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名古屋大学 特別講義 東海農政局 企画調整室長 坂 治己 平成27年9月2日

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名古屋大学 特別講義

東海農政局企画調整室長 坂治己

平成27年9月2日

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1. 農林水産物貿易を取り巻く状況・・・・・・・1

2. EPA・FTA交渉について・・・・・・・・8

3. TPP交渉について・・・・・・・・・・・15

4. WTO農業交渉について・・・・・・・・・35

5. グローバル・フードバリューチェーン戦略

について・・・・・・・・・・・・・・・・43

6. 国際協力について・・・・・・・・・・・・62

目 次

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1.農林水産物貿易を取り巻く状況

1

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0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

2004 2006 2008 2010 2012 2014

ドル/トン

2006年

豪州干ばつ

バイオ燃料用需要の増加

注:小麦、とうもろこし、大豆は、原則として、シカゴ商品取引所における2015年7月までの毎月第1金曜日の期近価格。

米は、原則として、タイ国家貿易取引委員会公表による各月第1水曜日のタイうるち精米100% 2等のFOB価格。

資料:USDA「World Agricultural Supply and Demand Estimates」 (June 2015)、「PS&D」注:期末在庫率とは、期末在庫量を消費量で除したものである。

小麦

大豆

とうもろこし

○穀物の期末在庫率の推移 06年、07年には、食料危機といわれた1970 年 代 初 め(15.4%)に次ぐ水準にまで低下。

米390 ㌦/㌧

とうもろこし165.2 ㌦/㌧

2015年7月の価格

小麦215.2 ㌦/㌧

(%)

大豆384.1 ㌦/㌧

(年)

○穀物等の国際価格の推移

2008年

世界的な小麦等の豊作

2007年

欧州天候不順・豪州干ばつ

2004年

世界の米在庫量が低水準

2010年

ロシアで干ばつ

米国のとうもろこしの

期末在庫率が低水準

穀物等の国際価格は2008年の高騰後、世界金融危機の影響等から一旦低下したものの、2012年には米国の高温・乾燥の影響により、再び高騰。2013年以降は、2012年の高値から大きく値を下げたものの、2006年秋頃に比べ1.2~1.9倍の水準。

2011年

米国で高温・乾燥

2012年

米国で高温・乾燥

2013、14年

世界的なとうもろこし等

の豊作

05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年 13年 14年15年

(予測値)

19.5 17.1 17.8 21.1 22.6 20.9 20.6 19.9 21.0 21.5 20.9

2

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(構造的要因)● 世界人口の見通しと中国及びインドの経済発展による影響

0102030405060708090

100

2013年 2050年

資料:国連「World Population Prospects: The 2012 Revision」(2013)

億人

途上国59億人

途上国83億人

先進国13億人

先進国13億人

72億人

96億人

1.3倍

途上国で24億人増加

□ 中国の人口及び穀物需要量

1970年 2005 2005/1970

人口(億人) 8.2 13.1 1.6倍

穀物需要量(百万トン) 156 377 2倍

うち、飼料用(百万トン) 12 107 9倍

□ インドの人口及び穀物需要量

資料:国連「World Population Prospects: The 2008 Revision」、米国農務省「PS&D」

1970年 2005 2005/1970

人口(億人) 5.5 11.3 2.0倍

穀物需要量(百万トン) 97 189 2倍

うち、飼料用(百万トン) 1 8 8倍

資料:国連「World Population Prospects: The 2008 Revision」、米国農務省「PS&D」

○ 世界の人口は、途上国を中心に増加し、2050年には2013年の1.3倍の96億人となる見通しとなっている。

○ 開発途上国で経済発展が進む中、特に人口超大国である中国とインドの穀物の需要量は、人口増加等を背景に1970年に比べ2倍に増加しており、世界的な食料需給に大きな影響を与える要因の1つとなっている(世界の穀物消費量のうち中国は2割、インドは1割)。

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○主要国の農産物純輸出入額(2012年)

(単位:億ドル)

2012年における我が国の農産物純輸入額は632億ドルとなっており、世界2位の農産物純輸入国。日本の輸入額は世界4位、輸出額は世界57位である。

中国

米国

ドイツ

日本

英国

オランダフランス

イタリア

ロシア

ベルギー

注:中国は、香港、マカオ、台湾を除く。

資料:FAO「FAOSTAT」(2012)

(

輸入額)

(

輸出額)

農産物純輸入額又は純輸出額

4

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○我が国の農産物輸入額は、米国の割合が約1/4を占めるなど、特定国への依存度が高い。

農産物全体

高関税品目の国別輸入割合(2014年)

5

米国25.5%

中国12.5%

豪州6.6%カナダ

6.3%タイ6.3%

伯4.7%

蘭,3.4%

その他34.6%

輸入額

6兆3,223億円

NZ49.6%

米国16.2%

豪州15.5%

インド4.7%

仏3.6%

その他10.4%

脱脂粉乳タイ

47.8%米国45.2%

豪州5.7%

その他1.3%

米NZ

55.9%

蘭21.3%

米国11.9%

独5.8%

豪州3.2%

その他1.9%

バター米国51.9%カナダ

31.2%

豪州16.1%

その他0.8%

小麦

タイ82.1%

馬7.7%

尼2.3%

越1.7% その他

6.2%

でん粉 タイ57.8%

豪州30.3%

南ア6.9%

その他5.0%

粗糖

豪州52.1%

カナダ26.2%

米国13.6%

その他8.1%

大麦

中国30.2%

カナダ29.9%

ミャンマー14.6%

米国13.9%

その他11.4%

雑豆

米国33.3%

カナダ17.8%

デンマーク16.3%

スペイン7.9%

墨7.6%

その他, 17.1%

豚肉豪州54.3%

米国36.3%

NZ4.6%

カナダ2.7%

その他2.1%

牛肉

資料:財務省「貿易統計」

注:各品目の構成比は数量ベース。

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我が国高関税品目の例

0%

600%

400%

200%

800%

コメ 小麦 大麦 脱脂粉乳 バター でん粉 粗糖雑豆

55円/kg(252%)

29.8%+985円/kg(360%)

71.8円/kg(328%)

21.3%+396円/kg(218%)

119円/kgタピオカでん粉(583%)

341円/kg(精米:778%)

39円/kg(256%)

354円/kg小豆(403%)

※()内は従価税換算値。従価税換算値は、ドーハ・ラウンドで各品目の関税 削減率を検討するため、加盟国で合意された統一ルールに従い、99~01年の輸入価格等を基に換算したもの。

○ 国土条件などにより、外国と国内で特に価格差が大きいコメ、小麦、乳製品等一部の品目は高関税となっている。これは、GATTウルグアイ・ラウンド交渉合意を踏まえ、内外価格差に基づいて、従来の国境措置が関税化されたもの。

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北海道

小麦、乳製品、でんぷん(ばれいしょ)、小豆、砂糖(てんさい)

九州・沖縄

麦、砂糖(さとうきび)、

でんぷん(かんしょ)

米は全国的

関東

○ 高関税品目の主な産地は、地域的に偏在しているものも多い。

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2.EPA・FTA交渉について

8

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EPA・FTAとは

EPAとFTA

自由貿易協定(FTA)

経済連携協定(EPA)

(Free Trade Agreement)

協定構成国のみを対象として、物や

サービスの貿易自由化を行う協定

協定構成国間での、物やサービスの貿易自由化

だけでなく、知的財産の保護、競争政策、協力

の促進等幅広い分野を含む協定

(Economic Partnership Agreement)

WTOとFTA

○ 関税の原則撤廃とは

WTO協定上、GATT第24条「実質上すべての貿易」について

関税撤廃を行うことが条件とされている。

高関税率

FTA

(WTOの例外)

協定構成国のみで

原則関税撤廃

○ WTO(世界貿易機関)は世界161の国・地域が加盟し、貿易自由化(全ての加盟国に対して同じ関税を適用)を行っ

ている機関である。

○ これに対して、EPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)とは、二ヵ国間(又は数カ国間)で取り決めをするもので

ある。

・ FTAは二国間等で関税を相互に原則撤廃することを取り決める協定。

・ EPAは関税の原則撤廃に加えて、知的財産の保護、競争政策、人の移動、技術協力などの幅広い分野含む協定。

( (※但し、最近はFTAも幅広い分野を含むものが多くなっており、EPAとFTAの違いは明確ではない。)

WTO(加盟国に対し、関税を等しく適用)

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日本

締結

マレーシア

交渉中

スイス

韓国

タイ

GCC

湾岸協力理事会

加盟国:バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦。

ブルネイ

ベトナム

GCC

モンゴル

EU

中国

ASEAN全体

RCEP

RCEP RCEP:東アジア地域包括的経済連携。ASEAN10か国にEPA/FTAを有する日中韓印豪NZ6か国が交渉に参加する広域経済連携。

その他

メキシコ

チリ

ペルー

コロンビア

カナダ

米国

豪州

フィリピン

インドネシアシンガポール

TPP

NZ

ASEAN ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの10ヶ国

インド

EPA(経済連携協定)の現状(全体像)

10

日中韓

TPP TPP協定交渉参加国:シンガポール、NZ、チリ、ブルネイ、米国、豪州、ペルー、ベトナム、マレーシア、カナダ、メキシコ、日本

署名

トルコ

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◆:交渉 ☆:署名 ★:発効 △:改正議定書署名 ▲:改正議定書発効

(注)ASEAN全体とのEPAは、物品貿易等について、2008年12月に日本とシンガポール、ラオス、ベトナム及びミャンマー、2009年1月にブルネイ、同2月にマレーシア、同6月にタイ、同12月にカンボジア、2010年7月にフィリピンとの間で発効。また2010年10月より、サービス章・投資章

について交渉開始し、2013年12月にルール部分において実質合意。残された技術的論点の調整や、サービス分野の市場アクセスについて現在交渉中。11

EPA(経済連携協定)の現状(既結)

○我が国は、アジア太平洋地域を中心に14の国や地域とEPAを締結済み。

★(10月)

★(9月)

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

ASEAN全体(AJCEP)

(注)

ブルネイ

フィリピン

ベトナム

スイス

インドネシア

タイ

チリ

マレーシア

メキシコ

シンガポール

インド

◆(11月~)

(1月~)◆

◆(2月~)

◆(2月~)

◆(7月~)

(6月~)◆

◆(4月~)

◆(2月~)

◆(5月~)

(1月~)◆

△(3月)

☆ (9月)

(12月)☆

☆(3月)

(4月)☆

☆(8月)

☆(6月)

(4月)☆

☆(9月)

(2月)☆

▲(9月)

★(9月)

★(4月)

★(11月)☆(1月)

★(7月)

★(11月)

★(7月)

★(7月)

★(12月)

★(12月)

(1月~)◆ (12月)☆

2010

ペルー ◆(5月~)

2011

(2月)☆

(5月)☆

2012

★(8月)

△(9月)

2013

★(3月)

▲(4月)

≪サービス・投資≫

≪物品貿易等≫◆(10月~)

2014 2015

豪州 ◆(4月~) (7月)☆ ★(1月)

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(注1) 韓国とは、2004年11月以降交渉が中断。2010年5月の日韓首脳会談において、交渉再開に向けたハイレベルの事前協議を行うことで一致。これを受けて同年9月には交渉再開に向けた第1回局長級協議、2011年5月には第2回局長級協議を開催。

(注2) GCC(湾岸協力理事会)加盟国:バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦。GCCとの交渉は延期中。(注3) RCEP:東アジア地域包括的経済連携。ASEAN10か国にEPA/FTAを有する日中韓印豪NZ6か国が交渉に参加する広域経済連携。 12

◆:交渉開始◇:大筋合意☆:署名

EPA(経済連携協定)の現状(交渉中等)

○2013年から日中韓、EU、RCEP等のEPA交渉が開始。○モンゴル:2015年2月、協定に署名。

韓国(注1)

GCC(注2)

◆(12月~)

◆(9月~)

★(3月)

モンゴル (6月~)◆

カナダ (11月~)◆

コロンビア (12月~)◆

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

日中韓 (3月~)◆

RCEP(注3)

EU (4月~)◆

(5月~)◆

2014

ASEAN全体(AJCEP)

◆(10月~)

(7月)◇

≪サービス・投資≫

トルコ (12月~)◆

2015

☆(2月)

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オーストラリアニュージーランド

中国

韓国

日本

香港チャイニーズ・タイペイパプアニューギニアロシア

米国カナダメキシコペルーチリ

カンボジアラオスミャンマー

インドネシアフィリピンタイ

シンガポールマレーシアベトナムブルネイ

インド

FTAAP (APEC21エコノミー)

ASEAN (10カ国)

TPP (12カ国)

RCEP (16カ国)

日中韓FTA

※ ◆ 印の国は、日・ASEAN、中・ASEAN などいわゆるASEAN+1のEPA/FTAを締結している。

13

※ RCEP: 東アジア地域包括的経済連携 (Regional Comprehensive Economic Partnership)ASEAN: 東南アジア諸国連合 (Association of Southeast Asian Nations)APEC: アジア太平洋経済協力 (Asia Pacific Economic Cooperation)FTAAP:アジア太平洋自由貿易圏(Free Trade Area of the Asia-Pacific )TPP: 環太平洋パートナーシップ (Trans-Pacific Partnership)FTA: 自由貿易協定 (Free Trade Agreement)

アジア太平洋地域における広域経済連携の進捗

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• 米国・EU等のEPA/FTAの自由化率(10年以内に関税を撤廃する割合)は、我が国に比べ高い。特に米国は、96%以上、100%近い自由化率を実現。

但し、我が国のEPAについて、貿易額ベースの自由化率(10年以内に関税撤廃を行う品目が輸入額に占める割合)を見ると概ね90%以上を達成。

日ブルネイ及び日スイスとのEPAでは99%以上、日シンガポール、日マレーシア、日ベトナムとのEPAでは約95%。

米豪FTA 米ペルーFTA 米韓FTA 韓EU・FTA

(豪側) (ペルー側)(米側) (EU側)

(米側) (韓側) (韓側)

  (米側)

自由化率(2005年1月   発効)

自由化率(2009年10月仮署

名)(2009年2月   発効)

(2007年6月   署名)

日本のEPA

日フィリピン

(88.4%)

日タイ

(87.2%)日マレーシア

(86.8%)

ただし、将来的に実質的に自由化されるものも含めれば99.0 %

100% 100%

約95%

約90%

約95%

約90%

約85%

日インドネシア

(86.6%)

日チリ

(86.5%) 日スイス

(85.6%)

(2011年7月発効)

日本のEPAと米・EU等のFTAの自由化率比較(注)

14(注2)内閣官房作成「政府説明資料1」http://www.npu.go.jp/policy/policy08/pdf/20121129/20121129_1.pdfから抜粋

(注)本表は、品目ベースの自由化率(10年以内に関税撤廃を行う品目が全品目に占める割合)を示したもの。

EU韓FTA(2011年7月

暫定発効)(2012年3月

発効)

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3.TPP交渉について

15

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TPP交渉の参加国・経緯

2006年 シンガポール、NZ、チリ、ブルネイから成る「P4協定」が発効

2008年 9月 米国が参加国を拡大して交渉を開始する意図を表明

2010年 3月 米、豪、ペルー、越を加え8カ国で交渉開始。

同 10月 マレーシアが交渉参加。計9カ国に2011年11月 日本、カナダ、メキシコが交渉参加に向けた

協議開始の意向表明2012年10月 メキシコ、カナダが交渉参加。計11カ国に2013年 7月 日本が交渉参加。計12カ国に

2010年 3月 第1回会合(於:豪州)

P4 4カ国に加え、8カ国で交渉開始

6月 第2回会合(於:米国)

10月 第3回会合(於:ブルネイ)

マレーシアが新規参加

12月 第4回会合(於:NZ)

2011年 2月 第5回会合(於:チリ)

2012年 12月 第15回会合(於:NZ)

カナダ、メキシコが新規参加

2013年 3月 第16回会合(於:シンガポール)

5月 第17回会合(於:ペルー)

7月 第18回会合(於:マレーシア)

日本が新規参加

8月 第19回会合(於:ブルネイ)

10月 TPP首脳・閣僚会合(於:インドネシア)

12月 TPP閣僚会合(於:シンガポール)

2014年 2月 TPP閣僚会合(於:シンガポール)

5月 TPP閣僚会合(於:シンガポール)

10月 TPP閣僚会合(於:シドニー)

11月 TPP首脳・閣僚会合(於:北京)

交渉日程

16

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14.5

5.5

1.6 1.2 1.0 0.24 0.22 0.20 0.15 0.14 0.10 0.01

0.0

5.0

10.0

15.0

米国

日本

カナダ

豪州

メキシコ

マレーシア

シンガポール

チリ

ペルー

NZ

ベトナム

ブルネイ

GDP(

兆ドル

その他の国38兆ドル(60.4%)

日本(21.9%)

米国(58.3%)

全世界に占めるTPP交渉参加国のGDPの割合

TPP交渉参加国の経済規模(GDP、2010年)

○ 全世界のGDPのうち、TPP交渉参加12カ国のGDPが占める割合は、4割。

○ TPP交渉参加国のGDPのうち、日米のGDPが占める割合は、8割。

出典:IMF

TPP交渉参加国25兆ドル(39.6%)

17

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日米首脳会談後の安倍総理内外記者会見 (2013年2月22日、米国・ワシントンD.C.)抜粋

・ 「私は、選挙を通じて「聖域なき関税撤廃を前提とするTPPには参加しない」と国民の皆様にお約束し、今回の

オバマ大統領との会談により、TPPでは、「『聖域なき関税撤廃』が前提」ではない、ことが明確になった。」

安倍総理記者会見 (2013年3月15日)抜粋

・ 「本日、TPP、環太平洋パートナーシップ協定に向けた交渉に参加する決断をいたしました。その旨、交渉参加

国に通知をいたします。」

日米間の往復書簡 (2013年4月12日)抜粋

・ 「TPPに関する二国間の協議が成功裡に妥結したことを確認」

環太平洋パートナーシップ(TPP)閣僚声明 (2013年4月20日)抜粋

・ 「貿易大臣はまた、各TPP参加国が、TPP参加への日本の関心についての日本との二国間協議を終了したこ

とを確認した。」

日本のTPP交渉参加に関するUSTRの米国議会通知(2013年4月24日)

日本のTPP交渉正式参加(2013年7月23日)

我が国のTPP交渉参加に至るまでの経緯 ①(関係国との協議)

18

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日米首脳会談(平成25年2月22日)

両政府は、日本が環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉に参加する場合には、全ての

物品が交渉の対象とされること、及び、日本が他の交渉参加国とともに、2011年11月12

日にTPP首脳によって表明された「TPPの輪郭(アウトライン)」において示された包括的で

高い水準の協定を達成していくことになることを確認する。

日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易

上のセンシティビティが存在することを認識しつつ、両政府は、最終的な結果は交渉の中で

決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃するこ

とをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する。

両政府は、TPP参加への日本のあり得べき関心についての二国間協議を継続する。こ

れらの協議は進展を見せているが、自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に

対処し、その他の非関税措置に対処し、及びTPPの高い水準を満たすことについて作業を

完了することを含め、なされるべき更なる作業が残されている。

日米の共同声明

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TPP交渉参加国との協議

1 日本が他の交渉参加国とともに、「TPPの輪郭」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことを確認するとともに、日米両国が経済成長促進、二国間貿易拡大、及び法の支配を更に強化するため、共に取り組んでいくこととなった。

2 この目的のため、日米間でTPP交渉と並行して非関税措置に取り組むことを決定。対象分野:保険、透明性/貿易円滑化、投資、規格・基準、衛生植物検疫措置1 等

3 また、米国が長期にわたり懸念を継続して表明してきた自動車分野の貿易に関し、(1)TPP交渉と並行して自動車貿易に関する交渉を行うことを決定。対象事項:透明性、流通、基準、環境対応車/新技術搭載車、

財政上のインセンティブ等(2)TPPの市場アクセス交渉を行う中で、米国の自動車関税がTPP交渉における最も長い段階的な引下げ期

間によって撤廃され、かつ、最大限に後ろ倒しされること、及び、この扱いは米韓FTAにおける米国の自動車関税の取り扱いを実質的に上回るものとなることを確認。

4 日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品といった二国間貿易上のセンシティビティが両国にあることを認識しつつ、TPPにおけるルール作り及び市場アクセス交渉において緊密に共に取り組むことで一致。

1日本及び米国は、世界貿易機関(WTO)の衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)に基づいて並行二国間交渉の中で衛生植物検疫措

置に関する事項について共に取り組む。

貿易大臣はまた、各TPP参加国が、TPP参加への日本の関心についての日本との二国間協議を終了したことを確認した。本日、貿易大臣は、他の参加国が進捗中の交渉に参加した時と同様に、妥結に向けて交渉が引き続き速やかに進められるような方法により、日本の参加プロセスを完了させることをコンセンサス(全会一致)により合意した。日本はその後、現交渉参加各国の国内手続が完了次第、TPP交渉に参加することができる。

環太平洋パートナーシップ(TPP)閣僚声明(仮訳)(抜粋)(平成25年4月20日)

日米協議の合意の概要(平成25年4月12日)

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「TPP対策に関する決議」(抜粋)(平成25年3月13日、自由民主党外交・経済連携本部、TPP対策委員会)

5 なお、仮に交渉参加を決断する場合において、TPPが国民生活に大きな影響を及ぼし得ること

から、以下の諸点を確実に実行すべきである。

この場合において、特に、自然的・地理的条件に制約される農林水産分野の重要5品目等やこ

れまで営々と築き上げてきた国民皆保険制度などの聖域(死活的利益)の確保を最優先し、それ

が確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとする。

(1) 政府は、別紙の党内5グループ並びに21作業分野に対する検討チームの取りまとめの内容

を踏まえ、2国間交渉等にも留意しつつ、その主張が交渉結果にしっかりと反映されるよう全力を

挙げ、交渉の進展に応じ、適時に十分な情報提供を行うこと。

(以下略)

別紙:第4グループとりまとめ(抜粋)

○TPPでの日本の主張

米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物等の農林水産物の重要品目が、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象となること。10年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めない。(中略)

なお、仮にTPP交渉に参加した場合であっても、以上の農林水産分野におけるコアとなる主張が受け入れられない場合には、TPP交渉から脱退も辞さないものとすること。

我が国のTPP交渉参加に至るまでの経緯 ②(国内における動き)

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国会決議(平成25年4月18日・参議院、19日・衆議院)(抜粋)

1 米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能とな

るよう除外又は再協議の対象とすること。十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと。

2 残留農薬・食品添加物の基準、遺伝子組換え食品の表示義務、遺伝子組換え種子の規制、輸入原材料の原

産地表示、BSEに係る牛肉の輸入措置等において、食の安全・安心及び食料の安定生産を損なわないこと。

3 国内の温暖化対策や木材自給率向上のための森林整備に不可欠な合板、製材の関税に最大限配慮すること。

4 漁業補助金等における国の政策決定権を維持すること。仮に漁業補助金につき規律が設けられるとしても、

過剰漁獲を招くものに限定し、漁港整備や所得支援など、持続的漁業の発展や多面的機能の発揮、更には震

災復興に必要なものが確保されるようにすること。

5 濫訴防止策等を含まない、国の主権を損なうようなISD条項には合意しないこと。

6 交渉に当たっては、ニ国間交渉等にも留意しつつ、自然的・地理的条件に制約される農林水産分野の重要五

品目などの聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとすること。

7 交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅

広い国民的議論を行うよう措置すること。

8 交渉を進める中においても、国内農林水産業の構造改革の努力を加速するとともに、交渉の帰趨いかんでは、

国内農林水産業、関連産業及び地域経済に及ぼす影響が甚大であることを十分に踏まえて、政府を挙げて対

応すること。

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(1)物品市場アクセス

物品の貿易に関して、関税の撤廃や削減の方法等を定めるとともに、内国民待遇など物品の貿易を行う上での基本的なルールを定める。

繊維及び繊維製品については、個別の章又は節等を設ける方向で調整中。

(2)原産地規則

関税の減免の対象となる「TPP域内の原産品(=TPP域内で生産された産品)」として認められるための要件や証明手続等について定める。

(3)税関当局及び貿易円滑化

税関手続の透明性の確保や通関手続の簡素化等について定める。

(4)SPS(衛生植物検疫)

食品の安全を確保したり、動物や植物が病気にかからないようにするための措置の実施に関するルールについて定める。

(5)TBT(貿易の技術的障害)

安全や環境保全等の目的から製品の特性やその生産工程等について「規格」が定められることがあるところ、これが貿易の不必要な障害とならないように、ルールを定める。

(6)貿易救済

ある産品の輸入が急増し、国内産業に被害が生じたり、そのおそれがある場合、国内産業保護のために当該産品に対して、一時的にとることのできる緊急措置(セーフガード措置)等について定める。

(7)政府調達

中央政府や地方政府等による物品・サービスの調達に関して、内国民待遇の原則や入札の手続等のルールについて定める。

(8)知的財産

特許権,商標権,意匠権,著作権,地理的表示等の知的財産の十分で効果的な保護、権利行使手続等について定める。

(9)競争政策・国有企業

競争法の整備と締約国間・競争当局間の協力等について定める競争政策の規律と、国有企業と民間企業の競争条件の平等を確保する国有企業の規律からなっている。

サービス

(10)越境サービス

内国民待遇,最恵国待遇,市場アクセス(数量制限等)に関するルールを定める。

サービス (14)電子商取引

電子商取引のための環境・ルールを整備する上で必要となる原則等について定める。

(15)投資

投資家間の無差別原則(内国民待遇、最恵国待遇)、投資に関する紛争解決手続等について定める。

(16)環境

貿易や投資の促進のために環境基準を緩和しないこと等を定める。

(11)ビジネス関係者の一時的な入国

(12)金融サービス (13)電気通信サービス

ビジネス関係者の一時的な入国の許可、要件及び手続等に関するルール及び各締約国の約束を定める。

金融分野の国境を越えるサービスの提供について、金融サービス分野に特有の定義やルールを定める。

電気通信サービスの分野について、通信インフラを有する主要なサービス提供者の義務等に関するルールを定める。

(17)労働

貿易や投資の促進のために労働基準を緩和すべきでないこと等について定める。

(18)法的・制度的事項

(①前文、②冒頭・一般的定義、③透明性・腐敗防止、④例外、⑤運用・制度、⑥最終規定)

協定の実施・運用等に関するルールや、例外規定など協定全体に関わる事項等を定める。

(19)紛争解決

協定の解釈の不一致等による締約国間の紛争を解決する際の手続について定める。

(20)協力・キャパシティビルディング

協定の合意事項を履行するための国内体制が不十分な国に、技術支援や人材育成を行うこと等について定める。

(21)分野横断的事項

(①規制の整合性、②中小企業、③競争力・ビジネス円滑化、④開発)

加盟国毎に複数の分野にまたがる規制や規則の透明性を高めること等を規定する。

TPP交渉で扱われる分野

○ TPP交渉はFTAの基本的な構成要素である物品市場アクセス(物品の関税の撤廃・削減)やサービス貿易のみならず、非関税分野(投資、競争、知的財産、政府調達等)のルール作りや、新しい分野(環境、労働、「分野横断的事項」等)を含む包括的協定と

して交渉されている。

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既存のEPAにおいて関税撤廃をしたことがない(農林水産品約840品目)

既存のEPAにおいて「除外」以外の対応をしたことがない

農林水産品 約400品目 (鉱工業品55品目)

・コメ、小麦、大麦、麦芽、でんぷん等穀物 約 70

・てんさい糖など糖類 約 10

・脱脂粉乳、ホエイ、バターなど乳製品 約110

・穀物、ミルク等の調製品 約130

・水産品 約 55 等

既存のEPAにおいて「再協議」または「スタンドスティル

(現状維持)」としたことがある

農林水産品 約320品目 (鉱工業品40品目)

・とうもろこし、でんぷん、穀粉等 約25 ・パイナップル・トマト等の調製品 約15

・糖類、調製食料品 約100 ・落花生、植物性油脂等 約30

・チーズ等乳製品 約20 ・合板 約30

・肉類(牛、豚、鶏等)、肉調製品 約40 ・さけ、まぐろ等水産品 約40 等

既存のEPAにおいて関税削減、関税割当をしたことがある

農林水産品 約130品目

・糖類・調製食料品 約10

・肉類(牛、豚、鶏等)、肉調製品 約60

・パイナップル・トマト等の調製品 約15 等

既存のEPAにおいて関税撤廃をしたことがない品目(9桁ベースのライン数)

・ 我が国は、これまでのEPAでも、WTO協定に整合する形で農林水産品の関税を維持してきた。

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TPP交渉参加国に対し国境措置を撤廃した場合の経済効果(政府統一試算)

10.1 34%

豚肉

4.6 15%

牛肉

3.6 12%

牛乳

乳製品

2.910%

砂糖

1.55%

鶏卵

1.14%

鶏肉

1.03%

小麦

0.83%

その他の

農産物

1.14%

林産物

0.52%

水産物

2.58%

+ 0.66+ 0.55

+ 0.09

+ 0.61

▲ 0.60

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

消費:3.0兆円

投資:0.5兆円

輸出:2.6兆円

輸入:▲2.9兆円

総額:3.2兆円

○ マクロ経済効果 ○ 農林水産物生産等への影響

実質GDPが0.66%(3.2兆円)増加 農林水産物生産額が3兆円程度減少

(%)(単位:千億円)

平成25年3月15日 内閣官房発表

○ 食料自給率(平成21年度対比)(供給熱量ベース) 40%→27%程度

(生産額ベース) 70%→55%程度○ 農業の多面的機能の喪失 1兆6千億円程度

食料自給率及び多面的機能への影響(農林水産省試算)

注:関税は全て即時撤廃し、追加的な対策を計算に入れないなど一定の仮定を置いた試算である。

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SPS(衛生と植物防疫のための措置)

○ 食品の安全を確保し、動植物の病害を防止するための措置の実施に関する規律について議論。

SPSは、Sanitary and Phytosanitary Measures(衛生と植物防疫のための措置)で、検疫だけでなく、最終製品の規格、生産方法、リスク評価方法など、食品安全や、動植物の健康に関する措置(SPS措置)を対象としているもの。

WTO協定の附属書の1つとしてSPS協定が既にあり、大枠としてはそれを踏まえた議論がなされている。食の安全に関する我が国の制度の変更を求められるような議論は行われていない。

原産地規則

○ 累積のルールを含め、TPP協定上適用される関税率の対象となる「締約国で生産された産品」として認められる基準や原産品であることを証明するための証明制度等に関する規律について議論。

原産地=物品の「国籍」を決定するためのルールである。現在は、複数の国にまたがって生産が行われる物品が数多く存在することから、関税政策等の適用・不適用が物品の原産地に依存する場合が多いので、ルールを決める必要がある。原産地規則の共通ルール化により、TPP参加国間で生産、サプライチェーンを促進し、大企業だけではなく中小企業もより活動しやすくなる。

原産地規則は、テキスト本文に記載される基本的ルールの部分とPSR(Product Specific Rules)という個別品目毎のルール決めがあるが、PSRはまだ相当数の品目について議論が残っている。

主なルール分野の交渉概要①

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主なルール分野の交渉概要②

競争(国有企業)

○ 競争法・競争政策の強化・改善、政府間協力、国有企業と民間企業との競争条件等に関する規律について議論。

カルテル等が行われると、貿易・投資の自由化で得られる利益が害される恐れがあるため、競争政策を強化、改善することが必要である。また、国有企業に対して政府による過度のサポートがあると民間企業との間で対等な競争条件が確保されなくなってしまう。とりわけ、途上国においては国有企業が経済活動の大きな部分を占めており、国有企業に対して一定のルールを課すことが重要。

国有企業については、規律を課すべき国有企業の範囲(例外の範囲)、政府による支援の内容、透明性等について議論を行っている。

知的財産

○ 特許権や著作権等の保護、模倣品や海賊版に対する取締り等に関する規律について議論。

知的財産が適切に保護されていなければ、安心して経済活動を行うことができず、利益を適正に上げることもできなくなり、新たなイノベーションを生み出すインセンティブが削がれることにもなりかねない。我が国は高い水準の知的財産保護制度を有しており、これをアジア太平洋地域に広げることの意義は非常に大きい。

著作権保護期間、医薬品のデータ保護期間、地理的表示(GI)等について議論を行っている。

環境

○ 貿易・投資促進のために環境基準を緩和しないこと等に関する規律について議論。

貿易や投資の促進と環境保全を両立させようという、21世紀型の分野。

そもそも環境については、WTOの世界とは別に様々な国際条約が存在し、それも伝統的な自然環境に関するものから、近年の新しい分野である生物多様性など、まさに多様な条約があり、それらとの関係の整理などの論点が残っている。

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2014年4月以降のTPP交渉会合等の開催状況

4月 9-10 日17-18日23-24日24日

日米閣僚協議(東京)日米閣僚協議(ワシントン)日米閣僚協議(東京)日米首脳会談(東京)

5月12-15日19-20日

TPP首席交渉官会合(ホーチミン)TPP閣僚会合(シンガポール)

6月

7月 3-12日 TPP首席交渉官会合(オタワ)

8月

9月 1-10日

23-24日26日

TPP首席交渉官会合(ハノイ)

日米閣僚協議(ワシントン)バイデン副大統領の安倍総理表敬(NY)

10月 15日19-24日25-27日28-11 月1日

日米首脳電話会談TPP交渉会合(キャンベラ)TPP閣僚会合(シドニー)TPP首席交渉官会合(シドニー)

11月 8日10日16日

TPP閣僚会合(北京)TPP首脳会合(北京)日米豪・日米首脳会談(ブリスベン)

12月 7-12日 TPP首席交渉官会合(ワシントン)

1月

26-2月1日 TPP首席交渉官会合(NY)

2月

3月 9-15日

24日

TPP首席交渉官会合(ハワイ)

日NZ首脳会談(東京)

4月 19-21日23-26日28日

日米閣僚協議(東京)TPP首席交渉官会合(メリーランド)日米首脳会談(ワシントン)

5月 16-27日 TPP首席交渉官会合(グアム)

6月

7月 28-31日 TPP閣僚会議(ハワイ)

【2014年】 【2015年】

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経済成長を更に増進し,域内の貿易及び投資を拡大し,並びにルールに基づいた貿易

システムを強化するため,日米両国は,高い水準で,野心的で,包括的な環太平洋パート

ナーシップ(TPP)協定を達成するために必要な大胆な措置をとることにコミットしている。

本日,両国は,TPPに関する二国間の重要な課題について前進する道筋を特定した。

これは,TPP交渉におけるキー・マイルストンを画し,より幅広い交渉への新たなモメンタ

ムをもたらすことになる。

両国は全てのTPP交渉参加国に対し,協定を妥結するために必要な措置をとるために

可能な限り早期に行動するよう呼びかける。

このような前進はあるものの,TPPの妥結にはまだなされるべき作業が残されている。

日米の共同声明(平成26年4月25日)(仮訳)(抜粋)

日米首脳会談(平成26年4月24日)

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TPP貿易閣僚による首脳への報告書(仮訳)抜粋(平成26年11月10日 於:中国・北京)

前文○ 閣僚は、終局が明確になりつつあることを受けて、妥結に向けて交渉を前進させることに強くコミットしている。

○ 我々は、プロセスを加速し、及び残された課題に関する相互に受け入れ可能な成果について合意するための共同作業計画を策定した。その中で主要なものは、物品、サービス、投資、金融サービス、経済人の一時的入 国及び政府調達を含む市場を相互に開放するコミットメントの野心的なパッケージを妥結するための道筋を特定することである。我々は、また、知的財産、国有企業、環境及び投資に関するものを含め、協定の条文の残された課題についての解決を継続して追求していく。

次のステップ○ 閣僚は、交渉妥結の正確なタイミングは交渉の中身の進展振りが決するものであることを理解しつつ、協定

を完成させるために一層の努力を行うことにコミットした。

○ 我々は、首脳が共有された目標として特定した高い水準かつ野心的な成果に忠実である一方、各国の必要性に対応できる解決策を見出すために、妥協策を求め、実際的、柔軟かつ創造的に作業を行う必要がある。

○ 画期的な環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉を妥結へと導く過去数か月の大きな進展を歓迎する。

○ 終局が明確になりつつあることを受けて、我々は、閣僚及び交渉官に対し、企業、労働者、農業従事者及び消費者ができる限り早期にTPP協定による実際の実質的利益を享受し始めることができるように、この協定を妥結することを最優先とすることを指示した。

○ 我々は、交渉を妥結させるために交渉団を集める際に、最終的な協定が、各国における経済の競争力を強化し、イノベーションと企業家精神を奨励し、経済の成長と繁栄を促進し、及び雇用の創出を支援する、野心的、包括的、高い水準かつバランスの取れた協定という我々の共通の構想を、反映することを確保することに引き続きコミットしている。

TPP首脳声明(仮訳)抜粋(平成26年11月10日 於:中国・北京)

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日米両国は,地域の繁栄を追求する上で,透明性が高く,ルールに基づき,漸進的なアプローチに

コミットしている。この地域における日米両国のリーダーシップは,環太平洋パートナーシップ(TPP)を

通じた貿易及び投資,開発協力並びにインターネット・ガバナンスを含む。日米両国は,ダイナミック

かつ急成長するアジア太平洋地域及び世界中において,貿易及び投資のルールを定めるための取

組を主導している。日米両国は,TPPの二大経済大国として,これまでに交渉された貿易協定の中で

最も高い水準の協定をまとめるために取り組んでいる。TPPは,より多くの雇用を後押しし,賃金を引

き上げ,地域の平和及び安定の促進を含む広範な長期的な戦略目標における日米の共同の取組を

強化することによって,日米両国及びアジア太平洋地域の全体にわたって経済成長及び繁栄を牽引

する。日米両国は,二国間の交渉において大きな進展があったことを歓迎するとともに,より広い協

定の迅速かつ成功裡の妥結を達成するために,共に取り組むとのコミットメントを再確認する。

日米共同ビジョン声明(平成27年4月28日)(仮訳)(抜粋)

日米首脳会談(平成27年4月28日)

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国会決議を守る決意について((衆)農水委(平成27年6月25日)【大臣答弁】

TPP交渉におきましては、一昨年2月の日米共同声明で、全ての物品が交渉の対象とされること、それから我が国の農産品にはセンシティビティがあり、最終的な結果は交渉の中で決まっていくことが確認されております。

こういう経緯も踏まえて衆参両院の農林水産委員会で、重要5品目などの再生産が可能となるよう、それらの品目の確保を最優先とすることなどが決議をされております。

この今御説明があった、TPPもしくはTPA法案の動向について、いろいろ報道もありまして・・・、全国の生産者の方々にですね、いろんな声があるということは私も直接、間接に聞いて十分承知をしているつもりでございます。

交渉に当たってはですね、こういう方々に十分耳を傾けて、衆参両院の農林水産委員会決議が守られたとの評価を頂けるようにですね、政府一体となって最後まで全力を尽くして参りたいと思っております。

TPP交渉に関する情報提供について(閣議後会見(平成27年5月12日)【大臣発言】

TPP交渉に関わる情報提供につきましてはですね、これまでも交渉会合の結果等について情報提供、随時してきておりますが、TPP政府対策本部の下でですね、政府全体で統一的に対応をしてきておりますし、これからもそういうことだと、こういうふうに認識をしております。

情報提供については、内閣官房が中心になってですね、いろんな努力・工夫をしていく、引き続きですね、努力・工夫をしていく

ということが検討されていると、こういうふうに承知しておりますので、我々も、この対策本部の下でですね、しっかりと統一的に対応していきたいと考えております

コメをはじめとする農産品の交渉状況にについて((衆)農水委(平成27年4月22日)【大臣答弁】

TPP交渉に当たりましては、米が国民の主食でありまして、また、最も重要な基幹的な農作物である、こういう認識のもとで慎重に交渉を進めておりまして、また、全体をパッケージで交渉しておるために、何ら確定をしているものはないということでございます。

先ほど内閣官房からも御答弁がありましたように、米の問題も含めて、依然として難しい課題が残っておりまして、今後も厳しい交渉が続くと承知しております。

国会等における方針の説明

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[参考]TPP交渉に関する体制

TPPに関する主要閣僚会議

構成員:関係閣僚(官房長官、TPP担当、外務、財務、農水、経産+関係大臣)※ 必要に応じ総理ご出席

与党

日本経済再生本部本部長:総理大臣

産業競争力会議議長:総理大臣

幹事会

議 長:加藤副長官構成員:内閣官房副長官補(内政・外政)関係省庁次官・局長級(外務・財務・農水・経産他)

連携

連携

TPP政府対策本部本部長:甘利経済再生担当大臣

首席交渉官国内調整総括官

交渉チーム分野別チーム

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[参考]TPP交渉参加国からの主な輸入品目(2014年)

国名 1位 2位 3位 4位 5位

米国とうもろこし

3,443豚肉

1,557大豆

1,220牛肉

1,220小麦

1,061

カナダ菜種

1,256製材・加工材

850豚肉

820小麦

673大豆

301

メキシコ豚肉

360生鮮・乾燥果実

221かつお・まぐろ類

88生鮮野菜

86牛肉

65

ペルー魚粉

126魚油

18いか

16冷凍果実

14生鮮野菜

12

チリさけ・ます

1186木材チップ

464アルコール飲料

204豚肉

146製材・加工材

119

豪州牛肉

1,565木材チップ

502ナチュラルチーズ

373小麦

334大麦

201

NZナチュラルチーズ

274生鮮・乾燥果実

235繊維板

149牛肉

145脱脂粉乳

95

ベトナムえび

473木材チップ

449えび調製品

262コーヒー豆

175いか

51

マレーシア合板

880パーム油

458カカオ脂

96製材・加工材

94切花

93

シンガポールたばこ

77加糖調製品食料品

76カカオ脂

12ココア調製品

11チョコレート菓子

(単位:億円)

出典:財務省『貿易統計』※ブルネイからの主な輸入品目としてえび(1.1億円)がある。34

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4.WTO農業交渉について

35

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○ 1995年にスイス・ジュネーブに設立された、国際貿易に関するルールを取り扱う唯一の包括的な国際機関

○ 2015年6月現在、161カ国・地域が加盟

○ 主な業務は、(1)世界共通の貿易ルールづくりのための交渉(2)各加盟国による施策のWTO協定への整合性のモニタリング(3)貿易に関する紛争解決

○ WTOにおける貿易ルールづくりの合意はコンセンサス方式

(一つの加盟国でも反対すれば、残りの全ての国が賛成してもWTOとして決定は下せない)

WTO(世界貿易機関 World Trade Organization)とは

36

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○ 「ラウンド」とは、全ての加盟国が参加して行われる貿易自由化交渉

○ ウルグアイ・ラウンドでは、初めて本格的な農業分野のルールを策定

○ WTO体制(1995年設立)の下で初めて開始されたのがドーハ・ラウンド

ラウンドとは(GATT~WTO)

37

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主な交渉分野

農 業 関税・国内補助金の削減、輸出補助金の撤廃等に関する交渉

NAMA(非農産品市場

アクセス)鉱工業品及び林水産品の関税・非関税障壁の削減等に関する交渉

ルールアンチ・ダンピング及び補助金(漁業補助金を含む)及び地域貿易協定についてのルールに関する交渉

サービスサービスの市場アクセス(外資規制等)、国内規制(免許制等)、サービス分野におけるルール(セーフガード等)に関する交渉

TRIPS(知的財産権)

医薬品特許、生物多様性条約との関係、地理的表示(GI)等を議論

開 発 途上国に対する「特別かつ異なる待遇」(S&D)の検討等

貿易円滑化税関手続の透明性・予見可能性・公平性の向上、簡素化・迅速化の促進を目的とする交渉

環 境 環境物品の関税等の削減・撤廃等

ドーハ・ラウンドの交渉分野

(下線は農林水産関係分野)

38

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WTOドーハ・ラウンドの流れ(農業交渉を中心に)

04年7月

01年11月12月

00年3月

枠組み合意

ドーハ閣僚会議

日本提案

農業交渉開始

議長がモダリティ案を提示

(08年12月)

15年7月末までに

作業計画を作成

(「多様な農業の共存」を主張)

(ラウンド立上げ)

(モダリティ案に合意できず)

13年12月

(農業等部分合意)

第9回閣僚会議(バリ)

15年12月

閣僚会合(開催されず)

第10回閣僚会議(ナイロビ)08年

12月

(ドーハ・ラウンド妥結を目指す)

05年12月

(輸出補助金撤廃等を決定)

香港閣僚会議

閣僚会合

08年7月

(モダリティ合意決裂)

39

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WTO 基本的な交渉の流れ

① 枠組み交渉

関税削減方式など、

モダリティ(各国共通

ルール)の前提となる

考え方を設定

① 枠組み交渉

関税削減方式など、

モダリティ(各国共通

ルール)の前提となる

考え方を設定

② モダリティ交渉

関税削減率など、具

体的な数値や詳細な

要件が入った各国共

通ルールの確立

② モダリティ交渉

関税削減率など、具

体的な数値や詳細な

要件が入った各国共

通ルールの確立

③ 譲許表交渉

「品目Aの関税率は

X%とする」など、品目

ごとの具体的な約束

を決定

③ 譲許表交渉

「品目Aの関税率は

X%とする」など、品目

ごとの具体的な約束

を決定

○ ドーハ・ラウンドは、①枠組み交渉 → ②モダリティ交渉 → ③譲許表交渉の3段階に分けて実施

○ 2004年7月に枠組みが決まって以来、11年間にわたり交渉を継続するも、いまだモダリティが決まっていない

40

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【輸入国】

【輸出国】

EU

【先進国】

【途上国】

米国

G20

インド

ブラジル

中国

カナダ

豪州

ケアンズ・グループ

G10

(食料輸入国グループ)

G33

インドネシア

(食料輸出国グループ)

農業交渉をめぐる主要国・グループの立場

日本

関税維持に関心 先進国に有利な措置(国内支持水準、高関税品目)を激しく非難 途上国向け

例外措置に関心

41

関税引下げに関心

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分 野 交渉の目的

Ⅰ 市場アクセス関税削減や関税割当(低関税輸入枠)の拡大等により、農産物の市場アクセス機会を改善

Ⅱ 国内支持 価格支持や貿易を歪曲する補助金を削減・抑制

Ⅲ 輸出競争 輸出補助金等への規律の強化

農業交渉の3分野

42

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5.グローバル・フードバリューチェーン戦略の推進について

43

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資料:ATカーニー社が推計した資料から農林水産省作成。2009年為替平均値 1ドル94.6円で換算

ATカーニー社の推計によれば、世界の食市場規模(日本市場を除く)は340兆円(2009年)から680兆円

(2020年)へ拡大

680兆円

340兆円

2009年 2020年

○ 世界の食市場規模(日本を除く)

1.世界の食市場規模

44

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● 世界の食市場が急速に拡大する中で、産学官連携で日本の「強み」を活かした生産から製造・加工、流通、消費に至るフードバリューチェーン構築のための戦略の検討を行うため、平成26年4月、食品関連企業、関係府省・機関、学識経験者で構成する「グローバル・フードバリューチェーン戦略検討会」を設置。

● 4回の会合を経て、平成26年6月6日に戦略をとりまとめ。

グローバル・フードバリューチェーン戦略検討会

○メンバー

【座長】 板垣東京農業大学教授【座長代理】 荒木国際開発ジャーナル社主幹【民間企業】 前川製作所、クボタ、丸紅、

川商フーズ、ハウス食品、吉野家、モスフードサービス、不二製油、イオン、国分、全農、日本通運、日本種苗協会、みずほ銀行

【地方自治体】 北海道庁【関係府省・機関】 内閣官房、外務省、財務省、

経産省、国交省、農水省、JICA、JETRO、JBIC、JIRCAS、NEXI、クールジャパン機構、A-FIVE、日本政策金融公庫

グローバル・フードバリューチェーン戦略検討会の審議経過

【平成26年】4月25日(金) 第1回検討会

・GFVC戦略検討会について・GFVC構築に向けた取組状況について

(農水省、JETRO、JICA、JIRCAS、板垣東京農業大教授)

5月15日(木) 第2回検討会・ GFVC構築に向けた取組状況について(みずほ銀行、ハウス食品、不二製油、前川製作所、丸紅、

日本種苗協会)

5月22日(木) 第3回検討会・GFVC構築に向けた取組状況について(イオン、クボタ、国分、全農、日本通運、NEXI、北海道庁)

5月30日(金) 第4回検討会・GFVC構築に向けた取組状況について(川商フーズ、モスフードサービス、吉野家、日本政策金融公庫)

・GFVC戦略について

6月6日(金) GFVC戦略とりまとめ

2.グローバル・フードバリューチェーン戦略検討会

45

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○ 食料・農業・農村基本計画(平成27 年3月31 日閣議決定)

第3 食料、農業及び農村に関し総合的かつ計画的に講ずべき施策

1.食料の安定供給の確保に関する施策

(4)グローバルマーケットの戦略的な開拓

今後成長が見込まれる世界の食関連市場の獲得に向けて、成長著しいアジア諸国のみならず、より購買力の高い人口を多く擁する欧米の大市場も重視しつつ、日本の農林水産物・食品の輸出や、食品産業のグローバル展開を促進する。また、知的財産を戦略的に創造・活用・保護する取組を促進する。① 官民一体となった農林水産物・食品の輸出促進

イ 輸出阻害要因の解消等による輸出環境の整備

(前略)途上国等において、官民連携によるフードバリューチェーンの構築を図るため、平成26年6月に策定した「グローバル・フードバリューチェーン戦略」に基づき、我が国の食品産業の海外展開等を通じたコールドチェーン(低温流通体系)、流通販売網等の整備を推進する。

② 食品産業のグローバル展開食品産業が持続的に発展していくためには、成長著しいアジアなど世界の食関連市場も取り込んでいくことにより、その事業基盤を拡大、強化していくことが

重要な戦略の一つである。このため、日本食や日本の食文化の海外への普及を図る取組とも連携しつつ、食品産業の海外展開を促進するための環境整備を推進する。

具体的には、「グローバル・フードバリューチェーン戦略」に基づき、二国間の政策対話や経済連携等を活用し、食品安全や動植物検疫関連の規格や基準、知的財産権保護等の規制や制度などのビジネス投資環境の整備を推進するとともに、官民連携によるフードバリューチェーンの構築を図る。

あわせて、農産物や食品に関する国際規格や基準について、我が国の実態を適切に反映させるため、その規格や基準の策定に至る議論に積極的に参加する。

主要国においてHACCP の義務化が進展する中、我が国の食品産業事業者の国際的な取引における競争力を確保し、消費者に対してより安全な食品を供給するため、事業者によるHACCP に基づく自主的な衛生管理等の普及を図るとともに、海外からその取組が評価される環境を整える必要がある。また、我が国の事業者にとって言語やコスト等の面でも取り組みやすい規格や認証の仕組みが求められている。このため、HACCP に関する研修の実施など我が国におけるHACCP 普及のための支援体制の充実を図るとともに、日本発の国際的に通用する、HACCP をベースとする食品安全管理に関する規格や認証の仕組みの構築と、その国際規格化に向けた取組について、官民が連携して推進する。あわせて、事業者における、HACCP などの食品安全に関する知識を有する人材や国際的な基準の策定等の過程に参画できる人材の育成と、こうした規格や認証の仕組み等の海外への積極的な発信等を推進する。

海外展開を目指す食品産業事業者について、事業検討段階から現地法人の立ち上げまで一貫してサポートする体制の充実を図る。加えて、海外進出の際に一定の知識と技術を有する現地人材を確保するため、アセアン各国の大学等と連携し、食品加工・流通等に関する教育を行う取組を推進する。

(5)様々なリスクに対応した総合的な食料安全保障の確立② 海外や国内におけるリスクへの対応

食料の安定供給に関するリスクの定期的な分析、評価の結果を踏まえ、平素から、食料供給への影響を軽減するための対応策を以下のとおり検討し、実施する。

ウ 国際協力の新展開「世界の食料安全保障」と途上国の経済成長等に貢献するため、新たな途上国支援の仕組みとして官民連携によるフードバリューチェーンの構築を推進する。

具体的には、二国間政策対話等を活用し、民間投資と連携した協力を行う。その際、現地の理解を得る等の観点から、平成26年10月に世界食料安全保障委員会(Committee on World Food Security)で採択された「農業及びフードシステムにおける責任ある投資のための原則」に沿って進める。(以下略)

3.フードバリューチェーン構築の政策上の位置付け

46

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○ インフラシステム輸出戦略(平成25年5月17 日経協インフラ戦略会議決定、平成27年6月2日改訂)

Ⅴ 具体的施策

1.国内外の需要を取り込むための輸出促進、地産地消、食育等の推進

① FBI戦略による食文化・食産業のグローバル展開

「国別・品目別輸出戦略」に沿って、PDCAサイクルを徹底しながら、 FBI

戦略による食文化・食産業のグローバル展開を推進

(Made BY Japan)

・ グローバル・フードバリューチェーン戦略に基づき、日本の食産業の海外展

開と経済協力の連携等によるフードバリューチェーン構築を推進

(Made In Japan)

・ グローバル・フードバリューチェーン戦略に基づき、コールドチェーン、流通

販売網等の輸出環境を整備

第2章 具体的施策

4.新たなフロンティアとなるインフラ分野への進出支援

(2)農業・食品分野

・ グローバル・フードバリューチェーン戦略に基づき、官民が連携し、日本の「強み」を活かしたフードバリューチェーン構築を推進

・ 途上国の大学の寄付講座の開設、専門家派遣等を通じた日本の食産業の海外展開を支える人材を育成

・ 地域別取組方針にフードバリューチェーン構築を位置付け(アセアン、インド、中東、ロシア、中南米、アフリカ)

○ 農林水産業・地域の活力創造プラン(平成25年12月10日官邸本部決定、平成26年6月24日改訂)

○ 経済財政運営と改革の基本方針2015(平成27年6月30日閣議決定)

第2章 経済の好循環の拡大と中長期の発展に向けた重点課題

1.我が国の潜在力の強化と未来社会を見据えた改革

[1]「稼ぐ力」の強化に向けた事業環境の整備と成長市場の創造

(農林水産業)攻めの農林水産業を展開し、農林水産業を成長産業にするととも

に、美しく伝統ある農山漁村を次世代に継承していく。こうした基本的な考え方の

下、「農林水産業・地域の活力創造プラン」および「食料・農業・農村基本計画」に

基づく施策を着実に実施する。

イノベーションによる農業の成長産業化の推進、食の安全の確保、輸出拡大と

食品産業のグローバル展開、6次産業化の戦略的推進、担い手への農地集積・

集約化のため農地中間管理機構の取組の強化、法人経営、新規就農者、企業

など多様な担い手の育成・確保、生産基盤の整備等により、畜産・酪農を含む農

業の競争力強化を進める。

○ 「日本再興戦略」改訂2015(平成27年6月30日閣議決定)

第二.3つのアクションプラン

二.戦略市場創造プラン

テーマ4-①世界に冠たる高品質な農林水産物・食品を生み出す豊か な

農山漁村社会

・我が国農産物の食品安全性の向上や食産業の競争力強化のため、国際的な

規格づくりとして、我が国発の輸出用GAPについて本年度中に規格を策定し、

2017年度に規格の承認申請を行うとともに、HACCPをベースとする食品安全管

理に関する規格や認証の仕組みの構築を本年度中に官民連携で目指す。食

産業の海外展開を推進するため、新たに先進国も含む幅広い地域を対象に

フードバリューチェーンの構築を図る。

三.国際展開戦略

インフラ輸出については、「インフラシステム輸出戦略」平成27年度改訂版に

示されたさらなる取組を迅速かつ着実に実施し、受注目標の達成を図っていく。

47

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4.フードバリューチェーンの構築

フードバリューチェーン~産地のこだわりを消費者につなげていくこと~

生産 消費製造・加工 流通

●園芸作物産地●農業機械・種苗●農業インフラ(灌漑等)

●コールドチェーン●低温物流センター

●日系コンビニ、スーパー、百貨店

●和食レストラン

●食品加工団地●食品製造設備

日本の食産業の海外展開 経済協力の戦略的活用 日本食の輸出促進

<日本の食産業の「強み」>

①ユネスコ無形文化遺産の日本食を基盤とした産業展開

②高品質コールドチェーン③高度な農業生産・食品製造・流

通システム(ICT、省エネ・環境技術、植物工場等)

④先進性・利便性の高い日本型食品流通システム(POS、コンビニ、モール等)

○園芸作物産地の育成

○高性能農業機械の導入

○農業インフラの整備(灌漑施設等)

○人材育成

○農業生産・食品の規格・基準等制度の構築

○現地日系企業向けに日本食材を輸出(食品工場、和食レストラン、スーパー、コンビニ等)

○輸出市場でのコールドチェーン等のインフラ整備

○現地日系企業を通じたマーケットイン型の輸出体制の構築

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○ 世界の食市場が急速に拡大する中で、産学官連携で日本の『強み』を活かした農業生産から製造・加工、流通、消費に至るフードバリューチェーンの構築を推進。

○ これにより、①我が国食産業の海外展開と成長、②食のインフラ輸出と日本食の輸出環境の整備、③経済協力との連携による途上国の経済成長、を推進。

○ 本戦略の推進により、2020年度の我が国食産業の海外売上高約5兆円を目指す(2010年度:約2.5兆円)。

(2)ねらい

○ フードバリューチェーンの構築とは、農林水産物の生産から製造・加工、流通、消費に至る各段階の付加価値をつなぐことにより、食を基軸とする付加価値の連鎖をつくること、即ち、“産地の「こだわり」を消費者につなげていくこと“。

○ これにより、フードバリューチェーン全体でより大きな付加価値を生み出し、バリューチェーンを構成する生産者、製造業者、流通業者、消費者により大きな付加価値をもたらすようにしていくこと。

(1)フードバリューチェーンの構築とは

5.グローバル・フードバリューチェーン戦略の概要~産官学連携による“Made WITH Japan”の推進~

※ 「グローバル・フードバリューチェーン」戦略 参考資料より。戦略本文につきましては、http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/food_value_chain/about.html にてご参照いただけます(ダウンロード可能)。 49

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●産学官連携による戦略的対応(①食のバリューチェーンをつなぐ、②地域ごとの諸課題に連携対応、③ジャパン・ブランドの構築と売り込み、 ④食のインフラ輸出の推進 )

●二国間政策対話、官民協議会等の枠組み構築 ●経済協力の戦略的活用●コールドチェーン等の食のインフラ整備 ●ビジネス投資環境の整備 ●情報収集体制の強化●人材の育成 ●技術開発の推進 ●資金調達の円滑化

(3)基本戦略

民間企業の海外進出のニーズが高く、官民連携が有効な地域のモデルとなる取組を重点的に推進。

(4)地域別戦略

①東西・南部の経済回廊等の物流ネットワークとの連携、②食品加工団地、コールドチェーン等の整備、③マレーシア等を拠点とするハラール食品の生産・流通販売網の整備等によるFVCの構築、④経済連携等を通じたビジネス投資環境の整備

沿海・内陸の大都市をターゲットとした高品質食品のFVCの構築

灌漑、農業機械導入、食品加工団地、コールドチェーン等の整備等によるFVCの構築

①乾燥地農業生産、ICT、植物工場等の先進技術の導入、②ドバイ等を拠点とするハラール食品の生産・流通販売網の整備等によるFVCの構築

中間層をターゲットとした健康・高品質食品及び養殖水産物のFVCの構築

TICADと民間投資の連携による農業生産の増大や6次産業化等によるFVCの構築

寒冷地農業生産、ICT、植物工場等の先進技術の導入等によるFVCの構築

アセアン 中国 インド

中東 中南米 アフリカ ロシア・中央アジア

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6.グローバル・フードバリューチェーン推進官民協議会

平成26年6月に策定されたグローバル・フードバリューチェーン戦略を指針として、産学官が連携し、今後急速に拡大する世界の食市場を獲得し、日本の食産業の海外展開等によるフードバリューチェーンの構築を推進するため、グローバル・フードバリューチェーン推進官民協議会を設置 (平成26年6月20日設置:事務局は、農林水産省大臣官房国際政策課・国際協力課)。

1 趣旨

(1) 民間企業 166

(2) 関係機関・団体 33

(3) 学識経験者 8

(4) 地方自治体 19

(5) 関係府省 7

2 メンバー (233企業・団体等) ※平成27年7月7日現在

・重点国・地域の取組を強化するための「国別・地域別部会」:「アセアン・豪州部会」、「インド部会」を設置・各国に共通する取組の可能性を探るための「分野別研究会」:「IT農業」、「ハラール」、「コールドチェーン」を実施

3 活動

1. フードバリューチェーン構築に関する情報の収集・分析・共有・発信2. フードバリューチェーン構築に関する調査、ミッション派遣、案件形成等に係る連携・調整3. フードバリューチェーンの構築に係るビジネス投資環境の整備の推進 等

51

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2014年6月6日に「グローバル・フードバリューチェーン戦略」をとりまとめ。

同年6月20日、本戦略を指針として、産学官が一体となり、かつ総力を挙げて、厳しい国際競争を勝ち抜き、日本の食産業の海外展開等によるフードバリューチェーンの構築を推進するため、「グローバル・フードバリューチェーン推進官民協議会」を設置。立上げ時、76企業・団体が参加。

2014年度は協議会を3回、地域別部会(アセアン)を2回、分野別研究会(IT農業、ハラール、コールドチェーン)を3回開催。

2015年度は、7月1日現在、協議会を1回、地域別部会を2回(インド、アセアン・豪州部会)開催。

2015年7月7日現在、233企業・団体がグローバル・フードバリューチェーン推進官民協議会に参加。

<2014年度の会議開催状況一覧>

(参考)これまでの取組み(参考)これまでの取組み

<2015年の会議開催状況一覧>

6月20日 第1回グローバル・フードバリューチェーン推進官民協議会

7月31日 第1回アセアン部会

10月17日第2回グローバル・フードバリューチェーン推進官民協議会第1回分野別研究会(テーマ:IT農業)

11月27日 第2回アセアン部会1月21日 第2回分野別研究会(テーマ:ハラール)

3月18日第3回グローバル・フードバリューチェーン推進官民協議会第3回分野別研究会(テーマ:コールドチェーン)

5月15日 第1回インド部会

6月22日第1回グローバル・フードバリューチェーン推進官民協議会

第1回アセアン・豪州部会

<2015年度の会議開催状況一覧>

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挨拶: 農林水産省大臣官房国際部長 大澤 誠

来賓挨拶在日オーストラリア大使館商務担当公使 レオニー・モルドゥーン

豪州とアセアンにおけるフードバリューチェーンの構築について

農林水産省大臣官房国際部参事官 仙台 光仁

豪州関係情報提供・ 東アジア経済連携時代におけるアセアン・豪州における日系企業の海外展開について

独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)企画部海外地域戦略主幹(ASEAN) 助川 成也

・ 豪州農業・食品分野における取組み~日豪官民協働促進に向けて株式会社三井住友銀行豪州支配人支店長 田沼 幹夫

・ アジアの安定的な成長のためオーストラリア北部地域を起点とした日本の農業、食品加工、物流、小売に関わる技術/ノウハウを活用した事業の開発

株式会社野村総合研究所上級コンサルタント 矢島 大輔

・ 日本郵便の海外展開について日本郵便株式会社ソリューション企画部部長 小池 信也

※ これらの情報提供のなかで、田沼・(株)三井住友銀行豪州支配人支店長からは、本協議会での議論や豪州政府・財界への働きかけ等を通じて、日豪官民共同で農業・食料分野におけるアジア市場の開拓、バリューチェーンの構築とビジネスチャンスの創出を可能としたいとの発言があった。

また、矢島・(株)野村総合研究所上級コンサルタントからは、日本の優れた農業技術(個体管理、土壌管理、水管理)を豪州で使うことで、豪州だけでできない発展に貢献しうるとの発言があった。

(参考)地域別部会の例~第1回アセアン・豪州部会(2015年6月22日)①~

(参考)地域別部会の例~第1回アセアン・豪州部会(2015年6月22日)①~

53

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アセアン関係情報提供・ アセアン各国におけるFVC構築の取組状況及び今後の方向について

農林水産省大臣官房国際協力課協力官 新名 清志

・ 我が国の食品関連産業の海外展開をめぐる情勢及び海外連絡協議会・AFC(Asian Food Community)について

農林水産省 食料産業局輸出促進グループ課長補佐 阿南 小有里

・ 食品安全マネジメントに関する規格・認証スキームの構築と東南アジアとの連携に向けて農林水産省 食料産業局企画課 食品企業行動室長 横田 美香

・ 日越農業協力対話におけるJICAの取組-ベトナム・ラムドン省における農林水産業・食関連産業集積化にかかる調査報告-

独立行政法人国際協力機構(JICA)東南アジア大洋州部東南アジア三課長 作道 俊介株式会社ドリームインキュベータ ベトナム法人 宮内 慎

※ これらの情報提供のなかで、作道・JICA東南アジア・大洋州部東南アジア第三課長より、2014年6月から開始された「日越農業協力対話」での合意に基づき、日越双方の官民の参画を念頭に、FVCの構築に向けた課題や具体的な行動計画を検討することを目的に調査事業を実施しているとの説明があった。

また、宮内・(株)ドリームインキュベータベトナム法人取締役より、ラムドン省における農業分野に関する現状と課題、今後の戦略、また、農業分野におけるラムドン省の高いポテンシャルについて説明があった。

意見交換(下記参照)

太平洋島嶼国への投資およびミッション派遣について国際機関太平洋諸島センター 小川 和美

閉会

(参考)地域別部会の例~第1回アセアン・豪州部会(2015年6月22日)②~

(参考)地域別部会の例~第1回アセアン・豪州部会(2015年6月22日)②~

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7.日越農業協力対話第1回ハイレベル会合 ①7.日越農業協力対話第1回ハイレベル会合 ①

○ 平成26年3月のサン・ベトナム国家主席訪日の際の日越農相間の基本合意に基づき、ハノイにて日越農業協力対話第1回ハイレベル会合を開催(平成26年6月26日)。日本企業(11社)、JICA、JETRO、在ベトナム日本国大使館の代表も出席。

○ 今後、日越の官民が連携し、平成27年8月頃の第2回ハイレベル会合での承認を目指し、ベトナムにおけるフードバリューチェーン構築のための中長期ビジョン(モデル地域設定、計画期間5年)を策定することを確認。

日本側:林農林水産大臣(共同議長)、深田駐ベトナム日本国大使、JICA、JETRO、日本企業等(※)の代表

※ エースコック、クールジャパン機構、ドリームインキュベータ、アイティ・コミュニケーションズ、井関農機、クボタ、前川製作所、日本農業機械工業会、三井物産、サラダボウル、双日

ベトナム側:ファット農業・農村開発大臣(共同議長)、農業農村開発政策戦略研究所長、商工省等関係省庁副大臣、各地方省人民委員会長等

2 出席者

1 概要

55

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ハノイ市(流通、消費)

ゲアン省(生産)

ホーチミン市(流通、消費)

日越農業協力対話第1回ハイレベル会合 ②日越農業協力対話第1回ハイレベル会合 ②

課題 モデル地域 取組の概要

(生産)

生産性・付加価値 の向上

ゲアン省

○ 灌漑整備、参加型水管

理、農薬・肥料使用適正化、

農民組織強化

(加工・製造)食品加工・商品開発

ラムドン省

○ 食品加工・観光などを含めた6次産業化の促進

(流通、消費)

流通改善・コールドチェーン

ハノイ市・ホーチミン市

○ 消費者ニーズへの対応、鮮度保持

○ 民間投資によるコールドチェーン整備

○ ベトナム農業(人口の約7割、GDPの約2割)の発展は、農村地域の生活向上と国土の均衡ある発展に不可欠

○ 農業の発展には、フードバリューチェーン(生産、加工・製造、流通、消費)の構築が重要○ 南北に長く、農業が多様であるため、地域ごとの課題に応じた対策が必要

ラムドン省(加工・製造)

○ 日越の官民が連携し、フードバリューチェーンの各段階の課題に重点的に取り組むモデル地域を設定し、今後5年間の中長期ビジョンを策定

○ 農業分野では、初めての取組。ベトナム側の評価も高く、他の途上国のモデルとなり得る

※ 中長期ビジョンの中で新たなモデル地域の設定が可能 56

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8.日ミャンマー農林水産業・食品協力対話第1回ハイレベル会合8.日ミャンマー農林水産業・食品協力対話第1回ハイレベル会合

○ ネーピードーにて、日ミャンマー農林水産業・食品協力対話第1回ハイレベル会合を開催(平成26年9月23日)。日本企業(14社)、 JICA、JETRO、在ミャンマー日本国大使館の

代表も出席。○ 今後、日本とミャンマーの官民が連携し、ミャンマーにお

けるフードバリューチェーンの構築のための具体的な方策の検討を開始することを確認。

2 出席者

1 概要

日本側:西川農林水産大臣(共同議長)、樋口駐ミャンマー日本国大使、JICA、JETRO、日本の農業・食品関係企業等(※)の代表

※ 井関農機、クボタ、クールジャパン機構、国分、サタケ、損害保険ジャパン日本興亜、日本工営、日本通運、日本農業機械工業会、前川製作所、丸紅、三井住友銀行、三井物産、ヤンマー

ミャンマー側:ミン・フライン農業灌漑大臣(共同議長)、ウィン・ミン商業大臣、商工会連盟、米穀連盟等 57

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第17回ASEAN +3(日中韓) 首脳会議 平成26年11月13日(於:ミャンマー ・ネーピードー)

第17回日ASEAN首脳会議 平成26年11月12日(於:ミャンマー・ ネーピードー)ASEAN

日ミャンマー農林水産業・食品協力対話第1回ハイレベル会合ミャンマー

日越農業協力対話第1回ハイレベル会合越

日・ASEAN特別首脳会議(平成25年12月14日 東京)において合意された、日・ASEAN友好協力に関するビジョン・ステートメント 実施計画に、『生産から消費に至るフードバリューチェーンに関する官民連携の協力を促進』を明記。

○ 安倍総理から、平成25年12月の日ASEAN特別首脳会議で採択された「日ASEAN友好協力に関するビジョン・ステートメント」及び「共同声明」を着実に実施に移し、更に協力を深めていきたい旨述べ、同会議の議長声明に「本ステートメント」及び「共同声明」に基づいた協力の推進を歓迎する旨明記。

ASEAN+3

○ 安倍総理から、「フードバリューチェーン構築」のための官民連携協力の強化に言及。

(平成26年9月23日)→P54参照

(平成26年6月26日)→P52,53参照

第14回ASEAN +3 農林大臣会合(第14回AMAF+3会合)ASEAN+3

○ 共同宣言に以下が記述。→ 我々は、ASEANのいくつかの国におけるフードバリューチェーン構築のための官民連携協力についての

日本の支援に留意。我々はこのイニシアティブを地域レベルに拡大することを奨励。

第36回ASEAN農林大臣会合(第36回AMAF会合)ASEAN

○ 西川大臣のプレゼンに対し各国大臣より支持が表明され、共同宣言に以下が記述。→ 我々は、日ASEANフードバリューチェーン構築のための官民連携協力に関するイニシアティブを支持。→ 有識者会議の設置と「グローバル・フードバリューチェーン戦略」の活動の実施に留意。

9.日・アセアン間でのフードバリューチェーン構築に関する動き9.日・アセアン間でのフードバリューチェーン構築に関する動き

58

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10.第1回日伯農業・食料対話10.第1回日伯農業・食料対話

○ 平成26年8月の安倍総理のブラジル訪問の際に、農業・食料分野において両国関係を深化させるための官民合同の対話開催を決定したことに基づき、サンパウロにて、第1回日伯農業・食料対話を開催(平成26年12月8日)。在ブラジル日系農業・食品関係企業(26社)、JICA、JBIC、JETRO、在ブラジル日本国大使館の代表も出席し、①伯農業・食品産業の発展、②両国貿易の活発化、③物流の改善について、官民で議論。

○ 今後、ブラジルにおけるフードバリューチェーン構築のための政府と民間セクターとの継続的な対話の場として本対話を原則年一回開催すること等に合意し、覚書に署名。

2 出席者

1 概要

日本側:針原農林水産審議官、梅田駐ブラジル日本国大使、JICA、JBIC、JETRO、在ブラジル日系農業・食品関係企業等(※)の代表

※ 三井物産(伯日本商工会議所会頭企業)、味の素、伊藤忠商事、NTTドコモ、カンポ(CAMPO)、キリンホールディングス、サカタのタネ、サタケ、サントリー、住友商事、双日、中央開発、東山農場、日清・味の素アリメントス、日本工営、日本通運、日本ハム、日立製作所、フルッタフルッタ、前川製作所、丸紅、三井住友銀行、三菱商事、三菱東京UFJ銀行、ヤクルト、ヤンマー

ブラジル側:ゲレル農務大臣、ジュンケイラ農務副大臣、ロドリゲス元農務大臣、トゥッハ元農務大臣等の政府関係者及び伯食肉協会等の民間企業の代表 59

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11.第1回日南アフリカ共和国農業政策対話11.第1回日南アフリカ共和国農業政策対話

○ 平成27年5月19日、プレトリアにて第1回日南アフリカ共和国農業政策対話を開催。在南アフリカ共和国日系農業・食品関係企業(10社)、JICA、JETRO、在南アフリカ共和国日本国大使館の代表も出席。南アフリカ共和国側は農林水産省及び貿易・産業省が出席。

○ 官民連携のフードバリューチェーンの構築のために取組や、南アフリカ共和国小自作農の雇用促進・所得向上等について意見交換。

○ 今後、両国間で、フードバリューチェーン構築等について定期的に対話を継続することを確認。

2 出席者

1 概要

日本側:田野井農林水産大臣官房審議官(国際)、JICA、JETRO、在南アフリカ共和国日系農業・食品関係企業等(※)の代表、在南アフリカ共和国大使館公使参事官

※ サカタのタネ、前川製作所、ガビロン、丸紅、豊田通商、住友商事、三井物産、三菱商事、伊藤忠商事、阪和興業 (現地法人を含む)

南アフリカ共和国側:アレキサンダー農林水産省貿易・市場担当局長、スピアーズ貿易・産業省農産加工課長 他

60

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○ グローバルマーケットの戦略的な開拓に向けて、二国間政策対話や経済連携等を活用し、開発途上国や新興国市場のみならず、先進国も含むより幅広い地域を対象に、ビジネス投資環境の整備を推進するとともに、官民連携によるフードバリューチェーンの構築を通じて日本の食産業の海外展開を推進

日緬農林水産業・食品協力対話第1回ハイレベル会合

(H26.9/農林水産大臣、企業等14社参加)

第1回日伯農業・食料対話(H26.12/農林水産審議官、企業等27社参加)

官民合同の政策対話を各国との間で実施

政策対話の対象国を拡大、新たに官民ミッション派遣等を実施し、我が国食産業の海外展開を加速

取組み②:産学官の連携強化

多様な食関連企業の参画による官民協議会を実施

グローバル・フードバリューチェーン推進官民協議会

平成27年7月7日現在、233社・機関等が参画平成26年度に、協議会3回に加え、アセアン部会2回、分野別研究会3回を開催。平成27年度に、協議会1回に加え、

インド部会、アセアン・豪州部会を開催。

アセアン・豪州部会、インド部会等地域別、分野別の取組を強化。各国の生産・流通・投資環境の調査や、民間の事業化調査等を通じ、我が国食産業の海外展開を加速

戦略的にグローバルマーケットを開拓するため、アジアなどの新興国のみならず、アセアンとの結びつきが強い豪州など、二国間政策対話・経済連携等を活用しうる国を検討の対象に加え、先進国も含むより幅広い地域を対象に、ビジネス投資環境の整備を推進、官民連携によるフードバリューチェーン構築を推進。

民間投資と連携した国際協力を行うことで、世界の食料安全保障と途上国の経済成長等にも貢献。

今後の取組方向

12.グローバルマーケットの戦略的な開拓に向けて(今後の取組み)

日越農業協力対話第1回ハイレベル会合

(H26.6/農林水産大臣、企業等11社参加)

取組み①:新興国との政策対話

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6.国際協力について

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●世界の栄養不足人口の推移

栄養不足とは:食事エネルギー必要量(軽度の身体活動を行うために必要な食事エネルギー量)の充足のために十分な食料摂取ができない状況が、最低1年間続く状態。

地域別の栄養不足人口(2014-16年)

資料:FAO, IFAD and WFP 「The State of Food Insecurity in the World 2015」

○ FAOによると、世界の栄養不足人口は2014-2016年には約7.95億人と推計。1990-92年に比べて約2.2億人減少したものの、依然として高水準。このうち98%が開発途上国に集中。

○ 開発途上国における貧困削減や持続的成長のためには、農林水産分野の協力が重要。

(億人)

(年)備考:※に関し、先進国地域の栄養不足人口比率は「5%未満」とされている。資料:FAO, IFAD and WFP 「The State of Food Insecurity in the World 2015」

地域栄養不足人口(億人)

各地域の人口比率(%)

アフリカ 2.33 20.0アジア 5.12 12.1

ラテンアメリカ・カリブ海 0.34 5.5オセアニア 0.01 14.2

途上国 7.80 12.9先進国 0.15 ※

世 界 7.95 10.9

世界の栄養不足人口の推移

63

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

1990-92 2000-02 2005-07 2010-12 2014-16

10.19.3 9.4

8.2 7.95

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○ 2008年の世界的な食料価格の高騰を契機に、食料安全保障について国際社会が協調して取り組む機運が高まり、G8・G20サミット、APEC、FAO等の様々な国際的枠組の中で議論が活発化。農業生産の増大及び生産性の向上の議論に加え、最近ではフードバリューチェーンの構築を通じた農家・農村の所得向上と食品ロス削減の必要性が認識。

●食料安全保障問題に関する最近の主な国際的議論

○ 農業の持続的な発展、投資、貿易及び市場の円滑化という目標に取り組むことに合意○ 具体的な行動を明示した「食料安全保障に関するAPEC行動計画」 (アジア太平洋情報プラットフォーム(APIP)の新設等)を承認

2010年10月 APEC第1回食料安全保障担当大臣会合 新潟宣言・行動計画(日本、新潟)

○ 「食料価格乱高下及び農業に関する行動計画」に合意○ 世界各地の条件の多様性を考慮に入れた持続可能な農業生産の拡大と生産性の向上の必要性を確認○ 国際小麦改良研究イニシアティブ、農業市場情報システム(AMIS)、迅速対応フォーラムを立ち上げ

2011年 6月 G20農業大臣会合 行動計画(フランス、パリ)

2012年 6月 G20ロスカボスサミット 首脳宣言(メキシコ、ロスカボス)

○ 農業の多様性を考慮しつつ、持続的な農業生産の増大及び生産性の向上の重要性を確認○ 情報共有の重要性を認識し、AMISの進展を歓迎○ 新たな輸出規制をとらないとの約束を更新

○ 今般の食料価格の高騰を受け、FAO加盟国の閣僚級で、食料価格の乱高下への対応策について議論○ 農業生産の増大及び生産性の向上、市場の透明性向上など、国際社会が協調して取り組むことの重要性を確認

2012年10月 食料価格乱高下に関するFAO閣僚級会合(イタリア、ローマ)

64

○ 農業の競争力強化、食料貿易や付加価値向上による農業者・漁業者の利益向上、農業生産性の増加及び食料供給の効率向上のためのフードバリューチェーン構築の重要性を認識

○ ポストハーベスト・ロス及び食品廃棄の削減に向けた取組を慫慂○ コールドチェーン技術の交換・協力の強化の重要性を認識

2008年7月 G8 北海道洞爺湖サミット 世界の食料安全保障に関するG8首脳声明

○ 世界の食料生産を促進し、農業への投資を増加させることの重要性を完全に認識

○ 農業分野の援助及び投資の全体的な減少の反転の必要性

○ フードバリューチェーン全体を考慮した包括的なフードシステム・アプローチの必要性を確認○ 食品ロス・廃棄が経済面、環境面等で重大な問題であることを強調し、同問題の取組強化を慫慂○ 「食料安全保障/持続可能なフードシステムに関するG20行動計画」を策定することに合意

2014年9月 APEC第3回食料安全保障担当大臣会合 北京宣言(中国、北京)

2015年5月 G20農業大臣会合 閣僚コミュニケ(トルコ、イスタンブール)

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●開発協力大綱の決定●開発協力大綱の決定

1992年 政府開発援助(ODA)大綱の閣議決定 ⇒ 2003年 改定の閣議決定2014年3月 岸田外務大臣から,ODA大綱の見直しを発表

“新しい時代を迎え,60年の歴史を積み重ねてきたODAも進化しなければなりません。そういったことから,ODA大綱を改定することを決定させていただきました。”

2015年2月 開発協力大綱の閣議決定

ODAが対峙する開発課題の多様化,複雑化,広範化⇒協力の地平の拡大(国内格差,持続可能性,ガバナンス,法の支配,中所得国の罠,脆弱性,卒業国の課題)

途上国の開発にとってのODA以外の資金・活動の役割増大⇒連携の必要性(民間セクター,NGO,OOF,PKO等との連携)

グローバル化⇒途上国と共に国際社会の平和,安定,繁栄を作っていく必要性増大

経緯

背景

平成27年2月外務省国際協力局

⇓ODA大綱⇓開発協力大綱

名称変更

⇒ 平和国家として,国際社会の平和,安定,繁栄に積極的に貢献平和国家として,非軍事的協力により世界に貢献(軍事的用途への使用を回避)人間の安全保障(人間一人ひとりに焦点を当て,その保護と能力強化)開発途上国と対等なパートナーとして協働

⇒ ポスト2015年開発アジェンダに向けて「質の高い成長」(包摂性,持続可能性,強靱性)と,それを通じた貧困撲滅

=経済成長の基礎(インフラ,人づくり等),脆弱性からの脱却(人間開発,社会開発)包摂性(格差是正,女性の能力強化,ガバナンス等),持続可能性(環境,気候変動等),強靱性(防災等)

開発の基盤としての普遍的価値の共有,平和・安全な社会の構築=法の支配,グッドガバナンス,基本的人権,民主化,平和構築,法執行機関の能力強化,テロ対策

特別な脆弱性を抱える卒業国,「中所得国の罠」への対応

触媒としての開発協力 ⇒ 民間セクター等との連携官民連携,自治体連携,NGO/市民社会との連携

多様な主体の開発への参画 ⇒ 包摂的で公正な開発を目指して女性の参画の促進,社会的弱者等あらゆる主体の開発への参画

開発協力大綱のポイント

日本の開発協力の理念を明確化

新しい時代の開発協力

触媒としての開発協力

多様な主体の開発への参画65

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○ 政府全体の方針に基づき、農林水産省では、各基本計画において、農林水産業への支援を通じた貧困削減や気候変動等地球規模課題への貢献を行うものとし、国際協力に対する取組を実施。

●開発途上国における稲作支援等食料の生産拡大・生産性向上への支援

●持続可能な農業を実現するための農業・農村開発を推進 等

●温室効果ガスの削減等の気候変動対策や持続可能な森林経営の推進

●アジア等における口蹄疫や鳥インフルエンザなどの越境性感染症対策

●適切な水産資源管理対策 等

農林水産省の国際的な取組

農林水産業への支援を通じた飢餓・貧困対策への貢献

気候変動等地球的規模の課題への対応

貧困削減や気候変動等地球的規模課題への貢献

食料・農業・農村基本計画

●官民連携によるフードバリューチェーン構築の推進

●飢餓・貧困対策や、気候変動、越境性感染症等の地球規模課題への対応

森林・林業基本計画

水産基本計画

●世界における持続可能な森林経営の推進

●違法伐採対策の推進

●海外漁場の維持・開発と国際協力の推進

農林水産省基本計画

開発協力大綱(平成4年閣議決定、平成15年改定の政府開発援助

(ODA)大綱を、平成27年2月、改名し改定。)

○平和国家として、国際社会の平和、安定、繁栄に積極的に貢献

○「質の高い成長」とそれを通じた貧困撲滅

○民間セクター等との連携○包摂的で公正な開発を目指す

(多様な主体の開発への参画)

途上国におけるバリューチェーンの構築支援

農林水産省における国際協力の方針

政府の方針

●農林水産省における国際協力の方針と体系

●質の高い成長とそれを通じた貧困撲滅→「フードバリューチェーンの構築を

含む農林水産業の育成」

●地球規模課題への取組を通じた持続可能で強靭な国際社会の構築→「食料安全保障及び栄養」→「森林、農地及び海洋における資

源の持続可能な利用」

重点課題(農林水産関係 抜粋)

●生産から加工・流通・消費に至るまでの体制の構築、民間との連携の推進

●食産業の担い手となる人材の育成 等

66

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●TICAD(アフリカ開発会議)について

TICAD I(1993年、於:東京) 冷戦が終結し,国際社会のアフリカに対する関心が薄れつつあった時期に開催。アフリカ開発に関する東京宣言を採択。将来のアフリカへの南々協力による支援などを明記。

アフリカの開発をテーマとし、1993年以降、日本政府が主導し、国連、国連開発計画(UNDP)、アフリカ連合委員会(AUC)及び世界銀行と共同で、5年ごとに首脳級会合を日本で開催。アフリカ諸国、国際機関、開発パートナー諸国、民間セクター及びNGO等が参加。

※(TICAD :Tokyo International Conference on African Development)テ ィ カ ッ ト ゙

TICADⅤ(2013年、於:横浜):「強固で持続可能な経済」、「包摂的で強靱な社会」、「平和と安定」を主要テーマに議論。横浜宣言

において「農業従事者を成長の主人公に」を戦略的方向性の柱の一つとして掲げ、具体的な取組を示す「横浜行動計画2013-2017」を採択し、農業及び食料安全保障を重視。

TICADVの横浜行動計画(農業分野の関連部分): (抜粋)・3.農業従事者を成長の主人公に

(1)農業:バリューチェーン整備、小農収入向上、民間投資促進、自然災害等に対する強靱性向上(2)食料安全保障、栄養:食料(特にコメ)の生産性向上

TICADⅣ(2008年、於:横浜): アフリカ開発の方針を示す「横浜宣言」を採択。農業分野については、重点分野のひとつである「成

長の加速化」の中で「農業開発」が明記された。また、10年間でサブサハラ・アフリカにおけるコメ生産倍増を目標とする「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD:Coalition for African Rice Development)」を発表。

TICAD I(1993年、於:東京) 冷戦が終結し,国際社会のアフリカに対する関心が薄れつつあった時期に開催。アフリカ開発に関する東京宣言を採択。将来のアフリカへの南々協力による支援などを明記。

TICAD Ⅱ(1998年、於:東京) 「アフリカの貧困削減と世界経済への統合」が基本テーマ。「社会開発(人口,貧困層支援等)」、「経済開発(民間セクター・農業開発等)」、「開発の基盤」の分野において、優先的政策等を明記した「東京行動計画」を採択。

TICAD Ⅲ(2003年、於:東京) 10周年を迎えるTICADプロセスがアフリカの開発に果たした政治上・開発上の役割を評価・検証するとともに、アフリカ開発のより一層の推進に向けたTICADプロセスの将来像につき議論。農業分野は、 「経済成長を通じた貧困削減:農業開発、民間

セクター開発、インフラストラクチャー」に位置づけられた。

次期のTICADⅥについて: アフリカ諸国からの要望等を踏まえて、次期TICADより、3年毎に、アフリカと日本の

交互開催とすることを検討。67

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(※2) JICA:国際協力機構 、AGRA : アフリカにおける緑の革命同盟、JIRCAS :国際農林水産業研究センター、AfricaRice :アフリカ稲センター 、 IRRI :国際稲研究所

●国際協力の例:アフリカにおけるコメ生産の倍増イニシアティブ

○ アフリカにおいてはコメの需要が増加しており、我が国の持つ稲作技術の普及等によりアフリカの食料生産増大・生産性の向上に貢献。

○ 2008年5月に横浜で開催されたTICADⅣにおいて、我が国は10年間でサブサハラ・アフリカにおけるコメ生産倍増を目標とする「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD:Coalition for African Rice Development)」を発表。目標達成に向けて取組んでいるところ。

支援の中心JICA, AGRA, JIRCAS,AfricaRice, IRRI等(※2)

連携

農水省の取組

研究開発、技術開発、人材育成、専門家派遣等

研究能力強化、品種改良・種子生産、農地開発・農業

用水確保、農業普及強化、収穫後処理改善 等

第1グループ(12カ国) ケニア、タンザニア等のコメの重要性が相対的に高い国

第2グループ(11カ国) ブルキナファソ等の 〃 低い国

(※1) 支援対象国(23カ国)の内訳

支援の内容

2,800万トン

1,400万トン

2,200万トン

支援の仕組み コメ生産倍増と自給率向上

1,400万トン (2008年*) 2,800万トン (2018年)

支援対象国 23カ国 (※1)

*:TICADⅣ開催年。コメ生産量は前年の統計値

(単位:千㌧)

点線:ベースラインと目標を結ぶ直線実線:実績

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