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磁気記録材料
Simon Greaves1
1Research Institute of Electrical CommunicationTohoku University, Japan
4/2019
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磁気記録材料
磁気記録材料
ワイヤーとテープの記録
薄膜媒体
エネルギー障壁
連続とピン媒体
パターン媒体
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磁気記録材料
磁気記録媒体に適した材料であるためには、いくつかの要件が満たさ
れなければならない。
高保磁力:高保磁力を有する材料は、漂遊磁界に対して耐性があり、
データ損失の可能性を減らす。
高い残留磁気:高い残留磁気比Mr/Msは、より大きいリードバック
信号、SNRの向上、および 2つの磁気状態の区別を容易にする。
熱安定性:材料は長期間、例えば 10年間、にわたってデータを記憶できなければならない。熱安定性は材料の異方性に密接に関係している。
書き換え可能:異方性エネルギーが大きいと材料は熱的に安定になる
が、異方性エネルギー(および保磁力)は書き込みフィールドがデー
タを記録できるように十分小さくなければならない。
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ワイヤーとテープの記録
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ワイヤーレコーダー
最初の磁気記録装置は Poulsenによって発明され、ドラムに巻かれた
鋼線を使用した。
鋼線の領域は書き込みヘッドによっ
て異なる方向に磁化された。
この例では、ワイヤはドラムの周り
に巻き付けられており、システムは
ワックスシリンダー記録装置に似て
いる。
後の装置はワイヤのスプール、また
は長いワイヤループを有するカート
リッジを使用した。
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磁気テープ I
初期のテープ製造工程は、着色顔料を磁性粒子で置き換えたこと以外
は塗料製造と同様だった。
磁性粒子を含有する液体を高剪断ミルに通して磁性粒子を分離および
分散させる。得られた分散液を次いでプラスチックテープ上に被覆
する。
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磁気テープ II
粒子種類 典型的な大きさ Hc (Oe)
γ-Fe2O3 1.0µm × 0.2µm 300
CrO2 0.5µm × 0.1µm 500
Metal particle 0.1µm × 0.02µm 1000
BaFe 0.016µm × 0.008µm 2000
磁性粒子は5:1のアスペクト比で針状になる傾向がある。最近で
は、六方晶小板である BaFe粒子も使用されている。
一般に、十分な信号対雑音比を保証するために単一のビットを記録す
るため多くの粒子が必要とされる。
粒子の大きさは記録密度に制限を課し、より小さい粒子はより高い密
度を可能にする。
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薄膜媒体
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薄膜媒体
薄膜媒体はいくつかの方法で製造することができる:スパッタリン
グ、蒸着、レーザーアブレーションなど。
ターゲットからのスパッタリング
スパッタリングでは、ターゲット材
料は負の電圧に保たれ、それによっ
て電子が表面から放出される。
電子はスパッタリングガス原子(ア
ルゴン、クリプトン、キセノンなど)
と衝突してイオンを作る。
イオンはターゲットに引き付けられ、
イオンがターゲットと衝突すると
ターゲット原子は放出される。
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マグネトロンスパッタリング
マグネトロンスパッタリング スパッタリングプラズマ
ターゲットの下に磁石を配置することによって、スパッタリングガス
イオンをターゲット表面の近くに閉じ込めることができる。この装置
はマグネトロンと呼ばれている。
イオン化されたスパッタリングガスはターゲットの周りにプラズマを
形成する。
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市販のスパッタリング装置
Balzers Circulus Canon-Anelva ML3000
産業界では、多層膜を堆積するために複数のマグネトロンが使用され
ている。
製造量は重要である。通常、1時間に 600〜1800枚のディスクを製造できる。
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蒸発
堆積させる材料をるつぼに入れて溶融する。
十分に高い温度では、材料は蒸発して基板上に堆積する。
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レーザーアブレーション
レーザーアブレーションは、短時間のレーザーパルスを使用してター
ゲットの小さな領域を溶融することを除けば、蒸発と似ている。
図示の例では、ガスパルスはレーザパルスと同期しており、ターゲッ
ト材料の酸化物、窒化物および炭化物を生成するために使用される。
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磁気ディスク用の薄膜媒体
ディスクに使用された最初の薄膜媒体は CoCr合金から作られた。媒体は多結晶粒子から形成された、すなわち各粒子は単結晶であるが、
配向は粒子ごとに異なっていた。
多結晶 CoCrPt媒体
平均粒子大きさは、ディスクに保存
できるデータ量を決定する 1つの要因です。各粒子が単一ドメイン粒子
であるならば、理論的には1ビット
が各粒子に記憶され得る。
実際には、1ビットを格納するのには再生信号と SNRを得るため十分な数の粒子が必要である。
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AFC媒体
長手方向(面内)媒体においては、ビット長が減少するにつれて静磁
場が増加する。より薄い媒体は静磁場を減少させるが特定の値以下の
厚さでは磁化が不安定になる。
これを回避するために、反強磁性結合(AFC)媒体が導入された。
AFC媒体は、薄いルテニウム層によって分離された2つの磁性層を
有する。あるRu厚さでは、2つの磁性層は反強磁性的に結合し、静
磁場を減少させる。
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グラニューラー媒体
SiO2と同時スパッタした記録媒体の
画像。粒子は明確で、境界で酸化物
によって分離されています。
画像サイズ = 110 nm × 110 nm
隣接粒子間の交換結合は、同じ方向に磁化された粒子のクラスターの
形成をもたらし、小さなビットを書き込むことを困難にする。
磁性材料は、酸化物、例えば SiO2、と同時スパッタリングすること
ができる。酸化物は粒界に集中し、粒子を分離させ、交換結合を減少
させる。
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エネルギー障壁
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エネルギー障壁 I
粒子密度を小さくすることで面密度を上げることができるが、粒子の
体積が小さくなりすぎると、熱エネルギーの影響で粒子の磁化が自発
的に反転することがある。
エネルギー障壁は粒子の熱安定性を
決定する。磁場が ~Ku軸に対して角度
φで適用されると、~Mと Kuの間の角
度 θは増加する。
エネルギーは、~M を ~Ku 軸から引き
離すために行われる作業である。エ
ネルギー障壁∆E は、最大エネルギーと最小エネルギーの差である。
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エネルギー障壁 II
一軸異方性エネルギー Ku をもつ体積 V の単一磁区粒子を考えてみよう。~M と ~Ku の間の角度が θで、~Ku と ~H の間の角度が φであるとする。
エネルギーはそれから与えられます
E = KuV sin2 θ − MsVH cos(φ− θ)
H = 0の場合、エネルギー最小値は θ = 0◦および θ = 180◦になる。つまり、~M は、容易軸、~Ku、と同じ軸になる。
エネルギー最大値は、θ = 90◦および θ = 270◦にあり、エネルギー障壁∆E は、最大エネルギーと最小エネルギーの差である。H = 0のとき、∆E = KuV である。
~Hが十分に大きいと、エネルギー障壁は消え、磁化の方向は逆になる。
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熱エネルギー I
有限温度では、E = kT で与えられる熱エネルギーがある。ここで、kはボルツマン定数、T は温度です(ケルビン単位)。熱エネルギーがエネルギー障壁と同程度であれば、粒子の磁化は自発的に反転する可
能性がある。
これは、単相の場合、熱エネルギー kT が KuV に近づくとデータが失われる可能性があることを意味する。
自発的な熱誘起反転の間の平均時間 τ は、
1τ= f0e−∆E/kT
f0は試行頻度で、通常 1010 Hzである。
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熱エネルギー II
ボルツマン定数 k = 1.38×10−16 erg/K.
f0 =γα
1 + α2
√H3
k MsV2πkT
ここで、γは磁気回転比、αは減衰定数である。
熱的安定性を確実にするためには、τ は約 10年であるべきであり(τは秒で測定される)、すなわち、∆E/kT は約 45であるべきである。
T = 300 KおよびH = 0の場合、KuV は少なくとも 1.86 ×10−12 ergになる。Ku は erg/cm 3で、V は cm 3で測定される。
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連続とピン媒体
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連続媒体
連続メディアは、粒状メディアに代わるものです。粒子は強く交換結
合しており、粒子体積と熱安定性を効果的に高める。そうでなけれ
ば、材料は非晶質であり、離散的な粒子構造を全く有さない。
連続メディアでは、磁壁がビット間の境界を形成する。このアプロー
チに伴う 1つの問題は、小さな磁場にさらされると磁壁が動き回る可能性があることである。
解決策は、磁壁固定メカニズムを媒体に組み込むことである。
磁壁は、媒体に欠陥または不均一性を生じさせることによって固定す
ることができる。薄い磁気ストリップでは、ピン止めはストリップの
縁に沿った粗さまたはノッチから生じることがある。
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浸透媒体
包含で固定された磁癖
磁壁を左から右へ動かすため
に磁場が印加される。磁壁の
中心は内包物に固定されて
いる。
エネルギー障壁は、磁壁のピ
ン止めの強さによって決
まる。
磁壁を固定する簡単な方法は、パーコレーション媒体を作成するため
に小さなミシン目で連続媒体に穴をあけることである。
磁壁はパーコレーションで固定されている。しかしながら、孔の空間
分布は制御が困難である。
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CGC媒体
CGC媒体
粒状媒体中の隣接粒子間の交
換結合を制御することは困難
である。
粒状層と連続層を組み合わせ
ると、交換結合を簡単に制御
できる。
連続粒状結合(CGC)媒体は、一つの粒状層と一つの連続層の二つ
の隣接層から形成される。2つの層の間の交換結合は連続層の磁壁を
固定する。
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バブルメモリー I
バブル磁区の形成
バブル磁区は、垂直異方性を
有する磁性薄膜に磁場を印加
することによって形成するこ
とができる。
バブル磁区は、面内磁場を印
加することによって動かすこ
とができる。
バブルメモリは、連続媒体中の小さな磁区(バブル)に基づいている。
バブルメモリは 70年代中期から後半に使用された。それは耐放射線性のために宇宙船に使用された。
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バブルメモリー II
バブルメモリチップでは、意図された方向に
バブルを誘導するために強磁性ガイドが使
用された。ガイドの端部にあるコイルは、気
泡を移動させるための磁場を生成する。 初期のバブルメモリチップ
の図
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パターン媒体
粒状記録媒体中の粒子のランダムなサイズ、形状および位置は、記録
された各ビットがわずかに異なるので、リードバック信号にノイズを
もたらす。
パターン化媒体は、各ドットに単一のビットが格納された、離散的で
均一な磁性ドットの配列からなる。
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パターン媒体製作
(1)媒体を電子線レジストで被覆する。
(3)プラズマエッチングを用いて露出した磁性層を除去する。
(2)レジストは電子ビームを用いてパターン化され現像される。
(4)残ったレジストを取り除き、ドットを残す。
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自己組織化/指定アセンブリ
代替の製造方法は、ナノ粒子を媒体上に堆積させ、それらを予めパ
ターン化された境界内に規則的なアレイを形成させることである。
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パターン媒体の問題
電子ビームリソグラフィは遅く、精度は広い領域にわたって信頼でき
ないので、ディスクを個々にパターン化することは法外に高価である。
代わりに、マスターテンプレートが作成され、そこから数万枚のディ
スクを作成できる。
それにもかかわらず、リソグラフィプロセスを使用して非常に小さい
ドットを製造することは依然として困難である。密度乗算として知ら
れている別の方法を使用することができる。マスターテンプレートは
まばらにパターン化され、ギャップは自己組織化を使用して埋めら
れる。
パターン化媒体への記録は、書き込みヘッドフィールドの切り替えが
書き込みヘッドと媒体中のドットの相対位置と同期することを必要と
する。高密度では、要求される許容誤差とタイミングは非常に厳しく
なる。
他の問題としては、ドットサイズと位置の分布、ドット間の静磁気相
互作用などがある。
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結論
長年にわたり、情報記録技術は、ワイヤおよびテープレコーダから薄
膜媒体をベースとした超高密度ハードディスクドライブまで、著しい
進歩を遂げてきた。
将来の進歩は、書き込みヘッドだけを使用しないパターン化媒体また
はパターン化構造および記録方法を含む可能性が高い。
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