博物館資料情報の現状と未来 - braintech.co.jp · 自然史（日本画専門）担当...

博物館資料情報の現状と未来

早稲田システム開発株式会社

代表取締役内田剛史

平成２５年１０月

郷土資料の管理と情報発信、課題とポテンシャルについて

How about MUSEUM DIGITAL ARCHIVE？ 201310 Waseda System Development Co., ltd.

個人的にすごいと思う、ミュージアムのデジタルアーカイブ


「博物館と浮沈を共にする」

自分のこととして業界を考える

自己紹介

メリットデメリット

「ミュージアムシステム」に、

20年以上、特化してきました。博物館専門のシステム会社

① 博物館業務ノウハウや事情に精通する。

② 製品の機能に蓄積したノウハウを活かせる。

① 外を知らないので、「ガラパゴス化」が進む。

② 博物館の業界動向に会社の業績が左右される。

他業界のことを勉強しなくては…。

ミュージアムの業界全体を、盛り上げていかなくては…。

ニッチトップと呼んでいただけるようになりました。

平たく言うと「内弁慶」なんですが…


本日の話

すみませんが、絶望的な話が続きます。

まず、現実を認識するために…。

前半

後半

その状況に、どう立ち向かっていくか。

可能性の話をします。ここは明るく…。

直視すべき現状について、説明します。


充電スタンドがない…という問題

時代は「エコ」

先進的な電気自動車が続々登場

けど、

充電スタンドが

なかったら？

意味ない…

ですよね。走れません


博物館データベースの現状

理想と現実のギャップ～私の見聞から～

MLA連携？国立公文書館と連携

国会図書館と連携

こういう状態なのに

充電スタンドが

なければ

走れません。

確かに

最新の電気自動車

かもしれませんがこんな話をされても…


我が国の博物館…約5,800館（調査対象数5,553館）

デジタルアーカイブなし

デジタルアーカイブあり

理想と現実のギャップ～統計【社会教育調査】から～

431

全体の

8％

【推定】

専用システム有り

But「1万点中100点」というケースも含まれる。

9割

以上

【推定】文字通りだと、「デジタルデータなし」＝アナログ台帳？

9割は「充電スタンドが普及していない」状態

ミュージアムＩＴが難しい理由


理想と現実のギャップ～その他の統計から～

デジタルアーカイブ白書

By デジタルアーカイブ推進協議会

文化学術機関におけるデジタルアーカイブ

By 国立国会図書館二つの

統計データ

デジタルアーカイブの

障害は？第１位予算不足

第２位人員不足

第１位予算不足

第２位人員不足

平成13年平成22年

見事に

同じ答え

約10年

10年間、根本課題がずっと解消されないまま。

これでいいのだろうか…

発表年


予算と人員が用意できても…

ある館の

事例

ようやく

公開が

実現しました！

システムを入れて1年。

台帳のデジタル化、画像撮影は

とっくに終わっているはず。

なんで数十点なんだろう？

サイトを見たら、

公開点数は数十点。

数万点の資料があるのに…。

正確性の検証、

解説文の作成、

公開可否の協議…

やることが満載で、

一筋縄ではいかないのです。

雇用対策の財源（緊急雇用対策事業）を活用し、

資料整理やデジタルデータ作成の人員を確保、

同じ財源でシステムも導入し、公開可能に。

一過性の予算だけでは、十分な公開は無理。

結局は職員が地道にやっていくしかない。


充電スタンドのないところに、電気自動車を売っている絵

このシステムを導入すると、

資料情報をインターネットで

公開できますよ。外部機関との連携もバッチリ。

利用者に喜ばれますよ。

確かにできるけど。

入力するのは私たち。

そんな人員を雇う

おカネなんてないし…。

業者のセリフに乗っかると、

「公開のための仕事」は確実に増えます。

それが通常業務を滞らせ、

結局は公開の実現が遠のくという矛盾。

業者は、反省しろ！

（私も、です。）


さらに良くないことに…。

経営環境短期的数値で、すべての価値を測る風潮。

短期利益

追求型

ビジネス

長期育成型

ビジネス

民間企業

「職人型」中小製造業の壊滅

文化施設

…このままいくと？ …商品がなくなる？

資料収集・保存管理やデータ整備は

「オモテに出る数値」に直結しにくい

だから真っ先に切られる

というよりゼロに近い

これって、企業が

商品をほったらかして

広告宣伝だけ

力を入れている…

という状態では？


でも、もう逃げられない

37.6％ 58.0％

65歳から69歳のインターネット利用率

平成20年調査平成21年調査

高齢者のインターネット利用は、もう多数派。

総務省：通信利用動向調査

この間、

たった1年

うちの館の利用者は、

お年寄りが中心だから…


言い訳は許されなくなってきた

100.0％ 0.0％

「はい」と答えた人の数

「美術館がどのような作品を所蔵しているかを、インターネットで検索できるとよい」

と思いますか？

「インターネットで作品を見たらそれで十分。もう美術館には足を運ばなくてよい。」

と思いますか？

博物館のインターネット、資料検索に、利用者は熱烈期待。

中山道広重美術館連続講座アンケート

ミュージアムは実物を見るところだから、

モニターでお見せしてもねぇ…


どうする？

予算も人員もない。

業者も信用できない。

デジタルアーカイブは無理。

ネット公開も無理。

ネット時代。

ネットに出していないと、

「ないもの」扱い。

利用者はデジタルも求める。

二つのデータからわかること

予算がない

人員がない

…だから仕方がない

そんなことを言っていると、

置き去りにされてしまう…。置き去りにされないために、

何をするべきか。環境に順応するには…。


ここから、前を向いて。

後半

その状況に、どう立ち向かっていくか。

可能性の話をします。ここは明るく…。

システム業者にできること 1 海外では 2

我々は、どう戦うか 3


システム業者ができることは少ない。

こんなこと、

できたらいいのですが

予算を増やす

人員を増やす

さすがにそれは、

無理なので

せめて、

こういうことでも…

かかるお金を

少なく済ませる

少しずつでも

仕事を減らす

これなら、

努力次第でできるかも。

予算不足

人員不足

業者は、仕事を減らすことができる道具をどのくらい安く提供できるかに、挑戦すべき


―――――― クラウド

当社に今できることとして

インターネットを介した

システムの共同利用

開発コストに「割り勘効果」が働き、安くなる。

サーバを持たなくてよいので、管理が楽になる。

業務ノウハウを「機能化」すれば、ノウハウの共有に繋がる。

ＩＴに限定しない、情報共有プラットフォームを目指せる。

力を合わせて逆境に立ち向かうためのプラットフォームづくり


博物館クラウドの現在地

I.B.MUSEUM I.B.MUSEUM SaaS

要望A

カスタマイズ

要望B

要望C

要望D

要望E

要望F

機能追加

要望A

要望B

要望C

要望D

機能追加

要望A

要望B

要望C

カスタマイズ要望のうち、ほかの館でも有用と思われるものは、パッケージ機能として再開発

パッケージ機能のうち、クラウド化可能なものはクラウドシステムに実装

２年で20回の機能追加

現場要望業務ノウハウ業務ノウハウを安く普及

まだまだ勉強中ですが… 私たちなりの「充電スタンド」へ。


I.B.MUSEUM SaaS の概要

収蔵品管理

データベース

収蔵品公開

データベース

インプット

アウトプットアウトプット

アウトプット

資料の

目録情報

関係する

人物の情報

資料の

履歴情報

その他

関係情報

転送

業務の

帳票・文書

年報・紀要

報告書

図録展示キャプション

入力

機能

静止画

動画

検索

機能出力

機能

インターネット

来館者向け

検索端末

公開

機能

ここまでをクラウド化したシステム


ライバル企業

民間企業に比べて、文化施設の良いところ

Ｔ社

Ｈ社

Ｔ社

ミュージアム

Ｈ社

ミュージアム

ノウハウの相互付与はしない

ノウハウの相互付与はＯＫ

私たちが良い展示で鑑賞者を育て、

その鑑賞者は他館にも訪れる。

他館で育った鑑賞者が当館にも訪れる。

そんな循環を作っていきたい。

ある美術館学芸員

企業なら同業者はライバル。

でも文化施設にとって他館は仲間。

クラウドは、「共通プラットフォーム」

業者からの提供だけでなく、利用者同士の共有は？


A博物館

これから目指す、潜在的意義の追求例１

B美術館

（日本画専門）自然史

担当

歴史

担当

民俗

担当美術工芸

担当

日本画

専門

館にあるのは日本画ばかり。でも私の専門は近代西洋画。

日本画の保存管理を強化するのに、データ項目を整えないと…。でも専門外でよくわからない。

クラウド型システムは

分野追加、項目設定が自由

もしシステムに、

作ったデータスキーマを

アップロードして

他館が利用できる仕組みがあれば…

A博物館は、日本画の資料管理において、

日本画専門のB美術館のノウハウを利用できる。

日本画の保存管理に

必要な項目を

網羅したデータ体系を

システムに

他館が使えるクラウド上の「場所」にアップロード

Ｂ美術館がアップロードした項目体系を利用


これから目指す、潜在的意義の追求例２

A博物館 B美術館

（日本画専門）自然史

担当

歴史

担当

民俗

担当美術工芸

担当

日本画

専門

小学生向けワークシートを作らないと。

でも、経験もないし、先輩もいないし…。

もしシステムに、

帳票を自由に作成する機能があり、

作った帳票をテンプレートとして

アップロードできる仕組みがあれば…。

A博物館では、教育普及事業が活発。

ワークシートも多数作成。

B美術館は、豊富な経験を持つ

A博物館の教育普及事業の

ノウハウを活用できる。

B美術館は

若手学芸員1名体制

学校との連携を

指示された


これから目指す、潜在的意義の追求例３

切込みを入れる

谷折り

谷折り

山折り

谷折り

谷折り

山折り

トレーディングカード風

カード出力機能搭載

ペーパークラフトガイド

出力機能搭載

資料データベースアプリ

配信機能搭載

カードを使って

アートゲーム等を実施

子どもの団体来館時に

ワークシートとして配布

配信して利用者に提供

来館者向け解説ツール

全ての機能をクラウド利用館が使える状態に。

活用方法、成果をアップロードでき、相互に再利用できる仕組み。

オルセー美術館アプリ


Ａ市Ｂ市Ｃ市

…入り乱れた方が、おもしろい？

Ａ市博物館Ｂ市美術館Ｃ市美術館Ａ市美術館

Ａ市博物館資料データベース

Ｂ市美術館作品データベース

Ｃ市美術館作品データベース

Ａ市美術館作品データベース

Ａ市歴史文化情報データベース

Ａ市文化財マップ

「日本の屏風絵」データベース

☓☓派作品電子図録

地元小中学生美大生美術ファン観光客

「ニーズに合った伝え方をする」

という目的であれば、

それぞれに合った

インターフェイスが必要なはず。

「場」がたくさんあって、

ＴＰＯに合わせて出し方を変える…。

そんな発信が、無限にできれば…。


多くの館が同じテーマで一つのデータベースを公開

これから目指す、潜在的意義の追求例 4

クラウドではありませんが、示唆に富んだ事例。

東京都三多摩公立博物館協議会多摩エリア

写真アーカイブ

34館の

所蔵写真

東村山ふるさと歴史館府中市郷土の森博物館町田市立博物館青梅市郷土博物館調布市郷土博物館瑞穂町郷土資料館奥多摩水と緑のふれあい館福生市郷土資料室武蔵村山市立歴史民俗資料館あきる野市五日市郷土館羽村市郷土博物館清瀬市郷土博物館立川市歴史民俗資料館檜原村郷土資料館日野市郷土資料館小金井市文化財センターくにたち郷土文化館東大和市立郷土博物館パルテノン多摩歴史ミュージアム東京農工大学科学博物館江戸東京たてもの園たましん歴史・美術館御岳美術館東京都埋蔵文化財センター集合住宅歴史館多摩六都科学館国立ハンセン病資料館八王子市こども科学館八王子市郷土資料館国立天文台天文機器資料館首都大学東京９１年館狛江市立古民家園

http://111.68.132.91/search/area.html


郷土資料・文化財を守る道具に

陸前高田被災資料デジタル化プロジェクト

http://tsunami-311.org/

海水、泥をかぶった写真資料数万点を、洗浄し、デジタル化するプロジェクト。都内の有志学芸員を中心とするボランティア。博物館資料なので、ただきれいにしてデジタル化するだけではない。アルバムやスライドに記載されたメモが、後々の重要な手掛かりになるため、それを一緒に登録することが必要になる。画像データと文字データが「離れ離れ」にならないようにするのが、ちょっと厄介。

そこで、

システムを活用して

メモも一緒に登録

陸前高田側からもアクセス

リクエストなどを登録

東京から進捗状況も登録

クラウドが全国的に普及し、多くの館のデータが安全に保管されていれば

どの資料がダメージを受けたかをいち早く把握でき、

被害のない館からのレスキュー協力を得やすくなる。

仮に、

どこかが被災しても





海外事例：関連情報をサーフィン

メトロポリタン美術館

関連作品へ

その作品が展示された展覧会へ

地域・時代の解説へその地域・時代の作品へ

一度閲覧した人を次の資料へ誘う動線を、多くの切り口で設ける。

http://metmuseum.org/collections


海外事例：作品で教材を作って共有する

いずれも、資料（資料情報）という「資産」の有効活用を

Web上で実践しているように見えます。

ノースカロライナ州立美術館

作品画像に、自由に

「解説吹き出し」を

付けることができる

解説つき画像をアップロード

共有することで

「美術教材集」となっている

http://artnc.org/


海外事例：幅広い学習教材の集積サイト

Boston Children’s Museum

Activities に事例がズラリ。

所要時間対象年齢

グループ人数

分野は多様 Science,Literacy,Culture,Health,Art,Math,Engeneering

Suminagashi？墨流し？

資料データには限定していない。

資料を絡めることはできる？

http://www.beyondthechalkboard.com/


海外事例：どんどん二次利用を

アムステルダム国立美術館高精細画像を

ダウンロードできる

二次利用推奨？

バイクやスマホに

誰かの創作に採用される ▶作品の露出を「他力」で激増させる

https://www.rijksmuseum.nl/nl/rijksstudio


海外事例：ゲームざんまいのサイト

TATE Kids （テート・ギャラリー）

たくさんの

子ども向けゲーム

明るさ、色などを、バーで調整。同じ作品が様々な見え方に。

画面上で作った絵をアップロード。

画面上で絵画修復体験。

ひとつひとつのゲームの

クオリティが高いです。

ぜひアクセスを！

http://kids.tate.org.uk/


海外事例：カラーチャートから検索？

Cooper-Hewitt Online Collection いろんな切り口から

資料に簡単にアクセス。

小難しい検索条件入力は不要！試しに、「色」で。

カラーチャートが出現

オレンジを選ぶと

オレンジの資料を表示。

http://collection.cooperhewitt.org/


うちには、関係ない？ …なぁんて、

思っていませんか？

カードやワークシートの出力機能

複数の館が協力しての公開機能

教材の共有機能

二次利用促進機能

アプリ公開機能

電子図録公開機能

クイズ・ゲーム公開機能

関連情報への遷移機能

カラーチャート検索機能

たくさんの事例を紹介しました。先進的すぎて自分たちにはちょっと…

と思っていませんか？

【業務システム】

管理システムとノウハウ共有で

業務品質アップ

「デジタルアーカイブ労力」捻出へ

平成25年10月

搭載済み

計画中

計画中

博物館クラウドが進化させ、すべての館がこれらを利用できる環境を！

ご紹介した海外サイトも、

いずれは自館に


未来のミュージアム・クラウド

業務利用

情報発信

業務システムとしての

多機能化

他館ノウハウの

共有の場

他館成功事例を

搭載し自由に使える

館の垣根を超えた

統合的情報発信

個別開発のコストは

クラウドで「割り勘」

個別開発のコストは

クラウドで「割り勘」

多数の館が集まるからこそ

できる協働

多数の館が集まるからこそ

できる協働

成果の上がったノウハウを安価に流通させるプラットフォーム

力を合わせて逆境に立ち向かうためのプラットフォーム


まとめ

勝ちパターンを得たら、それを還元する。

勝ちパターンの流通の仕組み。それが、私たちが目指す「博物館クラウド」の姿。

１機関、１事例が突出しても、それは単発で終わる。

うちには

予算がないから

当館は

人員が少ないから

だったらそれは、広がらない。

充電スタンドのない電気自動車

基地局のないスマホ…

みたいなものだ。

でも、実際はまだまだ。道のりは遠いです。


勝ち

パターン

勝ち

パターン

終わりに

まだまだ逆風は続きます。

資料情報という武器と、

成功事例という勝ちパターンを

「束ねる」という方法で、

逆風に立ち向かいましょう。

勝ち

パターン

勝ち

パターン

勝ち

パターン

勝ち

パターン

勝ち

パターン

勝ち

パターン

勝ち

パターン

私たち業者は、

花から花へと花粉を媒介する

ハチのようなもの。

勝ちパターンを媒介していきます。

勝ちパターンの共有

勝ち

パターン


最後に、もう一つ。

10月16日に、

会社Facebookページを開設しました。

いまさら？

会社情報を極端に減らし、

業界お役立ち情報

発信マシン

を目指しております。

https://www.facebook.com/wasedasys

お手元のスマホで、

ぜひ「いいね！」を

お願いいたします。

https://www.facebook.com/wasedasys

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