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C. 視点場からの見え・ビスタ形成など印象的な景観形成をテーマにしたもの
C-1. 地域の視点場の発見
視点場 ( ビューポイント ) とは、ある景観を眺める立ち位置である。駅や大通りなど多くの人から見られる場所、
また丘の上や橋梁上など、良好な景観の得られる場所が一般に視点場として捉えられる。
視点場からの景観は、地域のなかで良好な景観を味わう場所を創出・保持していこうとするもので、景観の公共
性を高めるものである。
視点場の設定は、対象地との位置関係 ( 視線の角度・距離など ) に地形、その地点への来訪者数、背景となる景
観などから総合的に行い、そこからの見えを意識・検証しながらの計画が重要となる。
【葛飾新宿6丁目地区】 (土地有効、計画中)
■立地特性と視点場の設定
・常磐線と中川に挟まれた立地、中川手前で車中から開
発地が一望され、遠景→中景レベルの変化する景観が
得られる。
・多くの乗客を有する常磐線、中川対岸の橋梁付近、開
発地への道路、近隣公園等を視点場として設定。
■景観形成の検討と成果
・超高層案・板状案など幾つかの配置パターンを用い、
それぞれの見え方、また常磐線の移動による景観変化
を検証した。
・これら検討により、新たなまちの誕生を象徴的に見せ
るものとして超高層案の優位性が明らかになった。
①中川公園②中川橋③〜⑤常磐線⑥金町駅ホーム⑦区画道路取り付き⑧近隣公園⑨川沿い堤防上の道路
●
● ●
●1
●2
34 5
8
76
9
常磐線
街区の
①
②
③④ ⑤
C-1
C-2. 遠景・スカイラインの形成
開発地の全体像を一体的に示す遠景は、まちのアイデンティティを効果的に示すことができる (→ P.60 まちの遠
景によるアイデンティティ形成 )。遠望を得やすい臨海部の開発等において、充分留意すべきテーマである。
【ベルコリーヌ南大沢】 (東京都八王子市、1991 / H3)
■立地特性と視点場の設定
・地区の遠景を特徴付けるものとして、14F のポイント住棟 (5 棟 ) を位置付け、
①山の景観の強調と一体感
②多摩丘陵の地形、及び都立大建物郡との調和。丘陵地の起伏を極力活かすため、板状高層を尾根選と平行に
配置しない。
③都立大をはじめとした地区の主要な視点場、各高層棟からの富士山の景観
④街路のシークエンスと富士山の見え方
⑤新宿の超高層ビル群の景観の活用
等に留意された。その上で検証スタディを重ね、効果的なポイント住棟の配置が設定された。
【HAT神戸】 (兵庫県神戸市、1998 / H10)
・超高層及び頂部のデザイン・素材に統一感を持たせることで、流れるように連続するスカイラインを形成している。
C. 視点場からの見え・ビスタ形成など印象的な景観形成をテーマにしたもの
C-2
C-3. 中景・近景の視点場の設定
視点場は地区外から遠景を見せる場だけではなく、地区内部で身近な景観、街並みを見せる視点場もある。
地区内の特徴をもった場への見通しを確保し、印象的な景観「ここ」と「あそこ」を連続させることで、地区の
全体的な構造を把握しやすくする効果もある。
【芝浦アイランド地区】 (居住事業、2003 〜/ H15 〜)
・遠景・中景・近景の3段階の視点場がガイドラインに示されている。それぞれの視点場について、パースや模型
を用いた検討が行われた。
・近景は歩行者レベルで街路景観を捉えるものとして、地区内の主要な動線の結節点と、住棟エントランス付近を
視点場として設定。
・視点場相互を見渡せることで緑・オープンスペース・生活領域のつながりが強調された。
・また地区内の視点場から、水辺のノードを経て水際へ視線を抜く「ビューコリドー」を設定した。この視線の抜
けにより、住棟のボリューム感が大きく軽減され、空間を分節することに大きな効果を発揮している。
視点場とビューコリドー
視点場⑦から東を見る
棟間に視線が遠くまで抜ける
視点場⑨から南を見る
C. 視点場からの見え・ビスタ形成など印象的な景観形成をテーマにしたもの
N
C-3
C-4. ビスタライン・山アテ
開発地区内部から、地域の景観ポイントへの見えを確保するもので、古来からの「山アテ」とよばれる技法に
相当する。
地域と開発地内を連続的にし、開発地内に印象的なインパクトの強い景観を創出することができる。
【多摩NT富士見通り】
・富士山への「山アテ」の代表事例。系統的なオープンスペースシステムを構築した多摩ニュータウンの代表景観と
もなっている。
C. 視点場からの見え・ビスタ形成など印象的な景観形成をテーマにしたもの
【紀寺団地】 (奈良県奈良市、252 戸、2003 / H15)
・大文字焼きで有名な奈良三山の一つ、高円寺にむけて団地を骨格付け、メインアプローチを「山アテ」。
・アプローチ路は奈良の代表的な名所「東大寺二月堂参道」をモチーフに構成。空間を仕切り、視線を絞ることでビ
スタポイントの「山」が強調されている。
C-4
C-5. 大径木をシンボルにする
年月を経て大きく育った樹木、特に樹形の美しい独立木や「三本スギ」など特徴のあるものは、印象的でシンボリッ
クな景観ポイントとなる。
樹木の位置と周りの建物、通路等の構成に留意し、アイストップに置くなどで効果的に用いることが重要である。
また足元には何も植栽しないなど、樹木自体のフォルムを活かすことでシンボル性が高まる。
【芝浦アイランド】(東京都江東区、居住事業、2003 〜/ H15 〜)広場の核としてプラタナスを移植、建物ファサードを樹木にむけ、広場の求心性を高めた。
【武蔵野緑町パークタウン】 (東京都武蔵野市、855 戸、1995 / H7)中央広場のヒマラヤスギ。お祭り時、この木を中心に人があつまるなど、広場のシンボルとして親しまれる。
【アクティ三軒茶屋】(世田谷区、523 戸、2002 / H14)地区のシンボルマークともなっているメタセコイヤ。(左:従前 右:建設後)
C. 視点場からの見え・ビスタ形成など印象的な景観形成をテーマにしたもの
プラタナス(左写真)
正面性
C-5
C-6. シークエンス景観をつくる
視点を移動させながら、次々と変わっていくシーン ( 場面 ) が継続する景観をシークエンス景観という。視点移
動による景観変化を意図的に取り扱い、「囲われた感じ」「広がり」など異なる空間体験を効果的に組み合わせるこ
とで、ドラマチックな景観形成に役立てることができる。
①②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨ ⑩
⑪
F 1街区
E街区
F2街区
【西新井駅西口地区】
(東京都足立区、居住事業、2004 〜 /H16)
「エコモダンの道」
・「エコモダンの道」は歩行者専用通路で
ある。歩行のスピードとスケールに合わ
せた変化に富んだ街並みを生み出すため
に、シークエンス景観の手法を用いたス
タディが行われた。
C. 視点場からの見え・ビスタ形成など印象的な景観形成をテーマにしたもの
■場面展開を作る技法 SCENE①②
・誘引→ゲートの演出
→並木・キャノピー等の連続で視線
や動線を導く
・ビスタの強調(強い誘引)
→連続要素を左右対象に
→空間の絞り込み
・開放→視野の広がりを強調
→舗装材料による水平面での一体感
出典:「西新井駅西口地区景観デザインガイドライン」
C-6
【豊洲2・3丁目地区】
(東京都江東区、居住事業、2003 〜/ H15)
「サンセットウォーク」
・豊洲では、サンセットウォークやウォーターフロント
プロムナードなどの主要な歩行者動線で、景観シーク
エンスを意識した空間誘導が行われた。
C. 視点場からの見え・ビスタ形成など印象的な景観形成をテーマにしたもの
豊洲運河
街(都市性)→水辺(リゾート性)に至るまでの空間演出。
グラデーションをつけた性格設定による景観変化が楽しめる。
C-6
C-7. 見られ頻度とデザイン強度
「見られ頻度」が高い場所とは、複数の視点から可視である場所、いわゆる目立つ場所で、設計・計画上特に留意す
べき場所となる。来訪者数が高い場合から見える地点や、大通りの交差する街角、高層住棟の頂部などは、見られ
頻度が高くなる。見られ頻度に留意して、デザインへの力の入れ度合いをデザイン強度として表すことで、設計者
がデザインにこだわるべき部分を的確に示すことができる。
【西新井駅西口地区】
(東京都足立区、居住事業、2004 〜/ H16)
・街区コーナー部に面する建物ファサードを、
「景観形成に大きく影響を与える場所」とし
て、最もデザイン強度の高い場所として設定
している。
【桃井3丁目地区】
(東京都杉並区、居住事業、2005 〜/ H17 〜)
・主要動線上からのアイストップとなる部分を
中心に、「団地全体の印象を強く感じさせる
建築」として、最もデザイン強度の高い部分
として位置付けている。
C. 視点場からの見え・ビスタ形成など印象的な景観形成をテーマにしたもの
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