提案

    を依頼した。

     

    同年、フロリダ州デイトナで開かれた

    レース。そこに現れた1台のモーターサ

    イクルにレース関係者や観衆は度肝を

    抜かれる。出場した「A1R」の車体色は

    ライムグリーンだったのだ。欧米ではラ

    イムグリーンは「気味の悪い不運な色」と

    言われ、迷信やジンクスを重んじるレー

    ス業界では決して使われることのない色

    だったのだ。だからこそチームはこの色

    に、「挑戦」の思いを重ねていた。

     

    その後、ライムグリーンのマシーンは、各

    地のレースで勝利を重ね、いつしか「グリー

    ンモンスター」と呼ばれるまでになる。

     

    ライムグリーンには、Kawasaki

    のものづくりへの挑戦心と厳格さが象徴

    されていた。Kawasakiモーターサ

    イクル事業では、総合重工メーカーとし

    ての総合力の投入を絶対的な命題とし

    てきた。それは、製品開発で「妥協」を排

    除する姿勢を育てることになった。

     

    例えばNinjaシリーズには、頂点

    に立つH2/H2RやZX

    10R/RR

    から末弟の300/250までファミ

    リーブランドとして15タイプあるが、タ

    イプを問わずまったく同じ試験を課して

    いる。モーターサイクルとして「強さと優

    しさ」はあるか、「操ることへの喜び」が

    0607

    絶対的な魅力がもたらす

    自己革新

    Kawasaki News 187Kawasaki News 187

    いっさいの妥協を排した

    開発姿勢がモンスターを生んだ

    モーターサイクル&エンジンカンパニー管理本部 営業統括室 第一営業部 営業一課 嶋田 雄介主事

    モーターサイクル&エンジンカンパニー管理本部 営業統括室 第一営業部 営業一課 後藤 啓介課長

  •  Kawasakiのモーターサイクル事業のミッションは、「Kawaskiのモーターサイクルで走るのが、なによりも楽しい」と実感していただくことです。 ハイパフォーマンスのモーターサイクルに特化し、独創的でユーザーを魅了してやまない、そして唯一無二的な存在として語り継がれるような商品を創造するのです。こうした開発思想を私たちは、「RIDEOLOGY(ライデオロジー)」という言葉に託しています。「走り=RIDE」への「こだわり=IDEOLOGY」を追究し続け、そのために川崎重工の総合力を惜しみなく投じています。半世紀以上も前から受け継がれる開発思想は、今なお新たな挑戦を生み出しています。 開発陣の情熱と造り込まれた技術、そしてRIDEOLOGYの思想を、言葉や形として世間に発信するのが私たちマーケティング担当者の任務です。モーターサイクル市場が成熟化してきた先進国においても、また富裕層が拡大している新興国においても、私たちがお届けしたいのはRIDEOLOGYが凝縮された製品がもたらす喜びです。乗ることの楽しさをまだ知らない人にさえ、「これは楽しいのではないか」と確信していただけるような喜びをお届けしたいと願っています。 現在取り組んでいるVIの世界統一推進は、店舗改革が中心ですが、そこにとどまらず世界の各エリアや国の事業に対応したライムグリーンのバイタリティの発揮の仕方を探る試みでもあります。また、ファミリーブランド戦略ではネーミングやイメージを統一することで一貫した価値をお届けしています。Ninja 250でモーターサイクルの楽しさを知った人が、ひとつ上のクラスにステップアップしたくなった時に、「400ccに乗りたい」ではなく、「Ninja 400に乗りたい」と思っていただきたいのです。 開発陣からお店のスタッフまで、Kawasakiのモーターサイクルに関わるすべての者が、RIDEOLOGYの探求者であり続けたいと決意しています。

    世界統一のVIで、RIDEOLOGYを世界の人々にお届けします

    桐野 英子

    川崎重工業株式会社モーターサイクル&エンジンカンパニー企画本部 事業企画統括室 マーケティング部副部長

    見出されるのか、そして川崎重工の航空

    機事業などの最先端技術が惜しげもな

    く投じられ、「可能性に挑戦するもの」に

    なっているか等々。同じ検証項目で同じ

    結果が出るまで徹底した改良が繰り返さ

    れている。

     

    つまり、「スペックは違うが、スピリット

    は同じ」。それがライムグリーンのものづ

    くりの思想だ。だからこそ上級者が普及型

    のNinja250に乗っても「楽しい。

    NinjaのFun to Rideがある」

    と言われ、「Kawasakiブランドは、お

    客さまの評価の高さはもちろんですが、販売

    店の評価の高さが他メーカーに比べて図抜

    けて高いことにも繋がっている」(後藤課長)。

     

    そして成熟市場となっている日本での

    挑戦も始まっている。2016年12月には、

    大阪市鶴見区にある直営の専売店「プラザ

    大阪」がリニューアルオープン。新店舗では、

    製品だけでなく高級感のある内装やアパレ

    ルなどライフスタイルの提案を軸にした展示

    がなされている。同時にKawasakiの専売

    店を現状の6店舗から120店舗程度にまで

    拡大をしていく予定だ。

     

    ライムグリーンが登場して半世紀。その

    挑戦のバイタリティは衰えず、ライダーに

    も開発者にも常に新たな気概を求め続け

    ている。

     モーターサイクルは、エリアや国によって楽しみ方が異なる。例えばアメリカでは砂漠や野山を駆け巡るオフロードライディングが盛んで、ワイルドな環境でマシンを操ることを楽しむ人が多い。一方、欧州では2人乗りで国境をまたぐようなロングツーリングも盛んなため、それだけパートナーの意見もモーターサイクル選びの重要な要素になる。ファッション性にこだわるのも欧州ならではの思想である。また、アジアの新興市場では富裕層の増加により大型車の人気が上昇しており、大型車を所有することは成功者の証ともなっている。 いずれにしても、共通するのはやはり「圧倒的な“Fun to Ride”を感じられる、究極のモーターサイクルに乗りたい」という願いである。Kawasakiが比類ないブランドと評価されるのは、その願いへの回答を一途に追究しているからに他ならない。 その自負と熱意を伝えるのが、「RIDEOLOGY」の思想とモーターサイクルの先頭部に配された「川(リバーマーク)」のエンブレムだ。川崎重工創立当時のロゴマークをフラッグシップモデル「Ninja H2/H2R」に冠することで、川崎重工の歴史と伝統、多様な事業から成り立つ総合技術力を表している。

    「至高への自負」を世界と未来へ繋ぐ

    Eiko Kirino

    Leader’sVoice

    「大きくなったら乗ってみたいね」。カワサキワールド(神戸市)でもモーターサイクルの人気は高い。

    その走りの思想を示す『RIDEOLOGY』のロゴと『リバーマーク』のエンブレム。

    時代を切り拓く

    EpochMaker

    プロの声を聞き、働く人にやさしい汎用エンジン

    農機具や芝刈機、携帯発電機などの主役である汎用エンジン。川崎重工は60年前の1957年に初号機を発売した。

    日本の農業機械化を背景に事業の基礎を固め、世界の芝刈機市場ではプロユーザーからの絶対的な信頼を得るまでになっている。その秘密は、

    ユーザーの声に一心に学ぶ開発姿勢にある。

    08Kawasaki News 18709 Kawasaki News 187

    【vol.012】

    For theTomorrow

    手農機具メーカーからの協力申し出を受けて旧川崎航空機工業が小型の農機具用エンジンの製造と販売を始めた

    のは1957年、つまり60年前のことだった。わが国の農業に機械化の波が訪れ始めていたとはいえ、耕うん機などに搭載される汎用エンジンは、改良を重ねるにつれヒット商品を生み出すようになる。累計の生産台数は初号機発売から11年後の68年に100万台、76年には500万台、そして83年には1,000万台を突破した。 一方80年代になると、アメリカでは芝刈機用エンジンの需要が本格化。川崎重工は、89年にはアメリカ・ミズーリ州メアリービル市にKMM(Kawasaki Motors Manufacturing Corp.)の分工場としてメアリービル工場を建設し、汎用エンジンの生産拠点を構築した。アメリカでも汎用エンジン業界では初めてとなるOHV(オーバーヘッドバルブ)を採用した歩行型芝刈機用エンジン、また高級化の要請に応えた空冷縦軸型エンジン「Kawasaki V-Twin」などのヒット商品を送り出し、市場での地位を確立した。 国内外で数々のヒット商品を生み出した背景には、汎用エンジンを使う作業者の声に徹底的に耳を傾け、また使われ方を観察し続けてきた「ユーザー第一」の開発姿勢があった。例えば2ストロークエンジンにおいて刈払機用エンジンでは業界初のダイアフラム気化器を採用して作業姿勢に対する制約をなくしたり、動力散布機専用のエンジンを開発した。こうして高出力・低燃費・低騒音・低振動という「働く人にやさしい汎用エンジン」へと進化を続けてきた。

    旧川崎航空機工業が製造・販売を開始した汎用エンジンの初号機は、1957年2月に販売を開始した。航空機用の空冷エンジンをベースにした空冷4サイクルガソリンエンジンで、鋳鉄シリンダー、トンネルタイプのクランクケースの採用など、最先端の技術を盛り込んだ耐久性に優れたエンジンとして爆発的な人気を得る。

    KF4 (250cm3, 6馬力)

    「KP」は「川崎&ポルシェ」の略。当時の国内農機具市場はガソリンエンジンと水冷ディーゼルエンジンが主流だったが、欧州では空冷ディーゼルエンジンが主流だった。川崎重工は将来の海外販売を見越して西独ポルシェ社と技術援助契約を結び、共同開発したのがKP209をはじめとするKPシリーズだ。契約は86年まで続き、ディーゼルエンジン事業の発端となった。

    KP209 (1,750cm3, 30馬力)

    アメリカの農機具メーカーDeere & Company社の要請を受けて乗用の芝刈機用に開発されたのがFBエンジン。現在も、汎用エンジン事業の売上の大部分を占める北米の芝刈機関連事業に進出した記念すべき機種であり、その後のモデルチェンジ機種も大好評を博した。後の「Kawasaki V-Twin」の先駆けともなるモデルだった。

    FB460V(460cm3, 12.5馬力)

    1957

    1962

    1984

    2016

    FX850V-EFI(852cm3, 27馬力)アメリカの芝刈機市場を席巻した、コンパクトで低振動・低騒音の空冷縦軸「Kawasaki V-Twin」エンジンの最新モデル。新型の燃料噴射システムを搭載し、平地はもちろん斜面でも走行スピードと芝刈機への負荷を自動調整して生産性を高め、芝刈のプロユーザーたちから絶大な評価を得ている。

    汎用エンジンの詳しい情報は

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