放射性物質汚染対処特措法に基づく 廃棄物処理の経 …4444444444...

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農林金融2016・3 50 - 176 福島第一原発事故により大量の放射性物 質が一般環境中に放出された。ところが, 事故当時,わが国には原子力発電所から広 範囲に放出された放射性物質による環境汚 染への対処に関する法制度がなかった。わ が国の法制度上,放射性物質が原子力事業 者等の管理を離れて拡散することは想定さ れていなかったのである。 すなわち,従来の環境基本法をはじめと する環境法体系は,原子力施設からの意図 されざる放射性物質の放出・拡散は原子力 関係の諸法令によって厳重に抑制される仕 組みが確保されていることを前提に,放射 性物質等について環境法上の規制対象から 除外していた。一方,原子力法体系は事故 による放射性物質の外部放出は想定されな いという前提で制度設計されており,原子 炉等規制法には事故により放出される放射 性物質に関する規定がなく,また,原子力 災害発生時の放射性物質への対処を定める 原子力災害特別措置法においても放射性物 質の一般環境中への放出という事態に対処 するための規定が設けられていなかった。 まさに制度の欠落のなかで,原子力発電所 の爆発という過酷事故が起こったのである。 直ちに問題になったのが,放射性物質に 汚染されたとみられる廃棄物の処理である。 環境法体系の下にある廃棄物処理法では 「放射性物質及びこれによって汚染された 物」は同法が対象にする「廃棄物」の対象 外とされている。そして「放射性物質及び これによって汚染された物」に該当するか 否かは,クリアランス制度 (注1による基準(ク リアランスレベル)に基づき決定されるが, クリアランスレベルを算出するための線量 の目安値は10μSv/年(=0.01mSv/年)あり,33の核種のクリアランスレベルが省 令に規定されている。例えば,セシウム 134やセシウム137のクリアランスレベルは 0.1Bq/g(=100Bq/kg)である。 クリアランスレベル以下の物は廃棄物処 理法に基づいて廃棄物として処理できるが, それを上回り「放射性物質及びこれによっ て汚染された物」に該当する物は廃棄物と しての処理はできず,低レベル放射性廃棄 物処理施設で長期間保管しなければならな いなど厳格な管理が必要とされる。 原発事故により,このクリアランスレベ ルを上回って放射性物質に汚染された物が 大量に発生した。それを全て低レベル放射 性廃棄物処理施設に持ち込むことは不可能 常任顧問 岡山信夫 放射性物質汚染対処特措法に基づく 廃棄物処理の経過と課題 1 法制度の欠落 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/

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Page 1: 放射性物質汚染対処特措法に基づく 廃棄物処理の経 …4444444444 今回の災害廃棄物に当てはめることは適当 4444444444444444444 ではない 4444

農林金融2016・350 - 176

福島第一原発事故により大量の放射性物

質が一般環境中に放出された。ところが,

事故当時,わが国には原子力発電所から広

範囲に放出された放射性物質による環境汚

染への対処に関する法制度がなかった。わ

が国の法制度上,放射性物質が原子力事業

者等の管理を離れて拡散することは想定さ

れていなかったのである。

すなわち,従来の環境基本法をはじめと

する環境法体系は,原子力施設からの意図

されざる放射性物質の放出・拡散は原子力

関係の諸法令によって厳重に抑制される仕

組みが確保されていることを前提に,放射

性物質等について環境法上の規制対象から

除外していた。一方,原子力法体系は事故

による放射性物質の外部放出は想定されな

いという前提で制度設計されており,原子

炉等規制法には事故により放出される放射

性物質に関する規定がなく,また,原子力

災害発生時の放射性物質への対処を定める

原子力災害特別措置法においても放射性物

質の一般環境中への放出という事態に対処

するための規定が設けられていなかった。

まさに制度の欠落のなかで,原子力発電所

の爆発という過酷事故が起こったのである。

直ちに問題になったのが,放射性物質に

汚染されたとみられる廃棄物の処理である。

環境法体系の下にある廃棄物処理法では

「放射性物質及びこれによって汚染された

物」は同法が対象にする「廃棄物」の対象

外とされている。そして「放射性物質及び

これによって汚染された物」に該当するか

否かは,クリアランス制度(注1)による基準(ク

リアランスレベル)に基づき決定されるが,

クリアランスレベルを算出するための線量

の目安値は10μSv/年(=0.01mSv/年)で

あり,33の核種のクリアランスレベルが省

令に規定されている。例えば,セシウム

134やセシウム137のクリアランスレベルは

0.1Bq/g(=100Bq/kg)である。

クリアランスレベル以下の物は廃棄物処

理法に基づいて廃棄物として処理できるが,

それを上回り「放射性物質及びこれによっ

て汚染された物」に該当する物は廃棄物と

しての処理はできず,低レベル放射性廃棄

物処理施設で長期間保管しなければならな

いなど厳格な管理が必要とされる。

原発事故により,このクリアランスレベ

ルを上回って放射性物質に汚染された物が

大量に発生した。それを全て低レベル放射

性廃棄物処理施設に持ち込むことは不可能

常任顧問 岡山信夫

放射性物質汚染対処特措法に基づく廃棄物処理の経過と課題

1 法制度の欠落

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Page 2: 放射性物質汚染対処特措法に基づく 廃棄物処理の経 …4444444444 今回の災害廃棄物に当てはめることは適当 4444444444444444444 ではない 4444

農林金融2016・351 - 177

にある災害廃棄物については,当面の間,

仮置場に集積しておき,処分は行わない,

③その他の地域にある災害廃棄物について

は,従前通り計画的に処分を行う,とした。

また,放射性物質により汚染されたおそれ

のある災害廃棄物の基準や処理方法につい

て早急に検討を行う,としたが,併せて④

「原子炉等規制法のクリアランスレベルを4 4 4 4 4 4 4 4 4 4

今回の災害廃棄物に当てはめることは適当4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4

ではない4 4 4 4

」,との考え方を示した。④につ

いては,「大量の災害廃棄物を処理する必

要があったこと,原子炉等規制法に基づく

クリアランスレベルが通常生活において受

ける自然放射線量よりも低いレベルで設定

されていることからすれば,この対応は合

理性を欠くものとはいえない」(田中良弘

(2014)),との評価がある一方で,長年にわ

たり法規範として運用されてきているクリ

アランスレベルを確保すべきであるとの批

判(日本弁護士連合会(2011))がある。

次に,原子力安全委員会は同年6月3日

に「東京電力株式会社福島第一原子力発電

所事故の影響を受けた廃棄物の処理処分等

に関する安全確保の当面の考え方について」

により,廃棄物の処理・輸送・保管に伴い

周辺住民が受ける線量が1mSv/年を超え

ないようにし,作業者が受ける線量も可能

な限り1mSv/年を超えないことが望ましい,

との考えを示した。

さらに,原子力災害対策本部は「放射性

物質が検出された上下水処理等副次産物の

当面の取扱いに関する考え方」(11年6月16

日)をまとめ,放射性セシウム濃度が8,000

であり,処理のしようがないという状況が

起きてしまったのである。事故当時の法制

度では動きがとれない,なんとかしなけれ

ばならない,という状況のなかで議員立法

により制定されたのが,「平成二十三年三

月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震

に伴う原子力発電所の事故により放出され

た放射性物質による環境の汚染への対処に

関する特別措置法(平成23年8月30日法律

第110号)」(「放射性物質汚染対処特措法」)で

ある。(注 1) 原子力施設等の廃止措置や運転・保守に伴って発生する解体物等の中には,放射能濃度が極めて低く,人の健康への影響が無視でき,「放射性物質として扱う必要がない物」が含まれている。これらを測定・評価し,放射能濃度基準値以下であることを確認したものを一般資材として再利用,または処分することができる制度を「クリアランス制度」という。

放射性物質汚染対処特措法(以下「特措

法」という)が制定されるまで,「考え方」

や「方針」等が通知として示され,放射性

物質による環境汚染について一応の対処が

なされた。ただし,これらの対処は法的根

拠に基づかないものである。

まず,環境省は2011年5月2日に「福島

県内の災害廃棄物の当面の取扱い」を発出

し,①避難区域及び計画的避難区域につい

ては,当面,災害廃棄物の移動及び処分を

行わない,②避難区域及び計画的避難区域

以外の地域のうち,浜通り及び中通り地方

2 放射性物質汚染対処特措法  制定に至る過程     

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同法の目的は,福島第一原発事故に由来

する放射性物質による環境の汚染への対処

に関し,国,地方公共団体,原子力事業者

及び国民の責務とそれぞれが講ずべき措置

について定め,事故由来放射性物質による

環境汚染が人の健康又は生活環境に及ぼす

影響を速やかに低減すること(1条)であ

り,同法の中心となる規定は,事故由来放

射性物質により汚染された廃棄物の処理

(11条~24条),除染等の措置等(25条~42条),

費用(43条~45条)である。

事故由来放射性物質により汚染された廃

棄物の処理については,環境大臣が指定す

る地域内の廃棄物(対策地域内廃棄物)及

び環境大臣が特別な管理が必要な程度に事

故由来放射性物質により汚染されたと指定

した廃棄物(指定廃棄物)は,国が処分す

ることとされ(15条,19条),これら特定廃

棄物(対策地域内廃棄物または指定廃棄物)

以外の廃棄物は廃棄物処理法上の廃棄物と

して処理する(22条(注2))。

また,除染等の措置等については,環境

大臣が国が除染等を実施する必要があると

指定した地域(除染特別地域)については

国が(30条),環境大臣が汚染状態が一定

基準以上であると指定し,調査の結果,環

境省令で定める要件に適合しないとして都

道府県知事等が除染実施計画を定めた区域

(除染実施区域)については,当該除染実施

計画に定められた実施主体が(38条),それ

ぞれ除染等の措置を実施することとされた。

これらに要する費用は,国が財政上の措

置等を講じ(43条),最終的には,原子力損

Bq/kg以下のものについては,埋立作業者

が受ける線量が1mSv/年を超えないとの

試算が得られた,として土壌層の設置や防

水対策等の適切な対策を講じた埋立処分が

可能とした。ここで,8,000Bq/kg以下とい

う基準が1mSv/年未満という基準とリン

クされたのである。

次いで,環境省は「福島県内の災害廃棄

物の処理の方針」(11年6月23日)により,

放射性セシウム濃度が8,000Bq/kg以下の廃

棄物については一般廃棄物最終処理場(管

理型最終処分場)で埋立処理し,8,000Bq/

kgを超えるものについては一時保管すると

いう方針を示した。

その後,同省は「8,000Bq/kgを超え100,000

Bq/kg以下の焼却灰等の処分方法に関する

方針について」(11年8月31日)により,8,000

Bq/kgを超え100,000Bq/kg以下の焼却灰等

の処分について,一般廃棄物最終処分場

(管理型最終処分場)で埋立処分を行うに当

たっては,水との接触の防止又は低減化を

図りつつ,隔離層の設置による埋立て,長

期間の耐久性のある容器による埋立て,屋

根付き処分場での埋立て,のいずれかの方

法によって処分(それぞれ個別の対策を施す

ことが前提)するか,または,遮断型最終

処分場での埋立ての方法により処分する,

という考え方を示した。

特措法は,11年8月26日に成立し,同月

30日に公布された。

3 特措法の概要

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農林金融2016・353 - 179

な措置を講ずるとしている(53条)。

関連省令は,特定廃棄物・除去土壌の処

理の基準等および,汚染廃棄物対策地域等

の指定の要件等を定めるための省令として

11年12月に公布された。その概要は参考1

害賠償法の規定により東京電力が負担する

(44条)。

なお,特定廃棄物(対策地域内廃棄物また

は指定廃棄物)や除去土壌については,国

が汚染廃棄物等の処理施設の整備等の必要

〈参考1〉 「特定廃棄物・除去土壌の処理の基準等および,汚染廃棄物対策地域等の指定の要件等を定めるための省令」の概要

(1)放射性物質汚染対処特措法施行規則a 廃棄物関係・下水道,廃棄物処理施設等から生じた汚泥,焼却灰等の調査の方法の詳細,義務の対象とする施設を定める。・指定廃棄物の指定基準は,8,000Bq/kgとする。・特定廃棄物の処理基準として,以下のような事項を定める。

収集運搬基準:容器への収納,車両表面線量制限,書面の備え付け 等保管基準:遮水シートの設置,立入禁止区域の設定,保管場所の線量測定 等中間処理基準:バグフィルターの設置,排水・排ガスの濃度限度 等最終処分基準:セメント固型化・隔離層設置,周縁地下水測定,排水の濃度限度 等

b 除染関係・除染等の措置の基準として,以下のような事項を定める。

工作物及び道路:洗浄等土壌等:表土の削り取り,土壌により覆うこと 等草木:草刈り,下草,落葉又は落枝の除去 等

・除去土壌の処理基準として,以下のような事項を定める。収集運搬基準:容器への収納,車両表面線量制限,書面の備え付け 等保管基準:遮水シートの設置,立入禁止区域の設定,保管場所の線量測定 等

(2)汚染廃棄物対策地域の指定の要件等を定める省令a 汚染廃棄物対策地域及び除染特別地域の指定の要件 国がその地域内にある廃棄物の処理を実施する必要がある地域である汚染廃棄物対策地域の指定の要件及び国が土壌等の除染等の措置等を実施する必要がある地域である除染特別地域の指定の要件を, ・警戒区域設定指示若しくは計画的避難指示の対象区域であること,又はこれらの対象区域であったこと・ その区域の大部分が警戒区域設定指示若しくは計画的避難指示の対象区域である市町村又はこれらの対象区域であった市町村の区域であること等とする。b 汚染状況重点調査地域の指定の要件 その地域内の事故由来放射性物質による環境の汚染の状況について重点的に調査測定することが必要な地域である汚染状況重点調査地域の指定の要件を,1時間当たり0.23マイクロシーベルト以上(追加被ばく線量年間1mSvを,1時間あたりの放射線量に換算し,自然放射線量分を加えて算出されたもの)の放射線量とする。

(3)除染実施計画を定める区域の要件 汚染状況重点調査地域内の区域であって,除染等の措置等を総合的かつ計画的に講ずるため,当該区域に係る除染等の措置等の実施に関する計画を定める区域の要件を,1時間当たり0.23マイクロシーベルト以上の放射線量とする。

施行日  平成24年1月1日(特措法の完全施行の日)

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(1) 特定廃棄物

特定廃棄物とは対策地域内廃棄物と指定

廃棄物であり,前述のとおり廃棄物処理法

の対象外となる。

a 対策地域内廃棄物

汚染廃棄物対策地域については,「警戒

区域」または「計画的避難区域」の指定を

受けたことがある福島県内11市町村の地域

(楢葉町,富岡町,大熊町,双葉町,浪江町,

葛尾村および飯舘村の全域,ならびに田村市,

南相馬市,川俣町および川内村の一部地域)

が指定されており,同地域内の廃棄物が対

策地域内廃棄物である。同地域では,環境

大臣が対策地域内廃棄物処理計画を策定し,

国が処理を実施する。対策地域内廃棄物の

うち再生利用可能なもの(注3)以外は,以下のと

おり処理される。

再生利用不可物のうち可燃物(災害廃棄

のとおりであり,指定廃棄物の指定基準を

8,000Bq/kgとすることを規定するなど,既

に発出されていた「考え方」や「方針」な

どを取り込んだものになっている。(注 2) 22条は廃棄物処理法の放射性廃棄物除外規定について特定廃棄物以外の事故由来放射性物質によって汚染された物は除外の対象にしないと規定したもの,言い換えれば,事故由来のものについては特定廃棄物のみが廃棄物処理法の適用除外になると規定したものである。

福島県においては,特措法および省令に

基づき,第1図のとおり,事故由来放射性

物質により汚染された廃棄物等を処理する

こととしている。

4 福島県における事故由来  放射性物質により汚染 された廃棄物の処理

第1図 特定廃棄物及び除去土壌等の処理フロー(福島県内)

(注)1 特定廃棄物以外の8,000Bq/kg以下の廃棄物については,廃棄物処理法の規定を適用(一定の範囲については特措法に基づく基準を適用)。

   2 中間貯蔵施設の検討に当たっては,現時点で推計が困難な分野の貯蔵も考慮。   3 除染廃棄物の專焼灰については,濃度に関わらず中間貯蔵施設に保管。

出典 環境省「放射性物質汚染対処特措法の施行状況に関する取りまとめ(資料編)」(平成27年9月)

除染に伴う土壌・廃棄物

特定廃棄物

対策地域内廃棄物(旧警戒区域・計画的避難区域内)

指定廃棄物(8,000Bq/kg超)

可燃物

再生利用

焼却灰等

10万Bq/kg超10万Bq/kg以下

現場保管・仮置場焼却

例)災害廃棄物,家の片付けごみ,汚泥,稲わら等

再生利用が可能なもの

焼却が可能なもの

中間貯蔵施設既存の管理型処分場

焼却

減容化等

再生利用等・最終処分へ

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存の管理型処分場において最終処分され,

10万Bq/kgを超えるものは,中間貯蔵施設

で保管されることになる。不燃物について

も同様に,10万Bq/kg以下のものは,既存

の管理型処分場において最終処分され,10

万Bq/kgを超えるものは,中間貯蔵施設で

保管される。

(2) 除染に伴う土壌・廃棄物

除染については,除染特別地域における

国直轄除染と,汚染状況重点調査地域(注4)にお

ける市町村除染がある。

除染特別地域は汚染廃棄物対策地域と同

一の福島県内11市町村が指定され,また,

汚染状況重点調査地域は福島県内39市町村,

福島県外(岩手,宮城,茨城,栃木,群馬,

埼玉,千葉の7県)60市町村の合計99市町

村が指定された(14年11月現在)。

除染に伴って発生する土壌(以下「除去土

壌」という)・廃棄物(以下「除染廃棄物」と

いう)については,一旦現場または仮置場

で保管されたのち,焼却が可能なもの(刈

り取った草・落ち葉など)は焼却され,除去

土壌や焼却できない除染廃棄物は,減容化

の処理を経て中間貯蔵施設で保管されるこ

とになる(10万Bq/kgを超えるかどうかを問

わず,中間貯蔵施設に搬入される)。(注 4) 環境省令では汚染状況重点調査地域の指定の要件を, 1時間当たり0.23μSv以上(追加被ばく線量年間 1mSvを, 1時間あたりの放射線量に換算し,自然放射線量分を加えて算出されたもの)の放射線量としている。

(3) 特定一般廃棄物・特定産業廃棄物

特定廃棄物(対策地域内廃棄物または指定

物,家の片づけごみ,汚泥,稲わら等)につい

ては焼却し,それによって生じた焼却灰の

うち10万Bq/kg以下のものは,既存の管理

型処分場において最終処分され,10万Bq/

kgを超えるものは,中間貯蔵施設で保管さ

れることになる。

再生利用不可である不燃物のうち,10万

Bq/kg以下のものは,既存の管理型処分場

において最終処分され,10万Bq/kgを超え

るものは,中間貯蔵施設で保管される。(注 3) 環境省は,「100Bq/kgと8,000Bq/kgの二つの基準の違いについて」(環境省廃棄物・リサイクル対策部)により,「ひとことで言えば,100Bq/kgは『廃棄物を安全に再利用できる基準』であり,8,000Bq/kgは『廃棄物を安全に処理するための基準』です」としている。

b 指定廃棄物

指定廃棄物とは,水道施設,公共下水道・

流域下水道,工業用水道施設,特定一般廃

棄物処理施設又は特定産業廃棄物処理施設

である焼却施設及び集落排水施設から生じ

た廃棄物であって,当該施設の管理者等の

調査の結果に基づき,事故由来放射性物質

による汚染状態が環境省令で定める要件

(8,000Bq/kg)に適合しないものとして環境

大臣が指定するもの,及びこれ以外の廃棄

物であっても,その廃棄物の占有者が環境

大臣に指定廃棄物として指定することを申

請し環境大臣が指定した廃棄物である。(特

措法第16条~第18条)

指定廃棄物は,8,000Bq/kg超のものであ

り,対策地域内廃棄物と同様に,可燃物に

ついては焼却され,それによって生じた焼

却灰のうち,10万Bq/kg以下のものは,既

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されるなど,調整は難航した。

最終的には,国が「県外最終処分」に係

る法制化を約束したこと等を受け,14年9

月,福島県知事から国へ建設受け入れ(大

熊町および双葉町)を容認する旨が伝えられ,

また,大熊町および双葉町は地権者への説

明を了承した。

国が示した「県外最終処分」に係る法制

化は,「日本環境安全事業株式会社法」の

改正により実現した(14年11月成立)。同法

に中間貯蔵施設に係る国の責務を明確に位

置付けたうえで,「中間貯蔵開始後30年以

内に,福島県外で最終処分を完了するため

に必要な措置を講ずる」旨を規定すること

により,法律に基づく国の指揮監督権限の

下で有害物質の処分等に実績を持つ日本環

廃棄物)ではない廃棄物(すなわち,廃棄物

処理法に基づき処理される廃棄物)のうち,

事故由来放射性物質によって汚染され,ま

たはそのおそれがあるもので,環境省令で

定める9種類の類型に該当するものを,特

定一般廃棄物・特定産業廃棄物という。特

定一般廃棄物・特定産業廃棄物を処理する

際は,廃棄物処理法に基づく通常の処理基

準に加え,特措法に基づく処理基準を遵守

する必要がある。

また,特定一般廃棄物・特定産業廃棄物

の処分の用に供される廃棄物処理施設や一

定地域に所在する廃棄物処理施設を,特定

一般廃棄物処理施設・特定産業廃棄物処理

施設という。これらの施設の設置者等は,

当分の間,廃棄物処理法に基づく維持管理

基準に加え,特措法に基づく維持管理基準

を遵守し維持管理する必要がある。

(4) 今日に至る経緯~難航した中間貯蔵

施設設置と管理型処分場の活用~

a 中間貯蔵施設

福島県では,除染による除去土壌や放射

性物質に汚染された廃棄物が膨大な量とな

ることから,直ちに最終処分することは困

難であり,これを安全かつ集中的に貯蔵・

管理する中間貯蔵施設が不可欠である(中

間貯蔵施設の貯蔵量の見込みについては,第

1表参照)。環境省は11年10月に,「中間貯

蔵施設等の基本的考え方」(参考2)を策定,

この方針の下で福島県側と中間貯蔵施設の

設置について調整を進めたが,中間貯蔵施

設の「最終処分場化」への強い懸念等が示

〈参考2〉 「中間貯蔵施設等の基本的考え方」の主な内容

・ 中間貯蔵施設の確保及び維持管理は国が行う。・ 仮置場の本格的搬入開始から3年程度(平成27年1月)を目途として施設の供用を開始するよう政府として最大限の努力を行う。・ 福島県内の土壌・廃棄物のみを貯蔵対象とする。・ 中間貯蔵開始後30年以内に,福島県外で最終処分を完了する。

除染土壌などの推計発生量の内訳(2,200万㎥の場合(注))

8,000Bq/kg以下の土壌など 約1,006万㎥8,000Bq/kg超10万Bq/kg以下の土壌など 約1,035万㎥10万Bq/kg超の土壌など 約1万㎥除染廃棄物の焼却灰 約155万㎥10万Bq/kg超の対策地域内廃棄物など 約2万㎥合計 約2,200万㎥

資料  環境省「放射性物質汚染対処特措法の施行状況に関する取りまとめ(資料編)」(平成27年9月)を基に作成

(注)  福島県の除染土壌などの発生量は,減容化した後で,約1,600万~約2,200万㎥(東京ドームの約13~18倍)と推計されている。

第1表 中間貯蔵施設の貯蔵量の見込み

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農林金融2016・357 - 183

福島県以外の都道府県における特定廃棄

物(福島県以外では指定廃棄物が特定廃棄物

になる)および除染に伴う土壌・廃棄物は

第2図のとおり処理されることになってい

る。しかし,後述のとおり指定廃棄物の長

期管理施設(遮断型の最終処理施設)が確

保できない等から,現場保管等を余儀なく

される状態が続いている。

a 指定廃棄物

福島県以外の各都道府県において排出さ

れた指定廃棄物の処理は,11年11月に閣議

決定された「放射性物質汚染対処特措法に

基づく基本方針」に基づき,排出された各

都道府県内で行うこととされている。

15年6月時点で,福島県以外に11都県

(岩手,宮城,山形,茨城,栃木,群馬,千葉,

東京,神奈川,新潟,静岡)に指定廃棄物が

あり(第2表),いずれも特措法に基づき国

が処分する。

11都県のうち,指定廃棄物の一時保管が

逼迫している5県(宮城,茨城,栃木,群馬,

千葉)については12年3月に環境省が示し

た方針に沿って国直轄による長期管理施設

を確保することとし,5県以外の都県につ

いては,既存の処分場で処分することとし

ている。

なお,千葉,群馬,茨城県では焼却灰や

下水汚泥など,市町村などの公的施設で保

境安全事業株式会社が中間貯蔵施設に係る

業務の一部を担い,30年以内に県外最終処

分することを法定したのである。その後,

14年12月に大熊町が,15年1月に双葉町が

建設受け入れを表明,15年3月に中間貯蔵

施設の保管場(ストックヤード)への搬入

が開始された。

しかし,施設予定地の敷地面積16㎢には,

登記記録上2,400人の地権者が確認されて

いるが,15年8月末時点で連絡先を把握で

きていない地権者が1,110人にのぼり,同時

点での契約件数は9件にとどまるなど,用

地の取得が進み本格的な施設整備や輸送の

見通しが立てられる段階には至っていない,

という現状にある。

b 管理型処分場の活用

既存の管理型処分場活用についても,調

整は難航した。

国は13年12月に,富岡町,楢葉町および

福島県に対し,既存の管理型処分場(フク

シマエコテッククリーンセンター)の活用に

ついて受け入れを要請。候補地の富岡町で

は,民間処分場を転用する方針に反対の声

があがるなど,慎重姿勢が強かったが,国

は15年6月,処分場の国有化を含む安全・

安心の確保と地域振興策として両町に自由

度の高い交付金を措置する方針を示し,地

元の理解を求めた。これらの方針を受け,

県,富岡町および楢葉町が受け入れを正式

に決めたのは15年12月である。

5 福島県以外の都道府県の  処理         

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農林金融2016・358 - 184

り栃木県の処分場として矢板

市の国有林,続いて茨城県で

高萩市を候補地に選定して発

表,地元の猛反発で住民説明

会も実施できないまま白紙撤

回に追い込まれた。このため,

候補地選定にかかる取組みに

ついて検証を行い,13年2月

にそれまでの選定プロセスの

大幅な見直しがなされた。新

たな選考過程は,プロセスの

透明性を高め,市町村長会議を通じた共通

理解の醸成と専門家で構成される有識者会

議による科学的・技術的評価を得ることに

重点が置かれたものであり,候補地の安全

性に関する詳細調査の実施が含まれている。

新たな選考過程に沿って,宮城,栃木,

千葉県については,それぞれ14年1月,14

年7月,15年4月に詳細調査候補地(注5)が公表

管されているものが大半であるのに対し,

宮城,栃木県は,個人などで保管する稲わ

らなど農林業系副産物が半分以上を占めて

いる。

b  難航する長期管理施設の設置

5県で確保するとしている長期管理施設

候補地について,国は12年9月に,いきな

焼却灰 浄水発生土 下水汚泥 農林系

副産物 その他 合計

岩手県宮城県山形県福島県茨城県栃木県群馬県千葉県東京都神奈川県新潟県静岡県

199.8--

105,789.12,380.12,447.4

-2,724.2981.7---

-1,014.2

-2,449.3

-727.5672.8---

1,017.9-

---

10,050.2925.8

2,200.0513.9542.0----

-2,271.5

-2,990.5

-8,137.0

------

275.8118.42.7

12,667.5226.921.3-

424.1-

2.9-

8.6

475.63,404.1

2.7133,946.63,532.8

13,533.11,186.73,690.2981.72.9

1,017.98.6

合計 114,522.3 5,881.7 14,231.9 13,399 13,748.2 161,783資料  第1表に同じ

第2表 指定廃棄物の指定状況(15年6月30日時点)(単位 トン)

第2図 特定廃棄物及び除去土壌等の処理フロー(福島県以外の都道府県)

(注) 指定廃棄物の処理後のモニタリングは国が実施。

出典 第1図に同じ

除染に伴う土壌・廃棄物

特定廃棄物

指定廃棄物(8,000Bq/kg超)

既存の処分場

廃棄物処理法に基づき処分

例)下水汚泥,稲わら,堆肥等

発生場所で保管(浄水場,焼却場,農家など)

焼却灰等

焼却灰等

減容化(焼却等)可燃物

特に指定廃棄物の保管がひっ迫している5県(宮城県,茨城県,栃木県,群馬県,千葉県)

5県以外

処理施設(遮断型)

現場保管・仮置場

焼却が可能なもの

焼却

処分基準検討中

廃棄物 土壌

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農林金融2016・359 - 185

① 指定廃棄物の指定基準である8,000Bq/

kg超という数値を,放射性物質利用に

伴い発生する廃棄物等の処理等の安全

性のための最低限の基準であるクリア

ランスレベルが100Bq/kgであること

を十分踏まえて,相当程度引き下げる

べき,

② 指定廃棄物の指定基準に該当すると認

められるときは,環境大臣が当該廃棄

物の占有者からの申請がなくても指定

廃棄物と指定できるようにするべき,

③ 十分な情報公開の下で,公開の議論を

経て,より安全性に配慮した特定廃棄

物の処理基準を策定すべき,

というものである。

①については,指定廃棄物の指定基準を

8,000Bq/kgとしたことは誤りであり,基本

的にはクリアランスレベルを維持すべきで

ある,との考えに基づくものであるが,「セ

シウム134及びセシウム137の量が100Bq/

kgを超えている物が大量かつ広範に存在し

ているなど,汚染廃棄物の処理が切迫した

状況にあり,また,直ちに指定廃棄物の基

準の数値を100Bq/kgまで引き下げた場合

には,100Bq/kgを超えている草刈り後の

草や落ち葉すら,廃棄物処理法に基づく処

理ができなくなってしまい,特別の措置が

必要となるなど混乱が生じるおそれがあ

る」ことから,「相当程度引き下げるべき」

にとどめたものである。

現行法制度において福島第一原発事故由

来の物以外の物について,廃棄物処理法の

対象となるかどうかの基準はクリアランス

されたが,いずれも候補地自治体や地元住

民からの強い反発があり,以下のとおり詳

細調査は進んでいない。

宮城県では,15年12月13日に指定廃棄物

の長期管理施設建設問題を巡り開催された

宮城県市町村長会議で,候補地の3市町

(栗原市,大和町,加美町)がそろって候補

地選定の白紙撤回を要求した。また,栃木

県の候補地である塩谷町も長期管理施設受

け入れを拒否する方針を明確にしており,

千葉県でも候補地である千葉市が,「指定

廃棄物の管理に当たっては,指定廃棄物を

排出し保管している自治体内で分散保管を

行うことが適切であると判断しており,詳

細調査の受け入れはできない。」(千葉市長

回答:15年12月)として,詳細調査の受け

入れを拒否している。(注 5) 詳細調査候補地は以下のとおり宮城県: 栗原市深山嶽,大和町下原,加美町田

代岳栃木県:塩谷町寺島入千葉県: 千葉市中央区東京電力千葉火力発電所

の土地の一部

特措法に対する代表的な批判として,日

本弁護士連合会によるものがある。

日本弁護士連合会は,15年が特措法の見

直しの年にあたり,「放射性物質汚染対処

特措法施行状況検討会」が設置され検討が

なされる(注6)ことを踏まえ,15年7月,「放射性

物質汚染対処特措法改正に関する意見書」

を公表した。

意見書の趣旨は,

6 特措法に対する批判

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農林金融2016・360 - 186

特措法附則第6条は,「政府は,放射性

物質により汚染された廃棄物,土壌等に関

する規制の在り方その他の放射性物質に関

する法制度の在り方について抜本的な見直

しを含め検討を行い,その結果に基づき,

法制の整備その他の所要の措置を講ずるも

のとする」と定めている。

前述のとおり,放射性物質汚染対処特措

法施行状況検討会は制度の見直しについて

先送りとするとともに,放射性物質に関す

る法制度の抜本的な見直しも同様に見送ら

れ,改めて特措法の施行・進捗状況の点検

が行われた際に同条に基づく検討について

も行うべき,とした。

特措法はその名のとおり,「平成二十三

年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖

地震に伴う原子力発電所の事故により放出

された放射性物質による環境の汚染への対

処に関する特別措置」を定めたものであり,

将来において原発および核関連施設の事故

が発生した場合には同法では対処できない。

原発および核関連施設が存在する以上,将

来において一般環境中に放射性物質が放出

され汚染される可能性があることから,原

発および核関連施設の事故による環境汚染

一般に対処することが可能となる一般法の

制定が必要である。

その際,重要なことは,事故由来の汚染

物質対処と事故以外により発生する汚染物

質対処にかかる整合性の確保であろう。前

レベル(セシウムについては100Bq/kg)であ

り,環境省の「100Bq/kgは『廃棄物を安全

に再利用できる基準』であり,8,000Bq/kg

は『廃棄物を安全に処理するための基準』

です」との説明では十分な納得感につなが

らないのも確かである。

②については,申請されない8,000Bq/kg

超の物が指定廃棄物に指定されないことに

より,適正な手続きを踏まずに放射性物質

を含まない廃棄物と同様の処理がされるこ

とが懸念されるためである。

特措法見直しにかかるこれらの意見が表

明されたが,放射性物質汚染対処特措法施

行状況検討会は「放射性物質汚染対処特措

法の施行状況に関する取りまとめ」(15年

9月)において,「懸命に道筋を模索して

いる最中の課題については,現行の制度的

枠組みを見直すことがその解決に資すると

は考え難い」「現行の除染実施計画が終了

する時期(平成28年度末)を目途に,現行

の施策に一定の進捗があることを前提とし

て,改めて特措法の施行・進捗状況の点検

を行い,特措法に基づく一連の措置の円滑

な完了に向け必要な制度的手当て等を行う

べきである。」とし,指定基準も含め制度

の見直しは先送りされた。(注 6) 特措法附則第 5条において「政府は,この法律の施行後 3年を経過した場合において,この法律の施行の状況について検討を加え,その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」とされており,15年はこの見直しの年にあたっていた。このため,特措法施行状況の検討を行う「放射性物質汚染対処特措法施行状況検討会」が設置され,15年 3月から検討を開始した。

7 法制度整備の必要性

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農林金融2016・361 - 187

責任として実行すべき重要課題である。

 <参考文献>・ 安部慶三(2015)「放射性物質による環境汚染防止に関する法制度の現状と課題」『立法と調査』 1月・ 岡山信夫(2015)「農地土壌測定をベースとした生産管理体制の強化―JAグループ福島の取組みと法整備の必要性―」『農林金融』 3月号

・ 環境省(2011)「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質による環境汚染の対処において必要な中間貯蔵施設等の基本的考え方について」10月

・ 環境省(2015)「『環境基本法の改正を踏まえた放射性物質の適用除外規定に係る環境法令の整備について(意見具申)』(平成24年11月30日)を踏まえたその後の対応状況等について」 2月

・ 環境省・復興庁(2015)「管理型処分場を活用した特定廃棄物の埋立処分事業に係る対応について」7月

・ 田中良弘(2014)「放射性物質汚染対処特措法の立法経緯と環境法上の問題点」『一橋法学』 3月

・ 日本弁護士連合会(2011)「放射能による環境汚染と放射性廃棄物の対策についての意見書」 7月

・ 日本弁護士連合会(2015)「放射性物質汚染対策特措法に改正に関する意見書」 7月

・ 放射性物質汚染対処特措法施行状況検討会(2015)「放射性物質汚染対処特措法の施行状況に関する取りまとめ」 9月

(おかやま のぶお)

述のとおり,事故由来のものとそうでない

ものとで基準(廃棄物処理法の対象基準やそ

の他管理基準など)が異なるというような

法制度は,早期に見直されるべきである。

同時に,放射性物質にかかる適用除外規

定が残されている個別環境法(廃棄物処理

法,土壌汚染対策法,農用地土壌汚染防止法

など)についても,適用除外規定の削除を

前提にした見直しが必要である。

福島県では,ようやく「特定廃棄物及び

除去土壌等の処理フロー」が回り始めるが,

その処理には相当の期間を要することにな

る。中間貯蔵施設に保管された物の30年以

内の県外最終処分など,これから解決して

いかねばならない大きな課題も残る。

上記特措法附則第6条に規定された「放

射性物質により汚染された廃棄物,土壌等

に関する規制の在り方その他の放射性物質

に関する法制度の在り方について抜本的な

見直しを含め検討を行い,その結果に基づ

き,法制の整備その他の所要の措置を講ず

る」ことも,後の世代に対する今の世代の

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