総説研究所年報...2.croton tigliumに含まれるホルボールエステル類の抗hiv...

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1 HIV 増殖阻害作用及び HIV プロテアーゼ阻害作用を指標としたエイズ治療薬開発の試み 服部征雄、馬 超美 1. はじめに ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus, HIV) により引き起こされるエイズ (acquired immunodeficiency syndrome, AIDS)はいまだ世界に蔓延しつつあり,ワクチンや特 効薬の開発が待ち望まれている疾病の一つである。これまでエイズ治療薬開発のために HIV ライフサイクルを遮断する物質の探索が世界中で数多く行なわれてきた。中でもウイルスのゲ ノム RNA DNA に逆転写する際に必須な逆転写酵素 (reverse transcriptase, RT)とウイルス 由来の前駆体蛋白質を切断し,成熟型ウイルスにするために必須なプロテアーゼ (protease, PR) の2種の酵素が主なターゲットとして検討されてきた。その結果,AZT (RT 阻害剤) saquinavirindinavir (PR 阻害剤)の様に臨床的に有効な薬物も開発された。これらの薬物を併 用すると血液中のウイルスは検出限界以下まで下がるが,少量のウイルスはまだ免疫細胞内に 静止状態で潜伏している。 1-3) HIV は高頻度に変異を起こすため,長期間構造の類似した薬物を 使用すると薬剤耐性が起こる可能性が高くなる。その上,これら薬剤を臨床的に使用すると顕 著な副作用が発現し,エイズ患者に長い期間服用し続けることは困難である。また,発展途上 国のエイズ患者にとって上記薬物は余りにも高価すぎて広く治療に用いられない現状でもある。 従って,新しいタイプまたは新しい作用メカニズムを有する安価なエイズ治療薬の開発が望ま れている。 この様な状況から我々は世界各地から伝統薬物を収集し, HIV-RT 阻害, HIV-PR 阻害,また, MT-4 細胞に感染させた HIV そのものの増殖を抑制する効果(HIV 作用)を指標として探索を 行ってきた。これまで約数百種以上の伝統薬物について検討し,その成果の一部は総説として 報告している。 4) 今回は最近の研究成果,特に伝統薬物から活性成分の同定,およびそれらを 基に創薬を目指した研究について述べる。 2.Croton tiglium に含まれるホルボールエステル類の抗 HIV 作用 5,6) HIV 活性は、HIV-1 MT-4 細胞に感染させた後,細胞懸濁液と検体溶液をマイクロプレー トに加え、5日後,細胞の状態を光学顕微鏡で観察し,阻害濃度(IC)を決定する方法で行った。 本法によりエジプト民間薬 92 種類についてスクリーニングを行ったところ Croton (C.) tiglium L.種子のメタノール及び水抽出エキスに効果が見られ,その 100%阻害濃度 (IC100 )はそれぞ 0.0252.0 μg/ml であった。 7) また,C. tiglium のメタノールエキスは巨細胞形成も強く阻 害した。 C. tiglium の種子(巴豆)は tigliane 型のホルボールエステルを数多く含むことが知ら

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1

HIV 増殖阻害作用及び HIV プロテアーゼ阻害作用を指標としたエイズ治療薬開発の試み

服部征雄、馬 超美

1. はじめに

ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus, HIV)により引き起こされるエイズ

(acquired immunodeficiency syndrome, AIDS)はいまだ世界に蔓延しつつあり,ワクチンや特

効薬の開発が待ち望まれている疾病の一つである。これまでエイズ治療薬開発のために HIVの

ライフサイクルを遮断する物質の探索が世界中で数多く行なわれてきた。中でもウイルスのゲ

ノム RNAを DNAに逆転写する際に必須な逆転写酵素 (reverse transcriptase, RT)とウイルス

由来の前駆体蛋白質を切断し,成熟型ウイルスにするために必須なプロテアーゼ (protease,

PR)の2種の酵素が主なターゲットとして検討されてきた。その結果,AZT (RT 阻害剤)や

saquinavir,indinavir (PR阻害剤)の様に臨床的に有効な薬物も開発された。これらの薬物を併

用すると血液中のウイルスは検出限界以下まで下がるが,少量のウイルスはまだ免疫細胞内に

静止状態で潜伏している。1-3) HIVは高頻度に変異を起こすため,長期間構造の類似した薬物を

使用すると薬剤耐性が起こる可能性が高くなる。その上,これら薬剤を臨床的に使用すると顕

著な副作用が発現し,エイズ患者に長い期間服用し続けることは困難である。また,発展途上

国のエイズ患者にとって上記薬物は余りにも高価すぎて広く治療に用いられない現状でもある。

従って,新しいタイプまたは新しい作用メカニズムを有する安価なエイズ治療薬の開発が望ま

れている。

この様な状況から我々は世界各地から伝統薬物を収集し,HIV-RT阻害,HIV-PR阻害,また,

MT-4 細胞に感染させた HIV そのものの増殖を抑制する効果(抗 HIV 作用)を指標として探索を

行ってきた。これまで約数百種以上の伝統薬物について検討し,その成果の一部は総説として

報告している。4) 今回は最近の研究成果,特に伝統薬物から活性成分の同定,およびそれらを

基に創薬を目指した研究について述べる。

2.Croton tigliumに含まれるホルボールエステル類の抗 HIV 作用 5,6)

抗 HIV活性は、HIV-1を MT-4細胞に感染させた後,細胞懸濁液と検体溶液をマイクロプレー

トに加え、5日後,細胞の状態を光学顕微鏡で観察し,阻害濃度(IC)を決定する方法で行った。

本法によりエジプト民間薬 92種類についてスクリーニングを行ったところ Croton (C.) tiglium

L.種子のメタノール及び水抽出エキスに効果が見られ,その 100%阻害濃度 (IC100値)はそれぞ

れ 0.025,2.0 µg/mlであった。7) また,C. tigliumのメタノールエキスは巨細胞形成も強く阻

害した。C. tigliumの種子(巴豆)は tigliane型のホルボールエステルを数多く含むことが知ら

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れている。ホルボールエステル類にはこれまで発がんプロモーションをはじめ多くの生物活性

を示すことが知られている。8-14) C. tiglium種子のメタノールエキスをヘキサン可溶部,エー

テル可溶部,水可溶部に分け,抗 HIV作用を調べるとエーテル可溶部に強い活性があった。エ

ーテル可溶部をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー及び中圧分取クロマトグラフィーを用

いて8種類の化合物 1─8 を単離した(Fig.1)。この内,化合物 1 から 5 の5種は新規化合物で

あった。5)

Figure 1. Structures of isolated compounds

Table 1. Anti-HIV activity and protein kinase C activation

O

CH3OR3

H3C

OR2

H

HHO

H3C

OR1

H

HO

1

3

19

4

5

10

7

8

9

11

1213

14 15

16

17

18

20

1

2

3

4

5

6

7

8

HHacetatedecanoatetigliateacetate2-methylbutyratetetradecanoate

acetatetigliatetigliate2-methylbutyrate2-methylbutyratedecanoatedodecanoateacetate

9Z,12Z-octadecadienoate9Z,12Z-octadecadienoate H H H H H H

R1 R2 R3

1 2 3 4 5 6 7 8

DS8000

15.6 7.81125 7.81 31.3 0.0076 15.6 0.00048

3.9

62.5 62.5500 31.3 62.5 62.5 62.5 31.3

>1000

>50

>100

0.01

MAC (µg/ml)PKC activation

%*Anti-HIV (µg/ml)

01416

010

0 16100

* Inhibitory Percentage of a control (TPA) at 10 ng/mlMAC, minimal activation concentration

Compound IC100 CC0

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単離したホルボールエステルについて抗HIV作用を調べると化合物 8 と 6 に非常に強い活性が

あり,IC100値はそれぞれ 0.48,7.6 ng/mlで,次いで化合物 2 と 4 (IC100値は共に 7.8 µg/ml) で

あった(Table 1)。

従って C. tiglium 種子の活性本体はこれらホルボールエステル類であると結論した。ところ

で,プロテインキナーゼC(PKC)はイオンの膜透過の調節,受容体の抑制調節,平滑筋の収縮な

どを行うシグナルの伝達に重要な役割を担っている。化合物 8 すなわち TPAのようなホルボー

ルタイプの化合物は PKCを活性化し,強い発がんプロモーション作用を示すことが知られてい

る。しかし,TPAの 12-デアシル体である prostratinのように発がんプロモーター作用がなく,

抗 HIV作用のある化合物も報告されていること 13)から,ホルボールエステル類を化学的に種々

変化させ,発がんプロモーター作用を示さず,かつ,抗エイズウイルス作用を示す物質の探索

研究を行った。単離したホルボールエステルについて PKCの活性化作用を測定した結果,化合

物 8 は強い活性化を示したが,化合物 4 と 6 では 10 ng/mlの濃度で活性化は見られず,最小

活性化濃度は両者とも 50 µg/ml 以上であった (Table 1)。以上の結果から,化合物 6

(12-O-acetylphobol 13-decanoate)をリード化合物として化学構造を変換することにより新しい

タイプの抗 HIV作用を有する化合物の開発が可能ではないかと考えた。そこで,ホルボール及

びイソホルボールを基本骨格として種々の誘導体を合成し,抗 HIV 作用と PKC の活性化を検

討した。6)

Table 2. Anti-HIV activity of phorbol derivatives and their activation of PKC (1)

巴豆油(クロトン油)を水酸化バリウムで加水分解し、原料となるホルボール(9),イソホルボール

(10),4-デオキシホルボール(11)を得、ホルボール 9 から7種の化合物を合成した。またイソホ

OR5

OR1OR2

CH2OR3

R4OX

H

Ac

H

Ac

Ac

Ac

Ac

Ac

Bz

H

H

H

H

Ac

Ac

Ac

Ac

Bz

H

H

Ac

Ac

Ac

Ac

Ac

Ac

Bz

9

9a

9b

9c

9d

9e

9f

9g

12

H

H

H

H

H

Me

H

Ac

H

H

H

H

H

H

H

H

Ac

H

O

O

O

O

O

O

!-OH, H

O

O

!"#$%&'( (µg/ml)No.

NE

NE

125

NE

62.5

31.3

500

125

NE

1000

500

>1000

>1000

125

125

1000

250

31.3

PKC)Activation

8

13

0

57

0

0

0

0

100

*+Percentage of activation at 10 ng against that of TPA (8). NE : no activity

%*R1 R2 R3 R4 R5 X

IC100CC0

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ルボール 10 からは4種の誘導体を作った。これら誘導体の抗 HIV作用と PKCの活性化を測定

したが,ホルボールやそのモノ及びジアセチル体(9, 9a-9c)には抗 HIV 活性はなかった,しか

し,トリアセチル体(9d)には活性が見られ,そのメチル体(9e)では活性が2倍程増強され,3-

デオキシ体(9f)では活性が消失した。また 9d と 9e には PKCの活性化も見られなかった。その

他、イソホルボール誘導体には抗 HIV活性はなく,PKCの活性化も認められなかった。

以上の結果から,ホルボール類の構造と抗 HIV活性に関して次の様に考えた。①抗 HIV活性

には 4β-ヒドロキシル基すなわち A/Bトランス体が必要であり,また,② 3位のカルボニル基

を還元すると活性が消失する。③ 活性発現にはジエステルが必要であり,④ 13,20-ジエステル

体より 12,13-ジエステル体の方が強い阻害活性を示した。そして⑤ ジエステルは C-12 アセチ

ル(C2) と C-13 デカノイル(C10)と)の組み合わせが最もよく,この場合 PKCの活性化も見られな

かった。

そこで,これまでの結果をもとに化合物 1,4,6,8 についてさらに修飾を行った。これら

化合物について抗 HIV活性と PKCの活性化を測定した結果を Table 3に示す。化合物 1a, 1b

では 1 に比べ抗 HIV活性は2倍程強くなった。PKCの活性化は 1a では 24%あったが,1b で

は見られなかった。化合物 4 もアセチル化により抗 HIV活性は増強した。また PKCの活性化

濃度は 50 µg/ml以上であった。一方,化合物 6及び 8 ではアセチル化,メチル化により抗 HIV

活性が大きく下がった。また最も強い抗 HIV活性と PKCの活性化を示した 8 では,アセチル

化やメチル化により PKC の活性化作用もなくなった。また,13,20-ジアシル誘導体 8d では弱

い抗 HIV活性が見られたが,8 の異性体 8c では抗 HIV活性も PKCの活性化もなかった。

Table 3. Anti-HIV activity of phorbol derivatives and their activation of PKC (2)

OH

OR1

OR2

CH2OR3

R4OO

OH

OAc

CH2O-Lin

HOO

H

Ac

C10H19OC10H19O

AcAcAc

C14H27OC14H27OC14H27OAcAc

C18H31O

C18H31O

HAc

HAcAc

HAcAcHC14H27O

Ac

Ac

2-Me butyryl2-Me butyryl

C10H19OC10H19OC10H19O

AcAcAcC14H27OC14H27O

1

1a

1b

4

4a

6

6a

6b

8

8a

8b

8c

8d

H

H

HH

HHMe

HHMeHH

1a

!"#$%&'( (µg/ml) PKC)activation

15.6 7.81 7.81

7.81 3.90

0.007615.6 NE

0.0004815.6 NE NE62.5

62.5125.0 62.5

31.3 15.6

62.5 31.3 1.95

31.3 62.5 15.6125.0125.0

024

0

010

011

0

1000000

>50>50

>100

0.01

%* *$"$+,-),.#$/,#$0" (µg/ml)R1 R2 R3 R4 IC100 CC0

12Percentage of activation at 10 ng against that of TPA (8). NE : no activity

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次に,アシル側鎖の違いによる活性の変化を調べるため,13 位が種々の炭素数のホルボール

エステルを合成した。これら化合物について抗 HIV 作用と PKC の活性化を測定すると,炭素

鎖の短いアシル化化合物では抗 HIV 活性はなく,n=9 で活性が見られ,n=10 では最も強い抗

HIV作用を示した。またこの時 PKCの活性化は認められなかった(Table 4)。

Table 4. Anti-HIV activity of 12-O-acetylphorbol 13-O-acylates and their activation of PKC

本研究により,12-O-acetylphorbol 13-decanoate (6)には非常に強い抗 HIV効果がみられ,PKC

の活性化も無いことがわかった。強力な発がんプロモーション作用を示すことで知られている

TPA (8)とは,構造がわずかに異なるだけで,PKCの活性化に大きな違いを示した。

3.カフェー酸誘導体の HIV-1 RT 阻害活性 15)

パナマ産生薬について行ったスクリーニングで Cordia spinescens L.の葉が in vitroで HIV-1

RT に対して強い阻害活性を示した(メタノールエキスの IC50 値は 36 µg/ml,水エキスは 6

µg/ml).15) C. spinescens はムラサキ科に属し,メキシコ西南部からベネズエラ,ペルーの標高

1600 mまでの高湿の森林に生育する高さ 3 m程度の低木である。ベネズエラのインディアンは

根を煎じて発熱や頭痛に使い,16) またパナマのGuaymi Indianは"Diguiman Goi (スペイン語で

は Bejuco negro)"と呼び,木部を粉末にし,スリ傷の治療に使っている。17)

C. spinescensの水エキスをイオン交換樹脂を用いて中性,酸性,塩基性画分に分けると活性

は中性画分に見られた。この画分を更に各種カラムクロマトグラフィーを用いて分離を行い,

活性成分としてカフェー酸三量体であるMg lithospermate (13)や,二量体の Ca rosmarinate

(14), Mg rosmarinate (15)を得た (Fig. 2)。関連化合物についても合わせて,RT阻害活性を測

OH

OAc

OCO(CH2)n-2CH3

CH2OH

HOO

NE

125

NE

31.3

0.0076

250

NE

>1000

500

62.5

31.3

62.5

500

125

57

16

27

10

0

35

0

n !HIV"# (µg/ml) PKC$%&"#

n=2

n=5

n=6

n=9

n=10

n=12

n=14

%*IC100 CC0

'(Percentage of activation at 10 ng against that of TPA (8). NE : no activity

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定した結果を Table 5に示す。

Figure 2. Structures of caffeic acid derivatives

化合物 13 は最も強い阻害活性を示したが,遊離型のカルボン酸 lithospermic acid (16)では阻

害活性は 1/40以下となった。これはカルボン酸塩を形成している金属イオンが影響しているた

RT inhibition PR inhibition

Compound IC50 (µM) IC50 (µM)

Monomer

Caffeic acid (17) >1000 >100

Dimer

Ca rosmarinate (14) 5.8 >100

Mg rosmarinate (15) 3.1 >100

Trimer

Mg lithospermate (13) 0.8 >100

Lithospermic acid (16) 34

Tetramer

Mg lithospermate B (18) 68

O

COO-

O

COO-

OH

OH

OH

OHOH

O

O

COOH

O

COOH

OH

OH

OH

OHOH

O

OH

O

COO-

OH

OH

OH

O

COOHHO

HO

O

OH

OH

O

HO

O

OHO

HO

OH

OH

O COO-COO-

131415

M=1/2Ca2+

M=1/2Mg2+

17

1816

Mg2+M

Mg2+

Table 5. Compounds of caffeic acid derivatives and their anti-HIV-RT and

anti-HIV-PR

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めと考えられる。また Ca及びMg rosmarinate (14,15)も強い阻害作用を示した。RT阻害作用

は単量体(17),二量体(14,15),三量体(13,16)の順で強くなったが,四量体(18)では逆に弱くな

った。化合物 13 の阻害様式は Lineweaver-Burkプロットから非競合的阻害であることがわか

り,化合物 13 は基質の結合部位 (活性中心) と異なる部位で酵素と結合し,酵素活性を阻害し

ていると考えられる。

4.トリテルペン類の HIV-PR 阻害活性 18-20)

HIV-PR阻害活性を指標とした漢薬及び蒙薬のスクリーニングで“鎖陽”に比較的強い阻害活性

が見られた。21) 鎖陽は オシャグジタケ科 Cynomorium songaricumの茎で,主に内蒙古に生育

する寄生植物である。中国では古くから強壮薬として用いられており、22) 成分としてはトリテ

ペン,ステロイド,脂肪酸が知られている。23,24)

4.1 鎖陽トリテルペンとその誘導体の合成

鎖陽の抽出エキスから ursolic acid (19), acetyl ursolic acid (20), malonyl ursolic acid

hemiester (21)の他、14 種の既知化合物を単離した。これらについて 100 µg/ml の濃度で

HIV-PR 阻害活性を測定すると 19,20,21 には比較的強い活性が見られたが(19-21 の IC50

値はそれぞれ 8, 13, 6 µM),他の 15種の化合物には効果はなかった。18) 鎖陽に含まれる酸性

トリテルペン類(19-21)に HIV-PR 阻害活性が見られ,3 位にマロン酸ヘミエステルの導入で,

更に阻害活性が増大した。

そこで構造の類似した ursolic acid, oleanolic acid, betulinic acidについて一連のジカルボン

酸ヘミエステルの合成を行い,構造と活性相関を検討した(Table 6)。トリテルペン類の 3 位に

エステル結合で酸性基を導入した場合,oxalyl (C2), malonyl (C3), succinyl (C4), glutaryl (C5)

と炭素数が増えるに従って阻害活性も強くなった。最も強い glutaryl hemiester (26, 35, 42)

の IC50値は 4 µMで,元のトリテペン(19, 29, 37: IC50=8-9 µM)の約 2倍の強さであった。こ

れらのカルボキシル基をメチル化すると活性は大きく減少し (27, IC50 >50 µM; 36, IC50 >50

µM; 43, IC50=40 µM),トリテルペンの 3位と 17 位の極性基が酵素と相互作用していることが

示唆された。化合物 19, 29, 37 の 17 位のカルボキシル基をメチル化した化合物も活性が顕著

に減弱した(23, IC50=14 µM; 30, IC50=20 µM; 38, IC50 >25 µM)。また,17 位がカルボキシル

基ではなくメチル基の場合も,活性が著しく低かった[α-amyrin (22), IC50=80 µM; β-amyrin

(28): IC50 >100 µM],従って,17 位の極性基も酵素との相互作用に深く関与することが支持さ

れる。

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Table 6. Anti-HIV-PR activity of three types of triterpene derivatives

4.2 文冠木の抗 HIV-PR 成分

蒙薬文冠木 (Xanthoceras sorbifolia Bungeの木部)の抽出エキスも中程度の HIV-PR阻害活性

を示した。文冠木は中国内蒙古に生育するムクロジ科の低木で,中国語では"Wen Guan Mu",

モンゴル語は"Shen Deng"と呼び,木部をリウマチや痛風などに用いている。果実からはこれま

でいくつかのサポニン類が単離されている 25,26)が,木部の成分に関する報告はまだ少ない。27,28)

文冠木のメタノールエキスから新規トリテルペン xanthocerasic acid (46), 新 A-タイプ プロア

ントシアニジン二量体 (48)の他、11種の既知トリテルペン及びフラボノイドを単離した。19) 単

離した化合物について HIV-PR阻害活性を測定すると化合物 45, 29, 48 のみに活性が見られ,

IC50値はそれぞれ 20, 10, 70 µg/mlであった。Oleanolic acid (29)の HIVの増殖とそのプロテ

アーゼの阻害活性は既に報告されており,18,29) 今回の実験結果と一致している。また,化合物

45 は HIV-PR阻害活性を持つ初めての tirucallane型のトリテルペンである。化合物 45 と 46

では構造がわずかに異なるだけにもかかわらず,HIV-PR阻害活性に大きな差が見られる。そこ

で化合物 45 及び 46 のアナログについて検討を行った。化合物 49 と 51 に中程度の活性

(IC50=100 µg/ml)が見られたが、検討した化合物の種類が少ないため, tirucallane型トリテル

ペンに関する構造と活性相関について結論を出すことはできなかった。

R1O

R2

Ursene !ype

R1O

R2

R1O

R2

Oleanene"type Lupene type

H

H

H

COCH3

COCOOH

COCH2COOH

CO(CH2)2COOH

CO(CH2)3COOH

CO(CH2)2COOCH3

CO(CH2)3COOCH3

CH3

COOH

COOCH3

COOH

COOH

COOH

COOH

COOH

COOCH3

COOCH3

!-amyrin (22)

ursolic acid (19)

23

20

24

21

25

26

27

80

8

14

13

7

6

6

4

>50

Ursane !ype

# IC50 (µM)

Oleanane type

#IC50 (µM)

"-amyrin (28)

oleanoic acid (29)

30

31

32

33

34

35

36

>100

8

20

9

20

8

4

4

>50

Lupane type

# IC50 (µM)

betulinic acid (37)

38

39

40

41

42

43

9

>25

7

6

6

4

40

R1 R2

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9

Figure 3. Structures of compounds isolated from X. sorbifolia

4.3 オレアノール酸誘導体の合成と HIV-PR 阻害活性

これまで述べてきたように,ある種のトリテルペン類は HIV-PR に対して非常に強い阻害効果

を有している。そこで更に系統的にトリテルペン類の構造変換を行い,その構造と HIV-PR 阻

害活性の相関関係について検討を行った。 20) 前述の3種のトリテルペン (ursolic acid,

oleanolic acid, betulinic acid) の活性に大きな差が見られないこと,また,天然に豊富に存在す

ることを考慮して出発原料として oleanolic acid (29, IC50=8 µM)を用いた。先に oleanolic acid,

ursolic acid, betulinic acidの 3位に炭素数5までのジカルボン酸ヘミエステルを合成し、阻害

効果を検討したが,oleanolic acidについて更に炭素鎖の長い化合物を合成し,HIV-PR阻害活

性を検討した。その結果,炭素数が6から8の時最も強く,その IC50値は 3 µM であった。更

に炭素鎖が長い化合物ではこれらより阻害活性は弱くなった。アシル側鎖に2つのメチル基を

持つ化合物(57)の活性は直鎖状の化合物(35)とほぼ同じであった。 28位または3位のカルボキ

シル基をメチル化すると活性は減少した(54, 58 の IC50値は 7.5及び 5.6 µM)。また,両方のカ

ルボキシル基ともメチル化すると活性が消失した(59, IC50 >20 µM)。次に,3位がヒドロキシ

ル基ではなく他の官能基に変えた時,あるいは前述したように最も阻害活性の強い炭素数6の

HOOC

R32829

49 R1=OH R2=H R3=CH3

50 R1=H R2=OH R3=CH2OH

51 R1=OH R2=H R3=CH2OH

R1

R2

3

HOOC

O

R28

29

3

HO

24

44

45 R=CH3

46 R=CH2OH

52 R=CH2OAc

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ジカルボン酸を導入した時の阻害活性を調べた(Table 7)。 Oleanolic acidの 3位ヒドロキシ

ル基をオキソ基やヒドロキシイミノ基に変えた化合物 (61, 63) でも阻害活性は変わらなかっ

た。一方,28位メチルエステル体の 3位ヒドロキシル基をオキソ基やアミノ基に変えても活性

は弱いままであった (62, 65-66) が,ヒドロキシイミノ基体 (64) では 3位ヒドロキシル基体

(30)に比べ約2倍強くなった。また,3位ヒドロキシイミノ基やアミノ基に炭素数 6のジカルボ

ン酸を導入すると 28位が遊離カルボン酸(69, 71) でもメチルエステル(68, 70, 72) でも非常

に強い阻害活性を示した。尚,28位に遊離カルボン酸を有する 3-アシルヒドロキシイミノ化合

物 67 は例外で,アシル基を持たない化合物 63 の活性とほぼ同じであった。化合物 68 にさら

にアミド基を導入すると活性は減少した(73, IC50=6.0 µM)。この化合物のメチル化体(74)は遊

離のカルボキシル基を持たない他の化合物と同様活性はなかった。二量体(75)は単量体と類

似した阻害活性を示した。遊離カルボキシル基を持たない化合物(76)には活性が無く,二つの遊

離のカルボキシル基を有する二量体 75 は単量体 69 に匹敵する強い活性を示した。

Table 7. Anti-HIV-PR activity of oleanolic acid derivatives

Oleanolic acidの3位に炭素数6の酸性側鎖を導入すると強い HIV-PR阻害活性が見られた。

COOR2

R1

!-NHCO(CH2)4 CONH(CH2)3COOH

!-NHCO(CH2)4 CONH(CH2)3COOCH3

75!-NHCO(CH2)4CONH-!-oleanolic acid 28-R2 76

IC50 (µM)

3.3 >20

61

=NOH

29

=O

63

!-NH

"-NH

67

8

5.5

5.5

5.5

R2 = H

IC50 (µM)

R2 = CH3

Compound

!-OH

68 4.0

"-NHCO(CH2)4COOH 72

69!-NHCO(CH2)4COOH 3.0

3.5

74 >20

73 6.0

70 3.0

65 >20

66 >20

30 20

62 20

64 9.5

71 2.1

R1

=NOCO(CH2)4COOH

!ompound

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そこで,オレアナン骨格にもう一つの酸性側鎖の導入を試みた。Sophoradiol (77)はオレアナン

型トリテルペンで3位と 22位に二つのヒドロキシル基を有している。この二つのヒドロキシル

基の距離は 12.3 Åで oleanolic acidの 3-OHと 17-COOH基間の距離(12.4 Å)とほぼ同じである。

化合物 77を adipoyl chlorideと反応させて 3,22-di-O-adipoyl sophoradiol (78)を得た(Fig. 4)。

化合物 78 は元の 77 より8倍以上強い活性を示した(78; IC50=2.3 vs. 77 IC50=18.8 µM)。

Figure 4. Structures of sophoradiol and di-adipoyl esters

二つの酸性側鎖を持つ化合物 78が強い活性を示したことから oleanolic acidの3位と 28位に2

個の酸性側鎖を持つ化合物 80 を合成した。HIV-PR阻害活性を測定すると予想したとおり,化

合物 80 は更に強い活性を示し,その IC50は 1.7 µMであった。また,28位に一つだけ酸性側

鎖を持っている化合物 79 も 80 と同程度の強い活性を示し,元の oleanolic acidの4倍以上の

強さであった(Table 8)。この理由として,oleanolic acidでは 28位のカルボキシル基がやや立

体障害を受けた状態にあるため,酵素との水素結合または静電的相互作用が弱いのに対し,28

位に側鎖を持つ 79 では,カルボキシル基と酵素が強く結合できるためと考える。

Table 8. Anti-HIV-PR activity of oleanolic acids having acidic side chain(s) at C-3 and/or C-28

以上の結果より,oleanene 骨格に酸性の側鎖,特に炭素数6の酸性基を導入すると,HIV-PR

COR2

R1

R1

OH

OCO(CH2)4COOH

OH

OCO(CH2)4COOH

R2

OH

OH

NH(CH2)5COOH

NH(CH2)5COOH

29

53

79

80

IC50 µM

8

3.0

1.7

1.7

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に対する阻害活性が大きく増加することがわかった。また,今回用いたトリテルペンヘミエス

テル類のエステル結合は消化酵素リパーゼによって加水分解されなく安定であった。HIV-PRは

同一のペプチドが二量体を形成して初めてプロテアーゼ活性を示す。そこで,トリテルペン類

のプロテアーゼ阻害作用のメカニズムを検討するため,サイズ排除型クロマトグラフィー実験

を行った。トリテルペン共存下では HIV-PR は単量体として溶出されたので,トリテルペンは

活性型酵素 (二量体) の活性中心に直接結合して阻害するのではなく、酵素の二量体化を阻害し

ていることが示唆された。また,HIV-PRと同じアスパラギン酸プロテアーゼに属するペプシン

(単量体で活性を示すプロテアーゼ)に対する阻害活性を測定すると,これらトリテルペン類は全

く阻害活性を示さず,酵素の二量体化を阻害していることを支持した。

4.4 霊芝トリテルペンとその誘導体

我々は G. lucidum Karst.から種々の抗 HIV-PR及び抗 HCV-PR活性を有するトリテルペンを

単離しているが、30,31) 新たにベトナム産のキノコ G. colossum (FR.) CF Baker及び中国産の薬

用キノコ G. sinense Zhao, Xu et Zhangの成分に関して研究を行った。 G. colossumのクロロ

ホルム抽出物から繰り返しカラムクロマトグラフィーを行い、colossolactones I (83), II (84),

III (85), IV (86), V (87), VI (88), VII (89),VIII (90)と名付けた 8種の新規ラノスタン型のトリ

テルペンを単離した(Fig. 5)。また、新規化合物以外にも ergosterol (91), schisanlactone A (92),

colossolactones B (93), C (94), G (95), E (96), D (97)などの既知化合物を同時に単離、同定し

た (Fig. 5)。 Schisanlactone A (92)は Kazura longipedunculataから既に単離されている化合

物であり、HIV-PRに対する阻害物質として報告されている.32) Colossolactones V (87) と VI

(88)の CDスペクトルの比較から化合物 88 の C-22の立体配置は同じく Rと決定した。

Table 9. HIV-1 protease inhibitory activities of triterpenoides isolated from G. colossum

Compound IC50 (µM) Compound IC50 (µM)

83 4.1 91 271.3

84 4.4 92 10.8

85 >201.3 93 35.8

86 12.0 94 179.0

87 14.5 95 72.4

88 >162.1 96 15.3

89 24.7 97 29.1

90 58.3

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Figure 5. Structures of triterpenes isolated from G. colossum

G. sinenseは G. lucidumと同様に中薬「霊芝」として中国薬典に記載されている。 しかしな

がら G. lucidumに比べて、G. sinenseの化学成分の研究はほとんどなされていない。 そこで

我々は G. sinense子実体の成分化学的研究を開始し、ファルネシルヒドロキノンがエステル結

合したトリテルペン(98–100) (Fig. 6)や 5種の高度に参加されたラノスタン型のトリテルペン

(101–105)を単離、構造決定した。 新規化合物の構造は分光学的手法で決定し、ganosinensins

A-C (98-100), ganoderic acid GS-1 (101), ganoderic acid GS-2 (102), ganoderic acid GS-3

(103), 20(21)-dehydrolucidenic acid N (104) 及び 20-hydroxylucidenic acid A (105)と命名し

た。また、既知化合物として ganoderiol A, ganoderiol D, ganoderic acid (106),

20(21)-dehydrolucidenic acid A (107), 20-hydroxylucidenic acid N (108), lucidenic acid D2

(109), ganodermanontriol (110), ganoderiol F (111), cerevisterol, 5,6-dihydroergosterol及び

ergosterol peroxideを単離、同定した。

次に、我々は G. sinenseから単離した 11種の化合物及び G. lucidumからの 11種 112─122

を加え HIV-PR阻害活性を調べた (Table 10)。 G. sinenseの主たる 24(25)不飽和ガノデリン酸

(101─103, 106, 116など)の中では、3-オキソ体は 3-ヒドロキシ体より強い阻害作用を示した。

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ところが化合物 104, 105, 107─109 などのルシデニン酸類では 3-ヒドロキシ体は 3-オキソ体

より強い阻害作用を示した。 化合物 110, 111 及び 117-122 などの霊芝アルコールにおいて

は、24(25)不飽和化合物は 24-ヒドロキシ化合物より強い阻害作用を示した。 化合物 112─115

などの G. lucidum子実体の主成分である 23-オキソガノデリン酸は HIV-PR阻害作用が認めら

れなかった。 化合物 111, 108, 102, 及び 105 などは顕著に HIV-PRを阻害し、その IC50 値

はそれぞれ 22, 25, 30, 48 µMであった。35,36)

Figure 6. New triterpene-farnesyl hydroquinone conjugates from G. sinense

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Table 10. Structures and anti-HIV-1 protease activities of Ganoderma triterpenes

4.5 A-seco(開環)型のトリテルペノイド Stauntonia obovatifolia とその近縁植物は中国においては鎮痛、鎮静薬として使われている。

No. R1 R2 R3 R4 R5 R6 IC50 (µM)

101 O β-OH O H2 O 58 102 O β-OH O H2 α-OH 30 103 β-OH β-OH O β-OAc O >200 104 β-OH β-OH O H2 O Δ20(21) 48 105 O β-OH O H2 O CH3, OH >200 106 β-OH β-OH O H2 O 116 107 O β-OH O H2 O Δ20(21) >200 108 β-OH β-OH O H2 O CH3, OH 25

109 O O O β-OAc O α-CH3 >200

110 O OH OH OH H 65 111 O Δ24(25) OH OH 22 112 O β-OH O H2 α-OH >200 113 β-OH β-OH O H2 O >200 114 O β-OH O H2 O >200 115 β-OH β-OH O β-OH O >200 116 O O H2 H2 H2 38 117 β-OH OH OH OH H 80 118 β-OH Δ24(25) OH H 29

119 O OH H OH H >200 120 β-OH Δ24(25) OH OH >200 121 99 122 β-OH OH OH H H >200

pepstatin A 2.1

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我々は S. obovatifoliola Hayata subsp. intermedia (Y .C. Wu) T. Chenから 3種の新規トリテ

ルペンを含む 14 種の化合物を単離、構造決定した。新規化合物は分光学的方法により、

16-hydroxy-2,3-seco-lup-20(29)-ene-2,3-dioic acid (123), 3,21,24-trihydroxy-30-nor-oleana-

12,20(29)-dien-28-oic acid (124) , 16-hydroxylupa-1,20(29)-dien-3-one (125)と決定した(Fig.

7)。

Figure 7. New triterpenoides isolated from S. obovatifolia

これらトリテルペノイドのうち、トリテルペンの A 環が開裂し、1 位と 4 位にカルボキシル基

を有する化合物 123 は最も強く HIV-PR阻害を示すことが明らかになった。37) そこで、我々

は betulin, oleanolic acid (29), ursolic acid (19), glycyrrhetic acid 及び lupenoneなどの 5環

性トリテルペンから A環の開裂した化合物を合成した(Fig. 8)。 2種の A環の開裂した化合物

129c と 129e は HIV-PRを強く阻害し、それらの IC50値はそれぞれ 5.7 及び 3.9 µMであっ

た(Table 11)。一方、他の 4種の化合物 129a, 129b, 129d, 129f は IC50値が 15.7 から 88.1

µMで中程度か、あるいは弱い阻害作用を示した。2,3-seco-2,3-dioic acid 化合物 (129a–129e)

は二官能基を有する A 環の開裂したトリテルペン誘導体 129f より HIV-PR に対し強い阻害を

示した。

Figure 8. Structures of A-seco type triterpenoids and related compounds

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Table 11. Inhibition of HIV-PR by A-seco type triterpenes and related compounds

IC50 (µM) ± RSD (%) Comp R1 R2 R3 R4 R5

HIV PR

126 CHO 31.9 ± 3.8

127 Me >235.6 ± 4.5

126c Me Me, βCOOH H, H O O 23.6 ± 8.5

126d COOH H, αMe H, βMe H, H O 37.5 ± 1.3

126e COOH Me, Me H, H H, H O 27.4 ± 4.9

126f D-Val M Me, Me H, H H, H O 41.4 ± 4.2

126g L-Val M Me, Me H, H H, H O 37.0 ± 3.4

126h D-Val Me, Me H, H H, H O 45.2 ± 2.3

126i L-Val Me, Me H, H H, H O 14.6 ± 4.3

128a COOH 18.8 ± 4.3

128b Me 24.6 ± 6.1

128c Me Me, βCOOH H, H O 15.8 ± 6.0

128d COOH H, αMe H, βMe H, H 25.4 ± 4.5

128e COOH Me, Me H, H H, H 19.2 ± 2.8

128f D-Val Me, Me H, H H, H 49.7 ± 2.9

128g L-Val Me, Me H, H H, H 40.5 ± 6.5

123 Me H, βOH 10.9 ± 5.9

129a COOH H, H 15.7 ± 3.4

129b Me H, H 25.4 ± 5.1

129c Me Me, βCOOH H, H O 5.7 ± 1.2

129d COOH H, αMe H, βMe H, H 17.6 ± 2.6

129e COOH Me, Me H, H H, H 3.9 ± 2.9

129f D-Val Me, Me H, H H, H 88.1 ± 8.6

131a L-Val M Me, Me H, H H, H H, βOAc 21.3 ± 3.2

132a D-Val Me, Me H, H H, H H, βOH 47.3 ± 5.2

132b L-Val Me, Me H, H H, H H, βOH 10.6 ± 4.3

132c D-Val M Me, Me H, H H, H H, βOH 32.3 ± 1.3

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132d L-Val M Me, Me H, H H, H H, βOH 24.6 ± 3.8

133 28.6 ± 2.4

134 30.4 ± 5.0

a PC A 1.0 ± 2.9 aPepstatin A: positive control for HIV PR. Data represent means ± RSD for three independent experiments.

LC, lead compound: 16β-hydroxy-2,3-seco-lup-20(29)-en-2,3-dioic acid.

Val = ; Val M =

これら化合物の構造と活性相関は以下の様に考えられた。

① C-28 或いは C-30 位 にカルボン酸が直接結合した 2,3-seco-2,3-dioic acid 誘導体は

HIV-PR に強い阻害活性を示した。② 2,3-seco-2,3-dioic acid 誘導体において 28-メチル基よ

り 28-カルボン酸置換基を有する方が強い阻害活性を示した。 ③ 2,3-seco-2,3,28-trioic acid 誘

導体 129eを 2,3-seco-2,3,28-triol 誘導体 134に還元するとHIV- PRに対する阻害が減弱した。

④ C-2にオキソ基を有し、A環が縮環したトリテルペンは元の A環が開裂した化合物より HIV-

PR阻害活性が減弱した。 ⑤ A環が開裂したトリテルペノイドの C-28位にアミノ酸(D-バリ

ン)を結合させると阻害活性は減弱した。

C 型肝炎ウイルスプロテアーゼ (HCV-PR)、レニン、トリプシンなど他のプロテアーゼに対

する、これらの A 環の開裂した化合物の阻害作用を検討した結果、これらのプロテアーゼには

顕著な阻害を示さなかった(IC50 > 80.3 µM)。 このことは A環の開裂したトリテルペノイドが

HIV-PRに高い選択性を持っていることを示している。38)

4.6 HIV 及び HCV-PR を阻害するダンマラン型のトリテルペン誘導体の合成

薬用人参に含まれるダンマラン型のトリテルペン用いて、各種の誘導体を合成し、HIV-PRや他

のプロテアーゼに対する阻害活性を調べた(Table 12)。 薬用人参の抽出物を酸加水分解すると

主生成物として panaxadiol (PD, 135) と panaxatriol (PT, 136)が得られる。 これらを出発原

料として A, B, C環のヒドロキシル基を修飾することにより各種の化合物を得た。 Table 12に

これら誘導体の HIV-PR, HCV-PRに対する阻害活性を示す。この場合、陽性コントロールとし

て HIV-PRには pepstatin A、HCV-PRに HCV NS 3 阻害物質 2を用いた。 それぞれの IC50

値は 1.3 及び 0.5 µMであった。 出発物質 PD 及び PTは HIV-PR 或いは HCV-PRのどちら

も阻害しなかったが、誘導体は強く阻害したので、構造─活性相関を検討した。

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Table 12. Inhibition of HIV- and HCV-PRs by dammarane-type triterpene derivatives

IC50 (µM) ± RSD (%) Comp R1 R2 R3

HIV PR HCV PR

135 H, βOH H, H H, βOH >217.1 ± 1.3 >217.1 ± 1.3

136 H, βOH H, αOH H, βOH >209.9 ± 3.1 >209.9 ± 3.1

137a O H,H H, βOH 39.4 ± 2.4 >218.0 ± 4.3

137b O O H, βOH 42.3 ± 2.5 >213.0 ± 6.2

137c O H, H O >218.0 ± 4.3 72.3 ± 4.5

137d O O O 24.2 ± 4.5 >213.0 ± 4.6

138a 28.5 ± 6.4 >212.0 ± 3.0

139a H, βOH 11.9 ± 6.8 >198.0 ± 3.6

139b O 22.8 ± 2.2 9.1 ± 5.4

140a βCOOH, αOH H, H H, βOH 10.0 ± 1.0 >204.0 ± 3.8

140b βCOOH, αOH O H, βOH 29.9 ± 5.2 >213.0 ± 7.2

140c βCOOCH3, αOH H, H H, βOH >198.0 ± 2.8 >198.0 ± 3.2

140d βCOOCH3, α OH O H, βOH >193.0 ± 3.4 >193.0 ± 4.7

141a H,βDMS H, H H, βOH 2.7 ± 4.3 30.4 ± 3.0

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141b H,βDMS H, H O 6.5 ± 0.1 62.2 ± 3.5

141c H,βDMS H, αOH H, βOH 3.9 ± 0.1 >166.0 ± 0.4

141d H, βOH H,αDMS H, βOH 2.7 ± 0.4 >166.0 ± 1.8

141e H,βDMS H,αDMS H, βOH 5.4 ± 3.8 1.8 ± 2.6

141f H,βDMS H,αDMS O 10.9 ± 1.5 18.9 ± 1.6

aPC A 1.3 ± 4.0 nt

bPC B nt 0.5 ± 1.5

aPC A, Pepstatin A, positive control for HIV PR; bPC B: Hepatitis Virus C NS 3

Data represent means ± RSD for three independent experiments.

Protease Inhibitor 2, positive control for HCV PR; nt: not tested. DMS = ①ダンマラン型のトリテルペンの 3-オキソ誘導体の中では化合物 137a, 138a 及び 137b は

HIV-PRを中程度に阻害しそれぞれの IC50値は 39.4, 28.5 及び 42.3 µMであったが、HCV-PR

に対しては阻害を示さなかった。 ② 他方、2,3-seco 誘導体 139a 及び 139b は、HIV-PRに

対して IC50値がそれぞれ 11.9, 22.8 µMで中程度の阻害を示したが、化合物 139b は HCV-PR

に対して唯一、強力な阻害剤であった(IC50, 9.1 µM).このことは 3-seco 誘導体においては、12-

オキソ基が遊離ヒドロキシル基 (139a, IC50 > 198 µM) に比べて有意なHCV-PR阻害増強作用

があることを示している。 ③ A 環にカルボキシ基を有し、A 環が縮環した A-ノル ダンマラ

ン型の化合物 140a 及び 140b は HIV-PR に対して中程度の阻害を示し、その IC50値は 10.0,

29.9 µMであった。 しかしながら、HCV-PRには無効であった。 ④ 化合物 140b の様に C-6

位にオキソ基を有する化合物の場合は、HIV-PRに対して弱い阻害活を示した。 さらに⑤ メチ

ルエステル化合物 140c 及び 140d では両プロテアーゼに阻害活性を示さなかった。⑥モノア

シル(141a–141d)及びジアシル(141e 及び 141f)化合物は HIV-PR を強く阻害した(IC50 は

2.7 から 10.9 µM). この場合、モノアシル化体は、ジアシル体より強力であった。 他方、ジア

シル体は明らかに HCV-PRを阻害した。 特に化合物 141e は強く HCV-PRを阻害し、その IC50

値は 1.8 µM であった。モノアシル体とジアシル体を比較する(141d 対 141e 及び 141b 対

141f)と、前者は主として HIV-PRを阻害し、後者は両プロテアーゼを阻害した。従って、モノ

アシル体の方がジアシル体より、プロテアーゼに対して選択的であるといえる。 更に、⑦12-

ヒドロキシ体(141a 及び 141e)は 12-オキソ体(141b 及び 141f)より強い阻害を示した。

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我々はウイルスプロテアーゼに強い阻害作用を示した 8 種の化合物(139a, 139b 及び

141a–141f)がレニンやトリプシンに対する阻害効果を検討した。 どの化合物も 1 mg/ml程度

の高濃度においてもレニンやトリプシンに対する阻害は認められなかった。 これらの結果はダ

ンマラン型のトリテルペンが HIV-PR や HCV-PR に対して強い阻害作用と高い選択性を持っ

ており、生体内に存在するヒトプロテアーゼを阻害し、生体内の生理機能を損なうことはない

と考えた。40)

結論として、抗 HIV 活性を有する betulinic acidの例で示されるように、トリテルペンは興

味ある生物活性を持つ天然物である。 ごくありふれたトリテルペンを出発原料としてその構造

を修飾し、例えば bevirimat (DSB, PA-457)の様に抗エイズ薬としての臨床も含めて、開発が進

められているものもある。 このように、抗ウイルス活性を有する新規トリテルペン誘導体の開

発は多くの研究グループにおいて活発に行われており、新規トリテルペン誘導体が HIV 及び

HCVの感染予防や治療のための薬物候補となる可能性は高い。

4. おわりに

これら研究は主として天然物化学の立場から行ったものである。幸いにもいくつかの阻害活性

のある化合へと導くことができた。しかし,実際に抗ウイルス薬として臨床の場で用いられる

にはまだまだ克服しなければならない問題点が数多くあると思われる。抗エイズ薬を最も必要

としているのは発展途上国の人々であるが,既存のエイズ治療薬は非常に高価であるためその

多くの人々は使用することができない。しかし,彼らが日頃用いている伝統薬物を用いたエイ

ズ治療薬が開発されることは,成果がその地域の人々へ還元されるだけでなく,安価でかつ大

量供給へとつながる。伝統薬物から実用的に用いられる治療薬が開発されることを願って,今

後も更に有効な物質の探索を進めていく予定である。

最後に,本研究は以下の研究室在籍者の協力によるものであり,実験を担当した Yasumina Aura

Lim,Sahar El-Mekkawy, Meselhy Ragab Meselhy, Riham Salah El-Dine, 佐藤直人、危英博

士らに深く感謝する。

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