子どもの発育と病気 - fc21 子どもの発育と病気 ~小児科医の立場から~...

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1 子どもの発育と病気 ~小児科医の立場から~ 大正大学名誉教授・小児科専門医 中村 発育とは 発育とは体が量的に大きくなる事(成長)で,発達と は機能面で進歩すること。成長と発達を総称して発育 ということもある。 https://coreconditioning.jimdo.com/

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子どもの発育と病気~小児科医の立場から~

大正大学名誉教授・小児科専門医

中村 敬

発育とは

発育とは体が量的に大きくなる事(成長)で,発達とは機能面で進歩すること。成長と発達を総称して発育ということもある。

https://coreconditioning.jimdo.com/

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発育の異常

1)体重の異常 小さすぎる(痩せすぎ) 大きすぎる(肥満)2)身長の異常 低すぎる(低身長) 高すぎる(高身長)3)頭囲の異常 小さすぎる(小頭) 大きすぎる(大頭)

身体発育値の標準は?ー>乳幼児身体発育曲線

体重・身長とも3パーセンタイル以下

97パーセンタイル以上の意味 異常を表すものではない!!

成長障害

ホルモンの異常成長ホルモン分泌不全性低身長症甲状腺ホルモンの不足など

小さく生まれたことが関係しているもの

SGA(small-for-gestational age)性低身長症など

染色体検査によって診断されるもの

ターナー症候群プラダー・ウィリー症候群など

https://ghw.pfizer.co.jp/comedical/cause/index.html?position=header

骨・軟骨の異常 軟骨無形成症など

身長の高すぎ成長ホルモンの過剰分泌染色体異常(クラインフェルター症候群)マルファン症候群

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特発性低身長特発性低身長は、原因が特定できないが、身長の伸びが発育曲線から下回ってしまう場合をいう。最も多く約8割を占める。

1)家族性低身長家族である両親または親のどちらかの身長が低いため、その遺伝的な要因によって身長が伸びないこと

2)体質性低身長両親の身長は平均以上なのに低身長の場合を体質性低身長と呼ぶ。原因として考えられるのは生活環境の中に、成長ホルモンを妨げる要因がある場合、食生活の偏り、睡眠不足、ストレスなど

3)内臓疾患:心臓・腎臓・肝臓・消化管・栄養状態

4)社会心理的要因:愛情遮断症候群 虐待

肥満1)⼦どもの肥満のほとんどは単純性肥満(原発性肥満)2)摂取エネルギーが消費エネルギーを上回っている3)⾷事・おやつ・ジュースなどの過剰摂取、⾷事内容の

バランスの悪さ、さらに運動不⾜などによって起こる4)⼦どもの1割りぐらいに⾒られる。

肥満度=(実測体重-標準体重) /標準体重×100 (%)幼児では肥満度15%以上は太りぎみ、20%以上はやや太りすぎ、30%以上は太りすぎとされ、学童では肥満度20%以上を軽度肥満、30%以上を中等度肥満、50%以上を高度肥満

小児内分泌学会ホームページから

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発達について子どもの発達(Child Development)とは、依存状態から自律性が増大する過程ととらえ、誕生から青年期の終わりまでの間に生じる、生物学的・心理学および情緒的変化である。

子どもの発達はそれぞれの子どもでユニークな経過をたどるにせよ予測できる連続的過程である。

子どもの発達は同じ割合で進むことはなく、それぞれの段階はそれに先立つ発達段階の影響を受ける。

これらの発達的変化は、遺伝要因や胎児期の出来事の強い影響を受けると考えられる。

関連する領域は、生涯にわたる発達を研究する発達心理学、子どもに関する医学の一分野である小児科学がある。発達的変化は、遺伝的に規定された過程の結果、あるいは、環境要因と学習の結果でもある。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から

子どもの年代に応じた発達 Ⅰ運動発達

首がしっかりすわる

3~5カ月

一人すわり6~8カ月

つかまって立つ

9~10カ月

はいはい

7~9カ月

個人差の大きいのが特徴

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手を出してものを掴む (5~6か月)おもちゃを持ちかえる (6~7か月)びんのふたをあけたり閉めたりする (9~10か月)なぐり書き (11~12か月)コップの中の小粒を取り出す (1歳~1歳2か月)積み木を二つ重ねる (1歳2か月~1歳4か月)コップからコップへ水をうつす (1歳4か月~1歳6か月)クレヨンでグルグル〇を描く (1歳6か月~1歳9か月)まねて○を書く (2歳6カ月~2歳9か月)はさみで切る (2歳9か月~3歳ぐらい)ボタンをはめる (3歳~3歳4か月)はずむボールを掴む (4歳~4歳4か月)

手の動きあくまで目安個人差が大

ことばの発達

ことばの理解おいで、ちょうだい、ねんねを理解 1歳0か月~1歳2か月目、耳、口、手、足などを指で指さす 1歳6か月~1歳9か月大きい、小さいの概念 2歳3か月~2歳6か月色の名前(4つくらい) 2歳9か月~3歳0か月数の概念(3まで) 3歳4か月~3歳8か月物の用途の理解 3歳8か月~4歳0か月左右の区別 4歳4か月~4歳8か月

発語単語1~2語 11か月~1歳二語文を話す 1歳9か月~2歳0か月同年の子どもとの会話 3歳前後

あくまで目安個人差が大

遅れという判断は慎重に

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対人関係

身振りをまねる 9か月~10か月人見知りをする 10か月~11か月後追い 11か月~1歳0か月ほめられると同じ動作をくりかえす 1歳0か月~1歳2か月簡単な手伝いをする 1歳2か月~1歳4か月友達と手をつなぐ 1歳6か月~1歳9か月電話ごっこをする 2歳0か月~2歳3か月ままごと遊びをする 2歳9か月~3歳0か月友達と順番にものをつかう 3歳4か月~3歳8か月じゃんけんで勝負を決める 4歳0か月~4歳4か月

ことばの発達-指さし

https://h-navi.jp/column/article/3502589

9~10ヶ月頃(三者関係を理

解)

10カ月前後の赤ちゃんは、自分のお気に入りや興味がある対象を指差しする(興味の指さし)

自分の要求を表すための指差し行動は、1歳前後の赤ちゃんに見られる行動(要求の指さし)

自分の興味があるものが目に入った時にそれを指差し、周囲にいる人の顔を見て、共感してくれることを求める(共感の指さし)

ママや周囲の人からの「どっちがいい?」「○○はどれ?」といった質問に対して、指差しで答える(応答の指さし)

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視線の共有共同注視ともいう

指差しとともに大切な認知機能の発達を表す

クレーン現象

クレーン現象とは、パパやママなど他人の手を使って自分がしたいことを代わりにしてもらおうとする行動のことを指す。人の手を引っ張って何かをさせようとする動きが、クレーン車でモノを運ぶ動きに似ているためこんな名前がつけられている。

自閉症児で起こりやすいが、健常児でもみられる。

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言語発達の評価

ことばの理解 ことばは理解の方が発達が早い自閉症や知的障害では理解の発達が遅れる

発語 ことばの理解はよいが、発語が遅いタイプ乳幼児期では、わかっているがしゃべらない子がよくみられる。

吃音 乳幼児ではよくある。就学期以降では治療必要

聴覚障害 新生児聴覚スクリーニング難聴 1000人中1人ぐらい

生活習慣

コップを持って飲む 10~11カ月

スプーンで食べようとする 1歳ぐらい

排便・排尿を予告 2歳ぐらい

信号を理解 4歳ぐらい

一人で着衣をする 4歳ぐらい

親のかかわりが影響する

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神経発達障害(症)

1)発達障害の罹病率知的発達障害1%、自閉症スペクトラム障害2%強、注意欠如多動性障害3~5%

学習障害5%、実際には重複があるが、単純に合計すると子どもの約10%を占める。文科省の全国学校調査によると通常クラスに在籍する子どものうち6.4%と報告。特別支援教育を受けている子どもは2.9%という。両者を合計すると約10%になる。

2)遺伝的な要因と環境要因の両者がかかわった多因子遺伝であり、遺伝以外の要因が大きく関与している。

3)ADHDが神経発達障害に加えられ、広汎性発達障害(PDD)という呼称が廃止され軽症のものから重症のものまでを自閉症スペクトラムとして統一された。

4)ADHDとASDの併存が認められた。

● 精神科疾患は症状と経過の記述により分類されているのが特徴で、他の医学領域の診断法とは異なる。

自閉症の三つ組み1)社会性(対人関係、人との相互交渉)の障害 ⇒ 対人、社会面で適切で相互的な関係をつくる

ことが困難・視線の合いにくさ、顔の表情・体の姿勢・ジェスチャーが不自然である・年齢相当の仲間関係ができない、友だち関係に興味を示さない・興味のある物を見せたり、持ってきたり、指し示すことをしない・一人遊びをする姿が頻繁に見られる、人を道具的に使う、自覚のない迷子になる。

2)コミュニケーションの障害 ⇒ 相手との相互的な意思疎通をはかることが困難・話し言葉の遅れや欠如、ジェスチャー、物まねによる代償がない・しゃべらない、逆に一方的にしゃべりまくる、話がとぶなど他人と会話を始めたり続けることの著明な障害・言語の常同的反復的使用、奇妙で風変わりな言語、単調、変な抑揚、年齢に応じた模倣またはごっこ遊びが出来

ない。

3)イマジネーション(想像力)の障害 ⇒ 思考や行動の柔軟性が未熟で、こだわりが強い・興味のパターンに没頭(カレンダー、時刻表、気象、野球の統計、俳優のアクション、ある一定の物、形、色

など物事の同一性に固執)・決まりきったやり方、融通の利かない執着(道順、手順)・奇妙な運動の癖(手、指を振る、くねらせるなど体全体の動き)・物の部分に持続的に執着(ボタン、体の一部、紐、ゴムバンド、ロゴ、マーク)

他に感覚の過敏あるいは鈍麻をともなう

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DSM5によるADHD(注意欠如・多動性障害)

不注意優勢型

●ケアレスミスが多い●いつも捜し物をして

いる●整理整頓が苦手●すぐに気が散る

多動・衝動性優勢型

●いつも落ち着きがない●順番が待てない●おしゃべり●席を立ってうろうろする●せっかち

3つの症状

●不注意(集中できない)●多動性(落ち着きがない)●衝動性(待てない、せっかち)

わかっているのにできない

行動修正にはABAが有効

先天代謝異常マススクリーニング新生児マススクリーニングの対象疾患は、大きく分けて内分泌疾患(ホルモンの異常)2疾患と、代謝異常症(栄養素の利用障害)の18疾患を主にしている。また、これらの疾患以外の疾患が見つかる場合もあり約26種類の疾患が対象となる。

新生児マススクリーニング(先天性代謝異常等検査)の実施主体は都道府県および政令指定都市で、公費負担で行われている。検査は、産科の医療機関で実施。

この検査によって精密検査が必要となった場合には、速やかに専門的な治療が受けられるように、検査結果とご住所(ご連絡先)を精密検査医療機関、コンサルタント医師、ならびに保健所へ通知する。保健所又は市町村の保健師が、精密検査の受診の確認や保健指導のために、保護者へ連絡を取ることがある。

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子どもの事故を防ごう

頭部外傷(頭を強く打った)

● 小児では頭蓋骨・頭蓋内病変を伴っていることがあり、受診を勧奨● 乳児では、外傷後普段と違って不機嫌が続く場合も受診勧奨

① 呼んでも起きない② 左右どちらかの手足が動かない③ けいれん④ 頭から血を流している

⑤ 吐き気やおう吐が続く⑥ 「たんこぶ」が大きい場合

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若木骨折

転倒や転落などのイベントの後、子どもから痛みの訴えがあったとき、「歩けるから大丈夫」、「関節が動くから骨折していない」などという自己判断はしてはいけない。

「触ると泣く」、「手を使わない」、「足に体重をかけられない」などの症状があれば、骨折を疑って整形外科を受診する必要がある。手首、上腕骨、鎖骨でよくみられる。

とくに乳幼児では、腫れが少なかったり、骨折していない部位の痛みを訴えたりすることもあり注意が必要です。

誤飲・誤嚥

先ず、小物を手の届くところに置かない。

基本直径3.9mm以下のものは喉につかえる可能性がある。トイレットペーパーの芯の穴を通る物は危険。誤嚥はピーナッツが最も多い。咳込む、ぜーぜー、食道異物は嗚咽や嘔気を訴えることが多い。

http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-kouhouka/kts/kts_09/kts01.htmlhttps://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/anzen/test/magnet_press.html

https://medical.jiji.com/topics/480

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薬品・化学溶媒の誤飲

• 煙草のように体に吸収される毒性のあるものは他にも薬品や洗剤があり、これらを誤飲したときは原則としては吐かせる。

• 強酸性、強アルカリ性洗剤、ガソリン、灯油などの場合は吐かせずにすぐに病院へ運ぶ。

• 体に吸収はされるが毒性のないものとしては、クレヨン、せっけん、鉛筆などがある。

SIDS(乳幼児突然死症候群)

これまで、健康状態には問題がなく、また既往歴にも問題がなかった子供が突然死亡し、死亡状況や解剖所見によって、その原因が特定されない状態。

主として睡眠中に発症し、日本での発症頻度はおおよそ出生6,00

0~7,000人に1人と推定され、生後2ヵ月から6ヵ月に多く、稀には1歳以上で発症することがある。

リスク要因は 1)喫煙暴露 2)非母乳育児 3)うつぶせ寝 4)早産・低出生体重児 5)寒い時期 6)男児 7)暖めすぎ 8)感染症

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感染症概要病 名 感染経路 概 要

突発性発疹症 経口感染生後半年~生後12ヶ月の期間、高熱の後に全身に発疹が出現。熱性けいれんの発症に結びつくことが多い。

水ぼうそう飛沫感染接触感染

躯幹、頭部の毛髪部、手足、顔面の小水疱、発熱は水疱と同時に出現し、水疱は膿疱に変わり、次第に痂皮化(かさぶた)して治癒します。

手足口病 飛沫感染春から夏にかけて多く、手のひらや足の裏に小さな硬い水疱、口の中やのどに痛みを伴う水疱ができ、痛みのために食事が困難になる。

伝染性紅斑 飛沫感染かぜ様症状を認めた後に頬部に少し盛り上がった紅斑(赤い大きな斑点)が出現する病気。その様相からりんご病と呼ばれている。

ヘルパンギーナ 飛沫感染主として咽頭(のど)の粘膜に水疱(水をもったぶつぶつ),潰瘍(ただれ)を生じる夏かぜの一種で、乳幼児に多い。

咽頭結膜熱(プール熱)

飛沫感染接触感染

発熱,結膜炎(目が充血して赤くなって痒い),咽頭炎(のどの炎症)を主症状とする疾患で、夏から初秋にかけて幼児から学童の間で流行する。プールを介して流行するためプール熱と呼ばれる。

おたふくかぜ 飛沫感染 耳下腺(耳介の下部にある唾液腺)の急激な腫脹を主症状とする病気。

百日咳 飛沫感染発病当時は通常のかぜと区別がつきにくく、次第に特有の発作性の咳になる。真っ赤な顔で激しく咳込み、“ヒュー“と息を吸い込むのが特徴。

破傷風 創傷土で汚れた傷口や古釘による刺し傷から感染。感染後光や音に対して過敏になり、産生する毒素により神経が冒されて筋肉の硬直が生じる。

インフルエンザ 飛沫感染悪寒とともに高熱を発し、頭痛,腰痛・関節痛,筋肉痛を伴う。唯一予防接種しか予防手段はない。小児ではインフルエンザ脳症が怖い。

ノロウイルス 経口感染特に冬季に流行。ノロウイルスは手指や食品などを介して、口から侵入し、ヒトの腸管で増殖し、嘔吐、下痢、腹痛などを起こす。

ロタウイルス 経口感染1月から4月にかけてはロタウイルスが主に流行。感染は生後6ヶ月から2歳の乳幼児に多く、米のとぎ汁のような白色の下痢便が特徴。

突発性発疹症

突発性発疹の症状は、何の前触れなく38度以上の高熱が出ることから始まる。

熱は高いけれども機嫌は良く、食欲が落ちることもない。また、咳や鼻水などの風邪症状がみられないことが多い。

3~4日程で熱がおさまってきた頃に、胸腹部を中心に赤く細かい発疹が現れる。おなかや背中を中心に大小不規則な赤い発疹が出て、半日くらいで身体中に広がり、顔にも発疹はできる。2~3日は発疹も目立つが、次第に薄くなり消える。

脳炎、肝炎、熱性けいれんなどの合併もある。

ヒトヘルペスウイルス6型、7型は感染力の弱いウイルスで、唾液から感染。

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水ぼうそう

かゆみが強い水疱[水ぶくれ]ができる。潜伏期間は平均14~16日。

1日くらいの微熱があった後、まず赤い小さな発疹から始まり、高い熱も2~5日間続く。

水痘・帯状疱疹ウイルスの感染による病気。

鼻や喉の分泌物や、水疱(すいほう)がつぶれて飛んだしぶきの中にいるウイルスを吸い込んだりして人にうつる。また、肌がふれあったり、直接手につくことでも感染が広がる。

定期予防接種に指定

手足口病口の中や手のひら、足

の裏にできる痛みを伴う小さな水ぶくれが特徴的。多くは熱も伴うが、通常2~3日で下がる。発疹も1週間程度で消える。

口の中にできた粘膜疹の痛みのために食欲が低下することがある。

まれに髄膜炎や脳炎、心筋炎を合併することがある。

コクサッキーウイルスやエンテロウイルスによる

潜伏期間は3~6日程度で、予防接種はない。

唾液や鼻水、便などを介して感染、日頃から石けんで手を洗い、また子供が手を触れるテーブルやおもちゃなどを清潔にしておく。

糞便から感染するので、おむつの扱いにも注意。

大人も感染することあり。

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伝染性紅斑パルポウィルスB19感染

伝染性紅班は、頬が赤くなり、りんご病とも言われているが、上肢に紅班が見られることがよくある。

レース状に紅班が広がって見え、伝染性紅班は、頬に紅班が見られることが多いが、下肢に発疹が見られることもよくある。

発疹が出現したときには、すでに治癒状態で感染もしない。

妊婦への感染は胎児死亡の原因になることがある。

ヘルプアンギーナコクサッキーウイルスA群や,エンテロウイ

ルスによって引き起こされる熱性疾患。感染により,口腔咽頭粘膜に水疱性および潰瘍性病変が生じる。

ヘルパンギーナは流行しやすく,乳児および小児で最もよくみられる。突然発症する発熱を特徴とし,咽頭痛,頭痛,食欲不振,および高頻度で頸部痛を伴う。発症後2日以内に,最大20個(平均4~5個)の直径1~2mmの灰色丘疹が発生し,紅暈を伴う小水疱となる。口蓋弓に最もよく発生するが,軟口蓋,扁桃,口蓋垂,または舌にも生じる。1~7日以内に治癒する。合併症はまれである。

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咽頭結膜熱

咽頭結膜熱(プール熱)は、「アデノウイルス」が原因で、プールの水を介してヒトからヒトへ流行が拡大する。年間を通して発生する、主に6月末頃から夏季にかけて流行。

潜伏期間は、2〜14日で、咽頭炎(のどの痛み)、結膜炎(目の充血)、39℃前後の発熱が数日から1週間続く症状から、「咽頭結膜熱」と呼ばれている。 頭痛をはじめ、食欲不振が3〜7日続くこともあり、眼の症状としては、目が充血し、涙が多くなり、まぶしがることがある。

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)耳の下の唾液腺の耳下腺が腫れて痛くなる病気。両側

の耳下腺がしっかり腫れると「おたふく」のお面のようになるので、おたふくかぜといわれる。顎の下の唾液腺の顎下腺も腫れることがある。両側が腫れることが多いが、片方だけの場合が25%くらいと言われている。

腫れは1週間から10日間ほど続く。熱は出ることが多いが、出ないこともあり、高熱の頻度は高くない。

潜伏期は15日~21日くらいと長く、かかっていない兄弟など、60%ほどの確率で感染する。

感染により感音性難聴や髄膜炎、精巣炎や卵巣炎を併発することがある。

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はしか(麻疹)麻しんは「はしか」とも呼ばれ、麻しんウ

イルスの感染によって起こる急性熱性発疹性の感染症。

麻しんウイルスは人のみに感染するウイルスであり、感染発症した人から人へと感染していく。感染力は極めて強く、麻しんに対して免疫がない人が麻しんウイルスに感染すると、90%以上が発病し、不顕性感染は殆どないことも特徴。

現在は予防接種で感染を予防できる。

江戸時代までの日本では麻しんは「命定め」の病として恐れられていた。

風疹風疹(rubella)は、発熱、発疹、リンパ

節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症である。症状は不顕性感染から、重篤な合併症併発まで幅広く、臨床症状のみで風疹と診断することは困難な疾患である。

風疹に感受性のある妊娠20週頃までの妊婦が風疹ウイルスに感染すると、出生児が先天性風疹症候群を発症する可能性がある。

男女ともがワクチンを受けて、まず風疹の流行を抑制し、女性は感染予防に必要な免疫を妊娠前に獲得しておくことが重要である。

予防接種で予防できる(MRワクチン)

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結核

1)日本は中蔓延国で決して少なくない

2)子どもは家族感染がほとんどで、感染者は少ない

3)乳幼児期は感染すると重症な結核になる(結核性髄膜炎、粟粒結核など)

これに関しては唯一BCGで予防できるBCGが定期予防接種に入っている理由

予防接種

日本小児科学会作成の予防接種接種スケジュール表がお勧め

VPDワクチン接種スケジュール表(右画像)

ワクチン接種種類が多いので、同時接種という方法がとられる。

定期予防接種と任意予防接種

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第二種学校感染症の出席停止期間

病名 出席停止期間の基準

インフルエンザ(学校)発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日を経過するまで

インフルエンザ(幼稚園)発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後三日を経過するまで

百日咳特有の咳が消失するまで、または五日間の適正な抗菌薬療法が終了するまで

麻疹 解熱した後三日を経過するまで

流行性耳下腺炎耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹が始まった後五日を経過し、かつ、全身状態が良好となるまで

風疹 発疹が消失するまで水痘 すべての発疹が痂皮化するまで咽頭結膜熱 主要症状が消退した後二日を経過するまで

結核病状により学校医等において感染のおそれがないと認めるまで

髄膜炎菌性髄膜炎病状により学校医等において感染のおそれがないと認めるまで

RSウイルス感染

RSウイルスの感染によって発症する呼吸器感染症

生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の児がRSウイルスの初感染を受ける

発熱、鼻汁などの上気道炎症状が数日間続いた後、20~30%の初感染児において下気道(気管支や細気管支、肺胞)に炎症が及ぶ ->細気管支炎という状態

妊娠35週以下の早産児で、9月~10月ごろのRSウイルスの流行開始時に、6カ月以下の乳児に該当する場合はシナジス投与が健康保険の適応になっている

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RSウイルス抗体投与

抗RSウイルスヒト化モノクロナール製剤(シナジス)

・心臓のお薬を飲んでいる児。体重増加やミルクの飲みが悪い児。多呼吸や、肝臓の腫れを認める児。

・肺高圧がある児。

・六ヶ月以内に外科治療や心臓カテーテル検査が予定されている児。

・生まれつきの呼吸器系の機能的、器質的異常を合併した児。

・染色体や遺伝子異常を合併している児。

妊娠35週以下の早産児で、RSウイルス流行開始時(9月~10月ごろ)に6カ月以下の乳児

1回投与約8万円最長6カ月間毎月投与。保険と○乳適応

インフルエンザ

インフルエンザはかぜの一つではなく、重症なウイルス感染症。インフルエンザは肺炎を起こしやすく、子どもでは脳症を引き起こす可能性がある。

毎年11月下旬から12月上旬頃に始まり、翌年の1~3月頃に患者数が増加し、4~5月にかけて減少。

インフルエンザウイルスは、毎年毎年、少しずつモデルチェンジするという厄介な特性を有している。

インフルエンザウイルスにはA,B,Cの3型があり、流行的な広がりを見せるのはA型とB型である。

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インフルエンザの治療は

製品名 投与方法 剤型

タミフル 経口 錠剤ドライシロップ

リレンザ 吸入 吸入

ラビアクタ 点滴静注 単回点滴静注

イナビル 吸入 吸入

ファビピラブル 経口

0歳~ 1歳未満:抗インフルエンザ薬は使用しない1歳~ 5歳未満:タミフルが第一選択5歳~10歳未満:吸入薬のリレンザを第一選択

10歳~20歳未満:リレンザの使用を考慮タミフルは原則として使用しない

予防するには

一般的な予防方法うがい

感染予防として必ずしも有効ではない。粘膜に着いたウイルスを洗い流せない。

マスクウイルスの進入を防げないが、混み合った中ではくしゃみや咳の飛沫の進入を妨げる効果はある。

手洗いウイルスは手指を通して進入する。予防法として最も期待できる。

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インフルエンザウイルスの変身

一昨年のウイルス 咋年のウイルス 今年のウイルス

来年は何に化けよう?

インフルエンザワクチン接種

(1)生後6カ月以上13歳未満・・・2回接種

(2)13歳以上・・・1回(または2回接種)

2~4週間あけて2回目を接種

毎年接種